(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014014
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】計画装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20240125BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240125BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240125BHJP
H02J 15/00 20060101ALI20240125BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240125BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20240125BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20240125BHJP
G06Q 10/06 20230101ALI20240125BHJP
【FI】
G06Q50/04
H02J3/32
H02J3/00 170
H02J15/00 G
H02J3/38 170
H02J3/38 130
G06Q50/06
G06Q10/04
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116548
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 啓太
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 剛史
(72)【発明者】
【氏名】山根 史之
【テーマコード(参考)】
5G066
5L049
【Fターム(参考)】
5G066AA02
5G066AE03
5G066AE09
5G066HB06
5G066HB07
5G066HB08
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
5L049AA04
5L049AA09
5L049CC03
5L049CC06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水素の需要に応じた供給を可能にする水素供給計画装置を提供する。
【解決手段】水素供給計画装置は、水素貯蔵供給装置の状態と水素の貯蔵状態を含む状態情報を受信する状態情報受信部、水素需要家から水素需要の種類及び用途を含む水素需要情報を取得する需要情報受信部、水素需要情報について水素需要を類型化した需要種及び水素需要の用途を判別する判別部、需要種の重要度及び用途の重要度を判別部の判別結果と対応付けた重要度テーブルを設定する重要度設定部、水素需要情報、判別結果、重要度テーブルに基づいて、水素需要情報に対応する需要種及び用途の重要度を判定する重要度判定部、水素需要情報及び判別結果に基づいて水素需要を予測する需要予測部、電力情報を取得する電力情報受信部、状態情報、水素需要情報、予測結果、重要度および電力情報に基づいて水素供給計画を作成する供給計画作成部を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を供給する電力供給源、および水素を貯蔵し水素需要家に供給する水素貯蔵供給装置それぞれと接続され、前記水素貯蔵供給装置における水素供給計画を作成する計画装置であって、
前記水素貯蔵供給装置の状態および水素の貯蔵状態を含む状態情報を受信する状態情報受信部と、
前記水素需要家から水素需要の種類及び用途を含む水素需要情報を取得する需要情報受信部と、
前記水素需要情報について前記水素需要を類型化した需要種及び前記水素需要の用途を判別する判別部と、
前記需要種の重要度及び前記用途の重要度を前記判別部の判別結果と対応付けた重要度テーブルを設定する重要度設定部と、
前記水素需要情報、前記判別部が判別した判別結果、および前記重要度テーブルに基づいて、前記水素需要情報に対応する需要種及び用途の重要度を判定する重要度判定部と、
前記水素需要情報及び前記判別部の判別結果に基づいて前記水素需要を予測する需要予測部と、
前記電力供給源から前記電力のコスト情報を含む電力情報を取得する電力情報受信部と、
前記状態情報、前記水素需要情報、前記予測結果、前記重要度および前記電力情報に基づいて前記水素供給計画を作成する供給計画作成部と、
を備える計画装置。
【請求項2】
前記電力を用いて前記水素を製造する水素製造装置とさらに接続され、
前記状態情報は、前記水素製造装置の状態及びその運用状態をさらに含み、
前記水素供給計画、前記電力情報及び前記状態情報に基づいて前記水素製造計画を作成する製造計画作成部をさらに備えて前記水素製造装置における前記水素製造計画を作成する請求項1記載の計画装置。
【請求項3】
前記水素需要家は電力を消費する電気自動車をさらに含み、
前記需要情報受信部は、前記電気自動車が消費する電力の需要情報をさらに受信し、
前記供給計画作成部は、前記状態情報、前記水素需要情報、前記予測結果、前記重要度、前記電力情報および前記電力の需要情報に基づいて前記水素貯蔵供給装置における前記水素供給計画を作成すること
を特徴とする請求項1記載の計画装置。
【請求項4】
前記水素需要家は電力を消費する電気自動車をさらに含み、
前記需要情報受信部は、前記電気自動車が消費する電力の需要情報をさらに受信し、
前記製造計画作成部は、前記水素供給計画、前記電力情報、前記状態情報および前記電力の需要情報に基づいて前記水素製造装置における前記水素製造計画を作成すること
を特徴とする請求項2記載の計画装置。
【請求項5】
前記電力供給源は、再生可能エネルギー由来の電力を前記水素貯蔵供給装置へ直接供給する再生可能エネルギー発電装置を含み、
前記電力情報は、前記再生可能エネルギー発電装置が前記水素貯蔵供給装置へ直接供給する電力のコスト情報を含み、
前記供給計画作成部は、前記状態情報、前記水素需要情報、前記予測結果、前記重要度および前記電力情報に基づいて前記水素貯蔵供給装置における前記水素供給計画を作成すること
を特徴とする請求項1記載の計画装置。
【請求項6】
前記電力供給源は、再生可能エネルギー由来の電力を前記水素製造装置へ直接供給する再生可能エネルギー発電装置を含み、
前記電力情報は、前記再生可能エネルギー発電装置が前記水素製造装置へ直接供給する電力のコスト情報を含み、
前記製造計画作成部は、前記水素供給計画、前記状態情報および前記電力情報に基づいて前記水素製造装置における前記水素製造計画を作成すること
を特徴とする請求項2記載の計画装置。
【請求項7】
前記電力供給源は、再生可能エネルギー由来の電力を
前記水素貯蔵供給装置へ直接供給または前記再生可能エネルギーの電力を前記電力供給源に供給する再生可能エネルギー発電装置、または
前記水素貯蔵供給装置へ直接供給および前記再生可能エネルギーの電力を前記電力供給源に供給する再生可能エネルギー発電装置を含み、
前記電力情報は、前記再生可能エネルギー発電装置が前記水素貯蔵供給装置へ直接供給する電力のコストおよび前記再生可能エネルギー発電装置が前記電力供給源へ供給する電力のコスト情報を含み、
前記供給計画作成部は、前記状態情報、前記水素需要情報、前記予測結果、前記重要度および前記電力情報に基づいて前記水素貯蔵供給装置における前記水素供給計画を作成すること
を特徴とする請求項1記載の計画装置。
【請求項8】
前記電力供給源は、再生可能エネルギー由来の電力を
前記水素製造装置へ直接供給または前記再生可能エネルギーの電力を前記電力供給源に供給する再生可能エネルギー発電装置、または
前記水素製造装置へ直接供給および前記再生可能エネルギーの電力を前記電力供給源に供給する再生可能エネルギー発電装置を含み、
前記電力情報は、前記再生可能エネルギー発電装置が前記水素製造装置へ直接供給する電力のコストおよび前記再生可能エネルギー発電装置が前記電力供給源へ供給する電力のコスト情報を含み、
前記製造計画作成部は、前記水素供給計画、前記状態情報および前記電力情報に基づいて前記水素製造装置における前記水素製造計画を作成すること
を特徴とする請求項2記載の計画装置。
【請求項9】
前記供給計画作成部は、前記需要種に対応する重要度および前記用途に対応する重要度それぞれに基づいて得られる総合重要度を用いて前記水素供給計画を作成することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の計画装置。
【請求項10】
前記重要度は、前記需要種及び前記用途ごとの水素の利用頻度、水素の使用変化率及び水素利用の公共性の少なくとも一つに基づいて設定されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の計画装置。
【請求項11】
前記重要度は、前記水素需要家からの要求に対して満足に対応できるか否かを示すサービス率に基づいて設定されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の計画装置。
【請求項12】
前記重要度設定部は、ユーザによる手動設定および所定のルールに基づいて設定する自動設定の少なくとも一方により設定可能であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の計画装置。
【請求項13】
電力を供給する電力供給源、および水素を貯蔵し水素需要家に供給する水素貯蔵供給装置それぞれと接続され、前記水素貯蔵供給装置における水素供給計画を作成する計画装置であって、
前記水素需要家から水素需要の種類及び用途を含む水素需要情報を取得する需要情報受信部と、
前記水素需要情報を記憶する記憶部と、
前記水素需要情報について前記水素需要を類型化した需要種及び前記水素需要の用途を判別して前記記憶部に記憶させる判別部と、
前記需要種の重要度及び前記用途の重要度を前記判別部の判別結果と対応付けて重要度テーブルとして前記記憶部に記憶させる重要度設定部と、
前記水素需要情報、前記判別部が判別した判別結果、および前記重要度テーブルに基づいて、前記需要情報に対応する需要種及び用途の重要度を判定する重要度判定部と、
前記水素需要情報及び前記判別部の判別結果に基づいて前記水素需要を予測する需要予測部と、
前記電力供給源から前記電力のコスト情報を含む電力情報を取得する電力情報受信部と、
前記水素貯蔵供給装置の水素の貯蔵状態を示す貯蔵情報を受信する水素情報受信部と、
前記需要予測部の予測結果、前記重要度、前記電力情報及び前記貯蔵情報に基づいて前記水素供給計画を作成する供給計画作成部と、
を備える計画装置。
【請求項14】
電力を供給する電力供給源、前記電力を用いて水素を製造する水素製造装置、および前記水素を貯蔵し水素需要家に供給する水素貯蔵供給装置それぞれと接続され、前記水素製造装置における水素製造計画及び前記水素貯蔵供給装置における水素供給計画を作成する計画装置であって、
前記水素需要家から水素需要の種類及び用途を含む水素需要情報を取得する需要情報受信部と、
前記水素需要情報を記憶する記憶部と、
前記水素需要情報を送信するとともに、前記水素需要情報の送信に応じて、前記水素需要情報について前記水素需要の種類を類型化した需要種及び前記水素需要の用途を判別し、前記需要種の重要度及び前記用途の重要度を前記判別結果と対応付けて重要度テーブルを生成し、前記水素需要情報、前記判別結果、および前記重要度テーブルに基づいて、前記水素需要情報に対応する需要種及び用途の重要度を判定し、前記水素需要情報及び前記判別結果に基づいて予測された前記水素需要を受信するインタフェースと、
前記需要予測部の予測結果および前記重要度に基づいて前記水素供給計画を作成する供給計画作成部と、
前記電力供給源から前記電力のコスト情報を含む電力情報を取得する電力情報受信部と、
前記水素製造装置の運用状態を示す運用情報及び前記水素貯蔵供給装置の水素の貯蔵状態を示す貯蔵情報を受信する水素情報受信部と、
前記水素供給計画、前記運用情報及び前記貯蔵情報に基づいて前記水素製造計画を作成する製造計画作成部と、
を備える計画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば水素などの物質の供給計画を生成する計画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるカーボンニュートラルの実現が世界的に志向されている昨今において、エネルギー供給の観点から、再生可能エネルギーによる電源の導入拡大が必要とされている。一方、エネルギー需要の観点からは、エネルギー資源の水素化によるエネルギー転換の促進が重要視されており、今後、様々な種類の水素需要(用途)の普及が考えられる。
【0003】
水素を安価に供給する方法として、比較的安価な余剰電力を用いて水素を製造することが考えられる。しかし、余剰電力は常に入手可能とは限らないから、すべての水素需要を満たす供給を行うことは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-9069
【特許文献2】国際公開第2020/075771号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の水素供給においては、水素を安価かつ安定に供給することが難しいという問題がある。本発明の実施形態はかかる課題を解決するためになされたもので、水素の需要に応じた供給を可能にする計画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の計測装置は、電力を供給する電力供給源、および水素を貯蔵し水素需要家に供給する水素貯蔵供給装置それぞれと接続され、水素貯蔵供給装置における水素供給計画を作成する計画装置である。計画装置は、水素貯蔵供給装置の状態および水素の貯蔵状態を含む状態情報を受信する状態情報受信部と、水素需要家から水素需要の種類及び用途を含む水素需要情報を取得する需要情報受信部と、水素需要情報について水素需要を類型化した需要種及び水素需要の用途を判別する判別部と、需要種の重要度及び用途の重要度を判別部の判別結果と対応付けた重要度テーブルを設定する重要度設定部と、水素需要情報、判別部が判別した判別結果、および重要度テーブルに基づいて、水素需要情報に対応する需要種及び用途の重要度を判定する重要度判定部と、水素需要情報及び判別部の判別結果に基づいて水素需要を予測する需要予測部と、電力供給源から電力のコスト情報を含む電力情報を取得する電力情報受信部と、状態情報、水素需要情報、予測結果、重要度および電力情報に基づいて水素供給計画を作成する供給計画作成部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の水素供給計画装置を用いた水素供給システム全体の構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態の水素供給計画装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態の水素供給計画装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態の水素供給計画装置における重要度判定テーブルの一例を示す図である。
【
図5】第2実施形態の水素供給計画装置を用いた水素供給システム全体の構成を示す図である。
【
図6】第2実施形態の水素供給計画装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】第3実施形態の水素供給計画装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】第4実施形態の水素供給計画装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】第5実施形態の水素供給計画装置を用いた水素供給システム全体の構成を示す図である。
【
図10】第5実施形態の水素供給計画装置の構成を示すブロック図である。
【
図11】第5実施形態の水素供給計画装置における重要度判定テーブルの一例を示す図である。
【
図12】第6実施形態の水素供給計画装置の構成を示すブロック図である。
【
図13】第7実施形態の水素供給計画装置の構成を示すブロック図である。
【
図14】第8実施形態の水素供給計画装置を用いた水素供給システム全体の構成を示す図である。
【
図15】第9実施形態の水素供給計画装置を用いた水素供給システム全体の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態では、様々な種類の水素需要(用途)が普及することに鑑み、水素需要(用途)に対し重要度を設定し、重要度に応じて供給する水素量又はタイミングを計画する水素供給計画装置を提案する。これにより、安価な余剰電力を有効かつ効率的に利用し最大限に水素需要を満たすことが可能となる。
【0009】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態の水素供給計画装置(計画装置)10は、電力供給源40、水素製造装置20および水素貯蔵供給装置30、および、水素需要家50と相互接続された水素供給システム1の構成要素である。水素を製造し貯蔵するためには電力が必要である一方、水素は電力を生み出す資源でもある。水素供給システム1は、水素を製造し貯蔵するための電力を供給する電力供給源40と、水素を消費し電力を生成可能な水素需要家50とを調整し、水素需要を最大限満足する水素供給を実現する。
【0010】
電力供給源40は、電力市場42と電力系統44の要素を有している。すなわち、電力の供給能力や売買コストなどの情報を包含する電力市場42という要素と、具体的に電力を生成し需要家へ供給する電力系統44という要素である。ここで、電力市場とは、電気の様々な価値(電力量、電力、調整力、非化石価値等)を取引する市場であり、電力系統とは、一般送配電事業者が管理している電力供給システムである。
【0011】
電力供給源40は、電力系統44を通じて電力を供給する。一方、電力供給源40は、供給した電力に要する費用(コスト)などを含む情報(電力情報)を、電力市場42を通じて提供することができる。すなわち、第1実施形態の計画装置10は、電力供給源40から電力供給コストなどを含む電力情報を取得することができる。
【0012】
水素製造装置20は、電力を用いて水素を製造する要素である。水素製造装置20は、電力供給源40から電力の供給を受けて水素を製造する。水素製造装置20は、供給を受けた電力量や電力料金、生成した水素の量、入力電力毎の水素製造量などの情報を計画装置10に提供する。水素製造装置20は、計画装置10が作成した水素製造計画に基づいて水素を製造する。
【0013】
水素貯蔵供給装置30は、電力供給源40からの電力を用いて水素を貯蔵し供給する要素である。水素貯蔵供給装置30は、水素製造装置20が製造した水素を貯蔵するとともに水素需要家50に供給する。水素貯蔵供給装置30は、計画装置10が作成した水素貯蔵供給計画に基づいて水素を貯蔵し水素需要家50に水素を供給する。
【0014】
水素需要家50は、水素の供給を受けて消費する要素である。例えば、水素需要家50は、燃料電池自動車(FCV)52、燃料電池54、建物56などの要素を含む。FCV52は、搭載された燃料電池が水素を消費して電力を生成し車両を駆動する。燃料電池54は、水素から電気を製造する装置であり、水素を消費して電力を生成し当該電力を建物56に供給することができる。燃料電池54が生成する電力は、電力供給源40に供給(売電)されてもよい。建物56は、最終的に電力を消費する要素である。
【0015】
ここで、水素需要家50の需要とは、水素をエネルギー源として必要とするすべての車輛(車、バス、フォークリフト、トラック、飛行機、鉄道車輌、救急車、消防車等)、建物(民家、マンション、社用ビル、球場、道の駅等)などを意味する。水素需要家50は、その需要の種類や用途により、需要種と用途に区分することができる。水素の用途とは、需要の利用目的や使い道を意味する。
【0016】
計画装置10は、水素需要家50の需要に対する水素の供給計画(水素貯蔵供給計画)や水素需要家50に供給する水素を製造する水素製造装置の稼働計画(水素製造計画)を作成する装置である。実施形態の計画装置10が適用される水素供給システム1においては、電力供給源40が水素製造装置20に電力を供給し、受電した電力を用いて水素製造装置20が水素を製造し、製造された水素を水素貯蔵供給装置30が貯蔵するとともに水素需要家50に水素を供給する。計画装置10は、電力供給源40から得られる電力市場42および電力系統44に関する情報、水素製造装置20に関する情報、水素貯蔵供給装置30に関する情報および水素需要家50に関する情報を用いて、水素供給計画及び水素製造計画を作成する。すなわち、計画装置10は、水素需要家50の需要と電力供給源40の電力コストなどに基づいて、最適な水素の製造と供給を可能とする。
【0017】
図2を参照して、第1実施形態の計画装置10の構成を説明する。計画装置10は、CPUやメモリなどからなるコンピュータにより実現することができる。
図2に示すように、第1実施形態の計画装置10は、データベース100、電力情報受信部102、水素情報送受信部104、需要情報受信部106、判別部110、重要度設定部120、重要度判定部130、需要予測部140、供給計画作成部150、製造計画作成部160を備えている。
【0018】
データベース100は、需要情報を蓄積する。需要情報は、例えば水素供給システム1における水素需要家50に関する情報である。需要情報は、たとえば、需要たるFCV52の運用情報や走行情報、FCV52や燃料電池54の型番情報、FCV52や燃料電池54における燃料利用頻度情報などが例示される。
【0019】
また、データベース100は、電力供給源40から得られる電力コストに関する情報や、水素製造情報20の状態や水素貯蔵供給装置30の状態、需要の重要度などの情報を蓄積する。これらの情報は、計画装置10が水素製造量・水素供給量を計画する際の基礎情報である。データベース100は、計画装置10が作成した計画を蓄積してもよい。データベース100に蓄積される基礎情報は、例えば電力情報、重要度情報、燃料利用情報、水素情報、水素の需要情報などが例示される。電力情報は、需給調整市場における調整力やスポット市場の取引情報等の電力の需要情報を含んでもよい。
【0020】
電力情報受信部102は、電力供給源40が提供する電力情報などを受信するインタフェースである。電力情報受信部102は、電力供給源40からネットワークなどを介してオンラインで情報を受信してもよいし、マン・マシン・インタフェースにより情報を受け付ける構成でもよい。電力情報受信部102は、受信した電力情報などをデータベース100に蓄積する。
【0021】
水素情報送受信部104は、水素製造装置20および水素貯蔵供給装置30の状態を示す情報を受信するとともに、水素製造装置20や水素貯蔵供給装置30に対し水素製造計画や水素供給計画を送信するインタフェースである。水素情報送受信部104は、水素製造装置20や水素貯蔵供給装置30とネットワークを介して接続されオンラインで情報を送受信してもよいし、マン・マシン・インタフェースにより情報を送りまたは受け付ける構成でもよい。水素情報送受信部104は、受信した情報をデータベース100に蓄積する。
【0022】
需要情報受信部106は、水素需要家50が提供する水素情報や水素の需要情報などを受信するインタフェースである。需要情報受信部106は、水素需要家50からネットワークなどを介してオンラインで情報を受信してもよいし、マン・マシン・インタフェースにより情報を受け付ける構成でもよい。需要情報受信部106は、受信した水素情報や水素の需要情報などをデータベース100に蓄積する。
【0023】
需要種/用途判別部(判別部)110は、水素需要家50から取得した水素の需要情報とデータベース100に蓄積した水素の需要情報から、需要種及び用途を判別する演算ブロックである。判別部110による判別処理は、AI分析などにより実現することができる。水素の需要種とは、水素を消費する需要家の種類であり、例えば「乗用車」や「バス」などが例示される。用途とは、水素の需要個々の用途であり、例えば「自家用」「定期・路線」「観光」など、需要種それぞれに対応する定義が例示される。
【0024】
需要種/用途重要度設定部(重要度設定部)120は、需要種及び用途毎に重要度を設定する演算ブロックである。重要度の設定は、手動、自動、手動及び自動、学習などの方法で実現される。「手動」とは、ユーザが需要種及び用途の重要度を判断しデータベース100に蓄積された重要度情報を設定するものである。「自動」とは、判別部110が、水素需要家50から取得した需要の情報に基づいて人間の判断を介さずに需要種及び用途の重要度を設定するものである。この「自動」による処理は、AI分析などの手法を用いることができる。「学習」とは、水素利用者からの要望やクレームなど水素需要家50から取得される特殊な情報に基づいて重要度を設定するものである。「学習」における特殊な情報は、ルール化や一般化が困難な情報が例示される。重要度設定部120が設定した需要種、用途および重要度の情報は、重要度判定テーブルとしてデータベース100に蓄積される。かかる重要度の設定は、データベース100に蓄積された重要度情報に含まれていない新たな需要種や用途を設定する場合に用いることができる。
【0025】
需要種/用途重要度判定部(重要度判定部)130は、判別部110が判別した需要種及び用途に対し、重要度設定部120が設定した重要度に基づき、重要度を判定する演算ブロックである。重要度判定部130は、例えば重要度判定テーブルに基づいて重要度を判定する。
【0026】
図4は、重要度判定テーブルの一例を示している。
図4に示す例では、重要度判定テーブルは、需要種、需要種重要度、用途、用途重要度、総合重要度が対応付けて記述されている。
【0027】
需要種重要度は、需要種ごとに設定される重要度である。
図4に示す例では、需要種「乗用車」の需要種重要度は「2」であり、需要種「バス」の需要種重要度は「3」である。需要種重要度は、公共財としての重要性やエネルギー消費の観点での重要性に基づいて数値化されている。すなわち、「乗用車」と「バス」とを比較すると、「バス」の方が公共財としての重要度や人数当たりのエネルギー消費の観点から重要度が高い(数値が大きい)値が設定されている。
【0028】
用途重要度は、用途ごとに設定される重要度である。
図4に示す例では、自家用用途で使用頻度が高いものの用途重要度が「2」、自家用用途で使用頻度が低いもの(2台目の場合等)の用途重要度が「1」、定期路線の用途は「4」、観光用途は「3」である。これらは、公共用途や効率性の観点から数値化されている。すなわち「定期路線」と「自家用」とでは、「定期路線」の方が高い用途重要度(数値が大きい)の値が設定されている。
【0029】
総合重要度は、需要種重要度と用途重要度を乗じた数値が設定される。すなわち、重要度重要度と用途重要度の両者を加味した数値を総合的な重要度として設定したものである。総合需要度は、需要種重要度と用途重要度とに基づいて得ることができる。例えば、総合需要度は、需要種重要度および用途重要度両者の積や、両者の重み付け和として求めることができる。このとき、経験値などに基づいた係数を加味してもよい。
【0030】
この実施形態では、二種以上の異なるパラメータを定義し、それらを用いて総合重要度を算出し、計画装置10が作成する計画の基礎としている。そのため、電源や水素の需給関係だけでなく、コストなど他の要素を加味した計画作成を実現することができる。
【0031】
需要予測部140は、判別部110が判別した需要種、用途、及び燃料利用頻度情報(燃料利用情報)などに基づき、水素需要量を予測する演算ブロックである。需要予測部140は、例えばデータベース100に蓄積された過去の需要種や用途と燃料利用頻度などの情報に基づき、水素の需要量を予測する。需要予測部140は、作成した水素需要量や需要予測結果をデータベース100に蓄積する。
【0032】
水素供給計画作成部(供給計画作成部)150は、水素貯蔵供給装置30から得られる水素貯蔵供給装置30における水素残量の測定値データ、重要度判定部130が判定した需要種及び用途それぞれの重要度、需要予測部140による需要予測結果、電力供給源40から得られる電力系統44や電力市場42における電力の価格(コスト)などの情報に基づいて、水素貯蔵供給装置30が供給すべき水素の水素供給計画を作成する演算ブロックである。供給計画作成部150は、作成した水素供給計画の情報をデータベース100に蓄積する。
【0033】
水素製造計画作成部(製造計画作成部)160は、供給計画作成部150が作成した水素供給計画の情報、水素製造装置20から得られる水素製造装置20の運用情報、電力供給源40から得られる電力系統44での電力の価格(コスト)などの情報に基づいて、水素製造装置20がなすべき運転計画や水素の製造計画を作成する演算ブロックである。製造計画作成部160は、作成した製造計画をデータベース100に蓄積する。なお、供給計画作成部150および製造計画作成部160は、一つの演算ブロックが処理を行ってもよい。また、水素の供給計画と製造計画とは一つの計画として作成されてもよい。
【0034】
(第1実施形態の動作)
続いて、
図1ないし
図4を参照して、第1実施形態の計画装置10の動作を説明する。
【0035】
(需要情報の取得と蓄積)
需要情報受信部106は、水素需要家50から需要情報を取得する(S200)。需要情報は、水素需要家50としてのFCV52や燃料電池54など具体的な水素消費先に関する情報を含んでいる。すなわち、水素製造装置20が製造すべき水素の量、水素貯蔵供給装置30が供給すべき量を計算するにあたって指標となるデータである。
【0036】
需要情報受信部106は、取得した需要情報をデータベース100に蓄積する(S210)。需要情報受信部106は、需要種、用途、具体的な需要量を対応付けてデータベース100に保存する。
【0037】
(需要種と用途の判別)
判別部110は、所定のタイミングでデータベース100に蓄積された需要情報を読み出し、需要それぞれの需要種と用途を判別する(S220)。これは、総合需要度を算出するために二種以上のパラメータを用いて需要ごとの重要度を判定するものである。判別部110は、水素需要家50から取得されデータベース100に蓄積された需要情報に含まれる具体的な水素需要先について、需要種と用途を判別して区分けする。例えば、水素需要先が路線バスであれば、需要種が「バス」であり用途が「定期路線」であると判別し、需要情報に判別結果を付加する。判別処理を経た需要情報はデータベース100に蓄積される。なお、「需要種」と「用途」は一例であり、他のパラメータを使用してもよい。
【0038】
(重要度の設定)
重要度設定部120は、判別部110が需要情報の水素需要先について需要種と用途を判別した際、重要度が付されているか判定する(S230)。需要種や用途がデータベース100に蓄積された需要情報に存在しない場合(S230のYes)、当該需要種や用途には重要度が付されていない。重要度の設定がない場合、重要度設定部120は、重要度の設定を行う(S240)。
【0039】
重要度設定部120による重要度の設定は、手動、自動、手動及び自動、学習などの方法により行う。以下、
図4を参照して重要度設定部120により設定する重要度の設定方法について説明する。
【0040】
図4に示す例では、需要種及び用途の重要度は、それぞれ5段階の数値により設定される。重要度の数値が大きい場合には重要度が高く、小さい場合には重要度が低いことになる。
【0041】
需要種及び用途の重要度は、例えば、燃料の利用頻度が高い場合、燃料の使用変化率が大きい場合、公共性が高い場合などに高い数値が設定される。また、需要種及び用途の重要度は、水素購入費用や水素需要量、購入安定度などを基準に決定してもよい。例えば、水素購入費用であれば、水素需要家50によって水素購入費用がまちまちな場合に、最も高い価格で購入する水素需要家の需要種や用途の重要度を高く設定してもよい。また、水素需要量であれば、相対的に多くの水素を購入する水素需要家50の需要種や用途の重要度を高く設定してもよい。購入安定度であれば、安定的に水素を購入する水素需要家50の重要度を高く設定することができる。すなわち、この実施形態の計画装置10が用いる重要度の指標は、水素の供給量とそれによる収益、水素を製造する電力コストと水素供給による収益とのバランス、水素購入費用や水素需要量、水素の購入安定度などを基準に設定することができる。
【0042】
例えば
図4に示す例では、同じ需要種「乗用車」の場合であっても、使用頻度が高い「自家用:高使用頻度」の方が高い用途重要度が設定され、結果として総合重要度が高く設定されている。また、需要種「乗用車」と「バス」とでは、より公共性の高い「バス」の方が高い需要種重要度が設定されている。
【0043】
また、例えば需要種がフォークリフトであった場合、用途が「荷下ろしや運搬」であれば、走行距離が比較的少なくなり、燃料の使用変化率が小さくなる。一方、用途が「運搬」であれば、倉庫間の運搬にも利用されることから燃料の使用変化率が高くなる。このような場合、需要種が「フォークリフト」であっても用途が「運搬用」の用途重要度を高く設定することで、総合重要度を高く設定することができる。
【0044】
さらに、重要度の設定方法として、需要種及び用途に応じたサービス率を設定してもよい。「サービス率」とは、水素需要家50の要求に対してどの程度満足に対応できるかという指標である。例えば、ある需要種及び用途のサービス率が80%であった場合、水素需要先の要求が水素タンクの満タンであったとしても、80%だけを供給するように、サービス率を加味して重要度を調整する。同様に、サービス率に応じて水素を供給する時間帯を意図的に変更してもよい。
【0045】
必要な重要度の設定が終わると、重要度設定部120は、重要度判定テーブルに重要度を設定してデータベース100に蓄積する(S250)。
【0046】
(重要度判定)
重要度判定部130は、データベース100に蓄積された重要度判定テーブルに基づいて、水素需要家50から取得しデータベース100に蓄積された需要情報に含まれる水素需要先それぞれの重要度を判定する(S260)。これにより、水素需要家50のうち個々の水素需要先が重要度と対応付けられる。重要度判定部130は、重要度が付された需要情報をデータベース100に蓄積する。
【0047】
(需要量予測)
需要予測部140は、需要情報に追記された需要種、用途、及び燃料利用頻度情報(燃料利用情報)などに基づき、水素需要量を予測する(S270)。需要予測部140は、作成した水素需要量や需要予測結果をデータベース100に蓄積する。
【0048】
(水素貯蔵供給計画)
供給計画作成部150は、水素貯蔵供給装置30の水素残量、データベース100に蓄積された需要情報及び水素需要先に対応する重要度、需要予測結果、電力系統44や電力市場42における電力の価格などの情報に基づいて、水素貯蔵供給計画を作成する(S280)。水素供給計画の作成に当たっては、水素需要先ごとに設定された総合重要度の指標を用いる。
【0049】
例えば、水素貯蔵供給装置30での水素残量が十分でなく水素需要家50に供給可能な水素が不足する場合、総合重要度の低い需要種及び用途に対しては水素の供給を抑制的に計画し、水素貯蔵供給装置30の供給能力が十分となるまで供給を停止することが考えられる。あるいは、総合重要度の低い需要種及び用途に対しては供給するタイミングを意図的に変更し、水素貯蔵供給装置30の供給能力が十分な時間帯に供給を行うことも考えられる。
【0050】
水素貯蔵供給計画は、水素貯蔵供給装置30から複数の水素需要先へ水素を供給するタイミングや供給する水素量などを独立変数と設定し、水素貯蔵供給装置30における水素残量等を従属変数と設定し、コストやCO2排出量などを水素需要先の重要度で除した値を評価関数として、水素需要を満たすような制約式の上で混合整数線形計画問題を立式し最適化を行うことにより作成できる。ここで「コスト」は、水素の供給に係る費用であり、水素貯蔵や供給に係る部材の交換費用を含めてもよい。
【0051】
水素貯蔵供給計画の作成は、他の方法を用いてもよい。例えば、遺伝的アルゴリズムなどのメタヒューリスティックな方法、強化学習などの機械学習を用いた方法、評価関数をコストやCO2排出量などとおき水素需要を満たすような制約式の上で混合整数線形計画問題を立式して最適化する方法が例示される。ここで、評価関数をコストやCO2排出量などとおき水素需要を満たすような制約式の上で混合整数線形計画問題を立式して最適化する方法において解が求まらなかった場合に、重要度によって調整した水素需要を満たすように変更した制約式の上で混合整数線形計画問題を立式し最適化してもよい。
【0052】
さらに、評価関数をコストやCO2排出量と水素需要不足ペナルティとの重み付き和とおき、水素需要を満たすような制約式の上で混合整数線形計画問題を立式して最適化を行った上で、ペナルティが許容される閾値を超えた場合に重要度によって調整した水素需要を満たすように変更した制約式の上で混合整数線形計画問題を立式して最適化する方法も挙げられる。ここで、別のシステムとの間で重要度によっての水素需要の調整のために何度もやり取りを行ってもよい。この時、当該別システム側では縮退運転やシフトなどで需要を変更してもよい。
【0053】
このように、電力情報受信部102や水素情報送受信部104、需要情報受信部106などにより集められた水素貯蔵供給装置30の水素残量、電力や水素の需要情報及び水素需要先に対応する重要度、需要予測結果、電力系統44や電力市場42における電力の価格などの各種情報は、供給計画作成部150が水素貯蔵供給計画を作成する際に制約式の確定に資するものである。
【0054】
作成した水素貯蔵供給計画は、データベース100に蓄積するとともに、水素情報送受信部104を介して水素貯蔵供給装置30に送られる。水素貯蔵供給装置30は、水素貯蔵供給計画に基づき貯蔵している水素を水素需要家50に供給する。
【0055】
(水素製造計画)
製造計画作成部160は、水素貯蔵供給計画、水素製造装置20の運用情報、電力供給源40から得られる電力系統44での電力の価格などの情報に基づいて、水素の製造計画を作成する(S290)。
【0056】
水素製造計画は、計画単位ごとに水素製造装置20への入力電力を独立変数とおき、水素製造装置20から出力される水素量などを従属変数とおき、水素貯蔵供給計画で求めた水素貯蔵量を満たすような制約式の上でコストを評価関数とした混合整数線形計画問題を立式して最適化することにより作成できる。ここでの「コスト」とは、水素の製造に係る費用であり、水素製造装置20に供給される電力などによる電力コストや水素製造に係る部材の交換費用などを含めてもよい。
【0057】
また、水素製造計画は、遺伝的アルゴリズムなどのメタヒューリスティックな方法や、強化学習などの機械学習を用いた方法を適用して作成してもよい。
【0058】
このように、第1実施形態の計画装置10では、水素需要先の需要種や用途に応じて重要度を設定し、この重要度を加味して水素貯蔵供給計画や水素製造計画を作成するので、水素需要家の需要に最大限応えつつ効率的な水素製造、水素貯蔵、水素供給を実現することができる。
【0059】
なお第1実施形態では、水素貯蔵供給装置30から供給すべき水素の水素供給計画を水素供給計画作成部150が作成し、水素製造装置20がなすべき運転計画や水素の製造計画を水素製造計画作成部160が作成しているが、これには限定されない。例えば、水素供給計画作成部150および水素製造計画作成部160の各機能を併せ持った供給製造計画作成部を備えて一つの演算部により複数の計画を作成してもよい。
【0060】
(第2実施形態)
次に、
図5および
図6を参照して、第2実施形態の水素供給システム1aおよび計画装置10aについて説明する。
図5および
図6に示すように、第2実施形態に係る水素供給システム1aは、第1実施形態における水素供給システム1から水素製造装置20を省略したものである。以下の説明において、共通する要素について共通の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0061】
図5に示すように、この実施形態の水素供給システム1aは、水素製造装置を有していない。また、
図6に示すように、この実施形態の計画装置10aは、水素貯蔵供給装置30とのみ情報の送受信を行う水素情報送受信部104aを備えており、製造計画作成部を有していない。
【0062】
供給計画作成部150は、需要予測部140の予測結果、重要度情報、電力供給源40から得た電力情報、水素貯蔵供給装置30から得た貯蔵情報などに基づいて水素供給計画を作成する。
【0063】
図6に示す構成の計画装置10aにおいても、水素需要先の需要種や用途に応じて重要度を設定し、この重要度を加味して水素貯蔵供給計画を作成するので、水素需要家の需要に最大限応えつつ効率的な水素貯蔵、水素供給を実現することができる。
【0064】
(第3実施形態)
次に、
図7を参照して、第3実施形態の水素供給システム1bおよび計画装置10bについて説明する。
図7に示すように、第3実施形態に係る水素供給システム1bは、第1実施形態における水素供給システム1のうち、水素需要家50bが水素ではなく電力を消費する電気自動車(EV)53を含むものである。すなわち、水素需要家50bに水素を直接消費しない形態の要素(電力供給源40からの電力を直接消費する要素)を含んでいても、第1実施形態に係る計画装置10をそのまま適用することができる。
【0065】
(第4実施形態)
次に、
図8を参照して、第4実施形態の水素供給システム1cおよび計画装置10cについて説明する。
図8に示すように、第4実施形態に係る水素供給システム1cは、第1実施形態における水素供給システム1の電力供給源40に加えて、蓄電池40cを備えるとともに、水素需要家50cに水素を直接消費しない形態の要素(蓄電池40cからの電力を直接消費する電気自動車(EV)53)を含んだものである。すなわち、電力供給源40の電力を用いて充電され、EV53に直接電力を供給する蓄電池40cを備えたものである。以下の説明において、共通する要素について共通の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0066】
第4実施形態の水素供給システム1cでは、水素貯蔵供給装置30からの水素を消費しない電力供給源たる蓄電池40cを備え、直接EV53に電力を供給する。このとき、計画装置10cは、図示しない電力情報受信部を介して蓄電池40cからも電力情報や需要情報などを受信可能に構成されている。
【0067】
蓄電池40cは、電力源としては電力供給源40と競合する。すなわち、蓄電池40cにおける電力情報や需要情報は、電力供給源40から水素製造装置20などへの電力情報や需要情報に影響を与える。この実施形態の計画装置10cは、図示しない製造計画作成部が水素製造計画を作成する際に、蓄電池40cの電力情報や需要情報をパラメータの一つとして利用する。
【0068】
この実施形態の計画装置10cによれば、直接水素需要家50と水素の需給が関係しない要素に対する電力供給源の電力情報や需要情報を加味するので、より正確な水素製造計画を作成することができる。
【0069】
(第5実施形態)
次に、
図9および
図10を参照して、第5実施形態の水素供給システム1dおよび計画装置10dについて説明する。
図9に示すように、第5実施形態に係る水素供給システム1dは、第1実施形態における水素供給システム1の水素貯蔵供給装置30を水素貯蔵配分装置30aに置き換えるとともに、水素供給装置30bを水素需要家50に備えたものである。すなわち、水素供給システムにおける水素供給要素を水素需要家50に置くものである。以下の説明において、共通する要素について共通の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0070】
この実施形態における水素貯蔵配分装置30aおよび水素供給装置30bは、第1実施形態の水素貯蔵供給装置30の機能を分割したものである。
図9に示す例では、水素貯蔵配分装置30aは、水素製造装置20が製造した水素を貯蔵し、水素需要家50に配置された複数の水素供給装置30bそれぞれに適正な量の水素を配分する。水素の配分を受けた水素供給装置30bは、配下のFCV52や燃料電池54それぞれに対して所定の供給量の水素を供給する。すなわち、水素貯蔵配分装置30aは、水素需要先の重要度ではなく水素供給装置ごとの重要度に基づいて水素配分量を調整可能に構成される。
【0071】
具体的には、
図10に示すように、水素を需要先に供給する水素供給装置30bが水素需要家50として配置されているので、需要情報受信部106は、水素需要家50の水素提供先や水素供給装置30bが提供する水素情報や水素の需要情報などを受信する。例えば、
図9に示すように、FCV52に水素を供給する水素供給装置30bと燃料電池54に水素を供給する水素供給装置30bが存在する場合、FCV52の重要度と燃料電池54の重要度を、それぞれに水素を供給する水素供給装置30bに対する水素の配分量によって供給先への水素の量を調整することができる。
【0072】
この実施形態の重要度設定部120dによる重要度の設定は、第1実施形態と同様に行うが、需要種及び用途の設定が水素需要家50における水素供給装置30bである点が第1実施形態と相違する。以下、
図11を参照して重要度設定部120dにより設定する重要度の設定方法について説明する。
【0073】
この実施形態における需要種及び用途の重要度は、例えば、燃料の供給頻度が高い場合、燃料の供給変化率が大きい場合、公共性が高い場合などに高い数値が設定される。また、需要種及び用途の重要度は、水素購入費用や水素需要量を基準に決定してもよい。例えば、水素購入費用であれば、水素需要家50における水素供給費用がまちまちな場合に、最も高い価格で供給を受ける水素需要家の需要種や用途の重要度を高く設定してもよい。また、水素需要量であれば、相対的に多くの水素を購入する水素需要家50の需要種や用途の重要度を高く設定してもよい。
【0074】
例えば
図11に示す例では、需要種が水素供給装置30bとしての「大型車用充填装置」「中・小型車用充填装置」「水素配送車用貯蔵装置」が設定されている。また、用途として「事業用」「自家用」「公共用」が設定されている。需要種「大型車用充填装置」と「中・小型車用充填装置」とでは、より公共性の高い「大型車用充填装置」の方が高い需要種重要度が設定される。用途も同様であり、用途「公共用」、「事業用」、「自家用」について公共性の高い順に用途重要度が設定される。
【0075】
この実施形態の計画装置10dは、水素供給計画に替えて水素配分計画を作成する。すなわち、水素需要家50に配置された複数の水素供給装置30bに対する水素の配分量を計画する。水素需要家50における水素の需要先が多種類に及んだ場合、水素供給計画はそのすべての種類に対応する必要があるが、水素配分計画は、ある程度水素需要先ごとにグループ分けした水素供給装置30bへの水素配分量を規定すればよいから、構成をシンプルにすることができる。
【0076】
(第6実施形態)
次に、
図12を参照して、第6実施形態の水素供給システム1eおよび計画装置10eについて説明する。
図12に示すように、第6実施形態に係る水素供給システム1eの計画装置10eは、第1実施形態における水素供給システム1における判別部110、重要度設定部120、重要度判定部130および需要予測部140を充填需要管理システム2eとして計画装置10から切り離した構成を有する。以下の説明において、共通する要素について共通の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0077】
充填需要管理システム2eは、判別部110e、重要度設定部120e、重要度判定部130eおよび需要予測部140eを備えている。この実施形態の判別部110e、重要度設定部120e、重要度判定部130eおよび需要予測部140eは、それぞれ第1実施形態の判別部110、重要度設定部120、重要度判定部130および需要予測部140と同様の機能を備えている。充填需要管理システム2eは、計画装置10eから電力情報、電力の需要情報、重要度情報、燃料利用情報、水素情報、水素の需要情報などを受信し、水素需要量や需要予測を算出して計画装置10eに返す。
【0078】
計画装置10eは、インタフェース108を備えている。インタフェース108は、充填需要管理システム2eを計画装置10eと接続するインタフェースである。計画装置10eは、電力情報、電力の需要情報、重要度情報、燃料利用情報、水素情報、水素の需要情報などをインタフェース108を介して送信し、水素需要量や需要予測を受信する。
【0079】
この実施形態の水素供給システム1eによれば、計画装置の構成をシンプルにすることができる。
【0080】
(第7実施形態)
次に、
図13を参照して、第7実施形態の水素供給システム1fおよび計画装置10fについて説明する。
図13に示すように、第7実施形態に係る水素供給システム1fは、第5実施形態の水素供給システム1dの計画装置10dにおける判別部110、重要度設定部120、重要度判定部130および需要予測部140を充填需要管理システム2fとして計画装置10から切り離した構成を有する。
【0081】
充填需要管理システム2fは、判別部110f、重要度設定部120f、重要度判定部130fおよび需要予測部140fを備えている。この実施形態の判別部110f、重要度設定部120f、重要度判定部130fおよび需要予測部140fは、それぞれ第1実施形態の判別部110、重要度設定部120、重要度判定部130および需要予測部140と同様の機能を備えている。充填需要管理システム2fは、計画装置10fから電力情報、電力の需要情報、重要度情報、燃料利用情報、水素情報、水素の需要情報などを受信し、水素需要量や需要予測を算出して計画装置10fに返す。
【0082】
計画装置10fは、インタフェース108を備えている。インタフェース108は、充填需要管理システム2fを計画装置10fと接続するインタフェースである。計画装置10fは、電力情報、電力の需要情報、重要度情報、燃料利用情報、水素情報、水素の需要情報などをインタフェース108を介して送信し、水素需要量や需要予測を受信する。
【0083】
この実施形態の水素供給システム1fによれば、計画装置の構成をシンプルにすることができる。
【0084】
(第8実施形態)
次に、
図14を参照して、第8実施形態の水素供給システム1gについて説明する。
図14に示す実施形態では、再生可能エネルギーの要素として再生可能エネルギー発電装置46を有している。具体的には、電力市場や電力系統を介さずに水素製造装置20や水素貯蔵供給装置30へ直接電力を供給する太陽光発電所や風力発電所等の再生可能エネルギー発電所(オンサイト再エネ)である。このとき、計画装置10は、再生可能エネルギーを運用するシステムを通じて再生可能エネルギー発電装置から供給される電力に要する費用(コスト)などの情報を電力情報として取得することができても良い。
【0085】
この実施形態の水素供給システム1gによれば、水素製造装置20や水素貯蔵供給装置30が電力系統44とは異なる再生可能エネルギー発電に由来する電力源から電力をうける形態でも水素製造計画を作成することができる。
【0086】
(第9実施形態)
次に、
図15を参照して、第9実施形態の水素供給システム1hについて説明する。
図15に示す実施形態は、第8実施形態の水素供給システム1gにおける再生可能エネルギー発電装置46が、水素製造装置20及び水素貯蔵供給装置30に加えて、電力系統44に対しても電力を供給可能に構成したものである。すなわち、再生可能エネルギー発電により発電される電力は、電力供給源40に供給(売電)されてもよい。
【0087】
この実施形態の水素供給システム1hにおいては、水素製造装置20や水素貯蔵供給装置30、電力系統44が再生可能エネルギー発電に由来する電力源から電力をうける形態でも水素製造計画を作成することができる。
【0088】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
1…水素供給システム、10…計画装置、20…水素製造装置、30…水素貯蔵供給装置、40…電力供給源、42…電力市場、44…電力系統、50…水素需要家、52…燃料電池自動車、54…燃料電池、56…建物、100…記憶部、102…電力情報受信部、104…水素情報送受信部、106…需要情報受信部、110…判別部、120…重要度設定部、130…重要度判定部、140…需要予測部、150…供給計画作成部、160…製造計画作成部。