(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140130
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】避難誘導システム及び無人飛行体
(51)【国際特許分類】
A62B 3/00 20060101AFI20241003BHJP
G08B 27/00 20060101ALI20241003BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20241003BHJP
G08G 5/00 20060101ALI20241003BHJP
B64U 10/14 20230101ALI20241003BHJP
B64U 20/87 20230101ALI20241003BHJP
B64U 101/70 20230101ALN20241003BHJP
B64U 101/55 20230101ALN20241003BHJP
【FI】
A62B3/00 B
G08B27/00 B
G08B17/00 F
G08G5/00 A
B64U10/14
B64U20/87
B64U101:70
B64U101:55
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051131
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】吉井 裕二
【テーマコード(参考)】
2E184
5C087
5G405
5H181
【Fターム(参考)】
2E184GG12
2E184GG14
5C087AA11
5C087AA37
5C087BB20
5C087DD04
5C087EE05
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087FF16
5C087FF30
5C087GG82
5G405AA10
5G405CA28
5H181AA26
5H181BB04
5H181BB20
5H181CC04
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】より迅速な避難誘導を行うことができる避難誘導システムを得る。
【解決手段】避難誘導システム(100)は、火災の発生を感知すると火災発生信号を送信する1以上の感知器(3)から、当該火災発生信号を受信する機器操作盤(1)と、機器操作盤(1)との間でデータの送受信が可能な無人飛行体(2)と、を備え、機器操作盤(1)は、感知器(3)から火災発生信号を受信すると、当該火災発生信号に基づいて、火災が発生した場所を識別するための火災場所情報を、無人飛行体(2)に送信し、無人飛行体(2)は、火災場所情報に基づいて、現在位置から避難口までの経路のうち、火災が発生した前記場所を回避した経路である避難誘導経路に沿って飛行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災の発生を感知すると火災発生信号を送信する1以上の感知器から、当該火災発生信号を受信する機器操作盤と、
前記機器操作盤との間でデータの送受信が可能な無人飛行体と、
を備え、
前記機器操作盤は、前記感知器から前記火災発生信号を受信すると、当該火災発生信号に基づいて、火災が発生した場所を識別するための火災場所情報を、前記無人飛行体に送信し、
前記無人飛行体は、前記火災場所情報に基づいて、現在位置から避難口までの経路のうち、火災が発生した前記場所を回避した経路である避難誘導経路に沿って飛行する、
避難誘導システム。
【請求項2】
前記無人飛行体は、照明部を備え、前記照明部を点灯させながら前記避難誘導経路を飛行する、
請求項1に記載の避難誘導システム。
【請求項3】
前記無人飛行体は、音声出力部を備え、避難誘導を行っていることを示すメッセージを、前記音声出力部により音声通知しながら前記避難誘導経路を飛行する、
請求項1または2に記載の避難誘導システム。
【請求項4】
前記無人飛行体は、周囲を撮像する撮像部と、音声出力部とを備え、前記撮像部によって撮像された画像に基づいて、煙が充満しているか否か判定し、煙が充満していると判定した場合、低姿勢の状態になるのを促すメッセージを、前記音声出力部により音声通知する、
請求項1または2に記載の避難誘導システム。
【請求項5】
前記無人飛行体は、煙が充満していると判定した場合、設定高度を維持するように低空飛行する、
請求項4に記載の避難誘導システム。
【請求項6】
前記無人飛行体は、発光部を備え、
前記避難誘導経路を飛行している状態である誘導状態と、前記避難誘導経路を飛行していない状態である非誘導状態とで、発光色、発光パターン、及び、点灯しているか消灯しているかの点灯状態のうち少なくともいずれかが切り替わるように、前記発光部を制御する、
請求項1または2に記載の避難誘導システム。
【請求項7】
前記無人飛行体は、音声出力部を備え、
前記避難誘導経路を飛行している状態である誘導状態と、前記避難誘導経路を飛行していない状態である非誘導状態とで、前記音声出力部から出力されるメッセージの内容が切り替わるように、前記音声出力部を制御する、
請求項1または2に記載の避難誘導システム。
【請求項8】
1以上の感知器から火災発生信号を受信する機器操作盤との間で、データの送受信を行い、前記機器操作盤から、火災が発生した場所を識別する情報である火災場所情報を受信する通信部と、
前記火災場所情報に基づいて、現在位置から避難口までの経路のうち、火災が発生した前記場所を回避した経路である避難誘導経路に沿って飛行するように制御する制御部と、
を備える無人飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無人飛行体、及び無人飛行体を用いた避難誘導システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、商業ビル、工場施設などの建物内で火災が発生した際、建物内にいる者は早急に避難する必要がある。しかしながら、煙が充満して視界が遮られている状況下では、建物内にいる者は、どこへ向かって避難すべきかの判断ができなくなる場合がある。
【0003】
このため、建物内にいる者を迅速に避難させるシステムが求められている。
【0004】
避難誘導に関し、無人飛行体を用いて避難誘導を行うシステムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に係る避難誘導システムにおいては、河川の氾濫、土砂崩れ、地割れ、火災などの災害が発生する可能性のある特定場所まで無人飛行体が飛行し、現場の状況を把握した上で、避難誘導を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の避難誘導システムでは、主に屋外で避難誘導を行うことを想定しており、災害の発生状況を把握するため、無人飛行体が指定場所まで移動している。
【0007】
一方、建物内で火災が発生した場合、発生状況を把握するための時間的な余裕は無く、建物内の者を早急に避難させる必要がある。加えて、建物内の者が火災発生場所に立ち入らないように誘導する必要がある。
【0008】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、より迅速な避難誘導を行うことができる避難誘導システム及び無人飛行体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る避難誘導システムは、火災の発生を感知すると火災発生信号を送信する1以上の感知器から、当該火災発生信号を受信する機器操作盤と、機器操作盤との間でデータの送受信が可能な無人飛行体と、を備え、機器操作盤は、感知器から火災発生信号を受信すると、当該火災発生信号に基づいて、火災が発生した場所を識別するための火災場所情報を、無人飛行体に送信し、無人飛行体は、火災場所情報に基づいて、現在位置から避難口までの経路のうち、火災が発生した前記場所を回避した経路である避難誘導経路に沿って飛行する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、より迅速な避難誘導を行うことができる避難誘導システム及び無人飛行体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施の形態1における避難誘導システムの構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す無人飛行体の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示す避難誘導システムの動作を示すシーケンス図である。
【
図4】
図2に示す無人飛行体の火災発生時の初期動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図2に示す無人飛行体における初期動作が完了した後の飛行動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図2に示す無人飛行体における通知制御を示すフローチャートである。
【
図7】
図2に示す無人飛行体における煙を検知したときの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の避難誘導システムの好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る避難誘導システムは、建物内で火災が発生した場合、無人飛行体を用いて、建物内の者を誘導して避難させる。本開示の無人飛行体は、火災受信機から火災の発生場所を示す情報を取得し、当該情報に基づいて、避難口までの避難誘導経路を決定する。その後、無人飛行体は、避難誘導を実施している旨を建物内の者に通知しつつ、当該避難誘導経路に沿って飛行することにより、建物内の者を迅速に避難させる。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1における避難誘導システムの構成を示した図である。
【0014】
避難誘導システム100は、火災受信機1、無人飛行体2、及び感知器3を備えて構成されている。
【0015】
火災受信機1は、建物内の防災システムにおける集中管理装置である。火災受信機1は、感知器3からの火災発生信号を監視し、火災発生信号を受信すると、非常放送設備、地区音響装置、スプリンクラーなどの図示しない防火設備を作動させる。
【0016】
無人飛行体2は、自律的に姿勢を保ちながら飛行する飛行体である。実施の形態1において、無人飛行体2は、人の操作を要せず、壁及び障害物を自ら検知することにより、これらとの接触を回避しながら自律飛行を行う。
【0017】
無人飛行体2は、通常時においては、施設内の定位置に待機している。この定位置は、誘導の際の開始地点となる位置であり、ここでは「スタート位置」と称する。本実施の形態1においては、避難口から可能な限り離れた位置をスタート位置とする。
【0018】
また、建物の面積が広い場合、複数の無人飛行体2が備えられていてもよい。
【0019】
無人飛行体2は、火災受信機1と無線通信を行うことができるように構成されている。無人飛行体2は、火災が発生した際、火災受信機1から後述の火災場所情報を受信すると起動し、建物内の者を避難口まで誘導するために飛行する。以下、建物内の者のことを、要救助者10と称する。
【0020】
要救助者10は、無人飛行体2からの照明光、音声などを頼りに、無人飛行体2の後をついて行くことにより、避難口まで移動することができる。
【0021】
感知器3は、火災受信機1に接続されており、火災を感知すると、火災受信機1に火災発生信号を出力する。本実施の形態1においては、建物内の各所に、感知器3(1)、3(2)、・・・、3(N)のN台の感知器3が配置されているものとする。
【0022】
図2は、
図1に示す無人飛行体2の構成例を示すブロック図である。
【0023】
図2において、無人飛行体2は、通信部21、制御部22、撮像部23、照明部24、音声出力部25、発光部26、記憶部27、自律飛行統制部28を備える。
【0024】
通信部21は、火災受信機1との間で無線による通信を行う。本実施の形態1における通信手段としては、IEEE802.11の規格に準拠した無線LAN(Local Area Network)が採用されるが、通信範囲がサポートされている場合は、Bluetooth(登録商標)などの短距離無線通信であってもよい。もしくは、火災受信機1を統括的に管理するクラウドシステムが介在することにより、火災受信機1と通信部21との間の通信が行われてもよい。
【0025】
制御部22は、各種の演算処理を行うとともに、無人飛行体2内の各種ハードウェアに対して指令信号を出力し、これらを制御する。制御部22は、演算処理装置、主記憶装置、各種ハードウェアを制御するためのインターフェイスを含む構成を有している。
【0026】
撮像部23は、無人飛行体2の周囲を撮像する。撮像部23は、例えば、無人飛行体2の機体上面と下面とに設けられた360度カメラである。このように、機体の上下面に360度カメラを設けることにより、天地両側の全天球の映像を取得することができる。
【0027】
照明部24は、周囲を照らすための照明体である。照明部24は、要救助者10の足元を照らすため、無人飛行体2の機体下側を照らすものとする。なお、撮像部23による撮像の際に光量が必要になる箇所を照らすため、機体の各位置に照明部24が設けられていてもよい。
【0028】
音声出力部25は、スピーカを有しており、音声を周囲に出力する。
【0029】
発光部26は、LEDライトを有しており、無人飛行体2が避難口に向かって要救助者10を誘導している誘導状態であるか、または非誘導状態であるかを、視覚を通じて要救助者10に通知する。実施の形態1において、誘導状態である場合、発光部26が青色に発光し、非誘導状態である場合、発光部26が赤色に発光する。
【0030】
これ以外にも、誘導状態と非誘導状態とで点灯パターンを切り替えることで区別できるようにしてもよいし、点灯するか消灯するかの状態を切り替えて、区別できるようにしてもよい。
【0031】
記憶部27には、無人飛行体2を迅速に飛行させるための制御用パラメータ、音声出力部25によって出力される音声データ、建物内のマップ情報、スタート位置から避難口までの避難経路の候補などの各種データが記憶されている。また、記憶部27には、火災発生時のときの動作ログが記録される。
【0032】
自律飛行統制部28は、無人飛行体2が姿勢を保ちながら、且つ障害物との接触を回避しながら飛行するように制御するモジュールである。自律飛行統制部28には、GPS受信機、慣性計測ユニット、複数の物体検知センサ、制御回路、各回転翼を回転させるための複数のモータが備えられている。
【0033】
なお、物体検知センサは、障害物、天井、床面、側壁を検知可能なように、少なくとも機体の上下及び前後左右の各位置に設けられている。制御回路は、慣性計測ユニットからの加速度、回転角速度、地軸向きの各計測信号、及び、物体検知センサからの検知信号を受信し、これら各信号に基づいて、各モータの回転速度を制御する。
【0034】
図3は、
図1に示す避難誘導システム100の動作を示すシーケンス図である。なお、
図3に示される動作は、各感知器3が火災を検知するたびに実施される。
【0035】
建物内で火災が発生すると、ステップS101において、火災の発生場所の付近に設けられている感知器3が、当該火災を感知する。
【0036】
ステップS102において、火災を感知した感知器3は、火災発生信号を火災受信機1に送信する。
【0037】
火災受信機1は、ステップS103において、火災発生信号を送信した感知器3に紐づけられたアドレスを取得する。火災受信機1には、各感知器3を一意に管理するためのアドレスが予め設定されており、火災受信機1は、このアドレスを取得する。
【0038】
また、火災受信機1は、ステップS103において、火災発生信号を送信した感知器3のアドレスに基づいて、火災場所情報を特定する。
【0039】
ここで、火災場所情報は、火災が発生した場所を識別する情報であり、具体的には、感知器3の設置場所を、緯度及び経度により一意にあらわす位置情報である。また、火災受信機1には、アドレスと火災場所情報とを対応付けたテーブルが予め保持されており、火災受信機1は、このテーブルを参照することにより、アドレスから火災場所情報を特定することができる。
【0040】
そして、火災受信機1は、ステップS104において、無線通信を介して火災場所情報を無人飛行体2に送信する。
【0041】
無人飛行体2は、火災場所情報を受信すると、ステップS105において、要救助者10を避難させるために飛行する。
【0042】
以下、このステップS105における無人飛行体2の動作について説明する。
【0043】
図4は、
図2に示す無人飛行体2の火災発生時の初期動作を示すフローチャートである。
図4の動作は、ステップS203の飛行動作が開始されるまで、繰り返し実行される。
【0044】
無人飛行体2は、ステップS201において、火災場所情報を受信したかどうかを判定する。無人飛行体2は、火災場所情報を受信しない場合、
図4のフローチャートの動作を終了する。
【0045】
無人飛行体2は、火災場所情報を受信すると、ステップS202において、変数Kに0をセットする。この変数Kは、無人飛行体2が誘導状態であるか非誘導状態であるかを示す変数である。ここでは、誘導状態をK=0とし、非誘導状態をK=1とする。
【0046】
無人飛行体2は、ステップS202において、受信した火災場所情報に基づいて、避難誘導経路を決定する。無人飛行体2は、記憶部27に記憶されている避難経路の候補のうち、火災が発生した場所を回避した経路を、避難誘導経路として決定する。この際、該当する避難経路が複数存在する場合、最も緊急を要する経路、すなわち、火災発生場所の近くを通る経路を、避難誘導経路として決定する。このようにすることで、無人飛行体2は、火災発生場所の近くにいる要救助者10を最優先に誘導することができる。
【0047】
なお、無人飛行体2は、AI(Artificial Intelligence)の技術を活用して、火災が発生した場所を回避した好適な経路を特定し、避難誘導経路として決定してもよい。
【0048】
無人飛行体2は、ステップS203において、自律飛行統制部28のモータを回転させて飛行動作を開始する。また、無人飛行体2は、撮像部23、照明部24、音声出力部25、及び発光部26をオンにする。
【0049】
以降、無人飛行体2の制御部22は、避難誘導経路に沿った飛行を行うように、自律飛行統制部28に指示する。自律飛行統制部28は、障害物などを回避しながら、避難誘導経路に沿って飛行を行う。
【0050】
図5は、
図2に示す無人飛行体2における初期動作が完了した後の飛行動作を示すフローチャートである。なお、
図5の動作は、繰り返し実行される。
【0051】
また、
図5のフローチャートにおいて、ステップS302、ステップS303、・・・の処理のルートは、スタート位置から避難口まで飛行する処理であり、要救助者10を避難させるための誘導状態時の動作を示すフローである。一方、ステップS310、ステップS311、・・・の処理のルートは、避難口からスタート位置に戻る非誘導状態時の処理、及び、改めて避難誘導を開始するまでの処理であり、非誘導状態時の動作を示すフローである。
【0052】
無人飛行体2は、ステップS301において、変数Kに設定されている値が0である場合、処理をステップS302に進める。一方、無人飛行体2は、変数Kに設定されている値が1である場合、処理をステップS310に進める。
【0053】
無人飛行体2は、ステップS302において、無人飛行体2自らの現在位置を、GPS受信機によって得られる位置情報及び慣性計測ユニットの計測値に基づいて割り出す。
【0054】
無人飛行体2は、ステップS303において、別の火災場所情報を新たに受信したか否かを判定する。無人飛行体2は、別の火災場所情報を新たに受信した場合、処理をステップS304に進め、別の火災場所情報を新たに受信していない場合、処理をステップS305に進める。
【0055】
無人飛行体2は、ステップS304において、新たに受信した火災場所情報も含めて、現在位置からの避難誘導経路を再構築する。この際、無人飛行体2は、従前の経路探索技術、もしくはAIの技術を用いて、現在位置から避難口までの避難誘導経路を再構築する。また、無人飛行体2は、新たに発生した火災場所を通る経路が構築された場合、この場所を迂回する経路となるように、避難誘導経路を改めて構築する。
【0056】
無人飛行体2は、ステップS305において、避難誘導経路に沿って飛行を行う。このとき、ステップS304で避難誘導経路が再構築された場合、無人飛行体2は、当該再構築後の避難誘導経路に沿って飛行する。一方、ステップS304を行わなかった場合、無人飛行体2は、これまで使用していた避難誘導経路に沿って飛行する。
【0057】
無人飛行体2は、ステップS306において、目標の避難口に到達したかを判定する。無人飛行体2は、ステップS302により取得された現在位置、及び規定の避難口の位置情報に基づいて、ステップS306の判定を行う。
【0058】
無人飛行体2は、目標となる避難口に到達していない場合、
図5のフローチャートの処理を終了し、改めてステップS301、ステップS302、・・・の処理を行う。
【0059】
一方、無人飛行体2は、目標の避難口に到達した場合、ステップS307において、変数Kの値を1に変更し、
図5のフローチャートの処理を終了し、改めてステップS301の処理を行う。
【0060】
無人飛行体2は、ステップS301において、K=1である場合、処理をステップS310に進める。なお、ステップS310~ステップS312の動作は、避難口からスタート位置に戻る飛行動作であり、ステップS313~ステップS315の動作は、スタート位置に戻ってから改めて避難誘導を開始するまでの動作である。
【0061】
無人飛行体2は、ステップS310において、避難口からスタート位置を目標として飛行する。なお、退路経路は、事前に決められていてもよく、例えば、避難口からスタート位置までの最短経路が、退路経路として設定されていてもよい。
【0062】
無人飛行体2は、ステップS311において、無人飛行体2自らの現在位置を、GPS受信機によって得られる位置情報及び慣性計測ユニットの計測値に基づいて割り出す。
【0063】
無人飛行体2は、ステップS312において、目標となるスタート位置に到達したかを、現在位置、及び規定のスタート位置の位置情報に基づいて判定する。
【0064】
無人飛行体2は、目標となるスタート位置に到達していない場合、
図5のフローチャートの処理を終了し、当該フローチャートの最初に処理を戻して、改めてステップS301、ステップS310、・・・の処理を行う。
【0065】
一方、無人飛行体2は、目標となるスタート位置に到達した場合、ステップS313において、変数Kの値をゼロに変更する。
【0066】
そして、無人飛行体2は、スタート位置から避難口までの避難誘導経路を再構築する。このとき、無人飛行体2は、これまでに受信した火災場所情報を含めて、従前の経路探索技術、もしくはAIの技術を用いて、スタート位置から避難口までの避難誘導経路を再構築する。
【0067】
無人飛行体2は、ステップS315において、避難誘導飛行を開始する。そして、無人飛行体2は、
図5のフローチャートの処理を終了し、当該フローチャートのステップS301に処理を戻す。このとき、無人飛行体2は、K=0であるため、ステップS301の判定後にステップS302、S303、・・・の処理を行う。
【0068】
図6は、
図2に示す無人飛行体2における通知制御を示すフローチャートである。なお、
図6のフローチャートは、繰り返し実行される。
【0069】
要救助者10は、無人飛行体2が誘導状態のときに、無人飛行体2の後をついて行くことにより、避難口まで移動することができる。一方、無人飛行体2が避難口からスタート位置に戻る非誘導状態である場合、避難口から離れる方向に飛行する。このため、要救助者10が非誘導状態のときに無人飛行体2の後をついて行っても、避難口から離れる方向に移動してしまう。従って、無人飛行体2が誘導状態であるか非誘導状態であるかを、区別できるように外部に通知する必要がある。
【0070】
図6のフローチャートは、誘導状態であるか非誘導状態であるかを視覚、聴覚を通じて区別して通知することにより、正しく誘導するための制御を示すものである。
【0071】
無人飛行体2は、ステップS401において、変数Kの値がゼロ、すなわち誘導状態である場合、処理をステップS402に進め、変数Kの値が1、すなわち非誘導状態である場合、処理をステップS404に進める。
【0072】
無人飛行体2は、ステップS402において、発光部26を青色に点灯させ、ステップS403において、避難誘導を行っていることを示すメッセージを、音声出力部25により音声通知する。無人飛行体2は、ステップS403の後、
図6のフローチャートの処理を終了する。
【0073】
要救助者10は、このときに無人飛行体2から発せられる音声または発光色を確認することにより、無人飛行体2が避難誘導を行っていると判断することができる。そして、要救助者10は、音声または発光色を頼りに、無人飛行体2の後をついて行くことにより、避難口まで移動することができる。
【0074】
また、無人飛行体2は、ステップS404において、発光部26を赤色に点灯させ、ステップS405において、避難誘導を行っていない旨のメッセージを、音声出力部25により音声通知する。無人飛行体2は、ステップS405の後、
図6のフローチャートの処理を終了する。
【0075】
要救助者10は、このときに無人飛行体2から発せられる音声または発光色を確認することにより、避難とは関係のない飛行体であると判断する。よって、要救助者10は、無人飛行体2の後をついて行かないようになる。
【0076】
引き続き、避難誘導中において煙を検知したときの無人飛行体2の動作について説明する。
【0077】
図7は、
図2に示す無人飛行体2による避難誘導中において煙を検知したときの動作を示すフローチャートである。なお、
図7のフローチャートは、繰り返し実行される。
【0078】
無人飛行体2は、ステップS501において、撮像部23により周囲の映像を取得する。無人飛行体2は、ステップS502において、取得した画像に基づいて、煙が充満しているか否かを判定する。
【0079】
無人飛行体2は、例えば、撮像した映像が鮮明な画像であるか否かを、エッジ抽出処理などの画像処理を施すことにより評価して、煙が充満しているか否かを判定してもよい。また、無人飛行体2は、AIの技術を用いて映像を解析し、煙が充満しているか否かを判定してもよい。
【0080】
無人飛行体2は、ステップS502において、煙が充満していないと判定する場合、
図7のフローチャートの処理を終了する。
【0081】
一方、無人飛行体2は、ステップS503において、煙が充満していると判定する場合、低姿勢の状態になるのを促すメッセージを、音声出力部25によって音声通知する。
【0082】
また、無人飛行体2は、ステップS504において、設定高度を維持するように低空飛行する。これにより、低姿勢の状態の要救助者10からでも、無人飛行体2を視認することができる。
【0083】
なお、実施の形態1においては、GPS受信機から取得される位置情報、及び慣性計測ユニットの計測値に基づいて、自機の位置を特定している。これに対し、より精度を向上させるため、建物内の側壁、床、天井などに、位置を認識するためのマークまたは二次元バーコードを付しておいてもよい。
【0084】
そして、無人飛行体2は、火災の際に、撮像部23を介して当該マークまたは二次元バーコードを読み取ることにより、現在位置を特定してもよい。また、二次元バーコードを用いる場合、当該位置から避難口までの経路を示す情報を、二次元バーコード内に付加しておき、無人飛行体2は、この経路情報を頼りに飛行してもよい。
【0085】
また、現在位置を特定する別の方法として、施設内の各所を事前に撮影し、撮像画像を基準画像として、撮像場所の位置情報と対応付けて記憶部27に記憶させておく。そして、無人飛行体2は、火災の際に、撮像部23によって得られる映像と、基準画像とを比較することにより、現在位置を特定してもよい。
【0086】
実施の形態1において、無人飛行体2は、スタート位置と避難口との間を往復するように飛行するものとしている。これに対し、無人飛行体2は、建物内を巡回するように飛行し、撮像部23から得られる映像を介して要救助者10を発見した場合、誘導する旨の通知を行い、誘導を開始してもよい。
【0087】
この場合においても、無人飛行体2は、要救助者10を発見した現在位置から避難口までの経路のうち、火災が発生した場所を回避した経路である避難誘導経路を決定し、当該避難誘導経路に沿って飛行する。
【0088】
実施の形態1において、無人飛行体2は、マップ情報を事前に記憶部27に記憶しておき、飛行の際に活用するものとして説明した。これに対し、現在位置と避難口との相対位置関係を把握しながら、自律飛行統制部28の物体検知センサを用いて側壁をたどって避難口まで飛行してもよい。
【0089】
このように壁伝いに飛行することで、マップ情報が無くても、避難口にたどり着くことができる。また、この場合、避難誘導経路を決定する処理が不要となり、壁伝いの経路を避難誘導経路として、当該避難誘導経路に沿って飛行することができる。
【0090】
また、実施の形態1においては、火災受信機1と無人飛行体2とが直接データの送受信を行うか、もしくはクラウドシステムを介してデータの送受信を行う構成について説明した。しかしながら、この場合、火災受信機1と無人飛行体2とで通信規格を揃える必要があり、施設内に既に設置されている火災受信機1では、無人飛行体2との通信を行うためのハードウェアが整っていないことがある。
【0091】
このような場合、火災受信機1からの移報を受信する制御盤を別途用意し、当該制御盤が、無人飛行体2と無線通信を行うことにより、データの中継を行う構成としてもよい。このような構成にすることにより、既設の火災受信機1に対しての変更を少なくすることができる。
【0092】
また、データ中継用の制御盤又はクラウドシステムを有する構成とする場合、火災受信機1に替えて、当該制御盤又はクラウドシステムに、感知器3のアドレスと火災場所情報とを対応付けたテーブルを保持させてもよい。この場合、制御盤又はクラウドシステムは、火災を検知した感知器3のアドレスを火災受信機1から受信し、当該アドレスから火災場所情報を特定し、特定した火災場所情報を無人飛行体2に送信する。
【0093】
このように、感知器3から火災発生信号を受信し、火災場所情報を無人飛行体2に送信する一連の処理を実施する仕組みや構造を、「機器操作盤」として提供することができる。
【0094】
機器操作盤は、実施の形態1で説明したとおり、火災受信機1のみの構成であってもよい。または、機器操作盤は、少なくとも火災受信機1を有し、加えて、無人飛行体2との間でデータの送受信を行う上記の制御盤、クラウドシステムなどを有する構成であってもよい。
【0095】
上記の各特徴を、相互に組み合わせてもよい。
【0096】
このような避難誘導システム100の特徴を整理すると、以下のような構成を有し、効果を実現できることとなる。
【0097】
避難誘導システム100は、火災の発生を感知すると火災発生信号を送信する1以上の感知器3から、当該火災発生信号を受信する機器操作盤と、機器操作盤との間でデータの送受信が可能な無人飛行体2とを備える。機器操作盤は、感知器3から火災発生信号を受信すると、当該火災発生信号に基づいて、火災が発生した場所を識別するための火災場所情報を、無人飛行体2に送信する。
【0098】
無人飛行体2は、火災場所情報に基づいて、現在位置から避難口までの経路のうち、火災が発生した場所を回避した経路である避難誘導経路に沿って飛行する。
【0099】
このため、無人飛行体2を確認した要救助者10は、無人飛行体2の進行に従い移動することで、より迅速に避難することができる。
【0100】
また、無人飛行体2は、照明部24を備え、照明部24を点灯させながら避難誘導経路を飛行する。このため、無人飛行体2は、光のない建物内においても、周囲を照らすことができ、要救助者10は、視覚を通じて状況を把握しながら避難することができる。
【0101】
また、無人飛行体2は、音声出力部25を備え、避難誘導を行っていることを示すメッセージを、音声出力部25により音声通知しながら避難誘導経路を飛行する。このため、要救助者10は、当該無人飛行体2の存在及び用途を、聴覚を通じて確認すことができる。
【0102】
また、無人飛行体2は、周囲を撮像する撮像部23と、音声出力部25とを備える。無人飛行体2は、撮像部23によって撮像された画像に基づいて、煙が充満しているか否か判定する。そして、無人飛行体2は、煙が充満していると判定した場合、低姿勢の状態になるのを促すメッセージを、音声出力部25により音声通知する。
【0103】
このため、要救助者10が吸い込む煙の量を少なくさせることができる。また、音声による通知であるため、視覚障碍者にも状況を通知することができる。
【0104】
また、無人飛行体2は、煙が充満していると判定した場合、設定高度を維持するように低空飛行する。このため、低姿勢になっている要救助者10にも、視覚を通じて無人飛行体2を確認させることができ、迅速な避難誘導を行うことができる。
【0105】
また、無人飛行体2は、発光部26を備える。無人飛行体2は、避難誘導経路を飛行している状態である誘導状態と、避難誘導経路を飛行していない状態である非誘導状態とで、発光色、発光パターン、及び、点灯しているか消灯しているかの点灯状態のうち少なくともいずれかが切り替わるように、発光部26を制御する。
【0106】
上記のとおり、無人飛行体2が非誘導状態である場合、たとえ要救助者10が無人飛行体2の後をついて移動しても、避難口にたどり着かない。このため、無人飛行体2が誘導状態であるか否かを通知することにより、正しく避難誘導を行うことができる。
【0107】
また、無人飛行体2は、音声出力部25を備える。無人飛行体2は、避難誘導経路を飛行している状態である誘導状態と、避難誘導経路を飛行していない状態である非誘導状態とで、音声出力部25から出力されるメッセージの内容が切り替わるように、音声出力部25を制御する。このため、上記と同様に、要救助者10が無人飛行体2の後をついて移動しても避難口にたどり着かないという状況を回避することができる。
【0108】
また、実施の形態1における無人飛行体2は、1以上の感知器から火災発生信号を受信する機器操作盤との間で、データの送受信を行い、火災が発生した場所を識別する情報である火災場所情報を、機器操作盤から受信する通信部21と、火災場所情報に基づいて、現在位置から避難口までの経路のうち、火災が発生した場所を回避した経路である避難誘導経路に沿って飛行するように制御する制御部22と、を備える。
【0109】
このため、無人飛行体2を確認した要救助者10は、無人飛行体2の進行に従い移動することで、より迅速に避難することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 火災受信機(機器操作盤)、2 無人飛行体、3 感知器、10 要救助者、21 通信部、22 制御部、23 撮像部、24 照明部、25 音声出力部、26 発光部、27 記憶部、28 自律飛行統制部、100 避難誘導システム。