(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140163
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】積層成形装置および積層成形システム
(51)【国際特許分類】
B29C 65/20 20060101AFI20241003BHJP
B29C 63/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B29C65/20
B29C63/02
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051181
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】植田 直樹
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AD08
4F211AG03
4F211AM28
4F211SA07
4F211SC05
4F211SD01
4F211SH06
4F211SJ23
4F211SP03
4F211SP17
4F211SP33
4F211TA01
4F211TC02
4F211TD11
4F211TH06
4F211TN07
4F211TQ04
4F211TQ08
(57)【要約】
【課題】熱板の温度調節を低コストで実行する。
【解決手段】積層成形装置は、前後方向に搬送されるワークの上方に配され、下面がワークを押圧するように配される上側熱板22と、前後方向に搬送されるワークの下方に配され、上面がワークを押圧するように配される下側熱板24と、からなる1対の熱板と、夫々の熱板22,24に挿通されており、ワークに当接する面に対して平行、かつ、ワークの搬送方向とは異なる方向に延在し、熱板22,24の左右方向の側面から端部が突出するヒータ25a,25bと、夫々の熱板22,24において、左右方向の側面の少なくとも一部を覆う断熱部26a,26bと、を備え、断熱部26a,26bは、夫々の熱板22,24の端部から突出するヒータ25a,25bとの干渉を避けて、熱板22,24の左右方向の側面を覆っている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に搬送されるワークの上方に配され、下面がワークを押圧するように配される上側熱板と、
前記前後方向に搬送されるワークの下方に配され、上面がワークを押圧するように配される下側熱板と、からなる1対の熱板と、
夫々の前記熱板に挿通されており、前記ワークを押圧する面に対して平行、かつ、前記ワークの搬送方向とは異なる方向に延在し、前記熱板の左右方向の側面から端部が突出するヒータと、
夫々の前記熱板において、左右方向の側面の少なくとも一部を覆う断熱部と、を備え、
前記断熱部は、
夫々の前記熱板の端部から突出するヒータとの干渉を避けて、前記熱板の左右方向の側面を覆っている、
積層成形装置。
【請求項2】
前記断熱部は、
前後方向に延在する直線部と、
前記直線部から上下方向に突出する複数の突出部と、を備える櫛状である、
請求項1に記載の積層成形装置。
【請求項3】
前記上側熱板の側面を覆う前記断熱部は、前記直線部が上方に設けられ、前記突出部が下方に設けられている場合に、前記突出部の先端が、前記上側熱板の下面より下方に配され、
前記下側熱板の側面を覆う前記断熱部は、前記直線部が下方に設けられ、前記突出部が上方に設けられている場合に、前記突出部の先端が、前記下側熱板の上面より上方に配されている状態、の少なくとも一方である、
請求項2に記載の積層成形装置。
【請求項4】
前記上側熱板の側面を覆う前記断熱部は、前記直線部が下方に設けられ、前記突出部が上方に設けられている場合に、前記直線部の下端が、前記上側熱板の下面より下方に配され、
前記下側熱板の側面を覆う前記断熱部は、前記直線部が上方に設けられ、前記突出部が下方に設けられている場合に、前記直線部の上端が、前記下側熱板の上面より上方に配されている状態、の少なくとも一方である、
請求項2に記載の積層成形装置。
【請求項5】
前記断熱部は、
前記断熱部自身の温度の調整が可能である金属材である、
請求項1に記載の積層成形装置。
【請求項6】
前記断熱部は、
内部に冷却剤が通過する経路が形成されている、
請求項5に記載の積層成形装置。
【請求項7】
前記断熱部は、
熱を吸収する断熱材と、
熱を反射する金属材と、を備え、
前記断熱材は、前記熱板と、前記金属材との間に配されている、
請求項1に記載の積層成形装置。
【請求項8】
上側チャンバと、
下側チャンバと、
チャンバ外断熱部と、をさらに備え、
前記上側チャンバ及び前記下側チャンバは、
互いが近接する動作により、内部に前記上側熱板と、前記下側熱板と、前記ヒータと、断熱部と、を含めた閉空間を形成可能であり、
チャンバ外断熱部は、前記上側チャンバの前後方向側の外側側面の少なくとも一部、又は前記上側チャンバの前後方向側の外側側面の少なくとも一部を覆っている、
請求項1に記載の積層成形装置。
【請求項9】
前記上側熱板及び前記下側熱板に対して左右方向における直線上の位置、かつ、前記上側熱板及び前記下側熱板の間の高さに配置されているとともに、左右方向に動作を行う熱板である左右移動熱板、をさらに備え、
前記左右移動熱板は、
前記上側熱板と前記下側熱板との間に挟まれていない位置において加熱され、
前記上側熱板と前記下側熱板との間に前記ワークが無い場合に、前記上側熱板と前記下側熱板との間に挟まれる位置に左右方向に移動し、前記上側熱板の下面及び前記下側熱板の上面に当接された状態となることで、前記上側熱板及び前記下側熱板の熱の補充を行う、
請求項1に記載の積層成形装置。
【請求項10】
前記左右移動熱板は、
前記上側熱板と前記下側熱板との間に挟まれていない位置において加熱される際に、前記上側熱板に当接する上面側の温度と、前記下側熱板に当接する下面側の温度と、の夫々の温度調整が可能であり、前記下面側の温度が前記上面側の温度より高くなるように加熱される、
請求項9に記載の積層成形装置。
【請求項11】
前後方向に搬送されるワークの上方に配され、下面がワークを押圧するように配される上側熱板と、
前記前後方向に搬送されるワークの下方に配され、上面がワークを押圧するように配される下側熱板と、からなる1対の熱板と、
前記上側熱板及び前記下側熱板に対して左右方向における直線上の位置、かつ、前記上側熱板及び前記下側熱板の間の高さに配置されているとともに、左右方向に動作を行う熱板である左右移動熱板と、を備え、
前記左右移動熱板は、
前記上側熱板と前記下側熱板との間に挟まれていない位置において加熱され、
前記上側熱板と前記下側熱板との間に前記ワークが無い場合に、前記上側熱板と前記下側熱板との間に挟まれる位置に左右方向に移動し、前記上側熱板の下面及び前記下側熱板の上面に当接された状態となることで、前記上側熱板及び前記下側熱板の熱の補充を行う、
積層成形装置。
【請求項12】
積層成形装置と、
前記積層成形装置の後段に設けられ、前記積層成形装置で成形されたワークに対して、更に加圧を行う、少なくとも1つ以上の平坦化プレス装置と、を備え、
前記積層成形装置は、
前後方向に搬送されるワークの上方に配され、下面がワークを押圧するように配される上側熱板と、
前記前後方向に搬送されるワークの下方に配され、上面がワークを押圧するように配される下側熱板と、からなる1対の熱板と、
夫々の前記熱板に挿通されており、前記ワークに当接する面に対して平行、かつ、前記ワークの搬送方向とは異なる方向に延在し、前記熱板の左右方向の側面から端部が突出するヒータと、
夫々の前記熱板において、左右方向の側面の少なくとも一部を覆う断熱部と、を備え、
前記断熱部は、
夫々の前記熱板の端部から突出するヒータとの干渉を避けて、前記熱板の左右方向の側面を覆っている、
積層成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層成形装置および積層成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、減圧可能なチャンバを備えた真空積層装置と、第1の平坦化プレス装置と、第2の平坦化プレス装置が連続して配置された積層成形システムが利用されている。この積層成形システムでは、積層成形品が、真空積層装置から第1の平坦化プレス装置へ、第1の平坦化プレス装置から第2の平坦化プレス装置へと、移送手段を用いて移動しながら積層成形される。
【0003】
特許文献1には、減圧可能なチャンバを備えた真空積層装置(真空加圧式ラミネータ)とプレス装置が連続して配置された積層成形システムが開示されている。
【0004】
また特許文献2には、減圧可能なチャンバを備えた真空積層手段と、第1の平面プレス手段と、第2の平面プレス手段が連続して配置された積層成形システムが開示されている。特に特許文献2では、移送手段を用いて真空積層装置から第1の平坦化プレス装置へ、第1の平坦化プレス装置から第2の平坦化プレス装置に積層成形品が移動する際に、真空積層手段にてワークに対してかける圧力の強さや、圧力をかける時間について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-66967号公報
【特許文献2】特開2020-28980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
真空積層装置では、上側と下側にそれぞれ設けられた熱板によりワークを挟み込むことにより、ワークを加熱する。ここで熱板には、略水平かつワークの運搬方向に対して略直交方向に延在する方向に複数本のヒータが設けられており、このヒータの加熱によって、積層成形が好適に実行できる温度となるように熱板の温度調節が行われている。しかしながら、これらの熱板では、ヒータの延在方向から熱が逃げやすく、さらに、この熱の逃げによって積層成形時の面内温度のばらつきが大きくなるという恐れがあった。そのため積層成形装置では、ワークを加熱するための熱板の温度調節を低コストで実行することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる積層成形装置は、前後方向に搬送されるワークの上方に配され、下面がワークを押圧するように配される上側熱板と、前記前後方向に搬送されるワークの下方に配され、上面がワークを押圧するように配される下側熱板と、からなる1対の熱板と、夫々の前記熱板に挿通されており、前記ワークに当接する面に対して平行、かつ、前記ワークの搬送方向とは異なる方向に延在し、左右方向の側面から端部が突出するヒータと、夫々の前記熱板において、左右方向の側面の少なくとも一部を覆う断熱部と、を備え、前記断熱部は、夫々の前記熱板の端部から突出するヒータとの干渉を避けて、前記熱板の左右方向の側面を覆っている。
【0008】
また、本開示にかかる積層成形装置は、前後方向に搬送されるワークの上方に配され、下面がワークを押圧するように配される上側熱板と、前記前後方向に搬送されるワークの下方に配され、上面がワークを押圧するように配される下側熱板と、からなる1対の熱板と、前記上側熱板及び前記下側熱板に対して左右方向における直線上の位置、かつ、前記上側熱板及び前記下側熱板の間の高さに配置されているとともに、左右方向に動作を行う熱板である左右移動熱板と、を備え、前記左右移動熱板は、前記上側熱板と前記下側熱板との間に挟まれていない位置において加熱され、前記上側熱板と前記下側熱板との間に前記ワークが無い場合に、前記上側熱板と前記下側熱板との間に挟まれる位置に左右方向に移動し、前記上側熱板の下面及び前記下側熱板の上面に当接された状態となることで、前記上側熱板及び前記下側熱板の熱の補充を行う。
【0009】
また、本開示にかかる積層成形システムは、積層成形装置と、前記積層成形装置の後段に設けられ、前記積層成形装置で成形されたワークに対して、更に加圧を行う、少なくとも1つ以上の平坦化プレス装置と、を備え、前記積層成形装置は、前後方向に搬送されるワークの上方に配され、下面がワークを押圧するように配される上側熱板と、前記前後方向に搬送されるワークの下方に配され、上面がワークを押圧するように配される下側熱板と、からなる1対の熱板と、夫々の前記熱板に挿通されており、前記ワークに当接する面に対して平行、かつ、前記ワークの搬送方向とは異なる方向に延在し、前記熱板の左右方向の側面から端部が突出するヒータと、夫々の前記熱板において、左右方向の側面の少なくとも一部を覆う断熱部と、を備え、前記断熱部は、夫々の前記熱板の端部から突出するヒータとの干渉を避けて、前記熱板の左右方向の側面を覆っている。
【発明の効果】
【0010】
本開示によると、熱板の温度調節を低コストで実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1にかかる真空積層システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1にかかる真空積層装置の斜視図である。
【
図3】実施の形態1にかかる積層成形品がキャリアフィルムに挟まれて搬送される状態を示した側面図である。
【
図4】実施の形態1にかかる上側熱板22の水平断面の一例を示した断面図である。
【
図5】実施の形態1にかかる複数のヒータが設けられている上側熱板に対し、突出部が下方向に延びる断熱部が設けられた状態を示す側面図である。
【
図6】実施の形態1にかかる複数のヒータが設けられている上側熱板に対し、突出部が上方向に延びる断熱部が設けられた状態を示す側面図である。
【
図7】実施の形態1にかかる上側熱板に対し、突出部が下方向に長く延びている断熱部が設けられた状態を示す側面図である。
【
図8】実施の形態1にかかる断熱部に経路が形成されている状態を示す正面図である。
【
図9】実施の形態1にかかる上側熱板と断熱部の断面図である。
【
図10】実施の形態1にかかるチャンバとチャンバ外断熱部が設けられた状態を示す側面図である。
【
図11】実施の形態2にかかる左右移動熱板の配置と動作方向の一例を示す上面図である。
【
図12】実施の形態2にかかる積層成形品と左右移動熱板の動作タイミングの一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0013】
実施の形態1
図1は、真空積層システムの構成の一例を示すブロック図である。積層成形システム11は、減圧可能なチャンバを備えた真空積層装置12と、第1の平坦化プレス装置13と、第2の平坦化プレス装置14が連続して配置されている。積層成形システム11では、ワークである積層成形品Pが、真空積層装置12から第1の平坦化プレス装置13へ、第1の平坦化プレス装置13から第2の平坦化プレス装置14へと移送される。
【0014】
なお、真空積層システムにおいて、積層成形品Pの移送には、キャリアフィルムF1,F2を用いることができる。より具体的には、真空積層システムでは、真空積層装置12の前工程に移送手段のキャリアフィルム送出装置を設けておき、かつ、第2の平坦化プレス装置14の後工程に移送手段のキャリアフィルム巻取装置を設けておく。フィルム巻取装置は、キャリアフィルムを巻き取ってキャリアフィルムF1,F2を移動させることができることから、このキャリアフィルムF1,F2の移動とともに積層成形品Pを搬送することができる。なおここでは、キャリアフィルムF1は積層成形品Pの上方、キャリアフィルムF2は積層成形品Pの下方に配されており、積層成形品Pを挟み込んでいる。
【0015】
ここで、積層成形品Pは、凹凸を有する基板と積層フィルムからなる。真空積層装置12、第1の平坦化プレス装置13、第2の平坦化プレス装置14において順番にキャリアフィルムF1,F2を介して積層成形品Pに積層成形が行われる際には、積層フィルムの部分が溶融して装置部分に付着することを防止する。またキャリアフィルムF1,F2の使用は、特に第1の平坦化プレス装置13と第2の平坦化プレス装置14においては積層成形品(1次積層成形品と2次積層成形品)を加圧する際に一定の緩衝作用が付与されるという利点もある。
【0016】
図2は、真空積層装置12の斜視図である。なお、積層成形品Pは水平に搬送されるが、積層成形品Pが搬送される方向を前後方向とし、水平方向かつこの前後方向に直交する方向を左右方向であるものとして説明する。なお
図2では、真空積層装置12を判りやすくするため、チャンバCの記載を省略している。
【0017】
真空積層装置12は、減圧可能なチャンバC内において積層成形品Pを加圧して、1次積層成形品に積層成形するものである。真空積層装置12は、上側基部21と、上側基部21の下面に取り付けられた上側熱板22と、下側基部23と、下側基部23に取り付けられた下側熱板24と、上側熱板22及び下側熱板24の夫々に設けられているヒータ25と、上側熱板22及び下側熱板24の夫々の左右方向の側面に配される断熱部26と、を備える。なお、積層成形品Pは、真空積層装置12に対して間欠的に供給される。
【0018】
なお、上側熱板22と下側熱板24は1対の熱板であり、上側熱板22に設けられているヒータ25をヒータ25a、下側熱板24に設けられているヒータ25をヒータ25b、上側熱板22に配される断熱部26を断熱部26a、下側熱板24に配される断熱部26を断熱部26bとして説明する。
【0019】
上側基部21は、真空積層装置12の上部に設けられている。ここでは、上側基部21は上下方向に所定の厚みを有する直方体状の盤体(固定盤)であるものとして説明する。上側基部21の下面には、上側熱板22の上面が当接した状態で取り付けられている。
【0020】
上側熱板22は、複数のヒータ25aが左右方向に延在する状態で挿入されている板である。ここでは上側熱板22は、上下に所定の厚みを有し、前後方向に延びる辺と、左右方向に延びる辺を有する直方体状であるものとする。なお、上側基部21と上側熱板22の間に他の構成物が挟まれていてもよい。
【0021】
さらに、上側熱板22の左右方向の側面には、前後方向に延びる断熱部26aが配されている。
【0022】
下側基部23は、真空積層装置12の下部に設けられている。下側基部23の上面には、下側熱板24の下面が当接した状態で取り付けられている。なお例えば、下側基部23は、上下方向に所定の厚みを有する直方体状の盤体(可動盤)と、当該盤体に挿通される複数のタイバと、により構成することができる。この場合には、下側熱板24の下面が、下側基部23の上面に載置された状態で取り付けられている。
【0023】
下側熱板24は、複数のヒータ25bが左右方向に延在する状態で挿入されている板である。ここでは上側熱板22は、上下に所定の厚みを有し、前後方向に延びる辺と、左右方向に延びる辺を有する直方体状であるものとする。なお、下側基部23と下側熱板24の間に他の構成物が挟まれていても良い。
【0024】
なお例えば、下側基部23にタイバが挿通される構成である場合には、上側基部21と下側基部23の距離が近づくように下側基部23が上昇する動作を行うことで、下側熱板24を上側熱板22に近づけることができる。この動作により、上側熱板22の下面は積層成形品Pの上面を押圧し、下側熱板24の上面は積層成形品Pの下面を押圧する。
【0025】
さらに、下側熱板24の左右方向の側面には、前後方向に延びる断熱部26bが配されている。
【0026】
図3は、積層成形品PがキャリアフィルムF1,F2に挟まれて搬送される状態を示した図である。すなわち
図3に示すように、積層成形品Pは、上下をキャリアフィルムF1,F2に挟まれた状態で、上側熱板22と下側熱板24の間を通るように搬送される。したがって、上側熱板22は、前後方向に搬送される積層成形品Pの上方に配され、下側熱板24は、積層成形品Pの下方に配されている。さらに、上側熱板22と下側熱板24が近接する動作により、上側熱板22はキャリアフィルムF1を介して積層成形品Pの上面に当接し、下側熱板24はキャリアフィルムF2を介して積層成形品Pの下面に当接する。
【0027】
図2に戻り、ヒータ25aは、左右方向に延在する状態で上側熱板22に挿通されている加熱器である。ここでヒータ25aは、上側熱板22の左右方向の側面から、端部が突出する状態で設けられている。ヒータ25aは、熱の供給を行うことにより、所定の温度となるまで上側熱板22を加熱することができる。
【0028】
同様に、ヒータ25bは、左右方向に延在する状態で下側熱板24に挿通されている加熱器である。ここでヒータ25bは、下側熱板24の左右方向の側面から、端部が突出する状態で設けられている。ヒータ25bは、熱の供給を行うことにより、所定の温度となるまで下側熱板24を加熱することができる。
【0029】
すなわち、ヒータ25a及びヒータ25bは、それぞれ熱板22,24に挿通されており、積層成形品Pに当接する面に対して平行、かつ、積層成形品Pの搬送方向とは異なる方向に延在し、熱板22,24の左右方向の側面から端部が突出するように配されている。
【0030】
ここで
図4は、上側熱板22の水平断面の一例を示した図である。
図4に示すように、上側熱板22が加熱された状態となった場合に、ヒータ25aの延在する方向に熱が逃げやすい。下側熱板24についても同様である。
【0031】
図5は、複数のヒータ25aが設けられている上側熱板22に、断熱部26aが設けられた状態を示す側面図である。
図5に示すように、断熱部26aは、上下方向には上側熱板22の厚みと同程度の長さであり、左右方向に所定の厚みで形成されているとともに、前後方向に長く形成されており、上側熱板22の側面を覆っている。ここで、上側熱板22の側面からは、複数のヒータ25aの端部が突出している状態であるため、断熱部26aは、ヒータ25aの端部に干渉しないように、櫛状に形成されている。
【0032】
より具体的には、断熱部26aは、前後方向に長く形成されている直線部31と、直線部31から上下方向に突出する複数の突出部32と、が形成されていることにより櫛状を形成している。
【0033】
ここで
図5に示すように、断熱部26aは、上側熱板22の側面において、上側に直線部31が設けられており、複数の突出部32が直線部31から下方に突出する形状とすることができる。なお
図5において、直線部31の範囲を破線で示している。
【0034】
一方で、
図6に示すように、断熱部26aは、上側熱板22の側面において、下側に直線部31が設けられており、複数の突出部32が直線部31から上方に突出する形状とすることも可能である。なお
図6において、直線部31の範囲を破線で示している。
【0035】
さらに
図7に示すように、断熱部26aは、上側熱板22の側面に配置された状態で、上側熱板22の下面22aより下方に突き出るように、上下方向に長い形状とすることができる。なお
図7において、直線部31の範囲を破線で示している。このように、断熱部26aが、上側熱板22の下面22aより下方に突き出るように形成されていることにより、上側熱板22と下側熱板24が、それぞれ積層成形品Pに当接する状態で挟み込んだ場合に、積層成形品Pの側面、すなわち上側熱板22と下側熱板24の間の隙間からの熱の逃げを抑制することができる。なお
図7では、
図5と同様に直線部31が上方、突出部32が下方に設けられている状態で示しているが、
図6と同様に直線部31が下方、突出部32が上方に設けられていても良い。
【0036】
また、下側熱板24の側面に設けられる断熱部26bについても同様である。すなわち、断熱部26bは、上下方向には下側熱板24の厚みと同程度の長さであり、左右方向に所定の厚みで形成されているとともに、前後方向に長く形成されており、下側熱板24の側面を覆っている。
【0037】
断熱部26bは、下側熱板24の側面において、下側に直線部31が設けられており、複数の突出部32が直線部31から上方に突出する形状とすることができる。
【0038】
一方で、断熱部26bは、下側熱板24の側面において、上側に直線部31が設けられており、複数の突出部32が直線部31から下方に突出する形状とすることも可能である。
【0039】
さらに、断熱部26bは、下側熱板24の側面において、下側熱板24の上面より上方に突き出るように、上下方向に長く形成することも可能である。
【0040】
なお、上側熱板22の側面において、断熱部26aの一部が上側熱板22の下面より下方に突き出た状態と、下側熱板24の側面において、断熱部26bの一部が下側熱板24の上面より上方に突き出た状態は、いずれか一方が行われていても良く、両方であってもよい。
【0041】
以上のことをまとめると、上側熱板22の側面を覆う断熱部26aは、直線部31が上方に設けられ、突出部32が下方に設けられている場合に、突出部32の先端が、上側熱板22の下面より下方に配され、下側熱板24の側面を覆う断熱部26は、直線部31が下方に設けられ、突出部32が上方に設けられている場合に、突出部32の先端が、下側熱板24の上面より上方に配されている状態、の少なくとも一方とすることができる。
【0042】
あるいは、上側熱板22の側面を覆う断熱部26aは、直線部31が下方に設けられ、突出部32が上方に設けられている場合に、直線部31の下端が、上側熱板22の下面より下方に配され、下側熱板24の側面を覆う断熱部26bは、直線部31が上方に設けられ、突出部32が下方に設けられている場合に、直線部31の上端が、下側熱板24の上面より上方に配されている状態、の少なくとも一方とすることができる。
【0043】
断熱部26a,26bに適用される断熱材の材質は特に限定されないが、紙、布、ガラスクロスに樹脂を含浸させたものや、雲母などの鉱物またはセラミックス材を樹脂などで結合させたものを用いても良い。
【0044】
さらに、断熱部26a,26bは、積層成形時の保温性を高める方式であれば、構造や素材は特に限定されない。断熱部26a,26bは、空洞状の形態や中空の構造を有していてもよい。断熱部26a,26bは、減圧された空間を備えた構造を有していてもよい。この場合、積層成形後の冷却性を考慮して、減圧された空間は気圧調整可能な機構を備えていることが望ましい。断熱部26a,26bは、温度調整機能を有していてもよい。ここで
図8に示すように、断熱部26a,26bには、内部に所定の温度の流体を通過させることができる経路26cを形成しておき、当該流体を通過させることで、断熱部26a,26bの温度調整を行うことができる。この場合、積層成形後の冷却性を考慮して、温度調整する流体は加熱に限らず冷却も可能であることが望ましい。なお、温度調整の方法は、この方法に限られない。
【0045】
また、
図9は、上側熱板22及び断熱部26aの構成の一例であって、前後方向に対する垂直方向における断面を示した断面図である。
図9に示すように、断熱部26aは、断熱材33と、金属材34と、を備えた構成とすることができる。
【0046】
上側熱板22の側面を覆う断熱部26aにおいて、金属材34は、左右方向における外側に配されており、断熱材33は金属材34より内側に配されている。すなわち、断熱材33は、上側熱板22と、金属材34との間に挟まれるように配されている。断熱材33は、熱を吸収することにより、上側熱板22の保温性を高めることができる。なお典型的には、断熱材33は、金属材34より厚く形成されている。ここで、本開示において、熱を吸収する断熱材33とは、上側熱板22を構成する金属部材よりも熱伝導率が小さいことを意味するものとする。熱伝導率の計測方法は特に限定されないが、例えばASTM E1530による方法であってもよい。
【0047】
金属材34は、上側熱板22側からの熱を断熱材33側に反射することで、上側熱板22の保温性をさらに高めることができる。より具体的な一例として、金属材34は、上側熱板22から、断熱材33を通過して金属材34に到達した熱を、断熱材33に向けて反射することができる。金属材34は、鉄、アルミニウム、銅のいずれかであってもよく、これらの金属の少なくとも1種を含む合金であっても良い。金属材34の熱の反射とは、上側熱板22側から伝播又は放射された熱の少なくとも一部であってもよい。また、金属材34の表面状態は特に限定されないが、断熱材33に面する側の表面は滑らかであることが好ましく、鏡面で仕上げられていることがさらに好ましい。また、金属材34の形状は特に限定されず、断熱材33の形状と異なっていてもよい。すなわち金属材34は断熱材33の少なくとも一部を覆うように配されていてもよい。なお、金属材34が断熱材33を覆う面積は、断熱材33における当該面の面積の30パーセント以上であることが好ましく、50パーセント以上であることがさらに好ましい。
【0048】
なお
図9では、上側熱板22の側面を覆う断熱部26aの構成例について説明したが、下側熱板24の側面を覆う断熱部26bについても同様である。
【0049】
図10は、上側チャンバ41aと、下側チャンバ41bと、により構成され、上側チャンバ41aと下側チャンバ41bにより形成された内部の空間を減圧可能なチャンバ41と、チャンバ41の外側に配されるチャンバ外断熱部42と、が設けられた状態を示す側面図である。
【0050】
上側チャンバ41aと、下側チャンバ41bは、少なくとも一方が上下動可能であり、互いに近接する動作を行うことにより、上側基部21と、上側熱板22と、下側基部23と、下側熱板24と、ヒータ25と、断熱部26が格納された閉空間を形成する。
【0051】
チャンバ外断熱部42は、上側チャンバ41aの前後方向側の外側側面の少なくとも一部を覆うように配されている。典型的には、チャンバ外断熱部42は、下側チャンバ41bと当接する下端部近傍において、上側チャンバ41aの前後方向側の外側側面を覆うように配されている。
【0052】
なお、チャンバ外断熱部42は、下側チャンバ41bの前後方向側の外側側面の少なくとも一部を覆うように配されていてもよい。この場合も上側チャンバ41aの外側側面に設けた場合と同様に、チャンバ外断熱部42は、下側チャンバ41bの上端部近傍において、前後方向側の外側側面を覆うように配されている。
【0053】
なお、このチャンバ外断熱部42は、加熱または冷却を行う機能部42aを有していても良い。これにより、上側チャンバ41aと下側チャンバ41bの変形を抑制し、チャンバ41内の真空度を好適に保つ効果が得られる。
【0054】
図1に戻り、第1の平坦化プレス装置13は、金属製プレスプレートの加圧面を備える。典型的には、第1の平坦化プレス装置13では、金属製プレスプレートの加圧面にサーボモータによる駆動力が与えられ、積層成形品Pが加圧される。第1の平坦化プレス装置13は、真空積層装置12で加圧成形され凹凸部を有する基板と積層フィルムとからなり積層フィルムの側に凹凸が残った状態の積層成形品P(1次積層成形品)を、更に加圧してより平坦な積層成形品P(2次積層成形品)に加圧成形するものである。
【0055】
第2の平坦化プレス装置14は、第1の平坦化プレス装置13と、同じ構造、同じ加圧機構を備えたプレス装置である。なお、この同じ構造及び同じ加圧機構とは、略同じ構造及び略同じ加圧機構を含む。すなわち、第2の平坦化プレス装置14は、金属製プレスプレートの加圧面を備える。典型的には、第2の平坦化プレス装置14は、金属製プレスプレートの加圧面に、サーボモータによる駆動力が与えられ、積層成形品Pが加圧される。
【0056】
このように構成することにより、真空積層装置12では、上側熱板22及び下側熱板24において側面方向に抜ける熱の損失を抑制することができる。したがって、上側熱板22及び下側熱板24を再加熱する際の熱量を低減させることができ、熱板の温度調節を低コストで実行できる。
【0057】
実施の形態2
上側熱板22及び下側熱板24に対して熱を供給する左右移動熱板27をさらに備える構成について説明する。
【0058】
図11に示すように、左右移動熱板27は、上側熱板22及び下側熱板24に対して左右方向における直線上の位置に配されており、左右方向に動作を行う熱板である。また、左右移動熱板27が設けられている上下方向の位置は、上側熱板22及び下側熱板24の間の位置である。
【0059】
左右移動熱板27は、前後方向の長さ及び左右方向の長さが、上側熱板22及び下側熱板24と同じ長さである板である。したがって、左右移動熱板27は、左右方向にスライド動作することにより、上側熱板22と下側熱板24の間に挟まる位置に配された状態と、上側熱板22と下側熱板24の間から外れた位置に配された状態に切り替わることができる。
【0060】
ここで積層成形品Pは、真空積層装置12には、間欠的に連続して積層成形品Pが供給される。
図12(a)は、上側熱板22と下側熱板24の間に積層成形品Pが配されている状態を示している。左右移動熱板27は、上側熱板22と下側熱板24の間に積層成形品Pが配されている場合には、
図11に示すように左右方向へのスライド移動を行うことにより、上側熱板22と下側熱板24の間から外れた位置に配された状態となる。
【0061】
このとき、左右移動熱板27は、加熱機構(図示せず)による熱の供給を受けて、所定の温度となる。なお、加熱機構は、左右移動熱板27の下部の温度が、上部の温度に比べて高温になるように加熱することが可能である。
【0062】
その後、
図12(b)に示すように、積層成形品Pが搬送され、上側熱板22と下側熱板24の間に積層成形品Pが挟まれていない状態となる。このとき
図11に示すように、左右移動熱板27は、左右方向へのスライド移動を行う。これにより、
図12(c)に示すように、左右移動熱板27は、上側熱板22と下側熱板24の間に挟まれる位置に配される。
【0063】
このとき、上側熱板22の下面が左右移動熱板27の上面に当接し、下側熱板24の上面が左右移動熱板27の下面に当接した状態となる。左右移動熱板27は十分に加熱されている状態であることから、左右移動熱板27から、上側熱板22及び下側熱板24への熱の移動が発生する。これにより、上側熱板22及び下側熱板24は、左右移動熱板27により加熱された状態となる。
【0064】
なお、左右移動熱板27による加熱では、上側熱板22への加熱の効果が大きく、下側熱板24への加熱の効果が小さくなる場合がある。そのため、左右移動熱板27を加熱する際に、左右移動熱板27の下部の温度が上部の温度に比べて高くなるように加熱しておくことにより、左右移動熱板27から上側熱板22と下側熱板24の加熱する場合に、上側熱板22の温度と下側熱板24の温度差の発生を抑制することができる。
【0065】
なお、左右移動熱板27を加熱する際に部位ごとに温度の差を設けることは、左右移動熱板27の下部と上部の差に限られない。例えば、左右移動熱板27の前後左右方向の周縁部と、中央部の温度に差を設けておくことも可能である。
【0066】
これにより、真空積層装置12では、上側熱板22及び下側熱板24における熱の調整について、ヒータ25を用いるだけでなく左右移動熱板27を用いて行い、効率的に上側熱板22及び下側熱板24の加熱を行うことができる。すなわち、上側熱板22と下側熱板24の間に積層成形品Pが挟まれていない状態で、上側熱板22及び下側熱板24の加熱しておく時間を短縮することができるため、効率よく真空積層装置12を動作させることができ、コストを低減することができる。
【0067】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、真空積層装置12の前段に、チャンバを有さず、かつ、積層成形品Pを予め加熱しておくための上側熱板と下側熱板を有する予熱装置を設けておく場合にも、同様の構造とすることができる。すなわち、予熱装置の上側熱板と下側熱板の夫々について左右方向の側面に櫛状の断熱部を設けておくことや、左右移動熱板を設けておくことができる。
【0068】
また、実施の形態1に記載のチャンバ外断熱部42は、真空積層装置12に設けない構成とすることが可能である。逆に、実施の形態1に記載のチャンバ外断熱部42を設けた真空積層装置12において、上側熱板22及び下側熱板24には断熱部26a,26bを設けるか否かを任意とすることも可能である。
【0069】
実施の形態2に記載の左右移動熱板27を真空積層装置12に設けておき、一方で、真空積層装置12に上側熱板22及び下側熱板24には断熱部26a,26bを設けるか否かを任意とすることも可能である。すなわち、真空積層装置12において、左右移動熱板27は設けられているが、上側熱板22及び下側熱板24には断熱部26a,26bを設けない構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0070】
11 積層成形システム
12 真空積層装置
13 第1の平坦化プレス装置
14 第2の平坦化プレス装置
21 上側基部
22 上側熱板
23 下側基部
24 下側熱板
25 ヒータ
26 断熱部
27 左右移動熱板
31 直線部
32 突出部
41 チャンバ
42 チャンバ外断熱部