(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140147
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電動車
(51)【国際特許分類】
B60K 11/06 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B60K11/06 ZHV
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051154
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井川 佑生
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038AA03
3D038AA09
3D038AB01
3D038AC22
3D038AC27
(57)【要約】
【課題】フィルタカバーの内部に浸入した液体がフィルタへ取り込まれることを抑制できる電動車を提供する。
【解決手段】電動車は、電池パックと、ブロワと、ブロワカバーと、フィルタと、フィルタカバーと、を備える。ブロワは、電池パックに空気を供給する。ブロワカバーは、上方に向く上面と、上面から突出する凸部と、を有する。ブロワカバーは、ブロワを覆う。上面には、ブロワに吸引される空気が通過する吸気口が設けられる。凸部には、上面よりも上方で凸部の表面から下方に窪んだ溝が設けられる。フィルタは、吸気口に設けられる。フィルタカバーは、上面、凸部、及びフィルタを覆う。凸部とフィルタカバーとは、上面よりも上方で互いに合わせられる。溝は、凸部とフィルタカバーとが合わせられた部分よりもフィルタに近い。電動車は、上下方向と直交する方向においてフィルタから離間した位置に当該溝を流れる液体を排出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パックと、
前記電池パックに空気を供給するブロワと、
上方に向く第1の面と、前記第1の面から突出する凸部と、を有し、前記ブロワを覆い、前記ブロワに吸引される空気が通過する吸気口が前記第1の面に設けられ、前記第1の面よりも上方で前記凸部の表面から下方に窪んだ溝が当該凸部に設けられた、ブロワカバーと、
前記吸気口に設けられたフィルタと、
前記第1の面、前記凸部、及び前記フィルタを覆う、フィルタカバーと、
を備え、
前記凸部と前記フィルタカバーとは、前記第1の面よりも上方で互いに合わせられ、
前記溝は、前記凸部と前記フィルタカバーとが合わせられた部分よりも前記フィルタに近く、上下方向と直交する方向において前記フィルタから離間した位置に当該溝を流れる液体を排出する、
電動車。
【請求項2】
前記凸部は、上下方向と直交する第1の方向における前記第1の面の端から突出するとともに、上下方向と直交し且つ前記第1の方向と交差する第2の方向に延び、
前記溝は、前記第2の方向に延び、
前記フィルタは、前記第2の方向において前記溝の両端の間に位置する、
請求項1に記載の電動車。
【請求項3】
前記凸部は、前記第1の面よりも上方に位置するとともに上方に向く第2の面と、前記第1の面と前記第2の面との間に設けられた第3の面と、を有し、前記第2の面に前記溝が設けられ、
前記第3の面は、前記第2の面から円弧状に延びる曲面を有する、
請求項2に記載の電動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車(HV:Hybrid Vehicle)や電気自動車(EV:Electric Vehicle)などの電動車は、電池パックや、電池パックを冷却するブロワを備えている。電池パック及びブロワは、カバーによって水などの液体から保護される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カバーは、ブロワを覆うとともにフィルタが設けられたブロワカバーと、フィルタを覆うフィルタカバーと、のような複数の部材を有する。この場合、ブロワカバーとフィルタカバーとが合わせられた部分から、カバーの内部へ水などの液体が浸入する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、フィルタカバーの内部に浸入した液体がフィルタへ取り込まれることを抑制できる電動車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明に係る電動車は、電池パックと、ブロワと、ブロワカバーと、フィルタと、フィルタカバーと、を備える。ブロワは、電池パックに空気を供給する。ブロワカバーは、上方に向く第1の面と、第1の面から突出する凸部と、を有する。ブロワカバーは、ブロワを覆う。第1の面には、ブロワに吸引される空気が通過する吸気口が設けられる。凸部には、第1の面よりも上方で凸部の表面から下方に窪んだ溝が設けられる。フィルタは、吸気口に設けられる。フィルタカバーは、第1の面、凸部、及びフィルタを覆う。凸部とフィルタカバーとは、第1の面よりも上方で互いに合わせられる。溝は、凸部とフィルタカバーとが合わせられた部分よりもフィルタに近い。電動車は、上下方向と直交する方向においてフィルタから離間した位置に当該溝を流れる液体を排出する。
【0007】
この構成によれば、凸部に設けられた溝は、凸部とフィルタカバーとが合わせられた部分よりもフィルタに近い。このため、液体は、フィルタに到達することなく、溝に入り、溝を流れてフィルタから離間した位置に排出される。これにより、電動車は、フィルタカバーの内部に浸入した液体がフィルタへ取り込まれることを抑制できる。
【0008】
また、本発明に係る電動車において、凸部は、上下方向と直交する第1の方向における第1の面の端から突出するとともに、上下方向と直交し且つ第1の方向と交差する第2の方向に延びる。溝は、第2の方向に延びる。フィルタは、第2の方向において溝の両端の間に位置する。
【0009】
この構成によれば、フィルタよりも長い溝が、凸部とフィルタカバーとが合わせられた部分とフィルタとの間で延びている。このため、液体がより確実に溝に入り、フィルタカバーの内部に浸入した液体がフィルタへ取り込まれることが抑制される。
【0010】
また、本発明に係る電動車において、凸部は、第1の面よりも上方に位置するとともに上方に向く第2の面と、第1の面と第2の面との間に設けられた第3の面と、を有する。第2の面には、溝が設けられる。第3の面は、第2の面から円弧状に延びる曲面を有する。
【0011】
この構成によれば、電動車は、液体の移動を緩やかにし、例えば液体を凸部に沿って流したり、凹部に導入したりすることで、液体がフィルタへ取り込まれることを抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電動車は、フィルタカバーの内部に浸入した液体がフィルタへ取り込まれることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1の実施形態の電動車の一部を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態のフィルタカバーを外した電動車の一部を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態の電動車の一部を示す断面図である。
【
図4】
図4は、第2の実施形態の電動車の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、電動車1の実施形態を詳細に説明する。以下に記載する実施形態の構成、並びに当該構成によってもたらされる作用及び結果(効果)は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。なお、本明細書では、序数は、部品や部材を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0015】
[第1の実施形態]
以下、第1の実施形態に係る電動車1の概略と構造について説明する。
図1は、第1の実施形態の電動車1の一部を示す斜視図である。
図2は、第1の実施形態のフィルタカバー15を外した電動車1の一部を示す斜視図である。
図1及び
図2に示すように、電動車1は、電池パック10と、ブロワ11と、ブロワカバー12と、フィルタ13と、ダクト14と、フィルタカバー15とを備えている。
【0016】
以下の各図では、便宜上、互いに直交する三方向が定義されている。+X方向及び-X方向は、電動車1の運転者にとっての前後方向であり、X軸の正方向は電動車1の運転者にとっての後ろから前に向かう方向である。+Y方向及び-Y方向は、電動車1の運転者にとっての左右方向であり、Y軸の正方向は電動車1の運転者にとっての右から左に向かう方向である。上下方向は電動車1の高さ方向であり、Z軸の正方向は電動車1の下から上へ向かう方向である。なお、本実施形態における前後左右上下のような方向を示す表現は、便宜上の呼称であり、電動車1の位置、姿勢、及び使用態様を限定するものではない。
【0017】
電池パック10は、電動車1に電気を供給する二次電池(バッテリー)であって、例えばリチウムイオン電池である。電池パック10は、例えば、複数のセルと、当該複数のセルを収容するケースとを有する。
【0018】
ブロワ11は、電池パック10を冷却するための空気(気流)を、電池パック10に供給する。例えば、ブロワ11は、ケースの内部に気流を供給することで、複数のセルを冷却する。ブロワ11と電池パック10とは、上下方向と略直交する方向に並べられる。
【0019】
ブロワカバー12は、ブロワ11を上方から覆う。
図2に示すように、ブロワカバー12は、基部21と、フランジ22と、凸部23とを有する。基部21は、略直方体の箱状に形成される。なお、基部21は、この例に限られない。基部21は、上壁31と、側壁32とを有する。
【0020】
上壁31は、Z方向と直交する略四角形の板状に形成される。上壁31は、上面31aを有する。上面31aは、第1の面の一例である。上面31aは、略平坦に形成され、上方に向く。
【0021】
上壁31の上面31aに、吸気口35が設けられる。吸気口35は、例えば、上壁31を貫通し、ブロワカバー12の内部と外部とを連通する。ブロワ11に吸引される空気は、吸気口35を通過して、ブロワ11に向かって流れる。
【0022】
側壁32は、上壁31の外縁から下方に延びている。側壁32は、側面32aを有する。側面32aは、-Y方向における上面31aの端から略下方向に延びている。側面32aは、略平坦に形成され、略-Y方向に向く。
【0023】
フランジ22は、下方における側壁32の縁から、ブロワカバー12の外部に向かって延びている。フランジ22は、底面22aを有する。底面22aは、下方における側面32aから略-Y方向に延びている。底面22aは、略平坦に形成され、略上方向に向く。
【0024】
側壁32の側面32aは、上壁31の上面31aからフランジ22の底面22aに向かって斜め下方に延びている。フランジ22の底面22aは、側壁32の側面32aから斜め下方に延びている。
【0025】
凸部23は、フランジ22の底面22aから略上方向に突出している。凸部23は、±Y方向に延びている。±Y方向は、上下方向と直交する方向であり、第2の方向の一例である。±Y方向において、凸部23の長さは、上壁31の上面31aの長さよりも長い。
【0026】
-X方向における上壁31の端は、凸部23に接続されている。上方における凸部23の端は、上壁31の上面31aよりも上方に位置する。このため、上面31aを基準とすれば、凸部23は、-X方向における上面31aの端から上方に突出している。-X方向は、上下方向と直交する方向であり、第1の方向の一例である。±Y方向は、-X方向と交差(直交)する方向である。
【0027】
凸部23は、表面41と、第1の壁42と、を有する。表面41は、上面41aと、内側面41bと、外側面41cとを有する。上面41aは、第2の面の一例である。内側面41bは、第3の面の一例である。
【0028】
上面41aは、上壁31の上面31aよりも上方に位置している。上面41aは、上方向に向く。上面41aは、下シール面41dを有する。下シール面41dは、第4の面の一例である。下シール面41dは、上面41aの-X方向における端部に位置する。下シール面41dは、+Y方向における凸部23の端部と、-Y方向における凸部23の端部と、の間で±Y方向に延びている。
【0029】
内側面41bは、+X方向における上面41aの端から略下方に延びている。内側面41bは、略+X方向に向く。-X方向における上壁31の上面31aの端と、-X方向における側壁32の側面32aの端とは、内側面41bに接続されている。このため、内側面41bの一部は、凸部23の上面41aと、上壁31の上面31aとの間に設けられている。下方向における内側面41bの端は、フランジ22の底面22aに接続されている。
【0030】
図3は、第1の実施形態の電動車1の一部を示す断面図である。
図3に示すように、内側面41bは、曲面41eと傾斜面41fとを有する。曲面41eは、上面41aから円弧状に延びている。傾斜面41fは、下方向における曲面41eの端から、フランジ22の底面22aに向かって、また、上面41aから上壁31の上面31aに向かって、斜め下方に延びている。傾斜面41fは、略平坦に形成される。上壁31の上面31a及び側壁32の側面32aは、傾斜面41fに接続されている。
【0031】
外側面41cは、内側面41bの反対側に位置する。外側面41cは、-X方向における上面41aの端から下方向に延びている。外側面41cは、略-X方向に向く。
【0032】
第1の壁42は、下シール面41dから略上方に突出している。第1の壁42は、+Y方向における凸部23の端部と、-Y方向における凸部23の端部と、の間で±Y方向に延びている。
【0033】
凸部23に、溝50が設けられる。溝50は、第1の溝51と、二つの第2の溝52,53とを有する。なお、溝50は、二つの第2の溝52,53のうち一方のみを有しても良い。例えば、溝50は、二つの第2の溝52,53のうち第2の溝53のみを有しても良い。
【0034】
第1の溝51は、上面41aに設けられ、上面41aから下方に窪んでいる。すなわち、溝50は、上壁31の上面31aよりも上方で、凸部23の表面41から下方に窪んでいる。
【0035】
第1の溝51は、±Y方向に延びている。±Y方向において、第1の溝51の長さは、上壁31の上面31aの長さよりも長い。±Y方向において、上面31aは、第1の溝51の両端51a,51bの間に位置する。
【0036】
第2の溝52,53は、内側面41bに設けられ、内側面41bから窪んでいる。なお、第2の溝52,53は、内側面41bではなく、外側面41cに設けられても良いし、凸部23の他の面に設けられても良い。
【0037】
一方の第2の溝52は、-Y方向における第1の溝51の端51aに接続される。他方の第2の溝53は、+Y方向における第1の溝51の端51bに接続される。第2の溝52,53は、第1の溝51から、略下方向に延びている。
【0038】
フィルタ13は、吸気口35に設けられる。このため、フィルタ13は、±Y方向において、第1の溝51の両端51a,51bの間に位置している。フィルタ13は、フィルタ本体61と、フレーム62とを有する。
【0039】
フィルタ本体61は、例えば、吸気口35に嵌め込まれる。フィルタ本体61は、当該フィルタ本体61を通過する空気から塵埃を捕集する。フレーム62は、フィルタ本体61を保持する。フレーム62は、例えばネジにより、上壁31に取り付けられる。
【0040】
フレーム62は、凸部23の内側面41bから+X方向に離間している。このため、凸部23の内側面41bと、上壁31の上面31aと、フレーム62とにより、凹部65が形成される。凹部65は、+Y方向における上面31aの端と、-Y方向における上面31aの端と、の間で±Y方向に延びている。
【0041】
ダクト14は、吸気口35とブロワ11との間に設けられている。このため、ダクト14も、ブロワカバー12に覆われている。ダクト14は、吸気口35からブロワ11まで空気を導く。
【0042】
フィルタカバー15は、ブロワカバー12に取り付けられ、ブロワカバー12を覆う。なお、フィルタカバー15は、電池パック10のような他の部品に取り付けられても良い。フィルタカバー15は、上壁71と、二つの側壁72,73と、第2の壁74とを有する。
【0043】
上壁71は、略四角形の板状に形成され、ブロワカバー12から上方に離間している。フィルタカバー15は、上壁31の上面31aと、凸部23の上面41a、内側面41b、及び溝50と、フィルタ13とを、上方から覆う。
【0044】
側壁72は、-Y方向における上壁71の端から略下方に延びている。側壁72は、側壁32の側面32aから-Y方向に離間するとともに、側面32aを覆う。さらに、側壁72は、第2の溝52から-Y方向に離間している。
【0045】
側壁72に、複数のスリット75が設けられる。スリット75は、側壁72を貫通している。ブロワ11に吸引される空気は、スリット75から、側壁32と側壁72との間の空間に流入する。さらに、当該空気は、上壁31と上壁71との間の空間を通って、吸気口35に流入する。
【0046】
側壁73は、-X方向における上壁71の端から略下方に延びている。本実施形態において、側壁73は、上壁71から凸部23の下シール面41dに向かって延びている。側壁73は、上シール面73aを有する。上シール面73aは、第5の面の一例である。上シール面73aは、平坦に形成され、略下方に向く。上シール面73aは、凸部23の下シール面41dに向く。さらに、上シール面73aは、隙間を介して第1の壁42に向く。
【0047】
第2の壁74は、上シール面73aから略下方に突出している。言い換えると、第2の壁74は、上シール面73aから、下シール面41dに向かって突出している。第2の壁74は、+Y方向における側壁73の端部と、-Y方向における側壁73の端部と、の間で±Y方向に延びている。
【0048】
第1の壁42と第2の壁74とは、X方向に隙間を介して並んでいる。第2の壁74は、第1の壁42よりもフィルタ13に近い。なお、第1の壁42が、第2の壁74よりもフィルタ13に近くても良い。
【0049】
凸部23の下シール面41dは、フィルタカバー15の上シール面73aに向く。さらに、下シール面41dは、隙間を介して第2の壁74に向く。このため、凸部23とフィルタカバー15とは、下シール面41dと第2の壁74との間、第1の壁42と第2の壁74との間、及び第1の壁42と上シール面73aとの間の隙間を含む、ラビリンスシールLを形成するように合わせられている。ラビリンスシールLの迷路構造は、フィルタカバー15の内部に液体が浸入することを抑制する。
【0050】
ラビリンスシールLは、上壁31の上面31aよりも上方に位置する。すなわち、凸部23とフィルタカバー15とは、上面31aよりも上方で互いに合わせられる。凸部23とフィルタカバー15とが合わせられる状態は、凸部23とフィルタカバー15とが繋がれる、結合される、連結される、合一される、対面する、又は組み合わされる、のような表現をされることができる。
【0051】
溝50は、凸部23とフィルタカバー15とが合わせられた部分であるラビリンスシールLよりも、フィルタ13に近い。第1の溝51は、ラビリンスシールLと、±Y方向におけるフィルタ13の全域と、の間に介在する。
【0052】
液体が、ラビリンスシールLを通過して、フィルタカバー15の内部に浸入する可能性がある。この場合、ラビリンスシールLを通過した液体は、重力や振動によって、上面41aに形成される第1の溝51へ流入する。その後、液体は、第1の溝51に接続している第2の溝52又は第2の溝53へ流れ、当該第2の溝52,53から凸部23の内側面41bへ放出される。このように、溝50は、±Y方向においてフィルタ13から離間した位置に、当該溝50を流れる液体を排出する。
【0053】
液体は、二つの第2の溝52,53のいずれから排出されても良い。すなわち、溝50は、第1の溝51を流れる液体を分散させることができる。このため、溝50は、多量の液体が第1の溝51に浸入したり、電動車1が前後左右いずれかの方向へ傾いたりした場合でも、液体が第1の溝51から溢れ出すことを抑制できる。
【0054】
また、溝50が二つの第2の溝52,53のうち第2の溝53のみを有する場合、第1の溝51を流れる液体は、フィルタ13よりもスリット75から遠い第2の溝53のみから凸部23の内側面41bへ放出される。そのため、溝50は、液体がフィルタ13よりもスリット75に近い位置から凸部23の内側面41bへ放出されることを抑制する。すなわち、溝50は、当該溝50を流れる液体が、スリット75から吸気口35へ流れる気流に乗ってフィルタ13へ取り込まれることを抑制できる。
【0055】
液体は、重力により内側面41bを伝い、フランジ22の底面22aへ流れる。液体は、例えばフランジ22と側壁72との間の隙間Gを通ってフィルタカバー15の外部へ排出され、又は隙間Gに挿入されたフロアカーペットに吸収される。このように、溝50は、液体がフィルタ13に向かうことを抑制できる。
【0056】
一方で、液体が溝50を越えてフィルタ13に向かって流れる可能性がある。この場合、液体は、凸部23の上面41aから曲面41eへ流れる。曲面41eは、液体の移動を緩やかにする。このため、液体は、曲面41eから傾斜面41fへ緩やかに流れ、凹部65に流入する。液体は、凹部65から、側壁32の側面32aを伝って、フランジ22の底面22aへ向かって流れる。このように、凹部65は、±Y方向においてフィルタ13から離間した位置に、当該溝50を流れる液体を排出する。
【0057】
以上のように、溝50は、フィルタカバー15の内部に浸入した液体を排出する。一方、当該溝50は、フィルタカバー15がブロワカバー12に取り付けられた状態では、フィルタカバー15の外部から見えない。これにより、ブロワカバー12の意匠性が向上する。さらに、フィルタカバー15の外形に凹凸部が少ないことで、フィルタカバー15の内部に液体が浸入することが抑制される。
【0058】
凸部23とフィルタカバー15とが合わせられた部分に形成されるラビリンスシールLは、フィルタカバー15の内部に液体が浸入することを抑制する。すなわち、電動車1は、液体の浸入抑制と排出促進の機能を有している。
【0059】
以上の実施形態において、電動車1は、電池パック10と、ブロワ11と、ブロワカバー12と、フィルタ13と、フィルタカバー15と、を備える。ブロワ11は、電池パック10に空気を供給する。ブロワカバー12は、上方に向く上面31aと、上面31aから突出する凸部23と、を有する。ブロワカバー12は、ブロワ11を覆う。上面31aには、ブロワ11に吸引される空気が通過する吸気口35が設けられる。凸部23には、上面31aよりも上方で凸部23の表面41から下方に窪んだ溝50が設けられる。フィルタ13は、吸気口35に設けられる。フィルタカバー15は、上面31a、凸部23、及びフィルタ13を覆う。凸部23とフィルタカバー15とは、上面31aよりも上方で互いに合わせられる。溝50は、凸部23とフィルタカバー15とが合わせられた部分よりもフィルタ13に近い。電動車1は、上下方向と直交する方向においてフィルタ13から離間した位置に当該溝50を流れる液体を排出する。
【0060】
凸部23とフィルタカバー15とが合わせられた部分から、フィルタカバー15の内部に水のような液体が浸入する可能性がある。しかし、上述の構成では、凸部23に設けられた溝50は、凸部23とフィルタカバー15とが合わせられた部分よりもフィルタ13に近い。このため、液体は、フィルタ13に到達することなく、溝50に入り、溝50を流れてフィルタ13から離間した位置に排出される。これにより、電動車1は、フィルタカバー15の内部に浸入した液体がフィルタ13へ取り込まれることを抑制できる。
【0061】
また、本実施形態では、凸部23は、-X方向における上面31aの端から突出するとともに、±Y方向に延びる。溝50は、±Y方向に延びる。フィルタ13は、±Y方向において溝50の両端51a,51bの間に位置する。
【0062】
液体は、凸部23とフィルタカバー15とが合わせられた部分のうち、±Y方向におけるいずれの位置からも、フィルタカバー15の内部に浸入する可能性がある。しかし、上述の構成では、フィルタ13よりも長い溝50が、凸部23とフィルタカバー15とが合わせられた部分とフィルタ13との間で延びている。このため、液体がより確実に溝50に入り、フィルタカバー15の内部に浸入した液体がフィルタ13へ取り込まれることが抑制される。
【0063】
また、本実施形態では、凸部23は、上面31aよりも上方に位置するとともに上方に向く上面41aと、上面31aと上面41aとの間に設けられた内側面41bと、を有する。上面41aには、溝50が設けられる。内側面41bは、上面41aから円弧状に延びる曲面41eを有する。
【0064】
フィルタカバー15の内部に浸入した液体が溝50から溢れた場合、当該液体は、上面41aから、内側面41bの曲面41eを伝って流れる。もし上面41aと内側面41bとが直角に交わる場合、液体は、上面41aからフィルタ13に向かって飛んでしまう可能性がある。すなわち、上記構成の電動車1は、液体の移動を緩やかにし、例えば液体を凸部23に沿って流したり、凹部65に導入したりすることで、液体がフィルタ13へ取り込まれることを抑制できる。
【0065】
また、本実施形態では、凸部23は、フィルタカバー15に向く下シール面41dと、下シール面41dから突出する第1の壁42と、を有する。フィルタカバー15は、下シール面41dに向く上シール面73aと、上シール面73aから下シール面41dに向かって突出する第2の壁74と、を有する。第1の壁42と第2の壁74とのうち一方は他方よりもフィルタ13に近い。凸部23とフィルタカバー15とは、下シール面41dと第2の壁74との間、第1の壁42と第2の壁74との間、及び第1の壁42と上シール面73aとの間の隙間を含むラビリンスシールLを形成するように合わせられる。
【0066】
上述の構成において、凸部23とフィルタカバー15とが合わせられた部分は、ラビリンスシールLを形成することで、液体がフィルタカバー15の内部に浸入することを抑制できる。凸部23とフィルタカバー15とが合わせられた部分から液体が浸入したとしても、当該液体は、溝50に入って排出される。これにより、電動車1は、液体がフィルタ13へ取り込まれることをより確実に抑制できる。
【0067】
[第2の実施形態]
以下、第2の実施形態に係る電動車1の概略と構造について説明する。
図4は、第2の実施形態の電動車1の一部を示す断面図である。
図4に示すように、第2の実施形態において、第2の溝52の下方の端部52aは、フィルタ13よりも下方に位置する。このとき、第2の溝52は、凸部23の曲面41eから傾斜面41fへ延びており、傾斜面41fから-X方向に窪んでいる。
【0068】
凸部23のうち、第2の溝52と、-Y方向における当該凸部23の端と、の間の部分は、スリット75から吸気口35へ流れる気流に対する障壁となり、第2の溝52を流れる液体が、当該気流に乗ってフィルタ13へ取り込まれることを抑制できる。
【0069】
以上の第2の実施形態では、溝50は、上面41aに設けられた第1の溝51と、内側面41bに設けられるとともに第1の溝51に接続された第2の溝52と、を有する。第2の溝52の下方の端部52aは、フィルタ13よりも下方に位置する。
【0070】
上述の構成とすることで、第1の溝51を流れる液体は、第2の溝52の下方の端部52aから、溝50の外部へ排出される。溝50の外部へ排出された液体は、フィルタ13よりも下方で溝50(第2の溝52)の外部へ排出されるため、例えばブロワ11に吸引される空気の気流に乗ったとしても、フィルタ13へ取り込まれにくい。従って、電動車1は、液体がフィルタ13へ取り込まれることを抑制できる。
【0071】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 電動車
10 電池パック
11 ブロワ
12 ブロワカバー
13 フィルタ
15 フィルタカバー
23 凸部
31a 上面
35 吸気口
41 表面
41a 上面
41b 内側面
41d 下シール面
41e 曲面
42 第1の壁
50 溝
51 第1の溝
51a、51b 第1の溝の端
52、53 第2の溝
52a 第2の溝の下方の端部
73a 上シール面
74 第2の壁
L ラビリンスシール