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特開2024-140168船舶用過給機の制御装置、船舶用エンジンシステム、および船舶
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  • 特開-船舶用過給機の制御装置、船舶用エンジンシステム、および船舶 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140168
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】船舶用過給機の制御装置、船舶用エンジンシステム、および船舶
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/04 20060101AFI20241003BHJP
   F02B 39/16 20060101ALI20241003BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02P9/04 E
F02B39/16 F
F02B37/00 302B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051186
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松尾 哲也
(72)【発明者】
【氏名】今井 優
(72)【発明者】
【氏名】坂本 武蔵
【テーマコード(参考)】
3G005
5H590
【Fターム(参考)】
3G005DA09
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA21
3G005GE08
3G005HA14
3G005JA16
3G005JA40
3G005JB26
5H590AB15
5H590CA08
5H590CE03
5H590CE05
5H590FA05
5H590FC11
5H590HA18
5H590HA27
(57)【要約】
【課題】船舶用過給機の回転軸が過回転状態に達することを防止する。
【解決手段】コンプレッサとタービンとを一体回転可能に接続する回転軸と、回転軸の回転によって発電可能に構成される発電機と、を含む船舶用過給機の制御装置は、回転軸が予め設定された設定回転数を超えて回転する過回転状態に達するか否かを判定する判定部と、判定部によって回転軸が過回転状態に達すると判定されると、発電機の発電量を上昇させる発電量上昇部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサとタービンとを一体回転可能に接続する回転軸と、前記回転軸の回転によって発電可能に構成される発電機と、を含む船舶用過給機の制御装置であって、
前記回転軸が予め設定された設定回転数を超えて回転する過回転状態に達するか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって前記回転軸が前記過回転状態に達すると判定されると、前記発電機の発電量を上昇させる発電量上昇部と、を備える、
船舶用過給機の制御装置。
【請求項2】
前記判定部は、タービン入口温度が予め設定された温度閾値を超えると、前記回転軸が前記過回転状態に達すると判定する、
請求項1に記載の船舶用過給機の制御装置。
【請求項3】
前記発電量上昇部による前記発電機の発電量の上昇によって、前記回転軸の回転数が予め設定された回転数閾値以下になると、前記発電機の発電量を減少させる発電量減少部をさらに備える、
請求項1又は2に記載の船舶用過給機の制御装置。
【請求項4】
前記判定部は、タービン入口温度が予め設定された温度閾値を超えると、前記回転軸が前記過回転状態に達すると判定し、
前記発電量上昇部による前記発電機の発電量の上昇によって、前記回転軸の回転数が予め設定された回転数閾値以下になり、且つ前記タービン入口温度が前記温度閾値以下になると、前記発電機の発電量を減少させる発電量減少部をさらに備える、
請求項1に記載の船舶用過給機の制御装置。
【請求項5】
コンプレッサとタービンとを一体回転可能に接続する回転軸と、前記回転軸の回転によって発電可能に構成される発電機と、を含む船舶用過給機と、
請求項1又は2に記載の船舶用過給機の制御装置と、
前記タービンに供給される排ガスを排出するエンジンと、を備える、
船舶用エンジンシステム。
【請求項6】
請求項5に記載の船舶用エンジンシステムと、
電力系統を介して前記発電機と接続される船内負荷と、を備える、
船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶用過給機の制御装置、この制御装置を備える船舶用エンジンシステム、および船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶に搭載されているエンジンの出力を向上させるために、エンジンに圧縮空気を供給する過給機が知られている。過給機の1つの形態として、特許文献1には、エンジンの排ガスによってタービンを回転駆動させ、回転軸を介して、タービンの動力をコンプレッサや発電機に伝達するように構成されている船舶用過給機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-146453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
過給機は、エンジンの異常燃焼などにより排ガスのエネルギが大きくなりすぎると、回転軸が過回転してしまう場合がある。回転軸が過回転状態であると、タービンが損傷するなどのトラブルを発生させる虞がある。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、船舶用過給機の回転軸が過回転状態に達することを防止することができる船舶用過給機の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る船舶用過給機の制御装置は、コンプレッサとタービンとを一体回転可能に接続する回転軸と、前記回転軸の回転によって発電可能に構成される発電機と、を含む船舶用過給機の制御装置であって、前記回転軸が予め設定された設定回転数を超えて回転する過回転状態に達するか否かを判定する判定部と、前記判定部によって前記回転軸が前記過回転状態に達すると判定されると、前記発電機の発電量を上昇させる発電量上昇部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の船舶用過給機の制御装置によれば、船舶用過給機の回転軸が過回転状態に達することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る船舶用過給機の制御装置を備える船舶用エンジンシステムの構成を概略的に示す図である。
図2】一実施形態に係る船舶用過給機の制御装置の概略的な機能ブロック図である。
図3】一実施形態に係る発電機がオン・オフしている期間を示す図である。
図4】一実施形態に係るタービン入口温度の時間的変化の一例を示す図である。
図5】一実施形態に係る船舶用過給機の制御装置の作用・効果を説明するための図である。
図6図1に示す船舶用エンジンシステムを搭載した船舶の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態による船舶用過給機の制御装置について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
図1は、一実施形態に係る船舶用過給機の制御装置(以下、制御装置1と記載する)を備える船舶用エンジンシステム100の構成を概略的に示す図である。図1に示すように、船舶用エンジンシステム100は、吸気ライン102と、排ガスライン104と、エンジン110と、船舶用過給機120と、回転数センサ130と、温度センサ140と、制御装置1と、を含む。
【0011】
吸気ライン102は、エンジン110に供給される空気Aが流通する。吸気ライン102は、空気Aの流通方向の上流側の一端102aが大気に開放され、空気Aの流通方向の下流側の他端102bがエンジン110に接続されている。
【0012】
排ガスライン104は、エンジン110から排出される排ガスGが流通する。排ガスライン104は、排ガスGの流通方向の上流側の一端104aがエンジン110に接続され、排ガスGの流通方向の下流側の他端104bが大気に開放されている。
【0013】
エンジン110は、タービン124に供給される排ガスGを排出する。図1に例示する形態では、エンジン110は、内部に燃焼室111が形成されている気筒112と、燃焼室111に燃料Fを噴射する燃料噴射装置114と、を含む。吸気ライン102を介してエンジン110に供給された空気Aは、燃焼室111に流入し、燃料噴射装置114から噴射される燃料Fと混合される。気筒112は、燃料Fの燃焼によって発生する排ガスGを排出する。気筒112から排出された排ガスGは、排ガスライン104を流通し、タービン124に供給される。
【0014】
船舶用過給機120は、図1に例示するように、コンプレッサ122とタービン124とを一体回転可能に接続する回転軸126と、回転軸126の回転によって発電可能に構成される発電機128と、を含む。コンプレッサ122は、吸気ライン102に設けられている。タービン124は、排ガスライン104に設けられている。コンプレッサ122は、排ガスライン104を流通する排ガスGによって回転駆動するタービン124の動力が回転軸126を介して伝達され、吸気ライン102を流通する空気Aを圧縮する。
【0015】
一実施形態では、図1に例示するように、発電機128は、回転軸126に連結されており、回転軸126の回転力を電力に変換する。発電機128は、例えば、永久磁石が適用されている同期発電機である。発電機128によって発電された電力はインバータなどからなる不図示の電力変換手段によって適切な周波数及び電圧値に変換されて、電力系統202(図6を参照)に供給される。
【0016】
一実施形態では、図1および図2のそれぞれに例示するように、発電機128は、制御装置1と電気的に接続されており、制御装置1から送信される指示に従って発電する。発電機128は、後述するように制御装置1の発電量上昇部4から発電指示P1が送信されるまでは、電力を発電しないオフ状態となっている。言い換えると、発電機128は、発電指示P1が送信されると電力の発電を開始し、電力を発電するオン状態になる。
【0017】
回転数センサ130は、回転軸126の回転数Nを検出する。回転数センサ130は、回転軸126の回転数Nを時系列的に連続検出することにより、回転軸126の回転数Nの時間的変化を検出する。回転数センサ130は、制御装置1と電気的に接続されており、検出した回転軸126の回転数Nを制御装置1に送信する。
【0018】
温度センサ140は、タービン入口温度Tを検出する。本開示では、タービン入口温度Tは、タービン124の入口124aを流通する排ガスGの温度を意味する。温度センサ140は、制御装置1と電気的に接続されており、検出したタービン入口温度Tを制御装置1に送信する。
【0019】
制御装置1は、電子制御装置などのコンピュータであって、たとえば図示しないCPUやGPUといったプロセッサ、ROMやRAMといったメモリ、及びI/Oインターフェイスなどを備える。制御装置1は、メモリにロードされたプログラムの命令に従ってプロセッサが動作(演算等)することで、制御装置1が備える各機能部を実現する。
【0020】
<制御装置>
(構成)
図2は、一実施形態に係る制御装置1の概略的な機能ブロック図である。図2に示すように、制御装置1は、判定部2と、発電量上昇部4と、を含む。一実施形態では、制御装置1は、予め設定された温度閾値Txおよび予め設定された回転数閾値Nxのそれぞれを記憶している。温度閾値Txは、特に限定されないが、例えば、短時間運転許容温度や、回転軸126が最高回転数で回転している場合に想定されるタービン入口温度である。回転数閾値Nxは、特に限定されないが、例えば、コンプレッサ122、タービン124、回転軸126、および発電機128のような船舶用過給機120を構成する構成部材を良好な状態に維持したまま回転軸126が回転可能な最高回転数である。回転数閾値は、例えば、船舶用過給機120の構成部材の何れかを破壊する破壊強度を発生させる回転軸126の回転数N(破壊強度回転数)から一定の回転数を減算した回転数である。
【0021】
判定部2は、回転軸126が予め設定された設定回転数Nsを超えて回転する過回転状態に達するか否かを判定する。設定回転数Nsは、回転数閾値Nx以上である。設定回転数Nsは、特に限定されないが、例えば、最高回転数や破壊強度回転数である。
【0022】
図3は、一実施形態に係る発電機128がオン・オフしている期間を示す図である。図3には、発電機128がオン状態であるオン期間Y1、および発電機128がオフ状態であるオフ期間Y2のそれぞれが図示されている。図4は、一実施形態に係るタービン入口温度Tの時間的変化の一例を示す図である。
【0023】
判定部2は、タービン入口温度Tが温度閾値Txを超えると、回転軸126が過回転状態に達すると判定する。図4に例示するように、判定部2は、タービン入口温度Tが温度閾値Txまで上昇したタイミングt1で回転軸126が過回転状態に達すると判定する。
【0024】
発電量上昇部4は、判定部2によって回転軸126が過回転状態に達すると判定されると、発電機128の発電量を上昇させる。一実施形態では、発電量上昇部4は、タイミングt1、またはタイミングt1の直後に発電機128の発電量を上昇させる発電指示P1を発電機128に送信する。そして、図3に例示するように、発電機128は、発電指示P1を受信するとタイミングt1にオフ状態からオン状態に切り換わる。
【0025】
一実施形態では、図2に例示するように、制御装置1は発電量減少部6をさらに含む。発電量減少部6は、発電量上昇部4による発電機128の発電量の上昇によって、回転軸126の回転数Nが回転数閾値Nx以下になると、発電機128の発電量を減少させる。より具体的には、発電量減少部6は、回転軸126の回転数Nが回転数閾値Nxまで減少したタイミングt2、またはタイミングt2の直後に発電機128を停止させる停止指示P2を発電機128に送信する。そして、図3に例示するように、発電機128は、停止指示P2を受信するとタイミングt2にオン状態からオフ状態に切り換わる。
【0026】
(作用・効果)
一実施形態に係る制御装置1の作用・効果について説明する。図5は、一実施形態に係る制御装置1の作用・効果を説明するための図であって、回転軸126の回転数Nの時間的変化を示している。図5において、制御装置1が船舶用エンジンシステム100に設けられていない場合の回転軸126の回転数N(比較例)を一点鎖線で示している。
【0027】
図5に示す比較例のように、船舶用エンジンシステム100に制御装置1が設けられていない場合には、回転軸126は設定回転数Nsを超えて回転する過回転状態に達する虞がある。第1実施形態によれば、タービン入口温度Tが温度閾値Txを超えると(タイミングt1)、回転軸126が過回転状態に達すると判定される。そして、発電機128がオフ状態からオン状態に切り換わり、発電機128の発電量を上昇させる。発電機128の発電量が上昇すると、回転軸126に作用するトルクが大きくなり、回転軸126の回転数Nの増加を抑制する、又は回転軸126の回転数Nを低下させる。このため、図5に示すように、回転軸126が過回転状態に達することを防止することができる。
【0028】
回転軸126の回転数Nは、タービン入口温度Tの上昇に遅れて増加する。このため、タービン入口温度Tを監視することで、回転軸126の回転数Nが上昇することを予め知ることができる。一実施形態によれば、タービン入口温度Tが温度閾値Txを超えると、回転軸126が過回転状態に達すると判定される。このため、回転軸126が過回転状態に達することを高精度に判定することができる。
【0029】
船舶用過給機120の場合、例えば自動車用の過給機とは異なり、タービン入口温度Tの単位時間当たりの変化量(増減量)は小さい。このため、タービン入口温度Tが、一時的に温度閾値Txを超えてしまうことはない、あるいは非常に少ない。よって、タービン入口温度Tを用いた高精度な判定を実現することができる。
【0030】
一実施形態によれば、発電機128をオン状態にすることで回転軸126の回転数Nが回転数閾値Nx以下になると(タイミングt2)、発電機128がオフ状態に切り換えられる。このため、回転軸126の回転数Nが回転数閾値Nx以下になった後に、過剰なトルクが発電機128から回転軸126に作用し、船舶用過給機120の空気Aの圧縮効率の低下を抑制できる。
【0031】
尚、一実施形態では、判定部2は、タービン入口温度Tに基づいて、回転軸126が過回転状態に達するか否かを判定しているが、本開示はこの形態に限定されない。判定部2は、例えば、エンジン110の出力、燃焼室111の圧力(筒内圧力)、燃焼室の温度(筒内温度)、エンジンの回転数などに基づいて、回転軸126が過回転状態に達するか否かを判定してもよい。
【0032】
幾つかの実施形態では、判定部2は、回転数センサ130から送信される回転軸126の回転数Nに基づいて、回転軸126が過回転状態に達するか否かを判定する。判定部2は、回転軸126の回転数Nが回転数閾値Nxより大きくなると、回転軸126が過回転状態に達すると判定する。尚、図5に示すように、回転軸126の回転数Nが回転数閾値Nxまで上昇したタイミングt3は、タービン入口温度Tが温度閾値Txまで上昇したタイミングt1よりも後となる。
【0033】
幾つかの実施形態では、発電量減少部6は、発電量上昇部4による発電機128の発電量の上昇によって、回転軸126の回転数Nが回転数閾値Nx以下になり、且つタービン入口温度Tが温度閾値Tx以下になると、発電機128の発電量を減少させる。タービン入口温度Tは、回転軸126の回転数Nの低下に遅れて下降する。このため、発電機128の発電量の上昇によって、回転軸126の回転数Nが回転数閾値Nx以下になっていても、タービン入口温度Tは温度閾値Txを超えている場合がある。つまり、図4および図5に示すように、タービン入口温度Tが温度閾値Txまで下降するタイミングt4は、回転軸126の回転数Nが回転数閾値Nxまで低下したタイミングt2よりも後となる。この場合、回転軸126の回転数Nが低下中にも関わらず、判定部2が過回転状態に達すると誤判定する虞がある。幾つかの実施形態によれば、回転軸126の回転数Nが低下中にも関わらず、判定部2が過回転状態に達すると誤判定することを抑制できる。
【0034】
尚、一実施形態では、発電量上昇部4が発電機128をオフ状態からオン状態にすることで発電機128の発電量を上昇させていたが、本開示はこの形態に限定されない。幾つかの実施形態では、発電量上昇部4は、オン状態の発電機128の発電量を上昇させる。この場合、発電機128は、タイミングt1よりも前では、最大発電量よりも低い発電量の電力を発電している。
【0035】
尚、一実施形態では、発電量減少部6が発電機128をオン状態からオフ状態にすることで発電機128の発電量を減少させていたが、本開示はこの形態に限定されない。幾つかの実施形態では、発電量減少部6は、発電機128をオン状態に維持したまま発電機128の発電量を減少させる。
【0036】
図6は、図1に示す船舶用エンジンシステム100を備える船舶200の構成を概略的に示す図である。図6に例示するように、船舶200は、上述した船舶用エンジンシステム100と、電力系統202を介して発電機128と接続される船内負荷204と、を含む。船内負荷204は、例えば、照明設備や空調設備などであり、発電機128が発電した電力を消費するようになっている。このような構成によれば、回転軸126が過回転状態に達することを防止するために発生させた電力を船内負荷204で消費することができる。
【0037】
不図示であるが、幾つかの実施形態では、船舶200は、発電機128と接続される蓄電池を含む。このような構成によれば、回転軸126が過回転状態に達することを防止するために発生させた電力を蓄電池に充電することができる。
【0038】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0039】
[1]本開示に係る船舶用過給機(120)の制御装置(1)は、コンプレッサ(122)とタービン(124)とを一体回転可能に接続する回転軸(126)と、前記回転軸の回転によって発電可能に構成される発電機(128)と、を含む船舶用過給機の制御装置であって、
前記回転軸が予め設定された設定回転数(Ns)を超えて回転する過回転状態に達するか否かを判定する判定部(2)と、
前記判定部によって前記回転軸が前記過回転状態に達すると判定されると、前記発電機の発電量を上昇させる発電量上昇部(4)と、を備える。
【0040】
上記[1]に記載の構成によれば、回転軸が過回転状態に達すると判定されると、発電機の発電量を上昇させる。発電機の発電量が上昇すると、回転軸に作用するトルクが大きくなり、回転軸の回転数の増加を抑制する、又は回転軸の回転数を低下させる。このため、船舶用過給機の回転軸が過回転状態に達することを防止することができる。
【0041】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記判定部は、タービン入口温度(T)が予め設定された温度閾値(Tx)を超えると、前記回転軸が前記過回転状態に達すると判定する。
【0042】
回転軸の回転数は、タービン入口温度の上昇に遅れて増加する。このため、タービン入口温度を監視することで、回転軸の回転数が上昇することを予め知ることができる。このため、上記[2]に記載の構成によれば、回転軸が過回転状態に達することを高精度に判定することができる。また、船舶用過給機の場合、例えば自動車用の過給機とは異なり、タービン入口温度の単位時間当たりの変化量(増減量)は小さい。このため、タービン入口温度が、一時的に温度閾値を超えてしまうことはない、あるいは非常に少ない。よって、タービン入口温度を用いた高精度な判定を実現することができる。
【0043】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]に記載の構成において、
前記発電量上昇部による前記発電機の発電量の上昇によって、前記回転軸の回転数(N)が予め設定された回転数閾値(Nx)以下になると、前記発電機の発電量を減少させる発電量減少部(6)をさらに備える。
【0044】
上記[3]に記載の構成によれば、回転軸の回転数が回転数閾値以下になった後に、過剰なトルクが発電機から回転軸に作用することを抑制できる。
【0045】
[4]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記判定部は、タービン入口温度が予め設定された温度閾値を超えると、前記回転軸が前記過回転状態に達すると判定し、
前記発電量上昇部による前記発電機の発電量の上昇によって、前記回転軸の回転数が予め設定された回転数閾値以下になり、且つ前記タービン入口温度が前記温度閾値以下になると、前記発電機の発電量を減少させる発電量減少部をさらに備える。
【0046】
タービン入口温度は、回転軸の回転数の低下に遅れて下降する。このため、発電機の発電量の上昇によって、回転軸の回転数が回転数閾値以下になっていても、タービン入口温度は温度閾値を超えている場合がある。この場合、回転軸の回転数が低下中にも関わらず、判定部が過回転状態に達すると判定する虞がある。上記[4]に記載の構成によれば、回転軸の回転数が低下中にも関わらず、判定部が過回転状態に達すると判定することを抑制できる。
【0047】
[5]本開示に係る船舶用エンジンシステム(100)は、
コンプレッサとタービンとを一体回転可能に接続する回転軸と、前記回転軸の回転によって発電可能に構成される発電機と、を含む船舶用過給機と、
上記[1]から[4]の何れか1つに記載の船舶用過給機の制御装置(1)と、
前記タービンに供給される排ガスを排出するエンジン(110)と、を備える。
【0048】
上記[5]に記載の構成によれば、船舶用過給機の回転軸が過回転状態に達することを防止可能な船舶用エンジンシステムを提供することができる。
【0049】
[6]本開示に係る船舶(200)は、
上記[5]に記載の船舶用エンジンシステム(100)と、
電力系統(202)を介して前記発電機と接続される船内負荷(204)と、を備える。
【0050】
上記[6]に記載の構成によれば、船舶用過給機の回転軸が過回転状態に達することを防止可能な船舶用エンジンシステムを搭載した船舶を提供することができる。また、この回転軸が過回転状態に達することを防止するために発生させた電力を船内負荷で消費することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 制御装置
2 判定部
4 発電量上昇部
6 発電量減少部
100 船舶用エンジンシステム
102 吸気ライン
104 排ガスライン
110 エンジン
111 燃焼室
112 気筒
114 燃料噴射装置
120 船舶用過給機
122 コンプレッサ
124 タービン
126 回転軸
128 発電機
130 回転数センサ
140 温度センサ
200 船舶
202 電力系統
204 船内負荷
A 空気
F 燃料
G 排ガス
N 回転数
Ns 設定回転数
Nx 回転数閾値
P1 発電指示
P2 停止指示
T タービン入口温度
Tx 温度閾値
Y1 オン期間
Y2 オフ期間

図1
図2
図3
図4
図5
図6