(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140203
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル用バルーン及びそれを備えるバルーンカテーテル、並びにバルーンカテーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20241003BHJP
【FI】
A61M25/10 512
A61M25/10 510
A61M25/10 550
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051227
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 真弘
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼淵 崇亘
(72)【発明者】
【氏名】中野 良紀
(72)【発明者】
【氏名】杖田 昌人
(72)【発明者】
【氏名】清水 一朗
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA07
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB28
4C267CC09
4C267DD01
4C267GG01
4C267GG21
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】血管等の管腔内にバルーンを挿通した際にトラッカビリティを向上でき、また、また手元側からの力を伝えた際のバルーンの挿通性を向上できるバルーンカテーテル用バルーンを提供する。
【解決手段】外層20bと、外層20bよりもショアD硬度が低い材料から構成されている内層20aとを有しているバルーンカテーテル用バルーンであって、直管部23と、近位側テーパー部と、近位側スリーブ部と、遠位側テーパー部と、遠位側スリーブ部と、を有しており、径方向y1の外方に突出し長手軸方向x1に延在している突出部28を有しており、直管部23の少なくとも1つの突出部28は、外層20bが存在していない内層露出部20Aを有しており、径方向y1の外方から見たとき周方向z1において内層露出部20Aは外層20bに挟まれている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸方向、径方向、及び周方向を有し、外層と、前記外層よりもショアD硬度が低い材料から構成されている内層とを有しているバルーンカテーテル用バルーンであって、
直管部と、前記直管部よりも近位側に位置している近位側テーパー部と、前記近位側テーパー部よりも近位側に位置している近位側スリーブ部と、前記直管部よりも遠位側に位置している遠位側テーパー部と、前記遠位側テーパー部よりも遠位側に位置している遠位側スリーブ部と、を有しており、
前記径方向の外方に突出し前記長手軸方向に延在している突出部を前記周方向に1又は複数有しており、
前記直管部の少なくとも1つの前記突出部は、前記外層が存在していない内層露出部を有しており、前記径方向の外方から見たとき前記周方向において前記内層露出部は前記外層に挟まれているバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項2】
前記少なくとも1つの突出部において、前記内層露出部は前記長手軸方向における全域に配されている請求項1に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項3】
前記周方向に配されている前記複数の突出部のうち、一部の前記突出部は前記内層露出部を有しており、残りの前記突出部は前記内層露出部を有していない請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項4】
前記周方向に配されている前記複数の突出部の全てが前記内層露出部を有している請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項5】
前記内層露出部の前記周方向の長さは、前記内層露出部の両側のそれぞれの前記外層の前記周方向の長さよりも短い請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項6】
前記内層露出部の前記周方向の長さは、前記内層露出部の両側のそれぞれの前記外層の前記周方向の長さよりも長い請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
【請求項7】
下記(1)及び(2)の少なくとも一方を満たしている請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
(1)前記近位側スリーブ部の前記突出部は、前記外層が存在していない内層露出部を有しており、前記径方向の外方から見たとき前記周方向において前記内層露出部は前記外層に挟まれている。
(2)前記遠位側スリーブ部の前記突出部は、前記外層が存在していない内層露出部を有しており、前記径方向の外方から見たとき前記周方向において前記内層露出部は前記外層に挟まれている。
【請求項8】
下記(3)及び(4)の少なくとも一方を満たしている請求項7に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
(3)前記(1)を満たしており、前記長手軸方向において、前記近位側スリーブ部の近位端を0%の位置SP0、前記近位側スリーブ部の前記近位側テーパー部側の端を100%の位置SP100としたとき、前記近位側スリーブ部の前記内層露出部は位置SP0から75%の位置SP75までの区間の少なくとも一部に配されている。
(4)前記(2)を満たしており、前記長手軸方向において、前記遠位側スリーブ部の遠位端を0%の位置SD0、前記遠位側スリーブ部の前記遠位側テーパー部側の端を100%の位置SD100としたとき、前記遠位側スリーブ部の前記内層露出部は位置SD0から75%の位置SD75までの区間の少なくとも一部に配されている。
【請求項9】
下記(5)及び(6)の少なくとも一方を満たしている請求項8に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
(5)前記(3)を満たしており、前記近位側スリーブ部の前記内層露出部は前記位置SP0を含む区間に配されている。
(6)前記(4)を満たしており、前記遠位側スリーブ部の前記内層露出部は前記位置SD0を含む区間に配されている。
【請求項10】
下記(7)及び(8)の少なくとも一方を満たしている請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
(7)前記近位側テーパー部の前記突出部は、前記外層が存在していない内層露出部を有しており、前記径方向の外方から見たとき前記周方向において前記内層露出部は前記外層に挾まれている。
(8)前記遠位側テーパー部の前記突出部は、前記外層が存在していない内層露出部を有しており、前記径方向の外方から見たとき前記周方向において前記内層露出部は前記外層に挟まれている。
【請求項11】
下記(9)及び(10)の少なくとも一方を満たしている請求項10に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
(9)前記(7)を満たしており、前記長手軸方向において、前記近位側テーパー部の近位側スリーブ部側の端を0%の位置TP0、前記近位側テーパー部の前記直管部側の端を100%の位置TP100としたとき、前記近位側テーパー部の前記内層露出部は位置TP0から75%の位置TP75までの区間の少なくとも一部に配されている。
(10)前記(8)を満たしており、前記長手軸方向において、前記遠位側テーパー部の遠位側スリーブ部側の端を0%の位置TD0、前記遠位側テーパー部の前記直管部側の端を100%の位置TD100としたとき、前記遠位側テーパー部の前記内層露出部は位置TD0から75%の位置TD75までの区間の少なくとも一部に配されている。
【請求項12】
下記(11)及び(12)の少なくとも一方を満たしている請求項11に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
(11)前記(9)を満たしており、前記近位側テーパー部の前記内層露出部は前記位置TP0を含む区間に配されている。
(12)前記(10)を満たしており、前記遠位側テーパー部の前記内層露出部は前記位置TD0を含む区間に配されている。
【請求項13】
請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル用バルーンを備えるバルーンカテーテル。
【請求項14】
請求項13に記載のバルーンカテーテルの製造方法であって、
長手軸方向、径方向、及び周方向を有し、前記長手軸方向に延在する内腔を有しているパリソンを準備するステップと、
前記パリソンを二軸延伸して、前記近位側スリーブ部、前記近位側テーパー部、前記直管部、前記遠位側テーパー部、前記遠位側スリーブ部を有し、前記突出部を有するバルーンを製造するステップと、
前記直管部の少なくとも1つの前記突出部の頂部側を前記長手軸方向に沿って切除して前記内層露出部を形成するステップと、を有しており、
前記パリソンは、
外層と、前記外層よりもショアD硬度が低い材料から構成されている内層と、を有しており、
前記径方向の外方に突出し前記長手軸方向に延在している突出部を含む突出領域と、前記突出領域以外の非突出領域と、を有しており、
前記長手軸方向に垂直な断面において、前記内層は、前記非突出領域において小厚部を有しており前記突出領域において前記小厚部よりも厚い厚みを有している大厚部を有しているバルーンカテーテルの製造方法。
【請求項15】
前記近位側スリーブ部及び/又は前記遠位側スリーブ部の前記突出部の頂部側を前記長手軸方向に沿って切除して前記内層露出部を形成するステップをさらに有する請求項14に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
【請求項16】
前記近位側テーパー部及び/又は前記遠位側テーパー部の前記突出部の頂部側を前記長手軸方向に沿って切除して前記内層露出部を形成するステップをさらに有する請求項14に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
【請求項17】
前記長手軸方向に垂直な断面において、前記内層は、前記小厚部よりも厚い厚みを有し前記大厚部よりも薄い厚みを有する中厚部を前記非突出領域において有しており、前記周方向において前記小厚部は前記大厚部と前記中厚部の間に位置している請求項14に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテル用バルーン及びそれを備えるバルーンカテーテル、並びにバルーンカテーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内壁に石灰化等により硬化した狭窄部が形成されることにより、狭心症や心筋梗塞等の疾病が引き起こされる。これらの治療の一つとして、バルーンカテーテルを用いて狭窄部を拡張させる血管形成術がある。血管形成術は、バイパス手術のような開胸術を必要としない低侵襲療法であり、広く行われている。
【0003】
血管形成術において、一般的なバルーンカテーテルでは石灰化等により硬化した狭窄部を拡張させにくいことがある。また、ステントと称される留置拡張器具を狭窄部に留置することによって狭窄部を拡張する方法も用いられているが、例えば、この治療後に血管に新生内膜が過剰に増殖して再び血管の狭窄が発生してしまうISR(In-Stent-Restenosis)病変等が起こる場合もある。ISR病変では新生内膜が柔らかく、また表面が滑りやすいため、一般的なバルーンカテーテルではバルーンの拡張時にバルーンの位置が病変部からずれてしまい血管を傷つけてしまうことがある。
【0004】
このような石灰化病変やISR病変等の病変であっても狭窄部を拡張できるバルーンカテーテルとして、狭窄部に食い込ませるための突出部やブレード、スコアリングエレメントがバルーンに設けられているバルーンカテーテルが開発されている。例えば、特許文献1には、突出部にアモルファスポリマーを用いることにより、突出部の剛性をバルーン壁よりも大きくして、突出部による切開効率を向上したバルーンカテーテルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0128718号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のバルーンでは、収縮状態のバルーンを血管等の管腔内に挿通させて病変部まで送達したり病変部から抜去させたりする際に、狭窄部を拡張するために設けられた突出部によりバルーンの柔軟性が損なわれ、屈曲した血管内腔に沿って容易に移動できるトラッカビリティが低下してしまうことがあった。
【0007】
上記の事情に鑑み本発明は、血管等の管腔内にバルーンを挿通した際にトラッカビリティを向上でき、また手元側からの力を伝えた際のバルーンの挿通性を向上できるバルーンカテーテル用バルーン及びそれを備えるバルーンカテーテル、並びにバルーンカテーテルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し得た本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーンは、以下の通りである。
[1]長手軸方向、径方向、及び周方向を有し、外層と、前記外層よりもショアD硬度が低い材料から構成されている内層とを有しているバルーンカテーテル用バルーンであって、直管部と、前記直管部よりも近位側に位置している近位側テーパー部と、前記近位側テーパー部よりも近位側に位置している近位側スリーブ部と、前記直管部よりも遠位側に位置している遠位側テーパー部と、前記遠位側テーパー部よりも遠位側に位置している遠位側スリーブ部と、を有しており、前記径方向の外方に突出し前記長手軸方向に延在している突出部を前記周方向に1又は複数有しており、前記直管部の少なくとも1つの前記突出部は、前記外層が存在していない内層露出部を有しており、前記径方向の外方から見たとき前記周方向において前記内層露出部は前記外層に挟まれているバルーンカテーテル用バルーン。
[2]前記少なくとも1つの突出部において、前記内層露出部は前記長手軸方向における全域に配されている[1]に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
[3]前記周方向に配されている前記複数の突出部のうち、一部の前記突出部は前記内層露出部を有しており、残りの前記突出部は前記内層露出部を有していない[1]又は[2]に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
[4]前記周方向に配されている前記複数の突出部の全てが前記内層露出部を有している[1]又は[2]に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
[5]前記長手軸方向に垂直な断面において、前記内層露出部の前記周方向の長さは、前記内層露出部の両側のそれぞれの前記外層の前記周方向の長さよりも長い[1]~[4]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーン。
[6]前記長手軸方向に垂直な断面において、前記内層露出部の前記周方向の長さは、前記内層露出部の両側のそれぞれの前記外層の前記周方向の長さよりも短い[1]~[4]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーン。
[7]下記(1)及び(2)の少なくとも一方を満たしている[1]~[6]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーン。
(1)前記近位側スリーブ部の前記突出部は、前記外層が存在していない内層露出部を有しており、前記径方向の外方から見たとき前記周方向において前記内層露出部は前記外層に挟まれている。
(2)前記遠位側スリーブ部の前記突出部は、前記外層が存在していない内層露出部を有しており、前記径方向の外方から見たとき前記周方向において前記内層露出部は前記外層に挟まれている。
[8]下記(3)及び(4)の少なくとも一方を満たしている[7]に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
(3)前記(1)を満たしており、前記長手軸方向において、前記近位側スリーブ部の近位端を0%の位置SP0、前記近位側スリーブ部の前記近位側テーパー部側の端を100%の位置SP100としたとき、前記近位側スリーブ部の前記内層露出部は位置SP0から75%の位置SP75までの区間の少なくとも一部に配されている。
(4)前記(2)を満たしており、前記長手軸方向において、前記遠位側スリーブ部の遠位端を0%の位置SD0、前記遠位側スリーブ部の前記遠位側テーパー部側の端を100%の位置SD100としたとき、前記遠位側スリーブ部の前記内層露出部は位置SD0から75%の位置SD75までの区間の少なくとも一部に配されている。
[9]下記(5)及び(6)の少なくとも一方を満たしている[8]に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
(5)前記(3)を満たしており、前記近位側スリーブ部の前記内層露出部は前記位置SP0を含む区間に配されている。
(6)前記(4)を満たしており、前記遠位側スリーブ部の前記内層露出部は前記位置SD0を含む区間に配されている。
[10]下記(7)及び(8)の少なくとも一方を満たしている[1]~[9]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーン。
(7)前記近位側テーパー部の前記突出部は、前記外層が存在していない内層露出部を有しており、前記径方向の外方から見たとき前記周方向において前記内層露出部は前記外層に挾まれている。
(8)前記遠位側テーパー部の前記突出部は、前記外層が存在していない内層露出部を有しており、前記径方向の外方から見たとき前記周方向において前記内層露出部は前記外層に挟まれている。
[11]下記(9)及び(10)の少なくとも一方を満たしている[10]に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
(9)前記(7)を満たしており、前記長手軸方向において、前記近位側テーパー部の近位側スリーブ部側の端を0%の位置TP0、前記近位側テーパー部の前記直管部側の端を100%の位置TP100としたとき、前記近位側テーパー部の前記内層露出部は位置TP0から75%の位置TP75までの区間の少なくとも一部に配されている。
(10)前記(8)を満たしており、前記長手軸方向において、前記遠位側テーパー部の遠位側スリーブ部側の端を0%の位置TD0、前記遠位側テーパー部の前記直管部側の端を100%の位置TD100としたとき、前記遠位側テーパー部の前記内層露出部は位置TD0から75%の位置TD75までの区間の少なくとも一部に配されている。
[12]下記(11)及び(12)の少なくとも一方を満たしている[11]に記載のバルーンカテーテル用バルーン。
(11)前記(9)を満たしており、前記近位側テーパー部の前記内層露出部は前記位置TP0を含む区間に配されている。
(12)前記(10)を満たしており、前記遠位側テーパー部の前記内層露出部は前記位置TD0を含む区間に配されている。
【0009】
本発明はまた、以下を提供する。
[13]上記[1]~[12]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーンを備えるバルーンカテーテル。
【0010】
本発明はさらに、[13]に記載のバルーンカテーテルの製造方法を提供する。本発明の実施形態に係る製造方法は、以下の通りである。
[14]上記[13]に記載のバルーンカテーテルの製造方法であって、長手軸方向、径方向、及び周方向を有し、前記長手軸方向に延在する内腔を有しているパリソンを準備するステップと、前記パリソンを二軸延伸して、前記近位側スリーブ部、前記近位側テーパー部、前記直管部、前記遠位側テーパー部、前記遠位側スリーブ部を有し、前記突出部を有するバルーンを製造するステップと、前記直管部の少なくとも1つの前記突出部の頂部側を前記長手軸方向に沿って切除して前記内層露出部を形成するステップと、を有しており、前記パリソンは、外層と、前記外層よりもショアD硬度が低い材料から構成されている内層と、を有しており、前記径方向の外方に突出し前記長手軸方向に延在している突出部を含む突出領域と、前記突出領域以外の非突出領域と、を有しており、前記長手軸方向に垂直な断面において、前記内層は、前記非突出領域において小厚部を有しており前記突出領域において前記小厚部よりも厚い厚みを有している大厚部を有しているバルーンカテーテルの製造方法。
[15]前記近位側スリーブ部及び/又は前記遠位側スリーブ部の前記突出部の頂部側を前記長手軸方向に沿って切除して前記内層露出部を形成するステップをさらに有する[14]に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
[16]前記近位側テーパー部及び/又は前記遠位側テーパー部の前記突出部の頂部側を前記長手軸方向に沿って切除して前記内層露出部を形成するステップをさらに有する[14]又は[15]に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
[17]前記長手軸方向に垂直な断面において、前記内層は、前記小厚部よりも厚い厚みを有し前記大厚部よりも薄い厚みを有する中厚部を前記非突出領域において有しており、前記周方向において前記小厚部は前記大厚部と前記中厚部の間に位置している[14]~[16]のいずれかに記載のバルーンカテーテルの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
上記バルーンカテーテル用バルーン及びそれを備えるバルーンカテーテル、並びにバルーンカテーテルの製造方法によれば、血管等の管腔内にバルーンを挿通した際に、トラッカビリティを向上でき、また手元側からの力を伝えた際のバルーンの挿通性を向上できるバルーンカテーテル用バルーン及びそれを備えるバルーンカテーテル、並びにバルーンカテーテルの製造方法を提供することができる。これにより、バルーンカテーテルの操作性を向上しつつ効率的な狭窄部の切開を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るバルーンカテーテルの側面図である。
【
図2】
図1に示したバルーンカテーテルのII-II断面図である。
【
図4】
図1に示したバルーンカテーテルのIV-IV断面図である。
【
図7】
図1に示したバルーンカテーテルの遠位端部を突出部側から見た平面図である。
【
図8】
図7に示したバルーンカテーテルの長手軸方向の断面図である。
【
図11】本発明の他の実施形態に係るバルーンカテーテルの遠位端部を突出部側から見た平面図である。
【
図12】
図11に示したバルーンカテーテルの遠位端部の長手軸方向の断面図である。
【
図13】本発明のさらに他の実施形態に係るバルーンカテーテルの遠位端部を突出部側から見た平面図である。
【
図14】
図13に示したバルーンカテーテルの遠位端部の長手軸方向の断面図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係る二軸延伸前のパリソンの斜視図である。
【
図16】
図15に示したパリソンのXVI-XVI断面図である。
【
図17】
図16に示したパリソンの製造に用いられるパリソン用金型の長手軸方向に垂直な断面図である。
【
図19】
図18に示したパリソンの製造に用いられるパリソン用金型の長手軸方向に垂直な断面図である。
【
図20】本発明の一実施形態に係る金型の長手軸方向の断面図である。
【
図23】
図20に示した金型のXXIII-XXIII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態に基づき本発明を説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0014】
1.バルーンカテーテル用バルーン
本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーンは、長手軸方向、径方向、及び周方向を有し、外層と、外層よりもショアD硬度が低い材料から構成されている内層とを有しているバルーンカテーテル用バルーンであって、直管部と、直管部よりも近位側に位置している近位側テーパー部と、近位側テーパー部よりも近位側に位置している近位側スリーブ部と、直管部よりも遠位側に位置している遠位側テーパー部と、遠位側テーパー部よりも遠位側に位置している遠位側スリーブ部と、を有しており、径方向の外方に突出し長手軸方向に延在している突出部を周方向に1又は複数有しており、直管部の少なくとも1つの突出部は、外層が存在していない内層露出部を有しており、径方向の外方から見たとき周方向において内層露出部は外層に挟まれている。
【0015】
バルーンカテーテルによる狭窄部の拡張は、バルーンカテーテルの遠位端部に設けられたバルーンを血管内腔に挿入して狭窄部まで送達した後バルーンを拡張させ、バルーンの径方向の外方に設けられた突出部を狭窄部に食い込ませることにより狭窄部を切開することで行われる。バルーンが血管内腔を前進又は後退する際には、バルーンが屈曲した血管内腔に沿って容易に移動すること、即ちトラッカビリティの向上が求められるところ、上記バルーンカテーテル用バルーンによれば、直管部の少なくとも1つの突出部がショアD硬度の低い材料から構成されている内層露出部を有しているため、バルーンの柔軟性を高めてトラッカビリティを向上できる。また、径方向の外方から見たとき周方向において内層露出部はショアD硬度が高い外層に挟まれているため、バルーンの剛性を高めて血管内腔におけるバルーンの挿通性を向上し、狭窄部の切開にも寄与することができる。これにより、バルーンカテーテルの操作性を向上しつつ効率的な狭窄部の切開を行うことが可能になる。
【0016】
本発明の一実施形態において、狭窄部へのバルーンの挿入時や体内からの抜去時には、バルーンの内腔から流体を排出して収縮させ、シャフトにバルーンの羽根形状部を巻き付けることによりバルーンの外径を小さくする。このとき、バルーンの直管部を含む拡張部はバルーン径が大きいため、バルーンの拡張部に設けられた突出部は羽根形状部に覆われる。このように羽根形状部が突出部に巻き付いた状態で羽根形状部が突出部に接すると、突出部により羽根形状部が損傷することがあった。しかし、本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーンであれば、直管部の少なくとも1つの突出部がショアD硬度の低い材料から構成されている内層露出部を有しているため、羽根形状部の損傷を防止することができる。また、内層露出部における突出部の高さを低くすることにより、羽根形状部が突出部に巻き付いた状態の外径を小さくすることができるため、バルーンの挿通性を向上できる。
【0017】
本明細書において、バルーンカテーテル用バルーンを単に「バルーン」と称することがある。
【0018】
以下、
図1~
図14を参照しつつ、本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーンについて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るバルーンカテーテルの側面図である。
図2は
図1に示したバルーンカテーテルのII-II断面図であり、直管部の長手軸方向に垂直な断面図を表している。
図3は、
図2の変形例を示す断面図である。
図4は
図1に示したバルーンカテーテルのIV-IV断面図であり、遠位側スリーブ部の長手軸方向に垂直な断面図を表している。
図5は、
図2の部分Pの拡大図であり、直管部の突出部を含む部分の長手軸方向に垂直な拡大断面図を表している。
図6は、
図5に示した部分を径方向の外方側から見た図である。
図7は
図1に示したバルーンカテーテルの遠位端部を突出部側から見た平面図であり、
図8は
図7に示したバルーンカテーテルの長手軸方向の断面図である。
図9は、
図7の変形例を示す平面図である。
図10は
図4の変形例を示す断面図であり、遠位側スリーブ部に内層露出部が設けられている態様を表している。
図11は
図7の変形例、即ちスリーブ部にも内層露出部が設けられている本発明の他の実施形態に係るバルーンカテーテルの遠位端部を突出部側から見た平面図であり、
図12は
図11に示したバルーンカテーテルの遠位端部の長手軸方向の断面図である。
図13は
図7のさらなる変形例、即ちテーパー部にも内層露出部が設けられている本発明の他の実施形態に係るバルーンカテーテルの遠位端部を突出部側から見た平面図であり、
図14は
図13に示したバルーンカテーテルの遠位端部の長手軸方向の断面図である。なお、
図6、
図7、
図9、
図11、及び
図13のハッチングは断面を表すのではなく、わかりやすさのため内層露出部20Aをハッチングして示している。
【0019】
図1に示すように、バルーン2はバルーンカテーテル1に用いられる。バルーン2はシャフト30の遠位端部に接続され、シャフト30の内腔を通じて流体を導入することによりバルーン2を拡張させ、流体を排出することでバルーン2を収縮させることができる。バルーン2の拡張と収縮を制御するために、インデフレーター(バルーン用加圧器)を用いて流体を導入又は排出することができる。流体は、ポンプ等により加圧された加圧流体であってもよい。バルーンカテーテル1については、「2.バルーンカテーテル」の項で詳述する。
【0020】
バルーン2は、長手軸方向x1と、長手軸方向x1に垂直な断面においてバルーン2の外縁の図心と外縁上の点とを結ぶ径方向y1と、長手軸方向x1に垂直な断面においてバルーン2の外縁に沿う周方向z1を有する。本明細書において、長手軸方向x1において使用者の手元側の方向を近位側と称し、近位側とは反対側、即ち処置対象者の方向を遠位側と称する。
【0021】
バルーン2以外の部材や部分は、それぞれ長手軸方向、径方向、及び周方向を有し、それらはバルーン2の長手軸方向x1、径方向y1、及び周方向z1とは同じである場合もあり異なる場合もあるが、本明細書においては理解のし易さのために全ての部材や部分がバルーン2の長手軸方向x1、径方向y1、及び周方向z1と同じ長手軸方向、径方向、及び周方向を有しているとして説明する。
【0022】
図1~
図9に示すように、バルーン2は、径方向y1の外方に突出し長手軸方向x1に延在している突出部28を有している。突出部28は、バルーン2の突出部28が設けられていない部分の厚みよりも厚く形成されている部分である。即ち、
図2~
図4に示すように、突出部28は、バルーン2の突出部28が設けられていない部分の厚みを有するバルーン本体部20の外面よりも径方向y1の外方に突出している部分であると言い換えることもできる。
【0023】
バルーン2の突出部28における厚みは、例えば、バルーン2の突出部28が設けられていない部分の厚みの1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上がより好ましく、1.8倍以上、2.0倍以上、2.5倍以上がさらに好ましい。バルーン2の突出部28における厚みの上限は特に限定されず、例えば、バルーン2の突出部28が設けられていない部分の厚みの30倍以下、20倍以下、10倍以下であってもよい。
【0024】
バルーン本体部20はバルーン2の基本形状を規定し、突出部28はバルーン本体部20の外側面に線状、点状、網状、らせん状等の任意のパターンで好ましく設けられている。突出部28によりバルーン2はスコアリング機能が付与され、バルーン2は血管形成術において石灰化した狭窄部に亀裂を入れて拡張することが可能になる。また、突出部28は、バルーン2の強度向上や加圧時の過拡張の抑制にも寄与できる。
【0025】
図2に示すように、突出部28は周方向z1に1又は複数設けられている。突出部28の周方向z1における数は、1以上、2以上、3以上、4以上、6以上であってもよく、また、20以下、15以下、10以下であってもよい。突出部28が周方向z1において複数設けられる場合、複数の突出部28は周方向z1に離隔していることが好ましく、周方向z1に等間隔に配されていることがより好ましい。離隔距離は、突出部28の最大周長よりも長いことが好ましい。
【0026】
長手軸方向x1に垂直な断面における突出部28の断面形状は任意であってよく、例えば、三角形、四角形、多角形、半円形、円形の一部、略円形、扇型、楔形、凸字形、紡錘形、及びそれらの組み合わせ等であってもよい。なお、三角形、四角形、及び多角形は、角部の頂点が明確であって辺部が直線であるものの他に、角部が丸みを帯びている所謂角丸多角形や、辺部の少なくとも一部が曲線となっているものも含むものとする。或いは、突出部28の断面形状は、凹凸や欠け等を有した不定形な形状であってもよい。
【0027】
図2に示すように、後述する内層露出部20Aが設けられている部分以外の突出部28は、径方向y1の外方端である頂部28tを有していてもよい。突出部28が頂部28tを有していれば、突出部28による切開効率を向上できる。
【0028】
突出部28が線状又は点状に形成されている場合、突出部28は長手軸方向x1に沿って延在するように配されていることが好ましい。或いは、突出部28は、長手軸周りにらせん状に延在するように配されていてもよい。
【0029】
図示していないが、バルーン2は、径方向y1の内方に突出している内側突出部を有していてもよい。内側突出部は長手軸方向x1に延在していることが好ましい。突出部28と内側突出部は、バルーン2の長手方向x1や周方向z1において同じ位置に配置されていることが好ましく、これらは一体形成されていることが好ましい。突出部28とバルーン本体部20と内側突出部とが一体に厚く形成されていることにより、バルーン2が突出部28と内側突出部とを有していてもよい。
【0030】
バルーン2は、外層20bと、外層20bよりもショアD硬度が低い材料から構成されている内層20aとを有している。バルーン2は、後段にて詳述する内層露出部20A以外の部分において、全ての部分で内層20aと外層20bからなる2層構造を有していることが好ましい。詳細には、内層露出部20A以外の部分において、長手軸方向x1の任意の位置における周方向z1の360°全体にわたって内層20aと外層20bが連続して存在していることが好ましい。これにより、内層露出部20A以外ではバルーン2の外側面はショアD硬度の高い外層20bで形成されるため、バルーン2の外側面が傷つきにくく強度を向上できる。また、突出部28の外側面もショアD硬度の高い外層20bで形成されるため、突出部28のスコアリング機能を高めることができる。
【0031】
内層20aのショアD硬度は、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上であることが好ましく、また、70以下、65以下、60以下、55以下であることが好ましい。外層20bのショアD硬度は、70超、72以上、74以上、75以上であることが好ましく、また、90以下、85以下、80以下であることが好ましい。内層20aのショアD硬度が上記範囲であれば、バルーン2の柔軟性向上に寄与することができる。外層20bのショアD硬度が上記範囲であれば、バルーン2の強度向上や突出部28のスコアリング機能向上に寄与することができる。
【0032】
ショアD硬度は、例えば、JIS K6253-2:2012の記載に基づきタイプDデュロメータを用いて測定することができる。また、内層20aと外層20bの各ショアD硬度は、バルーン2に成形する前の材料の段階のショアD硬度であってもよい。
【0033】
外層20bの材料としては、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂が好適に用いられる。内層20aの材料としては、ショアD硬度が小さい観点から熱可塑性エラストマーを用いることが好ましく、例えば、ポリエーテルブロックアミド共重合体等のポリアミドエラストマーが好適に用いられる。
【0034】
図1に示すように、バルーン2は、長手軸方向x1に近位端と遠位端とを有しており、直管部23と、直管部23よりも近位側に位置している近位側テーパー部22と、近位側テーパー部22よりも近位側に位置している近位側スリーブ部21と、直管部23よりも遠位側に位置している遠位側テーパー部24と、遠位側テーパー部24よりも遠位側に位置している遠位側スリーブ部25とを有している。直管部23は、長手軸方向x1においておよそ同じ径を有している略円柱状であることが好ましいが、長手軸方向x1において異なる径を有していてもよい。近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24は、直管部23から離れるにつれて縮径して略円錐状、円錐台状に形成されていることが好ましい。直管部23が最大径を有することにより、バルーン2を狭窄部等の病変部において拡張させた際に、直管部23が病変部に十分接触して病変部の拡張等の治療を行い易くできる。また、近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24が縮径されていることにより、バルーン2を収縮させた際に、バルーン2の近位端部及び遠位端部の外径を小さくしてシャフト30とバルーン2との段差を小さくすることができるため、バルーン2を体腔内に挿通し易くすることができる。
【0035】
近位側テーパー部22、直管部23、及び遠位側テーパー部24がバルーン2に流体を導入した際に拡張する部分であるのに対し、近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部25は拡張しないことが好ましい。これにより、近位側スリーブ部21の少なくとも一部をシャフト30の遠位端部と固定し、遠位側スリーブ部25の少なくとも一部を後述するインナーシャフト60と固定する構成とすることができる。
【0036】
バルーン2は、近位側スリーブ部21、近位側テーパー部22、直管部23、遠位側テーパー部24、遠位側スリーブ部25の各領域において、突出部28を有していることが好ましい。これにより、バルーン2の任意の位置に設けられた突出部28により狭窄部を拡張することができる。特に、直管部23に設けられた突出部28はスコアリング機能の向上に寄与できる。また、突出部28はバルーン2の強度向上や加圧時の過拡張の抑制に寄与することができる。
【0037】
図2、
図3、
図5~
図9に示すように、直管部23の少なくとも1つの突出部28は、外層20bが存在していない内層露出部28Aを有しており、径方向y1の外方から見たとき周方向z1において内層露出部20Aは外層20bに挟まれている。
【0038】
図4に示すように、スリーブ部の突出部28やテーパー部の突出部28は内層露出部20Aを有していなくてもよい。
【0039】
図2、
図3、及び
図5に示すように、内層露出部20Aが設けられた突出部28は、外層20bが存在せず内層20aが突出部28の表面となる部分を有している。
図5及び
図6に示すように、内層露出部20Aが設けられた突出部28を径方向y1の外方から見たとき、周方向z1において内層露出部20Aは外層20bに挟まれている。これにより、内層露出部20Aが設けられた突出部28の径方向y1の外端部には、内層20aが存在することができる。
【0040】
直管部23の少なくとも1つの突出部28がショアD硬度の低い材料から構成されている内層露出部20Aを有していることにより、バルーン2の柔軟性を高めてトラッカビリティを向上できる。また、径方向y1の外方から見たとき周方向z1において内層露出部20AはショアD硬度が高い外層20bに挟まれているため、所定以上の剛性を確保でき、バルーン2の挿通性を向上できる。さらに、直管部23において内層露出部20Aが形成されている突出部28であっても、内層露出部20Aの両端には硬度の高い外層20bが存在するため、この外層20bが狭窄部の拡張に寄与することができる。
【0041】
また、本発明の一実施形態において、狭窄部へのバルーン2の挿入時や体内からの抜去時には、バルーン2の内腔から流体を排出して収縮させ、シャフト30にバルーン2の羽根形状部を巻きつけることによりバルーン2の外径を小さくする。このとき、直管部23はバルーン径が大きいため、拡張部23に設けられた突出部28は羽根形状部に覆われる。このように羽根形状部が突出部28に巻き付いた状態で羽根形状部が突出部28に接すると、突出部28により羽根形状部が損傷することがあるが、直管部23の少なくとも1つの突出部28がショアD硬度の低い材料から構成されている内層露出部20Aを有していることにより、羽根形状部の損傷を防止できる。さらに、内層露出部20Aにおける突出部28の高さを低くすることにより、羽根形状部が突出部28に巻き付いた状態の外径を小さくすることができるため、バルーン2の挿通性を向上できる。
【0042】
内層露出部20Aは、突出部28の頂部28t側を長手軸方向x1に沿って切除することで形成できる。内層露出部20Aを形成する方法については、「3.バルーンカテーテルの製造方法」の項で詳述する。
【0043】
図4に示すように、内層露出部20Aが形成されていない部分においては、バルーン2は全体にわたって内層20aと外層20bからなる2層構造を有している。即ち、内層露出部20A以外の部分においては、バルーン2の突出部28が設けられていない部分から突出部28が設けられている部分にわたって内層20aと外層20bが周方向z1の360°全体に連続して存在できる。このため、ショアD硬度の高い外層20bにより、突出部28のスコアリング機能、バルーン2の強度及び挿通性を向上することができる。
【0044】
図2及び
図3に示すように内層露出部20Aが形成されている部分であっても、内層20aは、長手軸方向x1の任意の位置における垂直な断面において、周方向z1の360°全体にわたって連続して存在することができる。このため、外層20bよりもショアD硬度の低い内層20aによりバルーン2の柔軟性を向上することができる。
【0045】
また、
図2に示すように、内層露出部20Aが形成されている位置における長手軸方向x1に垂直な断面において、内層露出部20Aが形成されている突出部28が周方向z1に1つの場合、内層露出部20A以外の部分における外層20bは周方向z1に連続していることが好ましい。
図3に示すように内層露出部20Aが形成されている突出部28が周方向z1に複数ある場合は、周方向z1における内層露出部20Aと内層露出部20Aの間の外層20bは周方向z1に連続していることが好ましい。
【0046】
上記構成を有することにより、突出部28とバルーン本体部20とを一体成形することによりバルーン2を2層構造とすることができ、バルーン本体部20からの突出部28の脱落を防止することができる。
【0047】
内側突出部が設けられる場合も、バルーン2の内側突出部が設けられていない部分と内側突出部が設けられている部分の内層20aと外層20bは周方向z1に連続していることが好ましい。これにより、内側突出部とバルーン本体部20とを一体形成することができ、バルーン本体部20からの内側突出部の脱落を防ぐことができる。
【0048】
図8に示すように、内層露出部20Aが形成されている突出部28は、内層露出部20Aが形成されていない突出部28の高さ以下の高さを有していることが好ましい。突出部28の高さが低い部分によりバルーン2の外径を小さくできるため、バルーン2の挿通性を容易に向上できる。突出部28の高さは、長手軸方向x1に垂直な断面において、突出部28の両側の基端を結んだ線分から径方向y1における突出部28の外方端までの距離と定義できる。
【0049】
図7及び
図8に示すように、内層露出部20Aを有している少なくとも1つの突出部28において、内層露出部20Aは直管部23の長手軸方向x1における全域に配されていることが好ましい。長手軸方向x1において、バルーン2の中でも長い領域を占める直管部23の全域に内層露出部20Aが配されていることにより、バルーン2の柔軟性をいっそう向上させることができる。
【0050】
或いは、
図9に示すように、内層露出部20Aを有している少なくとも1つの突出部28において、内層露出部20Aは直管部23の長手軸方向x1における一部に配されていてもよい。このような構成により、内層露出部20Aが形成されている部分は柔軟性の向上に寄与し、内層露出部20Aが形成されていない部分は切開機能の向上に寄与することができる。
【0051】
図2に示すように、周方向z1に配されている複数の突出部28のうち、一部の突出部28は内層露出部20Aを有しており、残りの突出部28は内層露出部20Aを有していないことが好ましい。これにより、内層露出部20Aを有している突出部28によりバルーン2の柔軟性を向上できる。それとともに、内層露出部20Aを有していない突出部28はショアD硬度の高い外層20bが表面に存在しているため、切開機能を向上することができる。また、内層露出部20Aを有している突出部28であっても内層露出部20Aの周方向z1の両端には外層20bが配されているため所定以上の剛性は確保できるが、内層露出部20Aを有していない突出部28はさらに高い剛性を有するため、バルーン2の強度向上や加圧時の過拡張の抑制にさらに寄与することができる。
【0052】
或いは、
図3に示すように、周方向z1に配されている複数の突出部28の全てが内層露出部20Aを有していてもよい。長手軸方向x1においてバルーン2の中でも長い領域を占める直管部23の全ての突出部28が内層露出部20Aを有することにより、バルーン2の柔軟性をより高めてトラッカビリティをさらに向上できる。複数の突出部28の全てが内層露出部20Aを有していても、内層露出部20Aの周方向z1の両端には外層20bが配されているため、当該外層20bにより狭窄部の切開やバルーン2の強度向上が可能である。
【0053】
図5及び
図6に示すように、直管部23の突出部28において、内層露出部20Aの周方向z1の長さLaは、内層露出部20Aの両側のそれぞれの外層20bの周方向z1の長さLbよりも短いことが好ましい。直管部23において、内層20aよりもショアD硬度が高い外層20bが周方向z1により多く存在することにより、外層20bが狭窄部の切開により容易に寄与できる。また、バルーン2の剛性を高められるため、バルーン2の挿通性を向上できる。
【0054】
或いは、図示していないが、直管部23の突出部28において、内層露出部20Aの周方向z1の長さLaは、内層露出部20Aの両側のそれぞれの外層20bの周方向z1の長さLbよりも長くてもよい。内層露出部20A、即ちショアD硬度が外層20bよりも低い内層aが周方向z1により多く存在することにより、バルーン2の柔軟性がより向上し、さらに良好なトラッカビリティが期待できる。
【0055】
図10~
図12に示すように、バルーン2は、下記(1)及び(2)の少なくとも一方を満たしていることが好ましい。
(1)近位側スリーブ部21の突出部28は、外層20bが存在していない内層露出部28Aを有しており、径方向y1の外方から見たとき周方向z1において内層露出部28Aは外層20bに挟まれている。
(2)遠位側スリーブ部25の突出部28は、外層20bが存在していない内層露出部28Aを有しており、径方向y1の外方から見たとき周方向z1において内層露出部28Aは外層20bに挟まれている。
【0056】
近位側スリーブ部21及び/又は遠位側スリーブ部25に配される内層露出部20Aは、長手軸方向x1の全てに連続して配されていてもよいし、長手軸方向x1の一部に配されていてもよいし、複数の内層露出部20Aが長手軸方向x1に不連続に配されていてもよい。
【0057】
図10では遠位側スリーブ部25の内層露出部28Aを示したが、
図11及び
図12に示すように内層露出部28Aは近位側スリーブ部21と遠位側スリーブ部25の両方に設けられていてもよいし、近位側スリーブ部21と遠位側スリーブ部25のどちらか一方に設けられていてもよい。バルーン2が血管内腔を前進又は後退するとき、近位側スリーブ部21と遠位側スリーブ部25は先頭部分となる。そのため、近位側スリーブ部21と遠位側スリーブ部25に設けられた突出部28が血管内腔に接触することにより血管内腔壁が損傷する虞があるが、バルーン2が近位側スリーブ部21及び/又は遠位側スリーブ部25にショアD硬度の低い内層露出部20Aを有していれば、血管内腔壁の損傷を防止することができる。突出部28を径方向y1の外方から見たとき、内層露出部20Aは外層20bに挟まれているため、内層露出部20Aが設けられてショアD硬度の低い内層20aが露出している近位側スリーブ部21及び/又は遠位側スリーブ部25においても、突出部28は長手軸方向x1の剛性を確保できるため、バルーン2の挿通性の向上に寄与できる。
【0058】
また、本発明の一実施形態において、狭窄部へのバルーン2の挿入時や体内からの抜去時には、バルーン2の内腔から流体を排出して収縮させ、シャフト30にバルーン2の羽根形状部を巻きつけることによりバルーン2の外径を小さくする。このとき、スリーブ部は拡張しない部分であることから羽根形状部が形成されにくいため、スリーブ部に設けられた突出部28は羽根形状部に覆われずに露出することがある。このような場合であっても、バルーン2がスリーブ部に内層露出部20Aを有していれば、血管内腔壁の損傷を防止することができる。
【0059】
図11に示すように、バルーン2は、下記(3)及び(4)の少なくとも一方を満たしていることが好ましい。
(3)上記(1)を満たしており、長手軸方向x1において、近位側スリーブ部21の近位端を0%の位置S
P0、近位側スリーブ部21の近位側テーパー部22側の端を100%の位置S
P100としたとき、近位側スリーブ部21の内層露出部20Aは位置S
P0から75%の位置S
P75までの区間の少なくとも一部に配されている。
(4)上記(2)を満たしており、長手軸方向x1において、遠位側スリーブ部25の遠位端を0%の位置S
D0、遠位側スリーブ部25の遠位側テーパー部24側の端を100%の位置S
D100としたとき、遠位側スリーブ部25の内層露出部20Aは位置S
D0から75%の位置S
D75までの区間の少なくとも一部に配されている。
【0060】
図11には近位側スリーブ部21と遠位側スリーブ部25の両方が上記(3)と(4)を満たしている態様を示したが、バルーン2は上記(3)及び(4)の少なくとも一方を満たしていればよい。
【0061】
近位側スリーブ部21の位置SP0から位置SP75まで近位側の区間及び/又は遠位側スリーブ部25の位置SD0から位置SD75までの遠位側の区間の少なくとも一部に内層露出部20Aが配されていることにより、バルーン2が血管内腔で前進又は後退するときに先頭となる部分の突出部28においてショアD硬度の低い内層20aが露出させることができるため、血管内腔壁の損傷をより容易に防止できる。
【0062】
近位側スリーブ部21及び/又は遠位側スリーブ部25に配される内層露出部20Aは、上記区間において長手軸方向x1の全てに連続して配されていてもよいし、長手軸方向x1の一部に配されていてもよいし、複数の内層露出部20Aが長手軸方向x1に不連続に配されていてもよい。
【0063】
近位側スリーブ部21の内層露出部20Aは位置SP0から50%の位置までの区間の少なくとも一部に配されていることがより好ましい。また、遠位側スリーブ部25の内層露出部20Aは位置SD0から50%の位置までの区間の少なくとも一部に配されていることがより好ましい。
【0064】
図11に示すように、バルーン2は、下記(5)及び(6)の少なくとも一方を満たしていることが好ましい。
(5)上記(3)を満たしており、近位側スリーブ部21の内層露出部20Aは位置S
P0を含む区間に配されている。
(6)上記(4)を満たしており、遠位側スリーブ部25の内層露出部20Aは位置S
D0を含む区間に配されている。
【0065】
図11には近位側スリーブ部21と遠位側スリーブ部25の両方が上記(5)と(6)を満たしている態様を示したが、バルーン2は上記(5)及び(6)の少なくとも一方を満たしていればよい。
【0066】
近位側スリーブ部21の位置SP0を含む区間に内層露出部20Aが配されているとは、近位側スリーブ部21の近位端(位置SP0)に内層露出部20Aが配されていることを意味する。遠位側スリーブ部25の位置SD0を含む区間に内層露出部20Aが配されているとは、遠位側スリーブ部25の遠位端(位置SD0)に内層露出部20Aが配されていることを意味する。これにより、バルーン2が血管内腔で前進又は後退するときに最も先頭となる部分の突出部28においてショアD硬度の低い内層20aが露出しているため、血管内腔壁の損傷をさらに容易に防止できる。
【0067】
長手軸方向x1に垂直な方向において、スリーブ部の突出部28における内層露出部20Aの周方向z1の長さは、内層露出部20Aの両側のそれぞれの外層20bの周方向z1の長さよりも長いことが好ましい。内層露出部20A、即ちショアD硬度が外層20bよりも低い内層aが周方向z1により多く存在することにより、血管内腔壁の損傷防止効果をより向上することができる。
【0068】
或いは、長手軸方向x1に垂直な方向において、スリーブ部の突出部28における内層露出部20Aの周方向z1の長さは、内層露出部20Aの両側のそれぞれの外層20bの周方向z1の長さよりも短くてもよい。内層20aよりもショアD硬度が高い外層20bが周方向z1により多く存在することにより、剛性を向上でき、長手軸方向x1の挿通性をより向上することができる。
【0069】
図12に示すように、スリーブ部において内層露出部20Aが配されている部分の突出部28は、内層露出部20Aが配されていない部分の突出部28の高さ以下の高さを有していることが好ましい。バルーン2が血管内腔を前進又は後退するときに先頭となる近位側スリーブ部及び/又は遠位側スリーブ部25の突出部28が、高さの低い部分を有していることにより、バルーン2の挿通性をより容易に向上できる。
【0070】
図12には近位側スリーブ部21と遠位側スリーブ部25の両方が内層露出部20Aを有しており、当該部分の突出部28の高さが低い態様を示したが、バルーン2は近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部25の少なくとも一方において突出部28の高さが低い部分を有していればよい。
【0071】
図13及び
図14に示すように、バルーン2は、下記(7)及び(8)の少なくとも一方を満たしていることが好ましい。
(7)近位側テーパー部22の突出部28は、外層20bが存在していない内層露出部20Aを有しており、径方向y1の外方から見たとき周方向z1において内層露出部20Aは外層20bに挟まれている。
(8)遠位側テーパー部24の突出部28は、外層20bが存在していない内層露出部20Aを有しており、径方向y1の外方から見たとき周方向z1において内層露出部20Aは外層20bに挟まれている。
【0072】
図13及び
図14に示すように、内層露出部20Aが設けられた突出部28は、外層20bが存在せず内層20aが突出部28の表面となる部分を有している。
図13に示すように、内層露出部20Aが設けられたテーパー部の突出部28を径方向y1の外方から見たとき、周方向z1において内層露出部20Aは外層20bに挟まれている。これにより、内層露出部20Aが設けられたテーパー部の突出部28の径方向y1の外端部には内層20aが存在することができる。
【0073】
テーパー部に配される内層露出部20Aは、長手軸方向x1の全てに連続して配されていてもよいし、長手軸方向x1の一部に配されていてもよいし、複数の内層露出部20Aが長手軸方向x1に不連続に配されていてもよい。
【0074】
図13及び
図14では、近位側テーパー部22と遠位側テーパー部24の両方に内層露出部20Aが設けられている態様を示したが、内層露出部20Aは近位側テーパー部22と遠位側テーパー部24の両方に設けられていてもよいし、近位側テーパー部22と遠位側テーパー部24のどちらか一方に設けられていてもよい。テーパー部は直管部23よりも縮径しているため、狭窄部へのバルーン2の挿入時や体内からの抜去時にバルーン2の内腔から流体を排出して収縮させシャフト2にバルーン2の羽根形状部を巻き付けた際に、形成される羽根形状部が短く、羽根形状部から突出部28が露出することがある。このような場合に、テーパー部の突出部28が内層露出部20Aを有していることにより、血管内腔壁の損傷を防止することがより容易になる。また、テーパー部の突出部28を径方向y1の外方から見たとき、内層露出部20Aは外層20bに挟まれているため、内層露出部20Aが形成されている部分においても突出部28は長手軸方向x1の剛性を確保できるため、バルーン2の挿通性を向上できる。
【0075】
テーパー部における内層露出部20Aを含む突出部28の構成については、上記スリーブ部における説明の「スリーブ部」を「テーパー部」に読み替えることで理解することができる。
【0076】
内層露出部20Aはスリーブ部から連続してテーパー部に形成されていてもよいし、スリーブ部の内層露出部20Aとテーパー部の内層露出部20Aは不連続に形成されていてもよい。或いは、例えば、近位側スリーブ部21に内層露出部20Aが形成され遠位側スリーブ部25には内層露出部20Aが形成されない態様(上記(1)のみを満たす態様)において、遠位側テーパー部24に内層露出部20Aが形成されていてもよく、遠位側スリーブ部25に内層露出部20Aが形成され近位側スリーブ部21には内層露出部20Aが形成されない態様(上記(2)のみを満たす態様)において、近位側テーパー部22に内層露出部20Aが形成されていてもよい。
【0077】
内層露出部20Aにおいて、長手軸方向x1に垂直な断面における内層露出部20A(内層20a)の周方向z1の長さは、長手軸方向x1の位置により一定であってもよいし変化していてもよい。例えば、
図13に示す直管部23の内層露出部20Aのように、内層露出部20A(内層20a)の周方向z1の長さは、長手軸方向x1に沿って一定とすることができる。或いは、
図13に示すテーパー部の内層露出部20Aのように、内層露出部20A(内層20a)の周方向z1の長さは、長手軸方向x1に沿って変化していてもよく、例えば、内層露出部20A(内層20a)の周方向z1の長さは、バルーン2の端部から直管部23に近い側にかけて漸減していてもよい。なお、勿論のことながら、直管部23に形成される内層露出部20Aにおいても、周方向z1の長さは長手軸方向x1に沿って変化していてもよい。
【0078】
図13に示すように、バルーン2は、下記(9)及び(10)の少なくとも一方を満たしていることが好ましい。
(9)上記(7)を満たしており、長手軸方向x1において、近位側テーパー部22の近位側スリーブ部21側の端を0%の位置T
P0、近位側テーパー部22の直管部23側の端を100%の位置T
P100としたとき、近位側テーパー部22の内層露出部20Aは位置T
P0から75%の位置T
P75までの区間の少なくとも一部に配されている。
(10)上記(8)を満たしており、長手軸方向x1において、遠位側テーパー部24の遠位側スリーブ部25側の端を0%の位置T
D0、遠位側テーパー部24の直管部23側の端を100%の位置T
D100としたとき、遠位側テーパー部24の内層露出部20Aは位置T
D0から75%の位置T
D75までの区間の少なくとも一部に配されている。
【0079】
図13及び
図14には近位側テーパー部22と遠位側テーパー部24の両方が上記(9)と(10)を満たしている態様を示したが、バルーン2は上記(9)及び(10)の少なくとも一方を満たしていればよい。
【0080】
近位側テーパー部22の位置TP0から位置TP75までの近位側の区間及び/又は遠位側テーパー部24の位置TD0から位置TD75までの区間は、テーパー部の中でもより縮径して形成されている部分であり、バルーン2を収縮させた際に羽根形状部から突出部28が露出しやすくなる部分である。このような部分に内層露出部20Aが配されていることにより、血管内腔壁の損傷防止効果をより向上することができる。
【0081】
近位側テーパー部22及び/又は遠位側テーパー部24に配される内層露出部20Aは、上記区間において長手軸方向x1の全てに連続して配されていてもよいし、長手軸方向x1の一部に配されていてもよいし、複数の内層露出部20Aが長手軸方向x1に不連続に配されていてもよい。
【0082】
近位側テーパー部22の内層露出部20Aは位置SP0から50%の位置までの区間の少なくとも一部に配されていることがより好ましい。また、遠位側テーパー部24の内層露出部20Aは位置SD0から50%の位置までの区間の少なくとも一部に配されていることがより好ましい。
【0083】
図13に示すように、バルーン2は、下記(11)及び(12)の少なくとも一方を満たしていることが好ましい。
(11)上記(9)を満たしており、近位側テーパー部22の内層露出部20Aは位置T
P0を含む区間に配されている。
(12)上記(10)を満たしており、遠位側テーパー部24の内層露出部20Aは位置T
D0を含む区間に配されている。
【0084】
図13には近位側テーパー部22と遠位側テーパー部24の両方が上記(11)と(12)を満たしている態様を示したが、バルーン2は上記(11)及び(12)の少なくとも一方を満たしていればよい。
【0085】
近位側テーパー部22の位置TP0を含む区間に内層露出部20Aが配されているとは、近位側テーパー部22の近位側スリーブ部21側の端(位置TP0)に内層露出部20Aが配されていることを意味する。遠位側テーパー部24の位置TD0を含む区間に内層露出部20Aが配されているとは、遠位側テーパー部22の遠位側スリーブ部25側の端(位置TD0)に内層露出部20Aが配されていることを意味する。これにより、テーパー部の中でも突出部28が最も羽根形状部から露出しやすい部分においてショアD硬度の低い内層20aが露出できるため、血管内腔壁の損傷防止効果をより容易に向上できる。
【0086】
図14に示すように、テーパー部において内層露出部20Aが配されている部分の突出部28は、内層露出部20Aが配されていない部分の突出部28の高さ以下の高さを有していることが好ましい。バルーン2が血管内腔を前進又は後退するときに、スリーブ部に次いで先頭となりスリーブ部よりも外径の大きなテーパー部の突出部28が、高さの低い部分を有していることにより、バルーン2の挿通性をさらに容易に向上できる。
【0087】
また、内層露出部20Aが形成されない部分、即ち表面にショアD硬度の高い外層20bが存在する部分は突出部28の高さが高いことから、当該部分が拡張部のうちバルーン2を前進・後退させる際の先頭となるテーパー部に配されることにより、バルーン2をほふく前進・後退させながら狭窄部を切開することができる。特に、
図14に示すように、テーパー部の中でも直管部23側の領域に内層露出部20Aが形成されない部分、即ち表面にショアD硬度の高い外層20bが存在する部分が配されることが好ましい。
【0088】
図14には近位側テーパー部22と遠位側テーパー部24の両方が内層露出部20Aを有しており、当該部分の突出部28の高さが低い態様を示したが、バルーン2は近位側テーパー部22及び遠位側テーパーブ24の少なくとも一方において突出部28の高さが低い部分を有していればよい。
【0089】
バルーン2が、周方向z1に複数の突出部28を有しており、直管部23に加えてスリーブ部及び/又はテーパー部にも内層露出部20Aを有している場合、スリーブ部及び/又はテーパー部における内層露出部20Aは複数の突出部28の全てに配されており、直管部23における内層露出部20Aは複数の突出部28のうち一部の突出部28に配されていてもよい。このような構成であれば、バルーン2の近位端側や遠位端側となるスリーブ部及び/又はテーパー部の柔軟性を向上しつつ、直管部23における内層露出部20Aによっても柔軟性を向上しながら内層露出部20Aが配されていない直管部23の突出部28により切開機能を向上することができる。或いは、複数の突出部28のうち所定の突出部28が直管部23とスリーブ部及び/又はテーパー部に内層露出部20Aを有しており、その他の突出部28は内層露出部20Aを有していない構成であってもよい。このような構成であれば、周方向z1における所定位置の柔軟性を向上し、他の位置の切開機能を向上する等のデザインが可能になる。また或いは、直管部23、スリーブ部及び/又はテーパー部における内層露出部20Aは、複数の突出部28のうちそれぞれ別の突出部28に形成されていてもよい。
【0090】
2.バルーンカテーテル
本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル1は、上記バルーンカテーテル用バルーン2を備える。上記「1.バルーンカテーテル用バルーン」の項にも記載したが、
図1に示すように、バルーン2はシャフト30の遠位端部に接続されている。
【0091】
図1には、シャフト30の遠位側から近位側に至る途中にガイドワイヤポート50を有し、ガイドワイヤポート50からシャフト30の遠位側までガイドワイヤ挿通路として機能するインナーシャフト60を有する、所謂ラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテル1を示している。バルーンカテーテル1は、遠位側シャフト31と近位側シャフト32を有していることが好ましく、遠位側シャフト31と近位側シャフト32は別部材であって、遠位側シャフト31の近位端部が近位側シャフト32の遠位端部に接続されることにより、バルーン2からバルーンカテーテル1の近位端部まで延在するシャフト30が構成されていてもよい。或いは、1つのシャフト30がバルーン2からバルーンカテーテル1の近位端部まで延在していてもよく、遠位側シャフト31や近位側シャフト32がさらに複数のチューブ部材から構成されていてもよい。
【0092】
シャフト30は内部に流体の流路とガイドワイヤ挿通路を有していることが好ましい。シャフト30が内部に流体の流路及びガイドワイヤの挿通路を有する構成とするには、例えば、シャフト30の内側に配置されているインナーシャフト60がガイドワイヤ挿通路として機能し、シャフト30とインナーシャフト60の間の空間が流体の流路として機能する構成とすることが挙げられる。このような構成の場合、インナーシャフト60がシャフト30の遠位端から延出してバルーン2を貫通し、バルーン2の遠位側がインナーシャフト60と接続され、バルーン2の近位側がシャフト30と接続されることが好ましい。
【0093】
シャフト30は、樹脂、金属、又は樹脂と金属の組み合わせから構成されていることが好ましい。シャフトの構成材料として樹脂を用いることにより、シャフト30に可撓性や弾性を付与し易くなる。また、シャフト30の構成材料として金属を用いることにより、バルーンカテーテル1の送達性を向上できる。シャフト30を構成する樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。シャフト30を構成する金属としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金、又はこれらの組み合わせが挙げられる。シャフト30が別部材の遠位側シャフト31と近位側シャフト32から構成される場合、例えば、遠位側シャフト31が樹脂から形成され、近位側シャフト32が金属から形成される構成とすることができる。また、シャフト30は、異なる材料又は同じ材料による積層構造を有していてもよい。
【0094】
バルーン2とシャフト30との接合は、接着剤による接着、溶着、バルーン2の端部とシャフト30とが重なっている箇所にリング状部材を取り付けてかしめること等が挙げられる。中でも、バルーン2とシャフト30とは、溶着により接合されていることが好ましい。バルーン2とシャフト30とが溶着されていることにより、バルーン2を繰り返し拡張又は収縮させてもバルーン2とシャフト30との接合が解除されにくく接合強度を向上できる。
【0095】
バルーンカテーテル1の遠位端部には、先端部材70が設けられていることが好ましい。先端部材70は、インナーシャフト60とは別部材としてバルーン2の遠位端部に接続されることでバルーンカテーテル1の遠位端部に設けられてもよいし、バルーン2の遠位端よりも遠位側まで延在したインナーシャフト60が先端部材70として機能してもよい。
【0096】
バルーン2の内部のインナーシャフト60上には、バルーン2の位置をX線透視化で確認できるように、長手軸方向x1においてバルーン2が位置する部分にX線不透過マーカー80が配置されていてもよい。X線不透過マーカー80は、バルーン2の直管部23の両端に相当する位置に配されることが好ましく、直管部23の長手軸方向x1の中央に相当する位置に配されてもよい。
【0097】
シャフト30の近位側にはハブ5が設けられていてもよく、ハブ5にはバルーン2の内部に供給される流体の流路と連通した流体注入部6が設けられていることが好ましい。
【0098】
シャフト30とハブ5との接合は、例えば、接着剤による接着、溶着等が挙げられる。中でも、シャフト30とハブ5とは接着により接合されていることが好ましい。シャフト30とハブ5とが接着されていることにより、例えば、シャフト30は柔軟性の高い材料から構成され、ハブ5は剛性の高い材料から構成されている等、シャフト30を構成する材料とハブ5を構成する材料とが異なっている場合に、シャフト30とハブ5の接合強度を高めてバルーンカテーテル1の耐久性を向上できる。
【0099】
図示していないが、本発明は、シャフトの遠位側から近位側にわたってガイドワイヤ挿通路を有している、所謂オーバーザワイヤ型のバルーンカテーテルにも適用できる。オーバーザワイヤ型の場合、インフレーションルーメン及びガイドワイヤルーメンが手元側に配置されるハブまで延在しており、各ルーメンの近位側開口が二又構造のハブに設けられていることが好ましい。
【0100】
ラピッドエクスチェンジ型のカテーテルの場合、遠位側シャフト31及び/又は近位側シャフト32の外壁に適宜コーティングが施されていることが好ましく、遠位側シャフト31と近位側シャフト32の両方にコーティングが施されていることがより好ましい。オーバーザワイヤ型のカテーテルの場合は、外側シャフトの外壁に適宜コーティングが施されていることが好ましい。
【0101】
コーティングは、目的に応じて親水性コーティング又は疎水性コーティングとすることができ、シャフト30を親水性コーティング剤又は疎水性コーティング剤に浸漬したり、シャフト30の外壁に親水性コーティング剤又は疎水性コーティング剤を塗布したり、シャフト30の外壁を親水性コーティング剤又は疎水性コーティング剤で被覆したりすることにより施すことができる。コーティング剤は、薬剤や添加剤を含んでいてもよい。
【0102】
親水性コーティング剤としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体などの親水性ポリマー、又はそれらの任意の組み合わせで作られた親水性コーティング剤等が挙げられる。
【0103】
疎水性コーティング剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、シリコーンオイル、疎水性ウレタン樹脂、カーボンコート、ダイヤモンドコート、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コート、セラミックコート、アルキル基やパーフルオロアルキル基で終端された表面自由エネルギーが小さい物質等が挙げられる。
【0104】
3.バルーンカテーテルの製造方法
本発明の実施形態に係るバルーンカテーテルの製造方法は、上記バルーンカテーテルの製造方法であって、径方向、周方向、及び長手軸方向を有し、長手軸方向に延在する内腔を有しているパリソンを準備するステップと、パリソンを二軸延伸して、近位側スリーブ部、近位側テーパー部、直管部、遠位側テーパー部、及び遠位側スリーブ部を有し、突出部を有するバルーンを製造するステップと、直管部の少なくとも1つの突出部の頂部側を長手軸方向に沿って切除して内層露出部を形成するステップと、を有しており、パリソンは、外層と、外層よりもショアD硬度が低い材料から構成されている内層と、を有しており、径方向の外方に突出し長手軸方向に延在している突出部を含む突出領域と、突出領域以外の非突出領域と、を有しており、長手軸方向に垂直な断面において、内層は、非突出領域において小厚部を有しており突出領域において小厚部よりも厚い厚みを有している大厚部を有している方法である。
【0105】
本発明の実施形態に係る方法では、パリソンが、外層と外層よりもショアD硬度が低い材料から構成されている内層とを有しており、突出領域と非突出領域とを有しており、長手軸方向に垂直な断面において、内層が非突出領域において小厚部を有しており突出領域において大厚部を有している。このようなパリソンを二軸延伸してバルーンを製造する方法において、パリソンの直管部に相当する部分の少なくとも1つの突出領域の頂部側を長手軸方向に沿って切除するか、又は、バルーンに成形後の直管部の少なくとも1つの突出部の頂部側を長手軸方向に沿って切除することにより、直管部に内層露出部を形成し、径方向の外方から見たとき周方向において内層露出部が外層に挟まれている「1.バルーンカテーテル用バルーン」を備える「2.バルーンカテーテル」を製造することができる。
【0106】
図15~
図24を参照しつつ、本発明の実施形態に係るバルーンカテーテルの製造方法を説明する。
図15は、本発明の一実施形態に係る二軸延伸前のパリソンの斜視図である。
図16は
図15に示したパリソンのXVI-XVI断面図(中厚部のない構成)であり、
図17は
図16に示したパリソンの製造に用いられるパリソン用金型の長手軸方向に垂直な断面図である。
図18は
図16の変形例を表す断面図であり(中厚部のある構成)、
図19は
図18に示したパリソンの製造に用いられるパリソン用金型の長手軸方向に垂直な断面図である。
図20は、本発明の実施形態に係る製造方法においてパリソンの二軸延伸に用いられる金型の長手軸方向の断面図である。
図21は
図20に示した金型のXXI-XXI断面図、即ち金型直管部の断面図であり、
図22は
図21の変形例を示す断面図である。
図23は
図20に示した金型のXXIII-XXIII断面図、即ち金型スリーブ部の断面図であり、
図24は、
図23の変形例を示す断面図である。
【0107】
まず、パリソン200を準備する。
図15に示すように、パリソン200は、樹脂から構成されており、内腔205を有する筒状の部材である。パリソン200は、第1端201と第2端202を有しており、第1端201から第2端202に向かう長手軸方向x2に延在している。パリソン200は、バルーン2と同様に径方向y2と周方向z2を有している。
【0108】
図16に示すように、パリソン200は、外層200bと、外層200bよりもショアD硬度が低い材料から構成されている内層200aとを有している。内層200a及び外層200bを構成する材料、並びにそれらのショアD硬度については、「1.バルーンカテーテル用バルーン」の項に記載した内層20a及び外層20bを構成する樹脂の説明、並びにそれらのショアD硬度についての記載を参照できる。
【0109】
パリソン200は、径方向y2の外方に突出し長手軸方向x2に延在している突出部208を含む突出領域R1と、突出領域R1以外の非突出領域R2とを有している。パリソン200を二軸延伸することにより、突出部208がバルーン2の突出部28に、非突出領域R2の部分が突出部28以外のバルーン本体部20に成形されることができる。
【0110】
図16に示すように突出部208は周方向z2に複数設けられていてもよいし、図示していないが突出部208は周方向z2に1つ設けられていてもよい。突出部208が周方向z2に複数設けられている場合は、複数の突出部208は周方向z2に離隔していることが好ましく、周方向z2に等間隔に配されていることがより好ましい。
【0111】
図16に示すように、長手軸方向x2に垂直な断面において、内層200aは、非突出領域R2において小厚部220を有しており突出領域R1において小厚部220よりも厚い厚みを有している大厚部210を有している。突出領域R1において内層200aが大厚部210を有していることにより、後述する切除工程において突出部208の頂部側を長手軸方向x2に沿って切除することにより内層露出部20Aを形成することができる。
【0112】
このようなパリソン200は、例えば、
図17に示すようなパリソン用金型250を用いて樹脂を押出成形することにより製造できる。
図17に示すように、パリソン用金型250は、第1筒状部材251、第2筒状部材252、及び第3筒状部材253を有しており、第1筒状部材251はパリソン200の内腔205を形成できるように円筒形状を有しており、第2筒状部材252は内層200aの大厚部210と小厚部220を形成できるように突出部を有する筒形状を有しており、第3筒状部材253は突出部208を形成できるように突出部を有する筒形状を有していることが好ましい。これにより、第1筒状部材251の外側面と第2筒状部材252の内側面との間の空間に内層200aを形成する樹脂を導入し、第2筒状部材252の外側面と第3筒状部材253の内側面との間の空間に外層200bを形成する樹脂を導入して押出成形することにより、内腔208、内層200a、及び外層200bを有し、突出領域R1において内層200aが大厚部210を有するパリソン200を製造することができる。
【0113】
パリソン用金型250を構成する材料は、金属であることが好ましく、鉄、銅、アルミニウム又はこれらの合金であることがより好ましい。例えば、鉄の合金としてはステンレス鋼等が挙げられ、銅の合金としては真鍮等が挙げられ、アルミニウムの合金としてはジュラルミン等が挙げられる。十分な導電性や強度を有する点や加工のし易さの点から、パリソン用金型250はステンレス鋼で構成されていることが好ましい。
【0114】
或いは、パリソン200は
図18に示すような構成を有していてもよい。即ち、長手軸方向x2に垂直な断面において、内層200aは、小厚部220よりも厚い厚みを有し大厚部210よりも薄い厚みを有する中厚部230を非突出領域R2において有しており、周方向z2において小厚部220は大厚部210と中厚部230の間に位置していてもよい。これにより、パリソン200を二軸延伸した際にバルーン2の突出部28における内層20aの厚みを厚くすることが容易になり、後述する切除工程においてバルーン2に成形した後に突出部28の頂部側を切除して内層露出部20Aを形成することが容易になる。
【0115】
図18に示すようなパリソン200は、例えば、
図19に示すようなパリソン用金型250を用いて樹脂を押出成形することにより製造できる。
図19に示すパリソン用金型250は、第2筒状部材252が内層200aの大厚部210、小厚部220、及び中厚部230を形成できるように、突出領域R1を形成する部分に突出部を有し、非突出領域R2を形成する部分に上記突出部よりも低い高さを有する低突出部を有する筒形状を有していることが好ましい。これにより、上記と同様の方法により、内腔208、内層200a、及び外層200bを有し、突出領域R1において内層200aが大厚部210を有し、非突出領域R2において内層200aが小厚部220と中厚部230を有するパリソン200を製造することができる。
【0116】
パリソン200を二軸延伸、即ちブロー成形することにより、近位側スリーブ部21、近位側テーパー部22、直管部23、遠位側テーパー部24、及び遠位側スリーブ部25を有し、突出部28を有するバルーン2を製造する。このとき、
図20に示すような金型300を用いることができる。金型300は、長手軸方向x3、径方向y3、及び周方向z3を有し、長手軸方向x3に延在しパリソン200が挿入される内腔305を有している。金型300の内腔305には、パリソン200の長手軸方向x2における一部が配置されることが好ましい。
【0117】
金型300は、長手軸方向x3において、バルーン2の直管部を形成する金型直管部300Cと、金型直管部300Cの両側に配されバルーン2のテーパー部を形成する2つの金型テーパー部300Tと、金型テーパー部300Tよりも金型直管部300Cから離れた側に配されバルーン2のスリーブ部を形成する2つの金型スリーブ部300Sを有していることが好ましい。これにより、金型直管部300Cによりバルーン2の直管部23が形成され、金型テーパー部300Tにより近位側テーパー部22及び遠位側テーパー部24が形成され、金型スリーブ部300Sにより近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部25が形成されることができる。
【0118】
金型300は、1つの部材から構成されていてもよく、複数の部材から構成されていてもよい。
図20に示すように、複数の金型部材が長手軸方向x3において互いに接続されることにより構成されていてもよく、例えば、金型直管部300C、金型テーパー部300T、及び金型スリーブ部300Sがそれぞれ異なる金型部材であり、これらが長手軸方向x3において互いに接続されていてもよい。また、金型300は、径方向yに分割可能であってもよい。これにより、金型300の内腔305にパリソン200を挿入しやすくなる。
図20に示すように、各金型部材は、隣り合う金型部材どうしを係合することにより接合されてもよいし、図示していないが隣り合う金型部材のそれぞれに磁石を取り付けて磁石の引力により接合されてもよい。
【0119】
図21に示すように、金型300の内腔305は、径方向y3の外方に凹み長手軸方向x3に延在している溝部310と溝部310以外の円筒壁部320から形成されていることが好ましい。これにより、溝部310にパリソン200の突出部208を入り込ませてバルーン2の突出部28を形成することができる。溝部310は周方向z3に複数設けられていてもよいし、図示していないが溝部310は周方向z3に1つ設けられていてもよい。溝部310が周方向z3に複数設けられている場合は、溝部310は周方向z3に離隔していることが好ましく、周方向z3に等間隔に配されていることがより好ましい。
【0120】
溝部310は、金型直管部300Cに設けられていることが好ましく、金型テーパー部300Tや金型スリーブ部300Sに設けられていてもよい。溝部310が金型直管部300Cに設けられていることにより、バルーン2の直管部23に突出部28を形成することができ、バルーン2による狭窄部の切開効率を高められる。金型テーパー部300Tや金型スリーブ部300Sに設けられる溝部310の深さは、金型直管部300Cに設けられる溝部310の深さよりも浅くてもよいし同等であってもよい。溝部310の深さは、後述する切除工程を行う順序により適宜選択できる。
【0121】
金型300を構成する材料は、金属であることが好ましく、鉄、銅、アルミニウム又はこれらの合金であることがより好ましい。例えば、鉄の合金としてはステンレス鋼等が挙げられ、銅の合金としては真鍮等が挙げられ、アルミニウムの合金としてはジュラルミン等が挙げられる。十分な導電性や強度を有する点や加工のし易さの点から、パリソン用金型300はステンレス鋼で構成されていることが好ましい。
【0122】
切除工程では、直管部23の少なくとも1つの突出部28の頂部側を長手軸方向x1に沿って切除することにより内層露出部20Aを形成する。切除工程は、パリソン200を二軸延伸してバルーン2に成形してから実施してもよい。このとき、突出部28の外層20bのみを切除してもよいし、突出部28の外層20bとともに内層20aの一部も切除してもよい。或いは、パリソン200を二軸延伸する前に、パリソン200の直管部23に相当する部分の少なくとも1つの突出部208の頂部側を長手軸方向x2に沿って切除し、この状態のパリソン200を二軸延伸することにより直管部23の少なくとも1つの突出部28の頂部側が切除されたバルーン2としてもよい。このとき、突出部208の外層200bのみを切除してもよいし、突出部208の外層200bとともに内層200aの一部も切除してもよい。これにより、直管部23が、外層20bが存在していない内層露出部20Aを有しており、径方向y1の外方から見たとき周方向z1において内層露出部20Aが外層20bに挟まれる部分を少なくとも1つの突出部28に有するようにバルーン2を製造することができる。
【0123】
切除工程をバルーン2に成形してから実施する場合は、切除工程により直管部23の突出部28の内層露出部20Aを有している部分の高さを低くできることから、
図21に示すように、バルーン2を成形する際の金型300の金型直管部部300Cにおける溝部310の深さは特に浅くする必要はない。
【0124】
切除工程をパリソン200の段階で実施する場合は、切除工程により突出部208の高さが低くなった部分を直管部23に形成するため、
図22に示すように、バルーン2を成形する際の金型300の金型直管部部300Cにおける溝部310の深さは浅くされていてもよい。
図22では周方向z3に複数設けられた溝部310の全てが浅い構成を示しているが、複数設けられた溝部310のうちの一部が浅くされていてもよい。
【0125】
本発明の実施形態に係る製造方法は、近位側スリーブ部21及び/又は遠位側スリーブ部25の突出部28の頂部側を長手軸方向x1に沿って切除して内層露出部20Aを形成するステップをさらに有していてもよい。このスリーブ部の切除工程についても、直管部23の場合と同様に、パリソン200を二軸延伸してバルーン2に成形してから実施してもよいし、パリソン200の段階で実施してもよい。
【0126】
スリーブ部の切除工程をバルーン2に成形してから実施する場合は、切除工程により近位側スリーブ部21及び/又は遠位側スリーブ部25の突出部28の高さを低くできることから、
図23に示すように、バルーン2を成形する際の金型300の金型スリーブ部300Sにおける溝部310の深さは特に浅くする必要はない。
【0127】
切除工程をパリソン200の段階で実施する場合は、切除工程により突出部208の高さが低くなった部分を近位側スリーブ部21及び/又は遠位側スリーブ部25に形成するため、
図24に示すように、バルーン2を成形する際の金型300の金型スリーブ部300Sにおける溝部310の深さは浅くされていてもよい。
【0128】
本発明の実施形態に係る製造方法は、近位側テーパー部22及び/又は遠位側テーパー部24の突出部28の頂部側を長手軸方向x1に沿って切除して内層露出部20Aを形成するステップをさらに有していてもよい。このテーパー部の切除工程についても、直管部23の場合と同様に、パリソン200を二軸延伸してバルーン2に成形してから実施してもよいし、パリソン200の段階で実施してもよい。
【0129】
テーパー部の切除工程をバルーン2に成形してから実施する場合は、切除工程により近位側テーパー部22及び/又は遠位側テーパー部24の突出部28の高さを低くできることから、バルーン2を成形する際の金型300の金型テーパー部300Tにおける溝部310の深さは特に浅くする必要はない。
【0130】
テーパー部の切除工程をパリソン200の段階で実施する場合は、切除工程により突出部208の高さが低くなった部分を近位側テーパー部22及び/又は遠位側テーパー部24に形成するため、バルーン2を成形する際の金型300の金型テーパー部300Tにおける溝部310の深さは浅くされていてもよい。
【符号の説明】
【0131】
1:バルーンカテーテル
2:バルーンカテーテル用バルーン
5:ハブ
6:流体注入部
20:バルーン本体部
20A:内層露出部
20a:内層
20b:外層
21:近位側スリーブ部
22:近位側テーパー部
23:直管部
24:遠位側テーパー部
25:遠位側スリーブ部
28:突出部
28t:頂部
30:シャフト
31:遠位側シャフト
32:近位側シャフト
50:ガイドワイヤポート
60:インナーシャフト
70:先端部材
80:マーカー
200:パリソン
200a:パリソンの内層
200b:パリソンの外層
201:パリソンの第1端
202:パリソンの第2端
205:パリソンの内腔
208:パリソンの突出部
210:大厚部
220:小厚部
230:中厚部
250:パリソン用金型
251:第1筒状部材
252:第2筒状部材
253:第3筒状部材
300:金型
300C:金型直管部
300S:金型スリーブ部
300T:金型テーパー部
305:金型の内腔
310:溝部
320:円筒壁部
La:内層露出部の周方向の長さ
Lb:内層露出部の両側のそれぞれの外層の周方向の長さ