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  • 特開-デフレクタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140131
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】デフレクタ
(51)【国際特許分類】
   A62C 31/03 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A62C31/03
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051132
(22)【出願日】2023-03-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】松尾 涼平
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189KB01
(57)【要約】
【課題】放水軌道を完全に覆うことにより、遠距離、中距離、近距離の全ての距離を正確に放水制御可能なデフレクタを提供する。
【解決手段】本発明に係るデフレクタ1は、消火装置の放水ノズルの放水口に設けられて、放水距離や範囲を制御するものであって、前記放水ノズルの放水口が密着して注水される注水口19と、注水口19よりも開口面積が小さく、かつ注水口19に連通して注水された消火水を遠方に放水する遠方放水口21と、遠方放水口21よりも下方の壁面に設けられて、消火水を中距離、近距離に放水する中・近距離放水口17と、を備えたことを特徴とするものである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火装置の放水ノズルの放水口に設けられて、放水距離や範囲を制御するデフレクタであって、
前記放水ノズルの放水口が密着して注水される注水口と、該注水口よりも開口面積が小さく、かつ前記注水口に連通して注水された消火水を遠方に放水する遠方放水口と、
遠方放水口よりも下方の壁面に設けられて、消火水を中距離、近距離に放水する中・近距離放水口と、を備えたことを特徴とするデフレクタ。
【請求項2】
前記壁面に対向する背面壁と側壁とを有し、箱形になっていることを特徴とする請求項1に記載のデフレクタ。
【請求項3】
注水口の面積をS1、遠方放水口の面積をS2、中近距離放水口の面積をS3としたときに、S1-S2>S3の関係にあることを特徴とする請求項2に記載のデフレクタ。
【請求項4】
前記中・近距離放水口は、複数のスリットを備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のデフレクタ。
【請求項5】
前記中・近距離放水口は、前記背面壁に形成されて後方に放水する後方放水口を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のデフレクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放水ノズルの放水軌道に設けて放水距離等を変更するデフレクタに関する。
【背景技術】
【0002】
放水ノズルの放水軌道に配置して放水距離等を変更するデフレクタとして、例えば特許文献1に開示された断面コ字状の取付部材に衝突板を設けたものがある。
特許文献1に開示のものは、デフレクタを可動させて放水軌道に挿入するものである。衝突板が放水軌道を完全に覆う場合には、近距離放水となり、衝突板が放水軌道を覆わない場合には遠距離放水となり、衝突板が放水軌道に一部を覆う場合にはその中間距離放水となるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-170652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の駆動機構のように、デフレクタが放水軌道を覆う程度によって遠距離、中距離、近距離という放水距離を制御する場合、デフレクタと放水口との間に隙間があるため、デフレクタに設けたスリット等によって意図した放水距離や放水範囲を制御するのは難しいという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、放水軌道を完全に覆うことにより、遠距離、中距離、近距離の全ての距離を正確に放水制御可能なデフレクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係るデフレクタは、消火装置の放水ノズルの放水口に設けられて、放水距離や範囲を制御するものであって、
前記放水ノズルの放水口が密着して注水される注水口と、該注水口よりも開口面積が小さく、かつ前記注水口に連通して注水された消火水を遠方に放水する遠方放水口と、
該遠方放水口よりも下方の壁面に設けられて、消火水を中距離、近距離に放水する中・近距離放水口と、を備えたことを特徴とするものである。
【0007】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記壁面に対向する背面壁と側壁とを有し、箱形になっていることを特徴とするものである。
【0008】
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、注水口の面積をS1、遠方放水口の面積をS2、中近距離放水口の面積をS3としたときに、S1-S2>S3の関係にあることを特徴とするものである。
【0009】
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記中・近距離放水口は、複数のスリットを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
(5)また、上記(2)又は(3)に記載のものにおいて、前記中・近距離放水口は、前記背面壁に形成されて後方に放水する後方放水口を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、放水ノズルの放水口が密着して注水される注水口と、該注水口よりも開口面積が小さく、かつ注水口に連通して注水された消火水を遠方に放水する遠方放水口と、遠方放水口よりも下方の壁に設けられて、消火水を中距離、近距離に放水する中・近距離放水口と、を備えたことにより、放水が全てデフレクタの内部に注水され、放水制御が正確に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係るデフレクタの正面側の斜視図である。
図2】実施の形態に係るデフレクタの正面側を下方側から見上げた状態の斜視図である。
図3】実施の形態に係るデフレクタを背面側から見た斜視図である。
図4】実施の形態に係るデフレクタを構成する下部ブロックの正面図(a)、左側面図(b)、右側面図(c)、底面図(d)である。
図5図4の矢視A-A断面図(a)、図4の矢視B-B断面図(b)、図4の矢視C-C断面図(c)、図4の矢視D-D断面図(d)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施の形態に係るデフレクタ1は、消火装置の放水ノズルの放水口に設けられて、放水距離や範囲を制御するものであって、図1図3に示すように、上部ブロック3と下部ブロック5からなり、上部ブロック3の下面と下部ブロック5の上面は、例えばボルト接合によって一体化され、これによってデフレクタ1が構成されている。
このようにデフレクタ1は、上部ブロック3と下部ブロック5を接合しているので、まず上部ブロック3と下部ブロック5の形状を説明し、その後でデフレクタ1の形状を説明する。
【0014】
<上部ブロック>
上部ブロック3は、ブロック体からなり、その下面に背面側から前面側に連通するように、断面半円形の溝部7が形成されている。
【0015】
<下部ブロック>
下部ブロック5は、上面が開口した中空のブロック体からなり、平坦な背面の上辺部に半円状の切欠き9が形成されている(図3参照)。
また、下部ブロック5の背面の下部には、左右に一直線に並ぶように3つの開口11が設けられ、これらの開口11は後方へ放水する後方放水口13を構成している。
なお、3つの開口11は、図5(a)から分かるように、内側から外側に斜め下方に向かうように形成されることで、斜め下方へ放水できるようになっている。
【0016】
下部ブロック5の前面は、図1図2に示すように、下端部の角部が背面側に向かって湾曲する湾曲面部となっている。
また、下部ブロック5の正面側には、上辺から少し下がった位置から、下方に向かって底面にまで延びるスリット15が左右横並びで4本形成されている。この4本のスリット15は、中・近距離放水口17を構成している。
【0017】
4本のスリット15は、図5から分かるように、内側から外側に向かって外側に広がるように形成されている。
また、スリット15は、正面の高さ方向中部~上部では内側の2本の広がり角度が10°で、外側の2本の広がり角度が20°となっており(図4(a)のD-D断面を示した図5(d)参照)、正面の少し下がった位置及び底部では内側の2本の広がり角度が15°で、外側の2本の広がり角度が30°となっている(図4(a)のC-C断面を示した図5(c)、図4(d)のA-A断面を示した図5(a)参照)。すなわち、スリット15は下部側の広がり角度が上部よりも大きくなっている。このようにした理由は以下の通りである。
放水時、消火ノズルは左右に揺動して扇形に放水することで散水幅を確保するようにしている。デフレクタ1も消火ノズルと一緒に揺動するが、仮にスリット15の広がり角度が正面の上部、中部~下部、底部で同じ場合、例えば最も右に揺動した状態で、上部や中部の射程距離は遠方であるため左右への散水幅を確保できるが、下部や底部の射程距離は近場のため左右への散水幅を十分に確保できない。
そこで、スリット15自体の広がり角度に上下で差を設け、近場を射程とする下方ほど広がり角度を広くして、近場への放水でも左右への散水幅を確保できるようにしている。
【0018】
上記のような上部ブロック3と下部ブロック5を接合して形成されたデフレクタ1は、背面側は放水ノズルの放水口が密着して放水が注水される注水口19(図3参照)を有し、正面側に注水口19よりも開口面積が小さく、かつ注水口19と連通して注水された消火水を遠方に放水する遠方放水口21(図1図2参照)と遠方放水口21よりも下方の壁面に設けられて、注水された消火水を中距離、近距離に放水する中・近距離放水口17としての複数のスリット15(図1図2参照)及び後方側に放水する後方放水口13を備えている。
以下、デフレクタ1の構成を詳細に説明する。
【0019】
<注水口>
注水口19は、図3に示すように、上部ブロック3の半円状の溝部7と下部ブロック5の半円状の切欠き9によって構成された円形の開口部である。
注水口19の周面には、放水ノズルの放水口が密着するようにリング状のゴムパッキン22がパッキン固定板23によって固定されている。
【0020】
<遠方放水口>
遠方放水口21は、図1図2に示すように、上部ブロック3の溝部7と下部ブロック5の上辺によって半円形の開口部として形成されている。
【0021】
<スリット、後方放水口>
スリット15及び後方放水口13は中・近距離放水口17を構成し、下部ブロック5に形成されたものである。
【0022】
注水口19の面積をS1、遠方放水口21の面積をS2、中・近距離放水口17の面積(4本のスリット15と3つの開口11の合計)をS3としたときに、S1-S2>S3の関係にある。
これによって、注水口19からデフレクタ1内部に注水された消火水がデフレクタ1内部に滞留して加圧された状態となり、中・近距離放水口17から勢いよく放水される。
【0023】
上記のように構成されたデフレクタ1の作用を説明する。
注水口19の周辺にはリング状のゴム板23が設けられているので、放水ノズルの放水口が密着する。このため、放水口とデフレクタ1との間に隙間が生じず、消火水はほぼ全てデフレクタ1の内部に注水され、放水制御が正確に行われる。
【0024】
注水された消火水の約半分は、上部ブロック3の断面半円形の溝にそって、前面側に誘導されて、半円の遠方放水口21から遠方へと放水される。
また、注水された残りの約半分の消火水は、下部ブロック5の前面壁に当たり、下方へと誘導され、4本のスリット15、3つの開口11から放水される。
スリット15からの放水のうち、前面側の平坦面の部分からの放水は中距離となり、下部の湾曲部からの放水は近距離となり、下面からの放水は下方への放水となる。
また、下部ブロック5の背面側の3つの開口11からは、下方よりもさらに後方側への放水となる。
【0025】
以上のように、本実施の形態のデフレクタ1によれば、遠距離、中距離、近距離の全ての距離に対して正確な放水が可能である。
また、S1-S2>S3の関係から、注水口19からデフレクタ内部に注水された消火水がデフレクタ内部に一時的に滞留して加圧されることにより、中・近距離放水口17から勢いよく放水され、意図した正確に制御された放水が可能となっている。
【符号の説明】
【0026】
1 デフレクタ
3 上部ブロック
5 下部ブロック
7 溝部
9 切欠き
11 開口
13 後方放水口
15 スリット
17 中・近距離放水口
19 注水口
21 遠方放水口
22 ゴムパッキン
23 パッキン固定板
図1
図2
図3
図4
図5