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特開2024-140134インクジェットプリンタおよびフィルタ交換判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140134
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタおよびフィルタ交換判定方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20241003BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241003BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B41J2/175 201
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051138
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】藤田 陽
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB19
2C056EB34
2C056EC26
2C056EE18
2C056FA10
2C056JA13
2C056JB04
2C056JB08
2C056JB09
2C056JB15
2C056JC21
2C056KA03
2C056KA04
2C056KB16
2C056KB26
2C056KB35
2C056KC02
(57)【要約】
【課題】より適切にフィルタ交換のタイミングを指示することのできるインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】プリンタ10は、インク流路53を備えるインク供給ユニット52と、フィルタ58と、圧力センサ59と、制御装置90と、を備えている。フィルタ58は、インク流路53を流れるゴミなどにより徐々に目詰まりが発生する。圧力センサ59は、インク流路53を流れるインクの圧力を測定する。制御装置90は、圧力センサ59の測定値に基づいて、「異常」か否かを判定する。さらに、制御装置90は、判定結果を時系列に記憶し、その時系列パターンに基づいて、フィルタ58の交換の適否を判定する。
【選択図】図9



【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するインクタンクと、
前記インクを吐出するインクヘッドと、
前記インクタンクと前記インクヘッドとを接続するインク流路を有し、前記インクタンクから前記インクヘッドへ前記インクを供給するインク供給ユニットと、
前記インク流路に設けられたフィルタと、
前記インク流路を流れる前記インクの圧力を検出する圧力検出装置と、
前記フィルタの交換の適否を判定するフィルタ交換判定装置と、を備え、
前記フィルタ交換判定装置は、
前記圧力検出装置の測定値に基づいて、予め定められた異常の状態であるか否かを判定する圧力判定部と、
前記圧力判定部の判定結果を時系列に記憶する記憶部と、
前記記憶部が記憶した前記判定結果の時系列パターンに基づいて前記フィルタの交換の適否を判定する交換判定部と、を備える、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記交換判定部は、
前記記憶部に記憶されている前記時系列パターンに、予め定められた異常パターンが出現すると前記フィルタの交換を指示する信号を出力する本通知部と、
前記記憶部に記憶されている前記時系列パターンに前記異常パターンが出現するよりも前に、予め定められた事前通知パターンが出現すると、前記フィルタの交換を促す信号を出力する事前通知部と、を備える、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記圧力検出装置は、前記インク流路のうち前記フィルタよりも前記インクヘッド側の圧力を測定し、
前記圧力判定部は、前記測定値が第1閾値よりも小さい場合、異常であると判定する、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記圧力検出装置は、前記インク流路のうち前記フィルタよりも前記インクタンク側の圧力を測定し、
前記圧力判定部は、前記測定値が第2閾値よりも大きい場合、異常であると判定する、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記圧力検出装置は、前記測定値として、前記インク流路のうち前記フィルタよりも前記インクヘッド側と、前記インク流路のうち前記フィルタよりも前記インクタンク側と、の差圧を測定し、
前記圧力判定部は、前記測定値が第3閾値よりも大きい場合、異常であると判定する請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記圧力判定部は、前記測定値が所定の範囲内であるときに、正常であると判定し、前記測定値が前記所定の範囲内に無いときに、異常であると判定し、
前記フィルタ交換判定装置は、前記異常の判定が第1所定回数続いた後に前記正常の判定がなされる第1パターンが、前記記憶部に記憶されている前記時系列パターンに出現する回数を計数するパターン計数部を備え、
前記交換判定部は、前記パターン計数部により計数された前記第1パターンの回数が予め定められた事前通知回数に達すると、前記フィルタの交換を促す信号を発信する事前通知部を備える、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記パターン計数部は、前記異常の判定が前記第1所定回数よりも少ない第2所定回数続いた後に前記正常の判定がなされる第2パターンが、前記記憶部に記憶されている前記時系列パターンに出現したとき、計数している回数を初期化する、請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記パターン計数部は、前記異常の判定が前記第1所定回数よりも少ない第2所定回数続いた後に前記正常の判定がなされる第2パターンが、前記記憶部に記憶された前記時系列パターンに出現したとき、計数している回数から所定の回数を減算する、請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記インク供給ユニットは、
前記インク流路に設けられた送液ポンプと、
前記インク流路のうち前記フィルタよりも前記インクヘッド側の部分と、前記フィルタよりも前記インクタンク側の部分とを接続する循環流路を備えている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記圧力検出装置は、前記循環流路に設けられている、請求項9に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項11】
インク流路を流れるインクの圧力を、圧力検出装置を用いて検出することにより、前記インク流路に設けられたフィルタの交換の適否を判定するフィルタ交換判定方法であって、
前記圧力検出装置の測定値に基づいて、予め定められた異常の状態であるか否かを判定する圧力判定工程と、
前記圧力判定工程の判定結果を時系列に記憶する記憶工程と、
前記記憶工程において記憶した前記判定結果の時系列パターンに基づいて前記フィルタの交換の適否を判定する交換判定工程と、を含むフィルタ交換判定方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタおよびフィルタ交換判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクヘッドがゴミなどにより詰まることを防止するフィルタを備えたインクジェット記録装置(インクジェットプリンタ)が知られている。フィルタには、インクの流路中に流れるゴミなどが溜まるため、徐々に目詰まりが発生する。そこで、フィルタに目詰まりが発生すると、フィルタの交換の指示を行うインクジェット記録装置が提案されている。例えば、特許文献1には、インクジェット記録ヘッドと、インク流路においてインクを循環させるインク循環手段と、フィルタと、サブタンクと、フィルタの交換を指示する交換信号を発信する制御手段と、を備えるインクジェット記録装置が開示されている。
【0003】
係るインクジェット記録装置では、インク循環手段によりサブタンクとインクジェット記録ヘッドとの間でインクを循環させる場合がある。ここで、フィルタはサブタンクとインクジェット記録ヘッドとを接続する流路に設けられている。フィルタに目詰まりが発生すると、流路内の抵抗が大きくなり、フィルタの上流側の圧力が上昇する。サブタンクとインクジェット記録ヘッドとを接続する流路のうち、フィルタの上流側には圧力検出装置が配置されており、流路内の圧力を測定している。フィルタにゴミなどが詰まり、流路内の抵抗が大きくなると、圧力検出装置の測定値が大きくなる。圧力検出装置の測定値が大きくなると、制御手段はフィルタ交換の信号を発信する。これにより、ユーザは、フィルタ交換が必要であることを知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-320913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなインクジェット記録装置では、制御手段は、1回のインク循環動作で測定された圧力の測定値に基づいてフィルタ交換の信号を発信するか否かを決定している。しかしながら、例えば、インク流路中に偶発的にエアが混入し、圧力検出装置の測定値が一時的に高くなっている場合がある。このような場合、フィルタをまだ使用することができるにも関わらず、制御装置がフィルタ交換の信号を発信してしまう可能性がある。したがって、使用可能なフィルタを交換することになり、フィルタが無駄になる。
【0006】
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、その目的は、より適切にフィルタ交換のタイミングを指示することのできるインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のインクジェットプリンタは、インクを収容するインクタンクと、前記インクを吐出するインクヘッドと、前記インクタンクと前記インクヘッドとを接続するインク流路を有し、前記インクタンクから前記インクヘッドへ前記インクを供給するインク供給ユニットと、前記インク流路に設けられたフィルタと、前記インク流路を流れる前記インクの圧力を検出する圧力検出装置と、前記フィルタの交換の適否を判定するフィルタ交換判定装置と、を備えている。前記フィルタ交換判定装置は、前記圧力検出装置の測定値に基づいて、予め定められた異常の状態であるか否かを判定する圧力判定部と、前記圧力判定部の判定結果を時系列に記憶する記憶部と、前記記憶部が記憶した前記判定結果の時系列パターンに基づいて前記フィルタの交換の適否を判定する交換判定部と、を備えている。
【0008】
かかるインクジェットプリンタによれば、前記インク供給ユニットにより、前記インクタンクから前記インクヘッドへ前記フィルタを通り、前記インクが供給される。このとき、前記圧力検出装置が前記インク流路の圧力を測定する。前記フィルタ交換判定装置の前記圧力判定部は、前記圧力検出装置の測定値に基づいて異常か否かを判定する。前記記憶部には、前記圧力判定部による判定結果が時系列に記憶されている。前記交換判定部は、前記判定結果の時系列パターンに基づいて前記フィルタの交換の適否を判定する。したがって、前記交換判定部は、前記測定値の結果を複数確認することにより、前記フィルタの交換の適否を判定している。インク流路中の偶発的にエアが混入している場合、前記圧力判定部が連続して異常と判定する可能性は低い。したがって、偶発的に前記測定値が異常となっている場合等に、前記フィルタを交換する指示が出力されることが抑制される。このことにより、より適切にフィルタ交換のタイミングを判定することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より適切にフィルタ交換のタイミングを指示することのできるインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るプリンタの正面図である。
図2】一実施形態に係るインクヘッドの底面の構成を示す模式図である。
図3】一実施形態に係るインクタンク、インクヘッドおよびインク供給ユニットの構成を示す模式図である。
図4】一実施形態に係るワイピング機構およびキャリッジを示す正面図である。
図5】一実施形態に係るキャッピング機構およびキャリッジを示す正面図である。
図6】一実施形態に係るプリンタの制御装置を示す模式図である。
図7】一実施形態に係る時系列パターンの一部を示す表である。
図8】1セットのメンテナンスにて起こる圧力判定部の判定結果の順列の一覧である。
図9】一実施形態に係るフィルタ交換の適否を判定する手順を示したフローチャートである。
図10】別実施形態に係るインクタンク、インクヘッドおよびインク供給ユニットの構成を示す模式図である。
図11】別実施形態に係るインクタンク、インクヘッドおよびインク供給ユニットの構成を示す模式図である。
図12】別実施形態に係るフィルタ交換の適否を判定する手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」という。)について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るプリンタ10の正面図である。図2は、プリンタ10のキャリッジ17およびインクヘッド40の底面の構成を模式的に示す底面図である。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれプリンタ10の前、後、左、右、上、下を意味するものとする。図面中の符号Yは、主走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは、左右方向である。図2に示す符号Xは、副走査方向を示している。本実施形態では、副走査方向Xは、前後方向であり、平面視において主走査方向Yと交差(ここでは直交)する方向である。ただし、これら方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0013】
図1に示すように、プリンタ10は、記録媒体5に印刷を行う。記録媒体5は、例えば、長尺に形成され、ロール状に巻かれて用いられる。なお、記録媒体5は、シート状のものであってもよい。記録媒体5は、例えば、記録紙である。ただし、記録媒体5は、記録紙に限定されない。例えば、記録媒体5には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステルなどの樹脂材料から形成されたシート、台紙と台紙上に積層されかつ接着剤が塗布された剥離紙とからなるシール材等が含まれる。
【0014】
図1に示すように、プリンタ10は、プリンタ本体11と、プラテン13と、搬送機構20と、ガイドレール15と、ヘッド移動機構30と、キャリッジ17と、インクヘッド40と、インクタンク51と、インク供給ユニット52と、フィルタ58(図3参照)と、圧力センサ59(図3参照)と、ワイピング機構140(図4参照)と、キャッピング機構70(図5参照)と、操作パネル80と、制御装置90とを備えている。ワイピング機構140およびキャッピング機構70は、プリンタ本体11の右部11Rに設けられている。
【0015】
プラテン13に支持された記録媒体5は、搬送機構20によって副走査方向Xに搬送される。なお、搬送機構20の構成は、特に限定されない。本実施形態では、搬送機構20は、ピンチローラ21と、グリットローラ22と、フィードモータ23とを備えている。ピンチローラ21は、プラテン13の上方かつガイドレール15よりも下方に設けられ、記録媒体5を上から押さえ付けるものである。ピンチローラ21は、平面視においてキャリッジ17よりも後方に配置されている。グリットローラ22は、プラテン13に設けられ、外周形状が円柱状の部材である。グリットローラ22は、その上面部を露出させた状態でプラテン13に埋設されている。グリットローラ22は、ピンチローラ21と対向している。グリットローラ22には、フィードモータ23が接続されている。ピンチローラ21とグリットローラ22との間に記録媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ23が駆動すると、グリットローラ22が回転する。このことにより、プラテン13上の記録媒体5は副走査方向Xに搬送される。
【0016】
ガイドレール15は、プラテン13の上方に配置されている。ガイドレール15は、プラテン13と平行に配置され、主走査方向Yに延びている。ガイドレール15には、キャリッジ17が係合している。キャリッジ17は、ガイドレール15に摺動可能に設けられ、主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0017】
ヘッド移動機構30は、プラテン13に支持された記録媒体5に対して、キャリッジ17およびインクヘッド40を主走査方向Yに相対的に移動させる機構である。ここでは、ヘッド移動機構30は、キャリッジ17およびインクヘッド40を主走査方向Yに移動させる。なお、ヘッド移動機構30の構成は特に限定されない。
【0018】
本実施形態では、図1に示すように、ヘッド移動機構30は、左右のプーリ31a、31bと、ベルト32と、スキャンモータ33とを備えている。左のプーリ31aは、ガイドレール15の左端部よりも左方に設けられている。右のプーリ31bは、ガイドレール15の右端部よりも右方に設けられている。ベルト32は、左右のプーリ31a、31bに巻き掛けられている。ベルト32には、キャリッジ17が固定されている。右のプーリ31bには、スキャンモータ33が接続されている。ただし、スキャンモータ33は、左のプーリ31aに接続されていてもよい。
【0019】
ここでは、スキャンモータ33が駆動することで、右のプーリ31bが回転し、ベルト32が走行する。このことで、キャリッジ17およびインクヘッド40は、ガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動する。
【0020】
図1に示すように、インクヘッド40は、キャリッジ17に設けられている。インクヘッド40は、その下面を露出するように、キャリッジ17に支持されている。図2に示すように、本実施形態では、インクヘッド40の数は4つである。4つのインクヘッド40は、主走査方向Yに並んで配置されている。
【0021】
インクヘッド40は、ノズル面45を有している。ノズル面45は、インクヘッド40の底面を構成している。各ノズル面45には、ノズル46が形成されている。ノズル46は、記録媒体5にインクを吐出する微細な穴である。ノズル46は、インクヘッド40の内部の圧力室(図示せず)につながっている。圧力室には、インクが収容されている。圧力室の圧力を適切に保つことにより、ノズル46にメニスカスが形成され、インクヘッド40が印刷可能な状態となる。インクヘッド40において、複数のノズル46は、副走査方向Xに並ぶノズル列を形成している。ここでは、主走査方向Yに隣り合う2列のノズル列が形成されている。ノズル46の形成する2つの列をそれぞれノズル列46aとする。ここでは、各インクヘッド40におけるノズル列の数は2列であるが、これに限定されない。ノズル列の数は、1列でもよく、3列以上でもよい。また、図2では、ノズル列を形成するノズル46の数は12個としているが、実際にはもっと多数(例えば200~300個程度)のノズル46が形成されている。ノズル列46aを形成するノズル46の数は限定されない。また、本実施形態では、インクヘッド40の数は4つだが、インクへッドの数は4つに限定されない。
【0022】
図3は、インクタンク51、インクヘッド40およびインク供給ユニット52の構成を示す模式図である。インクタンク51は、インクが収容される容器である。インクタンク51は、本実施形態では、インクカートリッジである。ただし、インクタンク51は、インクカートリッジに限定されない。インクタンク51は、例えば、パウチ状のものであってもよい。また、プリンタ10は、インクタンク51の他に、インクが収容されるサブタンクを備えていてもよい。インクタンク51には、例えば、プロセスカラーインクおよび特色インク(例えばホワイトインク、クリアインクなど)のうちの1つのインクが貯留されている。ただし、インクタンク51に貯留されるインクの色は特に限定されない。インクは、無色インクであってもよい。また、インクの材料も何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよい。あるいは、上記インクは、水性染料インクや、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インクなどであってもよい。
【0023】
インク供給ユニット52は、インク流路53と、第1開閉弁54と、第2開閉弁55と、送液ポンプ56と、ダンパー57と、を備えている。
【0024】
インク流路53は、共通流路53aと、吐出流路53bと、循環流路53cと、ジョイント53dと、を備えている。インク流路53は、インクタンク51とインクヘッド40とを接続し、インクをインクヘッド40へ導いたり、インクを循環させたりする流路を形成している。なお、インク流路53におけるインクの流れについて、インクタンク51側をインクの上流と称し、インクヘッド40側を下流と称することとする。共通流路53aは、インクタンク51とジョイント53dとを接続している。吐出流路53bは、ジョイント53dとインクヘッド40とを接続している。吐出流路53bの途中には、フィルタ58およびダンパー57が設けられている。循環流路53cは、ダンパー57の内部の分岐53eとジョイント53dとを接続する。共通流路53aと、吐出流路53bのうちフィルタ58およびダンパー57の外部の部分と、循環流路53cのうちダンパー57の外部の部分と、を形成する材料は特に限定されないが、例えば、可撓性を有するチューブにより形成されている。ジョイント53dは、共通流路53aと、吐出流路53bと、循環流路53cとを接続するT字状の部材である。ジョイント53dは、例えば、樹脂により形成される。ただし、ジョイント53dを形成する材料は、特に限定されない。また、インク流路53は、ジョイント53dを備えていなくてもよい。例えば、共通流路53aを形成するチューブと、吐出流路53bを形成するチューブと、循環流路53cを形成するチューブとが直接接続されていてもよい。なお、分岐53eは、インクの流れの分岐を模式的に図示したものであり、分岐53eを形成する物体が存在しているわけではない。
【0025】
第1開閉弁54および第2開閉弁55は、それぞれ共通流路53aおよび循環流路53cに接続されている。第1開閉弁54は、共通流路53aを開放または閉鎖可能に構成されている。第2開閉弁55は、循環流路53cを開放または閉鎖可能に構成されている。ここで、例えば、「第1開閉弁54が共通流路53aを開放または閉鎖」するとは、第1開閉弁54が共通流路53aの流路を完全に開放または閉鎖する場合と、共通流路53aの流路を部分的に開放または閉鎖する場合と、を含む。第1開閉弁54が開放されると、共通流路53aの流路が開放され、第1開閉弁54が閉鎖されると、共通流路53aの流路が閉鎖される。第1開閉弁54が共通流路53aの流路を開放することにより、インクタンク51に貯留されているインクを共通流路53aに導くことができる。第2開閉弁55が開放されると、循環流路53cが開放される。したがって、インクヘッド40の内部のインクを共通流路53aへと導くことができる。循環流路53cは、循環動作を行うときに開放される。ここで、循環動作とは、第1開閉弁54を閉鎖し、かつ第2開閉弁55を開放した状態において、後述する送液ポンプ56を駆動することにより、吐出流路53bと循環流路53cとにおいてインクを循環させる動作のことである。循環動作は、ホワイトインクなどの沈降の生じやすいインクを循環させる目的で実行されるものである。循環動作が実行されるときに吐出流路53bおよび循環流路53cを流れるインクの圧力は、ノズル46に形成されるメニスカスが壊れない程度の圧力に制御されていることが望ましい。第1開閉弁54および第2開閉弁55は、制御装置90(図1参照)に電気的に接続され、制御装置90により制御される。第1開閉弁54および第2開閉弁55は、例えば、電磁弁である。
【0026】
送液ポンプ56は、吐出流路53bに設けられている。送液ポンプ56は、上流側のインクを下流側に向かって送るポンプである。第1開閉弁54が開放され、かつ第2開閉弁55が閉鎖されている状態において送液ポンプ56を駆動することにより、インクタンク51の内部のインクをインクヘッド40に供給することができる。また、上述した循環動作のときにも送液ポンプ56を駆動する。送液ポンプ56の種類は特に限定されないが、送液ポンプ56は、例えばダイヤフラムポンプやチューブポンプなどである。送液ポンプ56は、制御装置90(図1参照)に電気的に接続され、制御装置90により制御される。
【0027】
ダンパー57は、インク流路53を通るインクの圧力変動を緩和して、インクヘッド40のインクの吐出を安定させるものである。例えば、ダンパー57内の圧力に応じて、送液ポンプ56の駆動が制御される。ここでは、ダンパー57は、インクヘッド40の上部に設けられている。ダンパー57の構成は特に限定されない。例えば、本実施形態では、ダンパー57は、インクが一時的に貯留されるインク室(図示せず)を有している。インク室の壁の一部は弾性膜によって形成され、貯留されるインクの量に応じて伸縮する。インク流路53は、ダンパー57の内部の分岐53eにて吐出流路53bと循環流路53cとに分岐している。
【0028】
フィルタ58は、吐出流路53bのうちダンパー57の上流に設けられている。フィルタ58は、吐出流路53bに混入したゴミや、インク中の固形分が凝集し硬化したインクを好適に除去することができる。フィルタ58は、例えば、樹脂や金属の繊維を絡ませた不織布や、樹脂や金属の繊維を編んだメッシュである。ただし、フィルタ58の材質や形状は、特に限定されない。
【0029】
圧力センサ59は、インク流路53を流れるインクの圧力を検出するものである。本実施形態では、圧力センサ59は、ダンパー57に接続され、循環流路53cの圧力を測定している。すなわち、圧力センサ59は、フィルタ58よりもインクヘッド40側を流れるインクの圧力を測定している。本実施形態では、圧力センサ59は、インクの圧力の大きさを電気信号により測定するセンサである。なお、圧力センサ59は、例えば、ダンパー57のインク室の大きさ(例えば伸縮の程度)に基づいて圧力を検出するものであってもよい。圧力センサ59は、制御装置90(図1参照)に電気的に接続され、制御装置90により制御される。
【0030】
次に、図4に示すワイピング機構140について説明する。ワイピング機構140は、ガイドレール15の右端付近に設けられている。ワイピング機構140は、インクヘッド40のノズル面45を拭う機構であり、ノズル面45をクリーニング(換言すると、ワイピング)する機構である。ワイピング機構140はワイパー141を備えている。ワイパー141は、インクヘッド40のノズル面45を拭う部材である。ワイパー141は、前後方向および上下方向に延びる平板状の部材である。ワイパー141は、例えば、ゴムにより形成されている。ワイピング機構140の構成は、特に限定されない。
【0031】
ワイピング機構140は、ワイパー141に加えて、回転軸142と、洗浄液槽143と、ワイパー駆動装置144と、を備えている。回転軸142は、ワイパー141の一端を支持しており、ワイパー141の一端に接続されている。ワイパー141は、回転軸142を中心に回転可能である。回転軸142は、前後方向に延びている。回転軸142が回転すると、ワイパー141は上方または下方に移動する。ワイパー141が上方に移動すると、ワイパー141の端部は、インクヘッド40のノズル面45よりもわずかに高い位置に位置する。そこで、ワイパー141を上方に移動させた状態でキャリッジ17を右方または左方に移動させると、ワイパー141によりインクヘッド40のノズル面45をワイピングすることができる。一方、ワイパー141は、下方に移動すると、洗浄液槽143中の洗浄液に浸漬される。ワイパー141のうち、少なくともノズル面45に接触した部分が、洗浄液槽143の中の洗浄液に浸漬される。ワイパー141が洗浄液に浸漬することによって、ワイパー141に付着した付着物が取り除かれる。ワイパー141は、ワイパー駆動装置144によって回転される。ワイパー141が、ワイパー駆動装置144によって回転されることにより、ワイパー141をインクヘッド40のノズル面45に接触させ、およびインクヘッド40のノズル面45から離間させることができる。ワイパー駆動装置144は、制御装置90(図1参照)に電気的に接続され、制御装置90により制御される。
【0032】
次に、キャッピング機構70について説明する。図5は、キャリッジ17、インクヘッド40およびキャッピング機構70を示す正面図である。図5に示す状態では、キャリッジ17は、主走査方向Yにおいて、ガイドレール15(図1参照)の右端に位置している。キャッピング機構70は、キャリッジ17がガイドレール15の右端に位置しているとき、キャリッジ17の下方となる位置に配置されている。図5に示すように、キャッピング機構70は、キャップ71と、昇降装置72と、吸引ポンプ73とを有している。キャッピング機構70の構成は、特に限定されない。
【0033】
キャップ71は、ノズル46(図2参照)を覆うようにインクヘッド40に装着されるものである。1つのキャップ71が装着されるインクヘッド40の数は1つである。そのため、キャップ71の数は、インクヘッド40の数と同じ4つである。キャップ71内には、インクを吸収する吸収体75が収容されている。吸収体75は、インクヘッド40からキャップ71内にインクが吐出(または排出)されたとき、当該インクを受ける部材である。吸収体75が受けたインクは、吸収体75に吸収される。
【0034】
昇降装置72は、インクヘッド40に対してキャップ71を相対的に昇降させる装置である。ここでは、昇降装置72は、キャップ71を昇降させることにより、インクヘッド40に対してキャップ71を装着させ、およびキャップ71を離間させる装置である。なお、昇降装置72の構成は特に限定されない。本実施形態では、昇降装置72は、支持部材77と、昇降モータ78とを有している。支持部材77は、例えば主走査方向Yおよび副走査方向Xに延びる板状の部材であり、4つのキャップ71を支持する。昇降モータ78は、支持部材77に接続されている。昇降モータ78が駆動すると、支持部材77が昇降する。この支持部材77の昇降に伴い、4つのキャップ71は同時にまとめて昇降する。そして、4つのキャップ71が昇降することで、ノズル面45に対してキャップ71をまとめて装着させたり、離間させたりすることができる。
【0035】
吸引ポンプ73は、支持部材77の内部を通じてキャップ71に接続されている。吸引ポンプ73は、キャップ71内のインクや、キャップ71に装着されたインクヘッド40内のインクを吸引する。吸引ポンプ73の種類は特に限定されないが、例えばチューブポンプである。吸引ポンプ73は、チューブ79の途中部分に設けられている。チューブ79の一端は、廃液タンク(図示せず)に接続されており、吸引ポンプ73に吸引されたインクなどは、チューブ79を介して廃液タンクに排出される。
【0036】
本実施形態では、図1に示すように、プリンタ本体11の右端部に、操作パネル80が設けられている。操作パネル80には、機器状態を表示する表示画面81と、ユーザによって操作される入力キー82などが設けられている。
【0037】
次に、制御装置90について説明する。制御装置90は、印刷に関する制御、インクヘッド40のクリーニングの制御、およびフィルタ58の交換の適否の判定などを行う装置である。なお、本実施形態における制御装置90は、本発明におけるフィルタ交換判定装置を兼ねている。制御装置90の構成は特に限定されない。制御装置90は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されない。制御装置90は、例えばI/Fと、CPUと、ROMと、RAMと、を備えている。制御装置90は、プリンタ本体11の内部に設けられている。ただし、制御装置90は、プリンタ本体11の外部に設置されたコンピュータなどで実現されてもよい。この場合、制御装置90は、有線または無線を介してプリンタ10の制御基板(図示せず)と通信可能に接続されている。図6は、制御装置90のブロック図である。図6に示すように、制御装置90は、クリーニング部91と、圧力判定部92と、記憶部93と、パターン計数部94と、交換判定部95と、を備えている。クリーニング部91は、キャッピング制御部91aと、吸引制御部91bと、ワイピング制御部91cと、フラッシング制御部91dと、を備えている。交換判定部95は、本通知部95aと事前通知部95bとを備えている。上述した制御装置90の各部91~95は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば、制御装置90の各部91~95は、1つまたは複数のプロセッサによって実現されるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。なお、制御装置90は、フィルタ交換判定装置を兼ねていなくてもよい。フィルタ交換判定装置は、例えば制御装置90と異なるマイクロコンピュータなどであってもよい。
【0038】
キャッピング制御部91aは、図5に示すインクヘッド40にキャップ71を脱着させるキャッピング処理を行う。インクヘッド40にキャップ71を装着させるとき、キャッピング制御部91aは、昇降装置72を制御する。キャッピング制御部91aは、キャップ71の真上にインクヘッド40が配置されるように、ヘッド移動機構30を制御する。その後、キャッピング制御部91aは、キャップ71を上昇させるように昇降装置72の昇降モータ78を駆動させる。このとき、インクヘッド40に、4つのキャップ71が装着される。インクヘッド40からキャップ71を離間させるとき、キャッピング制御部91aは、昇降装置72を制御する。キャッピング制御部91aは、キャップ71を下降させるように、昇降装置72の昇降モータ78を駆動させる。このことにより、インクヘッド40からキャップ71が離間される。
【0039】
吸引制御部91bは、インクヘッド40にキャップ71が装着された状態にて吸引ポンプ73を駆動する吸引処理を実行する。吸引処理を実行することにより、インク流路53、ダンパー57およびインクヘッド40の内部を負圧にし、インクを廃液タンクに流す。このとき、インク流路53、ダンパー57、インクヘッド40の内部のインクを入れ替えることができる。また、インク流路53、ダンパー57、インクヘッド40の内部のエアを排出することができる。
【0040】
ワイピング制御部91cは、ワイピング機構140およびワイパー141を駆動することにより、ワイピング処理を実行する。ワイピング処理は、ワイパー141によって、ノズル面45をワイピングする処理である。ここでは、ワイピング制御部91cは、ワイピング機構(図4参照)の上方にインクヘッド40が移動するように、ヘッド移動機構30を制御する。そして、インクヘッド40がワイピング機構140の上方を通過するとき、ワイピング制御部91cは、ワイパー141を回転させ、ワイパー141でインクヘッド40のノズル面45をワイピングする。ここでは、4つのインクヘッド40をワイピングする順番は、限定されない。
【0041】
フラッシング制御部91dは、インクヘッド40を制御することにより、ノズル46からキャップ71にインクを吐出するフラッシング処理を実行する。図5に示すように、インクヘッド40からキャップ71を離間した状態で、インクヘッド40からインクをキャップ71に吐き出すことにより、ノズル46付近で混色したインクや増粘したインクを吐き出すことができる。
【0042】
ここで、以下の説明では、キャッピング制御部91aによるキャップ71の装着、吸引制御部91bによる吸引処理、キャッピング制御部91aによるキャップ71の取り外し、ワイピング制御部91cによるワイピング処理およびフラッシング制御部91dによるフラッシング処理の一連の処理を実行することを「クリーニングを実行する」と称することとする。ただし、クリーニングは、これらの処理の一部を実行するものであってもよい。
【0043】
図6に示す圧力判定部92は、圧力センサ59の測定値に基づいて、予め定められた異常の状態であるか否かを判定する。本実施形態では、圧力センサ59の測定値が第1閾値V1よりも小さい場合、圧力判定部92は、「異常」であると判定する。すなわち、本実施形態において、「異常」とは、測定したインクの圧力が第1閾値V1よりも小さい状態を指す。圧力センサ59の測定値が第1閾値V1以上の場合、圧力判定部92は、「正常」であると判定する。すなわち、本実施形態において、「正常」とは、測定したインクの圧力が第1閾値V1以上の状態を指す。
【0044】
記憶部93は、圧力判定部92による判定結果が時系列に並んだ時系列パターンPT(図7参照)を記憶する。詳細は後述するが、本実施形態では、記憶部93は、プリンタ10のメンテナンスにおける循環動作中の圧力判定部92の判定を記憶する。本実施形態では、1セットのメンテナンス中に循環動作は最大3回実行される。循環動作中における圧力判定部92の判定が3回とも「異常」になるか、循環動作が3回行われるまでに「正常」となれば、1セットのメンテナンスにおける循環動作を終了する。1セットのメンテナンスとは、プリンタ10において、上述した循環動作中における圧力の判定やクリーニングを行う一連の動作である。メンテナンスは、例えば、プリンタ10による印刷が行われることが少ない夜間などに実行される。図7は、メンテナンスが複数回実行されたときに記憶部93に記憶されている時系列パターンPTの一部を図示した表である。図7には、n-1セット目、nセット目およびn+1セット目におけるメンテナンスの結果が図示されている(nは、2以上の自然数)。図8は、圧力判定部92の判定結果の順列の一覧である。本実施形態では、結果R1~結果R4のいずれかが、1セットのメンテナンスにおける圧力判定部92の判定結果となる。記憶部93は、メンテナンス中に最大3回行われる循環動作が完了すると、結果R1~結果R4のいずれか一つの結果を記憶する。図7において、n-1セット目、nセット目およびn+1セット目の結果は、全て図8に示す結果R2である。なお、1セットのメンテナンス中に循環動作を行う回数は、最大3回に限定されない。
【0045】
図6に示すパターン計数部94は、圧力判定部92による「異常」の判定が第1所定回数続いた後に「正常」の判定がなされるパターンである第1パターンが時系列パターンPTに出現した回数を計数する。パターン計数部94は、カウンタを有している。本実施形態では、第1所定回数は、「2回」であるものとする。したがって、図8に示す結果R2が第1パターンに該当する。記憶部93に記憶された時系列パターンPTに結果R2が出現したとき、パターン計数部94は、カウンタの数値に「1」を加算して保存する。なお、第1所定回数は、「2回」に限定されない。また、パターン計数部94は、「異常」の判定が第2所定回数続いた後に「正常」の判定がなされるパターンである第2パターンが記憶部に出現したとき、計数している回数を初期化する。ここで、「初期化」とは、計数している回数を「0回」にすることである。第2所定回数は、第1所定回数よりも少ない回数である。本実施形態では、第2所定回数は、「0回または1回」、である。したがって、図8において、「異常」の結果が0回または1回である、結果R3および結果R4が第2パターンに該当する。記憶部93に記憶された時系列パターンPTに結果R3または結果R4が出現したとき、パターン計数部94は、カウンタの数値を「0」へと初期化して保存する。なお、第2所定回数は、「0回または1回」に限定されない。
【0046】
図6に示す交換判定部95は、記憶部93に記憶されている時系列パターンPTに基づいてフィルタ58の交換の適否を判定する。本実施形態では、交換判定部95は、本通知部95aと事前通知部95bとを備えている。本通知部95aは、フィルタ58の交換を指示する信号を出力する。事前通知部95bは、フィルタ58の交換を促す信号を出力する。本通知部95aは、記憶部93に記憶されている時系列パターンPTに異常パターンが出現したとき、信号を出力する。ここで、本実施形態では、異常パターンとは、1セットのメンテナンスにおいて、圧力判定部92による判定が3回続けて「異常」となるパターンを指すものとする。すなわち、図8における結果R1が時系列パターンPTに出現したとき、本通知部95aは信号を出力する。事前通知部95bは、時系列パターンPTに異常パターンが出現する前に、パターン計数部94により計数された回数が事前通知回数に達すると、信号を出力する。本実施形態では、事前通知回数は「3」であるものとする。したがって、パターン計数部94のカウンタの数値が「3」に達すると、事前通知部95bは信号を出力する。図7に示すように、n-1セット目、nセット目およびn+1セット目の結果がすべて結果R2であるとき、パターン計数部94のカウンタが「3」となり、事前通知回数に達する。したがって、このとき、事前通知部95bは、信号を出力する。本通知部95aまたは事前通知部95bが信号を出力したとき、例えば、それぞれの信号に対応したメッセージが操作パネル80の表示画面81に表示される。
【0047】
以上、本実施形態に係るプリンタ10の構成について説明した。次に、フィルタ58の交換の適否を判定するプロセスについて説明する。図9は、フィルタ58の交換の適否を判定するプロセスを示すフローチャートである。以下のフローチャートにおいて、圧力判定部92による判定は、循環動作が行われているときの圧力センサ59の測定値により判定される。上述したように、循環動作は、プリンタ10のメンテナンス中などに行われる動作である。したがって、フィルタ58の交換の適否の判定は、メンテナンス中に行われる。ただし、フィルタ58の交換の適否の判定は、メンテナンス以外のときに行われてもよい。フローチャートの前後において、クリーニング以外のメンテナンスが実行されてもよい。
【0048】
ステップS101において、クリーニング部91の備えるキャッピング制御部91a、吸引制御部91b、ワイピング制御部91cおよびフラッシング制御部91dがクリーニングを実行する。クリーニングが実行された後に、循環動作が実行される。すなわち、第1開閉弁54を閉鎖し、かつ第2開閉弁55を開放した状態において、送液ポンプ56が駆動される。循環動作が実行されているときに、圧力センサ59が循環流路53cを流れるインクの圧力を測定する。ただし、ステップS101において、クリーニング部91によるクリーニングを実行されずにインクの圧力の測定が行われてもよい。
【0049】
ステップS102において、圧力判定部92は、圧力センサ59の測定値に基づいて、「異常」であるか、「正常」であるかを判定する。循環動作が実行されているとき、フィルタ58に目詰まりが生じていると、循環流路53cの圧力が下降する。圧力センサ59の測定値が第1閾値V1よりも小さくなると、圧力判定部92は、「異常」であると判定する。フィルタ58に目詰まりが発生していない場合、吐出流路53bおよび循環流路53cは、同圧となる。第1閾値V1は、このときの圧力よりも小さい値に設定されている。フィルタ58に目詰まりが発生していない場合、圧力センサ59の測定値が第1閾値V1以上となり、圧力判定部92は、圧力が「正常」であると判定する。圧力判定部92の判定が「異常」である場合、ステップS103に進む。圧力判定部92の判定が「正常」である場合、ステップS107に進む。圧力判定部92の判定結果は、記憶部93に保存される。例えば、nセット目のメンテナンスの実行中である場合、ステップS102の判定結果は、図8に示すnセット目の1回目の判定結果である。
【0050】
ステップS103およびステップS104において、プリンタ10は、ステップS101およびステップS102と同様にして、再度クリーニングおよび循環動作を順に実行し、圧力センサ59は、循環流路53cを流れるインクの圧力を測定する。ステップS104において、圧力判定部92の判定が「異常」である場合、ステップS105に進む。圧力判定部92の判定が「正常」である場合、ステップS107に進む。ステップS104における判定結果は、nセット目の2回目の結果である。ただし、ステップS103において、クリーニング部91によるクリーニングを実行されずにインクの圧力の測定が行われてもよい。
【0051】
ステップS105およびステップS106において、プリンタ10は、ステップS101およびステップS102と同様にして、再度クリーニングおよび循環動作を順に実行し、圧力センサ59は、循環流路53cを流れるインクの圧力を測定する。ステップS106において、圧力判定部92の判定が「異常」である場合、ステップS108に進む。圧力判定部92の判定が「正常」である場合、ステップS109に進む。ステップS106における判定結果は、nセット目の3回目の結果である。ただし、ステップS105において、クリーニング部91によるクリーニングを実行されずにインクの圧力の測定が行われてもよい。
【0052】
ステップS107において、パターン計数部94は、カウンタの数値を「0」へと初期化して保存する。ステップS102において、圧力判定部92の判定が「正常」だった場合、記憶部93の時系列パターンPTには、図8に示す結果R4が出現する。ステップS104において、圧力判定部92の判定が「正常」だった場合、時系列パターンには、結果R3が出現する。したがって、記憶部93の時系列パターンPTに第2パターンが出現するため、パターン計数部94は、カウンタの数値を「0」へと初期化する。
【0053】
ステップS108において、記憶部93の時系列パターンPTに異常パターンが出現する。ステップS101~S106において、3回循環動作を行い、3回とも圧力判定部92の判定が「異常」となっている。したがって、時系列パターンPTには、図8に示す結果R1が出現する。よって、時系列パターンPTには異常パターンが出現する。このとき、本通知部95aがフィルタ58の交換を指示する信号を出力する。
【0054】
ステップS109において、パターン計数部94は、カウンタに「1」を加算する。ステップS102およびステップS104において、圧力判定部92が「異常」と判定し、かつステップS106において、圧力判定部92が「正常」と判定している。したがって、時系列パターンPTには、図8に示す結果R2が出現する。すなわち、時系列パターンPTに第1パターンが出現する。よって、パターン計数部94は、カウンタに「1」を加算して保存する。
【0055】
ステップS110において、交換判定部95の事前通知部95bは、パターン計数部94のカウンタの数値が事前通知回数である「3」か否かを判定する。パターン計数部94のカウンタの数値が「3」である場合には、ステップS111に進む。パターン計数部94のカウンタの数値が「3」でない場合には、フローを終了する。
【0056】
ステップS111おいて、記憶部93の時系列パターンPTに事前通知パターンが出現している。本実施形態では、事前通知パターンは、図8に示す結果R2が3回含まれるパターンを指すものとする。したがって、このとき、事前通知部95bがフィルタ58の交換を促す信号を出力する。
【0057】
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、インク供給ユニット52の備える送液ポンプ56により、インクがフィルタ58を通り、インクヘッド40にインクが供給される。このとき圧力センサ59が循環流路53cのインクの圧力を測定している。圧力判定部92は、圧力センサ59の測定値に基づいて、「異常」か「正常」かを判定する。記憶部93には時系列パターンPTが記憶されている。交換判定部95は時系列パターンPTに基づいてフィルタ58の交換の適否を判定している。ここで、フィルタ58に目詰まりが発生している場合には、複数回に亘って繰り返し「異常」と判定される傾向がある。一方、測定したインクの圧力に基づいて偶発的に「異常」となっている場合等では、「異常」の判定が繰り返されにくい傾向がある。交換判定部95は、圧力センサ59の測定値の結果を複数確認することにより、フィルタ58の交換の適否を判定している。したがって、測定したインクの圧力に基づいて偶発的に「異常」となっている場合等に、フィルタ58の交換を指示する信号が出力されることが抑制されている。このことにより、より適切にフィルタ58の交換のタイミングを判定することができる。
【0058】
上述した実施形態によると、交換判定部95は、本通知部95aと事前通知部95bとを備えている。本通知部95aは、時系列パターンPTに異常パターンが出現したときに、フィルタの交換を指示する信号を出力する。したがって、本通知部95aが信号を出力したとき、作業者は、フィルタ58の交換が必要な状態となっていることを把握することができる。事前通知部95bは、時系列パターンPTに異常パターンが出現する前に事前通知パターンが出現すると、フィルタ58の交換を促す信号を出力する。このことにより、作業者は、フィルタ58の交換時期が近付いていることを確認することができる。本通知部95aが信号を出力した場合、作業者は、フィルタ58を交換するためにプリンタ10を停止させるので、フィルタ58の交換が完了するまでプリンタ10を動作させることができない。しかしながら、本実施形態によれば、作業者は、事前通知部95bの信号を確認することにより、プリンタ10の動作を継続したまま、フィルタ58の交換の準備を進めることができる。作業者は、本通知部95aが信号を出力する前に、都合のよいタイミングでフィルタ58を交換することができるため、プリンタ10を停止させる時間を従来よりも少なくすることができる。
【0059】
上述した実施形態によると、圧力センサ59は、インク流路53のうちフィルタ58よりもインクヘッド40側に配置されている。圧力判定部92は、圧力センサ59の測定値が第1閾値V1よりも小さいときに、「異常」であると判定する。圧力センサ59は、フィルタ58よりも下流側にあるため、循環動作を行なったときに、フィルタ58に目詰まりが発生すると、フィルタ58の下流側の圧力が下降する。したがって、圧力センサ59の測定値が下降する。このように、圧力判定部92の判定の閾値として、第1閾値V1のみを定めればよく、判定を簡易化することができる。
【0060】
上述した実施形態によると、パターン計数部94は、圧力判定部92による判定結果のうち、「異常」の判定が第1所定回数続いた後に「正常」の判定がなされるパターンである第1パターンが出現した回数を計数する。パターン計数部94の有するカウンタの数値が事前通知回数である「3」に達すると、交換判定部95の事前通知部95bがフィルタ58の交換を促す信号を出力する。本実施形態における第1パターンでは、圧力判定部92が2回続けて「異常」と判定している。したがって、フィルタ58に目詰まりが発生している状態である可能性が比較的高い。さらに、パターン計数部94のカウンタの数値が「3」となっているため、時系列パターンPTに第1パターンが少なくとも3回出現している。したがって、「異常」の判定の原因が、インク流路53へのエアの混入などによる一時的な圧力の上昇である可能性が比較的低い。したがって、事前通知部95bが信号を出力することにより、作業者は、フィルタ58の交換のタイミングが比較的近いことを認識することができる。
【0061】
上述した実施形態によると、パターン計数部94は、第2パターンが記憶部93の時系列パターンPTに出現した場合、カウンタの数値を「0」へと初期化している。例えば、圧力判定部92における判定結果が図8における結果R3の場合、「異常」の判定が出た後に「正常」の判定となっている。したがって、例えば、偶発的に発生していたインク流路53へのエアの混入が、クリーニング等により解消された可能性が考えられる。このことにより、測定したインクの圧力が一時的に「異常」となっている場合に、フィルタ58の交換を指示する信号が出力されることが抑制される。
【0062】
上述した実施形態によると、インク供給ユニット52は、送液ポンプ56と循環流路53cとを備えている。したがって、循環動作の実行中に圧力センサ59による測定および圧力判定部92による判定を行うことができる。例えば、インクヘッド40からインクを吐出しているときに、吐出流路53bの圧力を測定すると、圧力の測定値が不安定になる。したがって、圧力判定部92が正確に判定を行えない可能性がある。しかしながら、循環動作は、吐出流路53bと循環流路53cとの閉じた流路において、送液ポンプ56を用いてインクを循環させるため、インクの圧力が比較的安定しやすい。したがって、循環流路53cを使用して循環動作を行いながら圧力を測定することにより、圧力判定部92の判定について、安定した判定結果を得ることができる。したがって、圧力判定部92の判定の精度を比較的高くすることができる。
【0063】
上述した実施形態によると、圧力センサ59は、循環流路53cに備えられている。ここで、インクが圧力センサ59を通過するとき、インクの圧力損失が発生する場合がある。圧力センサ59が吐出流路53bに設けられている場合、印刷中にインクが圧力センサ59を通過することとなる。したがって、印刷時のインクの圧力を所望の圧力に制御することが困難となる虞がある。インクの圧力を所望の圧力に制御できないと、インクの吐出が所望の通りに行われず、印刷の画質を担保できない可能性がある。本実施形態のように、圧力センサ59が循環流路53cに設けられていることにより、印刷中にインクが圧力センサ59を通過しない。このことにより、印刷中においてインクの圧力損失が発生することを抑制でき、印刷の画質を担保することができる。
【0064】
以上、本発明における好適な一実施形態について説明した。しかし、本発明のインクジェットプリンタは、上述した実施形態に限定されない。
【0065】
上述した実施形態では、圧力センサ59がインク流路53のうちフィルタ58よりもインクヘッド40側の圧力を測定していたが、これに限定されない。図10に示すように、圧力検出装置は、フィルタ58よりもインクタンク51側を測定する圧力センサ59Aであってもよい。このとき、圧力判定部92は、圧力センサ59Aの測定値が第2閾値V2よりも大きいときに、「異常」であると判定する。インク流路53のうちフィルタ58よりもインクタンク51側は、フィルタ58に目詰まりが発生していた場合、圧力が上昇する。したがって、圧力判定部92の判定の閾値として第2閾値V2のみを定めればよい。よって、上述した実施形態と同様に、判定を簡易化することができる。
【0066】
上述した実施形態では、圧力センサ59は、インク流路53のうちフィルタ58よりもインクヘッド40側の圧力を測定していたが、これに限定されない。図11に示すように、圧力検出装置は、フィルタ58よりもインクヘッド40側と、フィルタ58よりもインクタンク51側と、の差圧を測定する圧力センサ59Bであってもよい。このとき、圧力判定部92は、圧力センサ59Bの測定値が第3閾値V3よりも大きいときに、「異常」であると判定する。フィルタ58の上流側、またはフィルタ58の下流側のみの圧力を測定する場合、フィルタの目詰まりのみならず、例えば、インク流路53の詰まりや送液ポンプ56の故障等により、圧力判定部92が「異常」と判定する可能性がある。しかしながら、圧力センサ59Bがフィルタ58の上流側と下流側との差圧を測定する場合、圧力判定部92の判定が「異常」となる要因は、フィルタ58のみとすることができる。したがって、より正確にフィルタ58の目詰まりの有無の判断を行うことができる。
【0067】
上述した実施形態では、パターン計数部94は、「異常」の判定が第2所定回数続いた後に「正常」の判定がなされるパターンである第2パターンが時系列パターンPTに出現したとき、計数している回数を初期化していたがこれに限定されない。パターン計数部94は、時系列パターンPTに第2パターンが出現したとき、カウンタの数値を所定の数だけ減算してもよい。図12は、このときのフィルタ58の交換の適否を判定するプロセスを示すフローチャートである。図12において、ステップS201~S206およびステップS208~S211は、図9におけるステップS101~S106およびステップS108~S111と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0068】
ステップS207において、パターン計数部94は、カウンタの数値を「1」減算して保存する。なお、減算する数値は、「1」以外の数値であってもよい。また、カウンタの数値が「0」のときは、時系列パターンPTに第2パターンが出現しても、カウンタの数値を減算しないように設定されていてもよい。このような場合も、上述した実施形態と同様に、測定したインクの圧力が一時的に「異常」となっている場合にフィルタ58の交換を指示する信号が出力されることが抑制される。
【0069】
上述した実施形態では、圧力判定部92は、第1閾値V1、第2閾値V2および第3閾値のいずれか一つのみにより、予め定められた異常の状態であるか否かを判定していたが、これに限定されない。圧力判定部92は、判定の閾値となる上限値と下限値とを予め定めておき、測定された圧力が当該上限値と当該下限値との間であるか否かにより、判定を行うものであってもよい。
【0070】
ここで開示される技術は、様々なタイプのプリンタに適用することができる。上述した実施形態で示したRoll-to-Rollタイプのプリンタ10の他、例えば、記録媒体を台の上に載置し、台を副走査方向Xに搬送し印刷する、所謂、フラットベッドタイプのプリンタにも同様に適用することができる。また、記録媒体を台の上に載置し、台に対してキャリッジを主走査方向Y及び副走査方向Xに移動させて印刷する、所謂、ガントリータイプのプリンタにも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
10 プリンタ(インクジェットプリンタ)
40 インクヘッド
51 インクタンク
52 インク供給ユニット
53 インク流路
58 フィルタ
59 圧力センサ(圧力検出装置)
90 制御装置(フィルタ交換判定装置)
92 圧力判定部
93 記憶部
95 交換判定部
PT 時系列パターン



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12