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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140120
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20241003BHJP
   F04B 39/12 20060101ALI20241003BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20241003BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F04B39/00 106B
F04B39/00 106A
F04B39/12 J
F04C29/00 T
F04C29/00 S
H02K5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051119
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】大橋 寛之
(72)【発明者】
【氏名】柳 恵史
【テーマコード(参考)】
3H003
3H129
5H605
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB05
3H003AC03
3H003CD01
3H003CE02
3H003CF02
3H003CF03
3H129AA02
3H129AA15
3H129AB03
3H129BB43
3H129BB44
3H129BB47
3H129CC09
3H129CC27
5H605CC06
5H605EC11
(57)【要約】
【課題】端子箱がステータコアの径方向の外方に配置された電動圧縮機において、引出線の破損による絶縁不良を抑えることができる電動圧縮機を提供する。
【解決手段】モータ室17は、モータハウジング13の開口側に、回転軸5の径方向に対してステータコア77の外周側のエッジが露出するように、モータハウジング13の一部分が他の部分よりも外方に膨出し、端子箱61を収容する膨張空間60を有する。膨張空間60には、複数の接続端子75が回転軸5の軸方向に並び、少なくとも一つの接続端子75が径方向に対してステータコア77と重なるように端子箱61が収容されている。複数の引出線76は、接続される接続端子75が束ね部80から離れる程、接続端子75までの長さが長くされている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸に固定されたロータ、前記ロータを囲む円筒状のステータコア、及び前記回転軸の軸方向における前記ステータコアの両端面からそれぞれコイルエンドが突出するように前記ステータコアに巻回された複数のコイルを備え、前記回転軸を回転させるモータと、
前記回転軸の回転によって駆動して流体を圧縮する圧縮部と、
前記モータを駆動するインバータと、
内周面側に前記モータを収容し、外周面側に前記インバータが搭載される有底筒状のモータハウジングと、
前記圧縮部を収容する有底筒状の圧縮部ハウジングと、
前記モータハウジングの開口側の第1端面及び前記圧縮部ハウジングの開口側の第2端面との間に設けられ、前記モータを収容したモータ室を前記モータハウジングとともに区画するとともに、前記圧縮部を収容した圧縮部室を前記圧縮部ハウジングとともに区画し、かつ前記回転軸が挿通される挿通孔を有し、前記回転軸を回転可能に支持する軸支部材と、
前記モータハウジングに形成された複数の貫通孔をそれぞれ貫通し、複数の前記コイルと前記インバータとを電気的に接続する複数の導電ピンと、を有し、
前記モータは、
前記モータハウジングの開口側に配置された前記コイルエンドにおいて、前記ステータコアの周方向に延在する複数の前記コイルを束ねる束ね部の前記周方向の一端から引き出された複数の引出線と、
複数の前記導電ピンと複数の前記引出線とをそれぞれ電気的に接続する複数の接続端子と、
複数の前記接続端子を内部に収容するとともに複数の前記導電ピンがそれぞれ挿通される複数のピン挿入孔が形成された端子箱と、を有する電動圧縮機であって、
前記モータ室は、前記モータハウジングの開口側に、前記回転軸の径方向に対して前記ステータコアの外周側のエッジが露出するように、前記モータハウジングの一部分が他の部分よりも外方に膨出し、前記端子箱を収容する膨張空間を有し、
前記膨張空間には、複数の前記接続端子が前記軸方向に並び、少なくとも一つの前記接続端子が前記径方向に対して前記ステータコアと重なるように前記端子箱が収容され、
複数の前記引出線は、接続される前記接続端子が前記束ね部から離れる程、前記束ね部から前記接続端子までの長さが長いことを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記束ね部は、前記ステータコアの内周側から外周側にかけて複数の前記コイルを整列させ、
複数の前記引出線は、前記束ね部で最も内周側から引き出される第1引出線と、前記束ね部で最も外周側から引き出される第2引出線と、前記径方向において前記第1引出線と前記第2引出線との間から引き出される第3引出線と、を有し、
前記第1引出線が前記束ね部から引き出される長さは、前記第3引出線が前記束ね部から引き出される長さよりも長く、前記第3引出線が前記束ね部から引き出される長さは、前記第2引出線が前記束ね部から引き出される長さよりも長い請求項1記載の電動圧縮機。
【請求項3】
複数の前記接続端子は、前記第1引出線に接続される第1接続端子と、前記第2引出線に接続される第2接続端子と、前記第3引出線に接続される第3接続端子と、を有し、
前記端子箱は、前記第1接続端子に前記第1引出線が接続され、前記第2接続端子に前記第2引出線が接続され、かつ、前記第3接続端子に前記第3引出線が接続された状態で、所定の位置で所定の回転中心軸の周りに回転されることで、前記膨張空間に配置される姿勢となり、
前記端子箱を回転させた際の前記第1接続端子の回転半径は前記第3接続端子の回転半径よりも大きく、前記第3接続端子の回転半径は前記第2接続端子の回転半径よりも大きい請求項2記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の電動圧縮機の一例が開示されている。この電動圧縮機は、流体を圧縮して吐出する圧縮部と、圧縮部を駆動するモータと、モータを駆動するインバータとを備えている。
【0003】
モータは、円筒状のステータコアと、複数のコイルとを備えている。複数のコイルは、ステータコアにおける軸方向の両端部からそれぞれコイルエンドが突出するように、ステータコアに巻回されている。モータは、圧縮部とステータコアの軸方向に並んで配置されている。
【0004】
また、モータは、複数の引出線と、複数の接続端子と、端子箱とを備えている。複数の引出線は、ステータコアの軸方向における圧縮部に近い方のコア端面に形成されたコイルエンドから引き出されている。端子箱は、複数の接続端子を収容している。複数の引出線と複数の接続端子とは、端子箱内でそれぞれ電気的に接続されている。
【0005】
この電動圧縮機では、端子箱がステータコアの径方向の外方に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-193638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、端子箱ロック内の接続端子は発熱部品である。このため、接続端子の熱劣化を抑えるためには、圧縮部で圧縮されて高温になった流体が吐出される吐出領域から端子箱をなるべく遠ざけて配置するのが望ましい。
【0008】
しかし、上記従来の電動圧縮機において、端子箱を圧縮部の吐出領域から遠ざけるべく、例えば圧縮部に近い方のコア端面よりも軸方向の内方に端子箱を配置すると、コイルエンドから引き出されて端子箱内の接続端子に接続された引出線が、コア端面のエッジに当接することで破損して、絶縁不良を起こすおそれがある。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、端子箱がステータコアの径方向の外方に配置された電動圧縮機において、接続端子の熱劣化を抑えつつ、引出線の破損による絶縁不良を抑えることができる電動圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電動圧縮機は、回転軸と、
前記回転軸に固定されたロータ、前記ロータを囲む円筒状のステータコア、及び前記回転軸の軸方向における前記ステータコアの両端面からそれぞれコイルエンドが突出するように前記ステータコアに巻回された複数のコイルを備え、前記回転軸を回転させるモータと、
前記回転軸の回転によって駆動して流体を圧縮する圧縮部と、
前記モータを駆動するインバータと、
内周面側に前記モータを収容し、外周面側に前記インバータが搭載される有底筒状のモータハウジングと、
前記圧縮部を収容する有底筒状の圧縮部ハウジングと、
前記モータハウジングの開口側の第1端面及び前記圧縮部ハウジングの開口側の第2端面との間に設けられ、前記モータを収容したモータ室を前記モータハウジングとともに区画するとともに、前記圧縮部を収容した圧縮部室を前記圧縮部ハウジングとともに区画し、かつ前記回転軸が挿通される挿通孔を有し、前記回転軸を回転可能に支持する軸支部材と、
前記モータハウジングに形成された複数の貫通孔をそれぞれ貫通し、複数の前記コイルと前記インバータとを電気的に接続する複数の導電ピンと、を有し、
前記モータは、
前記モータハウジングの開口側に配置された前記コイルエンドにおいて、前記ステータコアの周方向に延在する複数の前記コイルを束ねる束ね部の前記周方向の一端から引き出された複数の引出線と、
複数の前記導電ピンと複数の前記引出線とをそれぞれ電気的に接続する複数の接続端子と、
複数の前記接続端子を内部に収容するとともに複数の前記導電ピンがそれぞれ挿通される複数のピン挿入孔が形成された端子箱と、を有する電動圧縮機であって、
前記モータ室は、前記モータハウジングの開口側に、前記回転軸の径方向に対して前記ステータコアの外周側のエッジが露出するように、前記モータハウジングの一部分が他の部分よりも外方に膨出し、前記端子箱を収容する膨張空間を有し、
前記膨張空間には、複数の前記接続端子が前記軸方向に並び、少なくとも一つの前記接続端子が前記径方向に対して前記ステータコアと重なるように前記端子箱が収容され、
複数の前記引出線は、接続される前記接続端子が前記束ね部から離れる程、前記束ね部から前記接続端子までの長さが長いことを特徴とする。
【0011】
本発明の電動圧縮機では、端子箱の配置と、その端子箱内の複数の接続端子と複数の引出線との接続の仕方とを以下のように工夫している。
【0012】
すなわち、複数の引出線は、モータハウジングの開口側、すなわち圧縮部に近い側のコイルエンドにおいて、束ね部で束ねられている。この束ね部から引き出された複数の引出線は、端子箱に収容された複数の接続端子とそれぞれ接続されている。端子箱は、ステータコアの径方向の外方において、複数の接続端子が軸方向に並び、かつ、複数の接続端子のうちの少なくとも一つが径方向に対してステータコアと重なるように配置されている。そして、複数の引出線は、接続される接続端子が束ね部から離れる程、束ね部から接続端子までの長さが長くされている。すなわち、束ね部から引き出された引出長さが最も長い引出線が、束ね部から最も離れた接続端子に接続されている。
【0013】
このような構成により、複数の接続端子のうち束ね部に近い方の接続端子に接続された引出線が、ステータコアの外周側のエッジに接触することを抑えることができる。すなわち、仮に複数の接続端子のうち引出長さが最も長い引出線が束ね部から近い方の接続端子に接続される場合、その引出線がたるむことでステータコアの外周側のエッジに接触し易くなる。この点、この電動圧縮機では、複数の接続端子のうち引出長さが最も長い引出線が束ね部から最も離れた接続端子に接続されているため、この引出線がたるむことが抑制され、ステータコアのエッジに接触し難くなる。その結果、ステータコアのエッジとの当接により引出線が損傷することを抑えることができる。
【0014】
また、端子箱は、モータハウジングの開口側で、複数の接続端子のうちの少なくとも一つが径方向に対してステータコアと重なるように配置されている。すなわち、端子箱は、モータハウジングの開口側、すなわち圧縮部に近い側におけるステータコアの外周側のエッジに対して、圧縮部から離れる側に少なくとも一つの接続端子が位置するように配置されている。このため、圧縮部で圧縮されて高温になった流体の影響で端子箱内の接続端子が熱劣化することを、抑えることができる。
【0015】
したがって、本発明の電動圧縮機によれば、端子箱がステータコアの径方向の外方に配置された電動圧縮機において、接続端子の熱劣化を抑えつつ、引出線の破損による絶縁不良を抑えることができる。
【0016】
束ね部は、ステータコアの内周側から外周側にかけて複数のコイルを整列させることが好ましい。また、複数の引出線は、束ね部で最も内周側から引き出される第1引出線と、束ね部で最も外周側から引き出される第2引出線と、回転軸の径方向において第1引出線と第2引出線との間から引き出される第3引出線と、を有することが好ましい。そして、第1引出線が束ね部から引き出される長さは、第3引出線が束ね部から引き出される長さよりも長く、第3引出線が束ね部から引き出される長さは、第2引出線が束ね部から引き出される長さよりも長いことが好ましい。
【0017】
この場合、束ね部でステータコアのより内周側から引き出される引出線ほど、束ね部から引き出される長さ、すなわち束ね部から接続端子までの長さが長くなる。このため、第1引出線、第2引出線及び第3引出線がたるむことを抑制でき、第1引出線、第2引出線及び第3引出線がステータコアのエッジに接触することを抑制できる。
【0018】
複数の接続端子は、第1引出線に接続される第1接続端子と、第2引出線に接続される第2接続端子と、第3引出線に接続される第3接続端子と、を有することが好ましい。また、端子箱は、第1接続端子に第1引出線が接続され、第2接続端子に第2引出線が接続され、かつ、第3接続端子に第3引出線が接続された状態で、所定の位置で所定の回転中心軸の周りに回転されることで、膨張空間に配置される姿勢となることが好ましい。そして、端子箱を回転させた際の第1接続端子の回転半径は第3接続端子の回転半径よりも大きく、第3接続端子の回転半径は第2接続端子の回転半径よりも大きいことが好ましい。
【0019】
この場合、第1接続端子に第1引出線が接続され、第2接続端子に第2引出線が接続され、第3接続端子に第3引出線が接続された端子箱は、回転されてから膨張空間内に配置される。この回転においては、束ね部で最も内周側から引き出され、束ね部から引き出される長さが最も長い第1引出線が接続された第1接続端子は、最も大きな回転半径で回転する。このため、束ね部からの引出長さが最も長い第1引出線によって、第2引出線及び第3引出線がステータコアのエッジに接触することを抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電動圧縮機によれば、端子箱がステータコアの径方向の外方に配置された電動圧縮機において、接続端子の熱劣化を抑えつつ、引出線の破損による絶縁不良を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施例の電動圧縮機の断面図である。
図2図2は、実施例の電動圧縮機に係り、図1のA-A線断面図である。
図3図3は、実施例の電動圧縮機に係り、(a)は端子箱の平面図、(b)は端子箱の右側面図である。
図4図4は、実施例の電動圧縮機に係り、端子箱内の構成を模式的に示す部分断面図である。
図5図5は、実施例の電動圧縮機に係り、引出線の組付け方法を説明する模式図である。
図6図6は、実施例の電動圧縮機に係り、引出線の組付け方法を説明する模式図である。
図7図7は、実施例の電動圧縮機に係り、引出線の組付け方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0023】
(実施例)
実施例の電動圧縮機(以下、単に圧縮機という。)は、具体的には、スクロール型電動圧縮機である。この圧縮機は、図示しない車両に搭載されており、車両用空調装置を構成している。具体的には、産業用車両に搭載されるユニット型空調装置を構成している。
【0024】
図1に示すように、実施例の圧縮機は、ハウジング1と、回転軸5と、モータ7と、固定スクロール部材9と、旋回スクロール部材11とを備えている。固定スクロール部材9及び旋回スクロール部材11は、本発明における「圧縮部」の一例である。
【0025】
本実施例では、図1に示す実線矢印によって圧縮機の前後方向及び上下方向を規定している。また、図1における紙面手前側を右方とし、紙面奥側を左方とする。図2以降の図では、図1に対応して圧縮機の前後方向、上下方向及び左右方向を規定している。以下の説明において、前後、上下及び左右は、全て図1における前後、上下及び左右を基準としている。なお、これらの方向は説明の便宜上のための一例であり、圧縮機は、搭載される車両等に対応して、その姿勢が適宜変更される。
【0026】
図1及び図2に示すように、ハウジング1は、モータハウジング13と、圧縮部ハウジング14と、軸支部材15と、インバータハウジング16とで構成されている。モータハウジング13は、ハウジング1における前方部分を構成しており、圧縮部ハウジング14は、ハウジング1における後方部分を構成している。
【0027】
モータハウジング13は、前壁13aと第1周壁13bとを有している。前壁13aは、モータハウジング13の前端に位置しており、モータハウジング13の径方向に延びている。第1周壁13bは、前壁13aと接続しており、前壁13aから後方に向かって延びている。これらの前壁13a及び第1周壁13bにより、モータハウジング13は、後方が開口する有底の筒状をなしている。モータハウジング13内には、モータ室17が形成されている。
【0028】
また、モータハウジング13には、吸入開口13cと支持部13dとが形成されている。吸入開口13cは、第1周壁13bに形成されており、モータ室17と連通している。吸入開口13cは、配管(図示略)によって蒸発器(図示略)と接続されており、蒸発器を経た冷媒ガスをモータ室17内に吸入させる。冷媒ガスは、本発明における「流体」の一例である。モータ室17は、冷媒ガスが吸入される吸入室を兼ねている。
【0029】
支持部13dは、前壁13aからモータ室17内に突出している。支持部13dは、円筒状をなしており、内部に第1ラジアル軸受19が設けられている。なお、吸入開口13cを前壁13aに形成しても良い。
【0030】
圧縮部ハウジング14は、後壁14aと第2周壁14bとを有している。後壁14aは、圧縮部ハウジング14の後端に位置しており、圧縮部ハウジング14の径方向に延びている。第2周壁14bは、後壁14aと接続しており、後壁14aから前方に向かって延びている。これらの後壁14a及び第2周壁14bにより、圧縮部ハウジング14は、前方が開口する有底の筒状をなしている。
【0031】
圧縮部ハウジング14には、油分離室14cと、第1吐出凹部14dと、吐出通路14eと、吐出開口14fと、圧縮部室18とが形成されている。油分離室14cは、圧縮部ハウジング14内において後方側に位置しており、圧縮部ハウジング14の径方向に延びている。第1吐出凹部14dは、圧縮部ハウジング14内において、油分離室14cよりも前方側に位置しており、油分離室14cに向かって凹む形状をなしている。吐出通路14eは前後方向に延びており、油分離室14cと第1吐出凹部14dとを連通させている。吐出開口14fは、油分離室14cの上端と連通しており、圧縮部ハウジング14の外部に向かって開口している。吐出開口14fは、配管によって凝縮器(図示略)と接続されている。
【0032】
油分離室14c内には、分離筒21が固定されている。分離筒21は、円筒状をなす外周面21aを有している。外周面21aは、油分離室14cの内周面140と同軸をなしている。これらの外周面21a及び内周面140によって、セパレータが構成されている。
【0033】
軸支部材15は、モータハウジング13と圧縮部ハウジング14との間に設けられている。詳しくは、モータハウジング13の開口側の第1端面13jと、圧縮部ハウジング14の開口側の第2端面14gとの間に設けられている。そして、モータハウジング13と圧縮部ハウジング14と軸支部材15とは、圧縮部ハウジング14側から複数のボルト25によって締結されている。
【0034】
また、軸支部材15は、軸支部材15の外周縁から一部が径方向の外方に膨出する第1膨出部150を有している。第1膨出部150は、圧縮部ハウジング14よりも径方向の外方に膨出している。第1膨出部150とモータハウジング13の後述する第2膨出部130とは、複数のボルト25、26によって締結されている。こうして、軸支部材15は、モータハウジング13と圧縮部ハウジング14とに挟持されつつ、モータハウジング13及び圧縮部ハウジング14に固定されている。これにより、軸支部材15は、モータ室17をモータハウジング13とともに区画するとともに、圧縮部室18を圧縮部ハウジング14とともに区画している。なお、図1では、複数のボルト25、26のうちの1つずつを図示している。また、モータハウジング13と圧縮部ハウジング14と軸支部材15との固定方法は、適宜設計可能である。
【0035】
軸支部材15には、前方に向かって突出するボス15aが形成されている。ボス15aの先端には、挿通孔15bが形成されている。また、ボス15a内には、第2ラジアル軸受27と、シール部材29とが設けられている。
【0036】
回転軸5は、ハウジング1内に設けられている。回転軸5は前後方向に延びる円柱状をなしている。回転軸5は、小径部5aと、大径部5bとを有している。小径部5aは、回転軸5の前端側に位置している。大径部5bは、小径部5aよりも後方側に位置している。大径部5bは、小径部5aよりも大径に形成されている。大径部5bの後端には、平面状をなす後端面5dが形成されている。
【0037】
回転軸5は、小径部5aが第1ラジアル軸受19を介して、モータハウジング13の支持部13dに回転可能に支承されている。また、大径部5bの後端側は、軸支部材15の挿通孔15bに挿通されており、ボス15a内において、大径部5bの後端が第2ラジアル軸受27を介して軸支部材15に回転可能に支承されている。こうして、回転軸5は、ハウジング1内で回転軸心O周りに回転可能となっている。回転軸心Oは、圧縮機の前後方向と平行に延びている。回転軸5の軸方向は、回転軸心Oの方向と一致する。軸支部材15と回転軸5との間は、シール部材29によって封止されている。
【0038】
また、回転軸5では、大径部5bに偏心ピン50が固定されている。偏心ピン50は、後端面5dにおいて、回転軸心Oから偏心した位置に配置されている。偏心ピン50は、回転軸5よりも小径をなす円柱状に形成されており、後端面5dから後方に向かって延びている。偏心ピン50は、後述する背圧室52内でブッシュ50aに嵌合している。
【0039】
さらに、回転軸5において、大径部5bにはバランスウェイト33が一体に形成されている。バランスウェイト33は、大径部5bにおいて、回転軸心Oから偏心した位置に配置されている。より具体的には、バランスウェイト33は、回転軸心Oを挟んで偏心ピン50の反対側となる位置に配置されている。詳細な図示を省略するものの、バランスウェイト33は、略扇型をなす板状に形成されている。そして、バランスウェイト33は回転軸5の径方向で大径部5bから離れる方向に延びている。回転軸5の径方向は、前後方向に直交する方向である。つまり、バランスウェイト33は、大径部5bからモータハウジング13の第1周壁13b側に向かって延びている。
【0040】
図1に示すように、モータ7はモータ室17内に収容されている。モータ7は、ステータ7aとロータ7bとを有している。ステータ7aは、第1周壁13bの内周面に固定されている。ステータ7aは、インバータハウジング16内に設けられた後述するインバータ73と接続されている。
【0041】
ステータ7aは、円筒状のステータコア77と、ステータコア77に巻回されたコイル78とを有している。コイル78は、ステータコア77の軸方向でステータコア77から前後に突出する一対のコイルエンド74、74を有している。ステータコア77の軸方向は、前後方向に一致する。コイルエンド74は、ステータコア77に巻回されたU相、V相及びW相のコイル78の一部によって形成されている。
【0042】
ステータコア77における固定スクロール部材9及び可動スクロール部材11に近い方の軸方向端であるコア端面771に形成されたコイルエンド74から3本の引出線76が引き出されている。3本の引出線76は、U相、V相及びW相のコイルにそれぞれ対応している。各引出線76は、図示しない絶縁チューブによって被覆されている。
【0043】
3本の引出線76は、束ね部80からステータコア77の径方向の外方であって、ステータコア77の上方に引き出されている。束ね部80は、ステータコア77における後方側のコア端面771から軸方向の外方、すなわち後方に突出して形成された後方側のコイルエンド74の軸方向のエンド端面741に形成されている。以下の説明において、軸方向の外方とは軸方向の一方である後方のことであり、軸方向の内方とは軸方向の他方である前方のことである。
【0044】
図2に示すように、束ね部80は、ステータコア77の周方向に延びる3本の引出線76がエンド端面741に沿ってステータコア77の径方向に並んで束ねられることにより形成されている。束ね部80でステータコア77の径方向の最も内周側から引き出される引出線76のことを、以下第1引出線76aと呼ぶ。また、束ね部80でステータコア77の径方向の最も外周側から引き出される引出線76のことを、以下第2引出線76bと呼ぶ。また、束ね部80でステータコア77の径方向において第1引出線76aと第2引出線76bとの間から引き出される引出線76のことを、以下第3引出線76cと呼ぶ。
【0045】
ロータ7bは、ステータ7a内に配置されている。ロータ7bには、回転軸5の大径部5bが圧入されている。これにより、回転軸5がロータ7bに固定されている。ロータ7bは、ステータ7a内で回転することにより、回転軸5を回転軸心O周りで回転させる。
【0046】
圧縮部室18は、圧縮部ハウジング14内において前方側に位置している。圧縮部室18内には、固定スクロール部材9と、旋回スクロール部材11とが収容されている。
【0047】
固定スクロール部材9は、圧縮部ハウジング14に固定されている。固定スクロール部材9は、固定基板9aと、外周壁9bと、固定渦巻壁9cとを有している。固定基板9aは、固定スクロール部材9の後端に位置しており、円盤状に形成されている。固定基板9aには、第2吐出凹部9dと吐出ポート9eとが形成されている。第2吐出凹部9dは、固定基板9aの後端面から前方に向かって凹む形状をなしている。第2吐出凹部9dは、固定スクロール部材9が圧縮部ハウジング14に固定されることにより、第1吐出凹部14dと対向する。こうして、第1吐出凹部14dと第2吐出凹部9dとによって、吐出室35が形成されている。吐出室35は、吐出通路14eを通じて油分離室14cと連通している。吐出ポート9eは固定基板9aを前後方向に貫通しており、吐出室35と連通している。
【0048】
また、固定基板9aには、ボルト37によって、吐出リード弁39とリテーナ40とが取り付けられている。ボルト37、吐出リード弁39及びリテーナ40は、吐出室35内に配置されている。吐出リード弁39は、弾性変形することにより、吐出ポート9eの開閉を行う。リテーナ40は、吐出リード弁39の弾性変形量を調整する。
【0049】
外周壁9bは、固定基板9aの外周で固定基板9aと接続しており、前方に向かって筒状に延びている。外周壁9bには、吸入ポート9fが形成されている。吸入ポート9fは、外周壁9bを径方向に貫通している。これにより、吸入ポート9fは、圧縮部ハウジング14内に開口している。固定渦巻壁9cは、固定基板9aの前面に立ち上げられており、外周壁9bの内側で固定基板9aと一体をなしている。
【0050】
旋回スクロール部材11は、固定スクロール部材9と軸支部材15との間に位置している。旋回スクロール部材11は、旋回基板11aと、旋回渦巻壁11bとを有している。旋回基板11aは、旋回スクロール部材11の前端に位置しており、円盤状に形成されている。旋回基板11aには、第3ラジアル軸受45を介してブッシュ50aが回転可能に支持されている。これにより、旋回スクロール部材11は、ブッシュ50a及び偏心ピン50を通じて、回転軸心Oから偏心した位置で回転軸5と接続されている。旋回渦巻壁11bは、旋回基板11aの後方側の面から固定基板9aに向かって延びている。
【0051】
固定スクロール部材9と旋回スクロール部材11とは互いに噛み合わされている。これにより、固定スクロール部材9と旋回スクロール部材11との間には、固定基板9a、固定渦巻壁9c、旋回基板11a及び旋回渦巻壁11bによって、圧縮室49が形成されている。圧縮室49は、旋回スクロール部材11が回転することにより、容積を変化させる。これにより、圧縮室49は、吸入ポート9f及び吐出ポート9eとそれぞれ連通する。
【0052】
旋回スクロール部材11と軸支部材15との間には、スラストプレート51が設けられている。スラストプレート51は金属製の薄板によって形成されており、旋回スクロール部材11及び軸支部材15とそれぞれ当接している。スラストプレート51は弾性変形時の復元力によって、旋回スクロール部材11を後方側、すなわち固定スクロール部材9側に付勢可能となっている。旋回スクロール部材11と軸支部材15との間には、背圧室52が形成されている。旋回渦巻壁11bの中心近傍には、旋回渦巻壁11bの前端に開口しつつ、旋回渦巻壁11b内を前後方向に延びて旋回基板11aまで貫通する給気孔11cが貫設されている。これにより、背圧室52は給気孔11cを介して吐出ポート9eと連通している。
【0053】
旋回スクロール部材11と、スラストプレート51及び軸支部材15とは、自転防止機構41によって連結されている。自転防止機構41は、6つのリング47と、6つの自転阻止ピン31とによって構成されている。各リング47は、旋回基板11aに固定されている。なお、図1では、6つのリング47のうちの一つと、6つの自転阻止ピン31のうちの一つを図示している。
【0054】
各自転阻止ピン31は、それぞれスラストプレート51を貫通しつつ軸支部材15に固定されている。そして、各自転阻止ピン31をそれぞれリング47に進入させることにより、各リング47と各自転阻止ピン31とが連結されている。こうして、自転防止機構41では、各自転阻止ピン31が各リング47の内周面を摺動しつつ転動することにより、旋回スクロール部材11の自転を規制し、公転のみを許容している。
【0055】
また、この圧縮機では、軸支部材15に吸入通路55が設けられている。吸入通路55は、回転軸5の径方向において、回転軸5及び自転阻止ピン31の外側に配置されている。吸入通路55は、軸支部材15を前後方向に貫通している。これにより、吸入通路55は、モータ室17と吸入ポート9fとを連通させている。
【0056】
このように、この圧縮機では、ハウジング1内において、圧縮部としての固定スクロール部材9及び可動スクロール部材11と、モータ7とは、軸支部材15を間に挟んで、軸方向に並んで配置されている。
【0057】
また、図2に示すように、モータハウジング13は、第1周壁13bから一部が径方向の外方に膨出する第2膨出部130を有している。第2膨出部130内には膨張空間60が形成されている。膨張空間60は、モータ室17の一部を構成している。すなわち、モータ室17は、図1に示すように、回転軸5の軸方向視において、モータハウジング13の開口側に、回転軸5の径方向に対して吸入通路55よりも外方に膨出する膨張空間60を有している。なお、膨張空間60は、膨出空間と呼ぶこともできる。この膨張空間60には、ステータコア77におけるモータハウジング13の開口側、すなわち圧縮部室18に近い側のコア端面771における外周側のエッジが露出している。
【0058】
そして、膨張空間60内には、引出線76とともにコイルエンド74よりも径方向の外方に引き出された絶縁性の端子箱61が収容されている。詳しくは、膨張空間60には、後述する3個の接続端子75が軸方向に並び、少なくとも一つの接続端子75が径方向に対してステータコア77と重なるように端子箱61が収容されている。
【0059】
モータハウジング13の右側端面13eにおける第2膨出部130の部分には、左方、すなわち膨張空間60に向かって凹む凹部13fが形成されている。なお、この凹部13f内は、後述するインバータ室72の一部を構成している。凹部13f内には、気密端子70が配置されている。気密端子70は、後述するインバータ73に電気的に接続された3個の導電ピン71を有している。気密端子70は、後述する右側壁13gに形成された3個の貫通孔13hに各導電ピン71を挿通させつつ、モータ室17を気密に維持可能に構成されている。これにより、導電ピン71は、貫通孔13hに対して保持される。
【0060】
モータハウジング13の右方には、インバータハウジング16が設けられている。インバータハウジング16は、左方が開口する有底の筒状をなしている。インバータハウジング16の開口端は、モータハウジング13の右側端面13eに図示しないボルトにより締結されている。これにより、インバータハウジング16とモータハウジング13の右側端面13eとにより、インバータ室72が形成されている。そして、モータハウジング13の右側壁13gによって、インバータ室72と、モータ室17とが区画されている。右側壁13gは、モータ室17とインバータ室72とを左右方向で区画している。インバータ室72内には、モータ7を駆動するインバータ73が収容されている。右側壁13gには、右側壁13gを左右方向に貫通する貫通孔13hが形成されている。こうして、モータハウジング13は、内周面側にモータ7を収容し、外周面側にインバータ73を搭載する。
【0061】
図3に示すように、端子箱61は、上下方向に長い直方体形状をなしている。端子箱61は、前壁部61a、後壁部61b、左壁部61c、右壁部61d、上壁部61e及び下壁部61fを有している。なお、図3における前後方向、上下方向及び左右方向を示す各矢印の向きは、端子箱61が膨張空間60内に配置されている姿勢を想定している。また、図3(b)は、図1に示される端子箱61を図1の後方から見た端子箱61を正面とした場合の右側面図である。
【0062】
端子箱61の右壁部61dには、前後方向に並ぶ3個のピン挿入孔62が形成されている。端子箱61の下壁部61fには、前後方向に並ぶ3個の引出線挿入孔63が形成されている(図4参照)。なお、図4においては、3個の引出線挿入孔63のうちの一つを図示している。引出線挿入孔63の数は引出線76を挿入できれば何個でもよい。
【0063】
図4に示すように、端子箱61内には、モータ7の相数分である3個の接続端子75が収容されている。3個の接続端子75は、それぞれU相、V相、W相のコイル78に接続されている。なお、図4においては、3個の接続端子75のうちの1個だけを図示している。各接続端子75は、引出線接続部751と、ピン接続部752とを有している。
【0064】
各引出線接続部751には、後方側のコイルエンド74のエンド端面741から延びる3本の引出線76がそれぞれ電気的に接続されている。3本の引出線76は、それぞれU相、V相、W相のコイル78がステータコア77に巻回された部分から引き出された引き出し線である。3本の引出線76は、モータハウジング13の開口側、すなわち圧縮部室18に近い側に配置されたコイルエンド74から引き出されている。各ピン接続部752には、接続孔753が形成されている。端子箱61のピン挿入孔62から挿入された各導電ピン71が各接続孔753内にそれぞれ嵌入することにより、ピン接続部752に導電ピン71が電気的に接続されている。
【0065】
ここで、この圧縮機における端子箱61の配置と、3本の引出線76と3個の接続端子75との接続の仕方とについて、それらの組付け方法とともに以下説明する。
【0066】
まず、ハウジング1の外において、図5に示すように、端子箱61における左壁部61c及び右壁部61dがステータコア77の軸方向(図5の紙面方向)を向き、端子箱61における前壁部61a及び後壁部61bがステータコア77の径方向(図5に示す左右矢印方向)を向き、かつ、端子箱61の下壁部61fがステータコア77を向くように、ステータコア77に対して端子箱61を配置する。この図5に示す配置状態の端子箱61は、左壁部61cが図5の紙面奥側を向き、右壁部61dが図5の紙面手前側を向き、後壁部61bが図5に示す左矢印側を向き、前壁部61aが図5に示す右矢印側を向いている。
【0067】
そして、この配置状態にある端子箱61内の3個の接続端子75に対して、3本の引出線76を1対1で接続する。この際、図5において、端子箱61の最も右側に位置する第1接続端子75aと、第1引出線76aとを接続する。また、図5において、端子箱61の最も左側に位置する第2接続端子75bと、第2引出線76bとを接続する。また、図5において、第1接続端子75aと第2接続端子75bとの間に位置する第3接続端子75cと、第3引出線76cとを接続する。
【0068】
そして、端子箱61を下壁部61f側から見て時計回り方向(図5のP矢印方向)に、端子箱61を90度回転させて、図6に示す配置状態とする。これにより、端子箱61における前壁部61a及び後壁部61bがステータコア77の軸方向(図6の紙面方向)を向き、端子箱61における左壁部61c及び右壁部61dがステータコア77の径方向(図6に示す左右矢印方向)を向き、かつ、端子箱61の下壁部61fがステータコア77を向くように、ステータコア77に対して端子箱61が配置される。この図6に示す配置状態の端子箱61は、前壁部61aが図6の紙面奥側を向き、後壁部61bが図6の紙面手前側を向き、左壁部61cが図6に示す左矢印側を向き、右壁部61dが図6に示す右矢印側を向いている。なお、図6に示すステータ7aと端子箱61との位置関係は、図1に示す圧縮機を後方から見たときのステータ7aと端子箱61との位置関係と一致する。
【0069】
ここに、端子箱61を回転させる位置及びその回転軸は、以下のとおりである。図5に示すように、モータハウジング13の開口側、すなわち圧縮部室18側のコイルエンド74のエンド端面741の近傍でステータコア77の軸方向に対して交差する仮想面(図5においてエンド端面741と平行に延びる面)の近傍に、端子箱61を配置する。そして、この仮想面上に延びる回転中心軸C(図7参照)であって、端子箱61の後壁部61bの位置で後壁部61bに沿って接続端子75が延びる方向に延びる回転中心軸C周りに端子箱61を回転させる。この際、図6及び図7に示す回転後の端子箱61の姿勢は、膨張空間60内に配置される状態で3個のピン挿入孔62が3個の貫通孔13hとそれぞれ対向する姿勢となっている。
【0070】
このような端子箱61の回転により、端子箱61を回転させた際の第1接続端子75aの回転半径は第3接続端子75cの回転半径よりも大きく、第3接続端子75cの回転半径は第2接続端子75bの回転半径よりも大きくなっている。
【0071】
その後、図6に示す位置関係を保ったままステータ7a及び端子箱61をモータハウジング13内に配置する。そして、図示しない治具により端子箱61を所定位置に保持しながら、インバータ室72側から気密端子70の導電ピン71を貫通孔13h及びピン挿入孔62に挿入して、端子箱61内で各接続端子75のピン接続部752に接続する。この際、気密端子70は、モータ室17を気密に維持するように右側壁13gに固定される。こうして、端子箱61は、モータハウジング13内で、ステータ7aに対して所定の位置関係を保った所定の位置に固定される。
【0072】
このモータハウジング13内に固定されたステータ7a及び端子箱61を図7に示す。図7に示すステータ7aと端子箱61との位置関係は、図1に示す圧縮機を左方から、すなわち図1の紙面の奥側から見たときのステータ7aと端子箱61との位置関係と一致する。
【0073】
第1接続端子75aは、ステータコア77のコア端面771よりもステータコア77の軸方向の内方、すなわちコア端面771よりも前方に位置している。言い換えれば、第1接続端子75aは、ステータコア77の径方向においてステータコア77と重なっている。なお、この実施例の圧縮機では、第2接続端子75b及び第3接続端子75cは、ステータコア77のコア端面771よりもステータコア77の軸方向の外方、すなわちコア端面771よりも後方に位置している。
【0074】
また、この第1接続端子75aに接続された第1引出線76aは、エンド端面741と端子箱61との間で引っ張られており、その引張方向に所定の張力を有して配置されている。また、この第1引出線76aは、ステータコア77のコア端面771には接触していない。そして、第2引出線76b及び第3引出線76cは、第1引出線76aよりもステータコア77の軸方向の外方に位置している。詳しくは、第3引出線76cは第1引出線76aよりもステータコア77の軸方向の外方に位置している。また、第2引出線76bは、第3引出線76cよりもステータコア77の軸方向の外方に位置している。この際、第2引出線76b及び第3引出線76cは、エンド端面741と端子箱61との間で引っ張られていてもよいし、引っ張られていなくてもよい。また、3本の引出線76同士は、エンド端面741と端子箱61との間において、接触していてもよいし、接触していなくてもよい。
【0075】
この圧縮機では、インバータ73によって制御されつつ、モータ7が作動する。すなわち、外部のバッテリ等からインバータ73に給電され、インバータ73から導電ピン71、接続端子75及び引出線76を介してコイル78に給電されることにより、回転軸5が回転軸心O周りで回転する。これにより、旋回スクロール部材11が回転し、旋回基板11aが固定渦巻壁9cの先端を摺動するとともに、固定渦巻壁9cと旋回渦巻壁11bとが互いに摺動する。この際、自転防止機構41により、旋回スクロール部材11は自転が規制され、公転のみを行う。このように、旋回スクロール部材11が回転することにより、吸入室を兼ねるモータ室17内の冷媒ガスが吸入通路55を経て吸入ポート9fに流通し、吸入ポート9fから圧縮室49内に吸入される。そして、圧縮室49は、旋回スクロール部材11の回転によって容積を減少させつつ、内部の冷媒ガスを圧縮する。
【0076】
こうして圧縮室49で圧縮された高圧の冷媒ガスは、吐出ポート9eから吐出室35に吐出され、さらに、吐出室35から、吐出通路14eを経て油分離室14cに至る。そして、この高圧の冷媒ガスは、分離筒21の外周面21aと油分離室14cの内周面140との間を周回する過程で潤滑油を分離しつつ、分離筒21の内部を流通して吐出開口14fから吐出され、凝縮器へ排出される。
【0077】
この電動圧縮機では、3本の引出線76は、圧縮部室18に近い側のコイルエンド74において、束ね部80で束ねられている。この束ね部80から引き出された3本の引出線76は、端子箱61に収容された3個の接続端子75とそれぞれ接続されている。端子箱61は、ステータコア77の径方向の外方において、3個の接続端子75がステータコア77の軸方向に並び、かつ、3個の接続端子75のうち第1接続端子75aがステータコア77の径方向に対してステータコア77と重なるように配置されている。そして、3本の引出線76は、接続される接続端子75が束ね部80から離れる程、束ね部80から接続端子75までの長さが長くされている。すなわち、束ね部80から引き出された引出長さが最も長い第1引出線76aが、束ね部80から最も離れた第1接続端子75aに接続されている。
【0078】
このような構成により、3個の接続端子75のうち束ね部80に近い方の第2接続端子75b及び第3接続端子75cに接続された第2引出線76b及び第3引出線76cが、ステータコア77のコア端面771における外周側のエッジに接触することを抑えることができる。その結果、ステータコア77のエッジとの当接により引出線76が損傷することを抑えることができる。
【0079】
また、端子箱61は、圧縮部室18に近い側におけるステータコア77の外周側のエッジに対して、圧縮部室18から離れる側に第1接続端子75aが位置するように配置されている。すなわち、端子箱61は、第1引出線76aがコア端面771よりも前方に位置するように配置されている分だけ、吐出室35や吐出開口14fに接続された配管から遠ざけられている。このため、圧縮室49で圧縮されて高温になった冷媒ガスの影響で端子箱61内の接続端子75が熱劣化することを、抑えることができる。
【0080】
したがって、この圧縮機によれば、端子箱61がステータコア77の径方向の外方に配置された電動圧縮機において、接続端子75の熱劣化を抑えつつ、引出線76の破損による絶縁不良を抑えることができる。
【0081】
特に、この圧縮機では、束ね部80は、ステータコア77の内周側から外周側にかけて3本のコイル78を整列させている。そして、束ね部80で最も内周側から引き出される第1引出線76aが束ね部80から引き出される長さは、第3引出線76cが束ね部80から引き出される長さよりも長く、かつ、第3引出線76cが束ね部80から引き出される長さは、第2引出線76bが束ね部80から引き出される長さよりも長い。
【0082】
この場合、束ね部80でステータコア77の最も内周側から引き出される第1引出線76aは、束ね部80から引き出される長さ、すなわち束ね部80から第1接続端子75aまでの長さが、第2引出線76bが束ね部80から引き出される長さ及び第3引出線76cが束ね部80から引き出される長さよりも長くなる。また、第3引出線76cが束ね部80から引き出される長さ、すなわち束ね部80から第3接続端子75cまでの長さが、第2引出線76bが束ね部80から引き出される長さよりも長くなる。一方、第1接続端子75aは、第2接続端子75b及び第3接続端子75cに比べて、束ね部80から離れて配置される。また、第3接続端子75cは、第2接続端子75bに比べて、束ね部80から離れて配置される。その結果、第1引出線76a、第2引出線76b及び第3引出線76cがたるむことを抑制でき、第1引出線76a、第2引出線76b及び第3引出線76cがステータコア77のエッジに接触することを抑制できる。
【0083】
また、上述したように、端子箱61を回転させた際の第1接続端子75aの回転半径は第3接続端子75cの回転半径よりも大きく、第3接続端子75cの回転半径は第2接続端子75bの回転半径よりも大きくなっている。
【0084】
このため、束ね部80で最も内周側から引き出され、束ね部80から引き出される長さが最も長い第1引出線76aが接続された第1接続端子75aは、最も大きな回転半径で回転する。このため、コイルエンド74付近で、第1接続端子75aがステータコア77と径方向に重なるように端子箱61を回転させると、第1引出線76a、第2引出線76b及び第3引出線76cを捩ることができる。その結果、束ね部80からの引出長さが最も長い第1引出線76aによって、第2引出線76b及び第3引出線76cがステータコア77のエッジに接触することを抑制できる。
【0085】
そして、この圧縮機では、ステータコア77の径方向の外方に配置された端子箱61が、ステータコア77に対して所定の位置に配置されている。すなわち、第1接続端子75aがコア端面771よりも前方に位置し、かつこの第1接続端子75aに接続された第1引出線76aがコア端面771に接触しない位置に、端子箱61が配置されている。また、この端子箱61内の第1接続端子75aに接続された第1引出線76aは、エンド端面741と端子箱61との間で、引張方向に所定の張力を有している。
【0086】
かかる構成により、振動等によりコア端面771に近づこうとする第2引出線76b及び第3引出線76cの動きを、第1引出線76aとの当接によって抑制することができる。このため、第1引出線76aによって、第2引出線76b及び第3引出線76cがコア端面771に接触することを抑えることができる。また、第1引出線76a自体は、エンド端面741と端子箱61との間で引っ張られている。このため、第1引出線76aは、コア端面771に近づこうとする動きを、自己の張力によって抑えることができる。その結果、コア端面771との当接により引出線76が損傷することを抑えることができる。
【0087】
また、束ね部80にいて、3本の引出線76がエンド端面741に沿って径方向に並んで束ねられている。このため、3本の引出線76がエンド端面741上で軸方向に並んで束ねられる場合と比較して、軸方向に大型化することを抑えることができる。
【0088】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0089】
例えば、実施例の圧縮機では、エンド端面741上で束ね部80において3本の引出線76を径方向に並ぶように束ねているが、本発明はこれに限定されない。例えば、3本の引出線76を互いに接触させつつ束ねてもよい。また、3本の引出線76を束ねなくてもよい。
【0090】
また、実施例の圧縮機では、3個の接続端子75のうちの1つをコア端面771よりも軸方向の内方に位置するように端子箱61を配置するが、本発明はこれに限られない。例えば、3個の接続端子75の2うちの2つ又は全部がコア端面771よりも軸方向の内方に位置するように端子箱61を配置してもよい。
【0091】
また、実施例の圧縮機では、接続端子75及び引出線76の数をそれぞれ3個としているが、各2個ずつであってもよい。
【0092】
また、実施例の圧縮機において、スラストプレート51を省略しても良い。
【0093】
また、実施例の圧縮機では、6つのリング47と6つの自転阻止ピン31とによって自転防止機構41を構成しているが、これに限らず、自転防止機構41を他の構成としても良い。
【0094】
また、実施例の圧縮機では、流体としての冷媒ガスを圧縮室49で圧縮しているが、これに限らず、燃料電池に供給する空気等の流体を圧縮室49で圧縮しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は車両等の空調装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0096】
1…ハウジング
5…回転軸
7…モータ
7b…ロータ
9…固定スクロール部材(圧縮部)
9b…外周壁
9c…固定渦巻壁
11…旋回スクロール部材(圧縮部)
13…モータハウジング
13h…貫通孔
13j…第1端面
14…圧縮部ハウジング
14g…第2端面
15…軸支部材
15b…挿通孔
17…モータ室
18…圧縮部室
60…膨張空間
61…端子箱
62…ピン挿入孔
71…導電ピン
73…インバータ
74…コイルエンド
75…接続端子
75a…第1接続端子
75b…第2接続端子
75c…第3接続端子
76a…第1引出線
76b…第2引出線
76c…第3引出線
76…引出線
77…ステータコア
78…コイル
80…束ね部
C…回転中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7