(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014020
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】熱式流量計および熱式流量計の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01F 1/684 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
G01F1/684 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116556
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】591257111
【氏名又は名称】サーパス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】今井 弘
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035EA05
(57)【要約】
【課題】アルカリ性液体に対する耐腐食性を高めつつ、計測流路と流入流路と流出流路とを流路部材に容易に形成する。
【解決手段】樹脂製の流路部材11と、流路部材11とともに液体の流量を計測するための計測流路を形成する板状部材と、板状部材に熱を伝達する加熱用抵抗体と、板状部材の温度を検出する温度検出用抵抗体と、を有するセンサ部と、を備え、流路部材11は、第1溝部11c1が形成された平坦面11cと、第1溝部11c1の軸線X2に沿った軸線方向の一端に接続される断面視が円形の流入流路11hと、第1溝部11c1の軸線方向の他端に接続される断面視が円形の流出流路11iと、を有し、流入流路11hの平坦面11cに開口する位置の内径および流出流路11iの平坦面11cに開口する位置の内径が第1溝部11c1の幅W1よりも大きい熱式流量計を提供する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口から流入する液体を流出口から流出させる樹脂製の流路部材と、
前記流路部材に取り付けられるとともに前記流路部材とともに液体の流量を計測するための計測流路を形成する板状部材と、
前記板状部材に熱を伝達する加熱用抵抗体と、前記計測流路を流通する前記液体の熱が伝達される前記板状部材の温度を検出する温度検出用抵抗体と、を有するセンサ部と、を備え、
前記流路部材は、
所定幅を有するとともに軸線に沿って直線状に延びる第1溝部が形成された平坦面と、
前記第1溝部の前記軸線に沿った軸線方向の一端に接続されるとともに前記流入口から流入する液体が導かれる断面視が円形の流入流路と、
前記第1溝部の前記軸線方向の他端に接続されるとともに前記流出口へ液体を導く断面視が円形の流出流路と、を有し、
前記流入流路の前記平坦面に開口する位置の第1内径および前記流出流路の前記平坦面に開口する位置の第2内径が前記第1溝部の幅よりも大きい熱式流量計。
【請求項2】
前記第1内径および前記第2内径は、前記第1溝部の幅の1.5倍以上である請求項1に記載の熱式流量計。
【請求項3】
前記第1溝部の幅は、0.2mm以上かつ1mm以下である請求項1または請求項2に記載の熱式流量計。
【請求項4】
前記板状部材はサファイアまたはガラス状炭素により形成されている請求項1または請求項2に記載の熱式流量計。
【請求項5】
前記センサ部は、前記板状部材に蒸着されている請求項1または請求項2に記載の熱式流量計。
【請求項6】
前記平坦面には、前記第1溝部を取り囲むように環状に延びる第2溝部が形成されており、
前記第2溝部に挿入されるとともに前記板状部材と接触して前記第1溝部を取り囲む環状のシール領域を形成する環状シール部材を備える請求項1または請求項2に記載の熱式流量計。
【請求項7】
前記センサ部は、前記軸線方向において前記流入流路よりも前記流出流路に近接した位置に配置されている請求項1または請求項2に記載の熱式流量計。
【請求項8】
熱式流量計の製造方法であって、
前記熱式流量計は、
流入口から流入する液体を流出口から流出させる樹脂製の流路部材と、
前記流路部材に取り付けられるとともに前記流路部材とともに液体の流量を計測するための計測流路を形成する板状部材と、
前記板状部材に熱を伝達する加熱用抵抗体と、前記計測流路を流通する前記液体の熱が伝達される前記板状部材の温度を検出する温度検出用抵抗体と、を有するセンサ部と、を備え、
前記流路部材の平坦面を切削し、所定幅を有するとともに軸線に沿って直線状に延びる第1溝部を形成する工程と、
前記流路部材を切削し、前記第1溝部の前記軸線に沿った軸線方向の一端に接続されるとともに前記流入口から流入する液体が導かれる断面視が円形の流入流路を形成する工程と、
前記流路部材を切削し、前記第1溝部の前記軸線方向の他端に接続されるとともに前記流出口へ液体を導く断面視が円形の流出流路を形成する工程と、
前記第1溝部と前記流入流路と前記流出流路とが形成された前記流路部材の前記平坦面に前記板状部材を取り付けて前記計測流路を形成する工程と、を備え、
前記流入流路の前記平坦面に開口する位置の第1内径および前記流出流路の前記平坦面に開口する位置の第2内径が前記第1溝部の幅よりも大きい熱式流量計の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱式流量計および熱式流量計の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流路を流れる液体の温度を制御し、温度制御部分の上流側および下流側の液体の温度差に基づいて流量を測定する熱式流量計が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、ガラス基板に長方形の溝部を形成し、ガラス基板の溝部が形成された側に伝熱手段と温度検出手段が形成された他のガラス基板を貼り合わせることにより、接液部分が全てガラスで構成された流路を形成した熱式流量計が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示される熱式流量計は、伝熱手段からガラス基板を介して被測定液体に熱を伝達し、伝熱手段の上流側と下流側に配置された温度検出手段により被測定液体の温度を検出して被測定液体の流量を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接液部分が全てガラスで構成された流路は、ガラスの主成分である二酸化ケイ素とアルカリ性液体とが中和反応するため、アルカリ性液体に対する耐腐食性が低いという欠点がある。そのため、アルカリ性液体の流量を計測するには、アルカリ性液体に対する耐腐食性が高い樹脂材料により形成された流路を用いるのが好ましい。例えば、特許文献1に示す溝部が形成されたガラス基板に換えて、流量計測用の溝部が形成された樹脂製の流路部材を用いるのが好ましい。
【0006】
樹脂製の流路部材に形成された溝部に液体を導くため、溝部の一端に接続されるように、流入口から液体が導かれる流入流路が流路部材に形成される。また、溝部の他端に接続されるように、流出口に液体を導く流出流路が流路部材に形成される。そして、樹脂製の流路部材に形成された直線状の流路を用いて微少流量(例えば、0.01mL/min以上かつ30mL/min以下)を測定する場合、樹脂製の流路部材に形成する溝部の幅を狭く(例えば、0.2mm以上かつ1mm以下)するのが好ましい。
【0007】
しかしながら、流量計測用の溝部の幅を狭くする場合、例えば、溝部の一端に接続されるように流路部材に溝部の幅と同じ直径の流入流路を切削加工により形成し、溝部の他端に接続されるように流路部材に溝部の幅と同じ直径の流出流路を切削加工により形成するためには、溝部の中心に対して流入流路および流出流路の中心を一致させる高い加工精度が必要となる。
【0008】
高い加工精度を実現できない場合、溝部の一端に流入流路が適切に接続されず、あるいは溝部の他端に流出流路が適切に接続されない可能性がある。例えば、流入流路と溝部の一端との接続部分、あるいは溝部の他端と流出流路との接続部分が、溝部の幅に比べて過度に狭くなったり段差が生じたりする可能性がある。この場合、圧力損失や液体の流れに乱れが生じ、流量計測の精度が低下してしまう。
【0009】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、アルカリ性液体や酸性液体等の腐食性液体に対する耐腐食性を高めつつ、計測流路と計測流路の一端に接続される流入流路と、計測流路の他端に接続される流出流路とを流路部材に容易に形成し、高精度の流量計測をすることが可能な熱式流量計および熱式流量計の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明の一態様に係る熱式流量計は、流入口から流入する液体を流出口から流出させる樹脂製の流路部材と、前記流路部材に取り付けられるとともに前記流路部材とともに液体の流量を計測するための計測流路を形成する板状部材と、前記板状部材に熱を伝達する加熱用抵抗体と、前記計測流路を流通する前記液体の熱が伝達される前記板状部材の温度を検出する温度検出用抵抗体と、を有するセンサ部と、を備え、前記流路部材は、所定幅を有するとともに軸線に沿って直線状に延びる第1溝部が形成された平坦面と、前記第1溝部の前記軸線に沿った軸線方向の一端に接続されるとともに前記流入口から流入する液体が導かれる断面視が円形の流入流路と、前記第1溝部の前記軸線方向の他端に接続されるとともに前記流出口へ液体を導く断面視が円形の流出流路と、を有し、前記流入流路の前記平坦面に開口する位置の第1内径および前記流出流路の前記平坦面に開口する位置の第2内径が前記第1溝部の幅よりも大きい。
【0011】
本発明の一態様に係る熱式流量計によれば、液体の流量を計測するための計測流路となる第1溝部が形成された流路部材が樹脂製であるため、腐食性液体に対する耐腐食性を高めることができる。また、第1溝部が形成された流路部材の平坦面に板状部材を取り付け、センサ部の加熱用抵抗体から板状部材を介して液体に伝達された熱を温度検出用抵抗体が検出する板状部材の温度として検出することで、液体の流量を計測することができる。
【0012】
また、流入流路の平坦面に開口する位置の第1内径および流出流路の平坦面に開口する位置の第2内径が第1溝部の幅よりも大きいため、第1溝部の中心に対して流入流路および流出流路の中心がわずかにずれたとしても、第1溝部の一端に流入流路が適切に接続され、あるいは第1溝部の他端に流出流路が適切に接続される。したがって、第1溝部と、流入流路と、流出流路とを、流路部材に容易に形成し、高精度の流量計測をすることができる。
【0013】
本発明の一態様に係る熱式流量計において、前記第1内径および前記第2内径は、前記第1溝部の幅の1.5倍以上である構成とするのが好ましい。
本構成の熱式流量計によれば、第1内径および第2内径を第1溝部の幅の1.5倍以上とすることで、第1溝部の中心に対して流入流路および流出流路の中心がわずかにずれたとしても、第1溝部の一端に流入流路が適切に接続され、第1溝部の他端に流出流路が確実に接続されるようにすることができる。
【0014】
本発明の一態様に係る熱式流量計において、前記第1溝部の幅は、0.2mm以上かつ1mm以下である構成とするのが好ましい。
本構成の熱式流量計によれば、第1溝部の幅を0.2mm以上かつ1mm以下とすることにより、計測流路の流路断面積を小さくして加熱用抵抗体により液体が加熱されやすいようにし、液体の流量の計測精度を高めることができる。
【0015】
本発明の一態様に係る熱式流量計において、前記板状部材はサファイアまたはガラス状炭素により形成されている構成とするのが好ましい。
本構成の熱式流量計によれば、板状部材がサファイアまたはガラス状炭素により形成されているため、アルカリ性液体や強酸(フッ酸、硫酸等)等の腐食性液体に対して十分な耐腐食性を発揮することができる。
【0016】
本発明の一態様に係る熱式流量計において、前記センサ部は、前記板状部材に蒸着されている構成とするのが好ましい。
本構成の熱式流量計によれば、センサ部が板状部材に蒸着されているため、加熱用抵抗体により板状部材を直接的に加熱することができ、温度検出用抵抗体により板状部材の温度を直接的に検出することができる。
【0017】
本発明の一態様に係る熱式流量計において、前記平坦面には、前記第1溝部を取り囲むように環状に延びる第2溝部が形成されており、前記第2溝部に挿入されるとともに前記板状部材と接触して前記第1溝部を取り囲む環状のシール領域を形成する環状シール部材を備える構成とするのが好ましい。
本構成の熱式流量計によれば、平坦面に形成される第2溝部に環状シール部材が挿入され、環状シール部材が第1溝部を取り囲む環状のシール領域を形成するため、計測流路を流通する液体がシール領域の外部に漏出することを確実に防止することができる。
【0018】
本発明の一態様に係る熱式流量計において、前記センサ部は、前記軸線方向において前記流入流路よりも前記流出流路に近接した位置に配置されている構成とするのが好ましい。
本構成の熱式流量計によれば、流入流路よりも流出流路に近接した位置にセンサ部を配置することで、流入流路から第1溝部に流入した液体の乱流等が十分に減少して速度が安定した状態で、センサ部の計測位置に液体が到達するようにすることができる。
【0019】
本発明の一態様に係る熱式流量計の製造方法において、前記熱式流量計は、流入口から流入する液体を流出口から流出させる樹脂製の流路部材と、前記流路部材に取り付けられるとともに前記流路部材とともに液体の流量を計測するための計測流路を形成する板状部材と、前記板状部材に熱を伝達する加熱用抵抗体と、前記計測流路を流通する前記液体の熱が伝達される前記板状部材の温度を検出する温度検出用抵抗体と、を有するセンサ部と、を備え、前記流路部材の平坦面を切削し、所定幅を有するとともに軸線に沿って直線状に延びる第1溝部を形成する工程と、前記流路部材を切削し、前記第1溝部の前記軸線に沿った軸線方向の一端に接続されるとともに前記流入口から流入する液体が導かれる断面視が円形の流入流路を形成する工程と、前記流路部材を切削し、前記第1溝部の前記軸線方向の他端に接続されるとともに前記流出口へ液体を導く断面視が円形の流出流路を形成する工程と、前記第1溝部と前記流入流路と前記流出流路とが形成された前記流路部材の前記平坦面に前記板状部材を取り付けて前記計測流路を形成する工程と、を備え、前記流入流路の前記平坦面に開口する位置の第1内径および前記流出流路の前記平坦面に開口する位置の第2内径が前記第1溝部の幅よりも大きい。
【0020】
本発明の一態様に係る熱式流量計の製造方法によれば、液体の流量を計測するための計測流路となる第1溝部が形成された流路部材が樹脂製であるため、アルカリ性液体に対する耐腐食性を高めることができる。また、第1溝部が形成された流路部材の平坦面に板状部材を取り付け、センサ部の加熱用抵抗体から板状部材を介して液体に伝達された熱を温度検出用抵抗体が検出する板状部材の温度として検出することで、液体の流量を計測することができる。
【0021】
また、流入流路の平坦面に開口する位置の第1内径および流出流路の平坦面に開口する位置の第2内径が第1溝部の幅よりも大きい。そのため、第1溝部の一端に断面視が円形の流入流路を切削して形成する際に、第1溝部の中心に対して流入流路の中心がわずかにずれたとしても第1溝部の一端に流入流路を適切に接続することができる。同様に、第1溝部の他端に断面視が円形の流出流路を切削して形成する際に、第1溝部の中心に対して流出流路の中心がわずかにずれたとしても第1溝部の他端に流出流路を適切に接続することができる。したがって、計測流路と、流入流路と、流出流路とを、流路部材に容易に形成し、高精度の流量計測をすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、アルカリ性液体や酸性液体等の腐食性液体に対する耐腐食性を高めつつ、計測流路と、計測流路の一端に接続される流入流路と計測流路の他端に接続される流出流路とを流路部材に容易に形成し、高精度の流量計測をすることが可能な熱式流量計および熱式流量計の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る熱式流量計の部分縦断面図である。
【
図6】
図5に示す流路部材のA部分の部分拡大図である。
【
図7】比較例の熱式流量計の流路部材の部分拡大図である。
【
図8】
図4に示す熱式流量計のB-B矢視断面図である。
【
図9】
図8に示す熱式流量計のC-C矢視断面図である。
【
図10】板状部材の温度検出面に形成されるセンサ部の平面図である。
【
図11】ガラス基板に形成されたセンサ部を板状部材の温度検出面に接合した状態を示す平面図である。
【
図12】流路部材の平坦面に第1溝部および第2溝部を形成した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る熱式流量計100について図面を参照して説明する。
本実施形態の熱式流量計100は、内部流路を流通する液体を加熱し、加熱された液体の温度を検出することで液体の流量を測定する装置である。本実施形態の熱式流量計100は、例えば、0.1ml/min~30ml/minの微少流量を測定するのに適している。本実施形態の熱式流量計100が流量を計測する液体は、アルカリ性液体や酸性液体等の腐食性液体である。腐食性液体は、例えば、アンモニア水、フッ酸、塩酸などの半導体製造装置で用いられる薬液である。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る熱式流量計100の部分縦断面図である。
図2は、
図1に示す熱式流量計100の分解組立図である。
図3は、
図1に示す熱式流量計100の断面図である。
図1および
図2に示すように、本実施形態の熱式流量計100は、流路ユニット10と、板状部材20と、センサ部30と、センサカバー40と、制御基板50と、アッパーケース60と、ボトムケース70と、ねじ80と、位置決めピン90と、を備える。
【0026】
アッパーケース60は、熱式流量計100の上部側の筐体となる部材であり、内部に制御基板50を収容する。ボトムケース70は、熱式流量計100の下部側の筐体となる部材であり、流路ユニット10に取り付けられる。
図2および
図3では、アッパーケース60およびボトムケース70の図示を省略している。
【0027】
流路ユニット10は、外部の配管201に接続される流入口11aから流入する液体を外部の配管202に接続される流出口11bから流出させる流路が内部に形成されたユニットである。流路ユニット10は、流路部材11と、Oリング(環状シール部材)12と、ベース13と、を有する。
【0028】
図2および
図3に示すように、流路部材11には、貫通穴11dと、凹所11eと、位置決め穴11fとが形成されている。ベース13には、雌ねじ13aが形成されている。センサカバー40には、貫通穴41と、位置決め穴42とが形成されている。ねじ80を貫通穴41および貫通穴11dに挿入し、凹所11eに配置されるベース13の雌ねじ13aに締結することにより、流路ユニット10とセンサカバー40とが一体となる。
【0029】
図3に示すように、流路ユニット10とセンサカバー40とが一体となると、流路ユニット10とセンサカバー40との間には、板状部材20とセンサ部30とが配置された状態となる。位置決めピン90を位置決め穴11fおよび位置決め穴42の双方に挿入することにより、流路部材11の平坦面11c上のセンサカバー40の位置が固定される。
【0030】
図4は、
図3に示す熱式流量計100の平面図である。
図5は、
図4に示す流路ユニット10の平面図である。
図5に示すように、流路部材11には、6つの貫通穴11dが形成されている。ねじ80は、センサカバー40の6つの貫通穴41および流路部材11の6つの貫通穴11dのそれぞれに挿入され、ベース13の6つの雌ねじ13aに締結される。
【0031】
流路部材11は、流入口11aから流入する液体を流出口11bから流出させる部材である。流路部材11は、耐腐食性が高い樹脂材料(例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂材料)により形成されている。
図3に示すように、流路部材11の上方には、水平方向に沿って延びる平坦面11cが形成されている。流路部材11は、平坦面11cと、導入流路11gと、流入流路11hと、流出流路11iと、導出流路11jとを有する。
【0032】
平坦面11cには、第1溝部11c1と、第2溝部11c2とが形成されている。第1溝部11c1は、平坦面11c上の軸線X2に沿って直線状に延びるように形成されている。第1溝部11c1の周囲の平坦面11cを板状部材20で封止することにより、液体の流量をセンサ部30で計測するための計測流路が形成される。
【0033】
図5に示すように、第2溝部11c2は、第1溝部11c1を取り囲むように環状に延びている。
図3に示すように、Oリング12は、第2溝部11c2挿入されるとともに第1溝部11c1を取り囲む環状のシール領域SA(
図4参照)を形成する。
【0034】
図3に示すように、導入流路11gは、軸線X1に沿って水平方向に延びる断面視が円形の直線状流路であり、内径IDgを有する。流入流路11hは、流入口11aから導入流路11gを介して流入する液体が導かれる断面視が円形の直線状流路であり、内径(第1内径)IDhを有する。内径IDhは内径IDgよりも小さく、例えば、0.3mm以上かつ1.5mm以下に設定される。内径IDhは、導入流路11gに接続される一端から第1溝部11c1に接続される他端まで同一の大きさとなっている。
【0035】
流出流路11iは、導出流路11jを介して流出口11bへ液体を導く断面視が円形の直線状流路であり、内径(第2内径)IDiを有する。内径IDiは内径IDhと同径としてもよい。内径IDiは、第1溝部11c1に接続される一端から導出流路11jに接続される他端まで同一の大きさとなっている。導出流路11jは、軸線X1に沿って水平方向に延びる断面視が円形の直線状流路であり、内径IDjを有する。内径IDjは内径IDiよりも大きく、例えば、0.3mm以上かつ1.5mm以下に設定される。内径IDjは、内径IDgと同径としてもよい。
【0036】
図6は、
図5に示す流路部材11のA部分の部分拡大図である。
図6に示すように、第1溝部11c1は、平坦面11cに形成されており、軸線X2に沿って直線状に延びている。流入流路11hは、第1溝部11c1の軸線X2に沿った軸線方向の一端に接続されている。流出流路11iは、第1溝部11c1の軸線X2に沿った軸線方向の他端に接続されている。流入流路11hの中心と流出流路11iの中心は、それぞれ軸線X2上となっており、第1溝部11c1の中心と一致している。
【0037】
図6に示すように、流入流路11hの平坦面11cに開口する位置の内径IDhおよび流出流路11iの平坦面11cに開口する位置の内径IDiは、第1溝部11c1の軸線X2に直交する方向の平坦面11cにおける幅W1よりも大きい。内径IDhおよび内径IDiは、第1溝部11c1の幅W1の1.5倍以上かつ3倍以下とするのが好ましい。
【0038】
内径IDhおよび内径IDiを第1溝部11c1の幅の1.5倍以上とすることで、第1溝部11c1の中心に対して流入流路11hおよび流出流路11iの中心がわずかにずれたとしても、第1溝部11c1の一端に流入流路11hが適切に接続され、あるいは第1溝部11c1の他端に流出流路11iが確実に接続されるようにすることができる。また、内径IDhおよび内径IDiを第1溝部11c1の幅の3倍以下とすることで、流入流路11hおよび流出流路11iの流路断面積と第1溝部11c1の流路断面積との差が過度に大きくならないようにすることができる。
【0039】
図7は、比較例の熱式流量計の流路部材11の部分拡大図である。比較例の熱式流量計の流路部材11は、内径IDhおよび内径IDiが第1溝部11c1の幅W1と同じ長さである点が
図6の流路部材11と異なる。
図7において、実線で示す流入流路11hおよび流出流路11iは、流入流路11hおよび流出流路11iの中心を第1溝部11c1の中心と一致させた状態を示す。
【0040】
一方、
図7において、点線で示す流入流路11hおよび流出流路11iは、流入流路11hおよび流出流路11iの中心が第1溝部11c1の中心から内径IDhおよび内径IDiの半分だけずれた状態を示す。
図7に示すように、切削加工(穴あけ加工)の加工精度により、第1溝部11c1の中心に対して流入流路11hおよび流出流路11iの中心がずれてしまうと、第1溝部11c1の端部に対して流入流路11hおよび流出流路11iが適切に接続されない状態となってしまう。
【0041】
図6に示すように、本実施形態の流路部材11において、第2溝部11c2の軸線X2に直交する方向の平坦面11cにおける幅W2は、幅W1よりも大きい。また、第1溝部11c1と第2溝部11c2との間の平坦面11cの幅W3は、W1よりも大きくかつW2よりも小さい。第1溝部11c1の軸線X2に直交する方向の幅W1は、0.2mm以上かつ1mm以下とするのが好ましい。
【0042】
図6に示すように、第1溝部11c1の一端(流入流路11hとの接続位置)から第1溝部11c1の他端(流出流路11iとの接続位置)までの軸線X2に沿った軸線方向の長さはL1である。また、第1溝部11c1の一端から計測位置Psまでの軸線方向の距離はL2である。計測位置Psは、センサ部30の軸線X2に沿った軸線方向の中心位置である。
【0043】
長さL2は長さL1の半分よりも長いのが好ましい。例えば、長さL2は、長さL1の0.6倍以上かつ0.9倍に設定するのが好ましい。このように、センサ部30は、軸線方向において流入流路11hよりも流出流路11iに近接した位置に配置されているのが好ましい。流入流路11hよりも流出流路11iに近接した位置にセンサ部30を配置することで、流入流路11hから第1溝部11c1に流入した液体の乱流等が十分に減少して速度が安定した状態で、センサ部30の計測位置Psに液体が到達するようにすることができる。
【0044】
図8は、
図4に示す熱式流量計100のB-B矢視断面図である。
図8に示すように、板状部材20は、流路部材11に取り付けられるとともに流路部材11の第1溝部11c1とともに液体の流量をセンサ部30により計測するための計測流路を形成する部材である。板状部材20は、平坦面11cおよび第1溝部11c1を流通する液体と接触する接液面21と、接液面21から伝達される液体の温度をセンサ部30により検出するための温度検出面22と、を有する。
【0045】
板状部材20は、アルカリ性液体の対する耐腐食性が高い材料であるサファイアにより形成されている。板状部材20は、ガラス状炭素により形成してもよい。板状部材20の接液面21には、腐食性ガスが透過しないようにするため、気体透過係数の低い膜を形成するのが好ましい。
【0046】
板状部材20は、各位置で一定の厚さT1を有するように形成されている。厚さT1は、例えば、0.1mm以上かつ0.4mm以下に設定するのが好ましい。板状部材20は、センサカバー40の接触面43に形成される凹所43aに収容される。
【0047】
図9は、
図8に示す熱式流量計のC-C矢視断面図である。
図9に示すように、流路部材11に形成される第1溝部11c1は、断面視が略半円形状となっている。第1溝部11c1を封止する板状部材20の接液面21から第1溝部11c1の底部までの深さDp1は、第1溝部11c1の幅W1よりも大きい。深さDp1は、幅W1の0.5倍から2倍(好ましくは1倍)とするのが好ましい。
【0048】
図10は、板状部材20の温度検出面22に形成されるセンサ部30の平面図である。
図10に示すように、センサ部30は、第1溝部11c1と板状部材20により形成される計測流路を流通する液体の流量を計測し、制御基板50に伝達する装置である。センサ部30は、板状部材20に熱を伝達する加熱用抵抗体30aと、計測流路を流通する液体の熱が伝達される板状部材20の温度を検出する温度検出用抵抗体30b,30c,30d,30eと、を有する。
【0049】
加熱用抵抗体30aおよび温度検出用抵抗体30b,30c,30d,30eは、それぞれ白金等の金属膜をガラス製の基板上にCVD(Chemical Vapor Deposition)法等により蒸着させることにより形成される。加熱用抵抗体30aおよび温度検出用抵抗体30b,30c,30d,30eは、スパッタリング、フォトリソグラフィ等の他の方法により、板状部材20の温度検出面22に形成してもよい。
【0050】
センサカバー40は、板状部材20およびセンサ部30を、流路ユニット10との間に収容するための部材である。
図8に示すように、センサカバー40は、接触面43を有する。接触面43は、ねじ80により流路ユニット10とセンサカバー40とが一体となる際に、流路部材11の平坦面11cと接触する面である。凹所43aは、平坦面11cに形成されており、板状部材20の厚さT1と同じか厚さT1よりもわずかに小さい深さを有する。凹所43bは、凹所43aに形成されており、センサ部30を収容する部分である。
【0051】
制御基板50は、センサ部30の加熱用抵抗体30aに電圧信号を伝達して加熱用抵抗体30aを加熱させるとともに、温度検出用抵抗体30b,30c,30d,30eから伝達される温度に基づいて液体の流量を算出する装置である。制御基板50は、加熱用抵抗体30aを加熱するための電圧信号を、フレキシブル基板31を介してセンサ部30へ出力する。また、制御基板50は、温度検出用抵抗体30b,30c,30d,30eの抵抗値を検出するための電圧信号を、フレキシブル基板31を介してセンサ部30へ出力する。
【0052】
制御基板50は、加熱用抵抗体30aを加熱する加熱期間と加熱用抵抗体30aを加熱しない非加熱期間とを周期的に繰り返すように加熱用抵抗体30aに電圧信号を出力する。加熱期間は、非加熱期間よりも短くなるように設定される。すなわち、加熱期間は、加熱期間と非加熱期間を合計した1周期に対して、0.5未満の割合に設定される。加熱期間の1周期に対する割合は、0.4未満に設定してもよい。
【0053】
計測流路を流通する液体は、
図10における下から上に向けた流通方向FDに沿って軸線X2に沿って流れる。そのため、加熱用抵抗体30aを瞬間的に加熱すると、加熱された液体が軸線X2に沿って流れて温度検出用抵抗体30bの位置に到達し、その後に温度検出用抵抗体30dの位置に到達する。制御基板50は、温度により変化する温度検出用抵抗体30bおよび温度検出用抵抗体30dの電気抵抗値を検出することにより、温度検出用抵抗体30bおよび温度検出用抵抗体30dの近傍の板状部材20の温度を測定する。
【0054】
制御基板50は、加熱用抵抗体30aを瞬間的に加熱したタイミングと、その後に温度検出用抵抗体30bと温度検出用抵抗体30dとが加熱された液体の温度を検出するタイミングとから、計測流路を流通する液体の流通速度を算出することができる。また、制御基板50は、算出した流通速度と第1溝部11c1の断面積から、液体の流量を算出することができる。
【0055】
加熱用抵抗体30aを瞬間的に加熱すると、加熱用抵抗体30aから温度検出面22に伝達された熱が軸線X2に沿って液体の流通方向FDの逆方向に伝達され、温度検出用抵抗体30cの位置に到達し、その後に温度検出用抵抗体30eの位置に到達する。制御基板50は、温度により変化する温度検出用抵抗体30cおよび温度検出用抵抗体30eの電気抵抗値を検出することにより、温度検出用抵抗体30cおよび温度検出用抵抗体30eの温度を測定する。
【0056】
制御基板50は、温度検出用抵抗体30cの温度を、温度検出用抵抗体30bの温度から減算する。加熱用抵抗体30aの流通方向FDの上流側の温度検出用抵抗体30cが検出する温度は、加熱用抵抗体30aが板状部材20へ伝達した熱のうち液体に伝達されずに板状部材20を介して温度検出用抵抗体30cへ伝達された熱に相当する。加熱用抵抗体30aに対して、温度検出用抵抗体30bと温度検出用抵抗体30cは等距離に配置されている。
【0057】
そのため、温度検出用抵抗体30bの温度から温度検出用抵抗体30cの温度を減算することにより、温度検出用抵抗体30bの位置を通過する液体の温度を測定することができる。同様に、制御基板50は、温度検出用抵抗体30eの温度を、温度検出用抵抗体30dの温度から減算することにより、温度検出用抵抗体30dの位置を通過する液体の温度を測定することができる。
【0058】
図10に示すように、温度検出面22には、加熱用抵抗体30aの一端に接続される配線パターン30fと、加熱用抵抗体30aの他端に接続される配線パターン30gが形成されている。また、温度検出面22には、温度検出用抵抗体30bの一端に接続される配線パターン30hと、温度検出用抵抗体30bの他端に接続される配線パターン30iと、温度検出用抵抗体30dの一端に接続される配線パターン30jとが形成されている。温度検出用抵抗体30dの他端は、配線パターン30iに接続されている。
【0059】
また、温度検出面22には、温度検出用抵抗体30cの一端に接続される配線パターン30kと、温度検出用抵抗体30cの他端に接続される配線パターン30lと、温度検出用抵抗体30eの一端に接続される配線パターン30mとが形成されている。温度検出用抵抗体30eの他端は、配線パターン30lに接続されている。配線パターン30f,30g,30h,30i,30j,30k、30l,30mは、それぞれ白金等の金属膜をガラス製の基板上に蒸着させて形成される。
【0060】
図10に示すセンサ部30は、板状部材20の温度検出面22に、加熱用抵抗体30aと、温度検出用抵抗体30b,30c,30d,30eとを直接的に形成したものであったが、他の態様であってもよい。例えば、
図11に示すように、ガラス基板32に形成されたセンサ部30を板状部材20の温度検出面22に接合する態様としても良い。
【0061】
図11は、ガラス基板32に形成されたセンサ部30Aを板状部材20の温度検出面22に接合した状態を示す平面図である。
図11に示すセンサ部30Aは、ガラス基板32の一面に加熱用抵抗体30aと、温度検出用抵抗体30b,30c,30d,30eとを蒸着により形成したものである。ガラス基板32の加熱用抵抗体30aおよび温度検出用抵抗体30b,30c,30d,30eが形成された面は、板状部材20の温度検出面22に対して、接着剤により接合される。
【0062】
図11に示すセンサ部30Aは、板状部材20の温度検出面22との間に接着剤が介在するため、
図10に示すセンサ部30に比べ、熱伝導性および温度検出の応答性の点で不利である。一方、
図11に示すセンサ部30Aは、板状部材20に直接的に加熱用抵抗体30aおよび温度検出用抵抗体30b,30c,30d,30eを形成しないため、製造が良いである。例えば、ガラス基板32を板状部材20よりも十分に厚く強度が高いものとすることにより、加熱用抵抗体30aおよび温度検出用抵抗体30b,30c,30d,30eを形成する際に破損が生じることを防止することができる。
【0063】
次に、本実施形態の熱式流量計100の製造方法について説明する。
図12は、流路部材11の平坦面11cに第1溝部11c1および第2溝部11c2を形成した状態を示す平面図である。本実施形態の製造方法において、流路ユニット10の流路部材11は、以下の手順により製造される。
【0064】
始めに、流路部材11の平坦面11cを切削し、幅W1を有する直線状の第1溝部11c1と、幅W2を有する環状の第2溝部11c2を形成する。第1溝部11c1および第2溝部11c2は、エンドミルを用いたフライス加工により形成される。第1溝部11c1および第2溝部11c2が形成された流路部材11の平坦面11cは、
図12に示す状態となる。
【0065】
次に、流路部材11を切削し、第1溝部11c1の軸線X2に沿った軸線方向の一端に接続されるように、断面視が円形の流入流路11hを形成する。流入流路11hは、
図12に点線で示す位置にドリル(図示略)を平坦面11cに直交する方向に押し当てることにより形成される。
【0066】
次に、流路部材11を切削し、第1溝部11c1の軸線X2に沿った軸線方向の他端に接続されるように、断面視が円形の流出流路11iを形成する。流出流路11iは、
図12に点線で示す位置にドリル(図示略)を平坦面11cに直交する方向に押し当てることにより形成される。なお、流出流路11iを流入流路11hよりも先に形成してもよい。
【0067】
次に、流路部材11を切削し、軸線X1に沿って延びる断面視が円形の導入流路11gおよび導出流路11jを形成する。導入流路11gおよび導出流路11jは、ドリル(図示略)を軸線X1に沿って流路部材11の側面に押し当てることにより形成される。
【0068】
次に、第2溝部11c2にOリング12を挿入し、センサカバー40の凹所43aに収容された板状部材20を流路部材11の平坦面11cに接触するように取り付ける。板状部材20の接液面21が平坦面11cに接触すると、接液面21と第1溝部11c1とにより、液体が流通する計測流路が形成される。
【0069】
次に、ねじ80を貫通穴41および貫通穴11dに挿入し、凹所11eに配置されるベース13の雌ねじ13aに締結することにより、流路ユニット10とセンサカバー40とを一体とする。また、制御基板50が収容されたアッパーケース60を流路部材11の上端に取り付け、ボトムケース70を流路部材11の下端に取り付ける。以上により、本実施形態の熱式流量計100が製造される。
【0070】
以上説明した本実施形態の熱式流量計100が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の熱式流量計100によれば、液体の流量を計測するための計測流路となる第1溝部11c1が形成された流路部材11が樹脂製であるため、アルカリ性液体に対する耐腐食性を高めることができる。また、第1溝部11c1が形成された流路部材11の平坦面11cに板状部材20を取り付け、センサ部30の加熱用抵抗体30aから板状部材20を介して液体に伝達された熱を温度検出用抵抗体30b,30c,30d,30eが検出する板状部材20の温度として検出することで、液体の流量を計測することができる。
【0071】
また、流入流路11hの平坦面11cに開口する位置の内径IDhおよび流出流路11iの平坦面11cに開口する位置の内径IDiが第1溝部11c1の幅W1よりも大きいため、第1溝部11c1の中心に対して流入流路11hおよび流出流路11iの中心がわずかにずれたとしても、第1溝部11c1の一端に流入流路11hが適切に接続され、あるいは第1溝部11c1の他端に流出流路11iが適切に接続される。したがって、第1溝部11c1と、流入流路11hと、流出流路11iとを、流路部材11に容易に形成し、高精度の流量計測をすることができる。
【0072】
本実施形態の熱式流量計100によれば、内径IDhおよび内径IDiを第1溝部11c1の幅W1の1.5倍以上とすることで、第1溝部11c1の中心に対して流入流路11hおよび流出流路11iの中心がわずかにずれたとしても、第1溝部11c1の一端に流入流路11hが適切に接続され、第1溝部11c1の他端に流出流路11iが確実に接続されるようにすることができる。
【0073】
本実施形態の熱式流量計100によれば、第1溝部11c1の幅W1を0.2mm以上かつ1mm以下とすることにより、計測流路の流路断面積を小さくして加熱用抵抗体30aにより液体が加熱されやすいようにし、液体の流量の計測精度を高めることができる。
【0074】
本実施形態の熱式流量計100によれば、板状部材20がサファイアまたはガラス状炭素により形成されているため、アルカリ性液体や強酸(フッ酸、硫酸等)に対して十分な耐腐食性を発揮することができる。
【0075】
本実施形態の熱式流量計100によれば、センサ部30が板状部材20に蒸着されているため、加熱用抵抗体30aにより板状部材20を直接的に加熱することができ、温度検出用抵抗体30b,30c,30d,30eにより板状部材20の温度を直接的に検出することができる。
【0076】
本実施形態の熱式流量計100によれば、平坦面11cに形成される第2溝部11c2にOリング12が挿入され、Oリング12が第1溝部11c1を取り囲む環状のシール領域SAを形成するため、計測流路を流通する液体がシール領域SAの外部に漏出することを確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0077】
10 流路ユニット
11 流路部材
11a 流入口
11b 流出口
11c 平坦面
11c1 第1溝部
11c2 第2溝部
11d 貫通穴
11e 凹所
11f 位置決め穴
11g 導入流路
11h 流入流路
11i 流出流路
11j 導出流路
12 Oリング(環状シール部材)
13 ベース
20 板状部材
21 接液面
22 温度検出面
30,30A センサ部
30a 加熱用抵抗体
30b,30c,30d,30e 温度検出用抵抗体
31 フレキシブル基板
32 ガラス基板
40 センサカバー
41 貫通穴
42 位置決め穴
43 接触面
43a 凹所
43b 凹所
50 制御基板
60 アッパーケース
70 ボトムケース
80 ねじ
90 位置決めピン
100 熱式流量計
IDh 内径(第1内径)
IDi 内径(第1内径)
Ps 計測位置
SA シール領域
T1 厚さ
X1,X2 軸線