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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140138
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】発泡性スチレン系樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
C08J9/16 CET
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051143
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根岩 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】金鹿 渉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】丸橋 正太郎
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA32
4F074AB05
4F074AC02
4F074AD03
4F074AD16
4F074AD19
4F074AG03
4F074AG10
4F074AG20
4F074BA38
4F074BA39
4F074BA95
4F074BC15
4F074CA35
4F074CA38
4F074CA49
4F074DA02
4F074DA07
4F074DA24
4F074DA32
4F074DA33
4F074DA34
(57)【要約】
【課題】耐熱性能に優れ、且つ高発泡倍率のスチレン系樹脂発泡成形体を得ることが可能な、発泡性スチレン系樹脂粒子を提供すること。
【解決手段】本開示に係る発泡性スチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂及び炭素系輻射伝熱抑制剤を含むスチレン系樹脂組成物並びに発泡剤を含む発泡性スチレン系樹脂粒子であって、前記スチレン系樹脂の200℃、荷重5.0kgにおけるメルトフローレートが7.5~15.5g/10分であり、前記発泡剤がイソブタンを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂及び炭素系輻射伝熱抑制剤を含むスチレン系樹脂組成物並びに発泡剤を含む発泡性スチレン系樹脂粒子であって、
前記スチレン系樹脂の200℃、荷重5.0kgにおけるメルトフローレートが7.5~15.5g/10分であり、前記発泡剤がイソブタンを含む、発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
前記発泡性スチレン系樹脂粒子の見かけ密度が950kg/m超1200kg/m以下である、請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
前記スチレン系樹脂組成物が難燃剤を含み、前記スチレン系樹脂組成物100重量%中、難燃剤が1.0重量%超6.0重量%以下である、請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
前記スチレン系樹脂組成物100重量%中、炭素系輻射伝熱抑制剤が2重量%超20重量%以下である、請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項5】
前記炭素系輻射伝熱抑制剤がグラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン及び活性炭から選択される少なくとも1種の炭素系輻射伝熱抑制剤である、請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項6】
前記発泡性スチレン系樹脂粒子の発泡剤量が、前記スチレン系樹脂組成物100重量部に対して、1.0重量部超8.0重量部以下である、請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項7】
前記発泡剤100重量%中、イソブタンが15~90重量%である、請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項8】
前記発泡剤が炭素数5~6の飽和炭化水素を含む、請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項9】
前記発泡剤がペンタンを含む、請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項10】
請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡してなるスチレン系樹脂の予備発泡粒子。
【請求項11】
請求項10に記載のスチレン系樹脂の予備発泡粒子を成形してなるスチレン系樹脂の発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性スチレン系樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂発泡体は、軽量性、断熱性、及び緩衝性等を有するバランスに優れた発泡体であり、従来から食品容器箱、保冷箱、緩衝材、及び住宅等の断熱材として広く利用されている。
【0003】
中でも、近年、地球温暖化等の諸問題に関連し、住宅等建築物の断熱性向上による省エネルギー化が志向されつつあり、発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて得られるスチレン系樹脂発泡成形体の需要拡大が期待される。このため、当該スチレン系樹脂発泡体の高発泡倍率による軽量化や断熱性の向上について種々の検討がなされている。
【0004】
例えば特許文献1には、ビーズ発泡成形体の形成に用いられ、スチレン系樹脂と発泡剤とを含有し、該発泡剤としてペンタンが含有されている発泡性スチレン系樹脂粒子であって、前記発泡剤として更にブタンが含有されており、該発泡剤が前記スチレン系樹脂100質量部に対して2質量部以上10質量部以下となる割合で含有され、前記ペンタンと前記ブタンとが20:80~80:20の質量割合で含有されており、且つ、発泡倍率が1.05倍以上1.25倍以下となるように内部に複数の気泡が形成されていることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-136688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された発泡性スチレン系樹脂粒子は、炭素系輻射伝熱抑制剤が配合されていなかった。また、本発明者らの検討によると炭素系輻射伝熱抑制剤を配合することにより断熱性が向上する一方で、発泡性能が低下することが確認されており、炭素系輻射伝熱抑制剤が配合されていない発泡性スチレン系樹脂粒子に炭素系輻射伝熱抑制剤を適用すると、高発泡倍率で発泡成形体を得ることが困難と考えられていた。
【0007】
本発明者らは、耐熱性能に優れ、且つ高発泡倍率のスチレン系樹脂発泡成形体を得ることが可能な、発泡性スチレン系樹脂粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の態様例は、以下の通りに記載される。
【0009】
[1] スチレン系樹脂及び炭素系輻射伝熱抑制剤を含むスチレン系樹脂組成物並びに発泡剤を含む発泡性スチレン系樹脂粒子であって、
前記スチレン系樹脂の200℃、荷重5.0kgにおけるメルトフローレートが7.5~15.5g/10分であり、前記発泡剤がイソブタンを含む、発泡性スチレン系樹脂粒子。
[2] 前記発泡性スチレン系樹脂粒子の見かけ密度が950kg/m超1200kg/m以下である、[1]に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
[3] 前記スチレン系樹脂組成物が難燃剤を含み、前記スチレン系樹脂組成物100重量%中、難燃剤が1.0重量%超6.0重量%以下である、[1]又は[2]に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
[4] 前記スチレン系樹脂組成物100重量%中、炭素系輻射伝熱抑制剤が2重量%超20重量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
[5] 前記炭素系輻射伝熱抑制剤がグラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン及び活性炭から選択される少なくとも1種の炭素系輻射伝熱抑制剤である、[1]~[4]のいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
[6] 前記発泡性スチレン系樹脂粒子の発泡剤量が、前記スチレン系樹脂組成物100重量部に対して、1.0重量部超8.0重量部以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
[7] 前記発泡剤100重量%中、イソブタンが15~90重量%である、[1]~[6]のいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
[8] 前記発泡剤が炭素数5~6の飽和炭化水素を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子
[9] 前記発泡剤がペンタンを含む、[1]~[8]のいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡してなるスチレン系樹脂の予備発泡粒子。
[11] [10]に記載のスチレン系樹脂の予備発泡粒子を成形してなるスチレン系樹脂の発泡成形体。
【発明の効果】
【0010】
本開示の発泡性スチレン系樹脂粒子は、耐熱性能に優れ、且つ高発泡倍率のスチレン系樹脂発泡成形体を得ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。本実施形態に係る発泡性スチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂及び炭素系輻射伝熱抑制剤を含むスチレン系樹脂組成物並びに発泡剤を含む発泡性スチレン系樹脂粒子であって、前記スチレン系樹脂の200℃、荷重5.0kgにおけるメルトフローレートが7.5~15.5g/10分であり、前記発泡剤がイソブタンを含む。本開示の発泡性スチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)を上述の範囲に制御し、且つ発泡剤としてイソブタンを含むことにより、耐熱性能に優れ、且つ高発泡倍率のスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができる。また、得られるスチレン系樹脂発泡成形体は、成形性に優れる。本実施形態に係る発泡性スチレン系樹脂粒子の一態様では、従来よりも相対的に発泡剤が少ない場合でも高発泡倍率のスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができる。発泡剤量を減らすことは、VOC(揮発性有機化合物)(Volatile Organic Compounds)削減等の環境負荷低減効果、コスト削減効果をもたらす。
【0012】
(スチレン系樹脂)
スチレン系樹脂としては、スチレン単独重合体(スチレンホモポリマー)であっても、スチレン共重合体(スチレンコポリマー)であってもよい。スチレン共重合体としては、スチレンと、スチレンと共重合可能な他の単量体又はその誘導体とが共重合したスチレン共重合体を用いることができる。スチレン系共重合体が有するスチレン由来の繰り返し単位は、スチレン系共重合体100重量%中、60重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましい。スチレン系樹脂としては、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。但し、本実施形態においては、スチレン系樹脂としては、後述する臭素化スチレン・ブタジエン共重合体は通常除かれる。
【0013】
スチレンと共重合可能な他の単量体又はその誘導体(以下、「他の単量体又はその誘導体」と称することがある。)としては、例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、及びトリクロロスチレン等のスチレン誘導体;ジビニルベンゼン等の多官能性ビニル化合物;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、及びメタクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;ブタジエン等のジエン系化合物又はその誘導体;無水マレイン酸、及び無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物;N-メチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-(2-クロロフェニル)マレイミド、N-(4-ブロモフェニル)マレイミド、及びN-(1-ナフチル)マレイミド等のN-アルキル置換マレイミド化合物等があげられる。他の単量体又はその誘導体は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
前記スチレン系樹脂は、本発明に係る効果を損なわない範囲で、他の単量体又はその誘導体の単独重合体若しくはそれらの共重合体がブレンドされていてもよい。
【0015】
前記スチレン系樹脂には、耐衝撃吸収性や耐熱性の観点から、例えば、ジエン系ゴム強化ポリスチレン、アクリル系ゴム強化ポリスチレン、及び/又は、ポリフェニレンエーテル系樹脂等がブレンドされていてもよい。
【0016】
前記スチレン系樹脂としては、比較的安価で、特殊な方法を用いずに低圧の水蒸気等で発泡成形ができ、断熱性、難燃性、緩衝性のバランスに優れることから、スチレンホモポリマー、スチレン-アクリロニトリル共重合体、及びスチレン-アクリル酸ブチル共重合体から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、スチレンホモポリマーを含むことがより好ましい。
【0017】
前記スチレン系樹脂は、200℃、荷重5.0kgにおけるメルトフローレートが7.5~15.5g/10分であり、好ましくは8.0~15.0g/10分であり、より好ましくは8.5~14.5g/10分である。なお、メルトフローレートはMFRとも記す。メルトフローレートが前記範囲内であると、優れた成形性を有する発泡性樹脂粒子を得ることが可能であり、耐熱性能に優れ、且つ高発泡倍率のスチレン系樹脂発泡成形体を得ることが可能である。本開示においてスチレン系樹脂が、2種以上の樹脂(重合体)である場合には、スチレン系樹脂のMFRとは、各樹脂のMFRではなく、スチレン系樹脂全体のMFRを意味する。すなわち2種以上の樹脂を用いる場合には、スチレン系樹脂組成物に含まれる樹脂を、スチレン系樹脂組成物に含まれる割合で溶融混練したペレットを調製し、該ペレットのMFRを測定することにより、スチレン系樹脂組成物に含まれるスチレン樹脂のMFRを知ることができる。なお、本発明におけるMFRは、JIS K7210に準拠し測定される値である。MFRは後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0018】
スチレン系樹脂としては、2種類のスチレン系樹脂を用いることが好ましい態様の一つである。ある態様においては、スチレン系樹脂として2種類のスチレン系樹脂を用い、少なくとも一方のスチレン系樹脂のMFRが7.5~15.5g/10分の範囲外である。ある好ましい態様としては、スチレン系樹脂として2種類のスチレン系樹脂を用い、一方のスチレン系樹脂のMFRが7.5g/10分未満であり、他方のスチレン系樹脂のMFRが15.5g/10分超である。スチレン系樹脂として、2種類のスチレン系樹脂を用いる場合には、一方のスチレン系樹脂と、他方のスチレン系樹脂とが、99:1~1:99(重量比)で含まれることが好ましい。
【0019】
ある好ましい態様においては、スチレン系樹脂が、MFRが7.5g/10分未満、好ましくは1.0~7.4g/10分、より好ましくは2.0~7.3g/10分、更に好ましくは3.0~7.2g/10分、特に好ましくは5.5~7.1g/10分のスチレン系樹脂と、MFRが15.5g/10分超、好ましくは15.6~25g/10分、より好ましくは16~22g/10分のスチレン系樹脂である。この時、MFRが7.5g/10分未満のスチレン系樹脂:MFRが15.5g/10分超のスチレン系樹脂が20:80~90:10(重量比)であることが好ましい。2種類のスチレン系樹脂を用いると、MFRの調整が容易であり、優れた成形性を有する発泡性樹脂粒子を容易に得ることが可能である。
【0020】
本発明において、スチレン系樹脂の含有量は特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物100重量%において75~99.9重量%であることが好ましく、80~95重量%がより好ましい。
【0021】
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、スチレン系樹脂を主成分としながら、他の樹脂を併用してもよい。他の樹脂としては、上述の他の単量体又はその誘導体の単独重合体若しくはそれらの共重合体、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。他の樹脂の含有量は特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物100重量%において20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
【0022】
(炭素系輻射伝熱抑制剤)
発泡性スチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂組成物が炭素系輻射伝熱抑制剤を含むため、高い断熱性を有するスチレン系樹脂発泡成形体が得られる。ここで、炭素系輻射伝熱抑制剤とは、近赤外又は赤外領域(例えば、800~3000nm程度の波長域)の光を反射、散乱又は吸収する特性を有する炭素材料をいう。炭素系輻射伝熱抑制剤としては、例えば、黒鉛(グラファイト)、グラフェン、カーボンブラック、膨張黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等が挙げられる。前記炭素系輻射伝熱抑制剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。前記炭素系輻射伝熱抑制剤としては、スチレン系樹脂中への分散性とコストの点から、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン及び活性炭から選択される少なくとも1種の炭素系輻射伝熱抑制剤であることが好ましく、グラファイトであることがより好ましい。
【0023】
グラファイトとしては、例えば、鱗片状黒鉛、土状黒鉛、球状黒鉛、人造黒鉛等が挙げられる。なお、本明細書において、「鱗片状」という用語は、鱗状、薄片状又は板状のものをも包含する。前記黒鉛は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、輻射伝熱抑制効果が高い点から、鱗片状黒鉛又は鱗片状黒鉛を主成分とする黒鉛混合物が好ましく、鱗片状黒鉛がより好ましい。
【0024】
炭素系輻射伝熱抑制剤の平均粒径は1~9μmであることが好ましく、1.5~8μmであることがより好ましく、2~7μmであることが更に好ましい。炭素系輻射伝熱抑制剤は平均粒径が小さいほど製造コストが高くなる。平均粒径1μm未満の炭素系輻射伝熱抑制剤は粉砕のコストを含む製造コストが高いため、非常に高価であり、発泡性スチレン系樹脂粒子のコストが高くなる傾向がある。一方、平均粒径が9μmを超えると、発泡性スチレン系樹脂粒子から予備発泡粒子及びスチレン系樹脂発泡成形体を製造する際にセル膜が破れやすくなるため、高発泡倍率化が難しくなったり、成形容易性が低下したり、スチレン系樹脂発泡成形体の圧縮強度が低下したりする傾向がある。本開示において、炭素系輻射伝熱抑制剤の平均粒径は、JIS Z8825-1に準拠したMie理論に基づくレーザー回折散乱法により粒度分布を測定・解析し、全粒子の体積に対する累積体積が50%になる時の粒径(D50)(レーザー回折散乱法による体積平均粒径)を意味する。
【0025】
また、炭素系輻射伝熱抑制剤の平均粒径が6.0μm以下であれば、成形体の表面美麗性に優れ、より低い熱伝導率、即ちより高い断熱性を得ることができる。
【0026】
炭素系輻射伝熱抑制剤の含有量は特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物100重量%において2重量%超20重量%以下であることが好ましく、3~18重量%であることがより好ましく、4~16重量%であることが更に好ましく、4.5~14重量%であることが特に好ましい。前記範囲内では目的とする発泡倍率に制御しやすいと共に、熱伝導率低減効果等のバランスに優れる傾向があるため好ましい。
【0027】
本発明の効果を損なわない範囲であれば、炭素系輻射伝熱抑制剤の他に、他の輻射伝熱抑制剤を使用してもよい。他の輻射伝熱抑制剤としては、炭素系以外の輻射伝熱抑制剤であれば特に限定されないが、例えば、アルミニウム系化合物、亜鉛系化合物、マグネシウム系化合物、チタン系化合物、熱線反射剤、硫酸金属塩、アンチモン系化合物、金属酸化物、熱線吸収剤、金属粒子等が挙げられる。
【0028】
(発泡剤)
本開示の発泡性スチレン系樹脂粒子は発泡剤を含む。また、発泡剤はイソブタンを含む。前述の特定のスチレン系樹脂を用い、発泡剤の少なくとも一部にイソブタンを含むことにより、耐熱性能に優れ、且つ高発泡倍率のスチレン系樹脂発泡成形体を得ることが可能である。
【0029】
発泡剤としては、イソブタン以外の発泡剤を含んでいてもよい。イソブタン以外の発泡剤としては、特に限定されないが、発泡性と製品ライフのバランスがよく、実際に使用する際に高倍率化しやすい観点から、炭素数3~6の炭化水素(但し、イソブタンを除く)が好ましく、炭素数4~6の炭化水素(但し、イソブタンを除く)がより好ましく、炭素数5~6の炭化水素が更に好ましい。である。発泡剤の炭素数が3以上であると揮発性が低くなり、発泡性スチレン系樹脂粒子にした場合に発泡剤が逸散しにくくなるため、実際に使用する際に発泡工程で発泡剤が十分に残り、十分な発泡力を得ることが可能となり、高倍率化が容易となるため好ましい。また、炭素数が6以下であると、発泡剤の沸点が高すぎないため、予備発泡時の加熱で十分な発泡力を得やすく、高発泡化し易い傾向となる。また、炭化水素としては、飽和炭化水素であることが、発泡力の観点から好ましい。発泡剤としては、炭素数3~6の飽和炭化水素(但し、イソブタンを除く)が好ましく、炭素数4~6の飽和炭化水素(但し、イソブタンを除く)がより好ましく、炭素数5~6の飽和炭化水素が更に好ましい。炭素数3~6の炭化水素(但し、イソブタンを除く)としては、例えばプロパン、ノルマルブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、又はシクロヘキサン等の炭化水素が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。尚、高倍率化の容易性と製品ライフのバランスから、発泡剤としては、イソブタンとイソブタン以外の発泡剤とを用いることが好ましい。発泡剤はペンタンを含むことが好ましい。また、発泡剤はイソブタンと、ノルマルブタン、イソペンタン及びノルマルペンタンからなる群より選択される少なくとも1種の発泡剤とを含有することも好ましい。発泡剤として、イソブタンと、ノルマルペンタン及びイソペンタンからなる群より選択される少なくとも1種の発泡剤とを含有することが特に好ましく、イソブタン、ノルマルペンタン、及びイソペンタンを含有することが一層好ましい。
【0030】
発泡剤中のイソブタン量としては、発泡剤100重量%中、通常は15~90重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは25~70重量%である。発泡剤としてイソブタン、ノルマルペンタン、及びイソペンタンを用いることが好ましい態様であり、該態様ではイソブタンと、ペンタン(ノルマルペンタン、及びイソペンタン)との重量比(イソブタン/ペンタン)が、通常は20/80~90/10であり、好ましくは40/60~70/30であり、より好ましくは50/50~60/40である。また、ノルマルペンタンと、イソペンタンとの重量比(ノルマルペンタン/イソペンタン)としては、例えば30/70~90/10であり、好ましくは50/50~85/15である。前記範囲では発泡性スチレン系樹脂粒子の高発泡性が優れる傾向がある。
【0031】
発泡剤の添加量は、スチレン系樹脂組成物100重量部に対して、1.0重量部超8.0重量部以下であることが好ましく、2.0~7.0重量部であることがより好ましく、3.0~6.0重量部であることが更に好ましく、3.5~5.5重量部であることが特に好ましい。本開示の発泡性スチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂のMFRを上述の範囲に制御し、且つ発泡剤としてイソブタンを含むことにより、従来よりも相対的に発泡剤が少ない場合でも高発泡倍率のスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができる。このためVOC削減等の環境負荷低減効果、コスト削減効果を有する。また、得られるスチレン系樹脂発泡成形体は、成形性に優れるにもかかわらず、耐熱性にも優れる。
【0032】
(難燃剤)
難燃剤としては、特に限定されず、従来からスチレン系樹脂発泡成形体に用いられる難燃剤をいずれも使用できるが、その中でも、難燃性付与効果が高い臭素系難燃剤が好ましい。
【0033】
前記臭素系難燃剤としては、例えば、2,2-ビス[4-(2,3-ジブロモ-2-メチルプロポキシ)-3,5-ジブロモフェニル]プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル))、又は2,2-ビス[4-(2,3-ジブロモプロポキシ)-3,5-ジブロモフェニル]プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル))等の臭素化ビスフェノール系化合物、臭素化スチレン・ブタジエンブロック共重合体、臭素化ランダムスチレン・ブタジエン共重合体、又は臭素化スチレン・ブタジエングラフト共重合体等の臭素化スチレン・ブタジエン共重合体が挙げられる。臭素系難燃剤としては、例えば、特表2009-516019号公報に開示されている熱安定性臭素化共重合体を用いてもよい。臭素系難燃剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
難燃剤は、目的とする発泡倍率に制御しやすいと共に、炭素添加時の難燃性等のバランスの点から、スチレン系樹脂組成物100重量%中、難燃剤が1.0重量%超6.0重量%以下であることが好ましく、1~4重量%であることがより好ましい。含有量が1重量%超であると、難燃性付与効果が小さくならず、6.0重量%以下であると、得られるスチレン系樹脂発泡成形体の強度が低下し難い。
【0035】
(熱安定剤)
発泡性スチレン系樹脂粒子は、更に熱安定剤を含んでいてもよい。熱安定剤はスチレン系樹脂組成物に含まれていることが好ましい。熱安定剤を用いることにより、製造工程における難燃剤の分解による難燃性の悪化及び発泡性スチレン系樹脂粒子の劣化を抑制することができる。
【0036】
熱安定剤は、用いられるスチレン系樹脂の種類、炭素系輻射伝熱抑制剤の種類及び含有量、難燃剤の種類及び含有量、発泡剤の種類及び含有量等に応じて、適宜組み合わせて用いることができる。
【0037】
本発明で用いられる熱安定剤としては、スチレン系樹脂組成物の熱重量分析における1%重量減少温度を任意に制御できる点から、ヒンダードアミン化合物、リン系化合物、エポキシ化合物が望ましい。熱安定剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。前記ヒンダードアミン化合物としては例えば、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジルオキシカルボニル)ブタンが挙げられ、前記リン系化合物としては例えば、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられる。
【0038】
熱安定剤は、目的とする発泡倍率に制御しやすいと共に、炭素系輻射伝熱抑制剤添加時の難燃性等のバランスの点から、スチレン系樹脂組成物100重量%中に熱安定剤は0.05~3重量%であることが好ましく、0.1~2.8重量%であることがより好ましく、0.11~2.5重量%であることが更に好ましい。0.05重量%以上であると難燃剤の分解が生じ難く、難燃性付与効果が小さくならず、3重量%以下であると得られるスチレン系樹脂発泡成形体の強度が低下し難い。
【0039】
(その他の添加剤)
前記発泡性スチレン系樹脂粒子、スチレン系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、その他の添加剤、例えば、ラジカル発生剤、加工助剤、耐光性安定剤、造核剤、発泡助剤、帯電防止剤、顔料等の着色剤よりなる群から選ばれる1種以上のその他添加剤を含有していてもよい。
【0040】
ラジカル発生剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、又はポリ-1,4-イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
【0041】
加工助剤としては、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、又は流動パラフィン等が挙げられる。
【0042】
耐光性安定剤としては、フェノール系抗酸化剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、又はベンゾトリアゾール類等が挙げられる。なお、耐光性安定剤としては、熱安定剤としても作用するもの、例えばヒンダードアミン化合物、リン系化合物、フェノール系安定剤、又はエポキシ化合物があるが、本開示において、耐光性安定剤及び熱安定剤の両方に属するものは、熱安定剤と見なす。
【0043】
造核剤としては、シリカ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、若しくはタルク等の無機化合物、メタクリル酸メチル系共重合体、若しくはエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂等の高分子化合物、ポリエチレンワックス等のオレフィン系ワックス、又はメチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスパルミチン酸アミド、若しくはエチレンビスオレイン酸アミド等の脂肪酸ビスアミド等が挙げられる。
【0044】
発泡助剤としては、大気圧下での沸点が200℃以下である溶剤を望ましく使用でき、例えば、スチレン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、若しくはメチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、又は酢酸エチル、若しくは酢酸ブチル等の酢酸エステル等が挙げられる。
【0045】
帯電防止剤及び着色剤としては、各種樹脂組成物に用いられるものを特に限定なく使用できる。
【0046】
これらの他の添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0047】
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子は、見かけ密度が950kg/m超1200kg/m以下であることが好ましい。発泡性の観点から、950kg/m超であることが好ましく、1000kg/m以上であることがより好ましい。一方、断熱性能の観点から、1170kg/m以下であることが好ましく、1150kg/m以下であることがより好ましく、1140kg/m以下が特に好ましい。発泡性スチレン系樹脂粒子の見かけ密度が前記範囲内であるとスチレン系樹脂組成物及び発泡剤を含むスチレン系樹脂溶融物は押出時の発泡が抑制されていると考えられる。押出時の発泡を抑制した発泡性スチレン系樹脂粒子を得ることで、予備発泡粒子中の独立気泡率が高くなり、セル構造の強度が高くなるために、予備発泡直後の収縮を抑制することが可能となり好ましい。
【0048】
また、発泡性スチレン系樹脂粒子の見かけ密度が低ければ、予備発泡粒子は収縮しやすく、予備発泡直後の収縮が大きければ予備発泡粒子のセルが挫屈してしまい、高温で養生しても倍率は回復しなくなるところ、本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子は収縮が抑制されるため、予備発泡粒子を高温で養生する必要がなくなり、養生後の倍率管理が容易となる。更に、発泡性スチレン系樹脂粒子の見かけ密度を高くすることで、発泡性スチレン系樹脂粒子のかさ密度も低くならないため、充填しやすくなるために保管時のスペースを小さくすることができる。
【0049】
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子において、上記発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡粒子のかさ倍率は70倍以上であることが好ましく、かさ倍率80倍以上がより好ましい。上記予備発泡粒子のかさ倍率が70倍以上であることで、上記予備発泡粒子を成形してなるスチレン系樹脂発泡成形体の密度が低下し、より軽量化されたスチレン系樹脂発泡成形体の作製が可能となる。また、かさ倍率を高くすることで使用する樹脂量を削減できるためコストダウンにも繋がる。
【0050】
(発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法)
前記発泡性スチレン系樹脂粒子は、公知の溶融混練法で得ることができ、具体的には、スチレン系樹脂、炭素系輻射伝熱抑制剤及び発泡剤を押出機で溶融混練し(溶融混練工程)、溶融混練物を押出機先端に取り付けられた小孔を有するダイスを通じて加圧循環水で満たされたチャンバー内に押出し(押出工程)、押出直後の溶融混練物を回転カッターにより切断すると共に、加圧循環水により冷却固化する(冷却工程)ことにより製造することができる。
【0051】
発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法としては例えば、スチレン系樹脂及び炭素系輻射伝熱抑制剤を含むスチレン系樹脂組成物を溶融混練により調製し、溶融状態のスチレン系樹脂組成物に発泡剤を添加し、更に混練を行い、スチレン系樹脂組成物及び発泡剤を含む溶融物を複数の小孔を有するダイスから加圧循環水中に押出し、回転カッターで切断して粒子化する発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法が挙げられる。スチレン系樹脂の種類や量、炭素系輻射伝熱抑制剤の種類や量、発泡剤の種類や量、その他添加剤については上述の記載に基づき、適宜設定することができる。
【0052】
前記製造方法においては、スチレン系樹脂と各種成分との分散性の観点から、予め、二軸の攪拌機を備えた(例えばバンバリーミキサー等)混練装置等を用いて、スチレン系樹脂の一部と各種成分とを荷重をかけて混練し、マスターバッチ等の混練物を作製し、得られた混練物と、新たなスチレン系樹脂及び他の成分とを押出機に投入して溶融混練した後、粒子状に切断することが好ましい態様の一つである。
【0053】
前記製造製法の好ましい一形態としては、スチレン系樹脂及び炭素系輻射伝熱抑制剤を、例えばバンバリーミキサー等の二軸の攪拌機を備えた混練装置等により混練してマスターバッチを作製し、作製したマスターバッチと、新たなスチレン系樹脂と、必要に応じて難燃剤等のその他の成分とを押出機で溶融混練し、次いで発泡剤を加え、得られた樹脂溶融物を押出機先端に取り付けられた小孔を有するダイスを通して加圧循環水で満たされたカッターチャンバー内に押出し、押出直後から回転カッターにより切断すると共に、加圧循環水により冷却固化する。
【0054】
前記製造製法の別の好ましい一形態としては、スチレン系樹脂及び炭素系輻射伝熱抑制剤を、例えばバンバリーミキサー等の二軸の攪拌機を備えた混練装置等により混練してマスターバッチを作製し、更にスチレン系樹脂、難燃剤、及び熱安定剤を、例えばバンバリーミキサー等の二軸の攪拌機を備えた混練装置等により混練して別のマスターバッチを作製し、作製した二種のマスターバッチと、新たなスチレン系樹脂と、必要に応じてその他の成分とを押出機で溶融混練し、次いで発泡剤を加え、得られた樹脂溶融物を押出機先端に取り付けられた小孔を有するダイスを通して加圧循環水で満たされたカッターチャンバー内に押出し、押出直後から回転カッターにより切断すると共に、加圧循環水により冷却固化する。
【0055】
前記製造製法では、押出機での溶融混練は単独の押出機を使用する場合、押出機を複数連結する場合、押出機とスタティックミキサーやスクリューを有さない攪拌機など第二の混練装置とを併用する場合があり、適宜選択することができる。
【0056】
二種以上の発泡剤を併用する場合、各発泡剤が添加されればその添加方法は特に限定されず、添加は同時に添加してもよいし、二回以上に分けて添加してもよい。
【0057】
(予備発泡粒子及びスチレン系樹脂発泡成形体)
発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて、スチレン系樹脂発泡成形体を得ることができる。スチレン系樹脂発泡成形体を得るために、発泡性スチレン系樹脂粒子は、予備発泡されたのち、型内発泡成形が行われてもよい。なお、予備発泡された粒子を、予備発泡粒子とも記す。すなわち、本開示には、前述の発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡してなるスチレン系樹脂の予備発泡粒子及び、前記スチレン系樹脂の予備発泡粒子を成形してなるスチレン系樹脂の発泡成形体が含まれる。
【0058】
発泡性スチレン系樹脂粒子は、従来公知の予備発泡工程、例えば、加熱水蒸気によって10~110倍に発泡させて予備発泡粒子とし、必要に応じて一定時間養生させた後、成形に使用することができる。発泡倍率は50倍以上が好ましく、70倍以上がより好ましい。得られた予備発泡粒子は、例えば、従来公知の成形機を用い、水蒸気によって成形(例えば型内成形)されてスチレン系樹脂発泡成形体が作製される。使用される金型の形状により、複雑な形の型物成形体やブロック状の成形体を得ることができる。
【0059】
前記発泡性スチレン系樹脂粒子は高発泡倍率のスチレン系樹脂発泡成形体に成形することができる。発泡成形体の発泡倍率は、40倍以上が好ましく、60倍以上がより好ましく、70倍以上が更に好ましく、80倍以上が特に好ましい。前記発泡性スチレン系樹脂粒子によれば、発泡剤量が従来よりも少ない場合でも発泡成形体の高発泡化が可能である。
【0060】
断熱材については、長期間使用されるため、長期間経過後の断熱性能の維持が重要な課題である。本発明に係るスチレン系樹脂組成物及び発泡性スチレン系樹脂粒子で成形されるスチレン系樹脂発泡成形体については、スチレン系樹脂発泡成形体から熱伝導率測定サンプルを切り出し、サンプルを70℃条件で35日間アニーリングし、更に23℃条件下にて24時間静置した後においても、低い熱伝導率を達成できる。70℃で35日間アニーリングすることにより、スチレン系樹脂発泡成形体中に含有されるブタン、ペンタン等の炭化水素系発泡剤の含有量は1.0%以下となっており、当該発泡剤が熱伝導率に与える影響は軽微となり、スチレン系樹脂発泡成形体を常温で長期間使用した場合の熱伝導率として評価することができる。
【0061】
前記発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡倍率80倍の発泡成形体とした時に、前記80倍発泡成形体を70℃温度下で35日間静置し、更に23℃の温度下にて24時間静置した後、JIS A9511:2006R準拠で測定した23℃での熱伝導率が、0.034W/mK以下であることが好ましい。即ち、0.034W/mK以下であれば、長期にわたって非常に低い熱伝導率ひいては高い断熱性を維持することができると言える。より好ましくは0.033W/mK以下であり、更に好ましくは0.032W/mK以下である。
【0062】
なお、本明細書において、発泡倍率を「倍」又は「cm/g」という単位で示すがこれらは互いに同じ意味である。
【0063】
予備発泡粒子及びそのスチレン系樹脂発泡成形体は、平均セル径が、好ましくは70~300μm、より好ましくは90~250μm、更に好ましくは100~200μmである。平均セル径が前述の範囲にあることによって、断熱性のより高いスチレン系樹脂発泡成形体となる。平均セル径が70μm以上であると、発泡倍率の高倍化が容易となる傾向にあり、また、300μm以下であると、熱伝導率が増加、即ち断熱性能が悪化するのを避けることができる。
【0064】
(発泡成形体の用途)
発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて成形される発泡成形体は、表面美麗性に優れるとともに、高発泡倍率及び高独立気泡率であり、低熱伝導率であり、熱伝導率の経時的な上昇が顕著に抑制され、かつ、断熱性が長期的に高い。従って、例えば、建築用断熱材、食品容器箱、保冷箱、緩衝材、農水産箱、浴室用断熱材及び貯湯タンク断熱材のような各種用途に好適である。
【0065】
なお、本開示の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造条件、得られた物の物性の測定方法は、本明細書に開示に加えて、特開2019-65073号公報を適宜参照して実施することができる。
【実施例0066】
以下、実施例を挙げて本実施形態を説明するが、本開示はこれらの例によって限定されるものではない。
【0067】
以下の実施例及び比較例における各物性の測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
【0068】
(スチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)の測定方法)
スチレン系樹脂のメルトフローレートは、JIS K7210「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の求め方」B法記載の方法に準拠し測定した。より詳しくは、安田精機製作所の「半自動メルトフローインデックステスター」を用い、試験温度200℃、荷重5.0kgの測定条件下でスチレン系樹脂(スチレン系樹脂ペレット)のメルトフローレートを測定した。
【0069】
(発泡性スチレン系樹脂粒子の見かけ密度測定方法)
発泡性スチレン系樹脂粒子を測定試料としてW(kg)採取し、この測定試料をエタノールが入ったメスシリンダー内に自然落下させ、その質量(kg)と体積(m)を測定し、以下の式に基づき、見かけ密度を測定した。
見かけ密度(kg/m)=測定試料の重量(W)/測定試料の体積(V)
【0070】
(予備発泡粒子のかさ倍率測定方法)
予備発泡粒子を測定試料としてW(g)採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させた後にメスシリンダーを叩き、試料の見掛け体積V(cm)を一定とし、その質量(g)と体積(cm)を測定し、以下の式に基づき、かさ倍率を測定した。
かさ倍率(cm/g)=測定試料の体積(V)/測定試料の重量(W)
【0071】
(スチレン系樹脂発泡成形体の発泡倍率)
成型金型から取り出したスチレン系樹脂発泡成形体を30℃で24時間乾燥させた後、発泡成形体の重量(g)を測定すると共に、ノギスを用いて、縦寸法、横寸法、厚さ寸法を測定した。測定された各寸法からスチレン系樹脂発泡成形体の体積(cm)を計算し、下記計算式に従って発泡倍率を算出した。
発泡倍率(cm/g)=試験片体積(cm)/試験片重量(g)
なお、スチレン系樹脂発泡成形体の発泡倍率「倍」は慣習的に「cm/g」でも表されている。
【0072】
(スチレン系樹脂発泡成形体の熱伝導率の測定方法)
一般的に熱伝導率の測定平均温度が大きい方が熱伝導率の値は大きくなることが知られており、断熱性を比較するためには測定平均温度を定める必要がある。本明細書では発泡プラスチック保温材の規格であるJIS A9511:2006Rで定められた23℃を基準に採用した。熱伝導率は、スチレン系樹脂発泡成形体を70℃温度下で35日間静置した後に、熱伝導率測定用サンプルを切り出し、更に23℃の温度下にて24時間静置した後に測定した。
【0073】
より詳しくは、スチレン系樹脂発泡成形体を70℃温度下にて35日間静置した後、長さ300mm×幅300mm×25mmのサンプルを切り出した。更に、サンプルを23℃温度下にて24時間静置した後、熱伝導率測定装置(英弘精機(株)製、HC-074)を用いて、JIS A1412-2:1999に準拠して熱流計法にて平均温度23℃、温度差20℃で熱伝導率を測定した。
【0074】
(スチレン系樹脂発泡成形体の表面性評価)
得られたスチレン系樹脂発泡成形体の表面性を目視で300mm×300mmの視野を観察し、下記判断指標で評価した。
AA:成形体表面に陥没が見られる発泡粒子が100個以下である。
BB:成形体表面に陥没が見られる発泡粒子が100個超である。
【0075】
(スチレン系樹脂発泡成形体の高温時の寸法変化率評価)
本明細書での高温時の寸法変化率は、JIS K6767で定められた高温時の寸法安定性のB法に準拠し測定した値である。より詳しくは、縦150mm×横150mm×25mmのサンプルを切り出し、サンプルを23℃温度下にて24時間静置した後、縦及び横方向にそれぞれ互いに平行に3本の直線を50mm間隔でサンプルに記入した。縦及び横方向について、それぞれ3本の線の長さを測定し、その平均値を初めの寸法(L1)とした。そのサンプルを80℃温度下にて22時間加熱した後に、取り出し、23℃温度下にて1時間静置後に、縦及び横方向について、それぞれ3本の線の長さを測定し、その平均値を加熱後の寸法(L2)とした。下記計算式に従って寸法変化率を算出した。
寸法変化率(%)=(L2(mm)-L1(mm))/(L1(mm))×100
【0076】
(スチレン系樹脂発泡成形体の耐熱性能評価)
前述の高温時の寸法変化率の評価から、以下の判断基準に基づき、スチレン系樹脂発泡成形体の耐熱性能を評価した。
AA:寸法変化率が-3.0%超+3.0%以下
BB:寸法変化率が-3.0%以下若しくは+3.0%超
【0077】
以下に、実施例及び比較例で用いた原材料を示す。
【0078】
(スチレン系樹脂)
(A1)スチレンホモポリマー[PSジャパン(株)製、680](MFR:7.0g/10分)
(A2)スチレンホモポリマー[PSジャパン(株)製、679](MFR:18.0g/10分)
(炭素系輻射伝熱抑制剤)
(B)グラファイト[(株)丸豊鋳材製作所製、鱗片状黒鉛SGP-40B]
【0079】
(臭素系難燃剤)
(C)2,2-ビス[4-(2,3-ジブロモ-2-メチルプロポキシ)-3,5-ジブロモフェニル]プロパン[第一工業製薬(株)製、SR-130、臭素含有量=66重量%]
(熱安定剤)
(D1)テトラキス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジルオキシカルボニル)ブタン[(株)ADEKA製 LA-57]
(D2)ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト[(株)ADEKA製 PEP-36]
【0080】
(発泡剤)
(E1)ノルマルペンタン[富士フイルム和光純薬(株)製、試薬品]
(E2)イソペンタン[富士フイルム和光純薬(株)製、試薬品]
(E3)イソブタン[三井化学(株)製]
(その他添加剤)
(F)エチレンビスステアリン酸アミド[日油(株)製、アルフローH-50S]
【0081】
(製造例1)(グラファイトマスターバッチ(G))
バンバリーミキサーに、スチレン系樹脂(A1)49重量%、グラファイト(B)50重量%、エチレンビスステアリン酸アミド(F)1重量%の全重量(A1+B+F)が100重量%となる様に原料投入して、5kgf/cmの荷重をかけた状態で加温冷却を行わずに20分間混練した。この際、樹脂温度を測定したところ180℃であった。ルーダーに供給して先端に取り付けられた小穴を有するダイスを通して吐出250kg/hrで押出されたストランド状の樹脂を30℃の水槽で冷却固化させた後、切断してマスターバッチ(G)を得た。マスターバッチ(G)中のグラファイト含有量は50重量%であった。
【0082】
(製造例2)(臭素系難燃剤と熱安定剤との混合物のマスターバッチ(H))
二軸押出機に、スチレン系樹脂(A1)を供給して溶融混練した後、押出機途中より臭素系難燃剤(C)、熱安定剤(D1)及び(D2)の混合物を供給して、更に溶融混練した。ただし、各材料の重量比率は、(A1):(C):(D1):(D2)=70:28.5:0.6:0.9、(A1)+(C)+(D1)+(D2)=100重量%とした。押出機先端に取り付けられた小穴を有するダイスを通して、吐出300kg/hrで押出されたストランド状の樹脂を20℃の水槽で冷却固化させた後、切断して臭素系難燃剤と熱安定剤との混合物のマスターバッチ(H)を得た。このとき押出機の設定温度は170℃で実施した。
【0083】
(実施例1)
[スチレン系樹脂ペレットの作製]
スチレン系樹脂(A1)、スチレン系樹脂(A2)をミキサーで均一にブレンドし、口径26mmの同方向2軸押出機にて溶融混練し、押出機先端に取り付けられたダイスを通じてストランド状とし、水槽で冷却固化させた後、ストランドカッターで裁断し、スチレン系樹脂ペレットを得た。尚、(A1):(A2)=80:20の重量比率で、供給量を合計5kg/hとした。得られたスチレン系樹脂ペレットのMFRは9.2(g/10分)であった。
【0084】
[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]
スチレン系樹脂(A1)とスチレン系樹脂(A2)をミキサーで均一にブレンドした混合物、グラファイトマスターバッチ(G)、臭素系難燃剤と熱安定剤との混合物のマスターバッチ(H)をそれぞれフィーダーにて、口径40mmの同方向2軸押出機(第1押出機)と口径90mmの単軸押出機(第2押出機)を直列に連結したタンデム型二段押出機へ供給し、口径40mm押出機の設定温度190℃、回転数167rpmにて溶融混練した。尚、(A1):(A2):(G):(H)=54.2:17.5:20:8.3の重量比率で、供給量を合計55.7kg/hとした。口径40mm押出機(第1押出機)の途中から、上記樹脂混合物の溶融物(樹脂組成物)100重量部に対して、混合ペンタン[ノルマルペンタン(E1)80重量%とイソペンタン(E2)20重量%の混合物]を1.8重量部の割合で圧入し、上記樹脂組成物100重量部に対して、イソブタン(E3)を2.4重量部圧入し、合計4.2重量部の発泡剤を添加した。その後、200℃に設定された継続管を通じて、口径90mm押出機(第2押出機)に供給した。
【0085】
口径90mm押出機(第2押出機)にて樹脂温度を170℃まで溶融樹脂を冷却した後、260℃に設定した第2押出機の先端に取り付けられた直径0.75mm、ランド長5.0mmの小孔を40個有するダイスから、温度70℃及び1.3MPaの加圧循環水中に押出した。押出された溶融樹脂は、ダイスに接触する6枚の刃を有する回転カッターを用いて、切断・小粒化され、遠心脱水機に移送されて、発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。このとき、第1押出機の滞留時間は2分、第2押出機の滞留時間は5分であった。
【0086】
前記樹脂組成物中の(A1):(A2)の重量比率は、マスターバッチ(G)及び(H)に含まれるスチレン系樹脂(A1)を考慮すると54.2+20×0.49+8.3×0.7:17.5≒80:20である。このため、前記スチレン系樹脂ペレットのMFRは、樹脂組成物中のスチレン系樹脂のMFRと同様と見なすことができる。同様に、他の実施例、比較例におけるスチレン系樹脂ペレットのMFRは、各樹脂組成物中のスチレン系樹脂のMFRと同様と見なすことができる。
【0087】
[予備発泡粒子の作製]
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子を、15℃で1週間以上保管した後に発泡性スチレン系樹脂粒子に外添剤であるステアリン酸亜鉛を0.04重量部、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドを0.1重量部ドライブレンドした。前記外添剤を含む発泡性スチレン系樹脂粒子270gを予備発泡機[大開工業株式会社製バッチ式予備発泡機]に投入し、缶内圧力設定を0.015MPa~0.025MPaとし、0.12MPaの水蒸気を予備発泡機に導入して、かさ倍率80倍に発泡させ、予備発泡粒子を得た。得られた予備発泡粒子の発泡倍率は、82倍であった。
【0088】
[スチレン系樹脂発泡成形体の作製]
得られた予備発泡粒子を30℃で24時間養生させた後に、発泡スチロール用成形機[ダイセン工業(株)製、KR-57]に取り付けた型内成形用金型(長さ400mm×幅400mm×厚み25mm)内に充填して、0.05MPaの水蒸気を導入して型内発泡させた後、金型に水を噴霧して冷却した。スチレン系樹脂発泡成形体が金型を押す圧力が0.01MPa(ゲージ圧力)になるまでスチレン系樹脂発泡成形体を金型内に保持した後に、スチレン系樹脂発泡成形体を取り出して、スチレン系樹脂発泡成形体を得た。得られたスチレン系樹脂発泡成形体の発泡倍率は82倍であり、前記スチレン系樹脂発泡成形体の熱伝導率を上述の測定方法で測定した結果、0.02980W/mKであった。
【0089】
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及びスチレン系樹脂発泡成形体について、各種特性を上述の測定方法および評価方法により測定および評価した。
【0090】
(実施例2)
[スチレン系樹脂ペレットの作製]において、(A1):(A2)の重量比率を80:20から60:40に変更した以外は、実施例1と同様の処理により、スチレン系樹脂ペレットを作製した。得られたスチレン系樹脂ペレットのMFRは11.4(g/10分)であった。
【0091】
[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、(A1):(A2):(G):(H)の重量比率を54.2:17.5:20:8.3から36.7:35:20:8.3に変更した以外は実施例1と同様の処理により、発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。作製した発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて、実施例1と同様の方法により予備発泡粒子及びスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
【0092】
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及びスチレン系樹脂発泡成形体について、各種特性を上述の測定方法および評価方法により測定および評価した。
【0093】
(実施例3)
[スチレン系樹脂ペレットの作製]において、(A1):(A2)の重量比率を80:20から40:60に変更した以外は、実施例1と同様の処理により、スチレン系樹脂ペレットを作製した。得られたスチレン系樹脂ペレットのMFRは13.6(g/10分)であった。
【0094】
[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、(A1):(A2):(G):(H)の重量比率を54.2:17.5:20:8.3から19.2:52.5:20:8.3に変更した以外は実施例1と同様の処理により、発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。
【0095】
[予備発泡粒子の作製]において、缶内圧力設定を0.015MPa~0.025MPaから、0.005MPa~0.015MPaに変更した以外は実施例1と同様の処理により、予備発泡粒子を作製した。作製した予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様の方法によりスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
【0096】
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及びスチレン系樹脂発泡成形体について、各種特性を上述の測定方法および評価方法により測定および評価した。
【0097】
(比較例1)
[スチレン系樹脂ペレットの作製]において、(A1):(A2)の重量比率を80:20から100:0に変更した以外は、実施例1と同様の処理により、スチレン系樹脂ペレットを作製した。得られたスチレン系樹脂ペレットのMFRは7.0(g/10分)であった。
【0098】
[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、(A1):(A2):(G):(H)の重量比率を54.2:17.5:20:8.3から71.7:0:20:8.3に変更した以外は実施例1と同様の処理により、発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。作製した発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて、実施例1と同様の方法により予備発泡粒子及びスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
【0099】
得られたスチレン系樹脂発泡成形体は成形体の表面に陥没した発泡粒子が散見され、寸法測定が不可能であったため、成形体倍率測定、高温時の寸法変化率は評価不可であった。成形体倍率、高温時の寸法変化率及び耐熱性能以外に関して、得られた発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及びスチレン系樹脂発泡成形体について、各種特性を上述の測定方法および評価方法により測定および評価した。
【0100】
(比較例2)
[スチレン系樹脂ペレットの作製]において、(A1):(A2)の重量比率を80:20から100:0に変更した以外は、実施例1と同様の処理により、スチレン系樹脂ペレットを作製した。得られたスチレン系樹脂ペレットのMFRは7.0(g/10分)であった。
【0101】
[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、(A1):(A2):(G):(H)の重量比率を54.2:17.5:20:8.3から71.7:0:20:8.3に変更し、混合ペンタンを1.8重量部から4.2重量部に変更し、イソブタン(E3)を2.4重量部から0重量部に変更した以外は実施例1と同様の処理により、発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。
【0102】
[予備発泡粒子の作製]において、実施例1と同様の処理を行い、予備発泡粒子を作製したが、得られた発泡粒子の発泡倍率は60倍であり、80倍までの発泡が不可能であった。作製した予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様の方法によりスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
【0103】
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及びスチレン系樹脂発泡成形体について、各種特性を上述の測定方法および評価方法により測定および評価した。
【0104】
(比較例3)
[スチレン系樹脂ペレットの作製]において、(A1):(A2)の重量比率を80:20から18:82に変更した以外は、実施例1と同様の処理により、スチレン系樹脂ペレットを作製した。得られたスチレン系樹脂ペレットのMFRは16.0(g/10分)であった。
【0105】
[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]において、(A1):(A2):(G):(H)の重量比率を54.2:17.5:20:8.3から0:71.7:20:8.3の重量比率に変更した以外は実施例1と同様の処理により、発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。
【0106】
[予備発泡粒子の作製]において、缶内圧力設定を0.015MPa~0.025MPaから、0.005MPa~0.015MPaに変更した以外は実施例1と同様の処理により、予備発泡粒子を作製した。作製した予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様の方法によりスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
【0107】
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及びスチレン系樹脂発泡成形体について、各種特性を上述の測定方法および評価方法により測定および評価した。
【0108】
各実施例及び比較例について、スチレン系樹脂ペレットの組成、MFR、スチレン系樹脂組成物中の各成分の量、各発泡剤の量、発泡性スチレン系樹脂粒子の見かけ密度、予備発泡粒子のかさ倍率、スチレン系樹脂発泡成形体の発泡倍率(成形体倍率)、成形体表面性、高温時寸法変化率、耐熱性能を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
表1より、本開示の発泡性スチレン系樹脂粒子を用いることにより、耐熱性能に優れ、且つ高発泡倍率であるスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0111】
本明細書中に記載した数値範囲の上限値及び/又は下限値は、それぞれ任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができる。例えば、数値範囲の上限値及び下限値を任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができ、数値範囲の上限値同士を任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができ、また、数値範囲の下限値同士を任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができる。また、本願において、記号「~」を用いて表される数値範囲は、記号「~」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値及び上限値として含む。
【0112】
以上、本実施形態を詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本開示に含まれるものである。