IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社三栄水栓製作所の特許一覧

<>
  • 特開-シャワーヘッド 図1
  • 特開-シャワーヘッド 図2
  • 特開-シャワーヘッド 図3
  • 特開-シャワーヘッド 図4
  • 特開-シャワーヘッド 図5
  • 特開-シャワーヘッド 図6
  • 特開-シャワーヘッド 図7
  • 特開-シャワーヘッド 図8
  • 特開-シャワーヘッド 図9
  • 特開-シャワーヘッド 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140160
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】シャワーヘッド
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/28 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A47K3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051178
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡壁 隆聖
【テーマコード(参考)】
2D132
【Fターム(参考)】
2D132FA13
2D132FB02
2D132FC02
2D132FD01
2D132FJ09
2D132FJ11
2D132FJ13
2D132FJ16
2D132FJ18
(57)【要約】
【課題】止水時におけるヘッド内部の残留水の外部への漏出を適切に抑制することが可能なシャワーヘッドを提供すること。
【解決手段】シャワーアームSAから供給される湯水を外部に散水する中空状のシャワーヘッド1は、天板を成す本体板2と、底板を成す散水板3と、を有する。本体板2は、シャワーアームSAと接続される接続口B1を備える。散水板3は、本体板2との間のヘッド内空間Sに供給される湯水を外部に散水する複数の散水孔E2を備える。散水板3が、全ての散水孔E2を個々に取り囲むようにヘッド内空間Sに突出して、止水時に散水板3の上に残る残留水の複数の散水孔E2からの漏出を堰き止める複数の堤部E3を有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャワー通水路から供給される湯水を外部に散水する中空状のシャワーヘッドであって、
当該シャワーヘッドの天板を成す本体板であって、前記シャワー通水路と接続される接続口を備える前記本体板と、
当該シャワーヘッドの底板を成す散水板であって、前記本体板との間のヘッド内空間に供給される湯水を外部に散水する複数の散水孔を備える前記散水板と、を有し、
前記散水板が、全ての前記散水孔を個々に又は複数ずつまとめて取り囲むように前記ヘッド内空間に突出して止水時に前記散水板の上に残る残留水の複数の前記散水孔からの漏出を堰き止める複数の堤部を有するシャワーヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のシャワーヘッドであって、
複数の前記堤部の突出高さが、前記散水板の板厚よりも大きいシャワーヘッド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシャワーヘッドであって、
個々の前記堤部の突出した先の開口を散水圧によって開くように弾性的に閉じる複数の弾性弁体を更に有するシャワーヘッド。
【請求項4】
請求項3に記載のシャワーヘッドであって、
前記本体板が、複数の前記堤部と突出方向に対向する各位置にそれぞれ凹部を有し、
複数の前記凹部が、各々の周囲部に、複数の前記弾性弁体の周縁を対応する複数の前記堤部に前記突出方向に押し付ける弁押付部と、複数の前記弾性弁体との当接を避けるように複数の前記凹部の凹空間を部分的に拡張させて該凹空間と前記ヘッド内空間とを連通させる拡張凹部と、を周方向に並んで有するシャワーヘッド。
【請求項5】
請求項3に記載のシャワーヘッドであって、
複数の前記弾性弁体が、前記散水板の上面に沿って積層状に重ねられる1枚のゴムシートに形成されるシャワーヘッド。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のシャワーヘッドであって、
複数の前記堤部が、全ての前記散水孔を個々に取り囲むように形成されるシャワーヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワーヘッドに関する。詳しくは、シャワー通水路から供給される湯水を外部に散水する中空状のシャワーヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、浴室の壁や天井に取り付けられて、使用者に頭上からシャワー水を散水する、いわゆるオーバーヘッド式のシャワー装置が開示されている。このシャワー装置は、シャワーヘッドの内部に逆止弁が取り付けられており、止水時にシャワー通水路が遮断される構成とされる。それにより、止水時に、シャワーヘッドからの散水を短時間で止めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-29573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、止水時に、シャワーヘッドからの散水自体は止められるものの、シャワーヘッド内に残留水が留まりやすい。そのため、特に、シャワーヘッドが斜めに傾けられている場合には、止水時に内部の残留水が重力作用により各散水孔を伝って外部へと垂れ落ちやすくなる。止水時に意図せず残留水が垂れ落ちると、使用者が不快に感じることがある。そこで、本発明は、止水時におけるヘッド内部の残留水の外部への漏出を適切に抑制することが可能なシャワーヘッドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のシャワーヘッドは、次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明は、シャワー通水路から供給される湯水を外部に散水する中空状のシャワーヘッドであって、当該シャワーヘッドの天板を成す本体板であって、前記シャワー通水路と接続される接続口を備える前記本体板と、当該シャワーヘッドの底板を成す散水板であって、前記本体板との間のヘッド内空間に供給される湯水を外部に散水する複数の散水孔を備える前記散水板と、を有し、前記散水板が、全ての前記散水孔を個々に又は複数ずつまとめて取り囲むように前記ヘッド内空間に突出して止水時に前記散水板の上に残る残留水の複数の前記散水孔からの漏出を堰き止める複数の堤部を有するシャワーヘッドである。
【0007】
第1の発明によれば、散水板に形成された複数の堤部により、止水時に散水板の上に残る残留水が複数の散水孔から漏出しないよう堰き止められる。その結果、止水時におけるヘッド内部の残留水の外部への漏出を適切に抑制することができる。
【0008】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、複数の前記堤部の突出高さが、前記散水板の板厚よりも大きいシャワーヘッドである。
【0009】
第2の発明によれば、止水時におけるヘッド内部の残留水の外部への漏出をより適切に抑制することができる。
【0010】
本発明の第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、個々の前記堤部の突出した先の開口を散水圧によって開くように弾性的に閉じる複数の弾性弁体を更に有するシャワーヘッドである。
【0011】
第3の発明によれば、複数の弾性弁体により、止水時に散水板の上に残る残留水を、より適切に複数の散水孔から漏出させないよう堰き止めることができる。詳しくは、複数の弾性弁体が個々の堤部の突出した先の開口を閉じるように設けられることで、散水圧が掛けられた際に、個々の弾性弁体を個々の堤部の内部空間を利用して適切に撓ませて開かせることができる。また、このような各弾性弁体を、シャワーヘッドの外観を損なわないようヘッド内空間に適切に設けることができる。
【0012】
本発明の第4の発明は、上記第3の発明において、前記本体板が、複数の前記堤部と突出方向に対向する各位置にそれぞれ凹部を有し、複数の前記凹部が、各々の周囲部に、複数の前記弾性弁体の周縁を対応する複数の前記堤部に前記突出方向に押し付ける弁押付部と、複数の前記弾性弁体との当接を避けるように複数の前記凹部の凹空間を部分的に拡張させて該凹空間と前記ヘッド内空間とを連通させる拡張凹部と、を周方向に並んで有するシャワーヘッドである。
【0013】
第4の発明によれば、各弁押付部により、各弾性弁体の周縁を各堤部に適切に押し付けて閉弁機能させることができる。なおかつ、各拡張凹部により、ヘッド内空間から各散水孔へと至る流路を適切に確保し散水機能を損なわないようにすることができる。
【0014】
本発明の第5の発明は、上記第3又は第4の発明において、複数の前記弾性弁体が、前記散水板の上面に沿って積層状に重ねられる1枚のゴムシートに形成されるシャワーヘッドである。
【0015】
第5の発明によれば、複数の弾性弁体を1枚のゴムシートにまとめて形成することで、ヘッド内部への組み付け性を向上させることができる。なおかつ、複数の弾性弁体が各弁押付部により各堤部の周縁に押し付けられる構成により、ゴムシートを散水板の上面に適切に押さえ付けることができる。その結果、ゴムシートが散水板との間の湯水の入り込みによって浮き上がることを適切に防止することができる。
【0016】
本発明の第6の発明は、上記第1から第5のいずれかの発明において、複数の前記堤部が、全ての前記散水孔を個々に取り囲むように形成されるシャワーヘッドである。
【0017】
第6の発明によれば、止水時におけるヘッド内部の残留水の外部への漏出をより適切に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態に係るシャワーヘッドの概略構成を表す斜視図である。
図2】シャワーヘッドを下側から見た斜視図である。
図3】シャワーヘッドを中心を通る垂直面で切断した部分断面斜視図である。
図4】シャワーヘッドを上側から見た分解斜視図である。
図5図4を下側から見た分解斜視図である。
図6】本体板の底面図である。
図7】ゴムシートをシャワー板に組み付けた状態を表す斜視図である。
図8図3のVIII部を拡大した部分断面斜視図である。
図9図3のIX部を拡大した部分断面斜視図である。
図10】通水によりゴムシートの弁部が開いた状態を表す図9に対応する部分断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0020】
《第1の実施形態》
(シャワーヘッド1の概略構成)
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシャワーヘッド1の構成について、図1図10を用いて説明する。なお、以下の説明において、手前、奥、上、下、左、右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。
【0021】
各図中に示す方向は、それぞれ、シャワーヘッド1の直下に正面を向いて立つ使用者から見た方向となっている。以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、図1図10のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0022】
図1図2に示すように、本実施形態に係るシャワーヘッド1は、浴室の壁面に取り付くシャワーアームSAの先端に取り付けられる、いわゆるオーバーヘッドシャワーとして構成される。具体的には、シャワーヘッド1は、シャワーアームSAの上流側に接続された不図示の混合水栓から供給される湯水を使用者の頭上に向けて散水する構成される。ここで、シャワーアームSAが、本発明の「シャワー通水路」に相当する。
【0023】
図3に示すように、シャワーヘッド1は、その天板を成す本体板2と底板を成す散水板3とが、中空円板状を成す形に組み付けられて構成される。シャワーヘッド1は、その本体板2の中央上部から突出する円筒状の接続管2Bが、図1で前述したシャワーアームSAの先端に流路接続されるようになっている。
【0024】
それにより、シャワーヘッド1は、上記接続管2Bを通じてシャワーアームSAからヘッド内部に湯水の供給を受けられるようになっている。シャワーヘッド1は、そのヘッド内部に湯水が供給されると、散水板3の円板部3Eにあけられた複数の散水孔E2(図2参照)から湯水を外部へと散水する。
【0025】
シャワーヘッド1は、シャワーアームSAからの湯水の供給が止められることで、各散水孔E2からの湯水の散水が止められる。その際、シャワーヘッド1内に溜まる止水後の残留水が各散水孔E2から意図せず垂れ落ちると、使用者が不快に感じることがある。
【0026】
そこで、シャワーヘッド1には、止水時におけるヘッド内部の残留水の外部への漏出を適切に抑制することが可能な構造が組み込まれている。以下、この構造について、シャワーヘッド1の基本構造と併せて詳しく説明する。
【0027】
(各部構成)
図4図5に示すように、シャワーヘッド1は、その天板を成す円板状の本体板2と、底板を成す円板状の散水板3と、を有する。また、シャワーヘッド1は、本体板2と散水板3との間に組み込まれる円板状のゴムシート4を更に有する。本体板2と散水板3とは、それぞれ、インジェクション成形された樹脂部材から成る。
【0028】
図4に示すように、本体板2は、その円板本体を成す円板部2Aと、円板部2Aの中央上部から円筒状に突出する接続管2Bと、を有する。また、図5図6に示すように、本体板2は、円板部2Aの外周縁から外周縁に沿って下方に円筒状に突出する外筒部2Cと、外筒部2Cよりもひと回り小さな同心円筒状を成すように円板部2Aの外周縁から下方に向かって円筒状に突出する内筒部2Dと、を有する。
【0029】
円板部2Aの中央下面には、上方に向かって円錐台状に凹む中央開口A1が形成されている。また、円板部2Aの下面の中央開口A1を除く面内方向の所々の箇所には、十文字状に凹む複数の凹部A2が形成されている。各凹部A2は、互いに略同一の大きさ・形状に凹むように形成されている。
【0030】
図6に示すように、各凹部A2は、具体的には、それらの周囲部に、互いに同一円周の円弧面を成す内周面を備える弁押付部aと、各凹部A2の凹空間を四方に拡張させるように凹む拡張凹部bと、を有する凹形状とされる。弁押付部aは、各凹部A2から四方に開口を広げる各拡張凹部bの間の周方向の4箇所の位置に分かれて形成されている。
【0031】
図5及び図9に示すように、各凹部A2は、散水板3にあけられた各散水孔E2の直上位置にそれぞれ形成されている。図5図6に示すように、各凹部A2は、円板部2Aの中央開口A1を中心とする径方向の4箇所の位置に4つの同心円を描くように周方向に等間隔に複数並んで形成されている。
【0032】
図6に示すように、各凹部A2から四方に開口を広げる各拡張凹部bは、そのうちの1つが各凹部A2から径方向の内側に真っ直ぐ張り出すように形成されている。また、各拡張凹部bのうちの他の1つは、各凹部A2から径方向の外側に真っ直ぐ張り出すように形成されている。また、各拡張凹部bのうちの残りの2つは、各凹部A2から周方向の一側と他側とにそれぞれ張り出すように形成されている。
【0033】
図5図6及び図8に示すように、円板部2Aの中央開口A1には、その内周面の外縁に沿った周方向の複数箇所に、下方に向かって丸ピン状に突出する複数の押さえピンA3が形成されている。これら押さえピンA3は、互いに同一円周上の位置に周方向に等間隔に12本並んで形成されている。
【0034】
また、図5図6に示すように、円板部2Aの下面の中央開口A1と内筒部2Dとの間の周方向の8箇所の位置には、下方に向かって円筒状に突出する嵌込筒A4が形成されている。これら嵌込筒A4は、散水板3に形成された各締結筒E4(図4参照)の直上位置にそれぞれ形成されている。図6に示すように、円板部2Aの各嵌込筒A4が形成された各筒内箇所には、板厚方向に貫通する丸孔が形成されている。
【0035】
図8に示すように、接続管2Bは、その円筒内に、円板部2Aの中央開口A1と連通するように筒軸方向に貫通する接続口B1を備える。接続口B1は、中央開口A1と同一軸心上の位置に形成されている。
【0036】
それにより、接続口B1は、中央開口A1の上方に向かって円錐台状に凹んだ先の位置に丸孔状の開口を形成する構成とされる。上記接続口B1と中央開口A1とによって、上流側のシャワーアームSA(図1参照)から供給される湯水をヘッド内部へと流入させることが可能な流入口が形成されている。
【0037】
図4に示すように、散水板3は、その円板本体を成す円板部3Eと、円板部3Eの外周縁から外周縁に沿って上方に向かって円筒状に突出する嵌合筒3Fと、を有する。円板部3Eの中央上面には、上方に向かって円錐台状に突出する中央凸部E1が形成されている。
【0038】
また、図5に示すように、散水板3の円板部3Eの中央凸部E1を除く面内方向の所々の箇所には、散水用の小孔を成す複数の散水孔E2が形成されている。各散水孔E2は、円板部3Eの中央凸部E1(図4参照)を中心とする径方向の4箇所の位置に4つの同心円を描くように周方向に等間隔に複数並んで形成されている。
【0039】
また、図4及び図9に示すように、円板部3Eの上面には、各散水孔E2の形成箇所を個々に取り囲むように上方に向かって円筒状に突出する複数の堤部E3が形成されている。これら堤部E3は、シャワーヘッド1の止水時にヘッド内部の残留水が各散水孔E2から外部に漏出されないよう堰き止める機能をするものとなっている。各堤部E3の突出高さは、円板部3Eの板厚寸法よりも大きくなっている。各堤部E3の具体的な機能の説明は、後述することとする。
【0040】
図4に示すように、円板部3Eの上面の中央凸部E1と嵌合筒3Fとの間の周方向の8箇所の位置には、上方に向かって円筒状に突出する締結筒E4が形成されている。これら締結筒E4は、互いに同一円周上の位置に等間隔に並んで形成されている。嵌合筒3Fの外周面には、外周面に沿って環状に窪む環状溝F1が形成されている。この環状溝F1には、シール部材となる不図示のOリングが装着される。
【0041】
図4図5に示すように、ゴムシート4は、1枚の円板状のゴム板によって形成されている。ゴムシート4の中央部には、丸孔状に貫通する中央通し孔4Gが形成されている。中央通し孔4Gは、散水板3の中央凸部E1の直上位置に形成され、中央凸部E1に上方から通すことが可能な丸孔形状に形成されている。
【0042】
また、ゴムシート4の中央通し孔4Gを除く面内方向の所々の箇所には、上方に向かって有天円筒状に張り出すように押し出し成形された複数の弾性弁体4Hが形成されている。図4に示すように、各弾性弁体4Hは、散水板3に形成された各堤部E3の直上位置にそれぞれ形成されている。
【0043】
図7及び図9に示すように、各弾性弁体4Hは、散水板3に形成された対応する各堤部E3に上方から包み込むように嵌合させることが可能な有天円筒形状に形成されている。各弾性弁体4Hは、散水板3に形成された各堤部E3に上方から嵌合されることにより、各堤部E3を外周側と上方側とからそれぞれ覆った状態にセットされる。
【0044】
図9に示すように、各弾性弁体4Hの天板部H1には、十文字状に切り込まれたスリットH2(図4も参照)が形成されている。それにより、図10に示すように、各弾性弁体4Hの天板部H1は、それらのスリットH2によって切り分けられた天板部H1の各片を上下に片持ち梁のように撓ませることができるようになっている。
【0045】
図9に示すように、各弾性弁体4Hは、それらの自由状態では、弾性により、天板部H1のスリットH2により切り込まれた各片の間を閉じるように面一状に合わされた状態に保持されるようになっている。それにより、各弾性弁体4Hは、散水板3の対応する各堤部E3の筒上端の開口を塞いで、ヘッド内部の残留水が対応する各堤部E3内へと流れ込むことを堰き止める。
【0046】
図10に示すように、各弾性弁体4Hは、ヘッド内部に湯水が供給されることにより、それらの天板部H1に上流側から散水圧を受ける。それにより、各弾性弁体4Hは、それらのスリットH2によって切り分けられた天板部H1の各片が、互いの間を開くように下方へと押し撓まされる。
【0047】
それにより、湯水が各弾性弁体4Hの天板部H1の各片の間を通って各堤部E3内へと流される。その際、各弾性弁体4Hは、それらの天板部H1の直下に各堤部E3の筒内が位置することから、各堤部E3の内部空間で天板部H1の各片を下方に適切に撓ませられるようになっている。
【0048】
図4に示すように、ゴムシート4の中央通し孔4Gと外周縁との間の周方向の8箇所の位置には、丸孔状に貫通する筒通し孔4Jが形成されている。各筒通し孔4Jは、散水板3に形成された各締結筒E4の直上位置にそれぞれ形成されている。各筒通し孔4Jは、散水板3に形成された各締結筒E4に上方から通すことが可能な丸孔形状に形成されている。
【0049】
(シャワーヘッド1の組み立て方法)
上記構成のシャワーヘッド1は、次の手順によって組み立てられている。先ず、図7に示すように、ゴムシート4を散水板3の円板部3E上にセットする。具体的には、ゴムシート4の中央通し孔4Gを散水板3の中央凸部E1に通しつつ、各筒通し孔4Jを散水板3の対応する各締結筒E4に通すようにゴムシート4を散水板3の円板部3E上にセットする。
【0050】
それにより、ゴムシート4の各弾性弁体4Hが散水板3の対応する各堤部E3に上方から個別に包み込むように被せられる。また、ゴムシート4の各弾性弁体4Hの形成されていない平坦部分である一般面部が、散水板3の円板部3E上に積層状に重ねられるように面当接した状態にセットされる。
【0051】
次に、ゴムシート4がセットされた散水板3を、本体板2の円筒内に下方から真っ直ぐ嵌め込むようにセットする。具体的には、散水板3の嵌合筒3Fを、図5に示す本体板2の外筒部2Cと内筒部2Dとの間に下方から嵌め込むようにセットする。それにより、散水板3の嵌合筒3Fの環状溝F1に装着された不図示のOリングが、本体板2の外筒部2Cの内周面に密着して、嵌合筒3Fと外筒部2Cとの間がシールされる。
【0052】
また、図7に示す散水板3の各締結筒E4が、図5に示す本体板2の円板部2Aの下面から突出する対応する各嵌込筒A4内に下方から嵌め込まれる。次に、図7に示すように、本体板2の各嵌込筒A4の裏側(上側)にある丸孔にそれぞれ上方からビスBを差し込んで、散水板3の対応する各締結筒E4に締結する。それにより、散水板3と本体板2とが互いの間にゴムシート4を挟んだ状態として、互いの間に中空状のヘッド内空間Sを形成した状態に組み付けられる。
【0053】
また、上記組み付けにより、図8に示すように、散水板3の円板部3E上にセットされたゴムシート4の中央凸部E1を取り巻く周囲部分が、本体板2の中央開口A1から突出する各押さえピンA3に下方から押し付けられる。それにより、ゴムシート4の中央凸部E1を取り巻く周囲部分が、散水板3の円板部3E上に押し付けられる。その結果、ゴムシート4が、本体板2の中央開口A1からヘッド内空間Sへと流れ込む湯水の勢いによって円板部3Eから浮き上がることが抑止される。
【0054】
また、図9に示すように、散水板3の各堤部E3に被せられたゴムシート4の各弾性弁体4Hの天板部H1が、本体板2に形成された対応する各凹部A2の周囲の弁押付部aに下方から押し付けられる。その結果、各弾性弁体4Hの天板部H1が、対応する各堤部E3の上端に押し付けられる。
【0055】
また、上記押し付けに伴い、各弾性弁体4Hの筒の基端部分が、散水板3の対応する各堤部E3の周囲の円板部3E上に押し付けられる。それにより、ゴムシート4の各弾性弁体4Hの基端部分も、本体板2の中央開口A1からヘッド内空間Sへと流れ込む湯水の勢いによって円板部3Eから浮き上がることが抑止される。
【0056】
各弾性弁体4Hは、それらの天板部H1が本体板2の対応する各凹部A2の弁押付部aに押し付けられても、各凹部A2から四方に開口を広げる各拡張凹部bには押し付けられない。そのため、各弾性弁体4Hの天板部H1が本体板2の対応する各凹部A2の弁押付部aに押し付けられても、各凹部A2は、各拡張凹部bを通して、それらの凹空間とヘッド内空間Sとが互いに連通した状態に保持される。
【0057】
(シャワーヘッド1の散水機能と止水機能)
図8に示すように、上記シャワーヘッド1は、本体板2の接続口B1から中央開口A1へと湯水が流れ込むことにより、中央開口A1の直下にある散水板3の中央凸部E1に湯水が噴き付けられる。それにより、中央凸部E1に当たった湯水が、中央凸部E1の円錐台の斜面の案内に沿って、ゴムシート4と本体板2の円板部2Aとの間の空間であるヘッド内空間Sを通って径方向の外側へと流される。
【0058】
そして、上記ヘッド内空間Sを流れる湯水は、図10に示すように、ゴムシート4の各弾性弁体4Hと本体板2の各凹部A2の拡張凹部bとの間の隙間から各凹部A2の凹空間へと流れ込む。その際、本体板2の各凹部A2から四方に開口を広げる各拡張凹部bは、そのうちの1つが径方向の内側に向けられていることから、径方向の内側から外側に向かってと流される湯水を効果的に内部へと取り込めるようになっている。
【0059】
各凹部A2の凹空間へと流れ込んだ湯水は、それらの直下にあるゴムシート4の各弾性弁体4Hの天板部H1を下方へと押圧する。それにより、各弾性弁体4HのスリットH2によって切り分けられた天板部H1の各片が、それらの弾性に抗して互いの間を開くように下方へと押し撓まされる。その結果、各凹部A2の凹空間から各堤部E3内へと湯水が流れ込み、これらの直下にある各散水孔E2から湯水が外部へと散水される。
【0060】
図9に示すように、上記シャワーヘッド1は、シャワーアームSA(図1参照)からの湯水の供給が止められることで、各散水孔E2からの湯水の散水が止められる。この止水により、各弾性弁体4Hの天板部H1の各片が、上流側から散水圧を受けなくなるため、弾性により互いの間を閉じるように面一状に合わされた状態に戻される。その結果、各凹部A2の凹空間に残る残留水が、各弾性弁体4Hの閉じられた天板部H1によって堰き止められ、各散水孔E2から外部に漏出することが抑制される。
【0061】
また、各凹部A2の凹空間から外れたヘッド内空間Sに残る残留水も、各散水孔E2から外部に漏出しにくいように堰き止められる。具体的には、ヘッド内空間Sのゴムシート4上に残る残留水は、散水板3に形成された、各散水孔E2を個別に取り囲むように突出する各堤部E3により、各散水孔E2へと流れ出ないように堰き止められる。
【0062】
より詳しくは、各堤部E3に加え、各堤部E3にゴムシート4の各弾性弁体4Hが被せられていることから、ゴムシート4上に残る残留水が各堤部E3よりも嵩上げされた各弾性弁体4Hにより各散水孔E2へと流れ出ないように適切に堰き止められる。それにより、ヘッド内空間Sに残る残留水の各散水孔E2からの漏出が適切に堰き止められる。
【0063】
すなわち、ヘッド内空間Sに残る残留水の各散水孔E2からの漏出は、基本的には、ゴムシート4の各弾性弁体4Hが閉じられることで堰き止められる。しかし、各弾性弁体4Hの天板部H1がスリットH2によって切り分けられた構成であることから、その僅かな隙間から残留水が各散水孔E2へと漏出するおそれがある。また、各弾性弁体4Hが経年劣化によりスリットH2の隙間を広げてしまうと、上記のような残留水の漏出が起こりやすくなる。
【0064】
したがって、ゴムシート4の各弾性弁体4Hの閉弁による堰き止めに加え、各堤部E3及び各弾性弁体4Hの突出による堰き止めがあることで、仮に、各弾性弁体4Hの閉弁による堰き止めが十分に機能しなくても、ヘッド内空間Sに残る残留水の漏出を抑制することができる。また、仮にゴムシート4がない構成であっても、各堤部E3の突出による堰き止めがあることで、各堤部E3よりも低い位置に溜まるヘッド内空間Sの残留水が各散水孔E2から外部へと漏出することを適切に抑制することができる。
【0065】
以上をまとめると、第1の実施形態に係るシャワーヘッド1は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0066】
すなわち、シャワーヘッド(1)は、シャワー通水路(SA)から供給される湯水を外部に散水する中空状のシャワーヘッド(1)である。シャワーヘッド(1)は、その天板を成す本体板(2)と、底板を成す散水板(3)と、を有する。本体板(2)は、シャワー通水路(SA)と接続される接続口(B1)を備える。散水板(3)は、本体板(2)との間のヘッド内空間(S)に供給される湯水を外部に散水する複数の散水孔(E2)を備える。
【0067】
散水板(3)が、全ての散水孔(E2)を個々に又は複数ずつまとめて取り囲むようにヘッド内空間(S)に突出して、止水時に散水板(3)の上に残る残留水の複数の散水孔(E2)からの漏出を堰き止める複数の堤部(E3)を有する。
【0068】
上記構成によれば、散水板(3)に形成された複数の堤部(E3)により、止水時に散水板(3)の上に残る残留水が複数の散水孔(E2)から漏出しないよう堰き止められる。その結果、止水時におけるヘッド内部の残留水の外部への漏出を適切に抑制することができる。
【0069】
また、複数の堤部(E3)の突出高さが、散水板(3)の板厚よりも大きい。上記構成によれば、止水時におけるヘッド内部の残留水の外部への漏出をより適切に抑制することができる。
【0070】
また、シャワーヘッド(1)が、個々の堤部(E3)の突出した先の開口を散水圧によって開くように弾性的に閉じる複数の弾性弁体(4H)を更に有する。上記構成によれば、複数の弾性弁体(4H)により、止水時に散水板(3)の上に残る残留水を、より適切に複数の散水孔(E2)から漏出させないよう堰き止めることができる。
【0071】
詳しくは、複数の弾性弁体(4H)が個々の堤部(E3)の突出した先の開口を閉じるように設けられることで、散水圧が掛けられた際に、個々の弾性弁体(4H)を個々の堤部(E3)の内部空間を利用して適切に撓ませて開かせることができる。また、このような各弾性弁体(4H)を、シャワーヘッド(1)の外観を損なわないようヘッド内空間(S)に適切に設けることができる。
【0072】
また、本体板(2)が、複数の堤部(E3)と突出方向に対向する各位置にそれぞれ凹部(A2)を有する。複数の凹部(A2)が、各々の周囲部に、複数の弾性弁体(4H)の周縁を対応する複数の堤部(E3)に突出方向に押し付ける弁押付部(a)と、複数の弾性弁体(4H)との当接を避けるように複数の凹部(A2)の凹空間を部分的に拡張させて凹空間とヘッド内空間(S)とを連通させる拡張凹部(b)と、を周方向に並んで有する。
【0073】
上記構成によれば、各弁押付部(a)により、各弾性弁体(4H)の周縁を各堤部(E3)に適切に押し付けて閉弁機能させることができる。なおかつ、各拡張凹部(b)により、ヘッド内空間(S)から各散水孔(E2)へと至る流路を適切に確保し散水機能を損なわないようにすることができる。
【0074】
また、複数の弾性弁体(4H)が、散水板(3)の上面に沿って積層状に重ねられる1枚のゴムシート(4)に形成される。上記構成によれば、複数の弾性弁体(4H)を1枚のゴムシート(4)にまとめて形成することで、ヘッド内部への組み付け性を向上させることができる。
【0075】
なおかつ、複数の弾性弁体(4H)が各弁押付部(a)により各堤部(E3)の周縁に押し付けられる構成により、ゴムシート(4)を散水板(3)の上面に適切に押さえ付けることができる。その結果、ゴムシート(4)が散水板(3)との間の湯水の入り込みによって浮き上がることを適切に防止することができる。
【0076】
また、複数の堤部(E3)が、全ての散水孔(E2)を個々に取り囲むように形成される。上記構成によれば、止水時におけるヘッド内部の残留水の外部への漏出をより適切に抑制することができる。
【0077】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0078】
1.本発明のシャワーヘッドは、オーバーヘッドシャワーの他、使用者が手で持って使用する、いわゆるハンドシャワーとして構成されるものであっても良い。シャワー通水路は、浴室の壁面に沿って浴室内に露出して設けられるシャワーアームの他、浴室の壁や天井の内部(奥)を通る配管と接続されてシャワーヘッドと接続される管部材から成るものであっても良い。
【0079】
2.本体板や散水板は、円板形状の他、三角板や四角板等の多角板形状や異形の板形状から成るものであっても良い。本体板の接続口は、本体板から突出する接続管に形成されるものの他、本体板自体に貫通して形成されるものであっても良い。
【0080】
3.止水時におけるヘッド内部の残留水の外部への漏出を堰き止める各堤部は、散水板の各散水孔を個々に取り囲むものの他、各散水孔を複数ずつまとめて取り囲むものであっても良い。各堤部の突出高さは、止水時におけるヘッド内部の残留水の外部への漏出を堰き止められる高さとなっていれば良く、特定の高さに限定されるものではない。
【0081】
4.各堤部の突出した先の開口を弾性的に閉じる複数の弾性弁体は、1枚のゴムシートにまとめて形成されるものの他、個別に分かれて形成されるものであっても良い。また、複数の弾性弁体は、各堤部と本体板との間で押し挟まれて保持されるもののほか、各堤部の突出した先の端部に接合されたり本体板の各凹部に嵌め込まれて保持されたりするものであっても良い。
【0082】
本発明のシャワーヘッドは、複数の弾性弁体を備えず、各堤部の突出による堰き止めのみによって、止水時におけるヘッド内部の残留水の外部への漏出を堰き止めるものであっても良い。または、シャワーヘッドは、上記実施形態で示したゴムシートのような構成は備えるものの、天板部が開口する、弁機能を備えない構成とされていても良い。そのような構成であっても、ゴムシートが各堤部よりも嵩上げされた突出形状を備えることで、止水時におけるヘッド内部の残留水の外部への漏出をより適切に堰き止めることが可能となる。
【0083】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
1…シャワーヘッド、2…本体板、2A…円板部、A1…中央開口、A2…凹部、a…弁押付部、b…拡張凹部、A3…押さえピン、A4…嵌込筒、2B…接続管、B1…接続口、2C…外筒部、2D…内筒部、3…散水板、3E…円板部、E1…中央凸部、E2…散水孔、E3…堤部、E4…締結筒、3F…嵌合筒、F1…環状溝、4…ゴムシート、4G…中央通し孔、4H…弾性弁体、H1…天板部、H2…スリット、4J…筒通し孔、B…ビス、S…ヘッド内空間、SA…シャワーアーム(シャワー通水路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10