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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140172
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】紙ラミネートチューブ
(51)【国際特許分類】
   B65D 35/10 20060101AFI20241003BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B65D35/10 Z
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051190
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西 彩子
(72)【発明者】
【氏名】岩田 賢
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛史
【テーマコード(参考)】
3E065
3E086
【Fターム(参考)】
3E065AA02
3E065BA16
3E065BA18
3E065CA20
3E065DA11
3E065FA06
3E086AB03
3E086AD03
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BB01
3E086BB21
3E086BB51
(57)【要約】
【課題】シート部材の屈曲に対する耐性を改善可能な紙ラミネートチューブを提供する。
【解決手段】紙ラミネートチューブ(100)は、胴部(10)を備えている。胴部は、第1面(20a)と第1面の反対面である第2面(20b)とを有するとともに第1面が内側を向くように筒状に曲げられているシート部材(20)で構成されている。シート部材は、紙基材(21)と、フィルム部材(24)と、紙基材及びフィルム部材の間に配置されている樹脂層(25)とを有する。紙基材は、未塗工紙製である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部を備え、
前記胴部は、第1面と前記第1面の反対面である第2面とを有するとともに前記第1面が内側を向くように筒状に曲げられているシート部材で構成されており、
前記シート部材は、紙基材と、フィルム部材と、前記紙基材及び前記フィルム部材の間に配置されている樹脂層とを有し、
前記紙基材は、未塗工紙製である、紙ラミネートチューブ。
【請求項2】
前記樹脂層は、前記紙基材の表面から3μm以上の深さまで含浸されている、請求項1に記載の紙ラミネートチューブ。
【請求項3】
前記未塗工紙の白色度は、70パーセント以下である、請求項1に記載の紙ラミネートチューブ。
【請求項4】
前記樹脂層の構成材料は、融点が300℃以下の樹脂材料である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の紙ラミネートチューブ。
【請求項5】
前記樹脂層の構成材料は、MFRが3g/10分以上の樹脂材料である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の紙ラミネートチューブ。
【請求項6】
前記紙基材の表面における10点平均粗さは、10μm以上60μm以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の紙ラミネートチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、紙ラミネートチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2021-104851号公報(特許文献1)には、チューブ容器が記載されている。特許文献1に記載のチューブ容器は、胴部を有している。胴部は、筒状に曲げられているシート部材で構成されている。シート部材は、紙基材と、バリア層と、接着層とを有している。接着層が紙基材とバリア層との間に配置されていることにより、バリア層が紙基材に接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-104851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紙ラミネートチューブでは、紙基材の剛性により、シート部材のコシが強くなってしまい、使用感が悪化することがある。これを回避するために、紙ラミネートチューブでは、樹脂材料の使用量が削減される。そのため、紙ラミネートチューブでは、シート部材が屈曲に対して弱くなってしまうことがある。シート部材の屈曲に対する耐性を高めるためには、接着層の紙基材への浸透が重要である。特許文献1に記載の紙ラミネートチューブでは、接着層の紙基材への浸透が不十分である。本開示は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本開示は、シート部材の屈曲に対する耐性を改善可能な紙ラミネートチューブを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の紙ラミネートチューブは、胴部を備えている。胴部は、第1面と第1面の反対面である第2面とを有するとともに第1面が内側を向くように筒状に曲げられているシート部材で構成されている。シート部材は、紙基材と、フィルム部材と、紙基材及びフィルム部材の間に配置されている樹脂層とを有する。紙基材は、未塗工紙製である。
【0006】
上記の紙ラミネートチューブでは、樹脂層が、紙基材の表面から3μm以上の深さまで含浸されていてもよい。上記の紙ラミネートチューブでは、未塗工紙の白色度が、70パーセント以下であってもよい。
【0007】
上記の紙ラミネートチューブでは、樹脂層の構成材料が、融点が300℃以下の樹脂材料であってもよい。上記の紙ラミネートチューブでは、樹脂層の構成材料が、MFRが3g/10分以上の樹脂材料であってもよい。
【0008】
上記の紙ラミネートチューブでは、紙基材の表面における10点平均粗さが、10μm以上60μm以下であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の紙ラミネートチューブによると、シート部材の屈曲に対する耐性を改善可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】紙ラミネートチューブ100の正面図である。
図2】紙ラミネートチューブ100の平面図である。
図3図1のIII-IIIにおける模式的な断面図である。
図4図2のIV-IVにおける模式的な断面図である。
図5】紙ラミネートチューブ100が有するシート部材20の平面図である。
図6図5のVI-VIにおける断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。実施形態に係る紙ラミネートチューブを、紙ラミネートチューブ100とする。
【0012】
(紙ラミネートチューブ100の構成)
以下に、紙ラミネートチューブ100の構成を説明する。
【0013】
図1は、紙ラミネートチューブ100の正面図である。図2は、紙ラミネートチューブ100の平面図である。図3は、図1のIII-IIIにおける模式的な断面図である。図4は、図2のIV-IVにおける模式的な断面図である。図1から図4に示されるように、紙ラミネートチューブ100は、胴部10と、スパウト30と、キャップ40とを有している。
【0014】
胴部10は、シート部材20を筒状に曲げることにより構成されている。図5は、紙ラミネートチューブ100が有するシート部材20の平面図である。図6は、図5のVI-VIにおける断面図である。図5及び図6に示されるように、シート部材20は、シート状である。シート部材20は、第1面20aと、第2面20bとを有している。第1面20a及び第2面20bは、シート部材20の厚さ方向における端面である。第1面20aは、筒状に曲げられた状態で、胴部10の内側を向いている。第2面20bは、第1面20aの反対面である。すなわち、第2面20bは、筒状に曲げられた状態で、胴部10の外側を向いている。
【0015】
シート部材20は、紙基材21と、シーラント層22及びシーラント層23と、フィルム部材24と、樹脂層25とを有している。紙基材21は、未塗工紙で構成されている。紙基材21は、第1面21aと、第2面21bとを有している。第1面21a及び第2面21bは、紙基材21の厚さ方向における端面である。第2面21bは、第1面21aの反対面である。未塗工紙は、第1面21a及び第2面21bに繊維が浮き出ており、第1面21a及び第2面21bに天然鉱物が塗工されていない紙である。
【0016】
紙基材21の白色度は、好ましくは、70以下である。紙の白色度は、JIS規格(JIS P 8148)に定められている方法にしたがって測定される。紙基材21の表面(第1面21a、第2面21b)における10点平均粗さ(RzJIS)は、10μm以上60μm以下であることが好ましい。紙基材21の表面における10点平均粗さは、JIS規格(JIS B 0601)に定められている方法にしたがって測定される。
【0017】
シーラント層22は、第1面20aを構成している。シーラント層23は、第2面20bを構成している。シーラント層23は、第2面21b上に配置されている。シーラント層22及びシーラント層23の構成材料は、樹脂材料である。シーラント層22及びシーラント層23の構成材料は、例えばポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)である。シーラント層22の構成材料は、シーラント層23の構成材料と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0018】
フィルム部材24は、紙基材21と第1面20a(シーラント層22)との間に配置されている。フィルム部材24は、好ましくは、樹脂材料製である。フィルム部材24は、好ましくはバリアフィルムである。なお、フィルム部材24の表面に無機材料が蒸着されている場合でも、フィルム部材24は、樹脂材料製であると見做される。フィルム部材24は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)を基材とし、当該基材上に無機材料がコーティングされている透明バリアフィルムである。
【0019】
樹脂層25は、紙基材21とフィルム部材24との間に挟み込まれている。フィルム部材24は、これにより、第1面21aに接着されている。フィルム部材24は、溶融された樹脂層25の構成材料を第1面21a上に供給した状態で貼付される。すなわち、フィルム部材24は、紙基材21に押し出しラミネートされる。樹脂層25の構成材料は、例えばポリエチレンである。但し、樹脂層25の構成材料はこれに限られるものではない。樹脂層25は、第1面21aに含浸されている。樹脂層25は、第1面21aから3μm以上の深さまで含浸されていることが好ましく、第1面21aから5μm以上の深さまで含浸されていることがさらに好ましく、第1面21aから10μm以上の深さまで含浸されていることが特に好ましい。
【0020】
樹脂層25を構成している樹脂材料の融点は、300℃以下であることが好ましい。樹脂層25を構成している樹脂材料の融点は、250℃以下又は200℃以下であってもよい。樹脂層25を構成している樹脂材料の融点は、例えば100℃以上である。樹脂層25を構成している樹脂材料の融点は、JIS規格(JIS K 7123)に定められているように、DSC(Differential Scanning Calorimetry)により測定される。
【0021】
樹脂層25を構成している樹脂材料のMFR(Melt Flow Rate)は、好ましくは3cg/10分以上である。樹脂層25を構成している樹脂材料のMFRは、さらに好ましくは40g/10分以下である。樹脂層25を構成している樹脂材料のMFRは、JIS規格(JIS K 7210)に定められている試験方法にしたがって測定される。
【0022】
平面視において、第1方向DR1は、シート部材20が曲げられた際の胴部10の長手方向に対応している。第2方向DR2は、平面視において第1方向DR1に直交している方向である。シート部材20は、第2方向DR2において、第1端部20cと、第2端部20dとを有している。第2端部20dは、第1端部20cの反対側の端部である。シート部材20は、第1面20aが胴部10の内側を向くように筒状に曲げられた上で第1端部20c及び第2端部20dが互いに接着されることにより、胴部10が構成される。
【0023】
第1端部20c及び第2端部20dの接着は、例えば、第1端部20c及び第2端部20dが重ね合わされた状態で加圧されながら加熱されることにより行われる。但し、第1端部20c及び第2端部20dの接着方法は、これに限られるものではない。第1端部20c及び第2端部20dは、互いに突き合せられた上で、第1端部20c及び第2端部20dに跨がるように第1面20a上に接着テープが貼付されるとともに、第1端部20c及び第2端部20dに跨るように第2面20b上に接着テープが貼付されてもよい。
【0024】
胴部10は、胴部10の長手方向における一方端部において、開口部10aを有している。胴部10は、胴部10の長手方向における他方端部において、閉塞されている。スパウト30は、開口部10aを閉塞するように胴部10の長手方向における一方端部に取り付けられている。スパウト30の取り付けは、溶着により行われている。スパウト30の構成材料は、樹脂材料である。
【0025】
スパウト30は、突出部31を有している。突出部31の外周面には、ねじ溝(図示せず)が形成されている。突出部31のねじ溝がキャップ40に形成されているねじ溝(図示せず)と螺合されることにより、キャップ40がスパウト30に着脱可能に取り付けられる。突出部31には、開口部31aが形成されている。開口部31aは、胴部10の内部に連通している。そのため、胴部10を圧迫することにより、開口部31aから胴部10の内部に充填されている内容物が吐出される。
【0026】
(紙ラミネートチューブ100の効果)
以下に、紙ラミネートチューブ100の効果を、比較例に係る紙ラミネートチューブと対比しながら説明する。比較例に係る紙ラミネートチューブの構成は、紙基材21が塗工紙で構成されている点を除いて、紙ラミネートチューブ100の構成と共通している。
【0027】
比較例に係る紙ラミネートチューブでも、樹脂層25により、フィルム部材24が紙基材21(第1面21a)に接着されている。しかしながら、比較例に係る紙ラミネートチューブでは、紙基材21が塗工紙で構成されており、塗工紙の表面には天然鉱物が塗工されているため、樹脂層25が第1面21aに含浸されにくい。その結果、比較例に係る紙ラミネートチューブでは、シート部材20の屈曲に対する耐性が不十分となるおそれがある。
【0028】
他方で、紙ラミネートチューブ100では、紙基材21が未塗工紙で構成されているため、樹脂層25が第1面21aに含浸されやすい。そのため、紙ラミネートチューブ100では、紙基材21が未塗工紙で構成されていることにより、シート部材20の屈曲に対する耐性が改善されることになる。
【0029】
紙ラミネートチューブ100では、樹脂層25が第1面21aから3μm以上の深さまで含浸されていることにより、シート部材20の屈曲に対する耐性がさらに改善されることになる。
【0030】
樹脂層25を構成している樹脂材料の融点が低くなるほど、樹脂層25が第1面21aに含浸されやすくなる。また、樹脂層25を構成している樹脂材料のMFRが大きくなるほど、樹脂層25が第1面21aに含浸されやすくなる。そのため、樹脂層25を構成している樹脂材料の融点が300℃以下である場合及び/又は樹脂層25を構成している樹脂材料のMFRが3g/10分以上である場合には、樹脂層25を構成している樹脂材料が第1面21aにさらに含浸されやすくなり、シート部材20の屈曲に対する耐性がさらに改善されることになる。
【0031】
<屈曲試験>
屈曲試験を行うために、シート部材20のサンプルとして、サンプル1からサンプル3が準備された。サンプル1からサンプル3では、紙基材21の白色度及び表面における10点平均粗さが変化された。また、サンプル1からサンプル3では、紙基材21の表面における算術平均高さ(Ra)及び最大高さ(Rz)も変化された。サンプル1及びサンプル2では紙基材21が未塗工紙であるが、サンプル3では紙基材21が塗工紙であった。
【0032】
屈曲試験では、各サンプルの原反耐折破強度が測定される。屈曲試験は、第1に、各サンプルから15mm幅の試験片が切り出される。第2に、切り出された試験片が、そのMD(Machine Direction)方向(すなわち、抄紙機の進行方向)に10Nの引張荷重で270°屈曲される。この屈曲は、繰り返し行われる。この屈曲を試験片の破断前に300回以上繰り返すことができた場合、原反耐折破断強度が「A」と評価される。この屈曲を試験片の破断前に200回以上300回未満繰り返すことができた場合、原反耐折破断強度が「B」と評価される。この屈曲が100回繰り返される前に試験片が破断した場合、原反耐折破断強度が「C」と評価される。各サンプルの詳細及び屈曲試験の結果は、表1に示されている。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示されているように、サンプル1及びサンプル2では、原反耐折破断強度の評価がB以上であった。サンプル3では、原反耐折破断強度の評価がCであった。サンプル1及びサンプル2では、樹脂層25の浸透深さが3μm以上であった。サンプル3では、樹脂層25の浸透深さが3μm未満であった。このことから、紙基材21を未塗工紙とすることにより、樹脂層25が紙基材21に浸透しやすくなり、シート部材20の原反耐折破断強度が高まる(シート部材20の屈曲に対する耐性が改善される)ことが分かる。
【0035】
また、サンプル2は、サンプル1よりも原反耐折破断強度の評価が高かった。サンプル2では紙基材21の白色度が70以下であった一方で、サンプル1では紙基材21の白色度が70超であった。また、サンプル2では紙基材21の表面における10点平均粗さが10μm以上60μm以下であった一方、サンプル1では紙基材21の表面における10点平均粗さが10μm以上60μm以下の範囲内になかった。この比較から、紙基材21の白色度を70以下とする又は紙基材21の表面における10点平均粗さを10μm以上60μm以下とすることにより、シート部材20の原反耐折破断強度がさらに高まる(シート部材20の屈曲に対する耐性がさらに改善される)ことが分かる。
【0036】
以上のように本開示の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0037】
100 紙ラミネートチューブ、10 胴部、10a 開口部、20 シート部材、20a 第1面、20b 第2面、20c 第1端部、20d 第2端部、21 紙基材、21a 第1面、21b 第2面、22,23 シーラント層、24 フィルム部材、25 樹脂層、30 スパウト、31 突出部、31a 開口部、40 キャップ、DR1 第1方向、DR2 第2方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6