(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014017
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】釣り用ルアー
(51)【国際特許分類】
A01K 85/16 20060101AFI20240125BHJP
A01K 85/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A01K85/16
A01K85/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116551
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】598015095
【氏名又は名称】株式会社 デュオ
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】安達 政弘
【テーマコード(参考)】
2B307
【Fターム(参考)】
2B307BA42
2B307BA44
2B307BA46
2B307BA70
(57)【要約】
【課題】高比重且つ非磁性の金属、例えばタングステン等のウェイトを適用した場合であっても、これを特殊仕様とせずに用いることができるようにするとともに、ウェイトの保持を確実に行うことができる釣用ルアーを開発することを課題とした。
【解決手段】保持機構Kは、前方側に設けられる磁石片15と、この磁石片15の後部に磁着した状態で配置されるとともに、後方端を開放端16Eとして、その内側をウェイト収納部16Hとする、軟磁性体の素材によって形成されたスペーサ16と、軟磁性体の素材によって形成され、スペーサ16の後方に配される封鎖片17とを具えて成るものであり、一方、ウェイト13は、高比重且つ非磁性の素材によって形成されるものであり、このウェイト13は、前方移動した状態でウェイト収納部16Hに収まるとともに、開放端16Eには、磁石片15からの磁力により封鎖片17が緩保持状態で磁着することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚体を模したルアーボディ内に、前後方向に移動自在のウェイトを具えた釣り用ルアーであって、
前記ルアーボディ内におけるウェイトの移動空間に、前方移動したウェイトを緩保持できる保持機構を具えるものであり、
この保持機構は、前方側に設けられる磁石片と、
この磁石片の後部に磁着した状態で配置されるとともに、後方端を開放端として、その内側をウェイト収納部とする、軟磁性体の素材によって形成されたスペーサと、
軟磁性体の素材によって形成され、前記スペーサの後方に配される封鎖片とを具えて成るものであり、
一方、前記ウェイトは、高比重且つ非磁性の素材によって形成されるものであり、
このウェイトは、前方移動した状態で前記スペーサにおけるウェイト収納部に収まるとともに、
スペーサの開放端には、磁石片からの磁力により封鎖片が緩保持状態で磁着することにより、前記保持機構によってウェイトを緩保持することができるように構成されていることを特徴とする釣り用ルアー。
【請求項2】
前記ウェイトは、ウェイト芯孔を具え、
一方、ルアーボディの移動空間には、その長手方向に添ってガイド芯線が設けられ、
前記ウェイトは、ウェイト芯孔においてガイド芯線に移動自在に支持されていることを特徴とする請求項1記載の釣り用ルアー。
【請求項3】
前記磁石片によって磁着されたスペーサの開放端における磁力は、
この開放端の面積または前記スペーサの長さ寸法の何れか一方または双方を調節することにより、
封鎖片を緩保持状態で磁着するのに好適な磁力となるように設定されることを特徴とする請求項1または2いずれか記載の釣り用ルアー。
【請求項4】
前記磁石片は、ネオジム磁石が適用されていることを特徴とする請求項1または2いずれか記載の釣り用ルアー。
【請求項5】
前記磁石片は、ネオジム磁石が適用されていることを特徴とする請求項3記載の釣り用ルアー。
【請求項6】
前記ウェイトは、タングステンまたはタングステンを主成分とする合金が適用されていることを特徴とする請求項1または2いずれか記載の釣り用ルアー。
【請求項7】
前記ウェイトは、タングステンまたはタングステンを主成分とする合金が適用されていることを特徴とする請求項3記載の釣り用ルアー。
【請求項8】
前記ウェイトは、タングステンまたはタングステンを主成分とする合金が適用されていることを特徴とする請求項4記載の釣り用ルアー。
【請求項9】
前記ウェイトは、タングステンまたはタングステンを主成分とする合金が適用されていることを特徴とする請求項5記載の釣り用ルアー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は釣り用のルアーに関するものであって、特にルアーを投げ込むキャスティング時と、着水後のリトリービング時とにおいて、それぞれ異なるルアーの重心位置を設定できるようにした釣り用ルアーの改良に係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般に魚体を模したルアーは、頭部付近にラインが接続されるとともに、腹部下方や尾部近くに複数のフックが設けられており、更に潜行するタイプのものや、左右に小刻みに揺動するタイプのものにあっては、水流を受けてこれら動作を生起させるために、頭部下方に、前下がり状に張り出すリップが設けられている。
【0003】
このようなルアーは、潜行時には幾分前下がりの水中姿勢を取るため、その重心は、前方寄りに位置することが好ましい。
一方、キャスティング時には、姿勢を安定させて飛距離を稼ぐために、重心は後方寄り(尾部寄り)に位置することが好ましい。
【0004】
このためそれぞれ好ましい重心位置を設定できるよう、ウェイトをルアーボディ内で移動できるようにし、キャスト時にはウェイトを後方寄り(尾部寄り)に位置させるとともに、リトリーブ時にはウェイトを前方に保持できるような工夫が多く提案されている。
最も基本的には、ルアーボディ前方に、着水後ウェイトを位置させておくことができるような凹溝部を設けたり、ウェイトとして鋼球等の磁性体を用いて、これを前方寄りに磁力保持する磁石片を配することが行われている(例えば特許文献1、2参照)。
【0005】
このうちウェイトを磁力保持するものについては、その保持が確実になされる一方、ウェイト素材は鋼球等の強磁性体のものに限られてしまう。このため一定のおもり効果を得ようとすると、他の高比重金属(多くは磁着しない常磁性)を用いる場合に比べ、大径寸法とならざるを得ず、それに伴いルアー形状の設計にあたっても限界乃至は制約が生じていた。
【0006】
また、大径寸法とされた鋼球等の強磁性体を磁着するための磁石は、当然ながらより強い磁力が要求されるため、この磁石の磁力は広範に及ぶこととなり、更に鋼球等の強磁性体が磁石に磁着されると、この強磁性体も磁化するため、結果的に磁石の磁力は更に広範に及ぶこととなる。
このため磁石乃至鋼球等の強磁性体に、ルアーボディを介してフックが磁着されてしまうことがあり、この場合、ルアーは所望の水中姿勢を取ることができなくなり、釣果の低下を招いてしまうこととなる。
【0007】
もちろんこのような問題を認識して、タングステン等の高比重且つ常磁性の金属材料を適用しながらも、ウェイトの表面を磁性金属で被覆して、磁力によるウェイト保持を行うという試みもあった(例えば特許文献3参照)。
しかしながらこのような特殊仕様のウェイトについては生産コストも高いうえ、そもそも製造すること自体、生産設備等の関係で対応できない場合があった。
【0008】
このように従来は、タングステン等、高比重且つ常磁性の素材から成るウェイトを磁着保持するにあたっては、ウェイトに別途金属を付加するという技術思想のもと、製品開発が行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4472834号公報
【特許文献2】特許第3299184号公報
【特許文献3】特開2005-287359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような背景を考慮してなされたものであって、高比重且つ非磁性の金属、例えばタングステン等のウェイトを適用した場合であっても、これを特殊仕様とせずに用いることができるようにするとともに、ウェイトの保持を確実に行うことができる釣用ルアーを開発することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち請求項1記載の釣り用ルアーは、魚体を模したルアーボディ内に、前後方向に移動自在のウェイトを具えた釣り用ルアーであって、前記ルアーボディ内におけるウェイトの移動空間に、前方移動したウェイトを緩保持できる保持機構を具えるものであり、この保持機構は、前方側に設けられる磁石片と、この磁石片の後部に磁着した状態で配置されるとともに、後方端を開放端として、その内側をウェイト収納部とする、軟磁性体の素材によって形成されたスペーサと、軟磁性体の素材によって形成され、前記スペーサの後方に配される封鎖片とを具えて成るものであり、一方、前記ウェイトは、高比重且つ非磁性の素材によって形成されるものであり、このウェイトは、前方移動した状態で前記スペーサにおけるウェイト収納部に収まるとともに、スペーサの開放端には、磁石片からの磁力により封鎖片が緩保持状態で磁着することにより、前記保持機構によってウェイトを緩保持することができるように構成されていることを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項2記載の釣り用ルアーは、前記要件に加え、前記ウェイトは、ウェイト芯孔を具え、また前記封鎖片は封鎖片芯孔を具え、一方、ルアーボディの移動空間には、その長手方向に添ってガイド芯線が設けられ、前記ウェイトは、ウェイト芯孔においてガイド芯線に移動自在に支持され、前記封鎖片は、封鎖片芯孔においてガイド芯線に移動自在に支持されていることを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項3記載の釣り用ルアーは、前記要件に加え、前記磁石片によって磁着されたスペーサの開放端における磁力は、この開放端の面積または前記スペーサの長さ寸法の何れか一方または双方を調節することにより、封鎖片を緩保持状態で磁着するのに好適な磁力となるように設定されることを特徴として成るものである。
【0014】
また請求項4記載の釣り用ルアーは、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記磁石片は、ネオジム磁石が適用されていることを特徴として成るものである。
【0015】
また請求項5記載の釣り用ルアーは、前記請求項3記載の要件に加え、前記磁石片は、ネオジム磁石が適用されていることを特徴として成るものである。
【0016】
また請求項6記載の釣り用ルアーは、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記ウェイトは、タングステンまたはタングステンを主成分とする合金が適用されていることを特徴として成るものである。
【0017】
また請求項7記載の釣り用ルアーは、前記請求項3記載の要件に加え、前記ウェイトは、タングステンまたはタングステンを主成分とする合金が適用されていることを特徴として成るものである。
【0018】
また請求項8記載の釣り用ルアーは、前記請求項4記載の要件に加え、前記ウェイトは、タングステンまたはタングステンを主成分とする合金が適用されていることを特徴として成るものである。
【0019】
また請求項9記載の釣り用ルアーは、前記請求項5記載の要件に加え、前記ウェイトは、タングステンまたはタングステンを主成分とする合金が適用されていることを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の要件を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0020】
まず請求項1記載の発明によれば、高比重且つ非磁性の素材によって形成されたウェイトを、保持機構によって確実に緩保持することができ、ルアーの重心を、リップの作用による潜行や揺動を生起させるのに好適な位置に緩保持することができる。
【0021】
また請求項2記載の発明によれば、ウェイト及び封鎖片と、他部材との摺擦面積を極めて小さくすることができ、これら部材の耐久性を向上することができるとともに、ウェイト及び封鎖片の移動を円滑に行うことができる。
【0022】
また請求項3記載の発明によれば、スペーサの開放端における磁力を、スペーサの寸法を調節することにより、設定することができるため、磁石片及び封鎖片を共通部品とした、ルアーボディのサイズ展開・変更等に対応することができる。
【0023】
また請求項4及び5記載の発明によれば、磁石片の磁力を十分なものとし、磁石片により励磁されたスペーサにおける開放端へ、封鎖片を磁着させることができる。
【0024】
また請求項6、7、8及び9記載の発明によれば、ウェイトを、一定のおもり効果が得られながらも大型化を招いてしまうことのないものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の釣り用ルアーを一部破断して示す側面図並びに正面図である。
【
図2】保持機構及びウェイトとその周辺部材を示す斜視図(a)、遮蔽キャップと組み付けられた磁石片を示す背面図(b)及び縦断側面図(c)、及び磁石片単体での磁力線の様子を示す縦断側面図(d)である。
【
図3】ウェイトの移動及び保持機構の様子を段階的に示す側面図である。
【
図4】キャストされた釣り用ルアーの飛翔時の状態を一部破断して示す側面図(a)、着水時の状態を一部破断して示す側面図(b)、リトリーブ開始時の状態を一部破断して示す側面図(c)、リトリーブ定常時の状態を一部破断して示す側面図(d)である。
【
図5】スペーサを示す斜視図(a)、背面図(b)及び切り欠きの形態を異ならせた実施例を示す背面図(c)である。
【
図6】形態を異ならせたスペーサを示す斜視図である。
【
図7】移動空間の形態を異ならせた釣り用ルアーを一部破断して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態は以下述べる実施例を好ましい実施の形態の一例とするとともに、本発明の技術思想の中において種々の改変例をも含むものである。
【実施例0027】
以下本発明を図示の実施例に基づいて具体的に説明する。
図中符号1は本発明の釣り用ルアーであって、このものは小魚を模した外形形状を具え、一例として腹部及び尾部近くに設けられたフックアイ18にフックHを取付けて構成されている。
更に具体的には、釣り用ルアー1は
図1に示すように、その構成部材として樹脂製のルアーボディ10を具えるものであり、このものは多くは
図1(b)に示すように、正面視で左右に分割されたボディ要素10a、ボディ要素10bをいわゆる最中合わせ状に組合わせて構成されるものである。
【0028】
またこの実施例で示すルアーボディ10の頭部には、ラインアイ19が設けられるとともに、リップ11が下方前方に斜めに向かうように、前下がり状に張り出すように形成されている。なお釣り用ルアー1の仕様によっては、リップ11が形成されていないルアーボディ10の形態を採るようにしてもよい。
ここで前方乃至は後方とは、魚体を模したルアーボディ10の頭部側を前方、尾部側を後方とする。
【0029】
更にルアーボディ10の内部には、空洞状の移動空間12が形成されるものであり、この移動空間12内をウェイト13がルアーボディ10の長手方向に添って移動できるように構成されている。
そしてこの移動空間12の前方側、一例としてルアーボディ10の胸鰭乃至腹鰭に相当する部位の内部には、前方移動したウェイト13を緩保持できる保持機構Kが具えられる。この保持機構Kは、磁石片15と、この磁石片15の後方に磁着した状態で配置され、その内側をウェイト収納部16Hとする筒状のスペーサ16と、このスペーサ16の後方端部側に形成される開放端16Eを封鎖するための、ワッシャー乃至はプレート状の封鎖片17とを具えて構成されている。
【0030】
また
図1、
図4に示す実施例では、前記移動空間12内にガイド芯線12Aが長手方向に添うに設けられ、ウェイト13の芯部に設けられたウェイト芯孔13A及び封鎖片17の中心部に形成された封鎖片芯孔17Aが、ガイド芯線12Aに貫かれるように支持され、このガイド芯線12Aを案内として、ウェイト13及び封鎖片17が滑走自在に移動できるように構成されている。
勿論ウェイト13及び封鎖片17の移動にあたっては、必ずしもガイド芯線12Aとウェイト芯孔13Aとの組み合わせ構造に限定されるものではなく、
図7に示すように単なるトンネル状の移動空間12としても元より差し支えない。
【0031】
なおガイド芯線12Aもしくは移動空間12の後端部には、適宜のゴム素材等の弾性体から成るクッションCが具えられる。
またルアーボディ10への保持機構K、ガイド芯線12A及びクッションCの組み付けは、一例として移動空間12にリブを設け、このリブによってこれらの部材の位置決めと保持を行うようにした。
【0032】
またこの実施例では、前記磁石片15を、一例として軟磁性素材で形成された遮蔽キャップ14に内包させることにより、いわゆるキャップ磁石を構成するようにした。この遮蔽キャップ14の形状は
図2に示すように、磁石片15の前方側と周胴部とを覆い、後方側を開放した状態とするものであり、その内側に磁石片15の前方側を磁着させて内包状態とするものである。そしてこの状態で
図2(b)に示すように、遮蔽キャップ14の内周部と、磁石片15の外周部との間に僅かな間隙Pが形成されるように寸法設定される。そしてこのような構成が採られることにより、
図2(c)に示すように、露出した磁石片15の後端面と、遮蔽キャップ14の後端面との間の狭い範囲に、磁力線(N極からS極に向かう)が集中するため、
図2(d)に示すように単体時の磁石片15と比べて3~4倍の吸着力が得られるものである。なお磁石片15の中心部には磁石片芯孔15Aが形成されるものとした。
【0033】
ここで本発明の釣り用ルアー1の主要部材の素材について説明する。
まず前記磁石片15としては、一例として、フェライト磁石の10倍以上の磁力を持つ希土類磁石が適用されるものであり、特に比較的安価で磁力が強いネオジム磁石が採用される。なお、価格面等での制限が無ければ、ネオジム磁石の次に強い磁力のサマリウムコバルト磁石等、他の希土類磁石を採用してもよい。
また前記遮蔽キャップ14、スペーサ16及び封鎖片17は、保磁力が小さく透磁率の値が大きい軟磁性体を素材として形成されるものであり、一例として鉄や、主成分を鉄とする合金(ケイ素鋼、パーマロイ、センダスト、パーメンジュール等)が採用される。
【0034】
更に前記ウェイト13は、一定のおもり効果が得られる高比重金属の一例として、非磁性体であるタングステンが採用される。
なお前記ウェイト13の素材としては、タングステンを主成分とし、ニッケル、銅、鉄等をバインダとした、タングステン基焼結合金等を用いることもできる。
【0035】
そしてこれら部材をこのような素材により構成することにより、磁石片15によって励磁されたスペーサ16における開放端16Eに、封鎖片17が磁着されてここを封鎖するものであり、ウェイト13は、ウェイト収納部16Hに収容された状態で保持機構Kに緩保持されることとなる。
なおここで「緩保持」と表現したのは、詳しくは後述するが、キャスト時には保持機構Kによるウェイト13の保持を解き、ウェイト13を移動空間12内の後方寄り(尾部寄り)に位置させるための操作を、僅かなロッドアクションで、あるいは一連のキャスティング動作の中で行うことができるように、強固な保持状態とすることなく、緩やかな保持状態が採られるためである。
【0036】
ところで、このような保持機構Kによるウェイト13の緩保持状態を発現させるためには、前記磁石片15によって励磁されるスペーサ16の開放端16Eによる封鎖片17の磁着力を適切なものとすることが要求される。
そこで本発明では、スペーサ16の開放端16Eにおける磁力を、スペーサ16の長さ寸法または開放端16Eの面積の何れか一方または双方を調節することにより、封鎖片17を緩保持状態で磁着するのに好適な磁力となるように設定するようにした。
【0037】
具体的には一例として
図5に示すように、スペーサ16の形状を、円筒状とし、その一端の開放端16Eに切り欠き16Sを形成することにより、開放端16Eの面積を調節するものである。そして一例として
図5(b)に示すように、背面視における中心部から角度θの範囲に亘って、対向する一対の切り欠き16Sを形成するものであり、θの値をこれよりも大きく設定すると開放端16Eの面積は減少し、θの値をこれよりも小さく設定すると開放端16Eの面積は増大し、やがてθ=0に設定されたときには、
図6(a)に示すように切り欠き16Sは無くなり、開放端16Eの面積は最大となる。
そしてこのよう開放端16Eの面積を調節することにより、磁石片15によって励磁されるスペーサ16の開放端16Eにおける磁力を、この面積に比例して設定することができるものである。
【0038】
なお
図5(a)、(b)では、切り欠き16Sを二カ所に形成するようにしたが、
図5(c)に示すように三カ所以上に切り欠き16Sを形成してもよい。このとき開放端16Eには封鎖片17が磁着されるため、切り欠き16S同士の間隔は均等にするのが好ましい。
【0039】
また、開放端16Eにおける磁力の調整は、磁石片15から開放端16Eまでの距離L16、すなわちスペーサ16の長さ寸法を調節することにより、その寸法に反比例して設定することもできる。
【0040】
更にまた、開放端16Eにおける磁力の調整は、遮蔽キャップ14の内周部と、磁石片15の外周部との間に形成される間隙Pの寸法を調節することにより、その寸法に反比例して設定することもできる。
【0041】
またスペーサ16の改変例としては、
図6(b)に示すように円筒状のスペーサ16の側周部にスリットを形成した形態を採ることもできる。
更にまた
図6(c)に示すように、スペーサ16をコイル状のものとし、巻き線の内側をウェイト収納部16Hとするような形態を採ることもできる。
【0042】
本発明の釣り用ルアー1は以上述べたような構成を有するものであり、ラインLの先端に結び付けられたスイベルSをラインアイ19に係止して用いられるものであり、次のように作用してキャスティング時あるいはリトリービング時のそれぞれに適した重心Gの位置を得ることができる。
【0043】
まずアングラーがキャスティング動作に入る前の段階においては、ウェイト13が
図3(a)に示すように移動空間12の後端に位置した状態、あるいは
図3(d)に示すように中心寄りの保持機構Kに緩保持されている状態いずれの状態であっても構わない。
そしてウェイト13が保持機構Kに緩保持されている状態であっても、続くキャスティング動作による遠心作用により、あるいはラインアイ19側を上にしてラインLによって宙吊り状態の釣り用ルアー1に僅かなロッドアクションにより振動を与えることにより、ウェイト13が封鎖片17を押し下げるようにして、スペーサ16による封鎖片17の磁着が解除され、ウェイト13が移動空間12の後端に位置した状態が得られる。
【0044】
このようにしてキャストされた釣り用ルアー1は、
図4(a)に示すように、尾部側を進行方向に向けながら飛翔するものであり、この際、重心Gが尾部側に位置しているため、飛翔姿勢が安定し、所望の十分な飛翔距離が得られることとなる。
【0045】
やがて釣り用ルアー1は
図4(b)に示すように着水することとなるが、このとき重心Gが尾部側に位置しているため、尾部側を水中に没した状態で浮かぶこととなる。もちろん仕様によっては浮かぶことなく、ゆっくりと水中に没入するものもあるが、いずれにせよこの時点での釣り用ルアー1は尾部側を下方に向けた状態となっている、
【0046】
次いでアングラーはリトリービング動作を開始するものであり、リールを巻くことによりラインLが巻かれ、釣り用ルアー1は引き寄せられる。このとき
図4(c)に示すように、リップ11の作用により釣り用ルアー1は前下がり状態の姿勢を取るようになる。その結果、尾部側に位置していたウェイト13は、
図3(b)に示すようにスペーサ16に向けて移動してゆき、続いて
図3(c)に示すようにウェイト収納部16Hに進入する。
【0047】
やがて
図4(d)、
図3(d)に示すように、磁石片15に励磁されたスペーサ16における開放端16Eは、ここに封鎖片17が磁着されることにより封鎖される。
この結果、ウェイト13は、ウェイト収納部16Hに収容された状態で、保持機構Kに緩保持されることとなるものであり、このとき釣り用ルアー1の重心Gが、ルアーボディ10の長手方向中央から頭部寄りの部位に位置しているため、幾分か前下がり状態の姿勢を維持することとなる。
【0048】
その後、アングラ―はリトリーブと併せてトゥイッチ、ジャーク等のロッドアクションを加えるものであり、釣り用ルアー1は急激な方向転換や速度変化を繰り返すこととなるが、ウェイト13の保持機構Kへの緩保持状態が維持され、重心Gの位置も保たれる。
因みに想定外の速度変化が生じる等して、保持機構Kによるウェイト13の緩保持状態が解除されてしまったとしても、アングラ―のロッドアクションに伴うリップ11の作用により、釣り用ルアー1は潜行して前下がり状態の姿勢を取るため、すぐに保持機構Kによるウェイト13の緩保持状態が回復されることとなる。
【0049】
なお前記保持機構Kは、露出した磁石片15の後端面と、遮蔽キャップ14の後端面との間の狭い範囲に磁力線(N極からS極に向かう)が集中しているため、このものがルアーボディ10における移動空間12内に設置された状態では、磁力線がルアーボディ10外に及ばないため、フックHがルアーボディ10を介して保持機構Kに磁着してしまうような事態を回避することができ、より良い釣果が期待されるものである。