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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140164
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】記録方法及び記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20241003BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20241003BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B41M5/00 132
B41M5/00 100
B41J2/21
B41J2/01 401
B41J2/01 123
B41J2/01 125
B41J2/01 305
B41J2/01 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051182
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】小池 直樹
(72)【発明者】
【氏名】奥田 一平
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
【Fターム(参考)】
2C056EA05
2C056EB30
2C056EC11
2C056EC29
2C056EE18
2C056FA10
2C056FC02
2C056HA29
2C056HA41
2C056HA42
2C056HA46
2H186AB03
2H186AB05
2H186AB06
2H186AB12
2H186AB27
2H186AB39
2H186AB41
2H186AB54
2H186AB55
2H186AB57
2H186AB61
2H186BA08
2H186DA09
2H186FA07
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB28
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB48
2H186FB56
2H186FB58
(57)【要約】
【課題】優れた記録速度としつつ、結露の抑制及び画質(濃淡ムラ)に優れる記録方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る記録方法は、凝集剤を含有する処理液を記録媒体に付着させる処理液付着工程と、白色色材を含有する白色インク組成物をインクジェットヘッドから吐出させ前記記録媒体に付着させる白色インク付着工程と、非白色色材を含有する非白色インク組成物を前記インクジェットヘッドから吐出させ前記記録媒体に付着させる非白色インク付着工程と、を有し、前記白色インク組成物及び前記非白色インク組成物は、水系インクであり、前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程を、それぞれ、位置が固定された状態の前記記録媒体に対して、前記インクジェットヘッドを移動させながら、前記インクジェットヘッドからインク組成物を吐出させ、前記記録媒体に付着させる走査により行い、前記白色インク付着工程は、1回の走査の走査領域に対して、前記白色インク組成物を1回の走査で付着させ、前記非白色インク付着工程は、1回の走査の走査領域に対して、前記非白色インク組成物を1回の走査で付着させ、前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程の何れか一方の走査が行なわれた走査領域に対して、別の走査で他方の走査を行い、前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程における、前記記録媒体の表面温度が35℃以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集剤を含有する処理液を記録媒体に付着させる処理液付着工程と、
白色色材を含有する白色インク組成物をインクジェットヘッドから吐出させ前記記録媒体に付着させる白色インク付着工程と、
非白色色材を含有する非白色インク組成物を前記インクジェットヘッドから吐出させ前記記録媒体に付着させる非白色インク付着工程と、を有し、
前記白色インク組成物及び前記非白色インク組成物は、水系インクであり、
前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程を、それぞれ、位置が固定された状態の前記記録媒体に対して、前記インクジェットヘッドを移動させながら、前記インクジェットヘッドからインク組成物を吐出させ、前記記録媒体に付着させる走査により行い、
前記白色インク付着工程は、1回の走査の走査領域に対して、前記白色インク組成物を1回の走査で付着させ、
前記非白色インク付着工程は、1回の走査の走査領域に対して、前記非白色インク組成物を1回の走査で付着させ、
前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程の何れか一方の走査が行なわれた走査領域に対して、別の走査で他方の走査を行い、
前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程における、前記記録媒体の表面温度が35℃以下である、記録方法。
【請求項2】
前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程のうちの先に行われる工程のインク組成物の最大付着量の範囲が8mg/inch以上である、請求項1に記載の記録方法。
【請求項3】
前記白色インク組成物における、処理液:白色インク組成物=1:10の質量比で混合したときの粘度上昇、及び、前記非白色インク組成物における、処理液:非白色インク組成物=1:10の質量比で混合したときの粘度上昇が、それぞれ5倍以上である、請求項1に記載の記録方法。
【請求項4】
前記1回の走査における、前記記録媒体に対向して前記インクジェットヘッドが移動する距離が0.5m以上である、請求項1に記載の記録方法。
【請求項5】
前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程において、前記白色インク組成物及び前記非白色インク組成物の液滴の1滴あたりの最大重量範囲が、それぞれ0.5~15ngである、請求項1に記載の記録方法。
【請求項6】
前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程の何れか一方の走査が行なわれた走査領域に対して、前記記録媒体を搬送する搬送工程を行わずに、他方の走査を行う、請求項1に記載の記録方法。
【請求項7】
前記インクジェットヘッドは、インク組成物を吐出する複数のノズルからなるノズル列を有し、該ノズル列の長さ方向の長さが、該方向の前記記録媒体の記録が可能な領域の長さ以上である、請求項1に記載の記録方法。
【請求項8】
前記白色インク付着工程の走査及び前記非白色インク付着工程の走査の後に、前記記録媒体を搬送する搬送工程を備え、前記搬送工程の搬送方向が、前記走査の走査方向の軸に沿った方向である、請求項7に記載の記録方法。
【請求項9】
前記処理液付着工程を、前記インクジェットヘッドを移動させながら、前記インクジェ
ットヘッドから前記処理液を吐出させ、前記記録媒体に付着させる走査により行い、
前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程は、それぞれインク組成物を付着させる走査と同じ走査で、同じ走査領域に対して、前記処理液を付着させる走査を行う、請求項1に記載の記録方法。
【請求項10】
前記インクジェットヘッドは、ノズル密度が600dpi以上である、請求項1に記載の記録方法。
【請求項11】
インク組成物の付着を受ける場所において、前記記録媒体を支持する部材に備えられる記録媒体を加熱するための加熱機構で前記記録媒体の加熱を行わない、及び記録媒体を上方から加熱するための加熱機構で前記記録媒体の加熱を行わない、請求項1に記載の記録方法。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の記録方法で記録が行われる記録装置であって、
前記処理液と、前記白色インク組成物と、前記非白色インク組成物と、前記インクジェットヘッドと、を備える、記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録方法及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、比較的単純な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。その中で、インクジェットヘッドを移動させつつインクを吐出しメディアに付着させる主走査を複数回行うことで記録を行ういわゆるシリアル式の記録方式により、PET等のフィルムを含む記録媒体に対して、水系インクを用いて記録(印刷)する検討がなされている。
【0003】
特に、PET等のフィルムは透明あるいは半透明であり、カラー画像の視認性を向上させるため、背景を隠蔽する下地層と呼ばれる白色インクで形成した層と、所定の画像を形成したカラーインクによる層とを、積層させて印刷することがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、シリアル式の記録方式において、白色インクを用いて画像層を形成する工程と、カラーインクを用いて画像層を形成する工程との各工程が、主走査を複数回行うことで行われる、インクジェット記録方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-15968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、シリアル式の記録方式において、記録速度が遅い問題があった。
【0007】
また、ノズル面に結露が発生し、結露によりインク吐出安定性が低下する問題や、白色インクとカラーインクが混色してしまうことやインク滴がブリードしてしまい画質(濃淡ムラ)が劣化する問題もあった。
【0008】
したがって、優れた記録速度としつつ、結露の抑制及び画質(濃淡ムラ)に優れる記録方法が要求される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る記録方法の一態様は、
凝集剤を含有する処理液を記録媒体に付着させる処理液付着工程と、
白色色材を含有する白色インク組成物をインクジェットヘッドから吐出させ前記記録媒体に付着させる白色インク付着工程と、
非白色色材を含有する非白色インク組成物を前記インクジェットヘッドから吐出させ前記記録媒体に付着させる非白色インク付着工程と、を有し、
前記白色インク組成物及び前記非白色インク組成物は、水系インクであり、
前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程を、それぞれ、位置が固定された状態の前記記録媒体に対して、前記インクジェットヘッドを移動させながら、前記インクジェットヘッドからインク組成物を吐出させ、前記記録媒体に付着させる走査により行い、
前記白色インク付着工程は、1回の走査の走査領域に対して、前記白色インク組成物を1回の走査で付着させ、
前記非白色インク付着工程は、1回の走査の走査領域に対して、前記非白色インク組成物を1回の走査で付着させ、
前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程の何れか一方の走査が行なわれた走査領域に対して、別の走査で他方の走査を行い、
前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程における、前記記録媒体の表面温度が35℃以下である。
【0010】
本発明に係る記録装置の一態様は、
上記一態様の記録方法で記録が行われる記録装置であって、
前記処理液と、前記白色インク組成物と、前記非白色インク組成物と、前記インクジェットヘッドと、を備えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る記録装置の一例を模式的に示す正面図。
図2】記録ユニットの構成を部分的に示す底面図。
図3】インク及び処理液の組成例を示す図(表1)。
図4】記録方法の例及び評価結果を示す図(表2)。
図5】記録方法の例及び評価結果を示す図(表3)。
図6図1の記録装置を用いて行う本実施形態の記録の一例を模式的に示す図。
図7】本実施形態に係る記録装置の他の一例を模式的に示す斜視図。
図8図7の記録装置を用いて行う本実施形態の記録の一例を模式的に示す図。
図9図7の記録装置を用いて行う本実施形態の記録の他の一例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0013】
1.記録方法
本発明の一実施形態に係る記録方法は、凝集剤を含有する処理液を記録媒体に付着させる処理液付着工程と、白色色材を含有する白色インク組成物をインクジェットヘッドから吐出させ前記記録媒体に付着させる白色インク付着工程と、非白色色材を含有する非白色インク組成物を前記インクジェットヘッドから吐出させ前記記録媒体に付着させる非白色インク付着工程と、を有し、前記白色インク組成物及び前記非白色インク組成物は、水系インクであり、前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程を、それぞれ、位置が固定された状態の前記記録媒体に対して、前記インクジェットヘッドを移動させながら、前記インクジェットヘッドからインク組成物を吐出させ、前記記録媒体に付着させる走査により行い、前記白色インク付着工程は、1回の走査の走査領域に対して、前記白色インク組成物を1回の走査で付着させ、前記非白色インク付着工程は、1回の走査の走査領域に対して、前記非白色インク組成物を1回の走査で付着させ、前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程の何れか一方の走査が行なわれた走査領域に対して、別の走査で他方の走査を行い、前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程における、前記記録媒体の表面温度が35℃以下である。
【0014】
インクジェットヘッドを移動させつつインクを吐出しメディアに付着させる主走査を複数回行うことで記録を行ういわゆるシリアル式の記録方式により、PET等のフィルムを含む記録媒体に対して、水系インクを用いて記録(印刷)する検討がなされている。
【0015】
特に、PET等のフィルムは透明(半透明の場合も含む)であり、カラー画像の視認性を向上させるため、背景を隠蔽する下地層と呼ばれる白色インクで形成した層と、所定の画像を形成したカラーインクによる層とを、積層させて印刷することがある。
【0016】
ここで、シリアル式の記録方式は、主走査と主走査の合間にインクジェットヘッドがメディアから外れた位置に来るため、メディア上ではない場所に、ノズルからインクのフラッシングが行なえ、ノズル信頼性が確保しやすい利点がある。また、主走査時においてメディアの位置が固定されているため、メディア搬送に伴う搬送速度変動による画像劣化を防止することができる。さらに、複数回の主走査を行うことで、より広い画像の記録が可能であるため、インクジェットヘッドのノズル列の長さ(1回の主走査でインクの付着が可能な幅)を短くできる点で有用である。
【0017】
しかしながら、シリアル式の記録方式において、1回の主走査でインクの付着が可能なメディアの走査領域に、2回以上の主走査で1つのインクを分けて付着する場合、記録に必要な主走査回数が増え、記録速度が遅くなってしまう。そこで、1回の主走査でインクの付着が可能なメディアの走査領域に、1つのインクにつき1回の主走査でインクを完全に付着する(1つのインクにつき、同じ走査領域に2回以上の主走査で付着させない)ことで、記録速度を高めた。
【0018】
一方で、このような記録により白画像と重なる位置にカラー画像を形成、すなわち1回の主走査でインクの付着が可能なメディアの走査領域に、白色インクを1回の主走査で付着し、カラーインクを1回の主走査で付着する記録を行ったところ、ノズル面に結露が発生し、結露によりインク吐出安定性が低下する新たな課題が生じた。これは、メディアの走査領域に1回の主走査で各インクの全てを付着させているため1回の主走査におけるインク付着量が多く、メディアに付着したインクの溶媒成分が一度に多量蒸発することで、記録媒体上の蒸気濃度が濃くなり、次のインクを付着させるための主走査時に、蒸発したインクの溶媒成分がノズル面で結露していると推測する。
【0019】
検証したところ、プラテン付近でメディアを加熱する一次乾燥工程を行う場合、加熱でインクの蒸発が促進され、またノズル面とプラテン付近の温度差が大きくなるため、結露が発生しやすくなっていることが判明した。そこで、各インクを付着させる工程において、加熱による一次乾燥工程を行わない又は行うとしてもメディア温度を所定温度以下の低温とすることで、インクの溶媒成分の蒸発を抑制し、さらにノズル面とプラテン付近の温度差を低く抑えることで、結露を低減させることができた。
【0020】
しかしながら、加熱による一次乾燥工程を行わない又は低温加熱する場合、インク乾燥が促進されないので、白色インクとカラーインクが混色してしまうことやインク滴がブリードしてしまい画質(濃淡ムラ)が劣化する課題も新たに生じた。また、1回の主走査でインクの付着が可能なメディアの走査領域に、インクを1回の主走査で付着する場合、1回の走査で付着させるインクの付着量が多く、インク滴がブリードしてしまうなどによる画質劣化が起こりやすい。
そこで、インクの成分を凝集させる凝集剤を含む処理液を使用することで、インク滴をメディア上で早期に固定でき、画質(濃淡ムラ)が優れた。
【0021】
したがって、本実施形態に係る記録方法によれば、優れた記録速度としつつ、結露の抑制及び画質(濃淡ムラ)に優れる記録方法を提供できる。
【0022】
以下、本実施形態に係る記録方法が有する各工程等について説明する。なお、白色インク組成物と非白色インク組成物を特に区別しない場合には、インク組成物やインクということもある。
【0023】
1.1 処理液付着工程
本実施形態に係る記録方法は、凝集剤を含有する処理液を記録媒体に付着させる処理液付着工程を有する。
【0024】
1.1.1 付着態様
処理液を記録媒体に付着させる方法としては、インクジェット法、ローラーやバーなどによる塗布による方法、処理液を各種のスプレーを用いて記録媒体に塗布する方法、処理液に記録媒体を浸漬させて塗布する方法、処理液を刷毛等により記録媒体に塗布する方法等の非接触式及び接触式のいずれか又はそれらを組み合わせた方法を用いることができる。これらの中でもインクジェット法が好ましい。
【0025】
本実施形態に係る記録方法は、処理液付着工程を、インクジェットヘッドを移動させながら、該インクジェットヘッドから処理液を吐出させ、記録媒体に付着させる走査により行うことが好ましい。この場合、処理液の付着量や付着する場所を制御しやすい。さらに、後述する白色インク付着工程及び非白色インク付着工程は、それぞれインク組成物を付着させる走査と同じ走査で、同じ走査領域に対して、処理液を付着させる走査を行うものであることが好ましい。このような付着態様(同時打ち)であると、処理液と各インク組成物は混ざり合いやすく反応しやすくなる。そうすると、インクの増粘・凝集がより促され、インク滴をメディア上でより早期に固定できるため、画質(濃淡ムラ)により優れる傾向にある。
【0026】
上記付着態様は、例えば、インクジェットヘッドのノズル面に、インクジェットヘッドを移動させる方向(以下、「ヘッド移動方向」ともいう。)と交差する方向(以下、「ノズル列方向」ともいう。)に沿って配列される複数のノズルからなるノズル列を、ヘッド移動方向に沿って複数有する場合において、処理液を吐出するノズル列をヘッド移動方向に沿って投影したとき、ノズル列方向において、白色インク組成物を吐出するノズル列及び非白色インク組成物を吐出するノズル列と少なくとも一部が重なるように配置することで可能である。
【0027】
上記付着態様において、白色インク組成物と処理液が着弾するタイミングおよび非白色インク組成物と処理液が着弾するタイミングは、異なる場合もあるが、非常に微小な時間差である。そのため、インク組成物と処理液が着弾する順序は、特に限定されない。しかし、反応性がより優れる観点から、インク組成物が着弾する前に処理液が着弾する順序であることが好ましい。
【0028】
処理液の最大付着量の範囲は、処理液付着工程が白色インク付着工程に付随して実行される場合、記録媒体の単位面積当たり、0.1~5.0mg/inchが好ましく、0.2~4.0mg/inchがより好ましく、0.3~3.0mg/inchがさらに好ましく、0.4~2.0mg/inchが特に好ましく、0.5~1.5mg/inchがより特に好ましく、0.8~1.5mg/inchが殊に好ましい。処理液の最大付着量の範囲が上記範囲内であると、より優れた画質(濃淡ムラ)が得られるとともに、より優れたインクの埋まり性が得られる傾向にある。
【0029】
なお、「付随して実行」とは、処理液付着工程による処理液の記録媒体への付着が、白色インク付着工程により白色インク組成物が記録媒体に付着される時点の前又は同時に行われることを指す。
【0030】
処理液の最大付着量の範囲は、処理液付着工程が非白色インク付着工程に付随して実行される場合、記録媒体の単位面積当たり、0.01~3.0mg/inchが好ましく
、0.05~2.0mg/inchがより好ましく、0.1~1.0mg/inchがさらに好ましく、0.2~0.8mg/inchが特に好ましく、0.3~0.7mg/inchがより特に好ましい。処理液の最大付着量の範囲が上記範囲内であると、より優れた画質(濃淡ムラ)が得られるとともに、より優れたインクの埋まり性が得られる傾向にある。
【0031】
また、白色インク付着工程及び非白色インク付着工程に付随して実行される、それぞれの処理液付着工程における処理液の合計の最大付着量の範囲は、4.0mg/inch以下であることが好ましく、0.1mg/inch以上3.8mg/inch以下であることがより好ましい。さらには、0.5mg/inch以上3.5mg/inch以下であることがより好ましく、0.8mg/inch以上2.5mg/inch以下であることがさらに好ましく、1.0mg/inch以上2.0mg/inch以下であることがよりさらに好ましい。処理液の合計の最大付着量の範囲が上記範囲内であると、より優れた画質(濃淡ムラ)が得られるとともに、より優れたインクの埋まり性が得られる傾向にある。
【0032】
なお、白色インク組成物と非白色インク組成物を付着させた領域において、記録媒体に対して付着される処理液の付着量は、一定としてもよいし、場所により異ならせてもよい。特に、非白色インク組成物の付着量に応じて処理液の付着量を場所により異ならせてもよい。ただし、記録方法において記録が行なわれる何れの場所(記録領域)においても、同一の記録領域における、非白色インク付着工程に付随して実行される処理液付着工程(以下、「第2処理液付着工程」ともいう。)における処理液の付着量が、白色インク付着工程に付随して実行される処理液付着工程(以下、「第1処理液付着工程」ともいう。)における処理液よりも、小さくなるように行われることが好ましい。
例えば、第2処理液付着工程の処理液の付着量が最大の付着量である記録領域においても、第2処理液付着工程の処理液の付着量が、第1処理液付着工程の処理液の付着量よりも、小さくなるように行われることが好ましい。すなわち、第2処理液付着工程の処理液の付着量が最大の付着量であり、第1処理液付着工程の処理液の付着量が最小の付着量である記録領域においても、同一の記録領域における、第2処理液付着工程の処理液の付着量が、第1処理液付着工程の処理液の付着量よりも、小さくなるように行われることが好ましい。
【0033】
第1処理液付着工程の処理液の付着量に対する、第2処理液付着工程の処理液の付着量の比(質量比)は、1未満が好ましく、0.1以上0.9以下がより好ましく、0.2以上0.5以下がさらに好ましく、0.3以上0.49以下がよりさらに好ましく、0.4以上0.47以下が特に好ましい。この場合、画質などがより優れ好ましい。
【0034】
第1処理液付着工程の処理液の付着量に対する、白色インク付着工程の白色インク組成物の付着量の比(質量比)は、5以上20以下が好ましく、7以上17以下がより好ましく、10以上15以下がさらに好ましい。この場合、画質などがより優れ好ましい。
【0035】
第2処理液付着工程の処理液の付着量に対する、非白色インク付着工程の非白色インク組成物の付着量の比(質量比)は、8以上18以下が好ましく、10以上16以下がより好ましく、11以上15以下がさらに好ましい。この場合、画質などがより優れ好ましい。
【0036】
インクジェット法やスプレーを用いて塗布することにより、処理液の液滴を記録媒体に付着させる場合において、処理液の液滴の1滴あたりの最大重量範囲は、0.5~8ngであることが好ましく、1~6ngであることがより好ましく、1.5~5ngであることがさらに好ましく、2~4ngであることが特に好ましい。このようにすれば、記録媒
体上における処理液とインクとの接触機会をより多くすることができ、ひいてはより優れた画質(濃淡ムラ)が得られるとともに、より優れたインクの埋まり性が得られる傾向にある。
【0037】
1.1.2 記録媒体
本実施形態に係る記録方法に用いられる記録媒体としては、特に制限されないが、例えば、紙、布等の吸収性記録媒体、印刷本紙等の低吸収性記録媒体、金属、ガラス、高分子等の非吸収性記録媒体などが挙げられる。
【0038】
ここで、低吸収性又は非吸収性記録媒体とは、液体を全く吸収しない、又はほとんど吸収しない性質を有する記録媒体を指す。定量的には、低吸収性又は非吸収性記録媒体とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である記録媒体」を指す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙-液体吸収性試験方法-ブリストー法」に述べられている。これに対して、吸収性記録媒体とは、低吸収性又は非吸収性記録媒体に該当しない記録媒体のことを指す。
【0039】
低吸収性記録媒体としては、例えば、表面に低吸収性の塗工層が設けられた記録媒体が挙げられ、塗工紙と呼ばれるものである。例えば、基材が紙であるものとしては、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられ、基材がプラスチックフィルムである場合には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の表面に、ポリマー等が塗工されたもの、シリカ、チタン等の粒子がバインダーとともに塗工されたものが挙げられる。
【0040】
非吸収性記録媒体としては、例えば、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているもの、紙等の基材上にプラスチックフィルムが接着されているもの、吸収層(受容層)を有していないプラスチックフィルム等が挙げられる。該プラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0041】
吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、普通紙、厚紙、ライナー紙などが挙げられる。ライナー紙は、クラフトパルプ、古紙などの紙から構成されるものが挙げられる。
【0042】
なお、記録媒体は、無色透明、半透明、着色透明、有彩色不透明、無彩色不透明等であってもよい。また、記録媒体は、それ自体が着色されていたり、半透明や透明であったりしてもよい。
【0043】
1.1.3 処理液
以下、処理液付着工程において用いる処理液に含有する各成分について説明する。なお、処理液とは、記録媒体に着色を行うために用いるインク組成物ではなく、着色を行うために用いるインク組成物と共に用いる補助液である。また、処理液は、顔料等の色材を含有してもよいが、処理液の総質量に対して0.2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることがさらに好ましく、下限は0質量%である。処理液は色材を含有しないことが好ましい。
【0044】
〔凝集剤〕
本実施形態に係る記録方法に用いる処理液は、インクの成分を凝集させる凝集剤を含有
する。凝集剤は、インクに含まれる色材、インクに含まれ得る樹脂粒子などの成分と反応することで、色材や樹脂粒子を凝集させる作用を有する。ただし、凝集剤による色材や樹脂粒子の凝集の程度は凝集剤、色材、樹脂粒子のそれぞれの種類によって異なり、調節することができる。また、凝集剤は、インクに含まれる色材及び樹脂粒子と反応することで、色材及び樹脂粒子を凝集させることができる。このような凝集により、例えば、色材の発色を高めること、樹脂粒子の定着性を高めること、及び/又は、インクの粘度を高めることができる。
【0045】
凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属塩、有機酸、無機酸、カチオン性化合物等が挙げられ、カチオン性化合物としては、カチオン性樹脂(カチオン性ポリマー)等を用いることができる。これらの中でも、金属塩としては多価金属塩が好ましく、カチオン性化合物としてはカチオン性樹脂が好ましい。そのため、凝集剤としては、カチオン性樹脂、有機酸、及び多価金属塩から選ばれることが、得られる画質、耐擦性、光沢等が特に優れる点で好ましい。
【0046】
(金属塩)
金属塩としては好ましくは多価金属塩であるが、多価金属塩以外の金属塩も使用可能である。これらの凝集剤の中でも、インクに含まれる成分との反応性に優れるという点から、金属塩、及び有機酸から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。また、カチオン性化合物の中でも、処理液に対して溶解しやすいという点から、カチオン性樹脂を用いることが好ましい。また、凝集剤は複数種を併用することも可能である。
【0047】
多価金属塩とは、2価以上の金属イオンとアニオンから構成される化合物である。2価以上の金属イオンとしては、例えば、カルシウム、マグネシウム、銅、ニッケル、亜鉛、バリウム、アルミニウム、チタン、ストロンチウム、クロム、コバルト、鉄等のイオンが挙げられる。これらの多価金属塩を構成する金属イオンの中でも、インクの成分の凝集性に優れているという点から、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの少なくとも一方であることが好ましい。
【0048】
多価金属塩を構成するアニオンとしては、無機イオン又は有機イオンである。すなわち、本発明における多価金属塩とは、無機イオン又は有機イオンと多価金属とからなるものである。このような無機イオンとしては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、水酸化物イオン等が挙げられる。有機イオンとしては有機酸イオンが挙げられ、例えばカルボン酸イオン、ギ酸イオン等が挙げられる。
【0049】
なお、多価金属化合物はイオン性の多価金属塩であることが好ましく、特に、上記多価金属塩がマグネシウム塩、カルシウム塩である場合、処理液の安定性がより良好となる。また、多価金属の対イオンとしては、無機酸イオン、有機酸イオンのいずれでもよい。
【0050】
上記の多価金属塩の具体例としては、重質炭酸カルシウム及び軽質炭酸カルシウムといった炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、塩化バリウム、炭酸亜鉛、硫化亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、硝酸銅、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸アルミニウム等が挙げられる。これらの多価金属塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。これらの中でも、水への十分な溶解性を確保でき、かつ、処理液による跡残りが低減する(跡が目立たなくなる)ため、ギ酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硝酸カルシウム、及び塩化カルシウムのうち少なくともいずれかが好ましく、ギ酸カルシウム、硝酸カルシウムがより好ましい。なお、これらの金属塩は、原料形態において水和水を有していてもよい。
【0051】
多価金属塩以外の金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩などの一価の金属塩が挙げられ、例えば硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなどが挙げられる。
【0052】
(有機酸)
有機酸としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。有機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機酸の塩で金属塩であるものは上記の金属塩に含める。
【0053】
(無機酸)
無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。無機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
(カチオン性樹脂)
カチオン性樹脂(カチオンポリマー)としては、例えば、カチオン性のウレタン系樹脂、カチオン性のオレフィン系樹脂、カチオン性のアミン系樹脂等が挙げられる。カチオン性ポリマーは好ましくは水溶性である。
【0055】
カチオン性のウレタン系樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、ハイドラン CP-7010、CP-7020、CP-7030、CP-7040、CP-7050、CP-7060、CP-7610(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)、スーパーフレックス 600、610、620、630、640、650(商品名、第一工業製薬株式会社製)、ウレタンエマルジョン WBR-2120C、WBR-2122C(商品名、大成ファインケミカル株式会社製)等を用いることができる。
【0056】
カチオン性のオレフィン樹脂は、エチレン、プロピレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。また、カチオン性のオレフィン樹脂は、水や有機溶媒等を含む溶媒に分散させたエマルジョン状態であってもよい。カチオン性のオレフィン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、アローベースCB-1200、CD-1200(商品名、ユニチカ株式会社製)等が挙げられる。
【0057】
カチオン性のアミン系樹脂(カチオン性ポリマー)としては、構造中にアミノ基を有するものであればよく、公知のものを適宜選択して用いることができる。例えば、ポリアミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルアミン樹脂などが挙げられる。ポリアミン樹脂は樹脂の主骨格中にアミノ基を有する樹脂である。ポリアミド樹脂は樹脂の主骨格中にアミド基を有する樹脂である。ポリアリルアミン樹脂は樹脂の主骨格中にアリル基に由来する構造を有する樹脂である。
【0058】
また、カチオン性のポリアミン系樹脂としては、センカ株式会社製のユニセンスKHE103L(ヘキサメチレンジアミン/エピクロルヒドリン樹脂、1%水溶液のpH約5.0、粘度20~50(mPa・s)、固形分濃度50質量%の水溶液)、ユニセンスKHE104L(ジメチルアミン/エピクロルヒドリン樹脂、1%水溶液のpH約7.0、粘度1~10(mPa・s)、固形分濃度20質量%の水溶液)などを挙げることができる。さらにカチオン性のポリアミン系樹脂の市販品の具体例としては、FL-14(SNF社製)、アラフィックス100、251S、255、255LOX(荒川化学社製)、D
K-6810、6853、6885;WS-4010、4011、4020、4024、4027、4030(星光PMC社製)、パピオゲンP-105(センカ社製)、スミレーズレジン650(30)、675A、6615、SLX-1(田岡化学工業社製)、カチオマスター(登録商標)PD-1、7(エピクロルヒドリン-アミン誘導体樹脂)、30、A、PDT-2、PE-10、PE-30、DT-EH、EPA-SK01、TMHMDA-E(四日市合成社製)、ジェットフィックス36N、38A、5052(里田化工社製)が挙げられる。
【0059】
ポリアミン系樹脂としては、ポリアリルアミン樹脂も挙げられる。ポリアリルアミン樹脂は、例えば、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアリルアミンアミド硫酸塩、アリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン塩酸塩・ジメチルアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン・ジメチルアリルアミンコポリマー、ポリジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミンアミド硫酸塩、ポリメチルジアリルアミン酢酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイト・二酸化硫黄コポリマー、メチルジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミドコポリマー等を挙げることができる。
【0060】
これらの凝集剤は、複数種を使用してもよい。また、これらの凝集剤のうち、多価金属塩、有機酸、カチオン性樹脂の少なくとも一種を選択すれば、凝集作用がより良好であるので、より高画質な(特に発色性の良好な)画像を形成することができる。
【0061】
処理液における、凝集剤の合計の含有量は、例えば、処理液の全質量に対して、1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。該含有量の下限は、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。また、該含有量の上限は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、12質量%以下がさらに好ましく、10質量%以下がよりさらに好ましく、8質量%以下が特に好ましい。
なお、凝集剤が溶液や分散体で共有される場合においても、固形分の含有量として上記範囲であることが好ましい。凝集剤の含有量が1質量%以上であれば、凝集剤がインクに含まれる成分を凝集させる能力が十分得られる傾向にある。また、凝集剤の含有量が30質量%以下であることで、処理液中での凝集剤の溶解性や分散性がより良好になり、処理液の保存安定性等を向上できる傾向にある。
【0062】
処理液に含まれ得る有機溶剤の疎水性が高い場合であっても、処理液中における凝集剤の溶解性が良好になるという点から、凝集剤には、25℃の水100gに対する溶解度が、1g以上であるものを使用することが好ましく、3g以上80g以下にあるものを使用することがより好ましい。
【0063】
〔水〕
本実施形態に係る記録方法に用いる処理液は、水を含有することが好ましい。水の種類や含有量等については、後述する白色インク組成物と同様とできる。水系の処理液が好ましい。
【0064】
〔有機溶剤〕
本実施形態に係る記録方法に用いる処理液は、有機溶剤を含有することが好ましい。有機溶剤の種類や含有量等については、後述する白色インク組成物と同様とできる。
【0065】
処理液は、標準沸点が280℃超のアルカンポリオール類の有機溶剤を、処理液の全質量に対して、2質量%を超えて含有しないことが好ましく、1.5質量%を超えて含有しないことがより好ましく、1.0質量%を超えて含有しないことがさらに好ましく、0.5質量%を超えて含有しないことがよりさらに好ましく、0.1質量%を超えて含有しないことが特に好ましい。標準沸点が280℃超のアルカンポリオール類の有機溶剤の含有量の下限は0質量%であってもよい。
【0066】
処理液は、標準沸点が150~280℃の有機溶剤を含有することが好ましい。該有機溶剤の標準沸点は、160~270℃であることがより好ましく、170~260℃であることがさらに好ましく、180~250℃であることが特に好ましい。また、該有機溶剤の含有量は、処理液の全質量に対して、10~50質量%であることが好ましく、20~40質量%であることがより好ましく、25~35質量%であることがさらに好ましい。
【0067】
このようにすれば、形成される画像の乾燥が良好となり、より早い記録を行うことができ、記録媒体との密着性も向上できる傾向にある。さらには、処理液は、標準沸点が280.0℃超の有機溶剤(ポリオール類に限らず)を上記の範囲とすることも、より好ましい。標準沸点が280℃を越える有機溶剤としては、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0068】
〔界面活性剤〕
本実施形態に係る記録方法に用いる処理液は、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤の種類や含有量等については、後述する白色インク組成物と同様とできる。
【0069】
〔その他の成分〕
本実施形態に係る記録方法に用いる処理液は、機能を損なわない限り、上記成分の他に、樹脂粒子、ワックス、添加剤、樹脂分散剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤、粘度調整剤、酸化防止剤等の成分を含有してもよい。これらの成分は後述する白色インク組成物と同様とできる。
【0070】
〔処理液の物性〕
本実施形態に係る記録方法に用いる処理液は、記録媒体への濡れ拡がり性を適切なものとする観点から、25℃における表面張力は、好ましくは40mN/m以下、より好ましくは38mN/m以下、さらに好ましくは35mN/m以下、よりさらに好ましくは30mN/m以下、特に好ましくは25mN/m以下である。なお、表面張力の測定は、例えば、自動表面張力計CBVP-Z(協和界面科学社製)を用いて、25℃の環境下で白金プレートを組成物で濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
【0071】
本実施形態に係る記録方法に用いる処理液は、インクジェット法によって記録媒体に付着されることがより好ましい。その場合には、20℃における粘度を、1.5mPa・s以上15mPa・s以下とすることが好ましく、1.5mPa・s以上7mPa・s以下とすることがより好ましく、1.5mPa・s以上5.5mPa・s以下とすることがより好ましい。処理液がインクジェット法によって記録媒体に付着される場合、所定の処理液付着領域を効率的に記録媒体に形成することが容易である。なお、粘度の測定は、例えば、レオメーター MCR302/アントンパール社製)で25℃、せん断速度200s-1の条件で測定することができる。
【0072】
1.2 白色インク付着工程
本実施形態に係る記録方法は、白色色材を含有する白色インク組成物をインクジェット
ヘッドから吐出させ前記記録媒体に付着させる白色インク付着工程を有する。
【0073】
1.2.1 付着態様
本実施形態に係る記録方法が有する白色インク付着工程は、位置が固定された状態の記録媒体に対して、インクジェットヘッドを移動させながら、該インクジェットヘッドから白色インク組成物を吐出させ、記録媒体に付着させる走査(以下、「主走査」ともいう。)により行われるものである。
【0074】
このような走査は、例えば、後述の図1に示す記録装置100においては、プラテン30の上面に停止するシートSに対して、キャリッジ32をX軸方向に平行な方向に移動させつつ、インクジェットヘッド35のノズルNからシートSの表面に白色インク組成物を吐出して行うことをいう。シートSは、インクジェットヘッドが走査を行わない時間には、シートSを搬送するなどにより位置が移動してもよいが、走査時には、シートSの位置が移動しないことで、位置が固定されている。位置が固定されているとは、このように位置が移動しないことである。
なお位置が固定されている記録媒体は、浮き等を防止するために、さらに、プラテン上で吸引されていたり、ローラーなどにより把持されていたりしてもよい。
【0075】
また、本実施形態に係る記録方法が有する白色インク付着工程は、1回の走査の走査領域に対して、白色インク組成物を1回の走査で付着させるものである。シリアル式の記録方式においては、1回の主走査でインクの付着が可能なメディアの走査領域に、2回以上の主走査で1つのインクを分けて付着する態様も可能であるが、この場合記録に必要な主走査回数が増え、記録速度が遅くなってしまう。これに対して、本実施形態に係る記録方法が有する白色インク付着工程では、1回の主走査で白色インク組成物の付着が可能なメディアの走査領域に、1回の主走査で白色インク組成物を完全に付着する(同じ走査領域に2回以上の主走査で白色インク組成物を付着させない)ことで、記録速度を高められる。なお1回の走査の走査領域とは、インクジェットヘッドが走査を1回行った時に、インクジェットヘッドが移動した記録媒体上の領域である。インクジェットヘッドの長さの縦方向の長さで、走査の距離の横方向の長さの長方形の領域である。インクジェットヘッドの長さは、インクジェットヘッドが有するノズル列の長さである。
この1回の走査の走査領域に対して、白色インク付着工程の走査を1回だけ行い、非白色インク付着工程の走査も1回だけ行う。
【0076】
なお、2回以上の主走査により1つのインクを分けて付着させる場合には、記録媒体上の蒸気濃度が薄く、また2回以上の主走査の間に蒸気が拡散されるため、ノズル面の結露は発生しにくい。また、インクの付着工程を記録媒体を搬送させながら行ういわゆるライン式の記録方式は、1回の走査でインクを付着させるものであるが、ライン式の記録方式では記録媒体が停止せず連続的に搬送され、インク付着部分がインクジェットヘッドの下流側に即座に移動するため、インクジェットヘッド付近に蒸気が滞留せず、結露は発生しにくい。
【0077】
本実施形態に係る記録方法においては、白色インク付着工程及び後述の非白色インク付着工程での上記1回の走査における、記録媒体に対向してインクジェットヘッドが移動する距離が、0.3m以上であることが好ましく、0.5m以上であることがより好ましく、1.0m以上であることがさらに好ましく、1.5m以上であることがよりさらに好ましく、2.0m以上であることが特に好ましい。距離が上記範囲以上の場合、幅の広い記録物の記録が可能となり有用である。
一方、ノズル面における結露は、主走査する距離が長いほどノズル面が蒸気に晒される機会が多くなるため、より発生しやすくなる。本実施形態に係る記録方法によれば、かかる距離が特に0.5m以上であって、ノズル面が蒸気に晒される機会が多く、結露がより
発生しやすい場合においても、結露を良好に抑制できる傾向にある。
一方、かかる距離の上限は、7.0m以下であることが好ましく、5.0m以下であることが好ましく、4.0m以下であることがより好ましく、3.0m以下であることがさらに好ましい。さらに2.0m以下が好ましく、1.8m以下がさらに好ましく、1.0m以下がより好ましい。距離の上限が上記範囲以下の場合、結露低減がより優れ好ましい。
【0078】
また、「1回の走査における、記録媒体に対向してインクジェットヘッドが移動する距離」とは、例えば、1回の走査において記録媒体の端から端まで(一端から他端まで)走査する場合の距離である。または、1回の走査において記録媒体の記録可能な最大の領域の端から端まで(一端から他端まで)走査する場合の距離である。
【0079】
白色インク付着工程と後述する非白色インク付着工程との工程順序は、特に限定されず、先に白色インク付着工程を行いその後に非白色インク付着工程を行ってもよく、先に非白色インク付着工程を行いその後に白色インク付着工程を行ってもよい。前者の順序による印刷(表白印刷)は、画像が印刷された側から印刷物を見る場合に適している。また、後者の順序による印刷(裏白印刷)は、記録媒体(特に透明フィルムなど)の裏側から印刷物を見る場合に適している。なお、ノズル面における結露は、上記工程順序にかかわらず生じる課題である。
【0080】
本実施形態に係る記録方法においては、白色インク付着工程及び後述の非白色インク付着工程の何れか一方の走査が行なわれた走査領域に対して、別の走査で他方の走査が行われる。このような態様であると、一方の走査によって付着させた先のインク組成物に重ねて、後のインク組成物を他方の走査によって付着させることができる。これにより、背景を隠蔽する下地層と呼ばれる白色インクで形成した層と、所定の画像を形成したカラーインクによる層とを積層させて印刷できるため、記録媒体が透明であっても、カラー画像の視認性を向上できる。
【0081】
本実施形態に係る記録方法においては、白色インク付着工程及び後述する非白色インク付着工程のうちの先に行われる工程のインク組成物の最大付着量の範囲が、5mg/inch以上であることが好ましく、8mg/inch以上であることがより好ましく、10mg/inch以上であることがさらに好ましく、12mg/inch以上であることがよりさらに好ましく、14mg/inch以上であることが特に好ましい。この場合、当該インクによる画像の発色性が特に優れ好ましい。
かかる最大付着量の範囲の上限は、特に限定されないが、25mg/inch以下であることが好ましく、23mg/inch以下であることがより好ましく、20mg/inch以下であることがさらに好ましく、18mg/inch以下であることが特に好ましい。また、工程順序にかかわらず、白色インク付着工程における白色インク組成物の最大付着量の範囲を上記範囲とすることも好ましい。また、白色インク付着工程及び非白色インク付着工程のうちの後に行われる工程のインク組成物の最大付着量の範囲を、上記範囲にしてもよい。
ノズル面の結露は、先に行われる工程で記録媒体に付着したインクの溶媒成分が一度に多量蒸発することで、記録媒体上の蒸気濃度が濃くなり、次のインクを付着させるための主走査時に、蒸発した先のインクの溶媒成分の影響によって発生するものと推測する。本実施形態に係る記録方法によれば、かかる最大付着量の範囲が特に8mg/inch以上であって、蒸気濃度がより濃くなり結露がより発生しやすい場合においても、結露を良好に抑制できる傾向にある。
【0082】
なお、白色インク付着工程及び後述する非白色インク付着工程のうち、後に行われる工程のインク組成物の最大付着量の範囲は、先に行われる工程のインク組成物の最大付着量
の範囲よりも少ないことが好ましく、1mg/inch以上少ないことがより好ましく、5mg/inch以上少ないことがさらに好ましく、8mg/inch以上少ないことがよりさらに好ましく、11mg/inch以上少ないことが特に好ましい。
【0083】
本実施形態に係る記録方法では、白色インク付着工程及び後述の非白色インク付着工程において、白色インク組成物及び非白色インク組成物の液滴の1滴あたりの最大重量範囲が、それぞれ、0.5~20ngであることが好ましく、0.5~15ngであることが好ましく、1~15ngであることがより好ましく、3~15ngであることがさらに好ましく、5~15ngであることがよりさらに好ましく、6~13ngであることが特に好ましい。それぞれのインク組成物の液滴の1滴あたりの最大重量範囲が上記範囲である場合には、液滴の大きさが比較的小さいため蒸発しやすくより結露が発生しやすいが、本実施形態に係る記録方法によればこのような場合であっても、結露を良好に抑制できる傾向にある。
なお、同様の観点から、白色インク付着工程における白色インク組成物の液滴の1滴あたりの最大重量範囲は、5~20ngであることが好ましく、7~18ngであることがより好ましく、9~16ngであることがさらに好ましく、10~15ngであることが特に好ましい。
また、白色インク付着工程及び後述する非白色インク付着工程のうちの先に行われる工程のインク組成物の液滴の1滴あたりの最大重量範囲を上記の範囲としてもよい。先に行われる付着工程のインク組成物から発生する蒸気によって、後に行われる付着工程において、結露が発生する傾向がある。先に行われる工程のインク組成物の液滴の1滴あたりの最大重量範囲を上記の範囲とする場合、本実施形態の記録方法が特に有用となる。
【0084】
また、一般的に、インク液滴の1滴あたりの最大重量範囲が小さいと、記録単位面積当たりのインク滴密度が高まるため、記録解像度は高くなる。そして、記録解像度はノズル密度に比例する。すなわち、インク付着量が同じであればノズル密度が高い方が結露がより発生しやすくなる。
したがって、結露を良好に抑制できるという本発明の奏する効果をより享受できる観点から、本実施形態に係る記録方法で用いるインクジェットヘッドは、ノズル密度が600dpi以上であることが好ましく、800dpi以上であることがより好ましく、1000dpi以上であることがさらに好ましく、1200dpi以上であることが特に好ましい。ノズル密度の上限は、2400dpi以下であることが好ましく、2000dpi以下であることがより好ましく、1600dpi以下であることがさらに好ましい。
なお、記録解像度は600×600dpi以上であることが好ましく、800×800dpi以上であることがより好ましく、1000×1000dpi以上であることがさらに好ましく、1200×1200dpi以上であることが特に好ましい。
【0085】
本実施形態に係る記録方法では、白色インク付着工程及び後述の非白色インク付着工程における、記録媒体の表面温度は35℃以下である。1回の主走査でインクの付着が可能なメディアの走査領域に、白色インクやカラーインクを1回の主走査で付着する記録を行った場合、ノズル面に結露が発生し、結露によりインク吐出安定性が低下する課題が生じる。そこで、各インクを付着させる工程において、メディア温度を所定温度以下の低温とすることで、インクの溶媒成分の蒸発を抑制し、さらにノズル面とプラテン付近の温度差を低く抑えることで、結露を低減させることが可能である。
【0086】
白色インク付着工程及び後述の非白色インク付着工程における、記録媒体の表面温度は35℃以下であるが、33℃以下が好ましく、31℃以下がより好ましく、29℃以下がさらに好ましく、27℃以下が特に好ましい。かかる表面温度の下限は、特に制限されないが、5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく。15℃以上がさらに好ましく、20℃以上が特に好ましい。かかる表面温度が上記範囲以下であると、結露をより低減で
き好ましい。また、かかる表面温度が上記範囲以上であると、画質などがより優れ好ましい。
なお、該温度は付着工程における記録媒体の記録面の液体の付着を受ける部分の表面温度であり、記録領域における付着工程の最高の温度である。
【0087】
白色インク付着工程及び非白色インク付着工程において、一次加熱工程を行っても良いし、行わなくてもよい。一次加熱工程は、白色インク付着工程及び非白色インク付着工程において、インク組成物の付着を受ける場所において、一次加熱機構により、記録媒体の加熱を行う工程である。一次加熱機構は、インク組成物の付着を受ける場所において、記録媒体を支持する部材に備えられた記録媒体を加熱するための加熱機構や、記録媒体を上方から加熱するための加熱機構などである。
【0088】
一次加熱工程を行う場合であっても、白色インク付着工程及び非白色インク付着工程における、記録媒体の表面温度は、35℃以下とするものである。
また、一次加熱工程を行わない場合であっても、一次加熱機構以外の記録装置の部材などの発熱により記録媒体が加熱されてしまった場合であっても、インク組成物の付着を受ける場所において、かかる表面温度を35℃以下とするものである。
【0089】
1.2.2 白色インク組成物
以下、白色インク付着工程において用いる白色インク組成物に含有する各成分について説明する。
【0090】
〔白色色材〕
本実施形態に係る記録方法に用いる白色インク組成物は、白色色材を含有する。白色色材は、例えば、金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の金属化合物が挙げられる。金属酸化物としては、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等が挙げられる。また、白色色材には、中空構造を有する粒子を用いてもよく、中空構造を有する粒子としては、公知のものを用いることができる。
【0091】
白色色材としては、上記例示した中でも、白色度及び耐擦性が良好であるという観点から、二酸化チタンを用いることが好ましい。白色色材は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0092】
白色色材の体積基準の平均粒子径(D50)(「体積平均粒子径」ともいう。)は、好ましくは30.0nm以上600.0nm以下であり、より好ましくは100.0nm以上500.0nm以下、さらに好ましくは150.0nm以上400.0nm以下である。白色色材の体積平均粒子径が上記範囲であれば、粒子が沈降しにくく、分散安定性を良好にすることができ、また、インクジェット記録装置に適用した際にノズルの目詰まり等を生じにくくすることができる。また、白色色材の体積平均粒子径が前記範囲内であれば、画像の視認性の向上に十分に寄与できる。
【0093】
白色色材の体積平均粒子径は、粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「ナノトラックシリーズ」マイクロトラックベル社製)が挙げられる。体積平均粒子径はD50値とする。
【0094】
なお、本明細書において、白色インク組成物、白色色材等という際の「白色」という語句は、完全な白のみを指すものではなく、白と視認できる範囲であれば、有彩色や無彩色に着色した色や光沢を帯びた色も含む。また、インクや顔料の名称が、白色のインクや白色の顔料であることを窺わせるもので呼称、販売されるものを含む。
【0095】
より定量的には「白色」は、記録物が、例えばCIELABにおいて、Lが100である色のみならず、Lが60以上100以下であり、a及びbがそれぞれ±10以下の色も含まれる。
【0096】
さらに具体的には、例えば、白色インク組成物は、透明フィルム製の記録媒体の表面が、該インクにより十分に被覆される量で記録された場合に、記録物の記録部分の明度(L)及び色度(a、b)を、CIELABに準拠した分光測光器を用いて測色した場合に、上記の範囲であるものが好ましい。十分に被覆される量で記録された記録物は、例えば、15mg/inchの付着量である。さらに好ましくは、80≦L≦100、-4.5≦a≦2、-10≦b≦2.5である。透明フィルム製の記録媒体としては、例えばLAGジェットE-1000ZC(リンテック社製)が挙げられる。CIELABに準拠した分光測光器としては、例えばSpectrolino(商品名、GretagMacbeth社製)があげられ、測定条件をD50光源、観測視野を2°、濃度をDIN NB、白色基準をAbs、フィルターをNo、測定モードをReflectance、として設定して計測する。
【0097】
白色色材の典型例としては、二酸化チタンが挙げられ、例えば、タイペークCR-50-2、CR-57、CR-58-2、CR-60-2、CR-60-3、CR-Super-70、CR-90-2、CR-95、CR953、PC-3、PF-690、PF-691、PF-699、PF-711、PF-728、PF-736、PF-737、PF-739、PF-740、PF-742、R-980、UT-771(いずれも石原産業株式会社製)等を例示できる。
【0098】
白色インク組成物における白色色材の含有量(固形分)は、白色インク組成物の全質量に対して、0.5質量%以上20.0質量%以下が好ましく、より好ましくは1.0質量%以上20.0質量%以下であり、さらにより好ましくは3.0質量%以上15.0質量%以下であり、よりさらに好ましくは7.0質量%以上12.0質量%以下である。白色色材の含有量が上記範囲内であれば、十分な視認性の画像を得ることができる。
【0099】
本実施形態に係る記録方法では、白色色材は、画像の背景の隠蔽や得られる画像の視認性を高める機能を有する。白色インク組成物における白色色材の含有量は、画像の視認性を高める目的で使用する場合のほうが、背景隠蔽を目的とした場合に比べて、より少なくすることができる。したがって白色インク組成物を画像の視認性を高める目的で使用する場合には画像の十分な視認性が得られるとともに、白色色材の分散安定性を良好にしやすく、沈降させ難くすることができる。このような観点からは、白色インク組成物における白色色材の含有量の上限は、上記範囲が好ましく、10.0質量%以下が好ましい。
【0100】
白色色材は、分散媒中に安定的に分散できることが好適であり、そのために分散剤を使用して分散させてもよい。分散剤としては、樹脂分散剤等が挙げられ、上記の白色色材を含む白色インク組成物中での白色色材の分散安定性を良好とできるものから選択される。また、白色色材は、例えば、オゾン、次亜塩素酸、発煙硫酸等により、顔料表面を酸化、あるいはスルホン化して顔料粒子の表面を修飾することにより、自己分散型の顔料として使用してもよい。
【0101】
樹脂分散剤(分散剤樹脂)としては、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸-アクリルニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン-(メタ)アクリル酸共重合体等の(メタ)アクリル系樹脂及びその塩;スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-
(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等のスチレン系樹脂及びその塩;イソシアネート基とヒドロキシル基とが反応したウレタン結合を含む高分子化合物(樹脂)であって直鎖状及び/又は分岐状であってもよく、架橋構造の有無を問わないウレタン系樹脂及びその塩;ポリビニルアルコール類;ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体及びその塩;酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体及びその塩;並びに;酢酸ビニル-クロトン酸共重合体及びその塩等の水溶性樹脂を挙げることができる。これらの中でも、疎水性官能基を有するモノマーと親水性官能基を持つモノマーとの共重合体、疎水性官能基と親水性官能基とを併せ持つモノマーからなる重合体が好ましい。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
【0102】
スチレン系樹脂分散剤の市販品としては、例えば、X-200、X-1、X-205、X-220、X-228(星光PMC社製)、ノプコスパース(登録商標)6100、6110(サンノプコ株式会社製)、ジョンクリル67、586、611、678、680、682、819(BASF社製)、DISPERBYK-190(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、N-EA137、N-EA157、N-EA167、N-EA177、N-EA197D、N-EA207D、E-EN10(第一工業製薬製)等が挙げられる。
【0103】
また、アクリル系樹脂分散剤の市販品としては、BYK-187、BYK-190、BYK-191、BYK-194N、BYK-199(ビックケミー株式会社製)、アロンA-210、A6114、AS-1100、AS-1800、A-30SL、A-7250、CL-2東亜合成株式会社製)等が挙げられる。
【0104】
さらに、ウレタン系樹脂分散剤の市販品としては、BYK-182、BYK-183、BYK-184、BYK-185(ビックケミー株式会社製)、TEGO Disperse710(Evonic Tego Chemi社製)、Borchi(登録商標)Gen1350(OMG Borschers社製)等が挙げられる。
【0105】
分散剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。分散剤の合計の含有量は、白色色材100質量部に対して、0.2質量部以上60質量部以下が好ましく、より好ましくは1質量部以上50質量部以下、さらにより好ましくは5質量部以上55質量部以下、よりさらに好ましくは10質量部以上50質量部以下、特に好ましくは20質量部以上40質量部以下である。分散剤の含有量が白色色材100質量部に対して0.2質量部以上であることにより、白色色材の分散安定性をさらに高めることができる。また、分散剤の含有量が白色色材100質量部に対して60質量部以下であれば、得られる分散体の粘度を小さく抑えることができる。
【0106】
上記例示した分散剤のなかでも、アニオン性の分散剤樹脂から選択される少なくとも一種であることがさらに好ましい。またこの場合、分散剤の重量平均分子量は、500以上であることがさらに好ましい。さらには5000以上100000以下が好ましく、10000以上50000以下がより好ましい。
【0107】
分散剤としてこのような樹脂分散剤を用いることにより、白色顔料の分散及び凝集性がより良好となり、さらに良好な分散安定性及びさらに良好な画質の画像を得ることができる。また、白色インク組成物の後述する増粘率を5倍以上にし易く好ましい。
【0108】
アニオン性の分散剤樹脂は、樹脂がアニオン性官能基を有し、アニオン性を示す樹脂で
ある。アニオン性官能基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基などが挙げられる。これらの基に中でもカルボキシル基がより好ましい。
【0109】
分散剤樹脂は酸価を有することが好ましく、酸価が5mgKOH/g以上が好ましく、10~200mgKOH/gがより好ましく、15~150mgKOH/gがさらに好ましい。さらに20~100mgKOH/gが好ましく、25~70mgKOH/gがさらに好ましい。この場合、白色インク組成物の後述する増粘率を5倍以上にし易く好ましい。
【0110】
酸価は、JIS K0070に従って、中和電位差滴定法で測定することができる。滴定装置として、例えば、京都電子工業社製の「AT610」を用いることができる。
【0111】
〔水〕
本実施形態に係る記録方法に用いる白色インク組成物は、水系のインクであり、水を含有することが好ましい。「水系」とは、溶媒成分として少なくとも水を含有することをいい、水を主となる溶媒成分として含んでもよい。水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を低減したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、白色インク組成物を長期保存する場合に細菌類や真菌類の発生を抑制することができる。
【0112】
水の含有量は、液媒体成分中、好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは30~99質量%である。さらには、好ましくは30~95質量%であり、より好ましくは40~90質量%であり、さらに好ましくは50~80質量%である。なお、液媒体とは、水や有機溶剤などの溶媒成分である。
【0113】
また、水の含有量は、白色インク組成物の総質量に対して30質量%以上が好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、45質量%以上がより好ましく、50質量%以上が特に好ましい。水の含有量の上限は、特に制限されないが、例えば、インク組成物の総質量に対して好ましくは99質量%以下であり、さらには90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下である。
水の含有量が、上記範囲以下の場合、結露低減がより優れ好ましい。一方水の含有量が上記範囲以上の場合、インク設計の自由度が高く、この場合でも本実施形態の記録方法によれば、優れた結露低減ができ有用である。
【0114】
また、白色インク組成物と後述の非白色インク組成物のうち、先に付着させるインク組成物の水の含有量を上記範囲とすることも上記の点で好ましい。
【0115】
〔有機溶剤〕
本実施形態に係る記録方法に用いる白色インク組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は水溶性を有することが好ましい。有機溶剤の機能の一つは、記録媒体に対する白色インク組成物の濡れ性を向上させることや、白色インク組成物の保湿性を高めることが挙げられる。また、有機溶剤は、浸透剤としても機能できる。
【0116】
有機溶剤としては、エステル類、アルキレングリコールエーテル類、環状エステル類、含窒素溶剤、多価アルコール等を挙げることができる。含窒素溶剤としては環状アミド類、非環状アミド類などを挙げることができる。非環状アミド類としてはアルコキシアルキルアミド類などが挙げられる。
【0117】
エステル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレング
リコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールモノアセテート類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等のグリコールジエステル類が挙げられる。
【0118】
アルキレングリコールエーテル類としては、アルキレングリコールのモノエーテル又はジエーテルであればよく、アルキルエーテルが好ましい。具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、及び、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、等のアルキレングリコールジアルキルエーテル類が挙げられる。
【0119】
環状エステル類としては、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン等の環状エステル類(ラクトン類)、並びに、それらのカルボニル基に隣接するメチレン基の水素が炭素数1~4のアルキル基によって置換された化合物を挙げることができる。
【0120】
アルコキシアルキルアミド類としては、例えば、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド等を例示することができる。
【0121】
環状アミド類としては、ラクタム類が挙げられ、例えば、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、1-プロピル-2-ピロリドン、1-ブチル-2-ピロリドン、等のピロリドン類などが挙げられる。これらは凝集剤の溶解性や、後述する樹脂粒子の皮膜化を促進させる点で好ましく、特に2-ピロリドンがより好ましい。
【0122】
また、アルコキシアルキルアミド類として、下記一般式(1)で表される化合物を用いることも好ましい。
【0123】
-O-CHCH-(C=O)-NR ・・・(1)
【0124】
上記式(1)中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、R及びRは、それぞれ独立にメチル基又はエチル基を示す。「炭素数1以上4以下のアルキル基」は、直鎖状又は分岐状のアルキル基であることができ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基であることができる。上記式(1)で表される化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0125】
含窒素溶剤の機能としては、例えば、低吸収性記録媒体上に付着させた白色インク組成物の表面乾燥性及び定着性を高めることが挙げられる。特に、上記式(1)で表される化合物は、塩化ビニル系樹脂を適度に軟化・溶解する作用に優れている。そのため、上記式(1)で表される化合物は、塩化ビニル系樹脂を含有する被記録面を軟化・溶解して、低吸収性記録媒体の内部に白色インク組成物を浸透させることができる。このように白色イ
ンク組成物が低吸収性記録媒体に浸透することで、白色インク組成物が強固に定着し、かつ、白色インク組成物の表面が乾燥しやすくなる。したがって、得られる画像は、表面乾燥性及び定着性に優れたものとなりやすい。
【0126】
含窒素溶剤の含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、特に限定されないが、5質量%以上50質量%以下程度であり、10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。含有量が上記範囲にあることで、画像の定着性及び表面乾燥性(特に高温多湿環境下で記録された場合の表面乾燥性)を一層向上できる場合がある。
【0127】
多価アルコールとしては、1,2-アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(別名:プロパン-1,2-ジオール)、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール等のアルカンジオール類)、1,2-アルカンジオールを除く多価アルコール(ポリオール類)(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール(別名:1,3-ブチレングリコール)、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等)等が挙げられる。
【0128】
多価アルコール類は、アルカンジオール類とポリオール類を挙げることができる。アルカンジオール類は、炭素数5以上のアルカンのジオールである。アルカンの炭素数は好ましくは5~15であり、より好ましくは6~10であり、更に好ましくは6~8である。好ましくは1,2-アルカンジオールである。
【0129】
ポリオール類は炭素数4以下のアルカンのポリオールか、炭素数4以下のアルカンのポリオールの水酸基同士の分子間縮合物である。アルカンの炭素数は好ましくは2~3である。ポリオール類の分子中の水酸基数は2以上であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下である。ポリオール類が上記の分子間縮合物である場合、分子間縮合数は2以上であり、好ましくは4以下であり、より好ましくは3以下である。多価アルコール類は、1種単独か又は2種以上を混合して使用することができる。
【0130】
アルカンジオール類及びポリオール類は、主に浸透溶剤及び/又は保湿溶剤として機能することができる。しかし、アルカンジオール類は浸透溶剤としての性質が強い傾向があり、ポリオール類は保湿溶剤としての性質が強い傾向がある。
【0131】
白色インク組成物が有機溶剤を含む場合、有機溶剤を一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。また、有機溶剤の、白色インク組成物全質量に対する合計の含有量は、例えば、5質量%以上50質量%以下であり、10質量%以上45質量%以下が好ましく、15質量%以上40質量%以下がより好ましく、20質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。有機溶剤の含有量が上記範囲内にあることで、濡れ拡がり性と乾燥性のバランスがさらによく、さらに高画質な画像を形成しやすい。
【0132】
白色インク組成物は、上記例示した有機溶剤のうち、標準沸点が150~280℃の有機溶剤を含有することが好ましい。該有機溶剤の標準沸点は、160~270℃であることがより好ましく、170~260℃であることがさらに好ましく、180~250℃であることが特に好ましい。また、該有機溶剤の含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、10~50質量%であることが好ましく、20~40質量%であることがより好ま
しく、25~35質量%であることがさらに好ましい。
【0133】
白色インク組成物は、標準沸点が280℃超のアルカンポリオール類の有機溶剤を、白色インク組成物の全質量に対して、2質量%を超えて含有しないことが好ましく、1.5質量%を超えて含有しないことがより好ましく、1.0質量%を超えて含有しないことがさらに好ましく、0.5質量%を超えて含有しないことがよりさらに好ましく、0.1質量%を超えて含有しないことが特に好ましい。標準沸点が280℃超のアルカンポリオール類の有機溶剤の含有量の下限は0質量%であってもよい。
【0134】
このようにすれば、形成される画像の乾燥が良好となり、より早い記録を行うことができ、記録媒体との密着性も向上できる。さらには、白色インク組成物は、標準沸点が280.0℃超の有機溶剤(ポリオール類に限らず)を上記の範囲とすることも、より好ましい。
【0135】
〔樹脂粒子〕
本実施形態に係る記録方法に用いる白色インク組成物は、樹脂粒子を含有してもよい。樹脂粒子は、記録媒体に付着させた白色インク組成物による画像の密着性などをさらに向上させることができる。樹脂粒子としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂(スチレンアクリル系樹脂を含む)、フルオレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル系樹脂等からなる樹脂粒子が挙げられる。なかでも、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオフレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましい。これらの樹脂粒子は、エマルジョン形態で取り扱われることが多いが、粉体の性状であってもよい。また、樹脂粒子は1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0136】
ウレタン系樹脂とは、ウレタン結合を有する樹脂の総称である。ウレタン系樹脂には、ウレタン結合以外に、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂等を使用してもよい。また、ウレタン系樹脂として、市販品を用いてもよく、例えば、スーパーフレックス 460、460s、840、E-4000(商品名、第一工業製薬株式会社製)、レザミン D-1060、D-2020、D-4080、D-4200、D-6300、D-6455(商品名、大日精化工業株式会社製)、タケラック WS-6021、W-512-A-6(商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製)、サンキュアー2710(商品名、LUBRIZOL社製)、パーマリンUA-150(商品名、三洋化成工業社製)などの市販品を用いてもよい。
【0137】
アクリル系樹脂は、少なくとも(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルなどのアクリル系単量体を1成分として重合して得られる重合体の総称であって、例えば、アクリル系単量体から得られる樹脂や、アクリル系単量体とこれ以外の単量体との共重合体などが挙げられる。例えばアクリル系単量体とビニル系単量体との共重合体であるアクリル-ビニル系樹脂などが挙げられる。また例えば、ビニル系単量体としては、スチレンなどが挙げられる。
【0138】
アクリル系単量体としてはアクリルアミド、アクリロニトリル等も使用可能である。アクリル系樹脂を原料とする樹脂エマルジョンには、市販品を用いてもよく、例えばFK-854(商品名、中央理科工業社製)、モビニール952B、718A(商品名、日本合成化学工業社製)、NipolLX852、LX874(商品名、日本ゼオン社製)等の中から選択して用いてもよい。
【0139】
なお、本明細書において、アクリル系樹脂は、後述するスチレン・アクリル系樹脂であってもよい。また、本明細書において、(メタ)アクリルとの表記は、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0140】
スチレン・アクリル系樹脂は、スチレン単量体と(メタ)アクリル系単量体とから得られる共重合体であり、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。スチレン・アクリル系樹脂には、市販品を用いても良く、例えば、ジョンクリル62J、7100、390、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC-1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX-7630A、352J、352D、PDX-7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610(商品名、BASF社製)、モビニール966A、975N(商品名、日本合成化学工業社製)、ビニブラン2586(日信化学工業社製)等を用いてもよい。
【0141】
ポリオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。オレフィン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えばアローベースCB-1200、CD-1200(商品名、ユニチカ株式会社製)等を用いてもよい。
【0142】
樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-50℃以上200℃以下であり、より好ましくは0℃以上150℃以下であり、さらに好ましくは50℃以上100℃以下である。また50℃以上80℃以下が特に好ましい。樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)が上記範囲内であることにより、耐久性及び耐目詰まり性により優れる傾向にある。ガラス転移温度の測定は、例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス社製の示差走査熱量計「DSC7000」を用いて、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準じて行われる。
【0143】
樹脂粒子の体積平均粒子径は、10nm以上300nm以下が好ましく、30nm以上300nm以下がより好ましく、30nm以上250nm以下がさらに好ましく、40nm以上220nm以下が特に好ましい。体積平均粒子径は、前述の方法で測定することができる。
【0144】
樹脂粒子の樹脂は、酸価が50mgKOH/g以下が好ましく、30mgKOH/g以下がより好ましく、20mgKOH/g以下がさらに好ましく、10mgKOH/g以下が特に好ましい。また、酸価の下限は、0mgKOH/g以上であり、5mgKOH/g以上が好ましく、10mgKOH/g以上がより好ましい。この場合、画質などが優れ好ましい。酸価は上述の方法で測定することができる。
【0145】
白色インク組成物に樹脂粒子を含有させる場合の含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、固形分として、0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは1質量%以上15質量%以下、より好ましくは2質量%以上10質量%以下であり、特に好ましくは3質量%以上7質量%以下である。
【0146】
〔ワックス〕
本実施形態に係る記録方法に用いる白色インク組成物は、ワックスを含有してもよい。ワックスは、白色インク組成物による画像に滑沢を付与する機能を備えるので、白色インク組成物による画像の剥がれ等を低減できる。
【0147】
ワックスを構成する成分としては、例えばカルナバワックス、キャンデリワックス、みつろう、ライスワックス、ラノリン等の植物・動物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト等の鉱物系ワックス;カーボンワックス、ヘキストワックス、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸アミド等の合成ワックス類、α-オレフィン・無水マレイン酸共重合体等の天然・合成ワックスエマルジョンや配合ワックス等を単独あるいは複数種を混合して用いることができる。これらの中でも、インクの定着性を高める効果により優れるという観点から、ポリオレフィンワックス(特に、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス)及びパラフィンワックスを用いることが好ましい。
【0148】
ワックスとしては市販品を利用することもでき、例えば、ノプコートPEM-17(商品名、サンノプコ株式会社製)、ケミパールW4005(商品名、三井化学株式会社製)、AQUACER515、539、593(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0149】
また、記録方法に加熱工程等が含まれる場合に、ワックスが溶融しすぎて、その性能が低下することを抑制するという観点から、ワックスの融点は、好ましくは50℃以上200℃以下、より好ましくは融点が70℃以上180℃以下、さらに好ましくは融点が90℃以上150℃以下のワックスを用いることが好ましい。
【0150】
ワックスは、エマルジョンあるいはサスペンションの形態で供給されてもよい。ワックスの含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、固形分換算で0.1質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上2質量%以下である。ワックスの含有量が上記範囲内にあると、上記ワックスの機能を良好に発揮できる。なお、白色インク組成物及び後述する非白色インク組成物の一方又は両方が、ワックスを含有すれば、画像に滑沢を付与する機能を十分に得ることができる。
【0151】
〔界面活性剤〕
本実施形態に係る記録方法に用いる白色インク組成物は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、白色インク組成物の表面張力を調節し、例えば記録媒体との濡れ性等を調整する機能を備える。界面活性剤の中でも、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0152】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG-50、104S、420、440、465、485、SE、SE-F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、エア・プロダクツ&ケミカルズ社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD-001、PD-002W、PD-003、PD-004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF-103、AF-104、AK-02、SK-14、AE-3(以上全て商品名、日信化学工業社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。
【0153】
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が好ましく挙げられる。当該ポリシロキサン系化合物としては、特に限定されないが、例えばポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK-306、BYK-307、BYK-333、
BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-348(以上商品名、ビックケミー・ジャパン社製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(以上商品名、信越化学工業社製)、シルフェイスSAG002、005、503A、008(以上商品名、日信化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0154】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK-3440(ビックケミー・ジャパン社製)、サーフロンS-241、S-242、S-243(以上商品名、AGCセイミケミカル社製)、フタージェント215M(ネオス社製)等が挙げられる。
【0155】
白色インク組成物に界面活性剤を含有させる場合には、複数種を含有させてもよい。白色インク組成物に界面活性剤を含有させる場合の含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上2質量%以下、好ましくは0.4質量%以上1.5質量%以下、より好ましくは、0.5質量%以上1.0質量%以下とすることができる。
【0156】
〔その他の成分〕
本実施形態に係る記録方法に用いる白色インク組成物は、機能を損なわない限り、上記成分の他に、添加剤、樹脂分散剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤、粘度調整剤、酸化防止剤等の成分を含有してもよい。
【0157】
添加剤としては、例えば、尿素類、アミン類、糖類等が挙げられる。
尿素類としては、尿素、エチレン尿素、テトラメチル尿素、チオ尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等、及び、ベタイン類(トリメチルグリシン、トリエチルグリシン、トリプロピルグリシン、トリイソプロピルグリシン、N,N,N-トリメチルアラニン、N,N,N-トリエチルアラニン、N,N,N-トリイソプロピルアラニン、N,N,N-トリメチルメチルアラニン、カルニチン、アセチルカルニチン等)等が挙げられる。
アミン類としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。尿素類やアミン類は、pH調整剤として機能させてもよい。
糖類としては、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、及びマルトトリオース等が挙げられる。
【0158】
〔白色インク組成物の物性〕
白色インク組成物の粘度は、20℃において、1.5mPa・s以上15mPa・s以下とすることが好ましく、1.5mPa・s以上7mPa・s以下とすることがより好ましく、1.5mPa・s以上5.5mPa・s以下とすることがより好ましい。上記粘度の範囲内であると、所定の画像を効率的に記録媒体に形成することが容易である。
【0159】
白色インク組成物は、記録媒体への濡れ拡がり性を適切なものとする観点から、25℃における表面張力は、好ましくは40mN/m以下、より好ましくは38mN/m以下、さらに好ましくは35mN/m以下、よりさらに好ましくは30mN/m以下、特に好ましくは25mN/m以下である。また、表面張力は、20mN/m以上が好ましく、25mN/m以上がより好ましい。
【0160】
なお、粘度及び表面張力の測定は、処理液における物性の測定として上述したとおりに
行うことができる。
【0161】
〔処理液混合時の粘度上昇〕
白色インク組成物における、上述の処理液:白色インク組成物=1:10の質量比で混合したときの粘度上昇は、5倍以上であることが好ましい。このような増粘性を有することにより、上述の処理液と接触した際に白色インク組成物の成分の凝集性が十分に得られるとともに、白色インク組成物により形成される画像の画質や、共に用いる非白色インク組成物の画質が優れる傾向にある。特に文字等に用いられる細線の細りを低減することができる。また、粘度上昇の測定に用いる処理液は、ギ酸カルシウムを処理液の全質量に対して7質量%含有するものとすることが好ましい。
【0162】
ここで、処理液と混合した場合のインクの粘度の増大に関して、「粘度上昇」を次のように定義する。すなわち、粘度上昇とは、記録方法で使用する処理液及びインクを用い、処理液:インクを1:10の質量比で混合撹拌して、混合前のインクの粘度に対する混合後の混合液の粘度の比(倍率)とする。粘度は、20℃で測定する。したがって、粘度上昇は、混合前の粘度を基準とした混合後の粘度の倍率である。粘度上昇は、例えば0.5倍以上10.0倍以下程度となる。なお、インクの組成によっては粘度上昇が1.0倍未満となり、粘度が低下する場合もあるが、名称としては粘度上昇と称する。また、粘度の測定は、処理液における物性の測定として上述したとおりに行うことができる。
【0163】
白色インク組成物の粘度上昇の下限値は、5倍以上であることが好ましく、5倍超であることがより好ましく、5.5倍以上であることがより好ましく、6倍以上であることがさらに好ましく、7倍以上が特に好ましい。さらには10倍以上が好ましい。
【0164】
一方、白色インク組成物の粘度上昇は、上限値は限るものではないが、20倍以下が好ましく、10倍以下がさらに好ましく、より好ましくは9倍以下、さらに好ましくは8.5倍以下、さらにより好ましくは8倍以下である。白色インク組成物の粘度上昇が上記範囲の場合、画質や耐ひび割れや耐擦性や吐出安定性などがより優れ好ましい。また、共に用いる非白色インク組成物の画質も優れ、特に文字等に用いられる細線の細りを低減することができる傾向にある。また、インクの付着量が多い場合でも画質が優れるため、インクの付着量を多くすることができ、白色画像の背景隠蔽性が優れる傾向にある。
【0165】
白色インク組成物の粘度上昇は、主として白色色材(樹脂分散剤含む)や樹脂粒子の、種類、含有量等を調整することにより調整可能である。特に、白色色材(樹脂分散剤含む)の種類、含有量等を調整することにより調整することが、調整し易く好ましい。
【0166】
1.3 非白色インク付着工程
本実施形態に係る記録方法は、非白色色材を含有する非白色インク組成物を前記インクジェットヘッドから吐出させ前記記録媒体に付着させる非白色インク付着工程を有する。
【0167】
1.3.1 付着態様
本実施形態に係る記録方法が有する非白色インク付着工程は、位置が固定された状態の記録媒体に対して、インクジェットヘッドを移動させながら、該インクジェットヘッドから非白色インク組成物を吐出させ、記録媒体に付着させる走査により行われ、1回の走査の走査領域に対して、非白色インク組成物を1回の走査で付着させるものであり、非白色インク付着工程における、記録媒体の表面温度は35℃以下である。このような付着態様については、上述の白色インク付着工程と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0168】
また、上記以外の付着態様についても、上述の白色インク付着工程と同様とできる。
【0169】
本実施形態に係る記録方法においては、前述の白色インク付着工程及び非白色インク付着工程のうちの後に行われる工程のインク組成物の最大付着量の範囲が、1mg/inch以上であることが好ましく、3mg/inch以上であることがより好ましく、5mg/inch以上であることがさらに好ましい。かかる最大付着量の範囲の上限は、特に限定されないが、20mg/inch以下であることが好ましく、15mg/inch以下であることがより好ましく、10mg/inch以下であることがさらに好ましく、8mg/inch以下であることが特に好ましい。また、工程順序にかかわらず、非白色インク付着工程における非白色インク組成物の最大付着量の範囲を上記範囲とすることも好ましい。
【0170】
結露を良好に抑制できる観点から、非白色インク付着工程における非白色インク組成物の液滴の1滴あたりの最大重量範囲は、1~15ngであることが好ましく、2~14ngであることがより好ましく、3~13ngであることがさらに好ましく、4~10ngであることが特に好ましい。
【0171】
1.3.2 非白色インク組成物
以下、非白色インク付着工程において用いる非白色インク組成物に含有する各成分について説明する。なお、非白色インク組成物は、色材以外の成分は、前述の白色インク組成物と同様のものであって、白色インク組成物とは独立に選択したものにすることができる。これらの成分は、いずれも前述の白色インク組成物と同様のものにしても良く、「白色インク組成物」を「非白色インク組成物」と読み替えることができる。
【0172】
〔非白色色材〕
非白色インク組成物は、非白色色材を含有する。非白色インク組成物に含有される非白色色材は、前述の白色色材以外の色材のことを指す。非白色色材は、例えば、シアン、イエロー、マゼンタ、ブラックなどのカラー色材とすることが好ましい。非白色色材としては、例えば、染料、顔料等が挙げられる。
【0173】
非白色色材は、染料及び顔料のいずれであってもよいし、混合物であってもよい。しかし染料及び顔料のうち、顔料を含むことが一層好ましい。顔料は、耐光性、耐候性、耐ガス性などの保存安定性に優れ、さらにその観点から有機顔料であることが好ましい。
【0174】
具体的には、顔料は、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料などの多環式顔料、染料キレート、染色レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料、カーボンブラックなどが用いられる。上記顔料は、1種単独でも、2種以上併用して用いることもできる。さらに、非白色色材として、光輝性顔料を用いてもよい。
【0175】
顔料の具体例としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
【0176】
ブラック顔料としては、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Mon
arch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(キャボット社(CABOT JAPAN K.K.)製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black
FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color
Black S170、Printex 35、Printex U、Printex
V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ(Degussa)社製)が挙げられる。
【0177】
イエロー顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180が挙げられる。
【0178】
マゼンタ顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、又はC.I.ピグメントバイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。
【0179】
シアン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー 4、60が挙げられる。
【0180】
また、マゼンタ、シアン、及びイエロー以外の顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメント グリーン 7,10、C.I.ピグメントブラウン 3,5,25,26、C.I.ピグメントオレンジ 1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,63が挙げられる。
【0181】
パール顔料としては、特に限定されないが、例えば、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス等の真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。
【0182】
メタリック顔料としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅などの単体又は合金からなる粒子が挙げられる。
【0183】
また、染料としては、例えば、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応分散染料等の通常インクジェット記録に使用する各種染料を使用することができる。
【0184】
非白色色材は、分散媒中に安定的に分散又は溶解できることが好適であり、必要に応じて分散剤を使用して分散させてもよい。分散剤としては、上述の白色インク組成物の白色色材の分散性を向上させるために用いると同様の分散剤を挙げることができる。分散剤としては、分散剤樹脂が好ましい。
【0185】
非白色色材の分散剤樹脂の酸価は、上述の白色色材の分散剤樹脂の酸価と同様にものにしても良く、特に、30mgKOH/g以上が好ましい。非白色色材の分散剤樹脂の酸価は、白色色材の分散剤樹脂の酸価よりも高いことが好ましく、5mgKOH/g以上高いことがより好ましく、10~30mgKOH/g高いことがさらに好ましい。この場合、画質などがより優れ好ましい。
【0186】
非白色色材の含有量は、非白色インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.3質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下である。さらには、1質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上7質量%以下がより好ましい。
【0187】
非白色色材に顔料を採用する場合の顔料粒子の体積平均粒子径は、10nm以上300nm以下が好ましく、30nm以上250nm以下がより好ましく、50nm以上250nm以下がさらに好ましく、70nm以上200nm以下が特に好ましい。さらには、80nm以上150nm以下が好ましい。非白色色材の体積平均粒子径は前述の体積平均粒子径の確認方法で初期状態として測定するものである。体積平均粒子径が上記範囲の場合、所望の色材を入手しやすい点や色材の特性などを良好にし易い点で好ましい。
【0188】
〔水〕
本実施形態に係る記録方法に用いる非白色インク組成物は、水系のインクであり、水を含有することが好ましい。用いることができる水の種類及び含有量等は上述の白色インク組成物と同様であるから、詳細な説明を省略する。
【0189】
〔有機溶剤〕
本実施形態に係る記録方法に用いる非白色インク組成物は、有機溶剤を含有してもよい。用いることができる有機溶剤の種類及び含有量等は上述の白色インク組成物と同様であるから、詳細な説明を省略する。
【0190】
非白色インク組成物は、標準沸点が150~280℃の有機溶剤を含有することが好ましい。該有機溶剤の標準沸点は、160~270℃であることがより好ましく、170~260℃であることがさらに好ましく、180~250℃であることが特に好ましい。また、該有機溶剤の含有量は、非白色インク組成物の全質量に対して、10~50質量%であることが好ましく、20~40質量%であることがより好ましく、25~35質量%であることがさらに好ましい。
【0191】
非白色インク組成物は、標準沸点が280℃超のアルカンポリオール類の有機溶剤を、非白色インク組成物の全質量に対して、2質量%を超えて含有しないことが好ましく、1.5質量%を超えて含有しないことがより好ましく、1.0質量%を超えて含有しないことがさらに好ましく、0.5質量%を超えて含有しないことがよりさらに好ましく、0.1質量%を超えて含有しないことが特に好ましい。標準沸点が280℃超のアルカンポリオール類の有機溶剤の含有量の下限は0質量%であってもよい。
【0192】
〔樹脂粒子〕
本実施形態に係る記録方法に用いる非白色インク組成物は、樹脂粒子を含有してもよい。用いることができる樹脂粒子の種類及び含有量等は上述の白色インク組成物と同様であるから、詳細な説明を省略する。
【0193】
〔ワックス〕
本実施形態に係る記録方法に用いる非白色インク組成物は、ワックスを含有してもよい
。用いることができるワックスの種類及び含有量等は上述の白色インク組成物と同様であるから、詳細な説明を省略する。
【0194】
〔界面活性剤〕
本実施形態に係る記録方法に用いる非白色インク組成物は、界面活性剤を含有してもよい。用いることができる界面活性剤の種類及び含有量等は上述の白色インク組成物と同様であるから、詳細な説明を省略する。
【0195】
〔その他の成分〕
本実施形態に係る記録方法に用いる非白色インク組成物は、上述の白色インク組成物と同様にして、機能を損なわない限り、上記成分の他に、添加剤、樹脂分散剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤、粘度調整剤、酸化防止剤等の成分を含有してもよい。
【0196】
〔非白色インク組成物の物性〕
非白色インク組成物の粘度及び表面張力は、上述の白色インク組成物と同様であるから、詳細な説明を省略する。
【0197】
〔処理液混合時の粘度上昇〕
非白色インク組成物における、上述の処理液:非白色インク組成物=1:10の質量比で混合したときの粘度上昇は、5倍以上であることが好ましい。このような増粘性を有することにより、上述の処理液と接触した際に非白色インク組成物の成分の凝集性が十分に得られるとともに、非白色インク組成物により形成される画像の画質や、共に用いる白色インク組成物の画質が優れる傾向にある。特に文字等に用いられる細線の細りを低減することができる。また、粘度上昇の測定に用いる処理液は、ギ酸カルシウムを処理液の全質量に対して7質量%含有するものとすることが好ましい。
【0198】
非白色インク組成物の粘度上昇の下限値は、5倍以上であることが好ましく、5倍超であることがより好ましく、5.5倍以上であることがより好ましく、6倍以上であることがさらに好ましく、7倍以上が特に好ましい。さらには10倍以上が好ましい。
【0199】
一方、非白色インク組成物の粘度上昇は、上限値は限るものではないが、20倍以下が好ましく、10倍以下がさらに好ましく、より好ましくは9倍以下、さらに好ましくは8.5倍以下、さらにより好ましくは8倍以下である。非白色インク組成物の粘度上昇が上記範囲の場合、画質や耐ひび割れや耐擦性や吐出安定性などがより優れ好ましい。特に文字等に用いられる細線の細りを低減することができる傾向にあり、また共に用いる白色インク組成物の画質も優れる傾向にある。
【0200】
非白色インク組成物の粘度上昇は、主として非白色色材(樹脂分散剤含む)や樹脂粒子の、種類、含有量等を調整することにより調整可能である。特に、非白色色材(樹脂分散剤含む)の種類、含有量等を調整することにより調整することが、調整し易く好ましい。
【0201】
1.4 搬送工程
本実施形態に係る記録方法は、記録媒体を搬送する搬送工程を備えていてもよいが、走査が行なわれている時には記録媒体の搬送は行わない。
また、白色インク付着工程及び非白色インク付着工程の何れか一方の走査が行なわれた走査領域に対して、該搬送工程を行わずに、他方の走査を行うものであることが好ましい。つまり、白色インク付着工程及び非白色インク付着工程の何れか一方の走査を行い、該一方の走査が行なわれた走査領域に対して、他方の走査を行うまでの間、記録媒体の位置が固定された状態とすることが好ましい。
そして、上記の場合において、他方の走査が完了した後、及び又は一方の走査を行う前
に、搬送工程を行うことが好ましい。
搬送工程により、インクの付着が行なわれていない記録媒体の部分をインク付着工程が行なわれる場所に搬送したり、インクの付着が完了した記録媒体の部分をインク付着工程が行なわれる場所から移動したりする。
【0202】
より具体的には、図1を例に説明すると、記録ユニット31が、キャリッジ32をX軸方向に平行な方向に移動させつつ、インクジェットヘッド35のノズルNからシートSの表面に白色インク組成物又は非白色インク組成物を吐出して、1回の走査の走査領域に対して、インクを1回の走査で付着させる。続いて、シートSの搬送を行わず、再びキャリッジ32をX軸方向に平行な方向に移動させつつ、インクジェットヘッド35のノズルNからシートSの表面に非白色インク組成物又は白色インク組成物を吐出して、1回の走査の走査領域に対して、インクを1回の走査で付着させることが好ましい。
このような態様であると、より高速に記録を行うことができるが、次のインクを付着させる他方の主走査時において、記録媒体上の蒸気濃度がより高い状態であるため、ノズル面の結露がより発生しやすい。このような場合であっても、本実施形態に係る記録方法によれば、結露を良好に抑制することができる。
【0203】
搬送工程における記録媒体の搬送方向は、主走査の走査方向の軸に沿った方向であってもよく、主走査の走査方向の軸に交差する軸に沿った方向であってもよい。ここで、1回の主走査でインクの付着が可能なメディアの走査領域がより広ければ、単位時間当たりの印刷領域面積が大きくなるため、ひいては記録速度をより高めることができる。インクジェットヘッドに配置するノズルの個数を増やしてインクジェットヘッドの長さを伸長することでインクの付着が可能なメディアの走査領域を広げることができるが、コスト面等から伸長可能な長さは限られる。そこで、インクジェットヘッドの長さを効率よく利用するためには、記録媒体の幅方向と平行になるようにインクジェットヘッドを設置することが好ましい。この場合、インクジェットヘッドにおける複数のノズルは主走査の走査方向の軸に交差する軸に沿った方向に平行に並ぶことになる。すなわち、記録媒体の搬送方向は、主走査の走査方向の軸に沿った方向となる。つまり、搬送方向は、図1おける右方向又は左方向の何れでもよい。なお図1の例では、右方向である。
【0204】
以上のように、本実施形態に係る記録方法においては、容易に記録速度をより高めることができる観点から、白色インク付着工程の走査及び非白色インク付着工程の走査の後に、記録媒体を搬送する搬送工程を備え、該搬送工程の搬送方向が、該走査の走査方向の軸に沿った方向であることが好ましい。
【0205】
また、同様に、容易に記録速度をより高めることができる観点から、インクジェットヘッドは、インク組成物を吐出する複数のノズルからなるノズル列を有し、該ノズル列の長さ方向の長さが、該方向の記録媒体の記録が可能な領域の長さ以上であることが好ましい。
インクジェットヘッドのノズル列の長さ方向の長さは、記録速度をより高めることができる観点から、10cm以上が好ましく、20cm以上がより好ましく、30cm以上がさらに好ましく、33cm以上が特に好ましい。該長さの上限は、限るものではないが、100cm以下が好ましく、80cm以下がより好ましく、50cm以下がさらに好ましい。
【0206】
1.5 後加熱工程
本実施形態に係る記録方法は、前述の各付着工程後に、さらに記録媒体を加熱する後加熱工程を備えてもよい。後加熱工程は、例えば、適宜の加熱手段を用いて行うことができる。後加熱工程は、例えば、アフターヒーター(後述の記録装置100の例では乾燥部4が相当する。二次ヒーターともいう。)により行われる。また、加熱手段は、記録装置に
備えられた加熱手段に限らず、他の乾燥手段を用いてもよい。これにより得られる画像を乾燥させ、より十分に定着させることができるので、例えば、記録物を早期に使用できる状態にすることができる。後加熱工程を二次加熱工程ともいう。
【0207】
この場合の記録媒体の温度は、特に限定されないが、例えば、記録物に含まれる樹脂粒子を構成する樹脂成分のTg等を鑑みて設定し得る。樹脂粒子やワックスを構成する樹脂成分のTgを考慮する場合には、樹脂粒子を構成する樹脂成分のTgよりも5.0℃以上、好ましくは10.0℃以上に設定するとよい。
【0208】
後加熱工程の加熱によって到達する記録媒体の表面温度は、30.0℃以上120.0℃以下、好ましくは40.0℃以上100.0℃以下、より好ましくは50.0℃以上95℃以下であり、さらに好ましくは70℃以上90℃以下である。後加熱工程の加熱によって到達する記録媒体の表面温度は、特に好ましくは70℃以上である。記録媒体の温度がこの程度の範囲であれば、記録物中に含まれ得る樹脂粒子やワックスの皮膜化、平坦化を行うことができるとともに、得られる画像を乾燥させ、より十分に定着させることができる傾向にある。
【0209】
1.6 その他の工程
本実施形態の記録方法は、一次乾燥工程を有してもよい。一次乾燥工程は、処理液やインク組成物の付着工程の前又は付着工程の際に記録媒体を乾燥させる工程である。一次乾燥工程は、記録を停止して放置する手段、の他に、乾燥機構を用いて乾燥させる手段により行うことができる。乾燥機構を用いて乾燥させる手段としては、記録媒体に対して常温の送風や温風の送風を行う手段(送風式)、及び、記録媒体に熱を発生する放射線(赤外線等)を照射する手段(放射式)、記録媒体に接して記録媒体に熱を伝える部材(伝導式)、並びに、これらの手段の2種以上を組み合わせが挙げられる。一次乾燥工程を有する場合、これらの中でも送風式で行われることがより好ましい。
【0210】
一次乾燥工程のうち、乾燥機構として、記録媒体に加熱を行う乾燥機構を用いる場合を、特に、一次加熱工程という。例えば上記の乾燥機構のうち、伝導式、放射式、温風による送風式が該当する。常温の送風を行う乾燥工程は、加熱を行う加熱工程には該当しない。
加熱工程ではない一次乾燥工程を有する場合、乾燥を促進することで、優れた画質を得ながら、記録媒体の表面温度を35℃以下にしやすく好ましい。
【0211】
乾燥工程は、上述の処理液付着工程、インク付着工程の1つ又は2つ以上と同時に行われることができる。乾燥工程がインク付着工程と同時に行われる場合には、記録媒体の表面温度は35℃以下であるが、33℃以下が好ましく、31℃以下がより好ましく、29℃以下がさらに好ましく、27℃以下が特に好ましい。
【0212】
また、各付着工程は、一次加熱工程を伴わなくてもよい。すなわち、本実施形態の記録方法は、インク組成物の付着を受ける場所において、記録媒体を支持する部材に備えられる記録媒体を加熱するための加熱機構で該記録媒体の加熱を行わない、及び記録媒体を上方から加熱するための加熱機構で該記録媒体の加熱を行わないことが好ましい。このような場合、インク付着工程における記録媒体の表面温度を所定温度以下の低温とし易く、インクの溶媒成分の蒸発をより抑制し、さらにノズル面とプラテン付近の温度差をより低く抑えられるため、結露をより低減できる傾向にある。
【0213】
2.記録装置
本発明の一実施形態に係る記録装置は、上述の記録方法で記録が行われる記録装置であって、上述の処理液と、上述の白色インク組成物と、上述の非白色インク組成物と、イン
クジェットヘッドと、を備えるものである。
【0214】
本実施形態に係る記録装置によれば、上述の記録方法で記録が行われるものであるため、記録速度としつつ、結露の抑制及び画質(濃淡ムラ)に優れるものとできる。
【0215】
図1は本実施形態に係る記録装置の一例を模式的に示す正面図である。なお、図1及び図2では、装置各部の配置関係を明確にするためにZ軸を鉛直軸とするXYZ直交座標が併記されている。また、以下の説明では、各座標軸(の矢印)が向く方向を正方向と、その反対方向を負方向と適宜取り扱う。なお、図1に示す記録装置の形態はシリアル式記録装置であるが、記録媒体の搬送が走査方向の軸に沿った方向に行われるものであるため、特にラテラル式記録装置ともいう。
【0216】
記録装置100は、パーソナルコンピューター等の外部装置から受信した画像データ(ビットマップデータ)から印刷データを生成するホスト装置200と、ホスト装置200から受信した印刷データに基づいて画像を印刷するプリンター部300とを備える。このプリンター部300は、長尺なシートSをロール・トゥ・ロールで搬送しつつ、インクジェット方式を用いてシートSの表面に画像を印刷するものである。
【0217】
図1に示すように、プリンター部300は、略直方体形状を有する本体ケース1を備える。本体ケース1内部には、シートSを巻いたロールR1からシートSを繰り出す繰出部2と、繰り出されたシートSの表面にインクを吐出して印刷を行う印刷室3と、インクが付着したシートSを乾燥させる乾燥部4と、乾燥後のシートSをロールR2として巻き取る巻取部5とが配置されている。
【0218】
より詳しくは、本体ケース1内は、XY平面に平行に(すなわち水平に)配置された平板状の基台6によってZ軸方向へ上下に区画されており、基台6の上側が印刷室3となっている。印刷室3内の略中央部では、プラテン30が基台6の上面に固定されている。プラテン30は矩形状を有しており、XY平面に平行なその上面によって、シートSを下側から支持する。そして、プラテン30上に支持されたシートSの表面に対して記録ユニット31が印刷を行う。
【0219】
一方、基台6の下側には、繰出部2、乾燥部4および巻取部5が配置されている。繰出部2は、プラテン30に対してX軸負方向の下側(図1の左斜め下)に配置されており、回転可能な繰出軸21を備えている。そして、この繰出軸21にシートSが巻きつけられて、ロールR1が支持されている。一方、巻取部5は、プラテン30に対してX軸正方向の下側(図1の右斜め下)に配置されており、回転可能な巻取軸51を備えている。そして、この巻取軸51にシートSが巻き取られて、ロールR2が支持されている。また、乾燥部4は、X軸方向における繰出部2と巻取部5との間で、プラテン30の直下に配置されている。
【0220】
そして、繰出部2の繰出軸21から繰り出されたシートSが、ローラー71~77により案内されながら印刷室3と乾燥部4とを順番に通過した後に、巻取部5の巻取軸51に巻き取られる。なお、ローラー72、73は、プラテン30を挟むようにしてX軸方向にまっすぐ並んで(すなわち水平に)配置されており、それぞれの頂部がプラテン30の上面(シートSを支持する面)と同一の高さとなるように位置調整されている。したがって、ローラー72に巻き掛けられたシートSは、ローラー73に到るまでの間、プラテン30の上面に摺接しつつ水平(X軸方向)に移動する。
【0221】
印刷室3では、プラテン30の上側に配置された記録ユニット31によりシートSへの印刷処理が実行される。この記録ユニット31は、シートSの表面に処理液並びに白色イ
ンク組成物及び非白色インク組成物を吐出することで、シートSの表面に画像を印刷する。ここで、印刷室3内のX軸負方向の端部(図1の左端部)にはカートリッジ装着部8が設けられており、カートリッジ装着部8には、上述の処理液を貯留する処理液カートリッジ81と、上述の白色インク組成物及び非白色インク組成物を貯留する複数のインクカートリッジ82とが着脱可能に装着されている。そして、記録ユニット31は、処理液カートリッジ81から供給された処理液と、インクカートリッジ82から供給されたインク組成物とをそれぞれインクジェット方式によりシートSの表面に吐出可能である。
【0222】
図2は記録ユニットの構成を部分的に示す底面図である。ここでは、図1および図2を用いつつ、記録ユニット31の詳細を説明する。この記録ユニット31は、キャリッジ32と、キャリッジ32の下面に取り付けられた平板状の支持板33と、支持板33の下面に取り付けられたインクジェットヘッド34、35とを有する。支持板33の下面では、4個のインクジェットヘッド35および1個のインクジェットヘッド34がX軸方向に等ピッチで並び、各インクジェットヘッド34、35では複数のノズルNがY軸方向に平行に並ぶ。そして、インクジェットヘッド34は処理液をノズルNから吐出し、4個のインクジェットヘッド35のそれぞれは互いに異なる色のインク、すなわち白色インク組成物及び非白色インク組成物、をノズルNから吐出する。
【0223】
図1に戻って説明を続ける。上述のように構成された記録ユニット31のキャリッジ32は、支持板33およびインクジェットヘッド34、35と一体的に移動可能となっている。つまり、印刷室3内には、X軸方向に平行に延びるX軸ガイドレール37が設けられており、キャリッジ32はX軸モーターの駆動力を受けると、X軸ガイドレール37に沿ってX軸方向に移動する。
【0224】
図6も参照して、図1の記録装置による記録を説明する。インクジェットヘッドHはキャリッジ32に搭載されている。図6では、インクジェットヘッドHは、白色インクを吐出するノズルNの複数個がノズル列方向に並ぶノズル列W、非白色インクを吐出するノズルNの複数個がノズル列方向に並ぶノズル列Cが4列、処理液を吐出するノズルNの複数個がノズル列方向に並ぶノズル列R、を有している。なお図6は記録媒体の記録が行なわれる記録面側から見た図であり、ノズル列は図の手前側に記載されているが、実際には、ノズル列は図の奥側にあり、記録媒体に向いている。
図6ではシートSを記録媒体Mと記載する。シートSは、ロールR1から繰り出され、プラテンP上に搬送されてくる。
【0225】
図6(a)で、記録装置は、キャリッジ32をX軸方向に平行な往路方向(走査方向MS、図の右方向)に移動させつつ、インクジェットヘッドHのノズル列WからシートSの表面に白色インク組成物を吐出して、1回の走査の走査領域に対して、白色インク組成物を1回の走査で付着させる。なお図ではインクジェットヘッドHが走査方向の走査の距離の約半分まで進んだ状態であるが、インクジェットヘッドHは走査方向の走査の距離を最後まで走査する。
このとき、シートSはプラテンPの上面で停止している。当該1回の走査と同じ走査で、同じ走査領域に対して、インクジェットヘッドHのノズル列RからシートSの表面に処理液を吐出する。
【0226】
続いて、図6(b)で、キャリッジ32は初期位置に戻り、再びキャリッジ32をX軸方向に平行な往路方向に移動させつつ、ノズル列CからシートSの表面に非白色インク組成物を吐出して、1回の走査の走査領域に対して、非白色インク組成物を1回の走査で付着させる。こうして、白色インク組成物を付着させた走査領域に対して、非白インクを付着させる。
当該1回の走査と同じ走査で、同じ走査領域に対して、ノズル列RからシートSの表面
に処理液を吐出する。
なお、記録ユニット31が初期位置に戻ることなく、キャリッジ32をX軸方向に平行な復路方向(図の左方向)に移動させつつ、非白色インク組成物を付着させる走査を同様に行ってもよい。
【0227】
これによって、シートSの表面では、Y方向のノズル列の長さで、X軸方向に走査の距離の、1フレーム分の二次元画像が印刷される。また、二次元画像を構成するインクの色材は処理液の作用により凝集し、シートSの表面に定着する。
【0228】
次に、シートSの搬送を、1フレーム分のX軸方向の長さで、搬送方向SS(図の右方向)に行い、1フレーム分のシートSを、プラテンP上から移動させる。
【0229】
次に、図6(c)で、シートSはプラテンPの上面で停止しているシートSの新たな部分に、白色インク組成物を付着させる走査を行う。次に図6(d)で、非白色インク組成物を付着させる走査を行う。図6(c)の走査、図6(d)の走査は、それぞれ図6(a)の走査、図6(b)の走査と、走査の内容は同じである。こうして次の1フレーム分の画像が印刷される。さらに記録を続ける場合は、図6(b)のシートSの搬送以降を繰り返せばよい。
【0230】
別の一実施形態として、記録装置は、プラテン30の上方でキャリッジ32をY軸方向へ往復移動させつつインクジェットヘッド34、35から処理液およびインク組成物を吐出することで、プラテン30の上面で停止するシートSの表面に画像を印刷するものであってもよい。この場合、印刷室3内には、Y軸方向に平行に延びるY軸ガイドレール(図示せず)が設けられており、キャリッジ32はY軸モーター(図示せず)の駆動力を受けると、Y軸ガイドレールに沿ってY軸方向に移動する構成である。また、インクジェットヘッド35、34は、Y軸方向に等ピッチで並び、各インクジェットヘッド34、35では複数のノズルNがX軸方向に平行に並ぶ。
【0231】
上述のような1フレームの印刷は、シートSをX軸方向に間欠的に移動させながら繰り返し実行される。具体的には、プラテン30の上面のほぼ全域にわたる所定範囲が印刷領域となっている。そして、この印刷領域のX軸方向への長さに対応する距離(間欠搬送距離)を単位として、シートSをX軸方向へ間欠的に搬送するとともに、間欠搬送中にプラテン30の上面に停止するシートSに対して1フレームの印刷が行われる。換言すれば、プラテン30に停止するシートSに1フレームの印刷が終わると、シートSが間欠搬送距離だけX軸方向に搬送されて、シートSの未印刷の面がプラテン30に停止する。続いて、この未印刷面に新たに1フレームの印刷が実行され、これが完了すると、再びシートSが間欠搬送距離だけX軸方向に搬送される。そして、これら一連の動作が繰り返し実行される。
【0232】
なお、間欠搬送中にプラテン30の上面に停止しているシートSを平坦に保つために、プラテン30は、その上面に停止しているシートSを吸引する機構を備えてもよい。具体的には、プラテン30の上面には、図示しない多数の吸引孔が開口しており、プラテン30の下面には吸引部38が取り付けられている。そして、吸引部38が動作することで、プラテン30の上面の吸引孔に負圧が発生して、シートSがプラテン30の上面に吸引される。そして、印刷のためにシートSがプラテン30上に停止している間は、吸引部38がシートSを吸引することでシートSを平坦に保つ。一方、印刷が終了すると、吸引部38がシートSの吸引を停止することでシートSのスムーズな搬送を可能とする。
【0233】
なお、プラテン30の下面には、ヒーター39が取り付けられていてもよい。このヒーター39は、必要に応じて、プラテン30を所定温度(例えば30℃)に加熱できるもの
である。これにより、シートSはインクジェットヘッド34、35による印刷処理を受けつつ、プラテン30の熱によって1次乾燥される構成とできる。
ただし、本実施形態に係る記録装置では、このようなプラテン30上のようなインク組成物の付着を受ける場所において、記録媒体を支持する部材に備えられる記録媒体を加熱するための加熱機構(例えば、ヒーター39)や、記録媒体を上方から加熱するための加熱機構(図示しない)で記録媒体の加熱を行ってもよい。記録媒体を上方から加熱するための加熱機構としては、例えば送風ファンやIRヒーターなどがあげられる。
ただし行う場合でも、インク付着時の記録媒体の表面温度が35℃以下であり、行わない構成とすることが好ましい。
【0234】
これにより、インクを付着させる際における記録媒体の表面温度を35℃以下としやすく、インクの溶媒成分の蒸発をより抑制し、さらにノズル面とプラテン付近の温度差をより低く抑えられ、結露をより低減させることができる傾向にある。
【0235】
こうして、1フレームの印刷を受けたシートSは、シートSの間欠搬送に伴ってプラテン30から乾燥部4へ移動する。この乾燥部4は、乾燥用に加熱した空気により、シートSに着弾した処理液やインク組成物を完全に乾燥させる後加熱工程を実行できるものである。
乾燥部4においては、シートSが到達する表面温度を、30.0℃以上120.0℃以下、好ましくは40.0℃以上100.0℃以下、より好ましくは50.0℃以上95℃以下、さらに好ましくは70℃以上90℃以下となるように加熱することが好ましい。
そして、乾燥処理を受けたシートSは、シートSの間欠搬送に伴って巻取部5に到達し、ロールR2として巻き取られる。
【0236】
図7は、本実施形態に係る記録装置の他の一例を模式的に示す概略斜視図である。図7の記録装置もシリアル式の記録装置の一例である。記録装置500は、インクジェットヘッド510と、キャリッジの筐体9と、キャリッジの本体部12と、プラテン11と、キャリッジ移動機構13と、搬送手段14と、制御部CONTを有する。インクジェット記録装置500は、制御部CONTにより、インクジェット記録装置500の全体の動作が制御される。
インクジェットヘッド510は、走査方向MSに移動しつつ、インクをインクジェットヘッド510のノズルから吐出する走査を行う。また、搬送手段14により、記録媒体Mを、搬送方向SSに搬送させる搬送が行なわれる。インクジェットヘッド510は、キャリッジの下面に取り付けられている。
【0237】
図8は、図7の記録装置を用いて行う本実施形態の記録の一例を示す図である。インクジェットヘッドHは、キャリッジに取り付けられており、図6と同様に、ノズル列W、ノズル列C、ノズル列R、を有している。
記録媒体Mは、搬送手段14により、図8の上方からプラテン上に搬送される。
【0238】
図8(a)で、記録装置は、キャリッジを往路方向(走査方向MS)に移動させつつ、インクジェットヘッドHのノズル列Wから記録媒体Mの表面に白色インク組成物を吐出して、1回の走査の走査領域に対して、白色インク組成物を1回の走査で付着させる。このとき、記録媒体MはプラテンPの上面で停止している。当該1回の走査と同じ走査で、同じ走査領域に対して、ノズル列Rから記録媒体Mの表面に処理液を吐出する。
【0239】
続いて、図8(b)で、キャリッジは初期位置に戻り、再びキャリッジを走査方向MSに移動させつつ、ノズル列Cから記録媒体Mの表面に非白色インク組成物を吐出して、1回の走査の走査領域に対して、非白色インク組成物を1回の走査で付着させる。こうして、白色インク組成物を付着させた走査領域に対して、非白インクを付着させる。
当該1回の走査と同じ走査で、同じ走査領域に対して、ノズル列Rから記録媒体Mの表面に処理液を吐出する。
キャリッジが初期位置に戻ることなく、キャリッジをMS軸方向に平行な復路方向(図の左方向)に移動させつつ、非白色インク組成物を付着させる走査を同様に行ってもよい。
【0240】
これによって、記録媒体Mの表面では、搬送方向SSのノズル列の長さで、走査方向MSに走査の距離の、1フレーム分の画像が印刷される。また、画像を構成するインクの色材は処理液の作用により凝集し、記録媒体Mの表面に定着する。
【0241】
次に、記録媒体Mの搬送を、1フレーム分の搬送方向SSの長さで、搬送方向SSに行い、1フレーム分の記録媒体Mを、プラテンP上から移動させる。
【0242】
次に、図8(c)で、プラテンPの上面で停止している記録媒体Mの新たな部分に、白色インク組成物を付着させる走査を行う。次に図8(d)で、非白色インク組成物を付着させる走査を行う。図8(c)の走査、図8(d)の走査は、それぞれ図8(a)の走査、図8(b)の走査と、走査の内容は同じである。こうして次の1フレーム分の画像が印刷される。さらに記録を続ける場合は、図8(b)の記録媒体Mの搬送以降を繰り返せばよい。
【0243】
図9は、図7の記録装置を用いて行う本実施形態の他の記録の一例を示す図である。インクジェットヘッドHは、キャリッジに取り付けられており、搬送方向SSに沿って、上流側に配置されたノズル列Wと、下流側に配置されたノズル列Cを有する。ノズル列Rは、上流側及び下流側に配置されている。各ノズル列は、このような位置関係に配置されていても良いし、図8と同様に、各ノズル列が搬送方向SSに沿って、上流側から下流側まで配置されており、このうち、図9に記載されている部分を記録に使用し、図9に記載されていない部分は記録に使用しない様にしてもよい。つまり図9のノズル列は、記録に使用するノズル列である。
【0244】
図9(a)で、記録装置は、キャリッジを往路方向(走査方向MS)に移動させつつ、インクジェットヘッドHのノズル列Wから記録媒体Mの表面に白色インク組成物を吐出して、1回の走査の走査領域に対して、白色インク組成物を1回の走査で付着させる。このとき、記録媒体MはプラテンPの上面で停止している。当該1回の走査と同じ走査で、同じ走査領域に対して、ノズル列Rから記録媒体Mの表面に処理液を吐出する。
次に、記録媒体Mを、搬送方向SSへ、搬送方向SSに沿ってノズル列Wの長さの距離、搬送する。
【0245】
続いて、図9(b)で、キャリッジは初期位置に戻り、再びキャリッジを走査方向MSに移動させつつ、ノズル列Cから記録媒体Mの表面に非白色インク組成物を吐出して、1回の走査の走査領域に対して、非白色インク組成物を1回の走査で付着させる。こうして、白色インク組成物を付着させた走査領域に対して、非白インクを付着させる。このとき同時に、ノズル列Wは、記録媒体Mの新しい部分に、白色インク組成物を1回の走査で付着させる。
当該1回の走査と同じ走査で、同じ走査領域に対して、ノズル列Rから記録媒体Mの表面に処理液を吐出する。
キャリッジが初期位置に戻ることなく、キャリッジをMS軸方向に平行な復路方向(図の左方向)に移動させつつ、非白色インク組成物を付着させる走査を同様に行ってもよい。
【0246】
これによって、記録媒体Mの表面では、搬送方向SSのノズル列Cの長さで、走査方向
MSに走査の距離の、1フレーム分の画像が印刷される。また、画像を構成するインクの色材は処理液の作用により凝集し、記録媒体Mの表面に定着する。
【0247】
次に、記録媒体Mを、搬送方向SSへ、搬送方向SSに沿ってノズル列Wの長さの距離、搬送する。なお搬送方向SSに沿ったノズル列Wの長さとノズル列Cの長さは等しくなっている。
【0248】
次に、記録媒体Mの搬送を、図9(a)の時と同様に行う。こうして、1フレーム分の記録媒体Mを、プラテンP上から移動させる。
【0249】
次に、図9(c)で、白色インク及び非白色インクを付着させる走査を行う。この走査は、図9(b)の走査と走査の内容は同様である。さらに記録を続ける場合は、図9(b)の記録媒体Mの搬送以降を繰り返せばよい。
図9の記録の例は、白色インクを付着させる走査及び非白色インクを付着させる走査とのうちの先に行う走査と後に行う走査の間に、記録媒体の搬送が行なわれる形態である。
【0250】
3.実施例
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。以下「%」は、特に記載のない限り、質量基準である。なお評価は、特に断りが無い場合は、温度25.0℃、相対湿度40.0%の環境下で行った。
【0251】
3.1 インク及び処理液の調製
表1(図3)の組成になるように各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合及び攪拌した後、さらに、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填したビーズミルにて分散処理を行うことにより十分に混合した。1時間攪拌してから、5.0μmのPTFE製メンブランフィルターを用いて濾過することで、白色インク組成物(W1~W4)、非白色インク組成物(C1~C3)、及び処理液(R1~R3)を得た。表1(図3)中の数値は、質量%を示す。水は純水を用い、各インク及び処理液の質量がそれぞれ100質量%となるように添加した。なお、顔料、分散剤樹脂は、後述の分散液を調製して、これを用いた。
【0252】
表1(図3)に示す成分のうち化合物名以外の成分について、以下のとおり補足する。・カチオンポリマー:「カチオマスターPD-7、ポリアミン樹脂(エピクロルヒドリン-アミン誘導体樹脂)」四日市合成株式会社製
・分散剤樹脂、樹脂A(アニオン系):アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量:25,000、酸価:25)
・分散剤樹脂、樹脂C(アニオン系):アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量:25,000、酸価:35)
・カーボンブラック:No.33(三菱化学社製)
・樹脂粒子、スチレンアクリル系A:下記参照(凝集性高)
・樹脂粒子、スチレンアクリル系B:下記参照(凝集性低)
・ワックス、ポリエチレン系:「ノプコートPEM-17」(商品名、サンノプコ株式会社製)
・界面活性剤、シリコン系:シリコーン系界面活性剤「BYK348」BYK社製
【0253】
〔樹脂粒子:スチレンアクリル系Bの調製〕
スチレン75質量部、アクリル酸0.8質量部、メチルメタクリレート14.2質量部、及びシクロヘキシルメタクリレート10質量部を乳化共重合させることにより、樹脂エマルジョンB(酸価7mgKOH/g)を得た。なお、乳化重合用界面活性剤としては、ニューコールNT-30(日本乳化剤(株)製)を用い、その使用量は、モノマー全量を
100質量部として、2質量部とした。
【0254】
〔樹脂粒子:スチレンアクリル系Aの調製〕
モノマー組成を変更した以外は上記と同様にして樹脂エマルジョンA(酸価30mgKOH/g)を得た。乳化重合用界面活性剤は、モノマー全量100質量部に対し1質量部とした。
【0255】
〔顔料分散液の調製〕
(樹脂Aによる白色顔料分散液)
まず、30%アンモニア水溶液(中和剤)0.1質量部を溶解させたイオン交換水155質量部に、樹脂分散剤としてアニオン性のアクリル酸-アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量:25,000、酸価:25)12質量部を加えて溶解させた。そこに、白色系顔料である二酸化チタン(C.I.ピグメントホワイト6)を40質量部加えてジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散処理を行なった。その後、遠心分離機による遠心濾過を行なって粗大粒子やゴミ等の不純物を除去して、白色系顔料の濃度が20質量%となるように調整し、白色色材分散液を得た。白色系顔料の粒子径は、平均粒子径で350nmであった。
【0256】
(樹脂Cによる非白色顔料分散液)
樹脂分散剤としてアクリル酸-アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量:25,000、酸価:35)を用い、色材としてカーボンブラックを用い、樹脂分散剤の加えた量が、顔料に対する樹脂分散剤の質量比が表1(図3)の質量比になる様にしたこと以外は同様にして非白色色材分散液(ブラック)を得た。顔料の粒子径は、平均粒子径で60nmであった。
【0257】
3.2 評価方法
3.2.1 増粘率
表1(図3)中に記載の「R1と同条件の試験液と混合時の増粘率」は、各インクとR1の処理液とを10:1の質量比で混合し1分撹拌後、粘度をレオメーター MCR302/アントンパール社製)で25℃、せん断速度200s-1の条件で測定した場合における、混合前のインクの粘度に対する混合後の混合液の粘度の倍率である。
【0258】
3.2.2 記録試験
記録媒体幅の長さのインクジェットヘッドを備え1パスで記録媒体幅へ記録可能とした、エプソン製L-4733AW改造機を用意した。図1のような構成にした。図6の様な記録をおこなった。印刷ステージ(プラテン)上に固定した記録媒体(PET 50A、リンテック社製)に対し、各インクを1パス(白色インク1パス、カラーインク1パス、合計2パス)で記録した。パスは走査のことである。処理液の付着は、白色インクを付着させる工程、カラーインクを付着させる工程ごとに同時打ちにより行った。上記合計2パスの記録後、記録媒体を印刷ステージの長さ分搬送して新しい部分を印刷ステージ上に移動し次の記録を行った。このとき、記録媒体の搬送方向と走査方向が同じ軸方向とした(例えば、図1におけるX軸方向)。
なお、表3(図5)中の参考例3,4は、各インクの付着工程を記録媒体を搬送させながら行うライン式の記録方式によって記録を行ったものである。該ライン式の記録は、上記改造機を、インクジェットヘッドをプラテン上のX軸方向の中央付近で位置を固定し、記録媒体を搬送方向に搬送させながら、インクジェットヘッドからインク等を吐出して記録を行った。ライン式で記録を行ったこと以外は、参考例3は比較例1と同様の条件、参考例4は実施例1と同様の条件である。
【0259】
表2、3(図4、5)中のメディア表面温度が25℃の例は、プラテンヒーターをオフ
にし、プラテン上での加熱を行わなかった。一方で、28℃以上の例は、プラテンヒーターをオンにして、表2、3(図4、5)中のメディア表面温度となるように調整した。
【0260】
表2、3(図4、5)中のヘッド移動距離は、ステージ上の記録媒体の長さ(例えば、図1におけるX軸方向)を表中の値とした。なお、ヘッド移動距離を0.5mから変更した例は、印刷ステージの主走査方向の長さを変えたものを用意した。
【0261】
使用する記録媒体の幅(例えば、図1においてはY軸方向の記録媒体の長さ)は、30cmとした。このとき、インクジェットヘッド(ノズル列)の長さは、30cm超とした。
【0262】
テストパターンは、ステージ上の記録媒体の4辺の5mmの余白以外は全て記録パターンとした。
【0263】
インクジェットヘッドのノズル密度は1200dpiとした。そして、1パス記録における基本解像度を1200×1200dipとし、画素ごとに実際に付着させるインク滴数を調整して、インク付着量[mg/inch]が表2、3(図4、5)中の値になる様に調整した。なお、インク1滴当たりの重量(Iw[ng/dot])は、表2、3(図4、5)中の値にした。
【0264】
二次加熱は、記録媒体の搬送方向の下流の二次ヒーターにより記録媒体が70℃になるように加熱して行った。
【0265】
3.2.3 埋まり・ピンホールの評価
記録物のベタ画像領域を蛍光灯下で目視観察し、以下の基準で評価した。なお白色インクの評価は、白色インク組成物及び処理液を付着し、非白色インク組成物及び処理液を付着していない記録パターンの部分で評価した。非白色インクの評価は、白色インク組成物及び処理液を付着し、さらに重ねて非白色インク組成物及び処理液を付着した記録パターンの部分で評価した。
A:埋まっていない箇所やピンホールがない。
B:埋まっていない箇所やピンホールが若干見える。
C:埋まっていない箇所やピンホールが顕著に見える。
【0266】
3.2.4 濃淡ムラの評価
記録物のベタ画像領域を蛍光灯下で目視観察し、以下の基準で評価した。
白色インクの評価に用いた記録パターン、非白色インクの評価に用いた記録パターンは、埋まり・ピンホールの評価と同様にした。
A:ブリード(濃淡のムラ)がない。
B:ブリード(濃淡のムラ)が若干見える。
C:ブリード(濃淡のムラ)が顕著に見える。
【0267】
3.2.5 文字3ptの評価
(白抜き文字)
白色ベタ画像の上に非白色ベタ画像を作成し、非白色ベタ画像中に非白色インクなしの部分で白い文字(3pt)を形成した。そして白色インクと非白色インクの境界滲みを観察した。以下の評価基準で評価した。結果を表中の白色の個所に記す。
A:白抜き文字の境界にカラーにじみが存在しない。
B:白抜き文字の境界にカラーとのにじみが若干存在する。
C:白抜き文字の境界にカラーとのにじみが存在する。
(非白色文字)
白色ベタ画像の上に非白色インクで文字(3pt)を記録した。そして非白色文字の線の細り途切れを評価した。非白色文字を、以下の評価基準で評価した。結果を表中の非白色の個所に記す。
A:白ベタ上の非白色文字がきれいに読める。
B:白ベタ上の非白色文字の途切れが若干存在する。
C:白ベタ上の非白色文字の途切れが存在する。
【0268】
3.2.6 結露評価
表2、3(図4、5)に示した条件で画像記録を1時間連続して行い、記録終了後の吐出ノズル郡のノズルを検査、及びノズル面の観察を行い、以下の評価基準で評価した。なお、不吐出又は隣接ノズル間距離の半分位以上飛行曲がりが発生した場合を吐出不良とした。なお、結露にインクが触れて飛行曲がり等が発生する。
A:ノズル面に結露なし。吐出不良ノズルなし。
B:ノズル面に結露なし。吐出不良ノズルが1%以下。
C:ノズル面に結露若干発生。吐出不良ノズルが1%超3%以下。
D:ノズル面に結露かなり発生。吐出不良ノズル3%超。
【0269】
3.2.7 記録速度の評価
1回の記録におけるパス数により、以下の評価基準で評価した。
A:1回の記録のパス数が2パス以下。
B:1回の記録のパス数が3パス以上。
【0270】
3.3 評価結果
評価結果を表2、3(図4、5)に示す。
【0271】
表2、3(図4、5)より、凝集剤を含有する処理液を記録媒体に付着させる処理液付着工程と、白色色材を含有する白色インク組成物をインクジェットヘッドから吐出させ前記記録媒体に付着させる白色インク付着工程と、非白色色材を含有する非白色インク組成物を前記インクジェットヘッドから吐出させ前記記録媒体に付着させる非白色インク付着工程と、を有し、前記白色インク組成物及び前記非白色インク組成物は、水系インクであり、前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程を、それぞれ、位置が固定された状態の前記記録媒体に対して、前記インクジェットヘッドを移動させながら、前記インクジェットヘッドからインク組成物を吐出させ、前記記録媒体に付着させる走査により行い、前記白色インク付着工程は、1回の走査の走査領域に対して、前記白色インク組成物を1回の走査で付着させ、前記非白色インク付着工程は、1回の走査の走査領域に対して、前記非白色インク組成物を1回の走査で付着させ、前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程の何れか一方の走査が行なわれた走査領域に対して、別の走査で他方の走査を行い、前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程における、前記記録媒体の表面温度が35℃以下である、各実施例の記録方法によれば、優れた記録速度としつつ、結露の抑制及び画質(濃淡ムラ)に優れることが判明した。
【0272】
これに対して、上記記録方法ではない各比較例の記録方法では、記録速度、結露の抑制及び画質(濃淡ムラ)の何れかが劣っていた。また、上記記録方法ではない各参考例の記録方法は、本発明の課題が生じなかった。
【0273】
実施例1と比較例1との対比より、記録媒体の表面温度が35℃以下でない場合には、結露評価に劣った。
【0274】
実施例1と比較例2との対比より、処理液付着工程を有しない場合には、画質(濃淡ムラ)に劣った。
【0275】
実施例1と比較例3~5との対比より、白色インク付着工程を、1回の走査の走査領域に対して、白色インク組成物を1回の走査で付着させるものでない場合、記録速度に劣った。
【0276】
参考例1,2を参照すると、白色インク付着工程を有しない場合には、記録速度、結露の抑制及び画質(濃淡ムラ)などの課題は生じなかった。
【0277】
参考例3,4を参照すると、ライン式の記録方式による印刷においては、結露などの課題は生じなかった。ただし記録中、インクジェットヘッドが記録媒体と対向しない時間がなかった。
【0278】
実施例1と実施例2,3との結果より、処理液の反応性が所定の範囲内であると、埋まり・ピンホール、濃淡ムラ及び文字3ptをバランスよく良好にできた。
【0279】
実施例1と実施例4,5、及び実施例13と実施例17、並びに実施例1と実施例9,10との結果より、白色インク組成物及び非白色インク組成物の水含有量が所定の範囲内であると、埋まり・ピンホールと濃淡ムラをバランスよく良好にできた。
【0280】
実施例1と実施例6との結果より、白色インク組成物の反応性が所定の範囲内であると、濃淡ムラ及び文字3ptをバランスよく良好にできた。
【0281】
実施例1と実施例7,16との結果より、白色インク組成物の付着量が所定範囲内であると、埋まり・ピンホール、濃淡ムラ、文字3pt及び結露評価をバランスよく良好にできた。
【0282】
実施例1と実施例8との結果より、処理液の1滴当たりの重量が所定範囲内であると、埋まり・ピンホール及び文字3ptをバランスよく良好にできた。
【0283】
実施例1と実施例11並びに実施例13と実施例14,15との結果より、ヘッド移動距離が長く結露が発生しやすい場合であっても、良好に結露を抑制できた。
【0284】
実施例1と実施例12,13との結果より、メディア表面温度が周囲温度に近いほど、画質や結露の抑制が良好であった。
【0285】
実施例13と実施例18との結果より、インク付着工程の順序にかかわらず、良好な結露の抑制及び画質(濃淡ムラ)が得られた。
【0286】
実施例13と実施例19との結果より、白色インク組成物の1滴当たりの重量が所定範囲内であると、結露の抑制により優れた。
なお、表中には記載しなかったが、各実施例のインクや記録条件により、図7の記録装置を用いて、図8図9の記録を行ったところ、記録速度、結露の抑制、画質の何れも優れていた。
【0287】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0288】
記録方法の一態様は、
凝集剤を含有する処理液を記録媒体に付着させる処理液付着工程と、
白色色材を含有する白色インク組成物をインクジェットヘッドから吐出させ前記記録媒体に付着させる白色インク付着工程と、
非白色色材を含有する非白色インク組成物を前記インクジェットヘッドから吐出させ前記記録媒体に付着させる非白色インク付着工程と、を有し、
前記白色インク組成物及び前記非白色インク組成物は、水系インクであり、
前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程を、それぞれ、位置が固定された状態の前記記録媒体に対して、前記インクジェットヘッドを移動させながら、前記インクジェットヘッドからインク組成物を吐出させ、前記記録媒体に付着させる走査により行い、
前記白色インク付着工程は、1回の走査の走査領域に対して、前記白色インク組成物を1回の走査で付着させ、
前記非白色インク付着工程は、1回の走査の走査領域に対して、前記非白色インク組成物を1回の走査で付着させ、
前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程の何れか一方の走査が行なわれた走査領域に対して、別の走査で他方の走査を行い、
前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程における、前記記録媒体の表面温度が35℃以下である。
【0289】
上記記録方法の一態様において、
前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程のうちの先に行われる工程のインク組成物の最大付着量の範囲が8mg/inch以上であってもよい。
【0290】
上記記録方法のいずれかの態様において、
前記白色インク組成物における、処理液:白色インク組成物=1:10の質量比で混合したときの粘度上昇、及び、前記非白色インク組成物における、処理液:非白色インク組成物=1:10の質量比で混合したときの粘度上昇が、それぞれ5倍以上であってもよい。
【0291】
上記記録方法のいずれかの態様において、
前記1回の走査における、前記記録媒体に対向して前記インクジェットヘッドが移動する距離が0.5m以上であってもよい。
【0292】
上記記録方法のいずれかの態様において、
前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程において、前記白色インク組成物及び前記非白色インク組成物の液滴の1滴あたりの最大重量範囲が、それぞれ0.5~15ngであってもよい。
【0293】
上記記録方法のいずれかの態様において、
前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程の何れか一方の走査が行なわれた走査領域に対して、前記記録媒体を搬送する搬送工程を行わずに、他方の走査を行ってもよい。
【0294】
上記記録方法のいずれかの態様において、
前記インクジェットヘッドは、インク組成物を吐出する複数のノズルからなるノズル列を有し、該ノズル列の長さ方向の長さが、該方向の前記記録媒体の記録が可能な領域の長さ以上であってもよい。
【0295】
上記記録方法のいずれかの態様において、
前記白色インク付着工程の走査及び前記非白色インク付着工程の走査の後に、前記記録媒体を搬送する搬送工程を備え、前記搬送工程の搬送方向が、前記走査の走査方向の軸に沿った方向であってもよい。
【0296】
上記記録方法のいずれかの態様において、
前記処理液付着工程を、前記インクジェットヘッドを移動させながら、前記インクジェットヘッドから前記処理液を吐出させ、前記記録媒体に付着させる走査により行い、
前記白色インク付着工程及び前記非白色インク付着工程は、それぞれインク組成物を付着させる走査と同じ走査で、同じ走査領域に対して、前記処理液を付着させる走査を行ってもよい。
【0297】
上記記録方法のいずれかの態様において、
前記インクジェットヘッドは、ノズル密度が600dpi以上であってもよい。
【0298】
上記記録方法のいずれかの態様において、
インク組成物の付着を受ける場所において、前記記録媒体を支持する部材に備えられる記録媒体を加熱するための加熱機構で前記記録媒体の加熱を行わない、及び記録媒体を上方から加熱するための加熱機構で前記記録媒体の加熱を行わないものであってよい。
【0299】
記録装置の一態様は、上記いずれかの態様の記録方法で記録が行われる記録装置であって、
前記処理液と、前記白色インク組成物と、前記非白色インク組成物と、前記インクジェットヘッドと、を備えるものである。
【0300】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成、を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0301】
100,500…記録装置、200…ホスト装置、210…プリンタードライバー、230…通信制御部、240…モニター、300…プリンター部、400…プリンター制御部、1…本体ケース、2…繰出部、9…キャリッジの筐体、12…キャリッジの本体部、13…キャリッジ移動機構、14…搬送手段、21…繰出軸、3…印刷室、30,11…プラテン、31…記録ユニット、32…キャリッジ、33…支持板、34,35,510…インクジェットヘッド、37…X軸ガイドレール、38…吸引部、39…ヒーター、4…乾燥部、5…巻取部、51…巻取軸、6…基台、71~77…ローラー、8…カートリッジ装着部、81…処理液カートリッジ、82…インクカートリッジ、R1,R2…ロール、S…シート
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図9