(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140133
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】積層体、アンテナ
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20241003BHJP
C01B 32/194 20170101ALI20241003BHJP
C01B 21/064 20060101ALI20241003BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B32B9/00 A
C01B32/194
C01B21/064 M
H01Q1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051137
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】奥田 崚太
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 浩司
(72)【発明者】
【氏名】黄 晋二
【テーマコード(参考)】
4F100
4G146
5J046
【Fターム(参考)】
4F100AA01A
4F100AA14B
4F100AD11C
4F100AG00A
4F100AK01A
4F100AT00A
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4F100GB41
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4F100JN01
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4F100YY00C
4G146AA01
4G146AB07
4G146AC01A
4G146AC19A
4G146AC20A
4G146AC21A
4G146AD01
5J046AB06
5J046AB07
5J046AB13
5J046PA07
(57)【要約】
【課題】 グラフェン層を有する新規な積層体の提供。
【解決手段】 基板と、窒化ホウ素層と、グラフェン層とをこの順に有し、グラフェン層の電子移動度が6000cm
2/Vs以上である、積層体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、窒化ホウ素層と、グラフェン層とをこの順に有し、前記グラフェン層の電子移動度が6000cm2/Vs以上である、積層体。
【請求項2】
前記窒化ホウ素層が、六方晶窒化ホウ素を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記グラフェン層におけるグラフェンシートの層数が、1~20である、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記グラフェン層が、乱層構造である、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記グラフェン層の前記基板側とは反対側の表面の表面粗さが、0.1~2.0である、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記グラフェン層のシート抵抗値が15Ω/sq.以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記積層体のラマンスペクトルにおいて、六方晶窒化ホウ素に由来するE2gピークが観察され、前記E2gピークの半値幅の平均が、10~50cm-1である、請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
全光線透過率が50%以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
前記基板が、透明基板である、請求項1に記載の積層体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の積層体を含む、アンテナ。
【請求項11】
共振周波数が、0.3~50GHzである、請求項に記載のアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関する。より具体的には、グラフェン層を有する積層体に関する。
また、本発明は、上記積層体を含むアンテナにも関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンとは、炭素原子がsp2結合で互いに結合したシート状の物質であり、グラファイト(黒鉛)は、グラフェンシートが積層してなる。グラフェンにおいては、炭素原子および炭素原子の結合手によって、六角形格子構造(六角網面)が形成されている。
【0003】
特許文献1には、グラフェンを製造する方法として、シリコンカーバイド(SiC)基板の表面にC2H2ガスおよびO2ガスを供給しながら加熱を行い、SiOCからなる群から選択されるバッファー層と、単層のグラフェンとを形成する方法が開示されている。また、特許文献1には、製造したグラフェンを剥離して他の基板に転写することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
グラフェンは、上述した構造を有することにより、種々のデバイスに適用し得る特性を発揮する。
近年、グラフェンの特性を生かした新規なデバイスの開発が求められている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、グラフェン層を有する新規な積層体の提供を課題とする。
また、本発明は、上記積層体を用いたアンテナの提供も課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
〔1〕 基板と、窒化ホウ素層と、グラフェン層とをこの順に有し、上記グラフェン層の電子移動度が6000cm2/Vs以上である、積層体。
〔2〕 上記窒化ホウ素層が、六方晶窒化ホウ素を含む、〔1〕に記載の積層体。
〔3〕 上記グラフェン層におけるグラフェンシートの層数が、1~20である、〔1〕または〔2〕に記載の積層体。
〔4〕 上記グラフェン層が、乱層構造である、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の積層体。
〔5〕 上記グラフェン層の上記基板側とは反対側の表面の表面粗さが、0.1~2.0である、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の積層体。
〔6〕 上記グラフェン層のシート抵抗値が15Ω/sq.以下である、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の積層体。
〔7〕 上記積層体のラマンスペクトルにおいて、六方晶窒化ホウ素に由来するE2gピークが観察され、上記E2gピークの半値幅の平均が、10~50cm-1である、〔1〕に記載の積層体。
〔8〕 全光線透過率が50%以上である、〔1〕に記載の積層体。
〔9〕 上記基板が、透明基板である、〔1〕に記載の積層体。
〔10〕 〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載の積層体を含む、アンテナ。
〔11〕 共振周波数が、0.3~50GHzである、に記載のアンテナ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、グラフェン層を有する新規な積層体を提供できる。
また、本発明によれば、上記積層体を用いたアンテナも提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の積層体の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施態様に制限されない。
【0011】
本明細書における各記載の意味を示す。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
本明細書において、グラフェンとは、単層のグラフェンシートからなる単層グラフェンのみならず、単層のグラフェンシートが積層してなる多層グラフェンも含む。多層グラフェンにおけるグラフェンシートの層数は、2~10が好ましく、2~5がより好ましい。
なお、グラフェンシートとは、sp2結合で平面状に互いに結合した炭素原子からなり、炭素原子1原子分の厚さを有するシートをいう。グラフェンシートは、六角網面の各頂点に炭素原子が存在している。
【0013】
<積層体>
本発明の積層体は、基板と、窒化ホウ素層(以下、「BN層」ともいう。)と、グラフェン層とをこの順に有し、グラフェン層の電子移動度が6000cm
2/Vs以上である。
本発明の積層体について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の積層体の一例である、積層体10の断面模式図である。
図1に示す積層体10は、基板12と、BN層14と、グラフェン層16とをこの順に有する。グラフェン層16の電子移動度は、6000cm
2/Vs以上である。
【0014】
本発明の積層体において、グラフェン層の電子移動度が高くなる機序は必ずしも定かではないが、本発明者らは、以下のように推測している。
本発明の積層体では、グラフェン層が、BN層の表面に接して設けられているため、基板に由来するフォノン散乱の影響を受けにくい。また、グラフェン層とBN層との格子定数が近いため、グラフェン層に応力が作用しにくく、グラフェン層の電子移動度を低下させにくい。結果として、本発明の積層体において、グラフェン層の電子移動度が高くなると考えられる。
【0015】
以下、本発明の積層体の好ましい性質、および、本発明の積層体を構成する層について詳述する。
【0016】
[基板]
本発明の積層体は、基板を有する。
本発明の積層体における基板は、特に制限されず、従来公知の基板を適用できる。
基板は、BN層およびグラフェン層が形成される第1主面を有する。上記第1主面は、平面であってもよく、曲面であってもよい。
【0017】
基板を構成する材料は、特に制限されず、有機材料であってもよく、無機材料であってもよい。
有機材料としては、樹脂が好ましく挙げられ、例えば、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアルキレン樹脂、および、含フッ素樹脂等が挙げられる。
無機材料としては、金属元素、および、半導体元素を含む材料が挙げられる。この場合、基板を構成する材料としては、具体的には、酸化ケイ素、炭化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、金属ケイ素、金属ゲルマニウム、シリコン-ゲルマニウム合金、ヒ化ガリウム、酸化亜鉛、リン化インジウム、および、窒化ガリウム等が挙げられる。
無機材料は、ガラスであってもよい。ガラスとしては、二酸化ケイ素を主成分とする一般的なガラス、例えば、ソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラスなどが挙げられる。
基板は、熱膨張係数が1.0×10-5~5.0×10-7K-1であることが好ましい。
【0018】
基板は、透明基板であることも好ましい。透明基板とは、可視光領域(波長400~760nm)における全光線透過率が60%以上の基板をいう。透明基板の可視光領域における全光線透過率は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
透明基板の全光線透過率は、分光光度計で測定できる。
基板が透明基板である場合、その基板を構成する材料としては、例えば、上述したガラスが挙げられる。
【0019】
基板の厚みは、特に制限されないが、100μm~5mmが好ましく、0.5~1mmがより好ましい。
【0020】
[窒化ホウ素層]
本発明の積層体は、窒化ホウ素層(BN層)を有する。
本発明の積層体におけるBN層は、窒化ホウ素を含んでいれば特に制限されないが、六方晶窒化ホウ素(h-BN)を含むことが好ましい。なお、以下、六方晶窒化ホウ素を含む窒化ホウ素層を、「h-BN層」ともいう。
六方晶窒化ホウ素は、窒素原子とホウ素原子とが互いに結合するように六角網面の頂点に存在する、窒化ホウ素シートが積層した構造を有する。h-BN層において、窒化ホウ素シートの積層構造は特に制限されないが、乱層構造が好ましい。乱層構造のh-BN層とは、隣接する2つの窒化ホウ素シートの面内方向の単位格子ベクトルが、互いに平行でないことをいう。乱層構造のh-BN層は、後述する方法で得られる。
【0021】
グラフェン層の電子移動度がより高くなる点で、h-BN層の結晶性は、高いことが好ましい。h-BN層の結晶性は、例えば、ラマン分光法によって測定できる。ラマン分光法の測定方法に関しては、後述する。
【0022】
また、h-BN層の結晶性は、六方晶窒化ホウ素のバンドギャップに対応する紫外線吸収ピークを解析してもよい。すなわち、グラフェン層の電子移動度がより高くなる点で、本発明の積層体は、205~280nmに極大吸収波長を有することが好ましい。
【0023】
BN層の厚みは、特に制限されないが、1nm以上が好ましく、8nm以上がより好ましい。また、BN層の厚みは、50nm以下が好ましい。
【0024】
[グラフェン層]
本発明の積層体は、グラフェン層を有する。
本発明の積層体におけるグラフェン層は、グラフェンシートを含んでいて、電子移動度が6000cm2/Vs以上であれば特に制限されない。
グラフェン層は、単層のグラフェンシートからなる単層グラフェンであってもよく、多層のグラフェンシートからなる多層グラフェンであってもよい。多層グラフェンにおけるグラフェンシートの層数は、2~20が好ましく、2~10がより好ましい。すなわち、グラフェン層におけるグラフェンシートの総数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましい。
グラフェン層におけるグラフェンシートの層数は、公知の方法で決定できる。例えば、グラフェン層のラマンスペクトルを取得し、2700cm-1付近に観察される、いわゆる2Dバンドのピーク解析によってグラフェンシートの層数を決定できる。また、1590cm-1付近に観察される、いわゆるGバンドのピーク解析によってグラフェンシートの層数を決定してもよい。
また、グラフェン層におけるグラフェンシートの層数は、顕微鏡観察によって厚みを測定して決定してもよい。
【0025】
グラフェン層が多層グラフェンからなる場合、グラフェンシートの積層構造は特に制限されない。なかでも、多層グラフェンは、グラフェン層の電子移動度がより高くなる点で、乱層構造となっていることが好ましい。
多層グラフェンが乱層構造となっているとは、隣接する2つのグラフェンシートの面内方向の単位格子ベクトルが互いに平行でないことをいう。乱層構造の多層グラフェンは、後述する方法で得られる。
【0026】
また、グラフェン層における電子移動度は、6000cm2/Vs以上である。グラフェン層における電子移動度は、van der Pauw法で測定でき、測定温度は23℃とする。グラフェン層における電子移動度は、6300cm2/Vs以上が好ましく、7500cm2/Vs以上がより好ましい。電子移動度の上限は特に制限されないが、例えば20000cm2/Vsが挙げられる。
【0027】
グラフェン層は、炭素以外の元素を含んでいてもよい。グラフェン層が含んでいてもよい元素としては、例えば、水素、ホウ素、窒素、酸素および硫黄ならびに、遷移金属元素が挙げられる。なかでも、ホウ素または硫黄が好ましい。
また、グラフェン層は、グラフェン以外の化合物を含んでいてもよい。グラフェン以外の化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミン、硝酸、および、塩化鉄(III)等が挙げられる。
【0028】
グラフェン層の基板側とは反対側の表面の表面粗さが、0.1~2.0nmであることも好ましい。表面粗さが2.0nm以下(より好ましくは0.5nm以下)であると、グラフェン層の電子移動度により優れる。
上記表面粗さは、原子間力顕微鏡によってグラフェン層の表面を観察し、解析を行うと得られる。また、上記表面粗さとは、原子間力顕微鏡の観察によって得られる粗さ曲線から算出される算術平均粗さ(Ra)をいう。
【0029】
グラフェン層のシート抵抗値は、100Ω/sq.以下が好ましく、30Ω/sq.以下がより好ましく、15Ω/sq.以下が更に好ましい。
グラフェン層のシート抵抗値の下限は、特に制限されないが、0.01Ω/sq.が挙げられる。
グラフェン層のシート抵抗値は公知の方法で測定でき、例えば、4端子法によって測定できる。
【0030】
[その他の層]
本発明の積層体は、上記で説明した以外の層(その他の層)を有していてもよい。
その他の層としては、保護層が挙げられる。保護層は、上記グラフェン層の基板側とは反対側に配置されることが好ましい。保護層は、絶縁性の材料からなることが好ましい。保護層としては、上記BN層とは別の六方晶窒化ホウ素層、および、上記基板とは別の基板が好ましく挙げられる。
本発明の積層体は、上記グラフェン層の基板側とは反対側には、上記BN層とは別の六方晶窒化ホウ素層を有していないことも好ましい。
【0031】
[積層体の透過率]
本発明の積層体の可視光領域における全光線透過率は、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。
積層体の全光線透過率は、分光光度計で測定できる。
【0032】
[積層体のラマンスペクトル]
本発明の積層体においては、そのラマンスペクトルを取得した際に、六方晶窒化ホウ素に由来するE2gピークが観察され、E2gピークの半値幅の平均が、10~50cm-1であることも好ましい。
E2gピークの半値幅の平均が小さいことは、BN層に含まれる六方晶窒化ホウ素の結晶性が高いことを示す。
E2gピークは、通常、1320~1420cm-1付近に観察される。
【0033】
また、本発明の積層体においては、そのラマンスペクトルを取得した際に、グラフェン層に由来するピークが観察され、2700cm-1付近に観察される、いわゆる2Dバンドの半値幅が40cm-1以下となることが好ましい。2Dバンドの半値幅が40cm-1以下となると、グラフェン層の電子移動度がより高くなりやすい。なお、2Dバンドの半値幅は、通常、20cm-1以上となる場合が多い。
【0034】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体の製造方法は、上述した積層体が得られれば特に制限されない。
例えば、本発明の積層体の製造方法としては、基板に対して、別途作製したBN層を転写し、さらに、別途作製したグラフェン層を転写する方法が挙げられる。
また、本発明の積層体の製造方法としては、基板に対して、別途作製したBN層を転写し、グラフェン層を気相法によってBN層の表面に形成する方法が挙げられる。
また、本発明の積層体の製造方法としては、基板に対して、BN層を気相法等によって基板の一方の面に形成し、別途作製したグラフェン層を転写する方法が挙げられる。
また、本発明の積層体の製造方法としては、基板に対して、BN層を気相法等によって基板の一方の面に形成し、グラフェン層を気相法によってBN層の表面に形成する方法が挙げられる。
なかでも、グラフェン層の電子移動度がより向上する点で、以下に説明する製造方法の1つ以上を適用することが好ましい。
【0035】
積層体の製造において、BN層(好ましくはh-BN層)は、化学気相蒸着法で作成することが好ましい。
なお、既に形成された1層以上の六方晶窒化ホウ素シートを有するh-BN層の上に、h-BN層を転写すると、乱層構造のh-BN層を形成できる。
【0036】
積層体の製造において、グラフェン層の形成は、グラフェンシートを転写する工程を有することが好ましい。
既に形成された1層以上のグラフェンシートを有するグラフェン層の上に、さらにグラフェンシートを転写すると、乱層構造のグラフェン層を形成できる。1回の転写によって転写されるのグラフェンシートの層数は、1~3層が好ましく、1または2層がより好ましく、1層がさらに好ましい。
グラフェン層におけるグラフェンシートの好ましい層数は、上述した通りである。
【0037】
転写するグラフェンシートは、公知の方法で形成できる。例えば、銅の(111)面が露出した触媒基板に対して、炭化水素ガスを供給し、触媒基板を加熱する方法が挙げられる。
炭化水素ガスに用いられる炭化水素の具体例としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素;エチレン、アセチレン、プロピレン、ブタジエン、ペンテン、シクロペンタジエンなどの不飽和炭化水素;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、炭素数10以下の炭化水素が好ましく、炭素数5以下の炭化水素がより好ましい。
加熱温度は、欠陥の少ないグラフェン層が得られる点で、300~1200℃が好ましく、500~1000℃がより好ましい。加熱時間は、1~300分間が好ましく、10~60分間がより好ましい。
上記では、触媒基板として銅を示したが、触媒基板は、例えば、ニッケルの(111)面が露出した触媒基板であってもよい。
【0038】
積層体の製造において、グラフェン層を転写により形成する場合、公知の転写方法を適用できるが、グラフェン層の電子移動度がより高くなる点で、転写方法は、転写するグラフェンシートと水とが接触しない方法(ドライ転写)が好ましい。
ドライ転写の具体的な方法としては、例えば、熱または紫外線照射によって粘着力が低下するテープにグラフェンシートを転写し、上記テープに対して加熱または紫外線照射を行い、基板または既に形成されたグラフェン層に対してグラフェンシートを転写する方法が挙げられる。また、ドライ転写の具体的な方法としては、減圧環境下でグラフェンシートの転写を行う方法も挙げられる。
【0039】
<アンテナ>
本発明の積層体において、グラフェン層が導電体として機能するため、本発明の積層体は、例えば、アンテナとして用いることができる。以下、本発明の積層体を用いたアンテナ(本発明のアンテナ)について説明する。
【0040】
本発明のアンテナの共振周波数は、0.3~50GHzが好ましい。
本発明の積層体をアンテナとして用いるためには、所望の共振周波数に合わせて、積層体におけるグラフェン層の形状を調整すればよい。
本発明の積層体におけるグラフェン層は、上記共振周波数における電波の波長をλとした場合、例えば、約λ/2の辺を有する長方形状に加工すると、波長λのアンテナとして機能し得る。また、グラフェン層は、λ/4の辺を有する線状に加工されてもよい。また、グラフェン層は、従来公知のアンテナの方式に合致するように加工されてもよい。
本発明の積層体をアンテナとして動作させるためには、グラフェン層に電気的に接続した電極を形成し、電極から所定の交流電流を供給するか、電極でグラフェン層に発生した電流を検出すればよい。電極の形成は、公知の手段で行うことができる。
【符号の説明】
【0041】
10 積層体
12 基板
14 BN層(窒化ホウ素層)
16 グラフェン層