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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140125
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】吸収体及び吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/532 20060101AFI20241003BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20241003BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20241003BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20241003BHJP
   A61F 13/536 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61F13/532 210
A61F13/53 300
A61F13/534 110
A61F13/533 100
A61F13/536 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051124
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 加奈
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA01
3B200BA16
3B200BB17
3B200BB20
3B200CA11
3B200DA13
3B200DB02
3B200DB05
3B200DB15
3B200DB18
3B200DB22
3B200DB24
3B200DC04
3B200DE01
3B200DE10
3B200EA01
3B200EA05
3B200EA23
(57)【要約】
【課題】体液を複数回吸収してもゲルブロッキングが発生せず、体液の拡散性が良好であり、吸収量及び吸収速度に優れ、横漏れも防止できる吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品を提供する。
【解決手段】非肌側親水性不織布の上に、親水性不織布の片面に高吸収性ポリマー層を有するSAPシート層を、少なくとも二層以上重ね合わせた吸収体であって、高吸収性ポリマー層は、高吸収性ポリマーの層の上下にホットメルト接着剤を塗布して固着されたものであり、吸収体は、肌側表面の幅方向中央を長手方向に延びるエンボス溝を有し、親水性不織布の非肌側面に、ホットメルト接着剤が塗布されて接着されることによりエンボスが固定され、重ね合わせたSAPシート層において、最も肌側のSAPシート層の接着強度は、最も非肌側のSAPシート層の接着強度よりも大きい、吸収体及び吸収性物品を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラッフパルプを含まない吸収体であって、
吸収体は、非肌側親水性不織布の上に、親水性不織布の片面に高吸収性ポリマー層を有するSAPシート層を、前記高吸収性ポリマー層を非肌側面として少なくとも二層以上重ね合わせたものであり、
前記高吸収性ポリマー層は、高吸収性ポリマーの層の上下にホットメルト接着剤を塗布して固着されたものであり、
吸収体は、その肌側表面から前記非肌側親水性不織布へと向けて凹み、かつ、肌側表面の幅方向中央を長手方向に延びるエンボス溝を有し、
前記エンボス溝が付与される部分においては、前記SAPシート層における親水性不織布の非肌側面に、ホットメルト接着剤が塗布されて接着されることによりエンボスが固定され、
重ね合わせた前記SAPシート層において、最も肌側のSAPシート層の接着強度は、最も非肌側のSAPシート層の接着強度よりも大きいことを特徴とする、吸収体。
【請求項2】
前記SAPシート層は三層重ね合わせられており、
中間のSAPシート層の接着強度は、最も非肌側のSAPシート層の接着強度と同じか、又はそれよりも大きく、かつ、最も肌側のSAPシート層の接着強度よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載の吸収体。
【請求項3】
重ね合わせた前記SAPシート層において、最も肌側のSAPシート層の接着強度と、最も非肌側のSAPシート層の接着強度との差は0.5N/25mm以上であり、最も非肌側のSAPシート層の接着強度が2.5N/25mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の吸収体。
【請求項4】
重ね合わせた前記SAPシート層のそれぞれの接着強度は、いずれも0.5N/25mm以上7N/25mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の吸収体。
【請求項5】
前記エンボス溝が付与される部分における、エンボスを固定するために塗布されるホットメルト接着剤の坪量は、8g/m以上40g/m以下であることを特徴とする、請求項1に記載の吸収体。
【請求項6】
前記高吸収性ポリマー層に含まれる高吸収性ポリマーの坪量は、100g/m以上400g/m以下であることを特徴とする、請求項1に記載の吸収体。
【請求項7】
前記エンボス溝の深さは、最も非肌側の前記SAPシート層における前記高吸収性ポリマー層の非肌側まで達することを特徴とする、請求項1に記載の吸収体。
【請求項8】
前記エンボス溝の長さは、吸収体の長手方向の寸法の30%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の吸収体。
【請求項9】
更に、その肌側表面から前記非肌側親水性不織布へと向けて凹み、かつ、肌側表面を幅方向に伸びる幅方向側エンボス溝を含むことを特徴とする、請求項1に記載の吸収体。
【請求項10】
前記SAPシート層に含まれる親水性不織布、及び前記非肌側親水性不織布は、いずれもスパンボンド不織布であることを特徴とする、請求項2に記載の吸収体。
【請求項11】
前記非肌側親水性不織布はコアラップシートであることを特徴とする、請求項1に記載の吸収体。
【請求項12】
吸収性物品であって、
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置される請求項1に記載の吸収体と、を備えることを特徴とする、吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品は、肌側に位置する液透過性のトップシートと、非肌側に位置する液不透過性のバックシートと、これらの間に配置される吸収体とを備え、トップシートを透過してきた体液を吸収体で吸収及び保持し、バックシートにより体液が着用者の衣類等に付着しないように構成されている。
【0003】
吸収性物品には、例えば、軽失禁パッド、軽失禁ライナー、尿吸収パッド、生理用ナプキン等のパッド製品や、パンツタイプ紙おむつ、テープ止めタイプ紙おむつ等の紙おむつ製品等、用途に応じて様々な形態が存在し、乳幼児、成人及び高齢者を問わず広く汎用されている。
【0004】
従来の吸収性物品では、吸収体として、フラッフパルプ等の吸収性繊維と、高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer、以下「SAP」とも称する)とを含むフラッフ吸収体が汎用されている。しかしながら、フラッフ吸収体は、尿等の体液を吸収して比較的大きな厚みになり、他人から目立ち易いという問題を有している。また、歩行可能でありつつ吸収性物品を着用する人の数が増えている。
【0005】
このため、最近では、吸収性物品を着けていることが目立たない、また着用時に違和感がなく、つけている感がない薄型の吸収性物品が望まれている。このような要望に鑑み、吸収体を薄型化するために、種々の提案がなされている。また、薄型の吸収体として、2枚の親水性不織布と、これらの間にホットメルト接着剤(以下「HM」とも称する)により固着されたSAPとを含むシート型の吸収体について、種々の提案がなされている。
【0006】
特許文献1には、着用者の肌側から非肌側に向けて順に設けられる、表面層(トップシート)と、吸収層と、底層(バックシート)とを備え、吸収層は、着用者の肌側から非肌側に向けて順に、ポリエチレン等からなる穿孔フィルム層と、上付着層と、コア層と、下付着層とを有し、穿孔フィルム層はトップシートとコア層との間に位置し、下付着層はコア層と底層との間に位置し、上付着層と下付着層との間に高吸水性樹脂を充填してコア層とした尿とりパッドが開示されている。
【0007】
特許文献2には、第1シートと、第1シートに対向配置される第2シートと、第1シートと第2シートとの間に配置されるSAPとを含み、第1シートは第2シートとの対向面が接着剤塗布面であり、第2シートは第1シートとの対向面が接着剤塗布面であり、SAPは第1シート及び/又は第2シートの接着剤塗布面に幅方向に間欠的にストライプ状に接着され、その幅方向両側は第1シート及び第2シートの接着剤塗布面同士の接着により封止された吸収性シートが、吸収体として開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3215515号公報
【特許文献2】特開2006-158676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、フラッフパルプを含まない吸収体は、従来のフラッフ吸収体と比較すると、SAPが初めに排出された尿等の体液を吸収及び膨潤してゲルブロッキングを起こし、体液の通り道を塞いでしまうことから、2回目以降の体液排出の際、体液吸収速度及び体液吸収量が著しく低下するという問題があった。特に、特許文献2に記載のような、単に2枚の親水性不織布の間にホットメルト接着剤でSAPを固着しただけの従来の吸収性シートは、現在の吸収性物品における複数回の体液吸収の要求に対応できない。
【0010】
また、従来の吸収性シートでは、シート間の接着を行い、かつ、体液の拡散性を向上させるためにエンボス加工を行うことがある。エンボス加工は、加熱や加圧といった工程によって親水性不織布のシート間を熱融着によって接着するものであるが、エンボスの接着が強いと拡散性や吸収速度は向上するが、内部のSAPの膨潤が阻害されるので吸収量は少なくなり、横漏れ等が発生する。一方でエンボスの接着が弱いと吸収量は多くなるが、代わりに拡散性に劣る。
【0011】
本発明の目的は、体液を複数回吸収してもゲルブロッキングが発生せず、体液の拡散性が良好であり、吸収量及び吸収速度に優れ、横漏れも防止できる吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、フラッフパルプを含まず、非肌側親水性不織布の上に、親水性不織布の片面に高吸収性ポリマー層を有するSAPシート層を、高吸収性ポリマー層を非肌側面として少なくとも二層以上重ね合わせた吸収体において、高吸収性ポリマー層として高吸収性ポリマーの層の上下にホットメルト接着剤を塗布して固着させ、肌側表面から非肌側親水性不織布へと向けて凹み、かつ、肌側表面の幅方向中央を長手方向に延びるエンボス溝を施し、エンボス溝が付与される部分において、SAPシート層における親水性不織布の非肌側面に、ホットメルト接着剤を塗布して接着させることによりエンボスを固定し、重ね合わせたSAPシート層における、最も肌側のSAPシート層の接着強度と最も非肌側のSAPシート層の接着強度の大小関係を規定することにより、体液を複数回吸収してもゲルブロッキングが発生せず、体液の拡散性が良好であり、吸収量及び吸収速度に優れ、横漏れも防止できる吸収体とすることができ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0013】
(1)本発明の第1の態様は、フラッフパルプを含まない吸収体であって、吸収体は、非肌側親水性不織布の上に、親水性不織布の片面に高吸収性ポリマー層を有するSAPシート層を、前記高吸収性ポリマー層を非肌側面として少なくとも二層以上重ね合わせたものであり、前記高吸収性ポリマー層は、高吸収性ポリマーの層の上下にホットメルト接着剤を塗布して固着されたものであり、吸収体は、その肌側表面から前記非肌側親水性不織布へと向けて凹み、かつ、肌側表面の幅方向中央を長手方向に延びるエンボス溝を有し、前記エンボス溝が付与される部分においては、前記SAPシート層における親水性不織布の非肌側面に、ホットメルト接着剤が塗布されて接着されることによりエンボスが固定され、重ね合わせた前記SAPシート層において、最も肌側のSAPシート層の接着強度は、最も非肌側のSAPシート層の接着強度よりも大きいことを特徴とする、吸収体である。
【0014】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収体であって、前記SAPシート層は三層重ね合わせられており、中間のSAPシート層の接着強度は、最も非肌側のSAPシート層の接着強度と同じか、又はそれよりも大きく、かつ、最も肌側のSAPシート層の接着強度よりも小さいことを特徴とするものである。
【0015】
(3)本発明の第3の態様は、(1)に記載の吸収体であって、重ね合わせた前記SAPシート層において、最も肌側のSAPシート層の接着強度と、最も非肌側のSAPシート層の接着強度との差は0.5N/25mm以上であり、最も非肌側のSAPシート層の接着強度が2.5N/25mm以下であることを特徴とするものである。
【0016】
(4)本発明の第4の態様は、(1)に記載の吸収体であって、重ね合わせた前記SAPシート層のそれぞれの接着強度は、いずれも0.5N/25mm以上7N/25mm以下であることを特徴とするものである。
【0017】
(5)本発明の第5の態様は、(1)に記載の吸収体であって、前記エンボス溝が付与される部分における、エンボスを固定するために塗布されるホットメルト接着剤の坪量は、8g/m以上40g/m以下であることを特徴とするものである。
【0018】
(6)本発明の第6の態様は、(1)に記載の吸収体であって、前記高吸収性ポリマー層に含まれる高吸収性ポリマーの坪量は、100g/m以上400g/m以下であることを特徴とするものである。
【0019】
(7)本発明の第7の態様は、(1)に記載の吸収体であって、前記エンボス溝の深さは、最も非肌側の前記SAPシート層における前記高吸収性ポリマー層の非肌側まで達することを特徴とするものである。
【0020】
(8)本発明の第8の態様は、(1)に記載の吸収体であって、前記エンボス溝の長さは、吸収体の長手方向の寸法の30%以上であることを特徴とするものである。
【0021】
(9)本発明の第9の態様は、(1)に記載の吸収体であって、更に、その肌側表面から前記非肌側親水性不織布へと向けて凹み、かつ、肌側表面を幅方向に伸びる幅方向側エンボス溝を含むことを特徴とするものである。
【0022】
(10)本発明の第10の態様は、(1)に記載の吸収体であって、前記SAPシート層に含まれる親水性不織布、及び前記非肌側親水性不織布は、いずれもスパンボンド不織布であることを特徴とするものである。
【0023】
(11)本発明の第11の態様は、(1)に記載の吸収体であって、前記非肌側親水性不織布はコアラップシートであることを特徴とするものである。
【0024】
(12)本発明の第12の態様は、吸収性物品であって、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置される(1)に記載の吸収体と、を備えることを特徴とする、吸収性物品である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、体液を複数回吸収してもゲルブロッキングが発生せず、体液の拡散性が良好であり、吸収量及び吸収速度に優れ、横漏れも防止できる吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る吸収体の構成を模式的に示す平面図である。
図2図1に示すX-X切断面における、エンボスを付与する前の状態の模式的断面図である。
図3図1に示すX-X切断面における、エンボスを付与した後の状態の模式的断面図である。
図4】本発明の別実施形態の吸収体における、エンボス溝の構成を模式的に示す平面図である。
図5図1の吸収体を含む、本発明の一実施形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書において、吸収体1の長手方向とは、吸収性物品100を着用したときに着用者の股間部を介して前後に亘る、図中Yで示す方向であり、幅方向とは、長手方向に対して略直交する、図中Xで示す方向であり、厚み方向とは、各構成部材を積層する方向である。吸収性物品100及びその各構成部材の肌側表面(以下「肌側の面」ともいう)とは着用者の肌に当接する表面又は該肌を臨む表面であり、非肌側表面(以下「非肌側の面」ともいう)とは着用者の衣類に当接する表面又は衣類を臨む表面である。体液とは、尿、血液や軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0028】
<吸収体>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る吸収体1について説明する。
本発明の一実施形態に係る吸収体1は、図1及び図2に示すように、非肌側親水性不織布2の上に、親水性不織布の片面に高吸収性ポリマー層を有するSAPシート層を、高吸収性ポリマー層を非肌側面として少なくとも二層以上重ね合わせたものである。SAPシート層は二層又は三層重ね合わせられていることが好ましいが、図2に示すように上層側SAPシート層10、中層側SAPシート層30、下層側SAPシート層20と、三層重ね合わせられていることがより好ましい。
なお、吸収体1は薄さを保つために、全体としてフラッフパルプを含まない。また、吸収体1の長手方向の寸法は120mm以上360mm以下であることが好ましく、幅方向の寸法は40mm以上80mm以下であることが好ましい。
【0029】
(親水性不織布)
上層側SAPシート層10、中層側SAPシート層30、下層側SAPシート層20はそれぞれ、上層側親水性不織布11及び上層側高吸収性ポリマー層12、下層側親水性不織布21及び下層側高吸収性ポリマー層22、中層側親水性不織布31及び中層側高吸収性ポリマー層32を含む。以下、それぞれのSAPシート層に含まれる親水性不織布及び高吸収性ポリマー層について説明する。
上層側親水性不織布11、下層側親水性不織布21、及び中層側親水性不織布31は、いずれも吸収体1の面方向及び厚さ方向に体液を拡散させるものである。上層側親水性不織布11、下層側親水性不織布21、及び中層側親水性不織布31としては、いずれも体液の拡散性に優れる親水性不織布を特に限定なく使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の合成樹脂からなる繊維の1種又は2種以上を含む、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの中でも、不織布表面が滑らかで接着剤が埋もれにくいために高吸収性ポリマーの固定率が優れること、及び、不織布が薄いために吸収体1の薄型化が可能であること、といった観点から、スパンボンド不織布がより好ましい。
【0030】
上層側親水性不織布11、下層側親水性不織布21、及び中層側親水性不織布31の坪量はそれぞれ、例えば、10g/m以上40g/m以下の範囲であることが好ましく、10g/m以上20g/m以下の範囲であることがより好ましい。上層側親水性不織布11、下層側親水性不織布21、及び中層側親水性不織布31のそれぞれの厚さは、例えば、0.05mm以上0.3mm以下の範囲である。なお、上層側親水性不織布11、下層側親水性不織布21、及び中層側親水性不織布31は、相互に同種又は異種の親水性不織布を用いることができるが、同種の方が好ましい。上層側親水性不織布11、下層側親水性不織布21、及び中層側親水性不織布31を全て同じ種類とすることで、資材の融点や熱の伝わりやすさが均一となるために、後述するエンボス溝40がくっきりと形成されやすく、吸収性物品100の使用終期に至るまで、吸収速度が高水準に維持される。
【0031】
(非肌側親水性不織布)
非肌側親水性不織布2は、吸収体1の最も非肌側に位置し、下層側高吸収性ポリマー層22を支持するとともに、体液が排出されたときに、体液漏れ、液戻り等の発生を防止する。非肌側親水性不織布2としては、体液の拡散性に優れる親水性不織布を特に限定なく使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の合成樹脂からなる繊維の1種又は2種以上を含む、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの中でも、吸収体1の薄型化の観点から、スパンボンド不織布がより好ましい。
【0032】
非肌側親水性不織布2の坪量は、例えば、10g/m以上40g/m以下の範囲であり、厚さは、例えば、0.05mm以上0.3mm以下の範囲である。なお、非肌側親水性不織布2には、上層側親水性不織布11、下層側親水性不織布21、及び中層側親水性不織布31と同種又は異種の親水性不織布を用いることができる。また、上層側親水性不織布11、下層側親水性不織布21、及び中層側親水性不織布31、並びに非肌側親水性不織布2は、すべて同種の不織布であってもよく、そして、すべてスパンボンド不織布であってもよい。
上層側親水性不織布11、下層側親水性不織布21、及び中層側親水性不織布31、並びに非肌側親水性不織布2を全てスパンボンド不織布とすることで、資材の融点や熱の伝わりやすさが均一となるために、後述するエンボス溝40がくっきりと形成されやすく、吸収性物品100の使用終期に至るまで、吸収速度が高水準に維持される。
なお、非肌側親水性不織布2は上層側親水性不織布11、下層側親水性不織布21、及び中層側親水性不織布31と同程度の寸法であってもよいが、幅方向の寸法が他の親水性不織布より大きく、厚さ方向に両端を折り畳んで、重ねられた上層側SAPシート層10、中層側SAPシート層30及び下層側SAPシート層20を全て包み込む、いわゆるコアラップシートであってもよい(図示しない)。
【0033】
(高吸収性ポリマー層)
上層側高吸収性ポリマー層12、下層側高吸収性ポリマー層22及び中層側高吸収性ポリマー層32に用いられる高吸収性ポリマーとしては、いずれも体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸アルカリ金属塩がより好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムが更に好ましい。高吸収性ポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0034】
高吸収性ポリマーは、例えば、粒子状、繊維状等の形態で用いられるが、取扱い易さ等の観点から好ましくは粒子状で用いられる。このとき、粉体としての流動性が悪い微粉末の高吸収性ポリマーの使用を避け、中位粒子径を有する高吸収性ポリマーを用いることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、吸収体1が体液を吸収した後に硬化することにより発生するごつごつとした触感を低減することができる。高吸収性ポリマーの中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0035】
上層側高吸収性ポリマー層12、下層側高吸収性ポリマー層22及び中層側高吸収性ポリマー層32に含まれる高吸収性ポリマーの坪量は、いずれも100g/m以上400g/m以下であることが好ましい。
高吸収性ポリマーの坪量を上記の数値範囲内とすることで、上層側高吸収性ポリマー層12、下層側高吸収性ポリマー層22及び中層側高吸収性ポリマー層32のゲルブロッキングを防止し、かつ、吸収体1の吸収量を担保することができる。
【0036】
なお、各SAPシート層における高吸収性ポリマー層の坪量及び厚さは互いに同一でも異なっていてもよいが、吸水に伴い高吸収性ポリマーが膨潤したときに、後述するエンボス部分50が接着の弱い下層側SAPシート層20から外れていきやすくするために、各層の高吸収性ポリマーの坪量は、上層側高吸収性ポリマー層12より中層側高吸収性ポリマー層32の方が大きく、中層側高吸収性ポリマー層32より下層側高吸収性ポリマー層22の方が大きいことが好ましい。
【0037】
(接着剤層)
SAPシート層における高吸収性ポリマー層は、高吸収性ポリマーの層の上下にホットメルト接着剤を塗布して固着されたものである。すなわち、上層側高吸収性ポリマー層12、下層側高吸収性ポリマー層22及び中層側高吸収性ポリマー層32のそれぞれの上下に、高吸収性ポリマーを固着させるためにホットメルト接着剤を塗布して、それぞれ上層側接着剤層13、下層側接着剤層23及び中層側接着剤層33を形成する。
後述するエンボス溝40は熱と圧力によって付与されるが、各層の親水性不織布をエンボスのみで接着する場合、温度が高すぎると親水性不織布に穴があきやすくなってSAPが漏れ出る可能性があり、低すぎると十分に接着されず、SAPの膨潤によって容易に外れてエンボスによる溝が形成されないため、ホットメルト接着剤を塗布することによって各層を別途接着する。
用いられるホットメルト接着剤としては、融点が100℃以上180℃以下のものを特に限定なく使用でき、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン系共重合体等の合成ゴム系ホットメルト接着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法が利用できる。
【0038】
このとき、上層側接着剤層13、下層側接着剤層23及び中層側接着剤層33を形成するために塗布するホットメルト接着剤の坪量は特に限定されないが、接着性と肌触りの観点から、いずれも後述するエンボス部分50を固定するために塗布されるホットメルト接着剤の坪量と同じ8g/m以上40g/m以下であることが好ましい。
【0039】
また、後述するエンボス溝40が付与される部分においては、上層側親水性不織布11、下層側親水性不織布21、及び中層側親水性不織布31の坪量のそれぞれの非肌側面に、ホットメルト接着剤が塗布されて接着されることによりエンボスが固定される(図3に示すエンボス部分50が固定される)。
このとき、エンボス溝40が付与される部分における、エンボス部分50を固定するために塗布されるホットメルト接着剤の坪量は、8g/m以上40g/m以下であることが好ましい。坪量が8g/m以上未満であると、エンボス部分50が固定されず、エンボス溝40が消失してしまい、吸収体1が体液の拡散性に劣る。坪量が40g/m以上を超えると、エンボス部分50を形成する上層側親水性不織布11、下層側親水性不織布21、及び中層側親水性不織布31からホットメルト接着剤が染み出して設備に張り付き、操業に支障をきたす。
【0040】
なお、上層側親水性不織布11、下層側親水性不織布21、及び中層側親水性不織布31において、エンボス溝40が付与される部分における、エンボス部分50を固定するために塗布されるそれぞれのホットメルト接着剤の坪量は互いに同一でも異なっていてもよいが、吸水に伴い高吸収性ポリマーが膨潤したときに、後述するエンボス部分50が接着の弱い下層側親水性不織布21から外れていきやすくするために、各層のホットメルト接着剤の坪量は、下層側親水性不織布21に塗布されるホットメルト接着剤の坪量より中層側親水性不織布31に塗布されるホットメルト接着剤の坪量の方が大きく、中層側親水性不織布31に塗布されるホットメルト接着剤の坪量より上層側親水性不織布11に塗布されるホットメルト接着剤の坪量の方が大きいことが好ましい。
【0041】
(エンボス溝)
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る吸収体1は、その肌側表面から非肌側親水性不織布2へと向けて凹み、かつ、肌側表面の幅方向中央を長手方向に延びるエンボス溝40を有する。エンボス溝40を施すことにより、吸収体1の長手方向への体液の拡散が促される。また、エンボス溝40は図3に示すように最も非肌側のSAPシート層(下層側SAPシート層20)まで到達しているため、体液はエンボス溝40から更に拡散する。
このとき、エンボス溝40の深さDは、最も非肌側のSAPシート層(下層側SAPシート層20)における高吸収性ポリマー層(下層側高吸収性ポリマー層22)の非肌側まで達することが好ましい。具体的には、エンボス溝40を非肌側親水性不織布10の肌側表面に達する程度(深さ)の溝部として形成されるようにしてもよく、又は非肌側親水性不織布10の肌側表面には達しない程度(深さ)の溝部として形成されるようにしてもよい。
【0042】
また、エンボス溝40の幅(即ち、エンボス溝40の延在方向と直交する方向に沿う寸法であり、かつ、吸収体1の幅方向に沿う寸法)は3mm以上8mm以下の範囲であることが好ましい。
さらに、エンボス溝40の長さLは、吸収体1の長手方向の寸法の30%以上であることが好ましい。エンボス溝40の長さLが吸収体1の長手方向の寸法の30%未満であると、体液拡散性が不十分になる傾向がある。
【0043】
重ね合わせた各SAPシート層において、最も肌側のSAPシート層(上層側SAPシート層10)の接着強度は、最も非肌側のSAPシート層(下層側SAPシート層20)の接着強度よりも大きい。各SAPシート層の接着強度の大小関係を上記のように規定することにより、吸水に伴い高吸収性ポリマーが膨潤したときに、エンボス部分50が接着の弱い下層側SAPシート層20から外れていきやすくなる。それにより、各SAPシート層における高吸収性ポリマーが十分膨潤することで、吸収体1の吸収量を担保することができ、横漏れを防ぐことができる。さらに、接着強度の強い上層側SAPシート層10はエンボス部分50を維持できるため、体液の拡散性も維持できる。
なお、中間のSAPシート層(中層側SAPシート層30)の接着強度は、最も非肌側のSAPシート層(下層側SAPシート層20)の接着強度と同じか、又はそれよりも大きく、かつ、最も肌側のSAPシート層(上層側SAPシート層10)の接着強度よりも小さいことが好ましい。中間のSAPシート層(中層側SAPシート層30)の接着強度を上記のように規定することで、吸収体1の吸収量及び拡散性がより良好なものとなる。
【0044】
さらに、重ね合わせた各SAPシート層において、最も肌側のSAPシート層(上層側SAPシート層10)の接着強度と、最も非肌側のSAPシート層(下層側SAPシート層20)の接着強度との差は0.5N/25mm以上であることが好ましい。また、最も非肌側のSAPシート層(下層側SAPシート層20)の接着強度は2.5N/25mm以下であることが好ましい。各層の接着強度を上記の数値範囲内とすることにより、吸収体1の吸収量及び拡散性がより良好なものとなる。
なお、重ね合わせた上層側SAPシート層10、中層側SAPシート層30及び下層側SAPシート層20のそれぞれの接着強度は、いずれも0.5N/25mm以上7N/25mm以下であることが好ましい。接着強度の測定方法については後述する。
【0045】
なお、本発明の吸収体1は更に、図4に示すように、吸収体1の幅方向に伸びる幅方向側エンボス溝41を含んでいてもよい。なお、幅方向側エンボス溝41は図4(a)に示すようにエンボス溝40と直交するように設けてもよいし、図4(b)に示すように、略X字状となるように斜め方向に設けてもよい。また、図4(a)及び図4(b)に示すように、幅方向側エンボス溝41は複数設けてもよい。
【0046】
<吸収体の製造方法>
本発明の一実施形態に係る吸収体1は、公知の方法に従って製造できる。製造方法としては、例えば、非肌側親水性不織布2の肌側表面にホットメルト接着剤を塗布し、更に所定量の高吸収性ポリマーをフィーダーノズルより散布して高吸収性ポリマー層を形成する第一工程と、親水性不織布の非肌側表面にホットメルト接着剤を塗布し、親水性不織布を重ね合わせてSAPシート層を形成する第二工程と、を含む製造方法が挙げられる。第一工程と第二工程を複数回行うことにより、所望の数のSAPシート層が非肌側親水性不織布2の上に積層される。また、必要に応じて、加圧処理又は加圧加熱処理を施してもよい。そして、最後にエンボス加工を施すことにより、本発明の一実施形態に係る吸収体1が得られる。
【0047】
<吸収性物品>
さらに、本発明の一実施形態に係る吸収性物品100は、図5に示すように、液透過性のトップシート110と、液不透過性のバックシート120と、これらの間に配置される吸収体1と、を備えることを特徴とする。
【0048】
(トップシート)
トップシート110は、吸収体1に向けて体液を速やかに通過させて吸収体1の面方向に体液を拡散させる液透過性のシート状基材である。トップシート110は、着用者の肌に直接当接してもよいように、柔らかな感触で、肌に刺激を与えない基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性シート、相互に同種又は異種の親水性シートの積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性シートとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等を用いて作製された、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの中でも各不織布が好ましい。
【0049】
トップシート110には、液透過性を向上させる観点から、エンボス加工や穿孔加工を表面に施してもよい。トップシート110は、肌への刺激を低減させる観点から、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の1種又は2種以上を含有してもよい。トップシート110の坪量は、強度、加工性及び液戻り量の観点から、例えば、15g/m以上40g/m以下の範囲である。トップシート110の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収体1に誘導するために必要とされる、吸収体1の一部又は全部を覆う形状であればよい。
【0050】
(バックシート)
バックシート120は、吸収体1が保持する体液が着用者の衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、該基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の単層不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布、これらの複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0051】
バックシート120の坪量は、強度及び加工性の点から、例えば15g/m以上60g/m以下の範囲である。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート120には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート120に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート120にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0052】
(立体ギャザー)
本発明の一実施形態に係る吸収性物品100は、図5に示すような立体ギャザー130を備えていてもよい。
立体ギャザー130は、例えば、吸収性物品100の着用者が排泄した体液の横漏れ等を防止するために、吸収性物品100の幅方向両端付近で吸収性物品100の長手方向に沿ってトップシート110の肌側面に固定される。立体ギャザー130は、撥水性及び/又は防水性を有し、幅方向一端(固定端)がバックシート120の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向途中部がトップシート110の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向他端が起立性を有する自由端であるシート部材と、シート部材の自由端(他端)付近に長手方向に沿って配設され、該自由端に起立性を付与し、シート部材の自由端及びその近傍領域を着用者の体型に合わせて変形可能にする弾性伸縮部材と、を含む。
【0053】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品100は、公知の製造方法により製造できるが、例えば、トップシート110とバックシート120との間に吸収体1を収容する工程と、トップシート110の縁辺とバックシート120の縁辺とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を利用して固定する工程と、立体ギャザー130をバックシート120及びトップシート110の所定位置に設置する工程と、を含む製造方法が挙げられる。また、吸収性物品100には、必要に応じて、セカンドシート、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等が適宜設けられる。こうして得られた吸収性物品100は、適宜折り畳んで製品化される。
【0054】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例0055】
以下に実施例を挙げ、本実施形態を更に具体的に説明する。
【0056】
(吸収体の作製)
表1の上段側に示す構成で、実施例1~6並びに比較例1~5の吸収体を作製した。
ただし、なお、SAPシート層を構成する親水性不織布及び非肌側親水性不織布としては、いずれも親水性スパンボンド(坪量15g/m)を用い、エンボス溝の幅は6mmとした。
【0057】
(吸収性物品の作製)
吸収体として上記の作製工程で得られた吸収体を用い、液透過性のトップシートとして、エアスルー不織布(坪量25g/m)を用い、セカンドシートとしてエアスルー不織布(坪量30g/m)を用い、立体ギャザーとして、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布を積層した複合不織布(坪量15g/m)を用い、液不透過性のバックシートとして、通気性ポリエチレンシート(坪量32g/m)を用いた。
トップシート、バックシート、吸収体を一体化する際に、ホットメルト接着剤を用いてトップシートと吸収体上面とを接合し、実施例1~6並びに比較例1~5の吸収性物品を作製した。なお、吸収性物品の寸法は、長手方向が230mm、幅85mmとした。
【0058】
上記で得られた実施例1~6及び比較例1~5のそれぞれの吸収体と、実施例1~6及び比較例1~5のそれぞれの吸収性物品を、次の評価に供した。
【0059】
(吸収速度)
実施例1~6及び比較例1~5の吸収性物品に、底面積16.8cmの円柱の中央に内径19mmの穴が開いており、重さを755.6gとした測定冶具を、吸収性物品の長手方向、かつ幅方向の中央部の上に置き、上部の穴から20mlの0.9質量%生理食塩水(37℃)を注水し、生理食塩水が吸収体表面へ吸収されるまでの時間(秒)を吸収速度1回目として計測した。3分経過後、再度20mlの0.9質量%生理食塩水(37℃)を注水し、生理食塩水が吸収性物品表面へ吸収されるまでの時間(秒)を吸収速度2回目として計測し、同様に3回目を計測し、1回目と3回目の吸収速度を計測した。
【0060】
(接着強度)
標準時(温度20℃,湿度60%)の吸収体の幅方向に沿ってエンボスを含む幅25mm、MD方向に沿ってMD方向中央からエンボスを含む長さ100mmの試験片を切り出した。この試験片について、サンプルの端縁から幅20mmの部分をチャックに挟んで留め、つかみ間隔10mmで、つかみに各SAPシート層に含まれる親水性不織布を取り付けた。テンシロン引張試験機を用いてMD方向に180°剥離試験(引張速度300mm/mim、測定温度20℃,湿度60%)を行って、接着強度を測定した。
なお、この場合におけるMD方向とは、吸収体の製造時における製造方向(流れ方向)を意味し、長手方向に平行な方向である、
【0061】
(官能評価)
10人のパネラーの協力の下、実施例1~6及び比較例1~5の吸収体を用いた吸収性物品を8時間使用して日常動作における評価を行い、吸収性物品からの漏れについて評価したモニターの人数によって3段階の官能評価を行い、結果を表1に示した。評価基準は、「漏れがなかった」と感じたモニターの人数によって以下のとおりとした。
◎:10名以上
○:7名~9名
△:6名以下
【0062】
以上の各測定及び各評価の結果を、表1の下段側に示す。
【表1】
【0063】
表1の結果から、本発明に係る吸収体及び吸収性物品によれば、体液を複数回吸収してもゲルブロッキングが発生せず、体液の拡散性が良好であり、吸収量及び吸収速度に優れ、横漏れも防止できる吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品が提供できることが確認された。
【符号の説明】
【0064】
1 吸収体
2、11、21、31 親水性不織布
10、20、30 SAPシート層
12、22、32 高吸収性ポリマー層
13、23、33 接着剤層
40、41 エンボス溝
50 エンボス部分
100 吸収性物品
110 トップシート
120 バックシート
130 立体ギャザー
図1
図2
図3
図4
図5