(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140108
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241003BHJP
B41J 2/205 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 451
B41J2/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051106
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】上甲 拓巳
(72)【発明者】
【氏名】境原 瞬
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐也
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056EA08
2C056EB27
2C056EC07
2C056EC72
2C056ED01
2C056FA10
2C057AF25
2C057AL36
2C057AM15
2C057AN01
2C057CA01
(57)【要約】
【課題】主走査方向の交差方向に連続する筋状の濃度むらを抑制する。
【解決手段】印刷装置は、媒体へ液体を吐出可能な複数のノズルを有する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドを搭載し、所定の主走査方向に沿って往復移動可能なキャリッジと、前記印刷ヘッドによる液体の吐出を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記主走査方向に沿う前記キャリッジの移動に伴う前記印刷ヘッドによる液体の吐出動作である主走査により、前記媒体へテストパターンを印刷し、前記テストパターンの印刷結果において前記主走査方向と交差する交差方向を向く濃度むらが発生している前記主走査方向の位置であるむら位置を取得し、前記印刷ヘッドによる前記むら位置に対する液体の吐出量を、前記濃度むらに応じて補正する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体へ液体を吐出可能な複数のノズルを有する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを搭載し、所定の主走査方向に沿って往復移動可能なキャリッジと、
前記印刷ヘッドによる液体の吐出を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記主走査方向に沿う前記キャリッジの移動に伴う前記印刷ヘッドによる液体の吐出動作である主走査により、前記媒体へテストパターンを印刷し、
前記テストパターンの印刷結果において前記主走査方向と交差する交差方向を向く濃度むらが発生している前記主走査方向の位置であるむら位置を取得し、
前記印刷ヘッドによる前記むら位置に対する液体の吐出量を、前記濃度むらに応じて補正する、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記むら位置に対する液体の吐出量を増加させる補正を行う場合は、前記主走査方向において前記むら位置に隣接する位置のうち少なくとも一方の位置に対する前記印刷ヘッドによる液体の吐出量を減少させ、
前記むら位置に対する液体の吐出量を減少させる補正を行う場合は、前記主走査方向において前記むら位置に隣接する位置のうち少なくとも一方の位置に対する前記印刷ヘッドによる液体の吐出量を増加させる、ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
複数の前記ノズルはそれぞれ、液体のドットであって複数のサイズのドットを吐出可能であり、
前記制御部は、
前記むら位置に対する液体の吐出量を増加させる補正を行う場合に、前記印刷ヘッドによる液体の吐出量を規定した印刷データにおける、前記むら位置に対応して複数の画素が前記交差方向に並ぶ画素列が、複数の前記サイズのうち最大サイズのドットの吐出を規定していれば、前記主走査方向において前記むら位置に隣接する位置に対する前記印刷ヘッドによる液体の吐出量を増加させ、
前記むら位置に対する液体の吐出量を減少させる補正を行う場合に、前記印刷データにおける、前記むら位置に対応する前記画素列が前記ドットの非吐出を規定していれば、前記主走査方向において前記むら位置に隣接する位置に対する前記印刷ヘッドによる液体の吐出量を減少させる、ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
複数の前記ノズルはそれぞれ、液体のドットであって複数のサイズのドットを吐出可能であり、
前記制御部は、前記むら位置に対する液体の吐出量を増加させる補正を行う場合に、前記印刷ヘッドによる液体の吐出量を規定した印刷データにおける、前記むら位置に対応して複数の画素が前記交差方向に並ぶ画素列を対象として、画素毎の前記ドットのサイズをより大きなサイズへ変更する補正を前記交差方向に沿って100%よりも低い所定頻度で行う、ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記印刷データにおける、前記画素列に隣接して複数の画素が前記交差方向に並ぶ隣接画素列のうち、前記画素列の前記ドットのサイズをより大きなサイズへ変更する補正をしない画素に隣接する画素を対象として、前記ドットのサイズをより大きなサイズへ変更する補正を行う、ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記主走査方向におけるサイズが異なる前記媒体毎に、前記テストパターンの印刷および前記むら位置の取得を行い、
第1の前記媒体への印刷を行う場合、第1の前記媒体の前記主走査方向におけるサイズに対応する前記むら位置に対する液体の吐出量を、前記濃度むらに応じて補正する、ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項7】
媒体へ液体を吐出可能な複数のノズルを有する印刷ヘッドを制御して印刷を行う印刷方法であって、
所定の主走査方向に沿う前記印刷ヘッドの移動に伴う前記印刷ヘッドによる液体の吐出動作である主走査により、前記媒体へテストパターンを印刷するテストパターン印刷工程と、
前記テストパターンの印刷結果において前記主走査方向と交差する交差方向を向く濃度むらが発生している前記主走査方向の位置であるむら位置を取得するむら位置取得工程と、
前記印刷ヘッドによる前記むら位置に対する液体の吐出量を、前記濃度むらに応じて補正する補正工程と、を備えることを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷ヘッドを主走査方向に移動させながら印刷ヘッドが複数のノズルから液体を媒体へ吐出して印刷を行うインクジェットプリンターが知られている。このようなプリンターによれば、主走査方向に沿って並ぶ複数のドットから構成されるラスターラインが主走査方向に交差する交差方向に複数並ぶことにより、媒体に画像が印刷される。
【0003】
従来、前記交差方向における濃度のばらつき、つまりラスターライン毎の濃度を補正する補正値を設定し、補正値に基づき補正された濃度となるように、対応するラスターラインのドットを形成する処理が行われていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の印刷ヘッドを用いた印刷結果においては、前記交差方向に連続する筋状の濃度むらが発生することもあった。このような濃度むらを抑制するための改善が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
印刷装置は、媒体へ液体を吐出可能な複数のノズルを有する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドを搭載し、所定の主走査方向に沿って往復移動可能なキャリッジと、前記印刷ヘッドによる液体の吐出を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記主走査方向に沿う前記キャリッジの移動に伴う前記印刷ヘッドによる液体の吐出動作である主走査により、前記媒体へテストパターンを印刷し、前記テストパターンの印刷結果において前記主走査方向と交差する交差方向を向く濃度むらが発生している前記主走査方向の位置であるむら位置を取得し、前記印刷ヘッドによる前記むら位置に対する液体の吐出量を、前記濃度むらに応じて補正する。
【0007】
媒体へ液体を吐出可能な複数のノズルを有する印刷ヘッドを制御して印刷を行う印刷方法は、所定の主走査方向に沿う前記印刷ヘッドの移動に伴う前記印刷ヘッドによる液体の吐出動作である主走査により、前記媒体へテストパターンを印刷するテストパターン印刷工程と、前記テストパターンの印刷結果において前記主走査方向と交差する交差方向を向く濃度むらが発生している前記主走査方向の位置であるむら位置を取得するむら位置取得工程と、前記印刷ヘッドによる前記むら位置に対する液体の吐出量を、前記濃度むらに応じて補正する補正工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】媒体と印刷ヘッドとの関係性を上方からの視点により示す図。
【
図3】本実施形態の印刷方法を示すフローチャート。
【
図4】ステップS100で印刷されたテストパターンの例を示す図。
【
図5】ステップS120の補正を伴う印刷結果としてのテストパターンの例を示す図。
【
図6】第2実施形態におけるステップS120の補正を伴う印刷結果としてのテストパターンの例を示す図。
【
図7】第3実施形態におけるステップS120の補正を説明するための図。
【
図8】第4実施形態におけるステップS120の補正を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお各図は、本実施形態を説明するための例示に過ぎない。各図は例示であるため、比率や形状や濃淡が正確でなかったり、互いに整合していなかったり、一部が省略されていたりする場合がある。
【0010】
1.装置構成:
図1は、本実施形態にかかる印刷装置10の構成を簡易的に示している。印刷装置10は、制御部11、表示部13、操作受付部14、通信IF15、記憶部16、搬送部17、キャリッジ18、印刷ヘッド19等を備える。IFは、インターフェイスの略である。制御部11は、プロセッサーとしてのCPU11a、ROM11b、RAM11c等を有する一つ又は複数のICや、その他の不揮発性メモリー等を含んで構成される。
【0011】
制御部11では、プロセッサーつまりCPU11aが、ROM11bや、その他のメモリー等に保存された一つ以上のプログラム12に従った演算処理を、RAM11c等をワークエリアとして用いて実行することにより、印刷装置10を制御する。なお、プロセッサーは、一つのCPUに限られることなく、複数のCPUや、ASIC等のハードウェア回路により処理を行う構成であってもよいし、CPUとハードウェア回路とが協働して処理を行う構成であってもよい。
【0012】
表示部13は、視覚情報を表示するための手段であり、例えば、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ等により構成される。表示部13は、ディスプレイと、ディスプレイを駆動するための駆動回路とを含む構成であってもよい。操作受付部14は、ユーザーによる操作を受け付けるための手段であり、例えば、物理的なボタンや、タッチパネルや、マウスや、キーボード等によって実現される。むろん、タッチパネルは、表示部13の一機能として実現されるとしてもよい。
【0013】
通信IF15は、印刷装置10が公知の通信規格を含む所定の通信プロトコルに準拠して有線又は無線で外部装置と接続するための一つまたは複数のIFの総称である。外部装置とは、例えば、パーソナルコンピューター、サーバー、スマートフォン、タブレット型端末といった各種通信装置である。
図1の例では、印刷装置10は、外部装置の一種である読取装置40と、通信IF15を介して通信可能に接続している。むろん、通信IF15を介して接続可能な外部装置の台数は1台に限られない。読取装置40は、印刷装置10に含まれる構成の一部であってもよい。
【0014】
記憶部16は、例えば、ハードディスクドライブや、ソリッドステートドライブといった記憶装置により構成される。記憶部16は、制御部11が有するメモリーの一部であってもよい。また、記憶部16を制御部11の一部と解してもよい。記憶部16には、印刷装置10の制御に必要な各種情報が記憶される。
【0015】
搬送部17は、所定の搬送方向へ媒体を搬送するための手段であり、回転するローラーや、ローラー等を回転させるモーターを含む。搬送の上流、下流を、以下では単に、上流、下流と言う。媒体は、代表的には用紙であるが、用紙の他、生地やフィルム等、液体による印刷の対象となり得る様々な素材を媒体として採用可能である。また、搬送方向を副走査方向とも呼ぶ。搬送部17は、媒体をベルトやパレットに載せて搬送する機構であってもよい。
【0016】
キャリッジ18は、不図示のキャリッジモーターによる動力を受けて所定の主走査方向に沿って往復移動可能な機構である。主走査方向と搬送方向とは交差している。主走査方向を基準にすると搬送方向が「交差方向」に該当する。主走査方向と搬送方向との交差は、直交あるいはほぼ直交と解してよい。キャリッジ18は印刷ヘッド19を搭載している。従って、印刷ヘッド19はキャリッジ18とともに、主走査方向に沿って往復移動する。印刷ヘッド19の移動とキャリッジ18の移動とは同義である。
【0017】
印刷ヘッド19は、液体を吐出可能な複数のノズル20を有する。ノズル20は、液滴であるドットを吐出する。印刷ヘッド19は、制御部11による制御下で、画像を印刷するための印刷データに基づいて液体吐出を行う。知られているように、制御部11は、各ノズル20が備える不図示の駆動素子への駆動信号の印加を、印刷データに従って制御することで、各ノズル20からドットを吐出させたり吐出させなかったりして媒体へ画像を印刷する。印刷ヘッド19は、例えば、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インク、ブラック(K)インク等の各色のインクを吐出可能である。
【0018】
印刷データは、画素毎かつインクの色毎にドットの吐出または非吐出を規定したデータである。ドットの吐出をドットオン、ドットの非吐出をドットオフとも言う。知られているように、ノズル20は異なる複数のサイズのドットを吐出することも可能である。例えば、ノズル20は、大ドット、中ドット、小ドットと呼ばれる3種類のサイズのドットを吐出可能である。この例では、大ドットが最大サイズ、小ドットが最小サイズである。この場合、印刷データにおけるある画素のドットオンの情報はさらに、大ドットオン、中ドットオン、小ドットオンのいずれかに分かれる。むろん、印刷ヘッド19が吐出するインクの色はCMYKに限定されないし、ドットのサイズは3種類でなくてもよい。また、印刷ヘッド19は、インクやインクに該当しない液体を含めて各種液体を吐出可能である。
【0019】
図2は、媒体30と印刷ヘッド19との関係性を上方からの視点により簡易的に示している。キャリッジ18に搭載された印刷ヘッド19は、キャリッジ18とともに主走査方向D1の一端から他端への移動である往路移動や、他端から一端への移動である復路移動をする。
図2では、ノズル面23におけるノズル20の配列の一例を示している。ノズル面23は、印刷ヘッド19の下面であり、媒体30と相対する面である。ノズル面23内の個々の小さな丸が個々のノズル20を表している。
【0020】
印刷ヘッド19は、インクカートリッジやインクタンク等と呼ばれる不図示の液体保持手段から各色のインクの供給を受けてノズル20から吐出する構成において、インク色別のノズル列26を備える。
図2は、CMYKインクを吐出する印刷ヘッド19の例を示している。Cインクを吐出するノズル20からなるノズル列26がノズル列26Cである。同様に、Mインクを吐出するノズル20からなるノズル列26がノズル列26M、Yインクを吐出するノズル20からなるノズル列26がノズル列26Y、Kインクを吐出するノズル20からなるノズル列26がノズル列26Kである。
【0021】
図2の例では、ノズル列26C,26M,26Y,26Kは、主走査方向D1に沿って配列されている。また、これら色別の複数のノズル列26は搬送方向D2において同じ位置に配設されている。1つのノズル列26は、搬送方向D2におけるノズル20同士の間隔であるノズル間隔が一定或いはほぼ一定とされた複数のノズル20により構成される。
【0022】
ノズル列26を構成する複数のノズル20が並ぶ方向をノズル並び方向とも呼ぶ。
図2の例では、ノズル並び方向は搬送方向D2と平行である。従って、ノズル列26を構成する複数のノズル20は、搬送方向D2に並んでいると言える。このような構成では、ノズル並び方向は主走査方向D1と直交する。ただし、ノズル並び方向は搬送方向D2に対して平行でなく斜めであってもよい。ノズル並び方向が搬送方向D2と平行であってもなくても、ノズル並び方向は主走査方向D1と交差していると言えるし、ノズル列26を構成する複数のノズル20は搬送方向D2において所定のノズル間隔で並んでいると言える。従って、ノズル並び方向が搬送方向D2に対して斜めであっても、ノズル列26を構成する複数のノズル20は搬送方向D2にも並んでいると解釈する。
【0023】
主走査方向D1に沿ったキャリッジ18の移動と共に印刷ヘッド19が液体を吐出する動作を、主走査と呼ぶ。主走査をパスと呼んでもよい。キャリッジ18の往路移動による主走査を往路パス、キャリッジ18の復路移動による主走査を復路パスと呼ぶ。また、パスとパスとの間に搬送部17が媒体30を決められた距離だけ下流へ搬送する動作を、紙送りと呼ぶ。制御部11は、印刷ヘッド19、キャリッジ18、搬送部17を制御することでパスと紙送りとを実行して、媒体30に2次元の画像を印刷することができる。あるいは、キャリッジ18は、主走査方向D1だけでなく搬送方向D2にも往復移動可能であり、媒体30に対して相対的に上流へ移動することで、紙送りと同じ効果を奏する構成であってもよい。このような、搬送方向D2つまり副走査方向D2における媒体30と印刷ヘッド19との相対移動を、副走査とも呼ぶ。
【0024】
図1に示す印刷装置10の構成は、一台のプリンターによって実現されてもよいし、互いに通信可能に接続した複数の装置により実現されてもよい。つまり、印刷装置10は、実態として印刷システム10であってもよい。印刷システム10は、例えば、制御部11として機能する印刷制御装置と、搬送部17、キャリッジ18、印刷ヘッド19等を有するプリンターと、を含む。このような印刷装置10または印刷システム10により、印刷方法が実現される。
【0025】
2.印刷方法:
図3は、制御部11がプログラム12に従って実行する本実施形態の印刷方法をフローチャートにより示している。
ステップS100では、制御部11は、キャリッジ18および印刷ヘッド19を制御し、所定回数の主走査により、媒体30へテストパターンを印刷する。このとき、印刷ヘッド19は、テストパターンを印刷するための印刷データであるテストパターン印刷データに基づいてインクを吐出してテストパターンを印刷する。ステップS100は「テストパターン印刷工程」に該当する。
【0026】
テストパターンを表現する画像データは予め用意されており、例えば記憶部16に記憶されている。制御部11は、テストパターンの画像データに対してハーフトーン処理等を適宜実行してテストパターン印刷データを生成すればよい。テストパターン印刷データは、一様な濃度のベタ画像を印刷するためのデータである。一様な濃度の画像とは、全画素を大ドットオンとする最大濃度の画像に限らず、その他の濃度、例えば50%の画素をドットオンとした、前記最大濃度よりも低い濃度の画像であってもよい。
【0027】
図4は、ステップS100により媒体30へ印刷されたテストパターン31の例を示している。
図4に示すテストパターン31は、Kインクに対応するノズル列26Kの各ノズル20がKインクのドットを吐出して印刷されたテストパターンであるとする。
図4では、個々の丸が個々のドット32を表している。テストパターン31を構成するドット32は、例えば、いずれも中ドットであるとする。実際の印刷結果においては
図4に示すように個々のドット32がはっきりと識別できる訳ではないが、ここでは1つ1つのドット32を分かり易く示している。
【0028】
テストパターン31は、2回の主走査により印刷されている。
図4では、便宜的に、ドット32の丸の中に番号“1”や番号“2”を記している。番号“1”は、往路パスにより媒体30へ形成されたドット32を意味し、番号“2”は、復路パスにより媒体30へ形成されたドット32を意味する。つまり、テストパターン31は、往路パスと復路パスによる、いわゆる双方向印刷により印刷されている。テストパターン31を構成する各ラスターラインでは、往路パスにより形成されたドット32と復路パスにより形成されたドット32とが主走査方向D1に沿って交互に並んでいる。ラスターラインとは、印刷データにおける、主走査方向D1に沿って複数の画素が並ぶ画素行や、このような画素行が表現するドットの並びである。
【0029】
説明の便宜上、
図2や
図4における左側を主走査方向D1の一端側、
図2や
図4における右側を主走査方向D1の他端側とし、以下では、主走査方向D1の一端側、他端側をそれぞれ単に左、右と言うことがある。従って、印刷ヘッド19は、往路パスでは左から右へ移動し、復路パスでは右から左へ移動する。
【0030】
図4の例によれば、テストパターン31には符号33で指し示すように、搬送方向D2を向いて連続する白スジ33が生じている。白スジとは、印刷結果において周囲の濃度よりも相対的に淡い筋状の濃度むらの呼び名であり、必ずしも白色である必要は無い。また、黒スジは、印刷結果において周囲の濃度よりも相対的に濃い筋状の濃度むらの呼び名であり、必ずしも黒色である必要は無い。
図4に示す白スジ33は、往路パスの最中におけるあるタイミングで各ノズル20から吐出されたドット32が、媒体30の本来着弾すべき位置よりも右にずれてしまい、これらドット32に対して左に位置する別のドット32との間が本来の間隔よりも空いたことで生じている。
【0031】
このような白スジ33等の搬送方向D2を向く筋状の濃度むらは、パスの最中、一時的にキャリッジ18の速度の一定性が失われたりキャリッジ18が振動したりすることで生じる。キャリッジ18の速度の一時的な不安定さや振動の要因としては、例えば、キャリッジ18を主走査方向D1と平行に案内する軸の歪み、キャリッジ18へ移動のための動力を伝達する各部材の寸法誤差や偏芯等、種々考えられ、このような要因の内容や有無は、印刷装置10の製品個体毎に異なる。従って、
図3のフローチャートは、印刷装置10の個体毎に行う処理である。
【0032】
ステップS110では、制御部11は、ステップS100によるテストパターンの印刷結果において主走査方向D1の交差方向を向く濃度むらが発生している主走査方向D1の位置である「むら位置」を取得する。ステップS110は「むら位置取得工程」に該当する。具体的には、ユーザーは、テストパターン31が印刷された媒体30を読取装置40にセットし、テストパターン31の読取を読取装置40に実行させる。読取装置40は、対象を読み取って、対象の色や輝度の情報を読取データとして生成可能な手段であり、例えばスキャナーである。制御部11は、例えば、通信IF15を介してテストパターン31の読取データであるテストパターン読取データを読取装置40から取得し、テストパターン読取データを解析する。
【0033】
制御部11は、例えば、テストパターン読取データから、テストパターン31における主走査方向D1に沿う輝度変動を、搬送方向D2における複数位置で取得して、白スジや黒スジに該当する輝度変動が有るか否か、つまり搬送方向D2を向く白スジや黒スジの有無を判定する。白スジや黒スジに該当する輝度変動を検出するために必要なしきい値等の情報は予め記憶部16等に用意されているものとする。そして、制御部11は、テストパターン読取データから白スジを検出した場合には、主走査方向D1における当該白スジの位置を、白スジと対応付けてむら位置として取得し、記憶部16へ記憶する。また、制御部11は、テストパターン読取データから黒スジを検出した場合には、主走査方向D1における当該黒スジの位置を、黒スジと対応付けてむら位置として取得し、記憶部16へ記憶する。テストパターン読取データにおけるむら位置は、所定の基準、例えば、テストパターン読取データの左端やテストパターン読取データ内の媒体30の左端を基準とした画素位置である。
【0034】
制御部11は、ユーザーの目視評価により、濃度むらの種類と、そのむら位置を取得して記憶してもよい。つまり、ユーザーは、媒体30に印刷されたテストパターン31を目視し、搬送方向D2を向く白スジや黒スジの有無を判定する。そして、ユーザーは操作受付部14を操作することにより、主走査方向D1における白スジの位置や黒スジの位置を印刷装置10へ入力する。このようにユーザーがテストパターン31を目視評価する場合、制御部11にとっては、ユーザーによる濃度むらの種類およびむら位置の入力を、操作受付部14を通じて受け付けることが、ステップS110に該当する。制御部11は、このようにユーザーから入力された濃度むらの種類およびむら位置を、記憶部16へ記憶する。
【0035】
なお、ユーザーが白スジや黒スジの位置を把握し易いように、ステップS100では、媒体30へテストパターン31と共に主走査方向D1における目盛を印刷してもよい。このような目盛があれば、ユーザーは、白スジや黒スジの位置に該当する目盛の数値を、むら位置として入力することができる。
【0036】
印刷されたテストパターン31に主走査方向D1の交差方向を向く濃度むらが発生していなければ、ステップS110や後述のステップS120は当然に実行されない。ここでは、このような濃度むらがテストパターン31に発生していることを前提として説明を続ける。また、
図3のフローチャートの説明では、Kインクによるテストパターン31の印刷と、当該テストパターン31におけるむら位置に基づくKインクの吐出量の補正を説明するが、言うまでもなく当該フローチャートでは、CMY等の他の色のインクについても同様にテストパターン31の印刷やむら位置の取得、吐出量の補正を実行する。
【0037】
ステップS120では、制御部11は、ステップS110で取得したむら位置に対する液体の吐出量の補正を伴う、印刷を行う。ステップS120は、印刷ヘッド19によるむら位置に対する液体の吐出量を濃度むらに応じて補正する「補正工程」を含んでいる。ステップS120で印刷する画像は、ユーザーが操作受付部14の操作を通じて印刷対象として任意に選択した画像である。むろん、ユーザーはここでもテストパターンを印刷対象として選択してもよい。制御部11は、ユーザーによって選択された画像を表現する画像データを取得し、この画像データを印刷データに変換するための画像処理を実行する。ここで言う画像処理とは、知られているように、例えば、解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理等である。そして、制御部11は、印刷データに基づいて主走査により印刷ヘッド19から媒体30へインクを吐出させて画像を印刷する。制御部11は、このようなステップS120の過程で、ステップS110で取得したむら位置に対する液体の吐出量を増減させるために必要な補正を行う。
【0038】
制御部11は、例えば
図4に示したように、Kインクで印刷したテストパターン31における白スジ33のむら位置を取得したとする。この場合、制御部11は、当該むら位置に対するKインクの吐出量を増やす補正をする。補正対象は、例えば、ハーフトーン処理後の印刷データである。上述したように、印刷データは画素毎にインクのドットオンやドットオフが規定されたデータである。そのため、制御部11は、印刷データのうち主走査方向D1において白スジ33のむら位置に対応する位置の画素列について、ドットオンの比率を増やしたり、ドットサイズをより大きなサイズに変更したりする補正をした上で、印刷データに基づいて印刷をする。本実施形態では、特に断らない限り、画素列とはラスターラインに直交する画素の並び、つまり搬送方向D2を向く画素列を指す。
【0039】
なお、ステップS110においてテストパターン読取データの解析あるいはユーザーからの入力によって取得し得る各むら位置と、印刷データ内の各画素位置との、主走査方向D1における対応関係は、主走査方向D1におけるトータルの画素数等に基づいて既知であるとする。制御部11は、この対応関係を参照して、取得したむら位置に対応する印刷データにおける位置を特定して、補正を実行すればよい。
【0040】
また、制御部11は、Kインクで印刷したテストパターン31における黒スジのむら位置を取得したとする。この場合、制御部11は、当該むら位置に対するKインクの吐出量を減らす補正をする。つまり、印刷データのうち主走査方向D1において黒スジのむら位置に対応する位置の画素列について、ドットオンの比率を減らしたり、ドットサイズをより小さなサイズに変更したりする補正をした上で、印刷データに基づいて印刷をする。
【0041】
図5は、ステップS120における補正を伴う印刷の例を示している。
図5では、
図4との比較を容易とするために、ステップS120においてもユーザーがテストパターンの印刷を指示し、テストパターン印刷データに基づいてステップS100と同様にテストパターン31が媒体30に印刷されたものとする。
図5や後述の
図6の見方は、
図4の見方と同じである。ただし、ステップS120では、
図4の白スジ33のむら位置に対するKインクの吐出量を増やす補正がテストパターン印刷データに対して実行された上で、テストパターン31が印刷されている。
図5の例によれば、主走査方向D1における白スジ33のむら位置に相当する画素列の印刷結果として、
図4に示す中ドットよりも大きい大ドットが並ぶドット列34が形成されており、これにより白スジ33が解消されている。
【0042】
ステップS110では制御部11は、テストパターン読取データの解析あるいはユーザーからの入力によって、単に白スジや黒スジの有無でなく、例えば、弱めの白スジ有り、強めの白スジ有り、弱めの黒スジ有り、強めの黒スジ有り、といったような白スジや黒スジの程度も取得してもよい。そして、ステップS120では制御部11は、取得した白スジの程度に応じて、むら位置に対するインク量を増加させる程度を変えたり、取得した黒スジの程度に応じて、むら位置に対するインク量を減少させる程度を変えたりしてもよい。
【0043】
補正対象は、印刷データではなく、ハーフトーン処理を施す前かつ色変換処理後の、画素毎にインク毎の階調値を有する状態の画像データであってもよい。階調値は、例えば、0~255の256階調で表現されており、インク量を示している。制御部11は、このような画像データのうち、ステップS110で取得したむら位置に対応する画素列について、白スジ有りや黒スジ有りの評価に応じて階調値を増やしたり減らしたりすることで、結果的にインクの吐出量を増減させてもよい。あるいは、色変換処理後の画像データやハーフトーン処理後の印刷データを補正した場合と結果的に同様の効果を奏するのであれば、補正対象は、色変換処理を施す前の、画素毎に例えばRGB(レッド、グリーン、ブルー)毎の階調値を有する状態の画像データであってもよい。
【0044】
ここまでに説明した本実施形態を、第1実施形態とも呼ぶ。以下では、他の実施形態を幾つか説明する。以下の実施形態においても、基本的には第1実施形態を準用するものとし、第1実施形態と相違する点を説明する。
【0045】
3.第2実施形態:
制御部11は、むら位置に対する液体の吐出量を増加させる補正を行う場合は、主走査方向D1において前記むら位置に隣接する位置のうち少なくとも一方の位置に対する印刷ヘッド19による液体の吐出量を減少させるとしてもよい。また、むら位置に対する液体の吐出量を減少させる補正を行う場合は、主走査方向D1において前記むら位置に隣接する位置のうち少なくとも一方の位置に対する印刷ヘッド19による液体の吐出量を増加させるとしてもよい。
【0046】
図6は、第2実施形態のステップS120における補正を伴う印刷の例を示している。第2実施形態においても、ステップS100では
図4に示すようなテストパターン31が媒体30へ印刷され、ステップS110を経たステップS120では、
図6に示すテストパターン31が媒体30に印刷されたものとする。
図4の例のようにテストパターン31に白スジ33が発生している場合は、白スジ33の原因となるドット32の位置ずれが起きているのであるから、白スジ33の近傍で黒スジも生じている可能性が高い。
図4の例では、白スジ33を生じさせた、往路パスにより形成された番号“1”のドット32は、本来在るべき位置よりも右へずれている。そのため、白スジ33の右隣りでは、この番号“1”のドット32が復路パスにより形成される番号“2”のドット32に必要以上に多く重なり、黒スジが生じていると言える。
【0047】
従って、ステップS110では、制御部11は、主走査方向D1におけるある位置を白スジ33のむら位置として取得した場合、併せて、主走査方向D1において当該むら位置に隣接する位置を黒スジのむら位置として取得することになる。このような状況を受けてステップS120を実行すると、制御部11は結果的に、白スジのむら位置に対する液体の吐出量を増加させる補正を行い、かつ、主走査方向D1において当該むら位置に隣接する位置に対する液体の吐出量を減少させる補正を行うことになる。また、見方を変えると、黒スジのむら位置に対する液体の吐出量を減少させる補正を行い、かつ、主走査方向D1において当該むら位置に隣接する位置に対する液体の吐出量を増加させる補正を行うとも言える。
【0048】
すなわち第2実施形態のステップS120においては、
図4の白スジ33のむら位置に対するKインクの吐出量を増やす補正と、白スジ33の右隣りの黒スジのむら位置に対するKインクの吐出量を減らす補正とがテストパターン印刷データに対して実行された上で、テストパターン31が印刷される。
図6の例によれば、主走査方向D1における白スジ33のむら位置に相当する画素列の印刷結果として、
図5と同様に大ドットによるドット列34が形成されており、併せて、この画素列の右隣りの画素列の印刷結果として小ドットによるドット列35が形成されており、これにより白スジ33および黒スジが目立たなくなる。なお、
図6の例において、ドット列34に対してドット列35と逆側に隣接する画素列について印刷データの補正によりドットのサイズを小さくする等してインクの吐出量を減らしたり、ドット列35に対してドット34と逆側に隣接する画素列について印刷データの補正によりドットのサイズを大きくする等してインクの吐出量を増やしたりしてもよい。
【0049】
4.第3実施形態:
制御部11は、むら位置に対する液体の吐出量を増加させる補正を行う場合に、印刷ヘッド19による液体の吐出量を規定した印刷データにおける、むら位置に対応して複数の画素が前記交差方向に並ぶ画素列が、ドットの複数のサイズのうち最大サイズのドットの吐出を規定していれば、主走査方向D1においてむら位置に隣接する位置に対する印刷ヘッド19による液体の吐出量を増加させるとしてもよい。また、制御部11は、むら位置に対する液体の吐出量を減少させる補正を行う場合に、印刷データにおける、むら位置に対応する画素列がドットの非吐出を規定していれば、主走査方向D1においてむら位置に隣接する位置に対する印刷ヘッド19による液体の吐出量を減少させるとしてもよい。
【0050】
図7は、第3実施形態を説明するための図であり、印刷データ50の一部を示している。印刷データ50は、ステップS120において印刷対象とされた画像を表現する印刷データであり、ステップS120の過程で制御部11が印刷データ50を補正して印刷データ50´とする。制御部11は、印刷データ50´に基づく印刷を印刷ヘッド19に実行させる。印刷データ50,50´を構成する個々の矩形が個々の画素であり、各画素には、あるインク、例えばKインクのドットを丸で模して表現している。
図7では、ドットの丸の大きさの違いで、大ドットオン、中ドットオン、小ドットオンの違いを示している。ドットの丸が無い画素はドットオフが規定されている。
【0051】
図7の例では、印刷データ50は、搬送方向D2を向く画素列51,52,53,54を有する。印刷データ50´は、補正後の画素列51,52,53,54に該当する画素列51´,52´,53´,54´を有する。ここでは、画素列52は、ステップS110で取得した白スジ33のむら位置に対応する画素列であり、画素列53は、ステップS110で取得した黒スジのむら位置に対応する画素列であると仮定する。これまでの説明から解るように、ステップS120では、制御部11は、画素列52の各画素のドットサイズをより大きなサイズに変更する等して補正後の画素列52´とする。また、御部部11は、画素列53の各画素のドットサイズをより小さなサイズに変更する等して補正後の画素列53´とする。
【0052】
ただし、画素列52の画素のうち大ドットが規定されている画素については、インク量をそれ以上増やすことができない。そのため、ステップS120では制御部11は、画素列52に隣接する画素列51の画素であって、画素列52の大ドットが規定されている画素に隣接する画素については、ドットサイズをより大きなサイズに変更する等してインクの吐出量を増やして補正後の画素列51´とする。また、画素列53の画素のうちドットオフが規定されている画素については、インク量をそれ以上減らすことができない。そのため、ステップS120では制御部11は、画素列53に隣接する画素列54の画素であって、画素列53のドットオフが規定されている画素に隣接する画素については、ドットサイズをより小さなサイズに変更する等してインクの吐出量を減らして補正後の画素列54´とする。
図7では、分かり易くするために、印刷データ50´の画素列51´,54´のうち画素列51,54と比べて補正した画素をグレー色に塗って示している。
【0053】
5.第4実施形態:
制御部11は、むら位置に対する液体の吐出量を増加させる補正を行う場合に、印刷ヘッド19による液体の吐出量を規定した印刷データにおける、むら位置に対応して複数の画素が前記交差方向に並ぶ画素列を対象として、画素毎のドットのサイズをより大きなサイズへ変更する補正を前記交差方向に沿って100%よりも低い所定頻度で行う、としてもよい。
【0054】
図8は、第4実施形態を説明するための図であり、印刷データ55の一部を示している。
図8の見方は
図7の見方と同じである。印刷データ55は、ステップS120において印刷対象とされた画像を表現する印刷データであり、第1、第2実施形態と同様にテストパターン印刷データであるとする。ステップS120の過程で制御部11が印刷データ55を補正して印刷データ55´とし、印刷データ55´に基づく印刷を印刷ヘッド19に実行させる。
【0055】
図8の例では、印刷データ55は、搬送方向D2を向く画素列56,57,58,59を有する。印刷データ55´は、補正後の画素列56´,57´を含んでいる。ここでは、画素列57は、ステップS110で取得した白スジ33のむら位置に対応する画素列であると仮定する。第4実施形態のステップS120では、制御部11は、画素列57を対象として、画素毎のドットサイズをより大きなサイズに変更する補正を所定頻度、例えば50%の頻度で行う。
図8の例では、画素列57の画素毎の中ドットが、一画素置きに大ドットに変更されて画素列57´となっている。
【0056】
なお、これまでの説明に照らせば、白スジ33のむら位置に対応する画素列57の右隣りの画素列58は、黒スジのむら位置に対応していると言える。そのため、
図8では特に示していないが、制御部11は、画素列58について上述したような黒スジを抑制するための補正を当然に実行可能である。
【0057】
第4実施形態では、制御部11は更に、液体の吐出量を増加させる補正の対象とする画素列57に隣接して複数の画素が搬送方向D2に並ぶ隣接画素列である画素列56のうち、画素列57のドットサイズをより大きなサイズへ変更する補正をしない画素に隣接する画素を対象として、ドットサイズをより大きなサイズへ変更する補正を行うとしてもよい。画素列56は、画素列57に対して画素列58の逆側に隣接している。つまり、画素列57においてインク量を増加しきれていない分を画素列56におけるインク量の増加で補う。
図8の例では、画素列57と画素列56は、搬送方向D2に沿う各画素位置に関して交互にドットサイズを大きくして、画素列57´および画素列56´となっている。
【0058】
6.第5実施形態:
本実施形態が課題として想定する、搬送方向D2を向く白スジや黒スジといった筋状の濃度むらは、キャリッジ18が一時的に移動の定速性を損なうことで発生する。キャリッジ18は1回の主走査を実行するために、速度0から所定速度へ加速する加速期間と、当該所定速度をほぼ維持する定速期間と、当該所定速度から速度0へ減速する減速期間とを有し、インクの吐出は主に定速期間に実行される。主走査方向D1における媒体30のサイズが異なれば、1回の主走査の距離が違ったり、加速期間、定速期間、減速期間それぞれの長さが違ったりする。そのため、1台の印刷装置10であっても、主走査方向D1における媒体30のサイズが異なれば、前記濃度むらが発生する主走査方向D1における位置も異なる可能性がある。
【0059】
そこで、制御部11は、主走査方向D1におけるサイズが異なる媒体30毎に、テストパターン31の印刷およびむら位置の取得を行う。つまり、主走査方向D1におけるサイズが異なる媒体30毎に、ステップS100,S110を実行する。主走査方向D1における媒体30のサイズを媒体幅と呼ぶ。制御部11は、ステップS110で取得した濃度むらと、そのむら位置とを、ステップS100でテストパターン31の印刷に使用した媒体30の媒体幅に対応付けて記憶部16に記憶すればよい。
【0060】
そして、制御部11は、ステップS120において第1の媒体への印刷を行う場合、第1の媒体の媒体幅に対応するむら位置に対する液体の吐出量を、当該むら位置の白スジ又は黒スジといった濃度むらに応じて補正しつつ、印刷を行う。同様に、制御部11は、ステップS120において第1の媒体とは媒体幅が異なる第2の媒体へ印刷を行う場合、第2の媒体の媒体幅に対応するむら位置に対する液体の吐出量を、当該むら位置の白スジ又は黒スジといった濃度むらに応じて補正しつつ、印刷を行う。
【0061】
7.まとめ
このように本実施形態によれば、印刷装置10は、媒体30へ液体を吐出可能な複数のノズル20を有する印刷ヘッド19と、印刷ヘッド19を搭載し、所定の主走査方向D1に沿って往復移動可能なキャリッジ18と、印刷ヘッド19による液体の吐出を制御する制御部11と、を備える。制御部11は、主走査方向D1に沿うキャリッジ18の移動に伴う印刷ヘッド19による液体の吐出動作である主走査により、媒体30へテストパターン31を印刷し、テストパターン31の印刷結果において主走査方向D1と交差する交差方向を向く濃度むらが発生している主走査方向D1の位置であるむら位置を取得し、印刷ヘッド19によるむら位置に対する液体の吐出量を、濃度むらに応じて補正する。
【0062】
前記構成によれば、印刷装置10は、従来のラスターライン毎の補正値によりラスターライン毎の濃度のばらつきを補正する方法では解消できない、前記交差方向を向く濃度むらについて、発生を抑制することができる。なお、従来と同様のラスターライン毎の濃度の補正値を取得し、取得した補正値を用いてラスターライン毎の濃度を補正する方法を、本実施形態と併用することは当然可能である。
また、本実施形態が想定する白スジのような前記交差方向を向く濃度むらは、印刷ヘッド19が主走査方向D1において実現可能な最大の解像度で印刷を実行する場合は、さらにドットの吐出回数を増やして補完できるものではない。これに対して本実施形態の補正によれば、このような白スジ発生を抑えることができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、制御部11は、むら位置に対する液体の吐出量を増加させる補正を行う場合は、主走査方向D1においてむら位置に隣接する位置のうち少なくとも一方の位置に対する印刷ヘッド19による液体の吐出量を減少させ、むら位置に対する液体の吐出量を減少させる補正を行う場合は、主走査方向D1においてむら位置に隣接する位置のうち少なくとも一方の位置に対する印刷ヘッド19による液体の吐出量を増加させる、としてもよい。
前記構成によれば、印刷装置10は、むら位置に対する吐出量の補正と逆の補正をむら位置の近傍で行うことにより、過剰な補正により画質が崩れることを、防ぐことができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、複数のノズル20はそれぞれ、液体のドットであって複数のサイズのドットを吐出可能である。
制御部11は、むら位置に対する液体の吐出量を増加させる補正を行う場合に、印刷ヘッド19による液体の吐出量を規定した印刷データにおける、むら位置に対応して複数の画素が前記交差方向に並ぶ画素列が、複数のサイズのうち最大サイズのドットの吐出を規定していれば、主走査方向D1においてむら位置に隣接する位置に対する印刷ヘッド19による液体の吐出量を増加させ、一方、むら位置に対する液体の吐出量を減少させる補正を行う場合に、印刷データにおけるむら位置に対応する画素列がドットの非吐出を規定していれば、主走査方向D1においてむら位置に隣接する位置に対する印刷ヘッド19による液体の吐出量を減少させる、としてもよい。
前記構成によれば、印刷装置10は、むら位置に対する吐出量の必要な補正をできない場合に、代わりの補正をむら位置の近傍で行うことにより、必要な補正を補完することができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、制御部11は、むら位置に対する液体の吐出量を増加させる補正を行う場合に、印刷ヘッド19による液体の吐出量を規定した印刷データにおける、むら位置に対応して複数の画素が前記交差方向に並ぶ画素列を対象として、画素毎のドットのサイズをより大きなサイズへ変更する補正を前記交差方向に沿って100%よりも低い所定頻度で行うとしてもよい。
前記構成によれば、印刷装置10は、むら位置に対応する画素列の補正結果として媒体30上で液体が多くなり過ぎて滲むといった不都合を、回避することができる。前記所定頻度は、上述の例では50%であったが、例えば、75%や60%等、他の頻度であってもよい。
【0066】
さらに制御部11は、印刷データにおける、むら位置に対応する画素列に隣接して複数の画素が前記交差方向に並ぶ隣接画素列のうち、前記画素列のドットのサイズをより大きなサイズへ変更する補正をしない画素に隣接する画素を対象として、ドットのサイズをより大きなサイズへ変更する補正を行う、としてもよい。
前記構成によれば、印刷装置10は、液体の吐出量を増加させる補正を、むら位置に対応する画素列と隣接画素列とに分散させて実行することで、上述の滲み発生を抑えつつ必要な量の補正をすることができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、制御部11は、主走査方向D1におけるサイズが異なる媒体30毎に、テストパターンの印刷およびむら位置の取得を行い、第1の媒体への印刷を行う場合、第1の媒体の主走査方向D1におけるサイズに対応するむら位置に対する液体の吐出量を、濃度むらに応じて補正するとしてもよい。
前記構成によれば、印刷装置10は、使用する媒体30の媒体幅に応じて、むら位置に発生する濃度むらを抑制するための補正を適切に実行することができる。
【0068】
制御部11は、印刷に採用する印刷方向毎にテストパターン31の印刷およびむら位置の取得を行うことも可能である。ここで言う印刷方向とは、往路パス、復路パス、往路パスおよび復路パス、である。制御部11は、これまで説明したように往路パスと復路パスとを交互に実行する双方向印刷だけでなく、往路パスのみで印刷をする単方向印刷や、復路パスのみで印刷する単方向印刷を採用可能である。便宜上、双方向印刷を第1印刷モード、往路パスの単方向印刷を第2印刷モード、復路パスの単方向印刷を第3印刷モードと呼ぶ。
【0069】
制御部11は、第1印刷モード、第2印刷モード、第3印刷モード毎に、ステップS100,S110を実行し、ステップS110で取得した濃度むらと、そのむら位置とを、ステップS100でテストパターン31の印刷に採用した印刷モードに対応付けて記憶部16に記憶すればよい。そして、制御部11は、ある印刷モードを採用してステップS120において媒体30へ印刷を行う場合、そのとき採用する印刷モードに対応するむら位置に対する液体の吐出量を、当該むら位置の白スジ又は黒スジといった濃度むらに応じて補正しつつ印刷を行う。このようにすれば、印刷装置10は、印刷モードに応じて、むら位置に発生する濃度むらを抑制するための補正を適切に実行することができる。
【0070】
なお、特許請求の範囲においては、請求項同士の組み合わせの一部のみを記載しているが、本実施形態は、独立請求項と従属請求項との一対一の組み合わせだけでなく、当然に、複数の従属請求項の各種組み合わせを開示範囲に含める。
【0071】
本実施形態は、印刷装置10以外にも、印刷方法や、当該方法をプロセッサーと協働して実現するためのプログラム12を開示する。
つまり、媒体30へ液体を吐出可能な複数のノズル20を有する印刷ヘッド19を制御して印刷を行う印刷方法は、所定の主走査方向D1に沿う印刷ヘッド19の移動に伴う印刷ヘッド19による液体の吐出動作である主走査により、媒体30へテストパターンを印刷するテストパターン印刷工程と、テストパターンの印刷結果において主走査方向D1と交差する交差方向を向く濃度むらが発生している主走査方向D1の位置であるむら位置を取得するむら位置取得工程と、印刷ヘッド19によるむら位置に対する液体の吐出量を、前記濃度むらに応じて補正する補正工程と、を備える。
【符号の説明】
【0072】
10…印刷装置、11…制御部、12…プログラム、13…表示部、14…操作受付部、15…通信IF、16…記憶部、17…搬送部、18…キャリッジ、19…印刷ヘッド、20…ノズル、26…ノズル列、30…媒体、31…テストパターン、32…ドット、33…白スジ、34,35…ドット列、40…読取装置、50,50´,55,55´…印刷データ、51,51´,52,52´,53,53´,54,54´,56,56´,57,57´,58,59…画素列