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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014012
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】オイルセパレータ
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/04 20060101AFI20240125BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20240125BHJP
   B01D 45/08 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F01M13/04 B
B01D46/00 E
B01D45/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116546
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000220804
【氏名又は名称】東京濾器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 耕作
(72)【発明者】
【氏名】岡本 有司
(72)【発明者】
【氏名】グエン ヴァン ハ
【テーマコード(参考)】
3G015
4D031
4D058
【Fターム(参考)】
3G015BD09
3G015BD12
3G015BD23
3G015BD28
3G015BE02
3G015BE06
3G015BE13
3G015BE15
3G015BF05
3G015BF08
3G015CA05
3G015DA04
3G015EA04
3G015EA25
4D031AB03
4D031AB23
4D031BA01
4D031BA10
4D031DA05
4D031EA01
4D058JA02
4D058LA01
4D058QA01
4D058QA07
4D058QA11
4D058SA15
(57)【要約】
【課題】オイルセパレータの配置スペースや部品点数を削減しつつ、高濃度のミスト状オイルを含むブローバイガスからミスト状オイルを捕集する。
【解決手段】ブローバイガスからミスト状オイルを捕集する捕集構造体50と、捕集構造体50を収容する内部空間を有するケース20と、を備え、ブローバイガスが内部に流入するヘッドカバー5の内部空間にケース20の一部が配置されるように設けられるオイルセパレータ2は、ケース20が、ヘッドカバー5の内部空間からブローバイガスが流入する流入ポート23を有し、オイルセパレータ2は、流入ポート23に対向して設けられる傾斜面部132を有するオイルトラップ130を更に備え、傾斜面部132の直下にはブローバイガスが捕集構造体50へ流れる流路C0が形成される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミスト状オイルを含むガスから前記ミスト状オイルを捕集する捕集構造体と、
前記捕集構造体を収容する内部空間を有するケースと、
を備え、前記ガスが内部に流入する箱体の内部空間に前記ケースの一部が配置されるように設けられるオイルセパレータであって、
前記ケースが、前記箱体の内部空間から前記ガスが流入する開口部を有し、
前記オイルセパレータは、前記開口部に対向して設けられる面部を有するオイルトラップを更に備え、
前記面部の直下には前記ガスが前記捕集構造体へ流れる流路が形成される、
オイルセパレータ。
【請求項2】
ミスト状オイルを含むガスから前記ミスト状オイルを捕集する捕集構造体と、
前記捕集構造体を収容する内部空間を有するケースと、
を備え、前記ガスが内部に流入する箱体の内部空間に前記ケースの一部が配置されるように設けられるオイルセパレータであって、
前記ケースが、前記箱体の内部空間から前記ガスが流入する開口部を有し、
前記オイルセパレータは、前記開口部から流入した前記ガスが衝突するように設けられる面部を有するオイルトラップを更に備え、
前記面部の直下には前記ガスが前記捕集構造体へ流れる流路が形成される、
オイルセパレータ。
【請求項3】
前記ケースが互いに係合する第1ケースと、第2ケースとで構成され、
前記オイルセパレータは、前記第1ケースと前記第2ケースとの間に反発力を発生させる組み付け弾性体を更に備える、請求項1又は2に記載のオイルセパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
オイルセパレータは、エンジンのブローバイガスなどのミスト状オイルを含むガスからミスト状オイルを分離する。例えば、特許文献1には、エンジンのクランクケースからエンジンの吸気管路へ通じる換気管路の途中に配置され、ブローバイガスからミスト状オイルを分離するオイルセパレータが開示されている。このオイルセパレータでは、ミスト状オイルを含むガスを、織物あるいは不織布からなる捕集体に向けて放出することで、ガスに含まれるミスト状オイルを捕集体に吸着させてガスから分離させる。
【0003】
クランクケースから排出されるブローバイガスは、高濃度のミスト状オイルを含んでいる。ブローバイガスは、クランクケースからシリンダーブロックとシリンダーヘッドを通じてシリンダーヘッド上部を覆うヘッドカバーの内部空間へ流入する。そして、ブローバイガスは、ヘッドカバーの内部空間で一部のミスト状オイルが分離除去された後、ヘッドカバーの内部空間から配管を通じてオイルセパレータへ流入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4991850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンジンルーム内には多数の部品が配置されるため、オイルセパレータの配置スペースや配管等の部品点数を削減することが望まれている。
そこで、オイルセパレータをヘッドカバーに直接取り付けることが考えられる。しかしながら、ヘッドカバーの内部空間に流入するブローバイガスは、高濃度のミスト状オイルを含んでいるため、オイルセパレータをヘッドカバーに直接取り付けると、オイルセパレータに高濃度のミスト状オイルが流入する。ブローバイガスに含まれるミスト状オイルの量が捕集体の捕集能力を超えた場合、オイルセパレータを通過したブローバイガスにはミスト状オイルが残ってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、オイルセパレータの配置スペースや部品点数を削減しつつ、高濃度のミスト状オイルを含むブローバイガスからミスト状オイルを捕集することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、ミスト状オイルを含むガスから前記ミスト状オイルを捕集する捕集構造体と、前記捕集構造体を収容する内部空間を有するケースと、を備え、前記ガスが内部に流入する箱体の内部空間に前記ケースの一部が配置されるように設けられるオイルセパレータであって、前記ケースが、前記箱体の内部空間から前記ガスが流入する開口部を有し、前記オイルセパレータは、前記開口部に対向して設けられる面部を有するオイルトラップを更に備え、前記面部の直下には前記ガスが前記捕集構造体へ流れる流路が形成されるオイルセパレータが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明のオイルセパレータによれば、オイルセパレータの配置スペースや部品点数を削減しつつ、高濃度のミスト状オイルを含むブローバイガスからミスト状オイルを捕集できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】閉鎖型クランクケース換気システム1を示す概略図である。
図2】ヘッドカバー5の斜視図である。
図3】オイルセパレータ2の斜視図である。
図4】オイルセパレータ2の分解図である。
図5】オイルセパレータ2の上面図である。
図6】オイルセパレータ2の断面図である。
図7図6におけるB-B断面図である。
図8図6におけるC-C断面図である。
図9図6におけるD-D断面図である。
図10図6におけるE-E断面図である。
図11図6におけるF-F断面図である。
図12】突起部21aの断面を示す断面図である。
図13】ブローバイガスの流れを示すオイルセパレータ2の断面図である。
図14】捕集したオイルの流れを示すオイルセパレータ2の断面図である。
図15】バルブ70が閉じた状態でのブローバイガスの流れを示すオイルセパレータ2の断面図である。
図16】バルブ70が開いた状態でのブローバイガスの流れを示すオイルセパレータ2の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
==閉鎖型クランクケース換気システムの概要==
図1は、閉鎖型クランクケース換気システム1(以下、換気システム1とする)の概略図である。換気システム1は、オイルセパレータ2と、ブリーザーパイプ3と、を備える。オイルセパレータ2は、エンジン4のクランクケース内に排出されるブローバイガス(ミスト状オイルを含むガスの一例)からミスト状オイルを分離する処理を行う。オイルセパレータ2は、エンジン4のヘッドカバー5(箱体の一例)の上部に埋め込まれるように取り付けられる。オイルセパレータ2は、分離したオイルをエンジン4へ戻す。ブリーザーパイプ3は、オイルセパレータ2から排出されるオイル除去後のブローバイガスをエンジン4の吸気側流路6に還元する。具体的には、処理後のブローバイガスは、吸気側流路5におけるエアフィルタ7とターボチャージャー8とを接続する部分に還元される。還元されたオイル除去後のブローバイガスは、エアフィルタ7からの外気と混合され、ターボチャージャー8で圧縮される。圧縮されたブローバイガスは、チャージエアクーラー9で冷却されて、エンジン4に供給される。なお、換気システム1は、ブリーザーパイプ3が吸気側流路6に接続されていない開放型クランクケース換気システムであってもよい。この場合、オイルセパレータ2から排出されるオイル除去後のブローバイガスは、大気に開放される。
【0012】
図2に示すヘッドカバー5は、エンジン4のシリンダーヘッドの上部を覆うカバーである。以下の説明において、「上」「下」とは図2図4における「上」「下」を意味するものとし、その方向を上下方向とする。本実施形態に係るヘッドカバー5は、直方体形状であり、下面が開口している。ヘッドカバー5の開口部分は、シリンダーヘッドの上部に取り付けられる。ヘッドカバー5は、下部開口5aと、上部開口5bと、取付穴5cと、を有する(図2参照)。
【0013】
下部開口5aは、ヘッドカバー5をシリンダーヘッドの上部に取り付けるための開口である。下部開口5aは、ヘッドカバー5の下面が開口する部位である。下部開口5aは、シリンダーヘッドの上部と上下に対向する。
【0014】
上部開口5bは、オイルセパレータ2が取り付けられる穴である。上部開口5bは、ヘッドカバー5の上面に設けられる。本実施形態において、上部開口5bは円形の穴である。上部開口5bの数は、ヘッドカバー5に取り付けるオイルセパレータ2の数と同数である。本実施形態では、1個の例を示している。
【0015】
取付穴5cは、ボルト等の締結部材が嵌め込まれる部位である。取付穴5cは、ヘッドカバー5の上面且つ上部開口5bの近傍に設けられる。取付穴5cの数は、オイルセパレータ2を締結部材によって固定することができれば特に限定されない。本実施形態では、2個の例を示している。
【0016】
==オイルセパレータの構造==
図3図16を参照して、オイルセパレータ2について説明する。
オイルセパレータ2は、ケース20と、捕集構造体50と、板ばね120(組み付け弾性体の一例)と、オイルトラップ130と、を備える(図3図4参照)。
【0017】
<ケース>
ケース20は、オイルセパレータ2の外装を構成する部材である。ケース20は、捕集構造体50、板ばね120、及びオイルトラップ130が配置される内部空間を有する。
ケース20は、下部ケース21(第1ケースの一例)と、上部ケース22(第2ケースの一例)と、を有する。
【0018】
(下部ケース)
下部ケース21は、上端が開口した逆円錐台型の筒状部材である。下部ケース21の下端面は、下部ケース21の径方向中心に向かって下側に傾斜している。下部ケース21は、突起部21aと、流入ポート23(開口部の一例)と、オイル排出ポート24と、開口部25と、爪部26と、取付部27と、ストッパ部39と、溝21bと、が設けられる。下部ケース21は、ヘッドカバー5の上部開口5bに嵌め込まれる(図3図4図6図11図12参照)。
【0019】
突起部21aは、オイルトラップ130を下側から保持する部位である。突起部21aは、下部ケース21の内側から、下部ケース21の径方向中心に向かって突出している(図12参照)。突起部21aの数は、オイルトラップ130を下側から保持することができれば特に限定されない。本実施形態において、突起部21aは、周方向に間隔を空けて6つ設けられる(図11参照)。
【0020】
流入ポート23は、オイルセパレータ2の内部にブローバイガスを流入させるための部位である。本実施形態に係る流入ポート23は、下部ケース21の側面に設けられる開口部である。流入ポート23は、下部ケース21の内部空間と外部空間とを連通させる。流入ポート23の位置や数は、オイルセパレータ2の内部にブローバイガスを流入させることができれば特に限定されない。本実施形態において、流入ポート23は、周方向に間隔を空けて6つ設けられる(図3図4図6図11参照)。流入ポート23は、上から見て突起部21aと径方向に対向しないように設けられる。
【0021】
オイル排出ポート24は、ブローバイガスから分離されたオイルをオイルセパレータ2の外部に流出させる部位である。オイル排出ポート24は、下部ケース21の下端面の中心に設けられる開口部である。オイル排出ポート24は、下部ケース21の内部空間と外部空間とを連通させる。
【0022】
開口部25は、ケース20の内部空間に配置される部材を挿入するための開口である。開口部25は、下部ケース21の上端に設けられる。
【0023】
爪部26は、後述するフック部30と嵌合して下部ケース21に上部ケース22を取り付ける部位である。爪部26は、下部ケース21の上端近傍の外周面に径方向外側に突出するように設けられる。爪部26の位置や数は、下部ケース21に上部ケース22を取り付けることができれば特に限定されない。本実施形態において、爪部26は、周方向に間隔を空けて4つ設けられる。
【0024】
取付部27は、オイルセパレータ2をヘッドカバー5に取り付けるための部位である。取付部27は、フランジ部27aと、円柱体27bと、取付穴27cとを有する。
【0025】
フランジ部27aは、下部ケース21の側面から径方向外側に延びる。フランジ部27aの数は、ヘッドカバー5の取付穴5cの数と同じである。本実施形態では、2個の例を示している。2つのフランジ部27aは、下部ケース21の外側側面において、対向する位置に設けられる。
【0026】
円柱体27bは、フランジ部27aの端部に設けられる。円柱体27bの数は、取付穴5cの数と同じである。本実施形態では、2個の例を示している。円柱体27bは、柱軸が上下方向となるように設けられる。円柱体27bは、下部ケース21がヘッドカバー5に取り付けられる際に取付穴5cの真上に配置される。
【0027】
取付穴27cは、締結部材を嵌め込まれることにより、オイルセパレータ2をヘッドカバー5に取り付けるための部位である。取付穴27cは、円柱体27bの中心を上下に貫通する穴である。取付穴27cの数は、ヘッドカバー5の取付穴5cの数と同じである。本実施形態では、2個の例を示している。
【0028】
ストッパ部39は、ヘッドカバー5の上部開口5bに対して下部ケース21の上下方向の位置を決める部位である。ストッパ部39は、環状且つ板状の部位である。ストッパ部39は、下部ケース21の外側側面に設けられる。ストッパ部39の外径は、上部開口5bの直径よりも大きい。ストッパ部39の下面の位置は、円柱体27bの下面の位置と等しい。ストッパ部39は、流入ポート23よりも上に設けられる。
【0029】
溝21bは、後述するOリング32aが配置される部位である。溝21bは、下部ケース21の外側側面に周方向に設けられている。図6の例において、溝21bは、ストッパ部39の下方近傍に設けられる。溝21bには、Oリング32aが配置される。溝21bにOリング32aが配置された状態で下部ケース21がヘッドカバー5に嵌め込まれることにより、Oリング32aは、ヘッドカバー5と下部ケース21の間に挟まれて、両者の間をシールする。
【0030】
下部ケース21は、上部開口5bに上から嵌め込まれる。この時、ヘッドカバー5の取付穴5cと下部ケース21の取付穴27cの軸が一致するように下部ケース21は、上部開口5bに嵌め込まれる。すると、ストッパ部39の下面が上部開口5bの縁に接触して、下部ケース21の上下方向の位置が決まる。そして、ボルト5dを取付穴5cと取付穴27cに対して取り付けることで、下部ケース21は、ヘッドカバー5に対して固定される。
【0031】
下部ケース21がヘッドカバー5に固定された状態において、下部ケース21のストッパ部39よりも下側の部位は、ヘッドカバー5の内部空間に配置される。従って、下部ケース21の内部空間は、流入ポート23を通じてヘッドカバー5の内部空間と連通する。また、下部ケース21の内部空間は、オイル排出ポート24を通じてヘッドカバー5の内部空間と連通する。
【0032】
(上部ケース)
上部ケース22は、下部ケース21の開口部25を塞ぐように設けられる。上部ケース22は、外筒28と、排出ポート29と、フック部30と、フランジ部31と、ストッパ部33と、大径筒体34と、小径筒体35と、蓋部36と、開口部37と、第1接続部38aと、第2接続部38bと、PCVバルブ40と、を有する(図3~6参照)。
【0033】
外筒28は、開口部25を塞ぐ部材である。外筒28は、上端が閉じ、下端が開口した略円筒状の部材である。上部ケース22は、外筒28の下端の開口部28aが下部ケース21の開口部25と対向するように下部ケース21に取り付けられる。
【0034】
フランジ部31は、フック部30を配置するための部位である。フランジ部31は、外筒28の側面から径方向外側に延びる環状の部位である。
【0035】
フック部30は、下部ケース21の爪部26と嵌合して下部ケース21に上部ケース22を取り付ける部位である。フック部30は、フランジ部31の外縁から下方に向けて設けられる。フック部30の位置や数は、下部ケース21に上部ケース22を取り付けることができれば特に限定されない。本実施形態において、フック部30は、周方向に間隔を空けて4つ設けられる。
【0036】
ストッパ部33は、Oリング32bの移動を規制する部位である。ストッパ部33は、フランジ部31の下面と接触し筒部28の外側側面から径方向外側へと突出する環状の部位である。ストッパ部33の下面には、Oリング32bが配置されて下部ケース21と上部ケース22の間をシールする。
【0037】
大径筒体34は、上部ケース22の内側を仕切る部位である。大径筒体34は、外筒28よりも径の小さい円筒型の部位である。大径筒体34は、外筒28の内側に配置される。
【0038】
小径筒体35は、大径筒体34とともに上部ケース22の内側を仕切る部位である。小径筒体35は、大径筒体34よりも径の小さい円筒型の部位である。小径筒体35は、大径筒体34の内側に配置される。
【0039】
蓋部36は、小径筒体35の下方の開口を塞ぐ部位である。蓋部36は、円形の板材である。蓋部36は、小径筒体35の下端に設けられる。蓋部36は、小径筒体35とともに上部ケース22の内側の空間を仕切る。
【0040】
開口部37は、小径筒体35の内側にブローバイガスを流入させるための部位である。開口部37は、小径筒体35の上端の開口である。
【0041】
第1接続部38aは、大径筒体34と筒体28を接合してブローバイガスの通過を防止する部位である。第1接続部38aは、環状の板材である。本実施形態において、第1接続部38aは、大径筒体34の上端から筒体28の内周面に向かって設けられる。
【0042】
第2接続部38bは、小径筒体35と大径筒体34を接合する部位である。第2接続部38bは、方形の板材である。第2接続部38bの位置や数は、小径筒体35と大径筒体34を接合することができれば特に限定されない。本実施形態において、第2接続部38bは、大径筒体34の下端から小径筒体35の外周面に向かって設けられ、周方向に間隔を空けて3つ設けられる。
【0043】
排出ポート29は、オイル除去後のブローバイガスをオイルセパレータ2の内部から外部に流出させるための部位である。本実施形態に係る排出ポート29は、円筒型である。排出ポート29は、小径筒体35の側面から径方向外側に向けて、大径筒体34の側面と、外筒28の側面とを貫通し、外筒28の外側まで延びるように1つ設けられる。排出ポート29の内部空間は、小径筒体35の内部空間と連通している。排出ポート29には、ブリーザーパイプ3が接続される。
【0044】
PCVバルブ40は、小径筒体35の開口部37を開閉するための部材である。PCVバルブ40は、ダイヤフラム弁41と、スプリング42と、を備える(図6参照)。
【0045】
ダイヤフラム弁41は、開口部37を開閉する。ダイヤフラム弁41は、円盤状の部位である。ダイヤフラム弁41は、上部ケース22の内部空間において、開口部37に対向するように収容されている。ダイヤフラム弁41は、弁部41aと、膜部41bとを有する。
【0046】
弁部41aは、開口部37を開閉する部位である。本実施形態に係る弁部41aの形状は、円盤状の部位である。弁部41aは、開口部37の上方に設けられる。
【0047】
膜部41bは、弁部41aと外筒28を接続させる部位である。膜部41bは、弾性変形する環状の部位である。膜部41bは、弁部41aの径方向外側の端部と外筒28の内周面とを接続する。
【0048】
スプリング42は、弁部41aを上下に移動可能な状態で支持する。スプリング42は、コイル状のばねである。スプリング42は、小径筒体35の内側、且つ弁部41aの下において弁部41aと蓋部36との間に挟まれており、弁部41aを上向きに付勢する。
【0049】
上部ケース22の内側は、小径筒体35及び蓋部36によって仕切られている。小径筒体35及び蓋部36の下側と外筒28との間の空間は、上部上流空間S4に相当し、小径筒体35の内側と蓋部36の上側の内部空間が、上部下流空間S5に相当する。
【0050】
スプリング42が縮むと、膜部41bが弾性変形して伸び、弁部41aのみが下方に移動して弁部41aと小径筒体35の上端が接触する。これにより、開口部37は閉じられて、上部上流空間S4と上部下流空間S5とは互いに遮断された状態となる。一方、スプリング42が伸びると、膜部41bが弾性変形して縮み、弁部41aが上方に移動して、弁部41aと小径筒体35の上端が離れる。これにより、開口部37は開いて、上部上流空間S4と上部下流空間S5とは互いに連通した状態となる。
【0051】
<捕集構造体>
捕集構造体50は、ブローバイガスからミスト状オイルを分離するための構造体である。補修構造体50は、下部ケース21の内部空間に収容されている。捕集構造体50は、本体部60と、バルブ70と、捕集体80と、保持部材90と、押さえ部材110と、逆止弁140と、を有する(図4図6参照)。
【0052】
(本体部)
本体部60は、捕集構造体50の基本部分となる筒状の枠を構成する部位である。本体部60は、環状円板部61と、小径筒部62と、大径筒部63と、フランジ部64と、角筒部66と、円筒部69と、を有する(図4図13参照)。なお、図13では、説明のために図6の断面図に対して本体部60を周方向に45度回転させているため、上部ケース22の第2接続部38bは表示されていない。
【0053】
環状円板部61は、小径筒部62と大径筒部63とを連結する部位である。環状円板部61は、中心部に貫通穴が形成された、環状且つ板状の部位である。
【0054】
小径筒部62は、本体部60の上部を構成する部位である。小径筒部62は、円筒型の部位である。小径筒部62の直径は、環状円板部61の内径と等しい。小径筒部62は、環状円板部61の径方向内側の縁に沿って上側に向けて突出する。小径筒部62の端部は、上下ともに開口している。
【0055】
大径筒部63は、本体部60の中央部を構成する部位である。大径筒部63は、円筒型の部位である。大径筒部63の直径は、小径筒部62の直径よりも大きい。大径筒部63は、環状円板部61の下面から下側に向けて突出する。
【0056】
フランジ部64は、本体部60の下部を構成する部位である。フランジ部64は、環状の部位である。フランジ部64の外径は、下部ケース21の内径より僅かに小さい。フランジ部64は、大径筒部63の下端に設けられる。また、フランジ部64には、径方向外側に向けて開口する溝64aが周方向に形成される。溝64aには、Oリング65が配置されて、フランジ部64と下部ケース21の間をシールする。
【0057】
角筒部66は、角筒型の内部空間を形成する部位である。角筒部66は、断面略四角形状の角筒型の部位である。角筒部66は、環状円板部61の下面とフランジ部64の上面の間に設けられる。角筒部66は、大径筒部63の側面から径方向中心を通って径方向反対側の大径筒部63の側面まで設けられる。角筒部66は、大径筒部63の側面で開口し、本体部60の外部空間と連通する内部空間S6を形成する。角筒部66は、中央壁面部66aと、貫通穴67と、穴68と、を有する(図4図6図10参照)。
【0058】
中央壁面部66aは、角筒部66の内部空間を仕切る部位である。中央壁面部66aは、上から見て中心部が径方向に膨らみ、それ以外が板状の部位である。中央壁面部66aは、角筒部66の内側の径方向中心に設けられる。これにより、内部空間S6が2つに仕切られる。
【0059】
貫通穴67は、逆止弁140が取り付けられる穴である。貫通穴67は、中央壁面部66aの中心部が径方向に膨らんでいる部分を上下方向に貫通する穴である。
【0060】
穴68は、角筒部66の内部空間S6と外部空間を連通させる穴である。穴68は、角筒部66の下面を上下に貫通する穴である。穴68は、中央壁面部66a近傍に設けられる。
【0061】
円筒部69は、後述する油滴状オイルが下方に流れ落ちる部位である。円筒部69は、円筒型の部位である。円筒部69は、角筒部66の下面から下方に向かって延びる(図6図13参照)。
【0062】
本体部60が下部ケース21に上側から嵌め込まれることによって、本体部60は、下部ケース21の内部空間を流入ポート23側の空間と、開口部25側の空間に仕切る。その結果、上流空間S1及び下流空間S3が形成される。上流空間S1は、本体部60によって仕切られる下部ケース21の内部空間のうち、本体部60の内部空間を含む流入ポート23側の空間である。下流空間S3は、本体部60によって仕切られる下部ケース21の内部空間のうち、開口部25側の空間における捕集構造体50と下部ケース21との間の空間である。
【0063】
(逆止弁)
逆止弁140は、本体部60(具体的には角筒部66)の穴68を開閉させる弁である。逆止弁140は、弁体141と、軸部142と、ストッパ部143と、を有する(図6図10図13参照)。
【0064】
弁体141は、穴68を開閉する部位である。弁体141は、円形の板部材である。弁体141の位置や数は、穴68を開閉することができれば特に限定されない。本実施形態において、弁体141は、角筒部66の下面に穴68を覆うように1つ設けられる。
【0065】
軸部142は、弁体141の移動方向を規制する部位である。軸部142は、棒状の部位である。軸部142は、弁体141の中心を貫通するように設けられる。軸部142は、角筒部66の貫通穴67に挿入される。これにより、軸部142は、弁体141とともに貫通穴67に沿って上下に移動可能となる。軸部142が上下に移動することで、弁体141が上下に移動し、穴68を開閉させる。
【0066】
ストッパ部143は、弁体141及び軸部142の上下方向の移動量を規制する部位である。ストッパ部143は、軸部142の一部が径方向に膨らんだ部位である。ストッパ部143は、軸部142において、弁体141の上面から特定の距離だけ上に離れた部分に設けられる。ここで、特定の距離とは、貫通穴67の上下方向の長さと弁体141を上下方向に移動させる量を足した長さである。ストッパ部143の径は、貫通穴67の径よりも大きくなっている。このため、軸部142が下向きに移動する際にストッパ部143が貫通穴67の縁に接触し、弁体141の下向きの移動が制限される。
【0067】
弁体141の上面には角筒部66の内部空間S6の圧力が作用し、弁体141の下面には円筒部69の内部空間の圧力(つまり、上流空間S1の圧力)が作用する。内部空間S6の圧力が上流空間S1の圧力よりも大きい場合は、弁体141は下方に移動し、穴68を開く。一方、上流空間S1に流入するブローバイガスの流量が大きくなって、弁体141の下面に作用する上流空間S1のブローバイガスの圧力が大きくなると、弁体141は上に移動し、穴68を閉じる。
【0068】
(バルブ)
バルブ70は、上流空間S1から流れるブローバイガスの流量を調節する弁である。バルブ70は、本体部60の小径筒部62の上端開口の上側に、上下に対向するように配置される。バルブ70は、下に移動することで小径筒部62の上端開口を閉じる。バルブ70は、上に移動することで小径筒部62の上端開口を開き、バルブ70と小径筒部62の上端開口との間には隙間が形成される。バルブ70は、バルブ本体71と、バルブ弾性体72と、筒状部73と、スプリング74と、穴75と、ストッパ部76と、を有する(図6図8図15図16参照)。なお、図15図16では、説明のために図6の断面図に対して本体部60を周方向に45度回転させ、バルブ70を周方向に90度回転させている。
【0069】
バルブ本体71は、小径筒部62の上端開口を開閉する弁体である。バルブ本体71は、円盤状の部材である。バルブ本体71は、本体部60の小径筒部62の上端開口の上方に配置される。バルブ本体71が上下に移動することによって、小径筒部62の上端開口が開閉する。バルブ本体71は、バルブ弾性体72を有する。
【0070】
バルブ弾性体72は、バルブ本体71が小径筒部62の上端開口に接触する際の衝撃を緩和する。バルブ弾性体72は、弾性を有する環状の部材である。バルブ弾性体72は、バルブ本体71の下面の外周縁に沿って設けられている。バルブ弾性体72は、バルブ本体71が下に移動すると、小径筒部62の上端開口に接触する。バルブ弾性体72は、バルブ本体71が上に移動すると、小径筒部62の上端開口から上に向かって離れ、バルブ弾性体72と小径筒部62の上端との間に環状の隙間が形成される。この隙間は、上流空間S1にブローバイガスが流入すると、ブローバイガスの流路C1となる。この隙間は、バルブ本体71の上下方向の位置によって大きさが変化する。すなわち、流路C1は、開度が変化する流路である。
【0071】
筒状部73は、バルブ70の重心位置を下げ、バルブ70に不均一な力が作用した際にバルブ70を本体部60に対して傾きにくくさせる部位である。筒状部73は、円筒型の部位である。筒状部73は、バルブ本体71の下面から下方へ突出するように設けられる。本実施形態において、筒状部73は、上流空間S1内に位置する。
【0072】
穴75は、バルブ70の開閉状態によらず上流空間S1のブローバイガスを流出させるための部位である。穴75は、バルブ本体71の外側の空間と筒状部73の内部空間とを連通させる穴である(図15図16参照)。穴75は、バルブ本体71の側面から筒状部73の内部空間にかけて設けられる。穴75は、筒状部73の内部空間にブローバイガスが流入すると、ブローバイガスの流路C2となる。穴75の大きさは、筒状部73の内部空間に流入するブローバイガスの流量によって変化しない。すなわち、流路C2は、開度が一定の流路である。ただし、本発明はこれに限定されず、バルブ70に穴75(流路C2)が設けられない構成としてもよい。
【0073】
スプリング74は、バルブ本体71を上下に移動可能な状態で支持する。スプリング74は、コイル状のばねである。スプリング74は、バルブ本体71の上面に配置される。具体的には、スプリング74は、バルブ本体71の上面と、後述する押さえ部材110の円板部111の下面との間に挟まれており、バルブ本体71を下向きに付勢する。
【0074】
ストッパ部76は、後述する押さえ部材110の筒部114の下面と接触し、バルブ本体71の上下方向の移動量を規制する。本実施形態に係るストッパ部76は、十字状である(図8参照)。ストッパ部76は、バルブ本体71の上面から上方に向かって突出する。ストッパ部76は、バルブ本体71が上方に移動すると筒部114の下面に接触し、バルブ本体71がそれ以上上方に移動することを規制する。
【0075】
ここで、流路C1と流路C2について説明する。流路C1の入口は、小径筒部62の内部空間(上流空間S1)である。流路C1の出口は、小径筒部62の外側及びバルブ70の外側である。流路C2の入口は、筒状部73の内部空間(上流空間S1)である。流路C2の出口は、バルブ70の外側である。
【0076】
(捕集体)
捕集体80は、通気性を有し、ブローバイガスからミスト状オイルを分離する部材である。捕集体80は、例えば不織布である。捕集体80は、流路C1の出口及び流路C2の出口と径方向に対向している(図4図6図9図13参照)。本体部60によって仕切られる下部ケース21の内部空間のうち、開口部25側の空間における捕集体80とバルブ70の外側及び小径筒部62の外側の間の空間を下流空間S2とする。
【0077】
(保持部材)
保持部材90は、捕集体80を保持するための部材である。本実施形態において、保持部材90は、捕集体80を径方向の外側と内側から挟み込むことで保持する。具体的に、保持部材90は、棒材91(保持部の一例)と、柱部材92(保持部の一例)と、内側保持部材93と、下側保持部材100と、を有する(図4図6図8図9図13参照)。
【0078】
棒材91は、捕集体80を径方向の外側から支持する部材である。棒材91の数は、捕集体80を径方向の外側から支持する作用があれば特に限定されない。本実施形態では、4個の例を示している(図9参照)。棒材91は、本体部60の環状円板部61の上面に周方向に間隔を空けて設けられる。棒材91は、環状円板部61の上面から上方に延びる(図4参照)。
【0079】
柱部材92は、捕集体80を径方向の外側から支持する部材である。また、柱部材92は、押さえ部材110が取り付けられる部材である。柱部材92は、本体部60の環状円板部61の上面に周方向に間隔を空けて設けられ、且つ周方向において2つの棒材91の間に設けられる。つまり、柱部材92と棒材91は、捕集体80の外周に沿って周方向に交互に設けられる。柱部材92は、環状円板部61の上面から上方に延びる(図4参照)。柱部材92の数は、捕集体80を径方向の外側から支持し、押さえ部材110が取り付けられる作用があれば特に限定されない。本実施形態では、4個の例を示している(図9参照)。
【0080】
柱部材92は、突起部94を有する。突起部94は、押さえ部材110が取り付けられる部位である。突起部94は、柱部材92の上面から突出する部位である。突起部94は、4個の柱部材92のうち径方向に対向する2個の柱部材92の上面に設けられる(図4図8参照)。
【0081】
内側保持部材93は、捕集体80を径方向の内側から支持する部材である。内側保持部材93は、棒状の部材である。内側保持部材93は、本体部60の環状円板部61の上面に周方向に間隔を空けて設けられ、棒材91及び柱部材92と径方向に対向しないように配置される。内側保持部材93は、環状円板部61の上面から上方に延びる(図4参照)。内側保持部材93の数は、捕集体80を径方向の内側から支持する作用があれば特に限定されない。本実施形態では、8個の例を示している(図9参照)。
【0082】
下方支持部材100は、捕集体80を下側から支持する部材である。下方支持部材100は、棒状の部材である。下方支持持部材100は、本体部60の環状円板部61の上面に周方向に間隔を空けて設けられる。下方支持部材100の数は、捕集体80を下側から支持する作用があれば特に限定されない。本実施形態では、16個の例を示している(図4図9参照)。下方支持部材100の外径側端部は、棒材91又は柱部材92と接合され、内径側端部は、内側保持部材93と接合されている。
【0083】
棒材91、柱部材92及び内側保持部材93は、捕集体80を径方向に挟み込むことで保持する。上述の通り、棒材91と柱部材92は、捕集体80を径方向外側から支持する。内側保持部材93は、捕集体80を径方向内側から支持する。これにより、捕集体80は、環状且つバルブ70を外周側から間隔を空けて囲むように配置される。なお、保持部材90は、捕集体80を支持できれば棒材91、柱部材92、内側保持部材93の何れか1つ、又は2つを組み合わせたもので構成されてもよい。例えば、保持部材90は、棒材91のみを捕集体80の外周に設けるものでもよい。また、棒材91、柱部材92及び内側保持部材93の数及び形状は、上記のものに限定されず自由に変更することが可能である。
【0084】
(押さえ部材)
押さえ部材110は、スプリング74を上側から押さえる部材である。但し、本実施形態では、押さえ部材110は、捕集体80を上から支持もする。押さえ部材110は、円板部111と、柱面部112と、フランジ部113と、筒部114と、突起部116と、を有する(図4図6図8参照)。
【0085】
円板部111は、スプリング74を上側から押さえる部位である。円板部111は、本体部60の環状円板部61よりも外径が小さい円形の板部材である(図6参照)。円板部111の下面は、スプリング74を上側から押さえている。
【0086】
筒部114は、スプリング74の径方向の移動を規制する部位である。筒部114は、下端が開口した円筒型の部位である(図6参照)。筒部114は、円板部111の下面に設けられる。筒部114の外周にはスプリング74が配置される。よって、スプリング74は、径方向の移動が規制される。また、バルブ70が上方に移動する際、筒部114の下端には、ストッパ部76が接触する。これにより、バルブ70の上方向への移動量は、制限される。
【0087】
突起部116は、板ばね120の径方向の移動を規制する部位である。突起部116は、円板部111の上面において上方に向かって突出する部位である。突起116は、円板部111の上面において周方向に間隔を空けて設けられる。突起116の数は、板ばね120の径方向の移動を規制する作用があれば特に限定されない。本実施形態では、4個の例を示している(図4参照)。
【0088】
柱面部112は、円板部111とフランジ部113を上下方向に接合する部位である。柱面部112は、板状の部位である。柱面部112は、円板部111の外縁部に周方向に間隔を空けて設けられる。柱面部112は、円板部111の外縁に沿って捕集体80の上面の高さまで下方に延びる。柱面部112の数は、円板部111とフランジ部113を上下方向に接合する作用があれば特に限定されない。本実施形態では、8個の例を示している(図8参照)。
【0089】
フランジ部113は、捕集体80を上側から支持する部材である。フランジ部113は、板状の部材である。フランジ部113の数は、捕集体80を上側から支持する作用があれば特に限定されない。フランジ部113は、柱面部112の下端から径方向外側に設けられる。このため、本実施形態では、フランジ部113が8個の例を示している(図8参照)。フランジ部113が柱面部112の下端から設けられているため、フランジ部113の下面は、捕集体80の上面と接触し、捕集体80を上方から支持する。フランジ部113は、下方保持部材100とともに捕集体80を上下方向に挟みこむことで保持する。フランジ部113は、溝部115を有する。
【0090】
溝部115は、柱部材92の突起部94と嵌合する部位である。溝部115は、径方向に対向する2個のフランジ部113にそれぞれ設けられる溝である。溝部115は、フランジ部113において径方向外側に開口し且つフランジ部113を上下に貫通するように設けられる。溝部115は、突起部94と嵌合する。これにより、押さえ部材110は、突起部94と柱部材92を介して本体部60に組み付けられる。
【0091】
<板ばね>
板ばね120は、圧縮量に比例する反発力を発生させる部材である。板ばね120は、金属製の環状の部材であり、上下に波型に形成される。このため、板ばね120は、上下に圧縮されると反発力を発生させる。板ばね120は、円板部111の上面且つ複数の突起116の内径側に1個配置される。板ばね120は、円板部111の上面と蓋部36の下面との間に挟まれて、上下に圧縮されている(図4図6参照)。これにより、板ばね120は、反発力を発生させ、円板部111を通じて捕集構造体50と、捕集構造体50が嵌め込まれている下部ケース21に対して下向きの力を作用させる。また、板ばね120が発生させる反発力は、蓋部36、小径筒体35及び排出ポート29を通じて上部ケース22に対して上向きの力を作用させる。
【0092】
板ばね120によって、下部ケース21には下向きの力が作用し、上部ケース22には上向きの力が作用する。ここで、上部ケース22は、フック部30を下部ケース21の爪部26に嵌合させることによって下部ケース21に組み付けられるが、フック部30と爪部26の寸法のばらつきによって、嵌合部にガタつきが発生する場合がある。これに対して、本実施形態によれば、板ばね120によって、下部ケース21に下向きの力が、上部ケース22に上向きの力が作用する(つまり、両ケースを上下に離間させる向きの反発力が作用する)ため、上部ケース22は、下部ケース21に対してガタつきなく組み付けられる。
【0093】
<オイルトラップ>
オイルトラップ130は、ブローバイガスからミスト状オイルを分離する。オイルトラップ130は、環状の部材である(図4図6図12参照)。オイルトラップ130は、環状面部131と、傾斜面部132(面部の一例)と、を有する。
【0094】
環状面部131は、オイルトラップ130の位置を決める。環状面部131は、環状に形成された板状の部位である。環状面部131は、突起部21aの上に載せられている。環状面部131の外周側の部位が突起部21aの上面とフランジ部64の下面に挟まれることにより、オイルトラップ130は保持される(図12参照)。
【0095】
傾斜面部132は、環状に形成された板状の部位である。傾斜面部132は、下方に向かって内径が小さくなるテーパ状となっている。傾斜面部132は、環状面部131の内周側の縁に設けられる。傾斜面部132は、流入ポート23と径方向に対向するように配置される。なお、傾斜面部132は、環状面部131の内周側の縁から、鉛直下方に延びるものであってもよい。傾斜面部132の下端は、下側ケース21から上方に離間し、隙間が形成されている。
【0096】
隙間133は、傾斜面部132の下端と下側ケース21の間の隙間である。以下、流入ポート23から隙間133に至るまでの空間を入口空間S0とし、傾斜面部131よりも下流側の空間を上流空間S1とする。隙間133は、入口空間S0から上流空間S1に向かってブローバイガスが流れる流路C0として機能する。
【0097】
==ブローバイガスの流れ==
ここで、ブローバイガスの流れについて説明する。図13から図16の黒矢印は、ブローバイガスの流れを示している。ブローバイガスは、ヘッドカバー5の内部空間から流入ポート23を通って入口空間S0に流入する。
【0098】
入口空間S0に流入するブローバイガスは、流入ポート23に対向して配置される傾斜面部132に衝突し、流れる方向が変化する。一方、ブローバイガスに含まれるミスト状オイルの一部(特に油滴のサイズが大きいミスト状オイル)は、ガスの流れの向きの変化についていけず、傾斜面部132に衝突し、傾斜面部132の表面上で凝集することによりブローバイガスから分離される。これにより、入口空間S0から流出するブローバイガスのミスト状オイルの濃度は、入口空間S0に流入するブローバイガス(つまりヘッドカバー5の内部空間のブローバイガス)のミスト状オイルの濃度よりも低くなる。ミスト状オイルの濃度が低くなったブローバイガスは、流路C0(隙間133)を通って上流空間S1へ流入する。
【0099】
ここで、上流空間S1に流入するブローバイガスの流量は、エンジン4の運転状態等によって変化する。図15に示すように、上流空間S1に流入するブローバイガスの流量が小さい時は、上流空間S1におけるブローバイガスの圧力が低いため、バルブ70は閉じている。具体的には、上流空間S1におけるブローバイガスの圧力が低いため、スプリング74のバネ力によりバルブ弾性体72が小径筒部62の上端開口に密着して塞ぐことで、小径筒部62の上端開口は、閉じられた状態となる。この場合、ブローバイガスは、流路C2のみを通って外部空間S2へ流れる。
【0100】
一方、上流空間S1に流入するブローバイガスの流量が増加し、上流空間S1におけるブローバイガスの圧力が一定の大きさを超えると、図16に示すように、バルブ70が開いて流路C1が形成される。具体的には、上流空間S1におけるブローバイガスの圧力が上昇すると、上流空間S1のブローバイガスの圧力によりバルブ本体71に作用する上向きの力が、スプリング74によりバルブ本体71に作用する下向きの力よりも大きくなる。従ってバルブ本体71は上向きに移動して、バルブ弾性体72が小径筒部62の上端から上方に離間し、小径筒部62の上端開口が開いた状態となる。この場合、ブローバイガスは、流路C1,C2の両方を通って外部空間S2へ流れる。
【0101】
なお、上流空間S1のブローバイガスの圧力が高いほど、バルブ本体71の上方への移動量が大きくなり、バルブ弾性体72と小径筒部62の上端との間の隙間である流路C1の大きさも大きくなる。すなわち、ブローバイガスの流路C1の開度は、上流空間S1におけるブローバイガスの圧力が高いほど大きくなる。
【0102】
上述の通り、上流空間S1に流入するブローバイガスの流量が大きいほど、バルブ70の開度(つまり流路C1の開度)は大きい。このため、上流空間S1に流入するブローバイガスの流量が大きい場合、バルブ70の開度(つまり流路C1の開度)は大きいため、流路C1を流れるブローバイガスの流量は大きくなる。一方、上流空間S1に流入するブローバイガスの流量が小さいほど、バルブ70の開度(つまり流路C1の開度)は小さい。このため、上流空間S1に流入するブローバイガスの流量が小さい場合、バルブ70の開度(つまり流路C1の開度)は小さいため、流路C1を流れるブローバイガスの流量は小さくなる。また、流路C1の断面積が小さくなるため、流路C1を流れるブローバイガスの流速は、速くなる。
【0103】
バルブが閉じる際に、バルブ本体が、弁座に衝突して打音が発生する。バルブは、バルブの開度が大きい状態から閉じられると、バルブ本体が弁座に勢いよく衝突して大きな打音が発生する。しかし、バルブ70に流路C2が設けられているため、ブローバイガスが同じ流量で流入する場合に、流路C2が設けられていないバルブと比べてバルブ70の開度が小さくなることで、バルブ本体71と弁座(小径筒部62の上端開口)が衝突して発生する打音の大きさを低減することができる。
【0104】
バルブが開いた状態において上流空間に流入するブローバイガスの流量が変動すると、ブローバイガスの圧力によりバルブに作用する力の大きさが不均一となる。この時、バルブが本体部に対して傾いた状態となって、バルブと本体部の間に形成される流路を通過するブローバイガスの流れが乱れることがある。ブローバイガスの流れが乱れると、ブローバイガスの流速が低くなり、捕集体の性能(すなわち、ブローバイガスからミスト状オイルを捕集する性能)が低下する。しかし、ブローバイガスの一部が流路C2を通って外部空間S2へ流れるため、バルブ70に流路C2が設けられていない場合と比べて、上流空間S1のブローバイガスの圧力の変動は、小さくなる。その結果、ブローバイガスの圧力によりバルブ70に作用する力の大きさは、不均一になりにくい。従って、バルブ70は本体部60に対して傾きにくくなるため、流路C1を通過するブローバイガスの流れが乱れにくい。
【0105】
上述の通り、バルブ70が閉じている場合、ブローバイガスは、上流空間S1に滞留せず流路C2を通って外部空間S2へ流れる。従って、ブローバイガスが上流空間S1に滞留しにくいため、上流空間S1におけるブローバイガスの圧力は、流路C2が設けられていない場合と比べて、上昇しにくい。つまり、上流空間S1におけるブローバイガスの圧力が一定の大きさを超え、バルブ70が開いた状態となるために必要なブローバイガスの流量が増加するため、バルブ70が開いた状態となる頻度は、低くなる。
【0106】
続いて、図14を用いて流路C1,C2を通過した後のブローバイガスの流れを説明する。図14は、説明のために図6の断面図に対して本体部60を周方向に15度回転させている。
【0107】
図14に示すように、ブローバイガスは、流路C1、流路C2を通って外部空間S2へ流れ、流路C1、流路C2の出口に対向している捕集体80に衝突する。ブローバイガスが捕集体80を通過する間に、ブローバイガスに含まれるミスト状オイルは、捕集体80により捕集されることにより分離される。捕集体80を通過してミスト状オイルが分離されたオイル除去後のブローバイガスは、棒材91及び柱部材92の間の隙間を通じて下流空間S3へ流れる。
【0108】
ブローバイガスには、ミスト状オイルだけではなくスラッジ等のごみも含まれている。従来の捕集構造では、ブローバイガスは、捕集体を通過しないため捕集体に付着したごみを吹き飛ばすことができない。その結果、ごみが捕集体に堆積してしまっていた。しかし、本実施形態によれば、ブローバイガスが捕集体80を通過するため、ブローバイガスは、捕集体80に付着したごみを吹き飛ばすことができる。なお、上流空間S1に流入するブローバイガスの流量が大きい場合、流路C1を流れるブローバイガスの流速は速くなる。よって、捕集体80に付着したごみは、ブローバイガスにより吹き飛ばされやすくなる。また、上流空間S1に流入するブローバイガスの流量が小さい場合、バルブ70の開度が小さくなって流路C1を流れるブローバイガスの流速は速くなる。よって、捕集体80に付着したごみは、ブローバイガスにより吹き飛ばされる。
【0109】
オイル除去後のブローバイガスは、図14に示すように、下流空間S3から上部上流空間S4へ流れる。ここで、PCVバルブ40が閉じた状態であれば、オイル除去後のブローバイガスは、上部上流空間S4内に滞留する。一方、PCVバルブ40が開いた状態であれば、オイル除去後のブローバイガスは、上部下流空間S5へ流れる。そして、オイル除去後のブローバイガスは、排出ポート29を通ってブリーザーパイプ3へ流れる。
【0110】
上部下流空間S5が、排出ポート29及びブリーザーパイプ3を通じてエンジン4に接続されているため、エンジン4の吸気圧(負圧)が高くなってダイヤフラム弁41の弁部41aを下方へ引っ張る力がスプリング42の弾性力よりも大きくなると、PCVバルブ40の開度が小さくなる。また、エンジン4の吸気圧がさらに高くなると、弁部41aが小径筒体35の上端と接触して、PCVバルブ40は完全に閉じる。一方、エンジン4の吸気圧が低くなって、弁部41aを下方へ引っ張る力よりもスプリング42の弾性力の方が大きくなると、PCVバルブ40の開度が大きくなる。
【0111】
上述の通り、エンジン4の吸気圧(負圧)が過度に高い場合には、PCVバルブ40の開度が小さくなり、上部下流空間S5へ流入するブローバイガスの流量が低下する。一方、エンジン4のクランクケース側の圧力が高い場合には、PCVバルブ40の開度が大きくなり、上部下流空間S5へ流入するブローバイガスの流量が増加する。これにより、ブローバイガスの流量がPCVバルブ40によって適切に調整される。また、エンジン4のクランクケース内の圧力も適切に調整される。
【0112】
なお、ブローバイガスは、水蒸気を含む。よって、捕集体80には水蒸気も付着する。低温環境では、捕集体80に付着した水蒸気が凍結してしまい、ブローバイガスが捕集体80を通過できない時もある。一方、本実施形態では、下方保持部材100が周方向に間隔を空けて設けられているため、捕集体80の下側において下方保持部材100の間に隙間が形成される。この隙間は、外部空間S2と下流空間S3とを連通させる。また、フランジ部113が周方向に間隔を空けて設けられているため、捕集体80の上側においてフランジ部113の間に隙間が形成される。この隙間は、外部空間S2と下流空間S3とを連通させる。このため、捕集体80に付着した水蒸気が凍結してブローバイガスが捕集体80を通過できない状態になっても、ブローバイガスは捕集体80に衝突して流れの向きを上下に変えて捕集体80の上下に形成されている隙間を通じて外側空間S2から下流空間S3へ流れる。なお、ブローバイガスが捕集体80に衝突して上下に流れの向きを変える際、ブローバイガスに含まれるミスト状オイルは、その流れの向きの変化についていけず、捕集体80に衝突して捕集されることで、ブローバイガスから分離される。
【0113】
==オイルの流れ==
次に、図13を用いて、オイルトラップ130によってブローバイガスから分離されたミスト状オイルの流れを説明する。白矢印は、ミスト状オイルの流れを示す。ブローバイガスから分離されたミスト状オイルは、重力によって下方に流れ、下部ケース21のオイル排出ポート24側の端面へ流れる。この端面がオイル排出ポート24に向かって傾いているため、ミスト状オイルは、オイル排出ポート24へ流れる。そして、ミスト状オイルは、オイル排出ポート24からヘッドカバー5の内部空間へ流れる。
【0114】
次に、図14を用いて、捕集体80によってブローバイガスから分離されたミスト状オイルの流れを説明する。白矢印は、油滴状オイルの流れを示す。捕集体80によってブローバイガスから分離されたミスト状オイルは、凝集して、油滴状オイルとなる。図14に示すように、油滴状オイルは、捕集体80を径方向外側に向かって流れるブローバイガスの流れ、及び重力によって捕集体80から下流空間S3へ流れる。下流空間S3に流れた油滴状オイルは、さらに下方の内部空間S6へ流れる。
【0115】
油滴状オイルは、内部空間S6を通って穴68へ流れる。穴68は、逆止弁140によって開閉される。上述の通り、弁体141の上面側である内部空間S6の圧力よりも弁体141の下面側である上流空間S1の圧力が高い場合は、弁体141が押し上げられて、穴68が閉じる。このため、上流空間S1に流入するミスト状オイルを含むブローバイガスが、内部空間S6に流れることがない。一方、内部空間S6の圧力が上流空間S1の圧力に対して高い場合又は同じ場合は、弁体141が押し下げられて、穴68が開く。この時、油滴状オイルは、穴68を通って上流空間S1へ流れる。そして、油滴状オイルは、円筒部69の内側を伝って流れ落ち、下部ケース21のオイル排出ポート24側の端面へ流れる。そして、油滴状オイルは、オイル排出ポート24へ流れ、オイル排出ポート24を通ってヘッドカバー5の内部空間へ流れる。
【0116】
上述の通り、上流空間S1に流入したブローバイガスは、オイルトラップ130によりミスト状オイルの一部が分離されている。このため、捕集体80に衝突するブローバイガスのミスト状オイルの濃度は、ヘッドカバー5の内部空間のブローバイガスのミスト状オイルの濃度よりも低い。従って、捕集体80によって捕集されるミスト状オイルの量が少なくなるため、捕集体80は、捕集能力の範囲内でブローバイガスからミスト状オイルを分離することができる。また、捕集体80によって捕集されたミスト状オイルは、凝集して、油滴状オイルとなった後、下流空間S3及び内部空間S6へ流れる。捕集体80によって捕集されるミスト状オイルの量が少なくなるため、下流空間S3及び内部空間S6に流れる油滴状オイルの量も少なくなる。
【0117】
<効果>
本実施形態において、ブローバイガスからミスト状オイルを捕集する捕集構造体50と、捕集構造体50を収容する内部空間を有するケース20と、を備え、ブローバイガスが内部に流入するヘッドカバー5の内部空間にケース20の一部が配置されるように設けられるオイルセパレータ2は、ケース20が、ヘッドカバー5の内部空間からブローバイガスが流入する流入ポート23を有し、オイルセパレータ2は、流入ポート23に対向して設けられる傾斜面部132を有するオイルトラップ130を更に備え、傾斜面部132の直下にはブローバイガスが捕集構造体50へ流れる流路C0が形成される。
【0118】
上記の構成によれば、流入ポート23に対向して傾斜面部132が設けられているため、流入ポート23から流入する高濃度のミスト状オイルを含むブローバイガスが傾斜面部132に衝突する。この時、ブローバイガスに含まれるミスト状オイルの一部が分離される。その結果、捕集構造体50に流入するブローバイガスは、ミスト状オイルの濃度が低くなっている。従って、捕集体80によって捕集されるミスト状オイルの量が少なくなるため、捕集体80は、ミスト状オイルの捕集能力を超えることなくブローバイガスからミスト状オイルを分離することができる。つまり、オイルセパレータ2は、高濃度のミスト状オイルを含むブローバイガスからミスト状オイルを捕集することができる。
【0119】
また、本実施形態のオイルセパレータ2は、ヘッドカバー5の内部空間にケース20の一部が配置されるように設けられるため、配管、ブラケット等の部品が不要となる。その結果、オイルセパレータ2に取り付けられる部品点数が削減されるとともに、オイルセパレータ2の配置スペースを削減できる。
【0120】
オイルトラップを備えない構造のオイルセパレータでは、ミスト状オイルの濃度が高いブローバイガスが捕集構造体に流入する。従って、捕集体によって捕集されるミスト状オイルの量が多い。ミスト状オイルは、捕集体によって捕集された後、凝集して油滴状オイルとなり、下流空間及び内部空間に流れる。下流空間及び内部空間に流れた油滴状オイルは、内部空間と上流空間の間に設けられた穴が開いて上流空間に排出されるまでは下流空間及び内部空間に溜まり続ける。従って、捕集体によって捕集されるミスト状オイルの量が多いと、油滴状オイルが下流空間及び内部空間の容量一杯まで溜まりやすい。しかし、本実施形態のオイルセパレータ2は、上述の通り、捕集構造体50に流入するブローバイガスのミスト状オイルの濃度が低くなっている。従って、捕集体80によって捕集されるミスト状オイルの量が少なくなるため、油滴状オイルが下流空間S3及び内部空間S6の容量一杯まで溜まりにくい。
【0121】
また、本実施形態において、ブローバイガスからミスト状オイルを捕集する捕集構造体50と、捕集構造体50を収容する内部空間を有するケース20と、を備え、ブローバイガスが内部に流入するヘッドカバー5の内部空間にケース20の一部が配置されるように設けられるオイルセパレータ2は、ケース20が、ヘッドカバー5の内部空間からブローバイガスが流入する流入ポート23を有し、オイルセパレータ2は、流入ポート23から流入したブローバイガスが衝突するように設けられる傾斜面部132を有するオイルトラップ130を更に備え、傾斜面部132の直下にはブローバイガスが捕集構造体50へ流れる流路C0が形成される。
【0122】
上記の構成によれば、ブローバイガスが衝突するように傾斜面部132が設けられているため、流入ポート23から流入するブローバイガスが傾斜面部132に衝突する。この時、ブローバイガスに含まれるミスト状オイルの一部が分離される。その結果、捕集構造体50に流入するブローバイガスは、ミスト状オイルの濃度が低くなっている。従って、捕集体80によって捕集されるミスト状オイルの量が少なくなるため、捕集体80は、ミスト状オイルの捕集能力を超えることなくブローバイガスからミスト状オイルを分離することができる。
【0123】
また、本実施形態に係るオイルセパレータ2は、ケース20が互いに係合する下部ケース21と、上部ケース22とで構成され、下部ケース21と上部ケース22との間に反発力を発生させる板ばね120を更に備える。
【0124】
一般に、互いに係合するケース部品同士は、寸法のばらつきにより精度良く組み付けることが難しい。従って、ケース部品を組み付けるために溶着や接着等の工程が必要となる。これに対して、上記の構成によれば、下部ケース21と上部ケース22とがそれぞれの寸法にばらつきがあっても、板ばね120が発生させる反発力により寸法のばらつきを吸収できる。従って、溶着や接着等の工法を用いることなく、下部ケース21と上部ケース22を精度良く組み付けることができる。
【0125】
また、溶着や接着等の工法には、ケースの形状に合わせた治具が必要である。従って、設計変更に伴ってケースの形状が変わる場合、そのケースの形状に合わせた治具が新たに必要となる。一方、上記の構成によれば、オイルセパレータ2の組み立ての際に治具を必要としないため、ケース20の形状を変更する際に必要なコストが抑えられる。
【0126】
従来のオイルセパレータでは、バルブが開いている時にブローバイガスの流量が変動すると、ブローバイガスの圧力によりバルブに作用する力の大きさが不均一となり、バルブは本体部に対して傾いた状態となることがある。バルブが本体部に対して傾いている場合、バルブと本体部の間を通過するブローバイガスの流れの方向が乱れるため、ブローバイガスの流速が低下する。その結果、ブローバイガスの捕集体に衝突する勢いが弱まり、捕集体の性能(すなわち、ブローバイガスからミスト状オイルを捕集する性能)が低下することがある。しかし、本実施形態に係るオイルセパレータ2は、バルブ70のバルブ本体71に流路C2(穴75)が設けられているため、バルブ70が閉じている場合、ブローバイガスは、上流空間S1に滞留せず流路C2を通過する。従って、上流空間S1に流入するブローバイガスの流量が増加しても、上流空間S1におけるブローバイガスの圧力が上昇しにくいため、バルブ70が開く頻度は少なくなる。すなわち、バルブ70が開いている時にブローバイガスの流量が変動してバルブ70が本体部60に対して傾いた状態となる頻度は少なくなる。その結果、捕集体80の性能が低下する頻度は、少なくなる。
【0127】
また、本実施形態に係るオイルセパレータ2は、バルブ70が開いているときにブローバイガスの流量が変動しても、ブローバイガスの一部が流路C2を通過するため、バルブ本体71に流路C2が設けられていない場合と比べて上流空間S1におけるブローバイガスの圧力の変動が小さくなる。従って、ブローバイガスの流量が変動した際にバルブ70に作用する力は、不均一になりにくくなる。その結果、バルブ70が開いているときにブローバイガスの流量が変動しても、バルブ70が本体部60に対して傾きにくくなるため、捕集体80の性能は、低下しにくい。
【0128】
バルブが閉じる際に、バルブ本体が弁座に衝突して、打音が発生する。上流空間に流入するブローバイガスの流量が増加すると、バルブの開度が大きくなり、その状態からバルブが閉じられると大きな打音が発生する。しかし、本実施形態に係るオイルセパレータ2は、バルブ本体71に流路C2が設けられているため、同じ流量のブローバイガスが上流空間S1に流入した場合において、バルブに流路C2が設けられていないバルブと比べてバルブの開度が小さくなる。従って、バルブ70が閉じる際に発生する打音は、低減される。
【0129】
<変形例>
以下に説明する各変更点を組み合わせて適用してもよい。
【0130】
(1)変形例1
上記実施形態においては、オイルセパレータ2は、板ばね120を備え、ケース20が互いに係合する下部ケース21と上部ケース22とで構成されていた。しかし、オイルセパレータ2は、板ばね120を備えずに、接着や溶着による工法によって組み立てられるものでもよい。
【符号の説明】
【0131】
2…オイルセパレータ
5…ヘッドカバー(箱体)
20…ケース
21…下部ケース(第1ケース)
22…上部ケース(第2ケース)
23…流入ポート(開口部)
50…捕集構造体
120…板ばね(組み付け弾性体)
130…オイルトラップ
132…傾斜面部(面部)
C0…流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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