IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 能美防災株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-火災報知システム 図1
  • 特開-火災報知システム 図2
  • 特開-火災報知システム 図3
  • 特開-火災報知システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140121
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】火災報知システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20241003BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20241003BHJP
   H04M 11/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G08B17/00 C
G08B25/00 510F
H04M11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051120
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】足立 成紀
【テーマコード(参考)】
5C087
5G405
5K201
【Fターム(参考)】
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA25
5C087BB06
5C087BB20
5C087BB74
5C087DD04
5C087EE07
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087FF16
5C087FF23
5C087GG08
5C087GG19
5C087GG66
5C087GG67
5C087GG70
5C087GG84
5G405AA06
5G405AB01
5G405AB02
5G405AC02
5G405AD01
5G405AD02
5G405CA06
5K201BA03
5K201CC08
5K201EC06
5K201ED04
5K201ED09
(57)【要約】
【課題】火災感知器から得られる環境データを有効活用し、火災に至る前の日常環境における環境変化を通知することができる火災報知システムを得る。
【解決手段】火災監視エリアにおける監視結果を環境データとして生成し、生成した環境データを送出する火災感知器と、火災感知器から送出された環境データを受信し、火災と判断するための火災判定閾値に満たない環境データに基づいて火災監視エリアにおける環境変化を示す情報として環境異常情報を生成し、関係者に対して環境異常情報を通知する上位装置とを備える。具体的には、火災感知器が火災予報閾値未満の35℃程度の温度データを環境データとして出力するとき、火災信号ではなく、環境異常情報としての注目信号をビルの関係者に出力するものである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災監視エリアにおける監視結果を環境データとして生成し、生成した前記環境データを送出する火災感知器と、
前記火災感知器から送出された前記環境データを受信し、火災と判断するための火災判定閾値に満たない環境データに基づいて前記火災監視エリアにおける環境変化を示す情報として環境異常情報を生成し、関係者に対して前記環境異常情報を通知する上位装置と
を備える火災報知システム。
【請求項2】
前記環境異常情報は、前記火災感知器のアナログ値からなる環境データが、火災予報閾値未満であるとき、前記関係者であるビルの利用者に対して、環境が日常環境に比べて、異常状態に近くなりつつあるので、注意または注目した方がいいことを通知するものである
請求項1記載の火災報知システム。
【請求項3】
前記上位装置は、ネットワークを介して前記環境データを受信するクラウドサーバであり、
各関係者が所有しており、前記クラウドサーバから通知された前記環境異常情報を、前記ネットワークを介して受信する複数の携帯端末をさらに備え、
前記クラウドサーバは、
前記複数の携帯端末のそれぞれと通知レベルとが対応付けられて記憶された通知レベルテーブルを有しており、
前記環境異常情報は生成するに当たって、前記環境変化の度合に応じた通知レベルを割り付けて前記環境異常情報が生成され、
生成された前記環境異常情報に割り付けられている通知レベルに対応する携帯端末を、前記通知レベルテーブルを参照することで抽出し、抽出した前記携帯端末に対して前記環境異常情報を通知する
請求項1または2に記載の火災報知システム。
【請求項4】
前記複数の携帯端末のそれぞれは、自身に割り付けられる通知レベルを示す通知レベル設定情報を設定可能であるとともに、前記ネットワークを介して前記クラウドサーバに対して前記通知レベル設定情報を送信可能であり、
前記クラウドサーバは、前記ネットワークを介して前記通知レベル設定情報を受信した場合には、受信した前記通知レベル設定情報に従って前記通知レベルテーブルを更新する
請求項3に記載の火災報知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、火災監視エリアにおける監視情報に基づいて火災に至る前の日常環境における環境変化を通知することができる、火災報知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
火災報知システムにおいては、火災を検出するために、種々のタイプの火災感知器が用いられている。火災感知器としては、以下の2つのタイプに大別される。
タイプ1:感知した火災監視エリアにおける監視情報に基づいて、火災か否かを火災感知器自身で判定し、火災であると判定した場合には火災受信機に対して火災信号を送出するもの。
【0003】
タイプ2:感知した火災監視エリアにおける監視情報を火災受信機に対して送出し、火災か否かの判断は、火災受信機側で行うもの。なお、以下では、タイプ2の火災感知器のことをアナログ式の火災感知器と称して説明する。
【0004】
いずれのタイプであっても、上位装置である火災受信機としては、火災感知器から取得した情報に基づいて火災監視エリアが火災であるか否かを判定することができ、防火対象である建物などの内部にいる人々を火災から守ることができる火災報知システムを構築することができる。
【0005】
火災報知システムの一例である自動火災報知設備は、火災受信機、火災感知器、発信機、音響装置等を備えて構成される(例えば、非特許文献1参照)。このような設備では、防火対象である建物内の火災監視エリアで発生する火災を迅速に検知し、火災発生場所に応じて、警報を発し、音響装置を鳴動させ、防火対象内にいる人に火災の発生を知らせるとともに、消火設備、非常放送装置等の起動を行うことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】能美防災株式会社 ホームページ、自動火災報知設備(URL:https://www.nohmi.co.jp/product/materiel/fid.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アナログ式の火災感知器を用いるシステムでは、火災監視エリアにおける監視情報を環境データとして取得でき、火災と判断するための火災判定閾値以上の環境データが取得されることで、迅速に火災の発生を知らせるとともに、消火設備、非常放送装置等の起動を行っている。
【0008】
しかしながら、アナログ式の火災感知器を用いるシステムにおいて、火災判定閾値に満たない環境データは、例えば、火災感知器としての熱感知器から出力される環境データとしての温度データが50℃の場合には、火災判定閾値に近づいた状態をプレアラーム信号として出力する際に利用されている程度に過ぎず、必ずしも有効活用されていなかった。
【0009】
火災判定閾値に満たない環境データを有効活用すれば、火災を検知する前段階で、火災監視エリアの状況、あるいは火災感知器の状態などを日常環境の変化としてモニタでき、モニタ結果に応じて適切な通知を適切な通知先に送信できる。
【0010】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、火災感知器から得られる環境データを有効活用し、火災に至る前の日常環境における環境変化を通知することができる火災報知システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る火災報知システムは、火災監視エリアにおける監視結果を環境データとして生成し、生成した環境データを送出する火災感知器と、火災感知器から送出された環境データを受信し、火災と判断するための火災判定閾値に満たない環境データに基づいて火災監視エリアにおける環境変化を示す情報として環境異常情報を生成し、関係者に対して環境異常情報を通知する上位装置とを備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、火災感知器から得られる環境データを有効活用し、火災に至る前の日常環境における環境変化を通知することができる火災報知システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施の形態1に係る火災報知システムの全体構成図である。
図2】本開示の実施の形態1に係る火災報知システムを構成する火災感知器および火災受信機の機能ブロック図である。
図3】本開示の実施の形態1に係る火災受信機によるレベル分類に関する説明図である。
図4】本開示の実施の形態2に係る火災報知システムの全体構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の火災報知システムの好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る火災報知システムは、アナログ式の火災感知器から取得できる環境データを有効活用し、火災判定閾値に満たない環境データに基づいて環境異常情報を生成することで、日常環境から火災環境までの広範な環境変化を、必要な通知先に迅速に通知することができることを技術的特徴とするものである。
【0015】
実施の形態1.
まず始めに、火災感知器を含む本実施の形態1に係る火災報知システムの全体像について説明する。図1は、本開示の実施の形態1に係る火災報知システムの全体構成図である。図1に示した火災報知システムは、火災受信機10および複数の火災感知器31、32、41~44を主な構成要素として含んでいる。
【0016】
火災受信機10は、信号線SGを介して、アドレッサブル発信機20、火災感知器31、32、感知器用中継器40、および防排煙制御用中継器50と接続されている。
【0017】
感知器用中継器40には、火災感知器が、複数台接続されている。図1では、4台の火災感知器41~44を例示している。また、防排煙制御用中継器50には、防火戸51、排煙機52、シャッタ53、およびたれ壁54が接続されている。
【0018】
ここで、火災感知器31、32、および火災感知器41~44は、あらかじめ設定されたそれぞれの火災監視エリアにおいて火災の発生を感知するための監視情報を収集し、環境データとして出力する、アナログ式の火災感知器に相当する。複数の火災感知器により感知器群が構成される。
【0019】
ここで、環境データとは、火災感知器から出力される煙濃度や温度情報または赤外線量などの火災現象に伴うアナログ値であり、センサ出力ともいう。アナログ式の火災感知器であるので、火災であるか否かという二値の情報ではなく、リアルタイムで測定された情報、例えば、温度情報であれば、20℃、32℃、40℃といったアナログ量を出力する。
【0020】
また、防火戸51、排煙機52、シャッタ53、およびたれ壁54は、複数の火災感知器のそれぞれの感知結果と連動して動作し、火災、煙等の拡散を防止するために機能する複数の端末設備に相当する。複数の端末設備により、端末設備群が構成される。
【0021】
複数の火災感知器のそれぞれは、個々の火災感知器を識別するためのアドレス情報があらかじめ割り付けられている。そして、複数の火災感知器のそれぞれは、自身に割り付けられたアドレス情報と、監視結果である環境データとを含めた火災関連情報を火災受信機10に対して送信することができる。
【0022】
一方、火災受信機10は、アドレス情報を付加して情報伝送を行うことで、所望の火災感知器に対して必要な情報を送信することができる。
【0023】
また、複数の端末設備のそれぞれにも、個々の端末設備を識別するためのアドレス情報があらかじめ割り付けられている。従って、火災受信機10は、アドレス情報を付加して情報伝送を行うことで、所望の端末設備を稼働させる指令を送信することができる。
【0024】
このような構成により、火災受信機10は、あらかじめ決められた種々の火災監視エリアに設置されている複数の火災感知器、およびアドレッサブル発信機20から火災関連情報(環境データを含む)を収集する。そして、火災受信機10は、収集した火災関連情報に基づいて、火災警報を行い、端末設備群を作動させることができる。
【0025】
なお、端末設備群に含まれているそれぞれの端末設備は、どの火災感知器の感知結果と連動して動作するかがあらかじめ規定されている。例えば、複数の火災感知器と複数の端末設備との連動動作の対応関係を連動表としてあらかじめ設定しておくことで、火災受信機10は、複数の火災感知器のそれぞれの感知結果に基づいて、連動表から適切な端末設備を特定し、連動動作させることができる。
【0026】
また、図1では図示は省略しているが、火災受信機10は、収集した火災関連情報に基づいて、移報信号を出力し、消火設備や非常放送装置を起動したり、ネットワークを介して上位装置に対して火災関連情報を伝送したりすることができる。
【0027】
図1に示された本実施の形態1に係る火災報知システムは、防火対象の用途・規模に応じて、適切なシステムを構築することができ、各火災感知器は、あらかじめ決められた場所に固定設置され、他の防災設備と組み合わせて使用される。
【0028】
本実施の形態1では、火災受信機において、アナログ式の火災感知器から得られる環境データを有効活用し、日常環境から火災環境までの広範な環境変化を、必要な通知先に通知することを主目的としている。そこで、このような主目的を実現するための火災感知器および火災受信機の構成について図2を用いて詳細に説明する。
【0029】
図2は、本開示の実施の形態1に係る火災報知システムを構成する火災感知器および火災受信機の機能ブロック図である。本実施の形態1における火災報知システムは、火災感知器100および火災受信機200を主な構成として備えている。なお、火災感知器100は、先の図1に示したように、通常は、複数台で構成されるが、説明を簡略化するために、図2では1台の火災感知器100として例示している。
【0030】
火災感知器100は、火災監視エリアにおける監視情報を環境データとして送出する監視情報出力部を有して構成されている。火災感知器100は、火災監視エリア内での温度変化、煙発生状況の変化などを示す監視情報を環境データとして生成する。さらに、火災感知器100は、生成した環境データを環境データとして火災受信機200に送出する。
【0031】
詳細な検出原理は省略するが、火災感知器100としては、炎感知器、熱感知器、煙感知器などを適用することができ、環境データとして、火災監視環境における減光率、温度などに関する情報を生成することができる。なお、前述したように、火災感知器100は、これらの火災現象に関わる情報のアナログ値をセンサ出力として火災受信機200へ出力する。
【0032】
次に、火災感知器100の上位装置に相当する火災受信機200の機能について説明する。火災受信機200は、火災判定部201、発報処理部202、および送信先記憶部203を備えている。
【0033】
火災判定部201は、火災感知器100から送出された環境データを受信し、火災判定閾値以上となる環境データが得られた場合には、火災であると判定する。
【0034】
発報処理部202は、火災感知器100から送出された環境データを受信し、その中から、火災と判断するための火災判定閾値に満たない環境データに基づいて、火災監視エリアにおける環境変化の度合を示す情報として環境異常情報を生成し、関係者に対して環境異常情報を通知する。
【0035】
このように、火災受信機200は、環境データの大きさに応じてレベル分類を行い、火災判定部201による火災判定、および発報処理部202による環境異常情報の通知を実行することとなる。
【0036】
図3は、本開示の実施の形態1に係る火災受信機200によるレベル分類に関する説明図である。図3(A)は、火災感知器100として煙感知器を用いた場合を示しており、監視対象エリアにおけるエア情報として減光率(%/m)が得られる。減光率で示されるエア情報は、環境データとして火災受信機200に送信される。
【0037】
また、図3(B)は、火災感知器100として熱感知器を用いた場合を示しており、監視対象エリアにおける温度情報として火災監視エリアの温度(℃)が得られる。温度で示される温度情報は、環境データとして火災受信機200に送信される。
【0038】
まず初めに、図3(A)について説明する。図3(A)では、火災判定閾値として、減光率10.0(%/m)が設定されている場合を例示している。この場合、火災判定部201は、火災感知器100から環境データとして取得した減光率が火災判定閾値である10.0(%/m)以上であれば火災レベルであると判定することができる。
【0039】
なお、減光率5.0(%/m)は、火災判定閾値より下に設定された火災予報閾値(プレアラームともいう)であり、火災発生前に、予備警報を出力するための閾値である。
【0040】
一方、発報処理部202は、火災感知器100から環境データとして取得した減光率が火災判定閾値である10.0(%/m)未満である場合には、減光率の大きさに応じて、注意レベルと注目レベルとにレベル分けすることができる。
【0041】
図3(A)では、減光率が10.0(%/m)未満~5.0(%/m)以上の範囲を注意レベル、減光率が5.0(%/m)未満の範囲を注目レベル、としてレベル分けした場合を例示している。なお、例えば、減光率1.5(%/m)を注目レベルの下限値として設定してもよい。
【0042】
ここで、注意レベルとは、火災監視エリア内で薄い煙が発生して減光率が10.0(%/m)未満~5.0(%/m)以上の範囲になったような場合を意味する。また、注目レベルとは、注意レベルまでには至っていないが、火災監視エリア内の空気が日常環境よりも悪化して減光率が5.0(%/m)未満の範囲になったような場合を意味する。
【0043】
発報処理部202は、環境データとして取得した減光率が、火災レベルには到達していないものの、注意レベルあるいは注目レベルに到達していると判断した場合には、環境異常情報を通知する。
【0044】
発報処理部202は、火災受信機200に装備された表示部などを用いて表示処理、音声出力処理などを行うことで、環境異常情報を通知することができる。この際、発報処理部202は、注意レベルと注目レベルとを識別できるようにして環境異常情報を通知することができる。
【0045】
また、発報処理部202は、送信先記憶部203に環境異常情報を通知するための送信先が記憶されている場合には、送信先記憶部203に記憶されている送信先に無線送信することができる。送信先の一例としては、ビル警備員、ビルテナント従業員などが所持する携帯端末などが挙げられる。
【0046】
また、注意レベルの環境異常情報の送信先と、注目レベルの環境異常情報の送信先とが区別して送信先記憶部203に記憶されている場合には、発報処理部202は、環境異常情報のレベルに応じて適切な送信先を選択して環境異常情報を通知することができる。
【0047】
例えば、ビル警備員やビルの自衛消防隊員には注意レベルの環境異常情報を通知し、ビルテナント従業員には注目レベルの環境異常情報を通知することができるように、送信先をレベルごとに区別して送信先記憶部203に記憶させておくことが考えられる。
【0048】
この場合、薄い煙が発生したことを示す注意レベルに関してはビル警備員に対して直ちに通知され、火災監視エリア内の空気が日常環境よりも悪化したことを示す注目レベルに関してはビルテナント従業員に対して直ちに通知されることとなる。なお、ビル警備員への通知のタイミングとしては、必ずしも直ちに通知である必要性はない。
【0049】
次に、図3(B)について説明する。図3(B)では、火災判定閾値として、温度65(℃)が設定されている場合を例示している。この場合、火災判定部201は、火災感知器100から環境データとして取得した温度が火災判定閾値である65(℃)以上であれば火災レベルであると判定することができる。
【0050】
一方、発報処理部202は、火災感知器100から環境データとして取得した温度が火災判定閾値である65(℃)未満である場合には、温度の高さに応じて、注意レベルと注目レベルとにレベル分けすることができる。なお、40(℃)は、火災判定閾値より下に設定された火災予報閾値で、火災発生前に、予備警報を出力するための閾値である。
【0051】
図3(B)では、温度が65(℃)未満~40(℃)以上の範囲を注意レベル、温度が40(℃)未満の範囲を注目レベル、としてレベル分けした場合を例示している。なお、例えば、温度30(℃)を注目レベルの下限値として設定してもよい。
【0052】
ここで、注意レベルとは、火災監視エリア内で高温状態が発生して温度が65(℃)未満~40(℃)以上の範囲になったような場合を意味する。また、注目レベルとは、注意レベルまでには至っていないが、火災監視エリア内の温度が日常環境よりも高くなり、温度が40(℃)未満の範囲になったような場合を意味する。
【0053】
ところで、図3においては、減光率および温度ともに注目レベルの範囲が大きいが、例えば、減光率であれば、1.5(%/m)未満であるとき、また温度であれば、30(℃)未満であるときは、日常環境にあるとして、特に環境温度情報を出力しないようにしてもよい。すなわち、防火対象の用途、規模、環境等に応じて、注目レベルの下限値を、火災予報閾値(プレアラーム)より下に設定された所望の値とすることができる。
【0054】
発報処理部202は、環境データとして取得した温度が、火災レベルには到達していないものの、注意レベルあるいは注目レベルに到達していると判断した場合には、環境異常情報を通知する。
【0055】
発報処理部202は、火災受信機200に装備された表示部などを用いて表示処理、音声出力処理などを行うことで、環境異常情報を通知することができる。この際、発報処理部202は、注意レベルと注目レベルとを識別できるようにして環境異常情報を通知することができる。
【0056】
また、発報処理部202は、送信先記憶部203に環境異常情報を通知するための送信先が記憶されている場合には、送信先記憶部203に記憶されている送信先に無線送信することができる。送信先の一例としては、ビル警備員、ビルテナント従業員などが所持する携帯端末などが挙げられる。
【0057】
また、注意レベルの環境異常情報の送信先と、注目レベルの環境異常情報の送信先とが区別して送信先記憶部203に記憶されている場合には、発報処理部202は、環境異常情報のレベルに応じて適切な送信先を選択して環境異常情報を通知することができる。
【0058】
例えば、ビル警備員やビルの自衛消防隊員には注意レベルの環境異常情報を通知し、ビルテナント従業員には注目レベルの環境異常情報を通知することができるように、送信先をレベルごとに区別して送信先記憶部203に記憶させておくことが考えられる。
【0059】
この場合、高温状態が発生したことを示す注意レベルに関してはビル警備員に対して直ちに通知され、火災監視エリア内の温度が日常環境よりも悪化したことを示す注目レベルに関してはビルテナント従業員に対して直ちに通知されることとなる。
【0060】
つまり、ビル警備員は、環境異常情報が通知されたことに伴い、ビル内のある場所が、例えば、40℃を超える高温になっていることを知ることができ、空調制御とか現場確認とかの対応を速やかにとることができる。なお、ビル警備員への通知のタイミングとしては、必ずしも直ちに通知である必要性はない。
【0061】
ここで、環境異常情報について言及する。環境異常情報とは、火災感知器が出力する環境データが、火災予報閾値未満のときに出力される情報であって、ビルの利用者などに、日常環境に比べて、少し環境が異常状態に近くなりつつあるので、注意または注目した方がいいですよということを通知するものである。
【0062】
例えば、ビルの利用者の携帯端末に「注目 温度情報」または「注目 エア情報」のように表示すればよく、具体的に、火災感知器からのアナログ値をそのまま表示させ、例えば、「注目 温度情報(35℃)」のように表示させるようにしてもよい。
【0063】
以上のように、実施の形態1によれば、アナログ式の火災感知器から取得できる環境データ(アナログ値の測定データ)を有効活用し、火災判定閾値に満たない環境データに基づいて、注意レベルおよび注目レベルの環境異常情報を、迅速に通知することができる。すなわち、火災感知器から得られる環境データを有効活用し、火災に至る前の日常環境における環境変化の度合を通知することができる火災報知システムを実現できる。
【0064】
実施の形態2.
先の実施の形態1では、火災感知器100の上位装置として火災受信機200を用いる場合について説明した。これに対して、本実施の形態2では、火災感知器100の上位装置としてクラウドサーバを用いる場合について説明する。
【0065】
図4は、本開示の実施の形態2に係る火災報知システムの全体構成を示す説明図である。本実施の形態2に係る火災報知システムは、火災感知器100、クラウドサーバ300、N台の携帯端末400(1)~400(N)がネットワーク500を介して通信可能に接続された構成となっている。
【0066】
本実施の形態2に係る火災感知器100は、生成した環境データの送信先が、火災受信機200ではなく、クラウドサーバ300である点を除けば、先の実施の形態1に係る火災感知器100と実質的に同一である。
【0067】
なお、この場合は、火災感知器は、ネットワーク500経由で環境データをクラウドサーバ300へ送信する手段を有するが、実施の形態1のように環境データを火災受信機200へ出力するシステムを採用し、火災受信機200が、火災感知器100から受信した環境データを、ネットワーク500経由でクラウドサーバ300へ送信する手段を設けるようにしてもよい。
【0068】
火災感知器100の上位装置に相当するクラウドサーバ300は、ネットワーク500を介して受信した環境データに基づいて環境異常情報を生成する。クラウドサーバ300による環境異常情報の生成手法は、先の実施の形態1に係る火災受信機200による環境異常情報の生成手法と実質的に同一である。
【0069】
クラウドサーバ300は、環境異常情報を所望の携帯端末400に対して送信する。ここで、クラウドサーバ300には、環境異常情報の通知先である携帯端末のアドレスと、各携帯端末に割り当てられた通知レベルとが対応付けられた通知レベルテーブル301が記憶されている。
【0070】
従って、クラウドサーバ300は、火災感知器100または火災受信機200で生成した環境異常情報に割り付けられている通知レベルに対応する携帯端末を、通知レベルテーブル301を参照することで抽出することで、送信先である所望の携帯端末400を特定することができる。その結果、クラウドサーバ300は、特定できた所望の携帯端末400に対して環境異常情報を通知することができる。
【0071】
具体的には、通知レベルテーブル301を参照することで、ビル警備員が所有している携帯端末400に対しては注意レベルの環境異常情報を通知し、ビルテナント従業員が所有している携帯端末400に対しては注目レベルの環境異常情報を通知することができる。すなわち、環境異常情報のレベルに応じて、適切な送信先の携帯端末400を選択して環境異常情報を通知することができる。
【0072】
なお、送信先としては、環境異常情報が注目レベル以上のときは、この火災報知設備が設置されたビルの利用者としてのビルテナント従業員だけでなく、ビルの警備員、ビルの管理者、防災センターの管理員などにも通報するようにしてもよい。
【0073】
一方、携帯端末400は、ネットワーク500を介して環境異常情報を受信することで、環境異常情報を受信したことを知らせたり、環境異常情報の内容を表示させたりすることで、携帯端末400の所有者に対して、迅速に火災監視エリアの環境変化の度合を通知することができる。
【0074】
さらに、携帯端末400は、自身に割り付けられる通知レベルを示す通知レベル設定情報を携帯端末上で設定可能とし、ネットワーク500を介してクラウドサーバ300に対して通知レベル設定情報を送信可能とする付加機能を備えている。
【0075】
クラウドサーバ300は、このような付加機能を備えた携帯端末400から通知レベル設定情報を受信した場合には、受信した通知レベル設定情報に従って通知レベルテーブル301を更新することができる。従って、複数の携帯端末400(1)~400(N)に関して、通知レベルテーブル301を適宜更新できるとともに、新たな携帯端末400が追加になった場合にも、通知レベルテーブル301を容易に更新できる。
【0076】
以上のように、実施の形態2によれば、上位装置としてクラウドサーバを用いた場合にも、先の実施の形態1と同様に、アナログ式の火災感知器から取得できる環境データを有効活用し、火災判定閾値に満たない環境データに基づいて、注意レベルおよび注目レベルの環境異常情報を、所望の携帯端末に対して迅速に通知することができる。
【0077】
すなわち、火災感知器から得られる環境データを有効活用し、火災に至る前の日常環境における環境変化の度合を通知することができる火災報知システムを実現できる。
【0078】
さらに、実施の形態2によれば、携帯端末からクラウドサーバに通知レベル設定情報を送信することで、クラウドサーバ内の通知レベルテーブルを更新することができる。この結果、所望の携帯端末に対して必要な環境異常情報を通知できるシステムを、容易に構築することができる。
【0079】
なお、火災感知器100から環境データを送信するタイミングは、上位装置からの定期的な要求に応じて行うポーリング方式を採用することができ、上位装置は、定期的に環境データを取得することができる。あるいは、火災感知器100が主体的に、定期的に環境データを送信する構成を採用することも可能である。
【0080】
また、上位装置から環境異常情報を送信するタイミングは、注意レベルあるいは注目レベルの環境異常情報が生成されたタイミングで直ちに送信する方式を採用することができる。
【0081】
火災の発生に関しては、一般的には火災監視エリアにおける監視情報が火災以外の事象によって火災判定閾値以上となることで発生する非火災報を抑制するためにタイマ等を用いた非火災報抑制処理を行っているが、注意レベルあるいは注目レベルの環境異常情報に関しては、タイマ等を用いずに、通知先に迅速に情報を送信することが重要と考えられる。
【0082】
このように、迅速に環境異常情報を送信することで、例えば、注意レベルの環境異常情報を知ったビル警備員は、火災監視エリアの点検、確認を迅速に行うことができ、火災を未然に防ぐことができる。
【0083】
また、例えば、注目レベルの環境異常情報を知ったビルテナント従業員は、監視対象エリアの換気を行ったり、空調を効かせたりすることで、日常環境よりも悪化した環境を直ちに改善することができる。
【0084】
また、上述した実施の形態1、2では、注意レベルと注目レベルの2レベルに分割する場合について説明したが、さらに多段階に分けることも可能である。例えば、注意レベル、あるいは注目レベルをさらに細分化することが考えられる。また、注目レベルのみに特化して、環境異常情報の通知を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0085】
10 火災受信機、31、32、41~44、100 火災感知器、200 火災受信機、201 火災判定部、202 発報処理部、203 送信先記憶部、300 クラウドサーバ、301 通知レベルテーブル、400、400(1)~400(N) 携帯端末、500 ネットワーク。
図1
図2
図3
図4