(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140123
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】デフレクタ挿入機構、該デフレクタ挿入機構を備えた消火装置
(51)【国際特許分類】
A62C 31/03 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A62C31/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051122
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】松尾 涼平
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189KB01
(57)【要約】
【課題】デフレクタと放水ノズルの先端との間の隙間が生じないようにデフレクタを放水軌道に挿入するデフレクタ挿入機構、該デフレクタ挿入機構を備えた消火装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るデフレクタ挿入機構1は、一端側が消火装置5に俯仰可能に取り付けられ、他端側に進退可能なロッド31を有するシリンダ機構19と、デフレクタ3に固定される固定部37と、固定部37から上方に突出して上端側がシリンダロッド31の先端部に回動可能に取り付けられる腕部39とを有し、デフレクタ3をシリンダロッド31に保持させるデフレクタ保持部材21と、消火装置5の放水ノズル7とデフレクタ3の両方に跨るように設けられてロッド31が伸長するときに、デフレクタ3の背面部43が放水口10に正対して密着するようにデフレクタ3を案内するガイド部材23と、を備えたものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放水距離や範囲を制御するデフレクタを消火装置の放水軌道に挿入するデフレクタ挿入機構であって、
一端側が前記消火装置に俯仰可能に取り付けられ、他端側に進退可能なロッドを有するシリンダ機構と、
前記デフレクタに固定される固定部と、該固定部から上方に突出して上端側が前記シリンダロッドの先端部に回動可能に取り付けられる腕部とを有し、前記デフレクタを前記シリンダロッドに保持させるデフレクタ保持部材と、
前記消火装置の放水ノズルと前記デフレクタの両方に跨るように設けられて前記ロッドが伸長するときに、前記デフレクタの背面部が前記放水口に正対して密着するように前記デフレクタを案内するガイド部材と、を備えたことを特徴とするデフレクタ挿入機構。
【請求項2】
前記ガイド部材は、ガイド溝が形成されたガイドプレートと、前記デフレクタの側面から突出して前記ガイド溝に移動可能に挿入される突出ガイド部とを有することを特徴とする請求項1に記載のデフレクタ挿入機構。
【請求項3】
前記ガイド部材は、一端が前記放水ノズルに回動可能に取り付けられ、他端が前記デフレクタの側面に回動可能に取り付けられたリンク機構であることを特徴とする請求項1に記載のデフレクタ挿入機構。
【請求項4】
火災検知センサで火源の位置を特定し、放水ノズルからデフレクタを介して前記火源に向けて放水する消火装置であって、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のデフレクタ挿入機構を備えたことを特徴とする消火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放水距離等を変更するデフレクタを放水ノズルの放水軌道に挿入するデフレクタ挿入機構及び該デフレクタ挿入機構を備えた消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放水距離等を変更するデフレクタを放水ノズルの放水軌道に挿入するデフレクタ挿入機構に関しては、例えば特許文献1の消火装置に適用されている駆動機構が挙げられる。
特許文献1の駆動機構は、放水ノズルの上方からコ字断面形状のデフレクタを、円軌道を描くように移動させて放水軌道に挿入するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の駆動機構のように、デフレクタを、円軌道を描くように移動させて放水軌道に挿入する場合、放水ノズルの先端とデフレクタとの間に隙間ができる。このため、特許文献1では、当該隙間から放水が横方向に散水されるのを防止するために、衝突面部を両側から覆うように側壁部を設けている。
しかし、放水ノズルの先端とデフレクタの衝突面部との間に隙間がある場合、デフレクタによる放水制御を意図した通りに正確にできないという課題があった。
【0005】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、デフレクタと放水ノズルの先端との間の隙間が生じないようにデフレクタを放水軌道に挿入するデフレクタ挿入機構、該デフレクタ挿入機構を備えた消火装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係るデフレクタ挿入機構は、放水距離や範囲を制御するデフレクタを消火装置の放水軌道に挿入するものであって、
一端側が前記消火装置に俯仰可能に取り付けられ、他端側に進退可能なロッドを有するシリンダ機構と、
前記デフレクタに固定される固定部と、該固定部から上方に突出して上端側が前記シリンダロッドの先端部に回動可能に取り付けられる腕部とを有し、前記デフレクタを前記シリンダロッドに保持させるデフレクタ保持部材と、
前記消火装置の放水ノズルと前記デフレクタの両方に跨るように設けられて前記ロッドが伸長するときに、前記デフレクタの背面部が前記放水口に正対して密着するように前記デフレクタを案内するガイド部材と、を備えたことを特徴とするものである。
【0007】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記ガイド部材は、ガイド溝が形成されたガイドプレートと、前記デフレクタの側面から突出して前記ガイド溝に移動可能に挿入される突出ガイド部とを有することを特徴とするものである。
【0008】
(3)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記ガイド部材は、一端が前記放水ノズルに回動可能に取り付けられ、他端が前記デフレクタの側面に回動可能に取り付けられたリンク機構であることを特徴とするものである。
【0009】
(4)また、本発明に係る消火装置は、火災検知センサで火源の位置を特定し、放水ノズルからデフレクタを介して前記火源に向けて放水するものであって、
上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のデフレクタ挿入機構を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のデフレクタ挿入機構によれば、デフレクタを可動してデフレクタの背面部を放口との間に隙間がなく配置できるので、消火水のほぼ全てをデフレクタの内部に注水することができる。このため、デフレクタに形成された遠方放水口及び中近距離放水口等から正確に制御された意図した放水が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係るデフレクタ挿入機構を備えた消火装置の斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係るデフレクタ挿入機構を備えた消火装置の側面図である(その1)。
【
図3】実施の形態1に係るデフレクタを正面側から見た斜視図である。
【
図4】実施の形態1に係るデフレクタを背面側から見た斜視図である。
【
図5】実施の形態1に係るデフレクタの正面図(
図5(a))、及び矢視A-A断面図(
図5(b))である。
【
図6】実施の形態1に係るデフレクタ挿入機構を備えた消火装置の側面図である(その2)。
【
図7】実施の形態1に係るデフレクタ挿入機構を備えた消火装置の側面図である(その3)。
【
図8】実施の形態1に係るデフレクタ挿入機構を備えた消火装置の断面図である。
【
図9】実施の形態2に係るデフレクタ挿入機構を備えた消火装置の斜視図である。
【
図10】実施の形態2に係るデフレクタ挿入機構を備えた消火装置の側面図である(その1)。
【
図11】実施の形態2に係るデフレクタ挿入機構を備えた消火装置の側面図である(その2)。
【
図12】実施の形態2に係るデフレクタ挿入機構を備えた消火装置の側面図である(その3)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態1]
本発明の一実施の形態に係るデフレクタ挿入機構1は、放水距離や範囲を制御するデフレクタ3を消火装置5の放水軌道に挿入するものである。
消火装置5及びデフレクタ挿入機構1について、
図1~
図7に基づいて説明する。
【0013】
<消火装置>
消火装置5は、放水ノズル7と、放水ノズル7を旋回させる旋回機構9とを備えている。
放水ノズル7の旋回角度や停止位置は図示しないエンコーダの情報によって旋回用モータを制御することによって行われる。
【0014】
<デフレクタ>
デフレクタ3は、放水ノズル7の放水軌道に配置されて放水距離や範囲等を変更するものである。デフレクタ3の形状等は特に限定されるものではないが、本実施の形態のデフレクタ3は、
図3~
図5に示すように、内部が中空の箱形状からなり(
図5(b)参照)、放水ノズル7の放水口10が密着して注水される注水口11(
図4参照)と、注水口11よりも開口面積が小さく、かつ注水口11に連通して注水された消火水を遠方に放水する遠方放水口13(
図3、
図5参照)と、注水位置よりも下方の壁面に設けられて、注水された消火水を中距離、近距離に放水する中近距離放水口としての複数のスリット15(
図3、
図5参照)及び背面開口17と、を備えている。
【0015】
上記のデフレクタ3においては、注水口11から注水された消火水の一部は、遠方放水口13から遠方に向けて放水される。
また、注水された他の消火水は、スリット15及び背面開口17から中距離及び近距離に放水される。特に、デフレクタ3の下面に形成されたスリット15からは真下を含む下方に放水され、また背面開口17からは真下よりもさらに後方に向けて放水される。
このように、本実施の形態のデフレクタ3によれば、遠距離、中距離、近距離(真下及び後方を含む)に放水が可能である。
【0016】
<デフレクタ挿入機構>
デフレクタ挿入機構1は、
図1、
図2に示すように、シリンダ機構19と、デフレクタ保持部材21(
図3~
図5参照)と、ガイド部材23とを備えている。
【0017】
《シリンダ機構》
シリンダ機構19は、ロッド31を伸縮させるための駆動機構25と、シリンダ機構19を消火装置5に俯仰可能に支持するための支持部27と、シリンダ部29と、ロッド31を備えている。
駆動機構25は、図示しないモータ等によって構成され、ロッド31を伸縮させる。
支持部27は、シリンダ軸に直交する支持軸33と、支持軸33を回動可能に支持する軸受部35によって構成されている。支持軸33に支持されて回動することで、シリンダ機構19全体が上下方向に俯仰する。
シリンダ部29は、ロッド31が収容される部分である。
ロッド31は、シリンダ部29から伸長し縮退する。
図1はロッド31が最も縮退した状態であり、
図2はロッド31が最も伸長した状態である。
【0018】
《デフレクタ保持部材》
デフレクタ保持部材21は、
図3に示すように、デフレクタ3の上面に固定される固定部37と、固定部37から上方に突出する左右一対の腕部39とを備え、腕部39の上端部には軸孔40が設けられている。
ロッド31の先端部にはロッド軸線に直交する方向に突出する回動軸41が設けられており、回動軸41に腕部39の軸孔40が回転可能に挿入されることで、デフレクタ3がロッド先端に回動可能に保持される。
なお、固定部37はデフレクタ3と別体でも一体でもよい。
【0019】
《ガイド部材》
ガイド部材23は、消火装置5の放水ノズル7とデフレクタ3の両方に跨るように設けられて、ロッド31が伸長するときに、デフレクタ3の背面部43が放水口10に正対して密着するようにデフレクタ3を案内するものであって、ガイド溝45が形成されたガイドプレート47(
図1、
図2参照)と、デフレクタ3の側面から突出してガイド溝45に挿入される突出ガイド部49とを備えている。突出ガイド部49には、ガイド溝45内での移動を滑らかにするためにローラ51が設けられている。
【0020】
ガイドプレート47は、放水ノズル7を左右から挟むように設けられた一対の矩形の板材からなる。また、ガイド溝45は、ガイドプレート47を放水ノズル7に取り付けた状態で、斜め下方に延びる部位Aとこれに続いて下方に屈曲する部位Bと、さらに下方に延びる部位Cを有している。
【0021】
上記のようなデフレクタ挿入機構1を備えた消火装置5の動作を説明する。
図示しない火災検知センサで火源の位置が特定されると、旋回機構9が駆動して放水ノズル7は火源方向に旋回する。
初期状態では、デフレクタ3は、
図2に示すように、放水ノズル7の放水口10を覆っていない状態になっている。これは最も遠方に放水(最遠方放水)する状態であり、特定された火源が遠方にある場合には、この状態で放水が行われる。この場合には、例えば放水ノズル7から60m~30m前方の位置を放水範囲とする。
【0022】
他方、特定された火源がもう少し手前にあるときには、デフレクタ挿入機構1を駆動して、
図1に示すように、放水ノズル7の放水口10にデフレクタ3を密着させる。このときのデフレクタ3の動きを
図6~
図8に基づいて説明する。
図1の状態からロッド31が少し伸長すると、突出ガイド部49がガイド溝45に沿って移動し、これに伴ってデフレクタ3は下向きに回動し、またシリンダ機構19も先端が下を向くように回動する(
図6参照)。
【0023】
ロッド31がさらに伸長すると、突出ガイド部49がガイド溝45に沿って下方に向けて移動し、これに伴ってデフレクタ3はさらに回動して背面部43が放水ノズル7の放水口10に密着する。
このとき放水口10がデフレクタ3の注水口11に位置している(
図8参照)。
この状態で放水すると、放水ノズル7の先端とデフレクタ3との間に隙間がないので、消火水のほぼ全てがデフレクタ3の内部に導かれ、一部は遠方放水口13から遠距離に放水され、デフレクタ3の内部に注水された他の消火水は、中近距離放水口であるスリット15及び背面開口17から放水される。この場合、放水ノズル7の後方も含む放水ノズル7から30m以内を放水範囲としている。
【0024】
デフレクタ3を放水口10から離すには、ロッド31を縮退させることで、上記と逆の動作をして、
図1の状態に戻すことができる。
【0025】
以上のように、本実施の形態によれば、デフレクタ3が可動して放水ノズル7の放水口10に密着するので、デフレクタ3と放水ノズル7との間に隙間がなく、消火水をほぼ全てデフレクタ3の内部に導くことができる。このため、デフレクタ3に形成された遠方放水口13及び中近距離放水口より正確に制御された放水が可能となる。
なお、上記では放水範囲を60m以内とした例を示したが、消火装置5の設置高さによっても影響されるので、放水範囲は適宜設定されるものであり、これに限定されるものではない。
【0026】
[実施の形態2]
実施の形態1では、デフレクタ挿入機構1を構成するガイド部材23が、ガイドプレート47と突出ガイド部49によって構成されていたが、本実施の形態では、このガイド部材23をリンク機構53によって構成したものである。
以下、実施の形態2のガイド部材23を
図9~
図12に基づいて説明するが、実施の形態1と同一部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0027】
本実施の形態のガイド部材23を構成するリンク機構53は、
図9、
図10に示すように、一端が放水ノズル7の最先端の両側面に、他端がデフレクタ3の下部両側面にそれぞれ回動自在に取り付けられた一対の短リンク55と、一端が放水ノズル7の後端側の両側面に、他端がデフレクタ3の上部両側面にそれぞれ回動自在に取り付けられた一対の長リンク57とによって構成されている。
なお、短リンク55の他端はデフレクタ3の側面における背面寄りの位置に、長リンク57の他端はデフレクタ3の側面における正面寄りの位置に、それぞれ取り付けられている。
また、本実施の形態2の放水ノズル7は、短リンク55及び長リンク57を取り付けるため、実施の形態1のものとは形状が異なっているが、放水という観点での機能は全く同じである。
【0028】
上記のように構成された本実施の形態のデフレクタ挿入機構1の動作を説明する。
デフレクタ3が放水ノズル7の放水口10を覆っていない状態では、
図9、
図10に示すように、ロッド31が最も縮退して、短リンク55及び長リンク57ともに直立に近い状態になっている。
図9、
図10の状態からロッド31が少し伸長すると、デフレクタ3はロッド31に押されると共にリンク機構53にガイドされて時計回りに回動し、またシリンダ機構19は先端が下を向くように回動する。このように、ロッド31の伸長に伴って、シリンダ機構19の先端が下を向く動き及びリンク機構53における短リンク55及び長リンク57の回転という一連の動きによって、デフレクタ3の背面部43が徐々に放水ノズル7の放水口10に正対するように向きを変える。
【0029】
ロッド31がさらに伸長すると、
図12に示すように、デフレクタ3が放水口10に向かって移動し、背面部43が放水ノズル7の正対した状態で密着する。この状態では、実施の形態1の
図8と同様に、放水口10がデフレクタ3の注水口11に位置している。
【0030】
以上のように、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、デフレクタ3が放水口10を覆わない状態から、デフレクタ3の背面部43が放水口10に密着する状態に可動させることができ、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 デフレクタ挿入機構
3 デフレクタ
5 消火装置
7 放水ノズル
9 旋回機構
10 放水口
11 注水口
13 遠方放水口
15 スリット
17 背面開口
19 シリンダ機構
21 デフレクタ保持部材
23 ガイド部材
25 駆動機構
27 支持部
29 シリンダ部
31 ロッド
33 支持軸
35 軸受部
37 固定部
39 腕部
40 軸孔
41 回動軸
43 背面部
45 ガイド溝
47 ガイドプレート
49 突出ガイド部
51 ローラ
53 リンク機構
55 短リンク
57 長リンク