(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140102
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】殺菌剤組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 37/20 20060101AFI20241003BHJP
A01N 25/30 20060101ALI20241003BHJP
A01N 25/04 20060101ALI20241003BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20241003BHJP
A61L 2/18 20060101ALI20241003BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20241003BHJP
A61L 9/14 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A01N37/20
A01N25/30
A01N25/04
A01P3/00
A61L2/18
A61L9/01 H
A61L9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051097
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】397056042
【氏名又は名称】セッツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】安井 美咲
(72)【発明者】
【氏名】堀田 美幸
(72)【発明者】
【氏名】村上 拡
(72)【発明者】
【氏名】大八木 伸
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
4H011
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058BB07
4C058CC06
4C058JJ08
4C058JJ24
4C180AA07
4C180CB01
4C180EB07X
4C180EB15X
4C180EB15Y
4C180EB17X
4C180EB21X
4C180EB22X
4C180EB26X
4C180EB26Y
4H011AA02
4H011BA05
4H011BB06
4H011BC03
4H011BC04
4H011DA14
(57)【要約】
【課題】優れた殺菌力と、殺菌力の経時的な安定性とが両立された、殺菌剤組成物を提供する。
【解決手段】下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する殺菌剤組成物であって、
(A)成分の含有率が10~92質量%であり、(B)成分の含有率が2~45質量%であり、(C)成分の含有率が4~88質量%である、殺菌剤組成物。
(A)脂肪酸アルカノールアミド及びポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種類
(B)カチオン界面活性剤及びカチオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種類
(C)水
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する殺菌剤組成物であって、
(A)成分の含有率が10~92質量%であり、(B)成分の含有率が2~45質量%であり、(C)成分の含有率が4~88質量%である、殺菌剤組成物。
(A)脂肪酸アルカノールアミド及びポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種類
(B)カチオン界面活性剤及びカチオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種類
(C)水
【請求項2】
下記(A)成分は、下記一般式(1)で表わされる、請求項1に記載の殺菌剤組成物。
【化1】
[一般式(1)中、R
1は、炭素数7~19のアルキル基又はアルケニル基であり、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のヒドロキシアルキル基、-(EO)n-H、-(PO)n-H、-(BO)n-Hであり、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシド、BOはブチレンオキシドを示し、nは1~40の整数である。]
【請求項3】
50℃の環境下で2週間保管した後、殺菌効果が維持されている、請求項1又は2に記載の殺菌剤組成物。
【請求項4】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを10質量%以上さらに含む、請求項1又は2に記載の殺菌剤組成物。
【請求項5】
1価アルコール、2価アルコール及び3価アルコールからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項1又は2に記載の殺菌剤組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の殺菌剤組成物を用意する工程と、
前記殺菌剤組成物を、質量基準で5倍から100倍に水で希釈して、殺菌剤を調製する工程と、
前記殺菌剤を、環境中に噴霧し、微生物を殺菌する殺菌工程と、
前記環境中から前記殺菌剤を水ですすぐ工程と、
を備える、環境中の微生物を殺菌する、殺菌方法。
【請求項7】
前記環境は、食品工場の施設内又は製造設備である、請求項6に記載の殺菌方法。
【請求項8】
前記殺菌工程を、0℃から40℃の環境で行う、請求項6又は7に記載の殺菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌剤組成物及び殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品工場の施設内又は製造設備、飲食店の厨房、医療設備などの除菌に使用される殺菌剤組成物として、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤を含む殺菌剤組成物が汎用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
食品工場の施設内又は製造設備、飲食店の厨房、医療設備などの除菌に使用される殺菌剤組成物には、優れた殺菌力に加えて、殺菌力の経時的な安定性も求められる。
【0005】
このような状況下、本発明は、優れた殺菌力と、殺菌力の経時的な安定性とが両立された、殺菌剤組成物を提供することを主な目的とする。さらに、本発明は、当該殺菌剤組成物を利用した殺菌方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、(A)脂肪酸アルカノールアミド及びポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種類と、(B)成分:カチオン界面活性剤及びカチオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種類と、(C)成分:水とを、所定の含有率で配合した殺菌剤組成物は、優れた殺菌力と、当該殺菌力の経時的な安定性とが両立されることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する殺菌剤組成物であって、
(A)成分の含有率が10~92質量%であり、(B)成分の含有率が2~45質量%であり、(C)成分の含有率が4~88質量%である、殺菌剤組成物。
(A)脂肪酸アルカノールアミド及びポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種類
(B)カチオン界面活性剤及びカチオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種類
(C)水
項2. 下記(A)成分は、下記一般式(1)で表わされる、項1に記載の殺菌剤組成物。
【化1】
[一般式(1)中、R
1は、炭素数7~19のアルキル基又はアルケニル基であり、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のヒドロキシアルキル基、-(EO)n-H、-(PO)n-H、-(BO)n-Hであり、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシド、BOはブチレンオキシドを示し、nは1~40の整数である。]
項3. 50℃の環境下で2週間保管した後、殺菌効果が維持されている、項1又は2に記載の殺菌剤組成物。
項4. ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを10質量%以上さらに含む、項1~3のいずれか1項に記載の殺菌剤組成物。
項5. 1価アルコール、2価アルコール及び3価アルコールからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含む、項1~4のいずれか1項に記載の殺菌剤組成物。
項6. 項1~5のいずれか1項に記載の殺菌剤組成物を用意する工程と、
前記殺菌剤組成物を、質量基準で5倍から100倍に水で希釈して、殺菌剤を調製する工程と、
前記殺菌剤を、環境中に噴霧し、微生物を殺菌する殺菌工程と、
前記環境中から前記殺菌剤を水ですすぐ工程と、
を備える、環境中の微生物を殺菌する、殺菌方法。
項7. 前記環境は、食品工場の施設内又は製造設備である、項6に記載の殺菌方法。
項8. 前記殺菌工程を、0℃から40℃の環境で行う、項6又は7に記載の殺菌方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた殺菌力と、殺菌力の経時的な安定性とが両立された、殺菌剤組成物を提供することができる。さらに、本発明によれば、当該殺菌剤組成物を利用した殺菌方法を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の殺菌剤組成物は、下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する殺菌剤組成物であって、(A)成分の含有率が10~92質量%であり、(B)成分の含有率が2~45質量%であり、(C)成分の含有率が4~88質量%であることを特徴とする。
(A)脂肪酸アルカノールアミド及びポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種類
(B)カチオン界面活性剤及びカチオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種類
(C)水
【0010】
本発明の殺菌剤組成物は、このような構成を備えていることにより、優れた殺菌力と、殺菌力の経時的な安定性とが両立されている。従って、本発明の殺菌剤組成物は、例えば、食品工場の施設内又は製造設備、飲食店の厨房、医療設備などの除菌用途に好適に使用することができる。例えば、食品工場の施設内又は製造設備などにおいては、食品と共に微生物(例えば、一般生菌、大腸菌群、大腸菌などの細菌)が付着することがある。本発明の殺菌剤組成物は、優れた殺菌力と、殺菌力の経時的な安定性とが両立されているため、これらの施設、設備の除菌に好適であり、さらに、長期間にわたって殺菌剤組成物を保存した後も、殺菌剤として好適に使用することができる。本発明の殺菌剤組成物は、例えば、50℃の環境下で2週間保管した後にも、殺菌効果が維持されている。具体的には、製造直後の殺菌剤に微生物菌液を接種し3分間接触させた後の生菌数を測定した結果、好適な組成物では一般生菌数が3桁以上、より好ましくは4桁以上減少する(対数減少値が3以上、より好ましくは4以上となる)のに対し、不適な組成物では一般生菌数の減少がほとんど見られない。同様に50℃環境下で2週間保管した殺菌剤に微生物菌液を接種し、3分間接触させた後の生菌数を測定した結果、好適な組成物では一般生菌数が3桁以上、より好ましくは4桁以上減少するのに対し、不適な組成物では一般生菌数の減少がほとんど見られない。また、本発明の殺菌剤組成物は、優れた殺菌力と、殺菌力の経時的な安定性とが両立されていることから、洗浄剤としても好適に使用することができる。
【0011】
後述の通り、本発明の殺菌剤組成物は、そのまま殺菌剤として使用することもできるし、本発明の殺菌剤組成物を殺菌剤原液とし、用時に殺菌剤原液を水で希釈して殺菌剤として使用してもよい。
【0012】
以下、本発明の殺菌剤組成物、当該殺菌剤組成物を利用した殺菌方法について、詳述する。なお、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。複数の下限値と複数の上限値が別個に記載されている場合、任意の下限値と上限値を選択し、「~」で結ぶことができるものとする。
【0013】
1.殺菌剤組成物
本発明の殺菌剤組成物は、少なくとも、(A)成分として脂肪酸アルカノールアミド及びポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種類、(B)成分としてカチオン界面活性剤及びカチオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種類、並びに(C)成分として水を含む。さらに、本発明の殺菌剤組成物において、(A)成分の含有率は10~92質量%の範囲であり、(B)成分の含有率は2~45質量%の範囲であり、(C)成分の含有率は4~88質量%の範囲である。本発明の殺菌剤組成物において、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の含有率が、それぞれ、前記範囲を満たし、かつ、本発明の効果を阻害しないことを限度として、他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0014】
(A成分)
本発明の殺菌剤組成物において、(A)成分として脂肪酸アルカノールアミド及びポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミドは、ノニオン界面活性剤として機能する成分である。
【0015】
本発明の効果をより好適に発揮する観点から、(A)成分は、下記一般式(1)で表わされるものが好ましい。
【0016】
【0017】
一般式(1)中、R1は、炭素数7~19のアルキル基又はアルケニル基である。R1におけるアルキル基、アルケニル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。なかでも、R1は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。本発明の効果をより好適に発揮する観点から、R1は、好ましくは炭素数9~17であり、より好ましくは炭素数11~15である。また、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のヒドロキシアルキル基、-(EO)n-H、-(PO)n-H、-(BO)n-Hである。EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシド、BOはブチレンオキシドを示す。本発明の効果をより好適に発揮する観点から、好ましくは、R2が-(EO)n-H又は-(PO)n-H、R3が水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のヒドロキシアルキル基、又は-(EO)n-Hであり、より好ましくは、R2が-(EO)n-H、R3が水素原子である。また、nは1~40の整数であり、本発明の効果をより好適に発揮する観点から、好ましくは1~30の整数であり、より好ましくは1~20の整数であり、さらに好ましくは1~11の整数である。
【0018】
ポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミドの具体例としては、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド;ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、ミリスチン酸モノエタノールアミド、パルミチン酸モノエタノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、イソステアリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド等の脂肪酸モノアルカノールアミド;ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、パルミチン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、イソステアリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジイソプロパノールアミド等の脂肪酸ジアルカノールアミド;ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド、ポリオキシプロピレンヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミドなどが挙げられる。これらの中でも、特にポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド、ポリオキシプロピレンヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミドが好適である。ポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミドとしては、公知のものを使用することができ、市販品を使用することもできる。ポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミドの市販品としては、川研ファインケミカル社製の商品名アミゼット2C、アミゼット5C、アミゼット10Cなどのポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド;アミゾールFDE、アミコールCDE-1、スタホームDF-4などのヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド;アミノーン C-11Sなどのヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド;アミゼット1PCなどのポリオキシプロピレンヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミドなどが挙げられる。なお、「アミゼット」、「アミゾール」は川研ファインケミカル株式会社の登録商標であり、「アミノーン」は花王株式会社の登録商標である。本発明の殺菌剤組成物に含まれるポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミドは、1種類のみであってもよいし、2種類以上であってよい。
【0019】
ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミドにおけるエチレンオキサイドの付加モル数は、好ましくは1~30、より好ましくは1~20、さらに好ましくは1~11である。
【0020】
本発明の殺菌剤組成物において、(A)成分の含有率は、10~92質量%の範囲内であればよいが、本発明の効果をより好適に発揮する観点から、好ましくは12質量%以上、より好ましくは13.5質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下であり、好ましい範囲としては、12~80質量%程度、12~70質量%程度、12~60質量%程度、13.5~80質量%程度、13.5~70質量%程度、13.5~60質量%程度、15~80質量%程度、15~70質量%程度、15~60質量%程度が挙げられる。
【0021】
(B成分)
(B)成分は、カチオン界面活性剤及びカチオン性ポリマーの少なくとも一方である。
【0022】
カチオン界面活性剤、カチオン性ポリマーとしては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等のジアルキルジメチルアンモニウム塩、トリアルキルモノメチルアンモニウム塩;塩化ポリ(N,N‘-ジメチル-3,5-メチレンピペリジニウム)、塩化セチルピリジニウム等のアルキルピリジニウム塩;アルキル四級アンモニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモリホニウム塩、POE-アルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウム、ポリヘキサメチレンビグアナイド等のビグアナイド系化合物等が挙げられる。本発明の殺菌剤組成物に含まれるカチオン界面活性剤及びカチオン性ポリマーは、それぞれ、1種類のみであってもよいし、2種類以上であってよい。
【0023】
本発明の殺菌剤組成物において、(B)成分の含有率は、2~45質量%の範囲内であればよいが、本発明の効果をより好適に発揮する観点から、好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは3.5質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%程度であり、好ましい範囲としては、2~30質量%程度、2~20質量%程度、2~10質量%程度、2.5~40質量%程度、2.5~30質量%程度、2.5~20質量%程度、2.5~10質量%程度、3~40質量%程度、3~30質量%程度、3~20質量%程度、3~10質量%程度、3.5~40質量%程度、3.5~30質量%程度、3.5~20質量%程度、3.5~10質量%程度が挙げられる。(B)成分が2%以下では殺菌力が発揮されにくく、45%以上では経済性の観点から好ましくない。
【0024】
(C成分)
(C)成分は、水である。
【0025】
水としては、特に制限されず、水道水などを使用することができる。
【0026】
本発明の殺菌剤組成物において、(C)成分の含有率は、4~88質量%の範囲内であればよいが、本発明の効果をより好適に発揮する観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下であり、好ましい範囲としては、5~80質量%程度、5~70質量%程度、5~60質量%程度、10~80質量%程度、10~70質量%程度、10~60質量%程度、15~80質量%程度、15~70質量%程度、15~60質量%程度が挙げられる。
【0027】
(他の成分)
本発明の殺菌剤組成物は、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルカリ成分、溶剤、両性界面活性剤などが挙げられる。なお、本発明の殺菌剤組成物は、本発明効果を発揮する上で、アルカリ成分を含む必要が無く、アルカリ成分を含まないことが好ましい。殺菌剤組成物に他の成分が含まれる場合、その含有率としては、80質量%以下であり、好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下である。
【0028】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおいて、ポリオキシアルキレンのオキシアルキレン部分としては、特に制限されないが、本発明の効果をより好適に発揮する観点から、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシドからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましく、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを含んでいることがさらに好ましく、エチレンオキシドを含んでいることがさらに好ましい。特に、ポリオキシアルキレンは、ポリオキシエチレンであることが好ましい。
【0029】
また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおいて、ポリオキシアルキレンの繰り返し単位の数(オキシアルキレン基の数)としては、特に制限されないが、本発明の効果をより好適に発揮する観点から、好ましくは2~10程度、より好ましくは2~9程度、さらに好ましくは3~7程度が挙げられる。
【0030】
また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおいて、アルキルエーテル部分の炭素数としては、特に制限されないが、本発明の効果をより好適に発揮する観点から、好ましくは5~20程度、より好ましくは6~18程度、さらに好ましくは8~16程度が挙げられる。
【0031】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの中でも、特に、ポリオキシエチレンアルキル(C10~C14)エーテルが好ましい。
【0032】
本発明の殺菌剤組成物に含まれるポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、1種類のみであってもよいし、2種類以上であってよい。
【0033】
本発明の殺菌剤組成物において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルについても、ノニオン界面活性剤として機能する成分である。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、公知のものを使用することができ、市販品を使用することもできる。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの市販品としては、日本触媒社製の商品名ソフタノール50、ソフタノール90、ソフタノール120、ソフタノールEP7085、ソフタノールEP9050、ソフタノール30、ソフタノール70、青木油脂社製のファインサーフD-1303、ブラウノンEL1505、ファインサーフTD-50などが挙げられる。なお、「ソフタール」は日本触媒株式会社の登録商標である。
【0034】
本発明の殺菌剤組成物がポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む場合、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの含有率としては、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下であり、好ましい範囲としては、10~60質量%程度、10~55質量%程度、10~50質量%程度、20~60質量%程度、20~55質量%程度、20~50質量%程度が挙げられる。
【0035】
アルカリ成分としては、特に制限されず、公知の殺菌剤に配合されているものを用いることができる。
【0036】
アルカリ成分の具体例としては、例えば、エタノールアミンなどのアミン化合物が挙げられる。エタノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。アルカリ成分は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0037】
本発明の殺菌剤組成物にアルカリ成分が含まれる場合、その含有率としては、20質量%以下であり、好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。前記のとおり、本発明の殺菌剤組成物は、本発明効果を発揮する上で、アルカリ成分を含む必要が無く、アルカリ成分を含まないことが好ましい。
【0038】
溶剤としては、特に制限されず、公知の殺菌剤に配合されているものを用いることができる。
【0039】
溶剤としては、1価アルコール、2価アルコール、3価アルコールなどのアルコール類が挙げられ、具体例としては、エタノール、プロパノールなどの炭素数1~3のアルコール化合物;エチレングリコール、プロピレングリコールなどの炭素数1~3のアルキレングリコール;ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。溶剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0040】
本発明の殺菌剤組成物に溶剤が含まれる場合、その含有率としては、20質量%以下であり、好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0041】
本発明の殺菌剤組成物を殺菌剤として利用する際、例えば殺菌剤組成物を環境中に噴霧し、除菌対象とする物品の表面に殺菌剤組成物を付着させて殺菌を行う。本発明の殺菌剤組成物は、そのまま殺菌剤として使用することもできるし、本発明の殺菌剤組成物を殺菌剤原液とし、用時に殺菌剤原液を水で希釈して殺菌剤として使用することもできる。除菌対象とする物品の表面は、硬質表面であることが好ましい。
【0042】
本発明の殺菌剤組成物を殺菌剤原液とする場合には、殺菌剤原液を用時に水で希釈して殺菌剤として用いる。具体的には、殺菌剤原液を、質量基準で5倍から100倍に水で希釈して、殺菌剤を調製する。
【0043】
殺菌剤原液の希釈倍率は、殺菌剤組成物の組成に応じて適宜調製することができ、殺菌剤原液中の水の含有率が例えば20質量%以下であれば、希釈倍率は質量基準で5倍から100倍程度である。当該希釈倍率は、質量基準で、好ましくは10倍から70倍、より好ましくは10倍から60倍、さらに好ましくは15倍から55倍、特に好ましくは20倍から50倍である。
【0044】
本発明の殺菌剤組成物は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分、他の成分(例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルカリ成分、溶剤、両性界面活性剤など)を混合することによって調製することができる。
【0045】
殺菌剤を調製する際の環境温度は、好ましくは0~40℃程度、より好ましくは10~30℃程度が挙げられる。なお、食品加工工場は、低温環境を保つことが求められる場合も多く、そのような場合には、環境温度は、例えば5~20℃程度とすることができる。
【0046】
本発明の殺菌剤組成物の殺菌対象となる微生物としては、例えば一般生菌、大腸菌群、大腸菌などの細菌が挙げられる。
【0047】
2.殺菌方法
本発明の殺菌方法は、本発明の殺菌剤組成物を利用した殺菌方法である。本発明の殺菌方法は、本発明の殺菌剤組成物を用意する工程1と、殺菌剤組成物を、質量基準で5倍から100倍に水で希釈して、殺菌剤を調製する工程2と、殺菌剤を、環境中に噴霧し、微生物を殺菌する殺菌工程3と、環境中から殺菌剤を水ですすぐ工程4と、を備える、環境中の微生物を殺菌する方法である。
【0048】
(工程1)
工程1では、本発明の殺菌剤組成物を用意する。本発明の殺菌剤組成物は、前記の通り、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する殺菌剤組成物であって、(A)成分の含有率が10~92質量%であり、(B)成分の含有率が2~45質量%であり、(C)成分の含有率が4~88質量%である。前記の通り、本発明の殺菌剤組成物は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分、他の成分(例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルカリ成分、溶剤、両性界面活性剤など)を混合することによって調製することができる。本発明の殺菌剤組成物の詳細については、前述の通りである。
【0049】
(工程2)
工程2では、工程1で用意した殺菌剤組成物を、質量基準で5倍から100倍に水で希釈して、殺菌剤を調製する工程を行う。すなわち、工程2においては、本発明の殺菌剤組成物を殺菌剤原液とし、水で希釈して殺菌剤を調製してから、当該殺菌剤によって微生物を殺菌する方法である。前述の通り、殺菌剤組成物に予め水を配合して殺菌剤とすれば、殺菌剤組成物を水で希釈して殺菌剤とする工程2を省略することができる。
【0050】
殺菌剤組成物(殺菌剤原液)の希釈倍率は、質量基準で5倍から100倍であればよいが、微生物をより効率的に殺菌可能とする観点から、希釈倍率は、質量基準で、好ましくは10倍から70倍、より好ましくは10倍から60倍、さらに好ましくは15倍から55倍、特に好ましくは20倍から50倍である。
【0051】
水としては、特に制限されず、水道水などを使用することができる。
【0052】
殺菌液は、殺菌剤組成物(殺菌剤原液)と水を混合し、攪拌することで容易に調製することができる。
【0053】
殺菌剤を調製する際の環境温度は、後述の工程3の殺菌工程と同様とすることができる。
【0054】
(工程3)
工程3では、工程2で調製した殺菌剤を、環境中に噴霧し、微生物を殺菌する殺菌工程を行う。
【0055】
本発明の殺菌方法が殺菌対象とする環境は、特に制限されず、例えば、食品工場の施設内又は製造設備が特に好適である。
【0056】
殺菌対象となる微生物としては、例えば一般生菌、大腸菌群、大腸菌などの細菌が挙げられる。
【0057】
殺菌工程を行う際の環境温度としては、特に制限されないが、微生物を効率的に殺菌する観点から、好ましくは0~40℃程度、より好ましくは10~30℃程度が挙げられる。なお、食品加工工場は、低温環境を保つことが求められる場合も多く、そのような場合には、環境温度は、例えば5~20℃程度とすることができる。
【0058】
また、殺菌工程においては、殺菌剤を除菌対象物品の表面(例えば硬質表面)に接触させればよいが、当該表面に付着した微生物をより効率的に殺菌可能とする観点から、殺菌剤を表面に接触させた状態を、例えば1~30分間程度、好ましくは5~20分間程度保持することが好ましい。
【0059】
(工程4)
工程4では、工程3で噴霧した殺菌剤を水ですすぐ工程を行う。
【0060】
本発明の殺菌剤は、水で好適にすすぐことができる。水ですすぐ時間は特に制限されず、殺菌剤が十分に取り除かれる時間とすればよい。水としては、特に制限されず、水道水などを使用することができる。また、殺菌剤を水ですすぐ際の水の温度としては、特に制限されず、例えば5~60℃程度、好ましくは20~50℃程度が挙げられる。
【0061】
水ですすぐ際の環境温度は、工程3の殺菌工程と同様とすることができる。
【0062】
工程4の後には、必要に応じて、水の拭き取りや、乾燥を行う。
【0063】
3.殺菌剤の製造方法
本発明の殺菌方法に用いるための殺菌剤の製造方法は、本発明の殺菌剤組成物を用意する工程1と、当該殺菌剤組成物を、質量基準で5倍から100倍に水で希釈して、殺菌剤を調製する工程2とを含むことを特徴としている。工程1及び工程2の詳細については、前記の「2.殺菌方法」の欄で説明したとおりである。
【実施例0064】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0065】
実施例及び比較例で使用した各原料の詳細は、以下の通りである。
アミゼット2C:川研ファインケミカル社製(組成:ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド(EO=3))
ソフタノール50:日本触媒社製(組成:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(EO=5、C12~14、第2級アルコール))
ソフタノール120:日本触媒社製(組成:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(EO=12、C12~14、第2級アルコール))
アミゾールFDE:川研ファインケミカル社製(組成:ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド)
アミノーンC-11S:花王社製(組成:ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド)
アミゼット1PC:川研ファインケミカル社製(組成:ポリオキシプロピレンヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミド(1P.O.))
カチオンG-50:三洋化成工業社製(組成:51%塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム)
バーダック2280G:アークサーダジャパン社製(組成:80%塩化ジデシルジメチルアンモニウム)
バーダック26:アークサーダジャパン社製(組成:70%N,N-ジデシル-N-メチル-ポリ(オキシエチル)アンモニウムプロピオネート)
PROXEL IB:アークサーダジャパン社製(組成:20%ポリヘキサメチレンビグアナイド)
プロピレングリコール:AGC社製(組成:プロピレングリコール)
DPG-FC:(AGC社製 ジプロピレングリコール)
エタノール:(合同酒精社製のエタノール(純度95%))
【0066】
[殺菌剤組成物の調製]
実施例1~22及び比較例1~4
実施例1~22及び比較例1~4の殺菌剤組成物として、それぞれ、表1~4に記載の組成(質量部)となるようにして、各成分を混合して殺菌剤組成物を調製した。例えば実施例1では、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミドとしての「アミゼット2C」10質量部と、カチオン界面活性剤としての「カチオンG-50」4質量部と、水(バランス量:86質量部)を混合して、実施例1の殺菌剤組成物を調製した。
【0067】
<殺菌力評価>
殺菌剤組成物を調製後、翌日に評価を実施した。滅菌生理食塩水に大腸菌(NBRC3315)を懸濁し、菌懸濁液を作成した。菌懸濁液0.1mLと各殺菌剤をそれぞれ20倍に希釈した溶液0.9mLを混合し、室温で3分間接触させた。3分後、混合液0.5mLをLP希釈液4.5mLで10倍希釈し、殺菌剤を不活化させ、さらに10倍段階希釈系列を作製した。この希釈系列をペトリフィルムACプレートに1mLを滴下し、35℃で48時間培養し、ペトリフィルム上の観察可能なコロニーを計測した。殺菌力の評価は大腸菌の対数減少値で計算しLog10A-Log10B=Cとした。
A:初期菌数(CFU/mL)
B:薬剤接触3分後の菌数(CFU/mL)
C:対数減少値
【0068】
(殺菌力の評価基準)
◎:対数減少値が4以上
○:対数減少値が3以上4未満
△:対数減少値が2以上3未満
×:対数減少値が2未満
【0069】
<殺菌力の経時的安定性評価>
殺菌剤組成物を調製後、50℃の恒温槽で2週間保存後に評価を実施した。評価時は殺菌剤を室温(25℃)に戻し評価を行った。評価方法は前述の<殺菌力評価>と同様の方法で行った。
【0070】
殺菌力の経時的安定性の評価基準は、以下の通りである。結果を表1~4に示す。
(殺菌力の経時的安定性の評価基準)
◎:対数減少値が4以上
○:対数減少値が3以上4未満
△:対数減少値が2以上3未満
×:対数減少値が2未満
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
表1~4中に記載の各成分の組成の数値は、純分換算値である。