(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140097
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】三次元造形用ステージおよび三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/245 20170101AFI20241003BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20241003BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20241003BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20241003BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241003BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20241003BHJP
B22F 12/30 20210101ALI20241003BHJP
B22F 12/53 20210101ALI20241003BHJP
B22F 12/90 20210101ALI20241003BHJP
B22F 10/10 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
B29C64/245
B29C64/106
B29C64/209
B29C64/295
B33Y10/00
B33Y30/00
B22F12/30
B22F12/53
B22F12/90
B22F10/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051092
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】中村 和英
(72)【発明者】
【氏名】合津 昌幸
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AA13
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL32
4F213WL73
4F213WL74
4K018BA02
4K018BA03
4K018BA04
4K018BA08
4K018BA13
4K018BA16
4K018BA17
4K018BA20
(57)【要約】
【課題】造形ステージの造形面の平面度を小さくすることができる三次元造形用ステージを提供する。
【解決手段】平面度が調整された基準面を有する載置部と、造形層が積層される造形面と、凹部が形成された第1側面と、前記第1側面とは反対側の第2側面と、を有し、前記基準面に載置された造形ステージと、前記凹部に係合する係合部材を有し、前記造形面に沿った方向において前記造形ステージを押し付ける押し付け部材と、前記第2側面において前記造形ステージを押さえる押さえ部材と、を含む、三次元造形用ステージ。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面度が調整された基準面を有する載置部と、
造形層が積層される造形面と、凹部が形成された第1側面と、前記第1側面とは反対側の第2側面と、を有し、前記基準面に載置された造形ステージと、
前記凹部に係合する係合部材を有し、前記造形面に沿った方向において前記造形ステージを押し付ける押し付け部材と、
前記第2側面において前記造形ステージを押さえる押さえ部材と、
を含む、三次元造形用ステージ。
【請求項2】
請求項1において、
前記押さえ部材として、第1押さえ部材と、第2押さえ部材と、を含み、
前記押し付け部材の押し付け方向からみて、前記凹部は、前記第1押さえ部材と前記第2押さえ部材との間に位置する、三次元造形用ステージ。
【請求項3】
請求項1において、
前記造形面に垂直な方向からみて、前記凹部は、前記造形面に向かって縮小するテーパー形状を有する、三次元造形用ステージ。
【請求項4】
請求項1において、
前記載置部は、前記基準面として、第1基準面と、第2基準面と、を有し、
前記第1基準面および前記第2基準面には、基準用治具が嵌合する凹部または凸部が設けられている、三次元造形用ステージ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の三次元造形用ステージと、
造形材料を前記三次元造形用ステージに向けて吐出するノズルと、
を含む、三次元造形装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記造形ステージよりも上方に設けられ、三次元造形物の造形時に前記ノズルのノズル開口よりも上方に位置し、前記造形層を加熱するプレート状の加熱部と、
前記造形面に垂直な方向において前記加熱部の少なくとも一部と前記造形ステージの少なくとも一部とが重なる範囲で、前記加熱部と前記造形ステージとの相対的な位置を変更する位置変更部と、
前記載置部に固定され、前記加熱部の平面度を測定する第1センサーおよび第2センサーと、
を含む、三次元造形装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1センサーを前記造形面に垂直な方向に移動させる第1移動機構と、
前記第2センサーを前記造形面に垂直な方向に移動させる第2移動機構と、
前記第1移動機構および第2移動機構を制御する制御部と、
を含み、
前記第1センサーおよび前記第2センサーは、前記加熱部に接触する接触式のセンサーであり、
前記第1センサーで前記加熱部の平面度を測定する場合、前記制御部は、前記第1移動機構を制御して、前記第1センサーを前記造形面よりも上方に位置させ、前記第2移動機構を制御して、前記第2センサーを前記造形面よりも下方に位置させる、三次元造形装置。
【請求項8】
請求項6において、
前記第1センサーおよび前記第2センサーは、前記加熱部の同じ箇所を測定する、三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形用ステージおよび三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可塑化された材料をステージに向けて吐出し、硬化させることによって三次元造形物を造形する三次元造形装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、造形材料が積層されるステージと、ステージ上の造形領域に向かって造形材料を吐出するノズルと、ステージ上の造形領域に積層された造形材料を加熱する加熱部と、を備えた三次元造形装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような三次元造形装置では、ステージや加熱部などの平面度が重要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る三次元造形用ステージの一態様は、
平面度が調整された基準面を有する載置部と、
造形層が積層される造形面と、凹部が形成された第1側面と、前記第1側面とは反対側の第2側面と、を有し、前記基準面に載置された造形ステージと、
前記凹部に係合する係合部材を有し、前記造形面に沿った方向において前記造形ステージを押し付ける押し付け部材と、
前記第2側面において前記造形ステージを押さえる押さえ部材と、
を含む。
【0007】
本発明に係る三次元造形装置の一態様は、
前記三次元造形用ステージの一態様と、
造形材料を前記三次元造形用ステージに向けて吐出するノズルと、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る三次元造形装置を模式的に示す斜視図。
【
図2】本実施形態に係る三次元造形装置を模式的に示す断面図。
【
図3】本実施形態に係る三次元造形装置のフラットスクリューを模式的に示す斜視図。
【
図4】本実施形態に係る三次元造形装置のバレルを模式的に示す図。
【
図5】本実施形態に係る三次元造形装置のステージを模式的に示す斜視図。
【
図6】本実施形態に係る三次元造形装置のステージを模式的に示す平面図。
【
図7】本実施形態に係る三次元造形装置のステージを模式的に示す斜視図。
【
図8】本実施形態に係る三次元造形装置の動作を説明するためのフローチャート。
【
図9】本実施形態に係る三次元造形装置の造形層形成処理を説明するための断面図。
【
図10】本実施形態の第1変形例に係る三次元造形装置のステージを模式的に示す斜視図。
【
図11】本実施形態の第1変形例に係る三次元造形装置のステージを模式的に示す平面図。
【
図12】本実施形態の第1変形例に係る三次元造形装置の加熱部、センサー、および造形ステージを模式的に示す平面図。
【
図13】本実施形態の第1変形例に係る三次元造形装置の加熱部、センサー、および造形ステージを模式的に示す平面図。
【
図14】本実施形態の第2変形例に係る三次元造形装置のステージを模式的に示す斜視図。
【
図15】本実施形態の第2変形例に係る三次元造形装置のステージを模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1. 三次元造形装置
1.1. 全体の構成
まず、本実施形態に係る三次元造形装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る三次元造形装置100を模式的に示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る三次元造形装置100を模式的に示す
図1のII-II線断面図である。なお、
図1および
図2では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を示している。X軸方向およびY軸方向は、例えば、水平方向である。Z軸方向は、例えば、鉛直方向である。
【0011】
三次元造形装置100は、
図1および
図2に示すように、例えば、吐出部10と、ステージ20と、位置変更部30と、支持部40と、加熱部50と、制御部60と、を含む。
【0012】
三次元造形装置100は、吐出部10からステージ20に向けて可塑化された造形材料を吐出させつつ、位置変更部30を駆動して、吐出部10とステージ20との相対的な位置を変化させる。これにより、三次元造形装置100は、ステージ20上に所望の形状の三次元造形物を造形する。三次元造形装置100は、FDM(Fused Deposition Modeling)(登録商標)方式の三次元造形装置である。
【0013】
三次元造形装置100は、吐出部10として、第1吐出部10aおよび第2吐出部10bを含む。図示の例では、第1吐出部10aおよび第2吐出部10bは、X軸方向に並んでいる。第1吐出部10aおよび第2吐出部10bの構成は、例えば、同じである。第1吐出部10aおよび第2吐出部10bは、ともに三次元造形物を構成する造形材料を吐出してもよいし、一方が造形材料を吐出し、他方が三次元造形物を支持するサポート材を吐出してもよい。なお、図示はしないが、第1吐出部10aおよび第2吐出部10bのうちの一方は、設けられていなくてもよい。
【0014】
吐出部10は、例えば、材料貯留部110と、可塑化部120と、ノズル160と、を有している。
【0015】
材料貯留部110は、ペレット状や粉末状の材料を貯留する。材料貯留部110は、可塑化部120に材料を供給する。材料貯留部110は、例えば、ホッパーによって構成されている。材料貯留部110に収容される材料は、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂である。
【0016】
材料貯留部110と可塑化部120とは、
図2に示すように、材料貯留部110の下方に設けられた供給路112によって接続されている。材料貯留部110に投入された材料は、供給路112を介して、可塑化部120に供給される。
【0017】
可塑化部120は、例えば、スクリューケース122と、駆動モーター124と、フラットスクリュー130と、バレル140と、ヒーター150と、を有している。可塑化部120は、材料貯留部110から供給された固体状態の材料の少なくとも一部を可塑化し、流動性を有するペースト状の造形材料を生成して、ノズル160に供給する。
【0018】
なお、可塑化とは、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0019】
スクリューケース122は、フラットスクリュー130を収容する筐体である。スクリューケース122の下面には、バレル140が設けられている。スクリューケース122とバレル140とによって囲まれた空間に、フラットスクリュー130が収容されている。
【0020】
駆動モーター124は、スクリューケース122の上面に設けられている。駆動モーター124は、例えば、サーボモーターである。駆動モーター124のシャフト126は、フラットスクリュー130の上面131に接続されている。駆動モーター124は、制御部60によって制御される。なお、図示はしないが、減速機を介して、駆動モーター124のシャフト126と、フラットスクリュー130の上面131とが、接続されていてもよい。
【0021】
フラットスクリュー130は、回転軸R方向の大きさが、回転軸R方向と直交する方向の大きさよりも小さい略円柱形状を有している。図示の例では、回転軸Rは、Z軸と平行である。駆動モーター124が発生させるトルクによって、フラットスクリュー130は、回転軸Rを中心に回転する。
【0022】
フラットスクリュー130は、上面131と、上面131とは反対側の溝形成面132と、上面131と溝形成面132とを接続する側面133と、を有している。溝形成面132には、第1溝134が形成されている。側面133は、例えば、溝形成面132に対して垂直である。ここで、
図3は、フラットスクリュー130を模式的に示す斜視図である。なお、便宜上、
図3では、
図2に示した状態とは上下の位置関係を逆向きとした状態を示している。
【0023】
フラットスクリュー130の溝形成面132には、
図3に示すように、第1溝134が形成されている。第1溝134は、例えば、中央部135と、接続部136と、材料導入部137と、を有している。中央部135は、バレル140に形成された連通孔146と対向している。中央部135は、連通孔146と連通している。接続部136は、中央部135と材料導入部137とを接続している。図示の例では、接続部136は、中央部135から溝形成面132の外周に向かって渦状に設けられている。材料導入部137は、溝形成面132の外周に設けられている。すなわち、材料導入部137は、フラットスクリュー130の側面133に設けられている。材料貯留部110から供給された材料は、材料導入部137から第1溝134に導入され、接続部136および中央部135を通って、バレル140に形成された連通孔146に搬送される。第1溝134は、例えば、2つ設けられている。
【0024】
なお、第1溝134の数は、特に限定されない。図示はしないが、第1溝134は、3つ以上形成されていてもよいし、1つだけ形成されていてもよい。
【0025】
また、図示はしないが、可塑化部120は、フラットスクリュー130ではなく、側面に螺旋溝を有する長尺のインラインスクリューを有していてもよい。そして、可塑化部120は、インラインスクリューの回転によって材料を可塑化してもよい。
【0026】
バレル140は、
図2に示すように、フラットスクリュー130の下方に設けられている。バレル140は、フラットスクリュー130の溝形成面132に対向する対向面142を有している。対向面142の中心には、第1溝134と連通する連通孔146が形成されている。ここで、
図4は、バレル140を模式的に示す平面図である。
【0027】
バレル140の対向面142には、
図4に示すように、第2溝144と、連通孔146と、が形成されている。第2溝144は、複数形成されている。図示の例では、6つの第2溝144が形成されているが、第2溝144の数は、特に限定されない。複数の第2溝144は、Z軸方向からみて、連通孔146の周りに形成されている。第2溝144は、一端が連通孔146に接続され、連通孔146からバレル140の外周に向かって渦状に延びている。第2溝144は、可塑化された造形材料を連通孔146に導く機能を有している。
【0028】
なお、第2溝144の形状は、特に限定されず、例えば、直線状であってもよい。また、第2溝144は、一端が連通孔146に接続されていなくてもよい。さらに、第2溝144は、対向面142に形成されていなくてもよい。ただし、連通孔146に可塑化された材料を効率よく導くことを考慮すると、第2溝144は、対向面142に形成されていることが好ましい。
【0029】
ヒーター150は、
図2に示すように、バレル140に設けられている。ヒーター150は、フラットスクリュー130とバレル140との間に供給された材料を加熱する。ヒーター150の出力は、制御部60によって制御される。可塑化部120は、フラットスクリュー130、バレル140、およびヒーター150によって、材料を連通孔146に向かって搬送しながら加熱して、可塑化された造形材料を生成する。そして、可塑化部120は、生成された造形材料を連通孔146から流出させる。
【0030】
なお、Z軸方向からみて、ヒーター150の形状は、リング状であってもよい。また、ヒーター150は、バレル140ではなく、バレル140の下方に設けられていてもよい。
【0031】
ノズル160は、バレル140の下方に設けられている。ノズル160には、ノズル流路162が形成されている。ノズル流路162は、連通孔146に連通している。ノズル流路162には、連通孔146から造形材料が供給される。ノズル160の先端には、ノズル流路162と連通するノズル開口164が形成されている。図示の例では、ノズル開口164は、ノズル160の-Z軸方向の端に形成されている。ノズル160は、ノズル開口164から、ノズル流路162に供給された造形材料を、ステージ20に向けて吐出する。
【0032】
ステージ20は、
図1および
図2に示すように、ノズル160の下方に設けられている。ステージ20は、造形材料で構成された造形層が積層される造形面22を有している。造形面22は、ステージ20の上面である。なお、便宜上、
図1および
図2では、ステージ20を簡略化して図示している。また、ステージ20の詳細な構成については、後述する。
【0033】
位置変更部30は、ステージ20を支持している。位置変更部30は、吐出部10とステージ20との相対的な位置を変更する。図示の例では、位置変更部30は、ステージ20をX軸方向およびY軸方向に移動させることによって、X軸方向およびY軸方向において、ノズル160とステージ20との相対的な位置を変更する。さらに、位置変更部30は、吐出部10をZ軸方向に移動させることによって、Z軸方向において、ノズル160とステージ20との相対的な位置を変更する。
【0034】
位置変更部30は、例えば、第1電動アクチュエーター32と、第2電動アクチュエーター34と、第3電動アクチュエーター36と、を有している。第1電動アクチュエーター32は、ステージ20をX軸方向に移動させる。第2電動アクチュエーター34は、ステージ20をY軸方向に移動させる。第3電動アクチュエーター36は、吐出部10をZ軸方向に移動させる。
【0035】
なお、位置変更部30は、吐出部10とステージ20との相対的な位置を変更することができれば、その構成は、特に限定されない。位置変更部30は、例えば、ステージ20をZ軸方向に移動し、吐出部10をX軸方向およびY軸方向に移動させる構成であってもよい。または、位置変更部30は、ステージ20または吐出部10をX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に移動させる構成であってもよい。
【0036】
支持部40は、第3電動アクチュエーター36に接続されている。支持部40は、吐出部10を支持している。位置変更部30は、第3電動アクチュエーター36によって支持部40をZ軸方向に移動させることにより、吐出部10をZ軸方向に移動させる。
【0037】
加熱部50は、ステージ20よりも上方に設けられている。加熱部50は、支持部40に支持されている。図示はしないが、支持部40は、Y軸方向に延在する一対の支持椀を有し、加熱部50は、当該一対の支持椀に吊り下げられて支持されていてもよい。加熱部50は、位置変更部30によって、吐出部10と連動して移動される。加熱部50の形状は、例えば、プレート状である。加熱部50は、Z軸方向からみて、造形面22と重なっている。
【0038】
加熱部50には、
図2に示すように、貫通孔52が形成されている。貫通孔52は、加熱部50をZ軸方向に貫通している。三次元造形物の造形時において、貫通孔52に、吐出部10のノズル160が位置する。三次元造形物の造形時において、ノズル160のノズル開口164は、加熱部50よりも下方に位置する。加熱部50は、三次元造形物の造形時に、ノズル160のノズル開口164よりも上方に位置する。なお、図示はしないが、三次元造形物の造形時ではないときには、ノズル開口164は、加熱部50よりも上方に位置していてもよい。図示例では、貫通孔52は、2つの吐出部10に対応して、2つ形成されている。
【0039】
加熱部50は、例えば、プレート54と、ヒーター56と、断熱部材58と、を有している。
【0040】
プレート54は、造形面22と対向している。プレート54は、造形面22とヒーター56との間に設けられている。プレート54の材質は、例えば、アルミニウムである。
【0041】
ヒーター56は、プレート54上に設けられている。ヒーター56は、プレート54と断熱部材58との間に設けられている。ヒーター56の形状は、例えば、プレート状である。ヒーター56としては、例えば、ラバーヒーターを用いる。ヒーター56は、プレート54を介して、造形面22に積層された造形層を加熱する。ヒーター56の出力は、制御部60によって制御される。
【0042】
断熱部材58は、ヒーター56上に設けられている。断熱部材58は、例えば、支持部40に接続されている。断熱部材58としては、例えば、ロスリムボード(登録商標)を用いる。断熱部材58は、断熱部材58よりも上方に伝わるヒーター56の熱を低減できる。
【0043】
制御部60は、例えば、プロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースと、を有するコンピューターによって構成されている。制御部60は、例えば、主記憶装置に読み込んだプログラムをプロセッサーが実行することによって、種々の機能を発揮する。具体的には、制御部60は、吐出部10、位置変更部30、および加熱部50を制御する。なお、制御部60は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0044】
1.2. ステージ
図5は、三次元造形装置100のステージ20を模式的に示す斜視図である。
図6は、三次元造形装置100のステージ20を模式的に示す平面図である。ステージ20は、
図5よび
図6に示すように、例えば、支持台210と、載置部220と、造形ステージ230と、押し付け部材240と、押さえ部材250と、加熱部260と、を含む。ステージ20は、三次元造形物を載置するための三次元造形用ステージである。
【0045】
支持台210は、
図5に示すように、載置部220を支持している。支持台210は、例えば、第1板状部材212と、柱214と、第2板状部材216と、を有している。
【0046】
支持台210の第1板状部材212は、2つ設けられている。2つの第1板状部材212は、互いに離隔されている。第1板状部材212は、位置変更部30に固定されている。柱214は、第1板状部材212上に設けられている。柱214は、第2板状部材216を支持している。柱214は、例えば、Y軸方向の大きさがX軸方向およびZ軸方向よりも大きい直方体の形状を有している。第2板状部材216は、柱214上に設けられている。第2板状部材216は、2つの柱214に渡って設けられている。
【0047】
載置部220は、第2板状部材216上に設けられている。載置部220は、第2板状部材216と造形ステージ230との間に設けられている。図示の例では、載置部220は、第1載置部材221、第2載置部材222、第3載置部材223、第4載置部材224によって構成されている。載置部材221,222,223,224の各々は、第2板状部材216の四隅に設けられている。載置部材221,222,223,224は、互いに離隔されている。図示の例では、第2載置部材222は、第1載置部材221に対して対角線上に設けられている。第3載置部材223は、第1載置部材221の-X軸方向であって、第2載置部材222の-Y軸方向に設けられている。第4載置部材224は、第1載置部材221の+Y軸方向であって、第2載置部材222の+X軸方向に設けられている。載置部材221,222,223,224の形状は、例えば、直方体である。
【0048】
なお、図示はしないが、載置部220は、載置部材221,222,223,224が連続することによって形成された1つの載置部材によって構成されてもよいし、載置部材221,224が連続し、かつ載置部材222,223が連続することによって形成された2つの載置部材によって構成されていてもよい。
【0049】
載置部220は、平面度が調整された基準面226を有している。図示の例では、載置部220は、複数の基準面226を有している。基準面226は、載置部材221,222,223,224の上面である。図示の例では、載置部220は、基準面226として、第1基準面226aと、第2基準面226bと、第3基準面226cと、第4基準面226dと、を有している。第1基準面226aは、第1載置部材221の上面である。第2基準面226bは、第2載置部材222の上面である。第3基準面226cは、第3載置部材223の上面である。第4基準面226dは、第4載置部材224の上面である。
【0050】
載置部220の基準面226は、Z軸方向の高さが調整されている。例えば、位置変更部30のZ軸方向における公差、支持台210のZ軸方向における公差、および載置部220のZ軸方向における公差を調整することによって、基準面226の平面度が調整される。基準面226の平面度は、例えば、100μm以下であり、好ましくは50μm以下である。平面度は、例えば、「JIS0621-1984」に準拠して測定される。
【0051】
造形ステージ230は、載置部220の基準面226に載置されている。造形ステージ230は、基準面226と接している。造形ステージ230の形状は、プレート状である。造形ステージ230は、Z軸方向からみて、略四角形の形状を有している。Z軸方向は、造形面22に垂直な方向である。載置部220は、造形ステージ230の四隅を支持している。造形ステージ230の材質は、例えば、アルミニウムである。位置変更部30は、Z軸方向において加熱部50の少なくとも一部と造形ステージ230の少なくとも一部とが重なる範囲で、加熱部50と造形ステージ230との相対的な位置を変更する。
【0052】
造形ステージ230は、造形面22と、第1側面234と、第2側面236と、を有している。
【0053】
造形面22には、ノズル160から吐出された造形材料で構成される造形層が積層される。造形面22の形状は、Z軸方向からみて、例えば、四角形である。造形面22は、第1側面234と第2側面236との間に設けられている。造形面22には、複数の溝231が形成されている。図示の例では、溝231は、Y軸方向に延在している。複数の溝231は、X軸方向に並んでいる。複数の溝231によって、造形ステージ230と、造形面22に積層された造形層と、の密着性を向上できる。なお、溝231は、形成されていなくてもよい。
【0054】
造形面22は、Z軸方向からみて、第1角部232aと、第2角部232bと、第3角部232cと、第4角部232dと、を有している。Z軸方向からみて、第1角部232aは、第1基準面226aと重なっている。第2角部232bは、第2基準面226bと重なっている。第3角部232cは、第3基準面226cと重なっている。第4角部232dは、第4基準面226dと重なっている。
【0055】
第1側面234は、例えば、造形面22の+X軸方向に設けられている。第2側面236は、例えば、造形面22の-X軸方向に設けられている。第2側面236は、第1側面234の反対側の側面である。第1側面234および第2側面236は、ユーザーが造形ステージ230を把持するための把手238を構成している。
【0056】
第1側面234には、凹部235が形成されている。ここで、
図7は、ステージ20の凹部235近傍を模式的に示す斜視図である。なお、便宜上、
図7では、造形ステージ230および押し付け部材240以外の部材の図示を省略している。
【0057】
凹部235は、
図5~
図7に示すように、例えば、第1側面234の把手238に形成されている。凹部235は、把手238をZ軸方向に貫通している。凹部235は、Z軸方向からみて、造形面22に向かって幅が減少するテーパー形状を有している。図示の例では、-X軸方向に向かって幅が減少するテーパー形状を有している。
【0058】
押し付け部材240は、例えば、造形ステージ230の+X軸方向に設けられている。押し付け部材240は、造形面22に沿った方向において、造形ステージ230を押さえ部材250に押し付ける。図示の例では、押し付け部材240は、-X軸方向に向けて、造形ステージ230を押さえ部材250に押し付ける。押し付け部材240は、造形ステージ230を押さえ部材250に向けて付勢する。
【0059】
押し付け部材240は、例えば、基部242と、固定部244と、把持部245と、ばね246と、当接部248と、を有している。基部242の形状は、例えば、プレート状である。固定部244は、基部242上に固定されている。把持部245は、固定部244に接続されている。図示の例では、把持部245は、固定部244から+Y軸方向に延在している。把持部245は、ユーザーに把持される部分である。ばね246は、固定部244に固定されている。ばね246は、当接部248を造形ステージ230に向けて付勢する。これにより、押し付け部材240は、造形ステージ230を押さえ部材250に向けて付勢する。
【0060】
押し付け部材240の当接部248は、基部242上に設けられている。当接部248は、造形ステージ230と接している。当接部248は、凹部235に係合する係合部材249を有している。係合部材249は、凹部235に入り込んでいる。係合部材249の形状は、例えば、円柱である。なお、係合部材249の形状は、凹部235と係合できれば、特に限定されない。
【0061】
押さえ部材250は、例えば、造形ステージ230の-X軸方向に設けられている。押さえ部材250の形状は、例えば、円柱である。押さえ部材250は、第2側面236に接している。押さえ部材250は、第2側面236において、押し付け部材240によって押される造形ステージ230を押さえている。なお、押さえ部材250の形状は、造形ステージ230を押さえることができれば、特に限定されない。
【0062】
押さえ部材250は、例えば、複数設けられている。図示の例では、ステージ20は、押さえ部材250として、第1押さえ部材250aと、第2押さえ部材250bと、を含む。第1押さえ部材250aおよび第2押さえ部材250bは、互いに離隔されている。図示の例では、第1押さえ部材250aと第2押さえ部材250bとの間に、把手238が設けられている。-X軸方向からみて、凹部235は、第1押さえ部材250aと第2押さえ部材250bとの間に位置している。-X軸方向は、押し付け部材240の造形ステージ230に対する押し付け方向である。
【0063】
加熱部260は、
図5に示すように、支持台210と造形ステージ230との間に設けられている。加熱部260の形状は、プレート状である。加熱部260は、例えば、ラバーヒーターを含んで構成されている。加熱部260は、造形ステージ230を加熱する。加熱部260は、加熱部260の下に設けられた図示せぬ付勢部材によって、造形ステージ230に向けて付勢されていてもよい。この場合、円柱状である押さえ部材250の軸は、付勢部材によって造形ステージ230が上方に変位しないように、Z軸に対して傾斜していてもよい。また、押し付け部材240の当接部248は、付勢部材によって造形ステージ230が上方に変位しないように、Z軸に対して傾斜していてもよい。
【0064】
ステージ20には、
図5および
図6に示すように、センサー70が固定されている。三次元造形装置100は、センサー70を含む。センサー70は、位置変更部30によって、ステージ20と連動して移動される。センサー70は、加熱部50に接触する接触式のタッチセンサーである。センサー70は、加熱部50の下面に接触することにより、加熱部50の下面の平面度を測定する。図示の例では、センサー70は、1つだけ設けられている。
【0065】
1.3. 動作
図8は、三次元造形装置100の動作を説明するためのフローチャートである。具体的には、
図8は、制御部60の処理を説明するためのフローチャートである。ユーザーは、例えば、図示せぬ操作部を操作して、制御部60に処理を開始するための処理開始信号を出力する。操作部は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネルなどによって構成されている。制御部60は、処理開始信号を受けると処理を開始する。
【0066】
まず、制御部60は、
図8に示すように、ステップS1として、三次元造形物を造形するための造形データを取得する造形データ取得処理を行う。
【0067】
造形データは、例えば、材料貯留部110に貯留されている材料の種類、ステージ20に対する吐出部10の移動経路、吐出部10から吐出される造形材料の量などに関する情報を含む。
【0068】
造形データは、例えば、三次元造形装置100に接続されたコンピューターにインストールされたスライサーソフトに、形状データを読み込ませることによって作成される。形状データは、三次元CAD(Computer Aided Design)ソフトや三次元CG(Computer Graphics)ソフトなどを用いて作成された三次元造形物の目標形状を表すデータである。形状データとしては、例えば、STL(Standard Triangulated Language)形式やAMF(Additive Manufacturing File Format)などのデータを用いる。スライサーソフトは、三次元造形物の目標形状を所定の厚さの層に分割して、層ごとに造形データを作成する。造形データは、GコードやMコードなどによって表される。制御部60は、三次元造形装置100に接続されたコンピューターや、USB(Universal Serial Bus)メモリーなどの記録媒体から造形データを取得する。
【0069】
次に、制御部60は、ステップS2として、ステージ20の造形面22に、造形材料を吐出して造形層を形成する造形層形成処理を行う。
【0070】
具体的には、制御部60は、フラットスクリュー130とバレル140との間に供給された材料を可塑化して造形材料を生成させ、ノズル160から造形材料を吐出させる。制御部60は、例えば、造形層形成処理が終了するまで造形材料を生成させ続ける。
【0071】
ここで、
図9は、三次元造形装置100の造形層形成処理を説明するための断面図である。
【0072】
制御部60は、
図9に示すように、取得した造形データに基づいて、位置変更部30を制御して吐出部10とステージ20との相対的な位置を変化させつつ、吐出部10を制御してノズル160からステージ20に向けて造形材料を吐出させる。
【0073】
具体的には、造形層形成処理が開始される前、すなわち、第1層目の造形層である造形層L1の形成が開始される前では、ノズル160は、ステージ20の-X軸方向の端部よりも-X軸方向の初期位置に配置されている。造形層形成処理が開始されると、
図9に示すように、制御部60は、位置変更部30を制御することによって、例えば、ステージ20に対してノズル160を+X軸方向に相対移動させる。ノズル160がステージ20上を通過する際、ノズル160から造形材料が吐出される。これにより、造形層L1が形成される。
図9では、nを任意の自然数として、第n層目の造形層Lnまでを図示している。
【0074】
次に、制御部60は、
図8に示すように、ステップS3として、造形データに基づいて、全ての造形層の形成が完了したか否か判定する判定処理を行う。
【0075】
全ての造形層の形成が完了していないと判定した場合(ステップS3で「NO」)、制御部60は、処理をステップS2に戻す。制御部60は、ステップS3において、全ての造形層の形成が完了したと判定するまで、ステップS2とステップS3とを繰り返す。
【0076】
一方、全ての造形層の形成が完了したと判定した場合(ステップS3で「YES」)、制御部60は、処理を終了する。
【0077】
1.4. 作用効果
ステージ20は、平面度が調整された基準面226を有する載置部220を含む。さらに、ステージ20は、造形層が積層される造形面22と、凹部235が形成された第1側面234と、第1側面234とは反対側の第2側面236と、を有し、基準面226に載置された造形ステージ230を含む。さらに、ステージ20は、凹部235に係合する係合部材249を有し、造形面22に沿った方向において造形ステージ230を押し付ける押し付け部材240と、第2側面236において造形ステージ230を押さえる押さえ部材250と、を含む。
【0078】
そのため、ステージ20では、造形ステージ230が加熱された場合に、造形ステージ230は、X軸方向において、押し付け部材240の弾性によって係合部材249が後退して、熱膨張される。さらに、造形ステージ230は、Y軸方向において、凹部235の位置を中心に自由に熱膨張される。このように、ステージ20では、造形ステージ230が加熱されても熱膨張が遮られないため、造形面22に歪みが生じ難い。したがって、造形ステージ230の造形面22の平面度を小さくすることができる。すなわち、造形面22をより平坦にすることができる。造形面の平面度が大きいと、ノズルが造形ステージや造形層と衝突する場合がある。
【0079】
ステージ20では、押さえ部材250として、第1押さえ部材250aと、第2押さえ部材250bと、を含み、押し付け部材240の押し付け方向からみて、凹部235は、第1押さえ部材250aと第2押さえ部材250bとの間に位置する。そのため、ステージ20では、押し付け部材240で造形ステージ230を押し付けることによる造形ステージ230の回転を抑制できる。
【0080】
ステージ20では、造形面22に垂直な方向からみて、凹部235は、造形面22に向かって縮小するテーパー形状を有する。そのため、ステージ20では、係合部材249を凹部235に係合させて、押し付け部材240で造形ステージ230を押し付けるだけで造形ステージ230を所定の位置に、容易に設置できる。これにより、造形ステージ230の位置に対して、ユーザーの個人差が発生し難い。
【0081】
2. 三次元造形装置の変形例
2.1. 第1変形例
次に、本実施形態の第1変形例に係る三次元造形装置について、図面を参照しながら説明する。
図10は、本実施形態の第1変形例に係る三次元造形装置200を模式的に示す斜視図である。
図11は、本実施形態の第1変形例に係る三次元造形装置200を模式的に示す平面図である。
【0082】
以下、本実施形態の第1変形例に係る三次元造形装置200において、上述した本実施形態に係る三次元造形装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。このことは、後述する本実施形態の第2,第3変形例に係る三次元造形装置おいて、同様である。
【0083】
上述した三次元造形装置100では、
図5および
図6に示すように、1つのセンサー70を含んでいた。
【0084】
これに対し、三次元造形装置200では、
図10および
図11に示すように、複数のセンサー70を含む。さらに、三次元造形装置200は、複数の移動機構72を含む。
【0085】
センサー70は、移動機構72を介して、載置部220の周縁に固定されている。図示の例では、三次元造形装置200は、センサー70として、第1センサー70aと、第2センサー70bと、第3センサー70cと、第4センサー70dと、を含む。三次元造形装置200は、移動機構72として、第1移動機構72aと、第2移動機構72bと、第3移動機構72cと、第4移動機構72dと、を含む。
【0086】
第1センサー70aは、第1移動機構72aを介して、第1載置部材221に固定されている。第2センサー70bは、第2移動機構72bを介して、第2載置部材222に固定されている。第3センサー70cは、第3移動機構72cを介して、第3載置部材223に固定されている。第4センサー70dは、第4移動機構72dを介して、第4載置部材224に固定されている。第1センサー70aおよび第4センサー70dは、造形ステージ230の+X軸方向に位置している。第2センサー70bおよび第3センサー70cは、造形ステージ230の-X軸方向に位置している。
【0087】
移動機構72は、センサー70をZ軸方向に移動させる。移動機構72は、例えば、モーター、リニアガイドを含んで構成されている。第1移動機構72aは、第1センサー70aをZ軸方向に移動させる。第2移動機構72bは、第2センサー70bをZ軸方向に移動させる。第3移動機構72cは、第3センサー70cをZ軸方向に移動させる。第4移動機構72dは、第4センサー70dをZ軸方向に移動させる。
【0088】
制御部60は、移動機構72を制御する。制御部60は、第1センサー70aを加熱部50に接触させる場合、第1移動機構72aを制御して、第1センサー70aの上面を造形面22よりも上方に位置させ、移動機構72b,72c,72dを制御して、それぞれ、センサー70b,70c,70dの上面を造形面22よりも下方に位置させる。
【0089】
ここで、
図12は、加熱部50、センサー70、および造形ステージ230を模式的に示す平面図である。なお、便宜上、
図12では、加熱部50、センサー70、および造形ステージ230を簡略化して図示している。
【0090】
Z軸方向からみて、加熱部50の面積は、造形ステージ230の面積よりも大きい。そのため、センサー70を複数設けることにより、センサー70が1つしか設けられていない場合に比べて、加熱部50に対するステージ20の移動範囲を大きくしなくても、センサー70で加熱部50の全面の平面度を測定することが可能となる。これにより、位置変更部30の小型化を図ることができる。さらに、加熱部50が造形層やステージ20と衝突することなどによって加熱部50に異常が発生した場合に、センサー70が1つしか設けられていない場合に比べて、速やかに加熱部50の異常が発生した箇所の平面度を測定できる。
【0091】
複数のセンサー70は、加熱部50の同じ箇所を測定してもよい。当該箇所は、Z軸方向からみて、例えば、加熱部50の中心である。制御部60は、位置変更部30および移動機構72を制御して、複数のセンサー70に、加熱部50の同じ箇所を測定させてもよい。
【0092】
三次元造形装置200では、載置部220に固定され、加熱部50の平面度を測定する第1センサー70aおよび第2センサー70bを含む。そのため、三次元造形装置200では、第1センサー70aおよび第2センサー70bによって、加熱部50の平面度を広範囲で測定できる。さらに、上記のように、位置変更部30の小型化を図ることができる。さらに、上記のように、速やかに加熱部50の異常が発生した箇所の平面度を測定できる。加熱部の平面度が大きいと、造形層の温度分布が悪化したり、加熱部が造形層やステージと衝突したりする場合がある。
【0093】
三次元造形装置200では、第1センサー70aを造形面22に垂直な方向に移動させる第1移動機構72aと、第2センサー70bを造形面22に垂直な方向に移動させる第2移動機構72bと、を含む。センサー70a,70bは、加熱部50に接触する接触式のセンサーである。第1センサー70aで加熱部50の平面度を測定する場合、制御部60は、第1移動機構72aを制御して、第1センサー70aを造形面22よりも上方に位置させ、第2移動機構72bを制御して、第2センサー70bを造形面22よりも下方に位置させる。そのため、三次元造形装置200では、第1センサー70aを加熱部50に接触させ、第2センサー70bを加熱部50と離隔させることができる。これにより、第1センサーおよび第2センサーから同時に測定情報が送信されて、測定箇所と測定情報との相関がとれなくなることを抑制できる。なお、測定箇所と測定情報との相関がとれる場合は、第1センサー70aおよび第2センサー70bを同時に加熱部50に接触させてもよい。
【0094】
三次元造形装置200では、第1センサー70aおよび第2センサー70bは、加熱部50の同じ箇所を測定する。そのため、三次元造形装置200では、第1センサー70aと第2センサー70bとの測定誤差を検出できる。
【0095】
なお、
図13に示すように、複数のセンサー70は、載置部220の角に設けられていてもよい。複数のセンサー70は、X軸方向からみて造形面22と重ならず、かつ、Y軸方向からみて造形面22と重ならない位置に設けられていてもよい。これにより、加熱部50に対するステージ20の移動範囲をより狭くしても、センサー70で加熱部50の全面の平面度を測定することが可能となる。
【0096】
2.2. 第2変形例
次に、本実施形態の第2変形例に係る三次元造形装置について、図面を参照しながら説明する。
図14は、本実施形態の第2変形例に係る三次元造形装置300を模式的に示す斜視図である。
図15は、本実施形態の第2変形例に係る三次元造形装置300を模式的に示す
図14のXV-XV線断面図である。
【0097】
三次元造形装置300では、
図14および
図15に示すように、基準面226に凹部228が設けられている点において、上述した三次元造形装置100と異なる。
【0098】
凹部228は、複数の基準面226に対応して、複数設けられている。凹部228には、例えば、加熱部50と接する基準用治具80が嵌合する。基準用治具80は、
図15に示すように、凹部228に挿入される凸部82と、凸部82上に設けられた頭部84と、を有している。頭部84は、例えば、上方に向けて幅が小さくなる形状を有している。頭部84は、加熱部50と接する接触領域86を有している。接触領域86は、平坦な領域である。基準用治具80が凹部228に嵌合された状態で、接触領域86は、造形面22よりも上方に位置する。
【0099】
基準用治具80は、複数の凹部228に対応して、複数設けられる。複数の基準用治具80と、加熱部50と、を接触させることにより、造形面22と加熱部50の下面との平行度を小さくすることができる。すなわち、造形面22と加熱部50の下面とを、平行に近づけることができる。基準用治具80は、三次元造形物を造形する際には、凹部228から外される。
【0100】
三次元造形装置300では、第1基準面226aおよび第2基準面226bには、基準用治具80が嵌合する凹部228が設けられている。そのため、三次元造形装置300では、基準用治具80に、三次元造形装置300の部材を接触させることにより、当該部材と造形面22との平行度を小さくすることができる。具体的には、基準用治具80によって、造形面22と加熱部50の下面との平行度を小さくすることができる。造形面と加熱部の下面との平行度が大きいと、加熱部がステージや造形層と衝突する場合がある。
【0101】
なお、図示はしないが、基準面226には、凸部が設けられ、基準用治具80には、凸部と嵌合する凹部が設けられていてもよい。基準面226に設けられた凸部の先端は、造形面22よりも下方に位置する。
【0102】
2.3. 第3変形例
次に、本実施形態の第3変形例に係る三次元造形装置について説明する。
【0103】
上述した三次元造形装置100では、材料貯留部110に貯留される材料は、ABS樹脂であった。
【0104】
これに対し、本実施形態の第3変形例に係る三次元造形装置では、材料貯留部110に貯留される材料は、ABS樹脂以外の材料、または、ABS樹脂に他の成分が加えられた材料である。
【0105】
材料貯留部110に貯留される材料としては、熱可塑性を有する材料、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料とした材料を挙げることができる。ここで、「主材料」とは、三次元造形装置で造形される造形物の形状を形作っている中心となる材料を意味し、造形物において50質量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した材料には、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0106】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、汎用エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックが挙げられる。
【0107】
汎用エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM )、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0108】
スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が挙げられる。
【0109】
熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。熱可塑性を有する材料は、可塑化部120において、フラットスクリュー130の回転と、ヒーター150の加熱と、によって可塑化されて溶融した状態に転化される。また、そのように生成された造形材料は、ノズル160から堆積された後、温度の低下によって硬化する。熱可塑性を有する材料は、そのガラス転移点以上に加熱されて完全に溶融した状態でノズル160から吐出されることが望ましい。
【0110】
可塑化部120では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、金属材料を粉末状にした粉末材料に、造形材料の生成の際に溶融する成分が混合されて、可塑化部120に投入されることが望ましい。
【0111】
金属材料としては、例えば、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム (Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金、また、マルエージング鋼、ステンレス鋼、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金が挙げられる。
【0112】
可塑化部120においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料を主材料として用いることが可能である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックなどが挙げられる。
【0113】
材料貯留部110に貯留される金属材料やセラミック材料の粉末材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合した混合材料であってもよい。また、金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上述の熱可塑性樹脂、あるいは、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、可塑化部120において、その熱可塑性樹脂が溶融して流動性が発現されるものとしてもよい。
【0114】
材料貯留部110に貯留される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、溶剤を添加することもできる。溶剤としては、例えば、水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等が挙げられる。
【0115】
その他に、材料貯留部110に貯留される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、バインダーが添加されていてもよい。バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂或いはその他の合成樹脂またはPLA、PA、PPS、PEEK、あるいはその他の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0116】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0117】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成できる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0118】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0119】
三次元造形用ステージの一態様は、
平面度が調整された基準面を有する載置部と、
造形層が積層される造形面と、凹部が形成された第1側面と、前記第1側面とは反対側の第2側面と、を有し、前記基準面に載置された造形ステージと、
前記凹部に係合する係合部材を有し、前記造形面に沿った方向において前記造形ステージを押し付ける押し付け部材と、
前記第2側面において前記造形ステージを押さえる押さえ部材と、
を含む。
【0120】
この三次元造形用ステージによれば、造形ステージの造形面の平面度を小さくすることができる。
【0121】
三次元造形用ステージの一態様において、
前記押さえ部材として、第1押さえ部材と、第2押さえ部材と、を含み、
前記押し付け部材の押し付け方向からみて、前記凹部は、前記第1押さえ部材と前記第2押さえ部材との間に位置してもよい。
【0122】
この三次元造形用ステージによれば、押し付け部で造形ステージを押し付けることによる造形ステージの回転を抑制できる。
【0123】
三次元造形用ステージの一態様において、
前記造形面に垂直な方向からみて、前記凹部は、前記造形面に向かって縮小するテーパー形状を有してもよい。
【0124】
この三次元造形用ステージによれば、造形ステージを所定の位置に、容易に設置できる。
【0125】
三次元造形用ステージの一態様において、
前記載置部は、前記基準面として、第1基準面と、第2基準面と、を有し、
前記第1基準面および前記第2基準面には、基準用治具が嵌合する凹部または凸部が設けられてもよい。
【0126】
この三次元造形用ステージによれば、造形面と、基準用治具と接する部材と、の平行度を小さくすることができる。
【0127】
三次元造形装置の一態様は、
前記三次元造形用ステージの一態様と、
造形材料を前記三次元造形用ステージに向けて吐出するノズルと、
を含む。
【0128】
三次元造形装置の一態様において、
前記造形ステージよりも上方に設けられ、三次元造形物の造形時に前記ノズルのノズル開口よりも上方に位置し、前記造形層を加熱するプレート状の加熱部と、
前記造形面に垂直な方向において前記加熱部の少なくとも一部と前記造形ステージの少なくとも一部とが重なる範囲で、前記加熱部と前記造形ステージとの相対的な位置を変更する位置変更部と、
前記載置部に固定され、前記加熱部の平面度を測定する第1センサーおよび第2センサーと、
を含んでもよい。
【0129】
この三次元造形装置によれば、第1センサーおよび第2センサーによって、加熱部の平面度を広範囲で測定できる。
【0130】
三次元造形装置の一態様において、
前記第1センサーを前記造形面に垂直な方向に移動させる第1移動機構と、
前記第2センサーを前記造形面に垂直な方向に移動させる第2移動機構と、
前記第1移動機構および第2移動機構を制御する制御部と、
を含み、
前記第1センサーおよび前記第2センサーは、前記加熱部に接触する接触式のセンサーであり、
前記第1センサーで前記加熱部の平面度を測定する場合、前記制御部は、前記第1移動機構を制御して、前記第1センサーを前記造形面よりも上方に位置させ、前記第2移動機構を制御して、前記第2センサーを前記造形面よりも下方に位置させてもよい。
【0131】
この三次元造形装置によれば、第1センサーを加熱部に接触させ、第2センサーを加熱部と離隔させることができる。
【0132】
三次元造形装置の一態様において、
前記第1センサーおよび前記第2センサーは、前記加熱部の同じ箇所を測定してもよい。
【0133】
この三次元造形装置によれば、第1センサーと第2センサーとの測定誤差を検出できる。
【符号の説明】
【0134】
10…吐出部、10a…第1吐出部、10b…第2吐出部、20…ステージ、22…造形面、30…位置変更部、32…第1電動アクチュエーター、34…第2電動アクチュエーター、36…第3電動アクチュエーター、40…支持部、50…加熱部、52…貫通孔、54…プレート、56…ヒーター、58…断熱部材、60…制御部、70…センサー、70a…第1センサー、70b…第2センサー、70c…第3センサー、70d…第4センサー、72…移動機構、72a…第1移動機構、72b…第2移動機構、72c…第3移動機構、72d…第4移動機構、80…基準用治具、82…凸部、84…頭部、86…接触領域、100…三次元造形装置、110…材料貯留部、112…供給路、120…可塑化部、122…スクリューケース、124…駆動モーター、126…シャフト、130…フラットスクリュー、131…上面、132…溝形成面、133…側面、134…第1溝、135…中央部、136…接続部、137…材料導入部、140…バレル、142…対向面、144…第2溝、146…連通孔、150…ヒーター、160…ノズル、162…ノズル流路、164…ノズル開口、200…三次元造形装置、210…支持台、212…第1板状部材、214…柱、216…第2板状部材、220…載置部、221…第1載置部材、222…第2載置部材、223…第3載置部材、224…第4載置部材、226…基準面、226a…第1基準面、226b…第2基準面、226c…第3基準面、226d…第4基準面、228…凹部、230…造形ステージ、231…溝、232a…第1角部、232b…第2角部、232c…第3角部、232d…第4角部、234…第1側面、235…凹部、236…第2側面、238…把手、240…押し付け部材、242…基部、244…固定部、245…把持部、246…ばね、248…当接部、249…係合部材、250…押さえ部材、250a…第1押さえ部材、250b…第2押さえ部材、260…加熱部、300…三次元造形装置