IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミツミ電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-プッシュスイッチ 図1
  • 特開-プッシュスイッチ 図2
  • 特開-プッシュスイッチ 図3
  • 特開-プッシュスイッチ 図4
  • 特開-プッシュスイッチ 図5
  • 特開-プッシュスイッチ 図6
  • 特開-プッシュスイッチ 図7
  • 特開-プッシュスイッチ 図8
  • 特開-プッシュスイッチ 図9
  • 特開-プッシュスイッチ 図10
  • 特開-プッシュスイッチ 図11
  • 特開-プッシュスイッチ 図12
  • 特開-プッシュスイッチ 図13
  • 特開-プッシュスイッチ 図14
  • 特開-プッシュスイッチ 図15
  • 特開-プッシュスイッチ 図16
  • 特開-プッシュスイッチ 図17
  • 特開-プッシュスイッチ 図18
  • 特開-プッシュスイッチ 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140207
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】プッシュスイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/48 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H01H13/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051236
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173691
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 康久
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】樋垣 健
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 伸慈
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲也
【テーマコード(参考)】
5G206
【Fターム(参考)】
5G206AS33F
5G206AS33J
5G206AS33K
5G206AS33M
5G206AS34F
5G206AS34J
5G206AS34K
5G206AS34M
5G206DS02J
5G206DS02K
5G206ES04K
5G206ES04N
5G206ES33J
5G206ES33K
5G206FS12J
5G206FS32J
5G206FS32K
5G206FS32M
5G206FU03
5G206HW33
5G206HW44
5G206HW55
5G206JU64
5G206JU67
5G206KS15
5G206KS38
5G206NS02
5G206NS04
(57)【要約】
【課題】コイルバネを用いずに第1の状態から第2の状態までのストローク長が長いプッシュスイッチを提供すること。
【解決手段】プッシュスイッチ1は、収納部25を備えるケース2と、収納部25内に互いに離間して設けられた一対の固定接点3と、収納部25内に設けられたドーム状の可動接点4と、可動接点4よりも上側に設けられた弾性部材6と、弾性部材6よりも上側に設けられたキャップ7と、を含む。外部からキャップ7に押圧力が印加されていない第1の状態において、弾性部材6が可動接点4と間隙を介して対向している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板および前記底板から上方に延伸する複数の壁部によって規定される収納部を備える箱状のケースと、
前記収納部内の前記底板上に、互いに離間して設けられた一対の固定接点と、
前記収納部内において、前記一対の固定接点の上側に配置され、前記一対の固定接点を非導通状態とする第1の位置と、前記一対の固定接点を導通状態とする第2の位置との間で変位可能なドーム状の可動接点と、
前記収納部内において、前記可動接点の上側に位置するように設けられた可撓性の弾性部材と、
前記収納部内において、前記弾性部材の上側に位置するように設けられたキャップと、を含み、
外部から前記キャップに押圧力が印加されていない第1の状態において、前記弾性部材が前記可動接点と間隙を介して対向していることを特徴とするプッシュスイッチ。
【請求項2】
前記キャップに前記押圧力が印加されると、前記キャップは、前記弾性部材を下方に押圧して、前記弾性部材を下方に弾性変形させ、
前記弾性部材を下方に弾性変形させた際、前記弾性部材が、前記可動接点に接触し、前記可動接点を下方に押圧することにより、前記可動接点が前記第1の位置から前記第2の位置に変位する請求項1に記載のプッシュスイッチ。
【請求項3】
前記キャップは、前記収納部内に収納される板状のベース部と、前記ベース部から上方に突出する突出部と、前記ベース部から下方に突出する押圧部を備えている請求項1に記載のプッシュスイッチ。
【請求項4】
前記ケースと係合して、前記収納部内で前記キャップを保持するカバーをさらに含み、
前記カバーは、前記複数の壁部の上端部上に載置される平板状のトッププレートと、前記キャップの前記突出部を挿通させるよう前記トッププレートに形成された開口と、前記トッププレートの対向する一対の辺から下方に延伸する一対の延伸部と、を備え、
前記カバーの前記一対の延伸部が前記ケースと係合することにより、前記カバーが前記ケースに取り付けられている請求項3に記載のプッシュスイッチ。
【請求項5】
前記第1の状態において、前記キャップの前記押圧部は、前記弾性部材と接触し、前記弾性部材に対して、下方へのプリテンションを付与している請求項4に記載のプッシュスイッチ。
【請求項6】
前記第1の状態において、前記弾性部材の弾性復元力により、前記キャップに対して上方への押圧力が印加され、前記キャップの前記ベース部が前記トッププレートに押し付けられている請求項5に記載のプッシュスイッチ。
【請求項7】
前記ケースは、
前記収納部内において前記底板から上方に向かって突出し、前記可動接点が載置される可動接点用台座と、
前記収納部内において前記底板から上方に向かって突出し、さらに、前記可動接点用台座よりも外側に位置し、前記弾性部材が載置される弾性部材用台座と、を有しており、
前記可動接点用台座および前記弾性部材用台座のそれぞれの上面は、高さ方向に直交する平坦面であり、
前記弾性部材用台座の前記上面は、前記可動接点用台座の前記上面よりも上側に位置し、
前記第1の状態において、前記弾性部材用台座上に載置された前記弾性部材は、前記可動接点用台座上に載置された前記可動接点と前記間隙を介して対向している請求項1に記載のプッシュスイッチ。
【請求項8】
前記可動接点用台座上において、前記一対の固定接点の一方が露出しており、前記第1の状態において、前記可動接点と前記一対の固定接点の前記一方とが接触している請求項7に記載のプッシュスイッチ。
【請求項9】
前記弾性部材は、ラバーシートである請求項1に記載のプッシュスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、押圧操作によりクリック感を伴って動作するプッシュスイッチに関し、より具体的には、プッシュスイッチが第1の状態(自然状態)から第2の状態(導通状態)に移行するまでのストローク長が長いプッシュスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な電子機器の操作ボタンとして、ドーム状の可動接点を利用するプッシュスイッチが多く採用されている。このようなプッシュスイッチは、小型化および低背化可能であるとともに、ユーザーの押下により操作ボタンが動作した際に、良好なクリック感をユーザーに提供することができる。
【0003】
特許文献1は、図1に示されているようなプッシュスイッチ500を開示している。図1は、プッシュスイッチ500の断面図である。図1に示されているように、プッシュスイッチ500は、中央固定接点501aおよび外側固定接点501bを互いに絶縁した状態で内部に収納するケース502と、ケース502内に配置されるドーム状の可動接点503と、ドーム状の可動接点503の上面上に載置されたラバーシート504と、ラバーシート504の上面に載置されたキャップ505と、ケース502に上方から取り付けられ、キャップ505の一部を上側から覆うカバー506と、を備えている。
【0004】
図1に示すプッシュスイッチ500に外力が印加されていない第1の状態(自然状態)において、中央固定接点501aおよび外側固定接点501bは、互いに絶縁された状態でケース502によって保持されている。また、第1の状態において、可動接点503は、外側固定接点501bと接触しているが、中央固定接点501aとは接触していない。さらに、図1に示されているように、第1の状態において、可動接点503の頂部は、ラバーシート504の下面と接触しており、ラバーシート504の上面は、キャップ505の下面から下方に突出する下側突出部505aと接触している。
【0005】
第1の状態において、カバー506から上方に突出しているキャップ505の上側突出部505bに対して押圧操作が印加されると、キャップ505の下側突出部505aが、ラバーシート504を介して、可動接点503を下方に押圧する。この際、可動接点503の中央可動部が下方に変位して、中央固定接点501aと接触する。この結果、可動接点503を介して、中央固定接点501aと外側固定接点501bとが導通する。プッシュスイッチ500を用いるデバイスは、中央固定接点501aと外側固定接点501bとの間の導通を検出することにより、プッシュスイッチ500に対して押圧操作が実行されたことを判別し、所定の動作を実行する。
【0006】
また、可動接点503は、第1の状態において上側に凸のドーム形状を有する金属部材である。そのため、可動接点503に対して、上方から所定の作動力(プッシュスイッチ500を動作させるために必要な押圧力)以上の押圧力が印加されると、可動接点503の中央可動部は、下方に、急激に弾性変形する。このような急激な弾性変形は、プッシュスイッチ500に対して押圧操作を印加するユーザーに対してクリック感を提供することができる。ユーザーは、クリック感によって押圧操作が完了したことを認識することができる。また、キャップ505の下側突出部505aは、ラバーシート504を介して可動接点503を押圧する。この際、ラバーシート504が弾性変形するので、よりソフトなクリック感をユーザーに提供することができる。
【0007】
このような可動接点503の弾性変形を利用したプッシュスイッチ500の第1の状態から、押圧操作が完了し、中央固定接点501aと外側固定接点501bとが導通状態となる第2の状態までのストローク長(押し込み量)は、可動接点503の下方への弾性変形可能量によって制限されてしまう。プッシュスイッチ500が第1の状態から第2の状態まで移行するまでの間に、可動接点503の下方への弾性変形量が、可動接点503の下方への弾性変形可能量を超えてしまうと、可動接点503が破損してしまうためである。また、可動接点503のようなドーム形状を有する金属部材の下方へ弾性変形可能量は、非常に小さいことから、可動接点503の弾性変形を利用したプッシュスイッチ500の第1の状態から第2の状態までのストローク長が非常に小さくなってしまうという問題があった。
【0008】
特に、第1の状態から第2の状態までのストローク長が小さいと、意図しないタイミングでプッシュスイッチ500が第2の状態となり、誤動作を引き起こしてしまうリスクがある。例えば、プッシュスイッチ500を用いる電子デバイスをポケットに入れた際や該電子デバイスが何らかの物体に接触した際のわずかな押圧力によってプッシュスイッチ500が動作してしまい、プッシュスイッチ500の誤動作を引き起こす可能性がある。このように、ユーザーの意図しないタイミングで、プッシュスイッチ500が動作してしまう事でプッシュスイッチ500の信頼性が低下するという問題がある。
【0009】
このようなストローク長に起因する問題に対し、特許文献2は、図2に示されているようなコイルバネ606を用いたプッシュスイッチ600を開示している。図2は、プッシュスイッチ600の断面図である。図2に示されているように、プッシュスイッチ600は、中央固定接点601aおよび外側固定接点601bを互いに絶縁した状態で内部に収納するケース602と、ケース602内に配置されるドーム状の可動接点603と、ドーム状の可動接点603の上側に配置されたキャップ604と、ケース602に上方から取り付けられ、キャップ604の一部を上側から覆うカバー605と、ケース602の底面上に設けられ、下方からキャップ604を支持するコイルバネ606と、を備えている。コイルバネ606は、プッシュスイッチ600の押圧方向に弾性変形可能に構成されており、キャップ604に対して押圧力が印加された際、収縮する。第1の状態において、キャップ604は、コイルバネ606によって下側から支持されており、可動接点603と間隙を介して離間している。
【0010】
ユーザーがキャップ604に対して押圧力が印加されると、コイルバネ606の反発力による押圧感がユーザーに提供される。このような構成により、キャップ604が可動接点603に当接する前の段階から、ユーザーに対して押圧感を与えることができる。このような押圧感は、プッシュスイッチ600において、可動接点603の反発力によって提供される従来のストローク長とは別の追加的なストローク長をユーザーに提供する。したがって、プッシュスイッチ600の第1の状態から第2の状態までのストローク長を長くすることが可能となる。
【0011】
しかしながら、ドーム状の可動接点603とキャップ604との間に設けられたコイルバネ606は、上下に振動可能であるため、プッシュスイッチ600に対して衝撃や振動が印加された際に、コイルバネ606が上下に振動し、キャップ604がカバー605に衝突し、異音が発生するという問題や、ケース602内でのキャップ604のがたつきが発生し、プッシュスイッチ600の動作の安定性が損なわれるという問題があった。
【0012】
また、コイルバネ606を用いたプッシュスイッチ600を製造する際には、コイルバネ606をケース602の底面上であって所定の箇所に固定する工程と、コイルバネ606の上端をキャップ604の底面上に形成された挿入孔に挿入する工程を実行する必要がある。一般的にプッシュスイッチ600のサイズは非常に小さく、ケース602の底面上に固定されるコイルバネ606のサイズは、さらに小さい。そのような小さなコイルバネ606を所定の箇所で正確な姿勢で取り付ける上述の2つの工程の難易度は、高いものとなる。そのため、コイルバネ606を用いることにより、プッシュスイッチ600の製造難易度が増加し、プッシュスイッチ600の歩留まりが低下してしまうという問題があった。そのため、コイルバネ606を用いないシンプルな構成を有し、かつ、第1の状態から第2の状態までのストローク長が長いプッシュスイッチに対する非常に強いニーズが存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007-200737号公報
【特許文献2】特開2007-200738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みたものであり、その目的は、ユーザーに対してクリック感を提供することが可能であるとともに、コイルバネを用いないシンプルな構成を有し、かつ、第1の状態から第2の状態までのストローク長が長いプッシュスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような目的は、以下の(1)によって規定される本発明により達成される。
(1)底板および前記底板から上方に延伸する複数の壁部によって規定される収納部を備える箱状のケースと、
前記収納部内の前記底板上に、互いに離間して設けられた一対の固定接点と、
前記収納部内において、前記一対の固定接点の上側に配置され、前記一対の固定接点を非導通状態とする第1の位置と、前記一対の固定接点を導通状態とする第2の位置との間で変位可能なドーム状の可動接点と、
前記収納部内において、前記可動接点の上側に位置するように設けられた可撓性の弾性部材と、
前記収納部内において、前記弾性部材の上側に位置するように設けられたキャップと、を含み、
外部から前記キャップに押圧力が印加されていない第1の状態において、前記弾性部材が前記可動接点と間隙を介して対向していることを特徴とするプッシュスイッチ。
【発明の効果】
【0016】
本発明のプッシュスイッチにおいては、ドーム状の可動接点とキャップとの間に弾性部材が設けられており、かつ、プッシュスイッチに外力が印加されていない第1の状態において、ドーム状の可動接点は、弾性部材と間隙を介して対向している。そのため、従来技術の欄において述べたようなコイルバネを使用することなく、弾性部材の反発力によって提供される第1のストローク長と、可動接点の反発力および弾性部材の反発力によって提供される第2のストローク長を、ユーザーに提供することができる。したがって、本発明のプッシュスイッチのストローク長は、可動接点の弾性変形可能量によって制限されることなく、第1の状態から、一対の固定接点が導通状態となる第2の状態までのストローク長を長くすることができる。
【0017】
さらに、本発明のプッシュスイッチにおいては、従来技術の欄において述べたようなコイルバネが用いられていないため、コイルバネの振動により発生し得るがたつきや異音を防止することができる。また、本発明のプッシュスイッチは、従来技術の欄において述べたようなコイルバネを用いないシンプルな構成を有している。そのため、プッシュスイッチの製造難易度を低下させ、プッシュスイッチの歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来技術のプッシュスイッチの断面図である。
図2】もう一つの従来技術のプッシュスイッチの断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るプッシュスイッチ、および、該プッシュスイッチが搭載される回路基板を示す斜視図である。
図4図3に示すプッシュスイッチの別の角度からの斜視図である。
図5】第1の状態におけるプッシュスイッチの図3に示すA-A線に沿った断面図である。
図6図3に示すプッシュスイッチの分解斜視図である。
図7】中央固定接点および外側固定接点を内部に収納した状態のケースの断面斜視図である。
図8図6に示すケースの上面図である。
図9図6に示すケースの内部に収納された中央固定接点および外側固定接点の斜視図である。
図10図6に示すカバーの別の角度からの斜視図である。
図11図6に示すキャップの別の角度からの斜視図である。
図12図3に示すケースに対して熱溶着工程を施す前のプッシュスイッチの斜視図である。
図13】第2の状態におけるプッシュスイッチの断面図である。
図14図3に示すプッシュスイッチの荷重-変位グラフ(F-S曲線)である。
図15】本発明の第2実施形態に係るプッシュスイッチの分解斜視図である。
図16】第1の状態における本発明の第2実施形態に係るプッシュスイッチの断面図である。
図17図15に示す弾性部材の別の角度からの斜視図である。
図18】第2の状態における本発明の第2実施形態に係るプッシュスイッチの断面図である。
図19】本発明の第2実施形態に係るプッシュスイッチの荷重-変位グラフ(F-S曲線)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のプッシュスイッチを、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて、説明する。なお、以下で参照する各図は、本発明の説明のために用意された模式的な図である。図面に示された各構成要素の寸法(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法を反映したものではない。また、各図のZ軸の正方向を「上側」または「上方」といい、Z軸の負方向を「下側」または「下方」といい、Y軸の正方向を「前側」、「前方」、または「手前側」といい、Y軸の負方向を「後側」、「後方」、または「奥側」といい、X軸の正方向を「右側」といい、X軸の負方向を「左側」ということがある。
【0020】
<第1実施形態>
最初に、図3図14を参照して、本発明の第1実施形態に係るプッシュスイッチを詳述する。図3は、本発明の第1実施形態に係るプッシュスイッチ、および、該プッシュスイッチが搭載される回路基板を示す斜視図である。図4は、図3に示すプッシュスイッチの別の角度からの斜視図である。図5は、第1の状態におけるプッシュスイッチの図3に示すA-A線に沿った断面図である。図6は、図3に示すプッシュスイッチの分解斜視図である。図7は、中央固定接点および外側固定接点を内部に収納した状態のケースの断面斜視図である。図8は、図6に示すケースの上面図である。図9は、図6に示すケースの内部に収納された中央固定接点および外側固定接点の斜視図である。図10は、図6に示すカバーの別の角度からの斜視図である。図11は、図6に示すキャップの別の角度からの斜視図である。図12は、図3に示すケースに対して熱溶着工程を施す前のプッシュスイッチの斜視図である。図13は、第2の状態におけるプッシュスイッチの断面図である。図14は、図3に示すプッシュスイッチの荷重-変位グラフ(F-S曲線)である。
【0021】
図3に示す本発明の実施形態にかかるプッシュスイッチ1は、任意のデバイス内に設けられた回路基板100上に搭載される。プッシュスイッチ1は、ユーザーから、プッシュスイッチ1の作動力を超える押圧力が印加された際にオン状態となり、ユーザーから印加された押圧力が解除されるとオフ状態となるスイッチである。回路基板100を介して、プッシュスイッチ1の端子部314、323(図4参照)に電気的に接続されたデバイスは、端子部314、323間の導通状態を判別することにより、プッシュスイッチ1に対する押圧操作を検出することができる。プッシュスイッチ1の端子部314、323を回路基板100の対応する一対の端子130にそれぞれ接続(例えば、はんだ接続)することにより、プッシュスイッチ1が回路基板100上に搭載される。典型的には、プッシュスイッチ1は、ゲーム機器等のアミューズメント機器のコントローラーのスイッチとして用いることができる。
【0022】
図6に示されているように、プッシュスイッチ1は、底板21および底板21から上方に延伸する複数の壁部(前壁22、一対の側壁23、および後壁24)によって規定され、円筒状の接点収納空間251を有する円筒状の収納部25を備えるケース2と、収納部25の接点収納空間251内に互いに離間して設けられ、導通状態を提供可能な一対の固定接点3(中央固定接点31および外側固定接点32)(図5参照)と、収納部25の接点収納空間251内に設けられたドーム状の1つ以上の可動接点4と、収納部25内に、可動接点4よりも上側に位置し、接点収納空間251を封止するフィルム状の封止部材5と、収納部25内に、封止部材5の上側に位置するよう設けられた弾性部材6と、収納部25内において、弾性部材6上に載置されたキャップ7と、ケース2に取り付けられ、キャップ7を上方から押さえることにより、ケース2内においてキャップ7を保持するカバー8と、を含んでいる。
【0023】
ケース2は、絶縁性樹脂により形成され、上方に向かって開口する箱型部材である。図7に示されているように、ケース2は、中央固定接点31、および、外側固定接点32を互いに絶縁した状態で内部に保持する。また、図6~8に示されているように、ケース2は、底板21と、底板21の前側(+Y方向)の外縁部から上方に向かって延伸する前壁22と、底板21の両側(X方向)の外縁部から上方に向かってそれぞれ延伸する一対の側壁23と、底板21の後側(-Y方向)の外縁部から上方に向かって延伸する後壁24と、底板21、前壁22、一対の側壁23、および後壁24によって規定される収納部25と、一対の側壁23(具体的には、一対の第1の側壁231)のそれぞれの外側面上に設けられた係合部26と、を備えている。
【0024】
図7および図8に示されているように、底板21は、後方(-Y方向)に突出する略凸形の平面形状を有する板状部分であり、プッシュスイッチ1の基板として機能する。底板21は、底板21の上面上に形成された円形の中央部211と、中央部211上に、中央固定接点31の露出部311を露出させるために形成された第1の端子用スペース212と、底板21の上面上から、中央部211を囲むように上方に突出する断続的なリング状の可動接点用台座213と、可動接点用台座213の上面上に、外側固定接点32の露出部321を露出させるために形成された第2の端子用スペース214と、底板21の上面上から上方に突出し、可動接点用台座213よりも外側に位置するリング状の封止部材用台座215と、底板21の上面上から上方に突出し、封止部材用台座215よりも外側に位置するリング状の弾性部材用台座216と、を備えている。
【0025】
さらに、図4に示されているように、底板21および一対の側壁23の後側(-Y方向)端部が垂直に切り欠かれており、後側(-Y方向)に向かって突出する係合凸部217が形成されている。係合凸部217の下面(-Z方向の面)および上面(+Z方向の面)は、高さ方向(Z方向)に直交する対向する平坦面であり、係合凸部217の一対の側面は、X方向に直交する対向する平坦面である。したがって、底板21は、前側(+Y方向)に位置する第1の底面21aと、第1の底面21aよりも後側(-Y方向)かつ上側(+Z方向)に位置する第2の底面21bと、を有している。
【0026】
さらに、係合凸部217と、底板21の第1の底面21aとの間に、段差面である第1の係止壁218が形成されている。また、底板21は、第1の係止壁218上であって、中央固定接点31の接続部315および外側固定接点32の接続部324をそれぞれ露出させるために形成された一対の第3の端子用スペース219を備えている。
【0027】
図7および図8に示されているように、中央部211は、底板21の上面の略中心に位置する略円形の平面部分であり、収納部25の底部である。また、図8に示されているように、高さ方向(Z方向)からの平面視において、中央部211は、収納部25の内周面(すなわち、前壁22、一対の側壁23、および後壁24の内側面によって形成される円筒空間)と同心となっている。図7に示されているように、中央部211の上面と、中央固定接点31の露出部311の上面とが略同一平面上に位置するよう、中央固定接点31がケース2によって保持される。
【0028】
図7および図8に示されているように、第1の端子用スペース212は、中央部211上に、中央部211と同心となるよう形成された略円形の凹部である。第1の端子用スペース212は、中央固定接点31の露出部311に対応した形状を有しており、第1の端子用スペース212内に露出部311が位置し、露出部311の上面のみが、上方に向かって露出する。
【0029】
可動接点用台座213は、底板21の上面上から、上方に向かって突出するよう形成された、中央部211と同心の不連続なリング状の台座であり、可動接点4が載置される。また、可動接点用台座213は、リング形状を2か所(図8中の右斜め上部分および左斜め下部分)を切り欠くことにより得られる2つの円弧状部材からなる。可動接点用台座213の上面は、高さ方向(Z方向)に直交する平坦面であり、可動接点用台座213の内周面は、収納部25の内周面と同心な円弧面である。
【0030】
図8に示されているように、第2の端子用スペース214は、可動接点用台座213の2つの円弧状部材のうち、図8中の右下の部材の上面上に形成されている。さらに、第2の端子用スペース214は、封止部材用台座215の内側面に接触している円弧状の凹部である。第2の端子用スペース214は、外側固定接点32の露出部321に対応する形状を有している。図7に示されているように、第2の端子用スペース214内に露出部321が位置し、露出部321の上面のみが、上方に向かって露出する。
【0031】
封止部材用台座215は、底板21の上面上であって、可動接点用台座213よりも外側に位置する部分から、上方に向かって突出するよう形成された、中央部211と同心の連続的なリング状形状を有する突出部である。封止部材用台座215は、封止部材用台座215の内側面が可動接点用台座213の外側面に連続するよう形成されており、高さ方向からの平面視において、可動接点用台座213を外側から完全に囲んでいる。また、封止部材用台座215の上面は、高さ方向(Z方向)に直交する平坦面であり、封止部材用台座215の上面は、可動接点用台座213の上面よりも上側に位置している。さらに、封止部材用台座215の内周面は、収納部25の内周面と同心な円弧面である。また、封止部材用台座215の内周面によって規定される接点収納空間251の内径は、可動接点4の外径と略等しい。
【0032】
弾性部材用台座216は、底板21の上面上であって、封止部材用台座215よりも外側に位置する部分から、上方に向かって突出するよう形成された、中央部211と同心の連続的なリング状形状を有する突出部である。弾性部材用台座216は、弾性部材用台座216の内側面が封止部材用台座215の外側面に連続するよう形成されており、高さ方向からの平面視において、封止部材用台座215を外側から完全に囲んでいる。弾性部材用台座216の上面は、高さ方向(Z方向)に直交する平坦面であり、弾性部材用台座216の上面は、封止部材用台座215の上面よりも上側に位置している。さらに、弾性部材用台座216の内周面は、収納部25の内周面と同心な円弧面である。また、弾性部材用台座216の内周面によって規定される円筒空間の内径は、封止部材5の外径と略等しい。
【0033】
図4に戻り、係合凸部217は、底板21および一対の側壁23の後側(-Y方向)端部を垂直に切り欠くことにより形成された、後方(-Y方向)に向かって突出する部分である。プッシュスイッチ1が回路基板100に取り付けられた状態において、係合凸部217の下面(-Z方向の面)および一対の側面が、回路基板100の係合凹部120と係合する。係合凸部217が係合凹部120と係合するため、回路基板100に対するプッシュスイッチ1のがたつきを防止することができる。
【0034】
第1の係止壁218は、係合凸部217と、底板21の第1の底面21aとの間の段差面であって、XZ平面に延伸し、前後方向(Y方向)と直交する。また、係合凸部217と一対の側壁23のそれぞれの第1の側壁231との間に、後述する第2の係止壁233が形成されている。図3に示されているように、プッシュスイッチ1が回路基板100に取り付けられた状態において、第1の係止壁218および一対の第2の係止壁233が、回路基板100の前側面と当接する。第1の係止壁218および第2の係止壁233が、が回路基板100の前側面と当接することにより、回路基板100に対するプッシュスイッチ1の後方(-Y方向)への移動が制限される。
【0035】
図4に戻り、一対の第3の端子用スペース219のそれぞれは、第1の係止壁218上であって、係合凸部217の下面(-Z方向の面)と隣接する部分に形成された矩形状の凹部である。一対の第3の端子用スペース219は、後述する中央固定接点31の接続部315および外側固定接点32の接続部324にそれぞれ対応する形状を有している。一対の第3の端子用スペース219の一方(+X方向に位置する第3の端子用スペース219)内には、中央固定接点31の接続部315が位置し、接続部315の後側面のみが後方に向かって露出する。一対の第3の端子用スペース219の他方(-X方向に位置する第3の端子用スペース219)内には、外側固定接点32の接続部324が位置し、接続部324の後側面のみが露出する。
【0036】
図6および図8に戻り、前壁22は、底板21の前側の外縁部から上方に向かって直線状に延伸し、底板21と一体的に形成されており、かつ、前後方向(Y方向)と直交する壁部である。前壁22の上面は、高さ方向に対して直交する平坦面となっている。さらに、前壁22は、前壁22の上面のX方向の両端部上から上方に向かって突出する2つの前側ボス221を有している。2つの前側ボス221は、後述するカバー8の2つの前側ボス穴812にそれぞれ挿通され、プッシュスイッチ1の組み立て後に、上方から加熱および押圧される(熱溶着処理)。この熱溶着処理により、2つの前側ボス221がカバー8の2つの前側ボス穴812と一体化し、カバー8がケース2に固定される。
【0037】
一対の側壁23は、底板21の両側(X方向)の外縁部から上方に向かって直線状にそれぞれ延伸しており、底板21と一体的に形成されている。一対の側壁23の前端部は、前壁22の両側端部にそれぞれ接続されている。一対の側壁23は、収納部25を介して互いに離間して、左右方向(X軸方向)で対向している。一対の側壁23のそれぞれの上面は、高さ方向に対して直交する平坦面となっている。また、一対の側壁23のそれぞれは、一対の側壁23のそれぞれの前側に位置する第1の側壁231と、第1の側壁231よりも後側、かつ、内側に位置する第2の側壁232と、を有している。
【0038】
第1の側壁231は、一対の側壁23のそれぞれの前側に位置しており、前壁22の両側端部のそれぞれから後方に直線状に延伸している壁部である。第1の側壁231は、係合凸部217との間の段差面であり、前後方向と直交する第2の係止壁233と、第1の側壁231の外側面上に形成されたガイド溝234と、ガイド溝234の下端部に形成されたパンチング用溝235と、ガイド溝234の下端部を左右方向から挟み込むように形成された一対のストッパー236と、第1の側壁231の外側面の下側かつ前側の部分に形成された係合部26と、を有している。
【0039】
第2の係止壁233は、第1の側壁231の後端部を垂直に切り欠くことにより形成され、前後方向(Y方向)と直交する壁部である。さらに、第2の係止壁233の内側部は、第2の側壁232の前端部に接続されている。第2の係止壁233の後側面は、前後方向に対して垂直な平坦面であり、プッシュスイッチ1が回路基板100に取り付けられた状態において、回路基板100の前側面と当接する。
【0040】
図6に示されているように、ガイド溝234は、第1の側壁231の外側面上に形成され、高さ方向(Z方向)に直線状に延伸する凹部である。ガイド溝234は、後述するパンチング加工の際にパンチング加工用のカッティングボードの挿入をガイドする機能を有している。中央固定接点31および外側固定接点32を互いに絶縁するよう保持するケース2は、中央固定接点31および外側固定接点32をケース2の形状に対応した内側形状を有する金型内に配置し、溶融した絶縁性樹脂を流し込み、冷却、固化するインジェクションモールディングにより得られる。インジェクションモールディングが完了した段階では、中央固定接点31および外側固定接点32のそれぞれは、キャリアに接続されている。そのため、ケース2を得た後に、中央固定接点31および外側固定接点32のそれぞれを、キャリアから切り離すパンチング加工を施す必要がある。ガイド溝234は、このようなパンチング加工の際に、中央固定接点31または外側固定接点32とキャリアとの接続部分を打ち抜くためのカッターの挿入をガイドするために設けられている。ガイド溝234の幅方向(Y方向)の長さは、中央固定接点31の延伸部313および外側固定接点32の延伸部322のそれぞれの幅方向の長さよりも大きく、パンチング加工用のカッターが挿入できる程度に適宜設定されている。
【0041】
パンチング用溝235は、ガイド溝234の下端部に形成されている凹部である。パンチング用溝235は、後述するパンチング加工の際にパンチング加工用のカッターを受けるカッティングボードの挿入をガイドする機能を有している。下方からパンチング用溝235内にカッティングボードを挿入し、中央固定接点31とキャリアとの接続部分を下方から押さえる。パンチング用溝235の左右方向(X方向)と直交する外側面は、ガイド溝234の左右方向と直交する外側面よりも内側に位置している。パンチング用溝235の幅方向(Y方向)の長さは、ガイド溝234の幅方向の長さよりも小さく、中央固定接点31の延伸部313および外側固定接点32の延伸部322のそれぞれの幅方向の長さよりも大きい。
【0042】
インジェクションモールディング完了後、ケース2に保持された中央固定接点31および外側固定接点32に対して、パンチング加工が施されると、中央固定接点31および外側固定接点32のそれぞれがキャリアから切り離される。中央固定接点31の延伸部313は、中央固定接点31がキャリアから切り離された際の接続部分の残存部分である。同様に、外側固定接点32の延伸部322は、外側固定接点32がキャリアから切り離された際の接続部分の残存部分である。
【0043】
一対のストッパー236は、第1の側壁231の外側面上であって、ガイド溝234の下端部をY方向において挟む位置に形成され、外側(X方向)に突出する矩形状の凸部である。一対のストッパー236は、カバー8をケース2に取り付けた際に、カバー8(具体的には、延伸部82)が内側に変形しないよう、カバー8の内側への変位を制限するために設けられている。一対のストッパー236は、パンチング用溝235を介して互いに離間して、前後方向(Y方向)に対向している。一対のストッパー236のそれぞれの外側面は、左右方向(X方向)に対して垂直な平坦面である。図5に示されているように、一対のストッパー236のそれぞれの外側面は、カバー8の延伸部82の内側面と間隙を介して対向している。
【0044】
図6および7に示されているように、係合部26は、第1の側壁231の外側面の下側かつ前側の部分から外側(X方向)に突出する凸部である。係合部26は、ガイド溝234よりも前側に形成されている。係合部26は、後述するカバー8の係合孔821と係合し、ケース2に対するカバー8の取り付けを実行するために形成されている(図3参照)。係合部26は、上方から下方に向かって高さ(X方向の長さ)が漸増する傾斜部261と、傾斜部261の頭頂部から下方に向かって直線状に延伸する平坦部262と、を有している。
【0045】
係合部26の傾斜部261は、カバー8を上方からケース2に対して押し込み、カバー8をケース2に対して取り付ける際に、カバー8の一対の延伸部82のそれぞれに形成された係合孔821の下端部を自身の傾斜に沿ってスライドさせ、一対の延伸部82が外側に開くことを容易にする機能を有している。傾斜部261の上端部は、第1の側壁231の外側面と連続している。傾斜部261は、第1の側壁231の外側面と連続する傾斜部261の上端部から下方に向かって高さ(第1の側壁231の外側面から図中のX方向の長さ)が漸増するよう形成されている。
【0046】
係合部26の平坦部262は、一対の延伸部82のそれぞれに形成された係合孔821と係合し、カバー8をケース2に対してロックする機能を有している。平坦部262は、傾斜部261の頭頂部、すなわち、傾斜部261の下端部から下方に直線状に延伸している。そのため、平坦部262の高さは一定である。係合部26の平坦部262の下端面が、カバー8の一対の延伸部82のそれぞれに形成された係合孔821の下端部と係合することにより、カバー8がケース2に対してロックされる。
【0047】
図6に示されているように、第2の側壁232は、第1の側壁231よりも後側、かつ、内側に位置しており、第2の係止壁233から後方に直線状に延伸している壁部である。第2の側壁232の後側端部は、後壁24の対応する側端部に接続されている。
【0048】
図6および8に示されているように、後壁24は、底板21の後側の外縁部から上方に向かって直線状に延伸し、底板21と一体的に形成され、前後方向(Y方向)と直交する壁部である。後壁24および前壁22は、収納部25を介して互いに離間して、前後方向(Y軸方向)で対向している。後壁24のX方向の両端部は、一対の側壁23の後側端部にそれぞれ接続されている。後壁24の上面は、高さ方向に対して直交する平坦面となっている。さらに、後壁24の上面のX方向の両端部上からは、2つの後側ボス241が上方に向かってそれぞれ突出している。2つの後側ボス241は、後述するカバー8の2つの後側ボス穴813にそれぞれ挿通され、プッシュスイッチ1の組み立て後に、上方から加熱および押圧される(熱溶着処理)。このような熱溶着処理により、2つの後側ボス241は、カバー8の2つの後側ボス穴813と一体化するため、カバー8がケース2に固定される。
【0049】
収納部25は、底板21の上面、前壁22の内側面、一対の側壁23の内側面、および後壁24の内側面によって規定される上方に向かって開口する凹部である。図示の形態では、収納部25の内周面は、略円形の平面形状を形成している。収納部25内にプッシュスイッチ1の各コンポーネントが収納される。このように、ケース2は、収納部25内にプッシュスイッチ1の各コンポーネントを収納するハウジングとしての機能を有している。収納部25は、収納部25の下端部に形成された、可動接点4を収納する接点収納空間251を有している。
【0050】
図6および7に示されているように、接点収納空間251は、収納部25内に形成された円筒状の凹部である。接点収納空間251は、可動接点4を収納する機能を有している(図5参照)。接点収納空間251内において、中央固定接点31の露出部311および接触部312、並びに、外側固定接点32の露出部321が上側に向かって露出している。接点収納空間251は、中央部211および封止部材用台座215の内周面により規定されている。プッシュスイッチ1が組み立てられた状態において、接点収納空間251は、封止部材5により上方から封止される。
【0051】
このような構成を有するケース2は、図9に示す中央固定接点31、および、外側固定接点32を互いに離間し、絶縁した状態で保持している。ケース2は、ケース2の形状に対応した内側形状を有する金型内に、中央固定接点31、および、外側固定接点32を配置して、該金型内に溶融された絶縁性樹脂を注入し、冷却し、硬化させるインジェクションモールディングにより得られる。
【0052】
中央固定接点31および外側固定接点32のそれぞれは、金属板に対して打ち抜き加工および折り曲げ加工を施すことにより得られる導電性部品である。図9に示されているように、中央固定接点31は、ケース2の収納部25内において上方に向かって露出する露出部311と、露出部311の上面から上方に向かって突出する接触部312と、露出部311からケース2の外側(+X方向)に延伸する延伸部313と、ケース2の底板21の下側から外部に露出し、デバイスに接続される端子部314と、延伸部313と端子部314とを接続し、第1の係止壁218から後方に向かって露出する接続部315と、を備えている。
【0053】
図7に示されているように、露出部311は、ケース2の第1の端子用スペース212内に位置し、その上面のみが上方に向かって露出している。また、露出部311の上面は、ケース2の中央部211の底面と略同一平面上に位置している。接触部312は、図示の形態では、露出部311の上面から上方に向かって突出する2つの半円形の突出部を備えている。図5に示されているように、プッシュスイッチ1の第1の状態において、可動接点4の中央可動部41は、接触部312と間隙を介して対向しており、接触部312とは接触していない。中央可動部41が接触部312に接触すると、プッシュスイッチ1が第2の状態を取る。なお、第1の状態とは、外部からキャップに押圧力が印加されていない状態(自然状態)である。第2の状態とは、外部からキャップに押圧力が印加され、中央可動部41が接触部312に接触し、中央固定接点31と外側固定接点32が導通状態となっている状態である。
【0054】
図7に戻り、延伸部313は、右側(+X方向)に位置する側壁23のパンチング用溝235から外側に向かって延伸し、露出している。端子部314は、底板21の下方に位置し、外部に露出する矩形状の板状部である。端子部314の上面は、底板21の第1の底面21aと間隙を介して対向している。端子部314は、プッシュスイッチ1が回路基板100に取り付けられた状態において、回路基板100の対応する端子130にはんだ付け等により接続されており、これにより、プッシュスイッチ1と回路基板100との間で電気的接続が確立される。図9に示されているように、接続部315は、延伸部313と端子部314とを接続する部分である。図4に示されているように、接続部315は、図4中の左側に位置する第3の端子用スペース219内に位置し、その後側面のみが後方に向かって露出している。
【0055】
図7に戻り、外側固定接点32は、ケース2の収納部25内において上方に向かって露出する露出部321と、露出部321から外側に延伸し、ケース2から外部に露出する延伸部322と、ケース2の底板21の下側から外部に露出し、回路基板100の対応する端子130に接続される端子部323と、露出部321と端子部323とを接続し、第1の係止壁218から後方に向かって露出する接続部324と、を備えている。さらに、図7に示されているように、露出部321は、第2の端子用スペース214内に位置し、その上面のみが上方に向かって露出している。また、露出部321の上面は、可動接点用台座213の上面と略同一平面上に位置している。
【0056】
図5および図13に示されているように、プッシュスイッチ1の第1の状態および第2の状態の双方において、可動接点4の外縁部42が、露出部321と接触している。そのため、可動接点4の中央可動部41が接触部312に接触すると、可動接点4を介して、中央固定接点31と外側固定接点32とが導通する。また、図7に示されているように、外側固定接点32の露出部321は、中央固定接点31の露出部311および接触部312よりも外側に位置している。また、収納部25の接点収納空間251内において、外側固定接点32の露出部321は、中央固定接点31の露出部311から離間した状態で、中央固定接点31の露出部311の周囲(図8中の右側から左斜め下に渡る周囲)を部分的に囲んでいる。
【0057】
図7に示されているように、延伸部322は、左側(-X方向)に位置する側壁23のパンチング用溝235から外側に向かって延伸し、露出している。端子部323の上面は、底板21の第1の底面21aと間隙を介して対向している。端子部323は、底板21の下方に位置し、外部に露出する矩形状の板状部である。端子部323は、プッシュスイッチ1が回路基板100に取り付けられた状態において、回路基板100の対応する端子130にはんだ付け等により接続されており、これにより、プッシュスイッチ1と回路基板100との間で電気的接続が確立される。図9に示されているように、接続部324は、延伸部322と端子部323とを接続する部分である。図4に示されているように、接続部324は、図4中の右側に位置する第3の端子用スペース219内に位置し、その後側面のみが後方に向かって露出している。
【0058】
前述のように、ケース2は、ケース2の金型内に、中央固定接点31、および、外側固定接点32を配置して、該金型内に溶融された絶縁性樹脂を注入し、冷却し、硬化させるインジェクションモールディングにより得られる。仕掛品の段階では、複数の中央固定接点31および外側固定接点32のそれぞれが、キャリアに連結されている。この状態において、パンチング用溝235に、パンチング加工用のカッティングボードを下方から挿入し、中央固定接点31および外側固定接点32のそれぞれと、キャリアとの間の接続部分を下側から押さえる。次に、ガイド溝234に沿って、パンチング加工用のカッターが挿入され、中央固定接点31とキャリアとの間の接続部分、および、外側固定接点32とキャリアとの間の接続部分がパンチングされる。このようなパンチング加工により、中央固定接点31および外側固定接点32を保持したケース2が得られる。
【0059】
図6に戻り、可動接点4は、第1の状態において、上方に凸となるドーム状の導電性部品であり、ケース2の収納部25の接点収納空間251内において、中央固定接点31および外側固定接点32の上側に配置されている。可動接点4は、プッシュスイッチ1が第2の状態を取る際、中央固定接点31と外側固定接点32との間の導通経路として機能する。さらに、可動接点4は、プッシュスイッチ1が第2の状態に移行する際、下方に急激に弾性変形し、自身の急激な弾性変形によって、ユーザーにクリック感を提供する機能を有している。
【0060】
可動接点4は、ケース2の収納部25の接点収納空間251内においてフィットする形状を有している。図示の様態では、可動接点4は、略円形の平面形状を有しているが、接点収納空間251内においてフィットする形状であれば、本発明はこれに限られない。例えば、接点収納空間251の内周面が略楕円形状または略多角形形状等の略円形以外の平面形状を形成している場合には、可動接点4は、接点収納空間251内においてフィットするよう、接点収納空間251の内周面によって形成される平面形状に対応した形状を有していてもよい。可動接点4は、中央固定接点31および外側固定接点32を非導通状態とする第1の位置と、中央固定接点31および外側固定接点32を導通状態とする第2の位置との間で変位可能に構成されている。
【0061】
可動接点4は、薄型の金属板に対して打ち抜き可能および曲げ加工を施すことにより得られる。可動接点4は、第1の状態において上側に凸のドーム状であり、第2の状態において中央固定接点31と接触する中央可動部41と、中央可動部41を取り囲む外縁部42と、を備えている。可動接点4の外径は、接点収納空間251の内径と略等しい。なお、図示の形態では、プッシュスイッチ1は、1つの可動接点4を含んでいるが、本発明はこれに限られない。2つ以上の可動接点4が重ねて用いられてもよく、重ねて用いられる可動接点4の数は、プッシュスイッチ1を第2の状態に移行させるために必要とされる作動力に応じて任意に設定可能である。また、可動接点4の下面は、中央固定接点31および外側固定接点32と接触し、プッシュスイッチ1の動作状重要な導通を提供するため、可動接点4の下面には、導電信頼性を高めるためのメッキ処理が施されている。このようなメッキ処理は、典型的には、銀メッキ処理である。一方、可動接点4の上面には、プッシュスイッチ1の動作上重要な導通を提供する接触がないため、可動接点4の上面には、前述のようなメッキ処理が施されていない。
【0062】
前述のように、接点収納空間251の内径は、可動接点4の外径と略等しいため、可動接点4を収納部25内に収納する際には、単に収納部25の上方から接点収納空間251内の可動接点用台座213上に載置するだけで、可動接点4の位置決めを実行できる。このような構成により、プッシュスイッチ1の組み立てを容易にすることができる。
【0063】
中央可動部41は、平面視において、上側に凸の円形ドーム状部分である。外縁部42は、中央可動部41の外縁部42を取り囲むように形成され、外側下方に延伸するリング状部分であり、中央可動部41と同心となっている。中央可動部41は、上側に凸のドーム形状を有しているので、中央可動部41に対して、中央可動部41の形状(厚み、湾曲度等)および材料によって決定される所定の値以上の下方への外力が加わると、中央可動部41が下方に急激に弾性変形する。このような中央可動部41の下方への急激な弾性変形によって、ユーザーに対して、プッシュスイッチ1が第1の状態から第2の状態に移行する際のクリック感を提供することができる。
【0064】
図5のプッシュスイッチ1の断面図に示されているように、可動接点4は、接点収納空間251内に収納される。可動接点4は、中央可動部41が中央固定接点31の接触部312と間隙を介して対向し、さらに、外縁部42の少なくとも一部(図示の形態では、外縁部42の-X方向の部分)は、外側固定接点32の露出部321と接触するように、可動接点用台座213上に載置されている。プッシュスイッチ1に対してユーザーから押圧力が加えられていない第1の状態において、可動接点4は、上方に凸となるドーム状の形状であり、第1の位置を取る。第1の位置にあるとき、可動接点4は、中央固定接点31と接触しておらず、他方、外側固定接点32と接触している。そのため、可動接点4が第1の位置を取るとき、中央固定接点31および外側固定接点32は非導通状態となっている。
【0065】
図5に示されている第1の状態において、キャップ7の突出部72に対してユーザーから押圧力が印加されると、キャップ7が弾性部材6を下方に押圧し、弾性部材6が下方に弾性変形する。下方に弾性変形した弾性部材6が封止部材5に接触すると、弾性部材6は、封止部材5を介して可動接点4を押圧する。図13に示されているように、印加される押圧力が一定の作動力に到達すると、可動接点4の中央可動部41が下方に凸の形状に変形し、可動接点4は、第1の位置から第2の位置に変位する。可動接点4が第2の位置にあるとき、外縁部42が外側固定接点32の露出部321と接触し、さらに、中央可動部41が中央固定接点31の接触部312と接触する。すなわち、可動接点4は、第2の位置にあるとき、中央固定接点31および外側固定接点32の双方と接触している。そのため、可動接点4が第2の位置を取るとき、可動接点4は、中央固定接点31と外側固定接点32との間の導通経路として機能し、中央固定接点31と外側固定接点32は導通状態となっている。なお、可動接点4の形状は、必ずしもドーム形状に限定されず、可動接点4が中央固定接点31および外側固定接点32を非導通状態とする第1の位置と、中央固定接点31および外側固定接点32を導通状態とする第2の位置と、の間で変位可能であれば、可動接点4は、如何なる形状を有していてもよい。
【0066】
図6に戻り、封止部材5は、封止部材用台座215上に載置され、接点収納空間251を上方から封止する、可撓性および弾性を有するフィルム状の部材である。封止部材5は、接点収納空間251を上方から封止し、接点収納空間251内にゴミや塵が浸入することを防止することにより、プッシュスイッチ1の防塵機能を提供している。封止部材5は、ケース2の弾性部材用台座216の内周面により規定される空間内においてフィットする形状を有している。図示の様態では、封止部材5は、略円形の平面形状を有しているが、弾性部材用台座216の内周面により規定される空間内においてフィットする形状であれば、本発明はこれに限られない。例えば、弾性部材用台座216の内周面が略楕円形状または略多角形形状等の略円形以外の平面形状を形成している場合には、封止部材5は、ケース2の収納部25内においてフィットするよう、ケース2の収納部25の内周面によって形成される平面形状に対応した形状を有していてもよい。封止部材5の外径は、接点収納空間251の内径よりも大きく、弾性部材用台座216の内周面により形成される形状の径と略等しい。そのため、封止部材5を収納部25内に収納する際には、単に収納部25の上方から、封止部材用台座215上に載置するだけで、封止部材5の位置決めを実行できる。このような構成により、プッシュスイッチ1の組み立てを容易にすることができる。
【0067】
封止部材5は、可動接点4と対向し、接着性を有している接着面である下面51と、弾性部材6と対向する上面52と、を有している。下面51は、封止部材用台座215上に接着する面であり、封止部材用台座215の上面と封止部材5の下面51の外縁が接着している。これにより、封止部材5は、プッシュスイッチ1の動作上重要な導通を提供する部品(具体的には、中央固定接点31の接触部312、外側固定接点32の露出部321、並びに、可動接点4の中央可動部41および外縁部42)を収納する接点収納空間251を上方から封止することができ、接点収納空間251内へのゴミや埃の侵入を防止する防塵機能を提供している。その結果、プッシュスイッチ1の動作信頼性を向上させることができる。封止部材5は、少なくとも、プッシュスイッチ1を回路基板100に取り付ける際のはんだ付けの熱に耐え得る程度の耐熱性を有している。封止部材5は、典型的には、ポリイミド樹脂で形成されたポリイミドテープ(PIテープ)であるが、可撓性、耐熱性、および弾性を有する部材であれば、本発明はこれに限られない。
【0068】
さらに、図5に示されているように、封止部材5の下面51は、可動接点4の中央可動部41の頂部と略同一平面上に位置しており、封止部材5の下面51は、第1の状態において、可動接点4の中央可動部41の上面(少なくとも中央可動部41の頂部)に接触している。前述のように、封止部材5の下面51は、接着面であるため、封止部材5の下面51は、中央可動部41の上面(少なくとも頂部の上面)に接着している。このような構成により、可動接点4を上方から押さえて固定することができるため、接点収納空間251内での可動接点4のがたつきを防止することができる。これにより、操作感触が良好で、異音の発生が低減されたプッシュスイッチ1を得ることができる。
【0069】
図6に戻り、弾性部材6は、第1の状態において、ケース2の収納部25内において封止部材5よりも上側に位置し、かつ、封止部材5と間隙を介して対向するよう設けられたシート状の弾性部品である。弾性部材6は、収納部25内においてフィットする形状を有している。図示の様態では、弾性部材6は、略円板形状を有しているが、収納部25内においてフィットする形状であれば、本発明はこれに限られない。例えば、収納部25の内周面が略楕円形状または略多角形形状等の略円形以外の平面形状を形成している場合には、弾性部材6は、収納部25内においてフィットするよう、収納部25の内周面によって形成される平面形状に対応した形状を有していてもよい。
【0070】
弾性部材6は、ユーザーからキャップ7に対して押圧力が印加された際に、キャップ7により押下され、下方に変位することで、封止部材5および可動接点4の中央可動部41を下方に押下するために用いられる。弾性部材6の外径は、弾性部材用台座216の内径よりも大きく、収納部25の内径と略等しい。図5に示されているように、弾性部材6は、弾性部材用台座216上に載置されている。弾性部材6は、封止部材5の上面52と対向する下面61と、キャップ7と対向する上面62と、を有している。
【0071】
図5に示す第1の状態において、下面61は、間隙を介して封止部材5の上面52と対向している。また、下面61の外縁部は、弾性部材用台座216の上面と接触している。さらに、上面62の略中央部は、キャップ7の押圧部73の下端面と接触している。弾性部材6の略中央部が押圧部73により下方に押圧されると、図13に示されているように、略中央部は下方に変位し、下面61は、上面52と接触する。一方、弾性部材6の外縁部は上方に変位する。このように、弾性部材6は、弾性部材用台座216上に載置されているが、弾性部材用台座216上に固定または接着されていない。このような構成により封止部材5の略中央部の下方への弾性変形可能量を増加させることができる。弾性部材6は、ラバーシートであり、典型的にはシリコーンラバーシートであるが、本発明に係る弾性部材6は、これに限られない。弾性変形可能な部材であれば弾性部材6として用いることができる。
【0072】
なお、弾性部材6の厚み(Z方向の長さ)が厚すぎると、プッシュスイッチ1が第2の状態に移行するための弾性部材6の弾性変形に必要な押圧力が大きくなり、プッシュスイッチ1の操作が困難になる。一方、弾性部材6の厚みが薄すぎると、第2の状態に移行するための弾性部材6の弾性変形に必要な押圧力は小さくなるが、下方への弾性変形可能量が少なくなり、プッシュスイッチ1のストローク長を十分に長くすることができない。したがって、弾性部材6の厚みは、好ましくは、0.4mm~0.6mmである。
【0073】
また、図5に示されているように、第1の状態において、上面62は、キャップ7の押圧部73と接触しており、弾性部材6に対して、キャップ7から下方へのプリテンションが付与されている。その結果、第1の状態において、弾性部材6は、僅かに下方に弾性変形している。このような構成により、弾性部材6は、自身の弾性復元力により、キャップ7に対して上方への押圧力を印加する。
【0074】
図6に戻り、キャップ7は、ナイロン樹脂等の硬質の樹脂材料で形成された部材である。キャップ7は、ケース2の収納部25内において、弾性部材6の上側に載置されている。キャップ7は、ユーザーからプッシュスイッチ1に対して印加された押圧力を、弾性部材6に効率的に伝達させ、弾性部材6を下方に押下するために用いられる。図6および図11に示されているように、キャップ7は、ケース2の収納部25とフィットする平面形状(図示の形態では、高さ方向の平面視で略円形状)を有するベース部71と、ベース部71の上面側の略中央に上方に突出するよう形成された円錐台形状の突出部72と、ベース部71の下面側の略中央に下方に突出するよう形成された円錐台形状の押圧部73と、を有している。
【0075】
図5に示されているように、プッシュスイッチ1が組み立てられた状態において、ベース部71は、収納部25内に収納されている。さらに、ベース部71は、収納部25の内周面により形成される形状とフィットする平面形状を有しており、ベース部71の外径は、収納部25の内径と略等しい。そのため、キャップ7を収納部25内に収納する際、ケース2の上方から収納部25の内周面の平面形状に合わせて、ベース部71を挿入し、弾性部材6の上面62に載置するだけで、ケース2に対するキャップ7の位置決めを完了することができる。そのため、従来技術の欄(特許文献2)で述べたような、コイルバネを用いたプッシュスイッチと比較して、構成がよりシンプルであり、組み立て工程がより容易である。その結果、プッシュスイッチ1の製造効率および歩留まりを向上することができる。
【0076】
突出部72は、ベース部71の略中央部から上方に向かって突出し、突出部72の径が、下方から上方に向かって漸減する円錐台状部分である。突出部72の下端部の径(突出部72の最大の径)は、後述するカバー8の開口811(図6参照)の径よりも小さい。プッシュスイッチ1が組み立てられた状態において、突出部72は、開口811に下方から挿通されており、カバー8の開口811から上方に突出している。
【0077】
図5および図11に示されているように、キャップ7の押圧部73は、ベース部71の下側面から下方に向かって突出し、押圧部73の径が、上方から下方に向かって漸減する円錐台状部分である。押圧部73および突出部72は、同心となるよう形成されている。図5に示されているプッシュスイッチ1の第1の状態において、押圧部73の下端面が、弾性部材6の上面62の略中央部と接触しており、キャップ7が弾性部材6に対してプリテンションを付与している。そのため、第1の状態において、弾性部材6の弾性復元力により、キャップ7に対して、上方への押圧力が印加される。そのため、キャップ7のベース部71がカバー8のトッププレート81の下面に押し付けられる。このような構成により、キャップ7が、弾性部材6とカバー8との間で強く挟持されるため、第1の状態において、収納部25内でキャップ7がガタつくことを防止することができる。
【0078】
図6に戻り、カバー8は、ケース2と係合し、キャップ7のベース部71を上方から押さえることにより、キャップ7をケース2の収納部25内において保持する機能を有している。カバー8は、一枚の金属板に対して打ち抜き加工および折り曲げ加工を施すことにより得られる。カバー8は、ケース2の上端部の形状に合わせた略凸形の平面形状を有するトッププレート81と、トッププレート81の対向する一対の辺(図中のY方向に延伸する辺)からそれぞれ下方に延伸する一対の延伸部82と、回路基板100にプッシュスイッチ1を固定するための4つのボス83と、を備えている。
【0079】
図6および図10に示されているように、トッププレート81は、プッシュスイッチ1が組み立てられた状態において、キャップ7のベース部71を上方から押し付けることによって、キャップ7を収納部25内で保持し、収納部25内に収納されている可動接点4、封止部材5、弾性部材6、およびキャップ7がケース2から離脱することを防止している。トッププレート81は、ケース2の高さ方向からの平面形状に対応した平面形状(図示の形態では、後方に突出する略凸形の平面形状)を有する平板状の部分であり、ケース2の上端面上を覆っている。トッププレート81は、キャップ7の突出部72を挿通させるようトッププレート81に形成された開口811と、ケース2の前壁22の上端部の2つの前側ボス221をそれぞれ挿通するための2つの前側ボス穴812と、ケース2の後壁24の上端部の2つの後側ボス241をそれぞれ挿通するための2つの後側ボス穴813と、トッププレート81の両端部のそれぞれと一対の延伸部82のそれぞれとを接続する一対の接続部814と、一対の接続部814に形成された肉抜き部815と、を備えている。
【0080】
開口811は、プッシュスイッチ1が組み立てられた状態において、キャップ7の突出部72を上方に挿通させるために、トッププレート81の略中央に形成されている。図示の形態では、開口811の形状は、キャップ7の突出部72の形状に対応した略円形の形状であるが、キャップ7の突出部72を上方に挿通させることができれば、特に限定されない。
【0081】
2つの前側ボス穴812は、ケース2の前壁22の上端面から突出する2つの前側ボス221に対応した位置にそれぞれ形成された略円形の穴である。2つの後側ボス穴813は、2つの後側ボス241に対応した位置にそれぞれ形成された略半円形の穴であり、後側部分が外側に向かって開放されている。図12に示されているように、ケース2にカバー8が取り付けられた状態において、2つの前側ボス穴812から、2つの前側ボス221がそれぞれ突出しており、2つの後側ボス穴813から2つの後側ボス241がそれぞれ突出している。カバー8をケース2に取り付けた後、2つの前側ボス221および2つの後側ボス241に対して、熱溶着処理(熱カシメ処理)が施される。そのため、図3に示されているように、プッシュスイッチ1が組み立てられた段階においては、2つの前側ボス穴812および2つの後側ボス穴813と、2つの前側ボス221および2つの後側ボス241は、それぞれ一体化している。
【0082】
図6および図10に戻り、一対の接続部814は、トッププレート81のX方向の両端部のそれぞれと一対の延伸部82のそれぞれとを接続する架橋部分である。カバー8は左右対称の形状を有しているため、代表的に、+X方向の一対の接続部814について詳述する。一対の接続部814のそれぞれの上端部は、トッププレート81の端部に接続されており、一対の接続部814のそれぞれの下端部は、延伸部82の上端部に接続されている。一対の接続部814は、肉抜き部815を介して互いに離間して、Y方向に対向している。肉抜き部815は、一対の接続部814、トッププレート81の端部、および、延伸部82の上端部により規定された穴であり、カバー8の加工時に一対の接続部814の折り曲げ加工を施し易くするために設けられている。
【0083】
一対の延伸部82は、カバー8をケース2に対してロックするために用いられる。一対の延伸部82は、トッププレート81のX方向に対向する一対の辺からそれぞれ下方に延伸している。なお、トッププレート81の+X方向の辺から下方に延伸する延伸部82およびトッププレート81の-X方向の辺から下方に延伸する延伸部82は、同じ構成および同じ配置で形成されている。一対の延伸部82のそれぞれは、ケース2の係合部26と対応する位置に形成された係合孔821を備えている。
【0084】
係合孔821は、ケース2の第1の側壁231上に形成された係合部26と係合し、カバー8をケース2に対してロックするために設けられている。カバー8を上方からケース2に取り付ける際、一対の延伸部82の内側面が、係合部26の傾斜部261の外側面上をスライドする。これにより、一対の延伸部82が外側に開き、カバー8を下方(-Z方向)に押し込むことが可能となる。その後、一対の延伸部82の係合孔821が、一対の係合部26の平坦部262を通過すると、一対の延伸部82のそれぞれが内側に弾性復元し、カバー8がケース2に対して取り付けられる。このような、係合孔821と係合部26によるスナップフィットによって、カバー8がケース2に取り付けられる。また、平坦部262の下面が、係合孔821の下端部の上面と係合するので、ケース2からのカバー8の離脱が防止される。
【0085】
図3に示されているように、4つのボス83は、回路基板100の4つのボス穴110と対応する位置にそれぞれ形成された突出部である。4つのボス83は、プッシュスイッチ1を回路基板100に取り付ける際、4つのボス穴110にそれぞれ挿入され、これによりプッシュスイッチ1の回路基板100に対する位置決めおよび固定が実行される。
【0086】
次に、このようなプッシュスイッチ1の組立手順および、回路基板100への取付手順を、図5を参照して、詳述する。最初に、可動接点4を、ケース2の接点収納空間251内の可動接点用台座213上に載置する。次に、封止部材5を、封止部材用台座215上に載置する。前述のように、封止部材5の下面51が接着面であるため、封止部材5の下面51は、封止部材用台座215の上面に接着する。また、この際、下面51が可動接点4の中央可動部41の上面と接触し、封止部材5が可動接点4の中央可動部41の上面に接着する。次に、弾性部材6を弾性部材用台座216上に載置し、その後、弾性部材6の上面62上にキャップ7を載置する。
【0087】
その後、カバー8の開口811にキャップ7の突出部72を下方から挿通させ、同時に、2つの前側ボス221および2つの後側ボス241を、カバー8の2つの前側ボス穴812および2つの後側ボス穴813に下方からそれぞれ挿通させるように、カバー8を上方からケース2に対して押し付ける。この際、カバー8の一対の延伸部82のそれぞれの係合孔821が、ケース2の第1の側壁231の外側面上にそれぞれ形成された係合部26の傾斜部261の外側面上をスライドし、カバー8の一対の延伸部82が外側に開く。一対の延伸部82のそれぞれが、係合部26の平坦部262を越えると、平坦部262の下端面と係合孔821の下端部が係合し、カバー8がケース2に対してロックされ、プッシュスイッチ1が組み立てられる。
【0088】
次に、図12に示されているカバー8がケース2に対して取り付けられた状態において、ケース2の2つの前側ボス221および2つの後側ボス241に対して、上方から熱溶着(熱カシメ)処理を施す。2つの前側ボス221および2つの後側ボス241に対してそれぞれ加熱および押圧をすることによって、2つの前側ボス221および2つの後側ボス241を、カバー8の2つの前側ボス穴812および2つの後側ボス穴813にそれぞれ溶着させ、ケース2とカバー8とを固定する。このような工程により、プッシュスイッチ1が組み立てられる。
【0089】
次に、図3を参照して、プッシュスイッチ1の回路基板100への取り付け工程について詳述する。図3に示されているように、プッシュスイッチ1を回路基板100に取り付ける際には、初めに、プッシュスイッチ1の係合凸部217を、回路基板100の係合凹部120内に挿入する。これと同時に、カバー8の4つのボス83を、回路基板100の対応する4つのボス穴110にそれぞれ挿入する。第1の係止壁218および一対の第2の係止壁233が回路基板100の前側面にそれぞれ当接すると、係合凹部120への係合凸部217の挿入、および、4つのボス穴110への4つのボス83の挿入が、完了する。最後に、プッシュスイッチ1の中央固定接点31の端子部314および外側固定接点32の端子部323と回路基板100の対応する端子130とを、それぞれはんだ付けにより接続し、プッシュスイッチ1を回路基板100に固定すると共に、プッシュスイッチ1と回路基板100との間の電気的接続を確立する。
【0090】
次に、図5および図13を参照して、プッシュスイッチ1の動作について説明する。図5には、プッシュスイッチ1に対して押圧力が加えられていない第1の状態での、図3のA-A線に沿った縦断面図が示されており、図13には、プッシュスイッチ1に対して、プッシュスイッチ1の作動力を超える押圧力が加えられた押下状態での縦断面図が示されている。図5に示されているように、第1の状態において、キャップ7の押圧部73は、弾性部材6の上面62と接触し、弾性部材6に対して下方へのプリテンションが印加されている。
【0091】
弾性部材6の下面61は、封止部材5の上面52と間隙を介して対向しており、接触していない。さらに、プッシュスイッチ1の第1の状態では、可動接点4は、上に凸となっている。第1の状態において、可動接点4は、第1の位置を取っている。第1の位置において、可動接点4の外縁部42は、外側固定接点32の露出部321と接触しており、可動接点4の中央可動部41は、中央固定接点31の接触部312と接触していない。すなわち、可動接点4は、第1の位置にあるとき、中央固定接点31と接触しておらず、外側固定接点32と接触している。そのため、可動接点4が第1の位置にあるとき、中央固定接点31および外側固定接点32は、非導通状態となっている。
【0092】
図5に示されている第1の状態において、キャップ7の突出部72に対してユーザーから押圧力が印加されると、キャップ7が下方に変位し、弾性部材6を下方に押圧する。弾性部材6に押圧力が印加されると、弾性部材6が下方に弾性変形する。この状態からさらに押圧力が印加されると、弾性部材6の下面61が封止部材5の上面52と接触し、封止部材5が下方に押し下げられる。弾性部材6が封止部材5を下方に押圧する際、弾性部材6は、封止部材5を介して、可動接点4の中央可動部41を下方に弾性変形させる。この結果、可動接点4が第1の位置から第2の位置に変位し、プッシュスイッチ1は、図13に示す押下状態に移行する。
【0093】
図13に示された押下状態において、可動接点4は、第2の位置をとっている。第2の位置において、可動接点4の外縁部42は、外側固定接点32の露出部321と接触しており、さらに、可動接点4の中央可動部41は、中央固定接点31の接触部312と接触している。すなわち、可動接点4は、第2の位置にあるとき、中央固定接点31および外側固定接点32の双方と接触している。そのため、可動接点4が第2の位置にあるとき、可動接点4は、中央固定接点31と外側固定接点32との間の導通経路として機能し、中央固定接点31および外側固定接点32は、導通状態となっている。図13に示された押下状態において、キャップ7の突出部72に対する押圧力が解除されると、可動接点4の中央可動部41の弾性復元力および弾性部材6の復元力によって提供されるプッシュスイッチ1の弾性復元力によって、プッシュスイッチ1は、図5に示された第1の状態に復元する。プッシュスイッチ1が、図13に示された押下状態から、図5に示された第1の状態に復元する際に(可動接点4が自身の弾性復元力により第2の位置から第1の位置に変位する際に)、キャップ7は、弾性部材6を介して可動接点4に押圧される。そのため、押下状態から第1の状態への復元の際に可動接点4の弾性復元力によって生じる上方への押圧力が弾性部材6に吸収され、これにより、キャップ7のカバー8への衝突が緩和される。この結果、キャップ7がカバー8に衝突することにより発生し得る異音を低減することができる。
【0094】
図14は、上述した動作を実行するプッシュスイッチ1の荷重-変位グラフ(F-S曲線)を示している。図14のグラフの縦軸は、キャップ7の突出部72に対して加えられる荷重(押圧力)(N)であり、横軸は、キャップ7のストローク長(下方への移動距離)(mm)である。図14に示されているように、プッシュスイッチ1のキャップ7のストローク長は、弾性部材6の反発力(弾性復元力)によって提供される第1のストローク長と、弾性部材6の反発力および可動接点4の反発力によって提供される第2のストローク長と、を含む。
【0095】
第1のストローク長は、第1の状態から、キャップ7の押圧部73が弾性部材6を下方に押圧し、弾性部材6の下面61が封止部材5の上面52に接触するまでの間に提供されるストローク長である。本実施形態のプッシュスイッチ1においては、第1の状態において、弾性部材6が可動接点4および封止部材5と間隙を介して離間するよう設けられている。そのため、弾性部材6の下面61が封止部材5の上面52に接触するまでの間、弾性部材6の反発力(弾性復元力)によって、押圧感がユーザーに提供され、可動接点4は弾性変形しない。そのため、本実施形態のプッシュスイッチ1は、可動接点4の下方への弾性変形可能量に制限されない第1のストローク長を提供することができる。
【0096】
第2のストローク長は、弾性部材6の下面61が封止部材5の上面52に接触してから、可動接点4の中央可動部41が、中央固定接点31の接触部312と接触し、プッシュスイッチ1が第2の状態となるまでの間に提供されるストローク長である。第2のストローク長は、弾性部材6の反発力および可動接点4の反発力によって提供され、可動接点4の弾性変形可能量に制限される。このように、本実施形態のプッシュスイッチ1は、可動接点4の弾性変形可能量に制限される第2のストローク長に加え、第1のストローク長を提供することができる。したがって、プッシュスイッチ1のストローク長を、可動接点4の弾性変形可能量に制限されず延長することが可能となる。
【0097】
図14に示されているように、第1のストローク長の間、キャップ7を押し下げるために必要な荷重(弾性部材6を下方に弾性変形させるのに必要な荷重)は漸増する。弾性部材6が封止部材5を介して可動接点4を押圧し始めてから、図14に示されている作動力に到達するまでは、弾性部材6に加え、可動接点4を弾性変形させるための荷重が必要となるため、第2のストローク長の間のキャップ7を押し下げるために必要な荷重の増加量(グラフの傾き)は、第1のストローク長の間の荷重の増加量(グラフの傾き)よりも大きくなる。キャップ7の突出部72に対して加えられる荷重が作動力に達すると、可動接点4が急激に弾性変形し、キャップ7を押し下げるために必要な荷重が急激に減少する。この結果、キャップ7が急激に押し下げられることになり、ユーザーに、プッシュスイッチ1が第1の状態から第2の状態に移行する際のクリック感が提供される。
【0098】
本実施形態のプッシュスイッチ1では、弾性部材6が、可動接点4とは間隙を介して離間しているため、弾性部材6の反発力により提供され、かつ、可動接点4の下方への弾性変形可能量に制限されない第1のストローク長を提供することができる。すなわち、従来のプッシュスイッチと比較して、本実施形態のプッシュスイッチ1のストローク長は、少なくとも第1のストローク長の分長くなる。このように、本実施形態のプッシュスイッチ1は、可動接点4の反発力によって提供される従来のストローク長とは別の、追加的なストローク長(第1のストローク長)をユーザーに提供することができる。したがって、プッシュスイッチ1の第1の状態から第2の状態までのストローク長を長くすることが可能となる。
【0099】
さらに、本実施形態のプッシュスイッチ1は、従来技術の欄で詳述した特許文献2のプッシュスイッチと異なり、小型のコイルバネではなく、弾性部材6(本実施形態においてはラバーシート)によってキャップ7を下方から支持し、かつ、第1の状態において、弾性部材6を可動接点4と間隙を介して離間させることにより、第1のストローク長を提供している。そのため、コイルバネの振動により発生し得るがたつきや異音を防止することができ、プッシュスイッチ1の動作の安定性を確保することができる。また、本発明のプッシュスイッチ1は、従来技術の欄において述べたようなコイルバネを用いないシンプルな構成を有している。そのため、プッシュスイッチ1の製造難易度を低下させ、プッシュスイッチ1の歩留まりを向上させることができる。
【0100】
<第2実施形態>
次に、図15~19を参照して、本発明の第2実施形態に係るプッシュスイッチを詳述する。図15は、本発明の第2実施形態に係るプッシュスイッチの分解斜視図である。図16は、第1の状態における本発明の第2実施形態に係るプッシュスイッチの断面図である。図17は、図15に示す弾性部材の別の角度からの斜視図である。図18は、第2の状態における本発明の第2実施形態に係るプッシュスイッチの断面図である。図19は、本発明の第2実施形態に係るプッシュスイッチの荷重-変位グラフ(F-S曲線)である。
【0101】
本実施形態のプッシュスイッチは、弾性部材6の構成が変更されている点を除き、第1実施形態のプッシュスイッチ1と同様の構成を有している。そのため、本実施形態のプッシュスイッチについて、第1実施形態のプッシュスイッチ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0102】
図15に示されているように、第2実施形態に係るプッシュスイッチ1の弾性部材6aは、第1の状態において、ケース2の収納部25内において封止部材5と間隙を介して対向するよう設けられた薄型の導電性部品である。弾性部材6aは、硬質材料から形成されており、典型的には、薄型の金属板に対して打ち抜き加工および折り曲げ加工を施すことにより得られる。
【0103】
図15および図16に示されているように、弾性部材6aは、収納部25内において、弾性部材用台座216上に載置されるリング形状の支持部61aと、支持部61aに対して上下方向(Z方向)に変位可能な中央部62aと、中央部62aが支持部61aに対して上下方向に変位可能となるように、支持部61aと中央部62aとの間を連結するバネ部63aと、を備えている。中央部62aに対して下方への外力が印加されると、印加された外力に応じてバネ部63aが下方に向かって弾性変形し、中央部62aが支持部61aに対する初期位置から下方に変位する。中央部62aに対して印加されている外力が解除されると、バネ部63aが上方に向かって弾性復元し、中央部62aが支持部61aに対する初期位置に戻る。
【0104】
図17に示されているように、支持部61aは、リング形状を有する本体部611aを備えており、本体部611aの内側に中央部62aおよびバネ部63aが位置している。中央部62aは、支持部61aの本体部611aの内側に、本体部611aと離間して位置する円板状部分である。中央部62aは、円板状の本体部621aと、本体部621aから下方に向かって突出する押圧部622aと、を備えている。本体部621aは本体部611aと同心に設けられており、支持部61aに対して上下方向に変位可能となっている。図17に示されているように、押圧部622aは、本体部621aと同心に設けられ、上側(+Z方向)から下側(-Z方向)に向かって径が漸減する円錐台形状を有しており、本体部621aの中心部分に対して、下方に押圧加工を施すことにより形成される。押圧部622aの下面は、本体部621aの下面と平行な平坦面、すなわち、高さ方向に直交する平坦面となっている。押圧部622aは、プッシュスイッチ1が第2の状態に移行する際、可動接点4の中央可動部41を押圧し、中央可動部41を下方に弾性変形させる。このように、本体部621aに押圧部622aを設けることにより、本体部621aに押圧部622aが設けられていない場合と比較して、中央可動部41をより小さな接触面積で押圧することができ、中央可動部41の弾性変形の特性(荷重特性)を安定化させることができる。
【0105】
バネ部63aは、中央部62aが支持部61aに対して上下方向に変位可能となるよう、支持部61aと中央部62aとを連結する部分である。バネ部63aは、円弧状の本体部631aと、本体部631aの一端部と支持部61aとを接続する第1の接続部632aと、本体部631aの他端部と中央部62aとを接続する第2の接続部633aと、を備えている。本体部631aは、支持部61aの本体部611aと中央部62aの本体部621aとの間に、本体部611aおよび本体部621aと離間して位置している。本体部631aは、リング形状の一部を切り欠くことにより得られる円弧形状を有しており、切り欠き部分を介して対向する一対の部分が、本体部631aの両端部となっている。また、本体部631aは、本体部611aおよび本体部621aと同心となっている。
【0106】
第1の接続部632aは、支持部61aの本体部611aの内側面から、バネ部63aの本体部631aの一方の端部に向かって、本体部631aの径方向に直線状に延伸する板状部分であり、本体部631aの一端部と支持部61aとを接続している。第2の接続部633aは、本体部631aの他端部から中央部62aの本体部621aに向かって、本体部631aの径方向に直線状に延伸する板状部分であり、本体部631aの他端部と中央部62aとを接続している。
【0107】
弾性部材6aの支持部61aがケース2の底板21の弾性部材用台座216上に載置された状態において、中央部62aに対して下方に向かって外力が印加されると、バネ部63aの本体部631aが下方に向かって弾性変形し、中央部62aが支持部61aに対する初期位置から下方に変位する。中央部62aに対して印加されている外力が解除されると、本体部631aが、自身の弾性によって弾性復元し、中央部62aが支持部61aに対する初期位置に戻る。
【0108】
また、図16に示されているように、第1の状態において、中央部62aの本体部621aの上面は、キャップ7の押圧部73の下端面と接触しており、中央部62aに対して、キャップ7により下方へのプリテンションが付与されている。そのため、第1の状態において、バネ部63aが、下方へ弾性変形し、中央部62aは、支持部61aよりも下方に位置している。そのため、第1の状態において下方に弾性変形したバネ部63aの弾性復元力により、キャップ7に対して上方への押圧力が印加されるため、キャップ7のベース部71の上面がカバー8のトッププレート81の下面に押し付けられる。その結果、第1の状態において、キャップ7は、弾性部材6aの中央部62aとカバー8のトッププレート81との間で強く挟持され、収納部25内でのキャップ7のがたつきを効果的に低減することができる。
【0109】
なお、第2実施形態に係るプッシュスイッチ1の弾性部材6aの厚みは、好ましくは、0.08mm~0.12mmである。一方、前述のように、第1実施形態に係る弾性部材6の厚みは、好ましくは0.4mm~0.6mmである。このように、第2実施形態に係る弾性部材6aの厚みは、第1実施形態に係る弾性部材6の厚みよりも薄い(第1実施形態に係る弾性部材6の約8分の1~約3分の1)ため、プッシュスイッチ1の高さ方向(Z方向)の厚みを薄くすることができ、プッシュスイッチ1の小型化および低背化をすることができる。さらに、第2実施形態に係る弾性部材6aのバネ部63aの下方への弾性変形可能量は、第1実施形態に係るシート状の弾性部材6の下方への弾性変形可能量よりも大きいため、第1のストローク長を長くすることができる。すなわち、第2実施形態に係る弾性部材6aを用いることで、第1実施形態のストローク長よりも長いストローク長を有するプッシュスイッチ1を提供することができる。
【0110】
なお、第2実施形態に係るプッシュスイッチ1の組立手順および、回路基板100への取付手順は、弾性部材6aの支持部61aを封止部材用台座215上に載置し、その後、キャップ7を弾性部材6aの中央部62a上に載置すること以外、第1実施形態のプッシュスイッチ1と同様であるため、説明を省略する。
【0111】
次に、図16および図18を参照して、第2実施形態に係るプッシュスイッチ1の動作について説明する。プッシュスイッチ1のキャップ7の突出部72に対してユーザーによって押圧力が印加されていない場合、プッシュスイッチ1は、図16に示す第1の状態を取る。第1の状態において、キャップ7の押圧部73は、弾性部材6aの中央部62aの上面と接触し、弾性部材6aに対して下方へのプリテンションが印加されている。また、中央部62aの下面は、間隙を介して、封止部材5の上面52と対向しており、接触していない。第1の状態において、ユーザーが、キャップ7の突出部72に対して、所定の作動力以上の押圧力を印加し、押圧操作を行った際、プッシュスイッチ1は、第1の状態から、図18に示す第2の状態に移行する。
【0112】
図18に示されているように、第2の状態において、キャップ7の押圧部73は、弾性部材6aの中央部62aを下方に押圧している。この結果、弾性部材6aのバネ部63aが下方に弾性変形し、弾性部材6aの支持部61aに対して、中央部62aが下方に変位している。また、中央部62aが下方に変位した結果、中央部62aの押圧部622aの下面が封止部材5の上面52と接触し、封止部材5を介して可動接点4の中央可動部41を下方に押圧する。そのため、押圧部73は、弾性部材6aの中央部62aおよび封止部材5を介して、中央可動部41を上方から押圧している。このように、キャップ7、弾性部材6a、および封止部材5を介して、ユーザーからの押圧力が、中央可動部41に伝達され、中央可動部41が下方に弾性変形する。また、中央可動部41が下方に弾性変形した結果、中央可動部41が、中央固定接点31の接触部312と接触する。そのため、第2の状態において、可動接点4を介して、中央固定接点31と外側固定接点32が導通する。なお、第2の状態において、ユーザーが、キャップ7の突出部72に対して印加している押圧力を解除すると、プッシュスイッチ1は、弾性部材6aのバネ部63aおよび可動接点4の中央可動部41の弾性復元力によって、第1の状態に戻る。プッシュスイッチ1が、図18に示された押下状態から、図16に示された第1の状態に復元する際に(可動接点4が自身の弾性復元力により第2の位置から第1の位置に変位する際に)、キャップ7は、弾性部材6aを介して可動接点4に押圧される。そのため、押下状態から第1の状態への復元の際に可動接点4の弾性復元力によって生じる上方への押圧力が弾性部材6aに吸収され、これにより、キャップ7のカバー8への衝突が緩和される。この結果、キャップ7がカバー8に衝突することにより発生し得る異音を低減することができる。
【0113】
図19は、上述した動作を実行する第2実施形態に係るプッシュスイッチ1の荷重-変位グラフ(F-S曲線)を示している。図19のグラフの縦軸は、キャップ7の突出部72に対して加えられる荷重(押圧力)(N)であり、横軸は、キャップ7のストローク長(下方への移動距離)(mm)である。図19に示されているように、プッシュスイッチ1のキャップ7のストローク長は、弾性部材6aの反発力(弾性復元力)によって提供される第1のストローク長と、弾性部材6aの反発力および可動接点4の反発力によって提供される第2のストローク長と、を含む。
【0114】
第1のストローク長は、第1の状態から、キャップ7の押圧部73が弾性部材6aの中央部62aを下方に押圧し、弾性部材6aの押圧部622aが封止部材5の上面52に接触するまでの間に提供されるストローク長である。本実施形態のプッシュスイッチ1においては、第1の状態において、中央部62aが可動接点4および封止部材5と間隙を介して離間するよう設けられている。そのため、押圧部622aが封止部材5の上面52に接触するまでの間、弾性部材6aのバネ部63aの反発力(弾性復元力)によって、押圧感がユーザーに提供され、可動接点4は弾性変形しない。そのため、本実施形態のプッシュスイッチ1は、可動接点4の下方への弾性変形可能量に制限されない第1のストローク長を提供することができる。
【0115】
第2のストローク長は、弾性部材6の押圧部622aが封止部材5の上面52に接触してから、可動接点4の中央可動部41が、中央固定接点31の接触部312と接触し、プッシュスイッチ1が第2の状態となるまでの間に提供されるストローク長である。第2のストローク長は、弾性部材6aのバネ部63aの反発力および可動接点4の反発力によって提供され、可動接点4の弾性変形可能量に制限される。このように、本実施形態のプッシュスイッチ1は、可動接点4の弾性変形可能量に制限される第2のストローク長に加え、第1のストローク長を提供することができる。したがって、プッシュスイッチ1のストローク長を、可動接点4の弾性変形可能量に制限されず延長することが可能となる。
【0116】
図19に示されているように、第1のストローク長の間、キャップ7を押し下げるために必要な荷重(弾性部材6aのバネ部63aを下方に弾性変形させるのに必要な荷重)は漸増する。弾性部材6aの押圧部622aが封止部材5を介して可動接点4を押圧し始めてから、図19に示されている作動力に到達するまでは、押圧部622aに加え、可動接点4を弾性変形させるための荷重が必要となるため、第2のストローク長の間のキャップ7を押し下げるために必要な荷重の増加量(グラフの傾き)は、第1のストローク長の間の荷重の増加量(グラフの傾き)よりも大きくなる。
【0117】
キャップ7の突出部72に対して加えられる荷重が作動力に達すると、可動接点4が急激に弾性変形し、キャップ7を押し下げるために必要な荷重が急激に減少する。この結果、キャップ7が急激に押し下げられることになり、ユーザーに、プッシュスイッチ1が第1の状態から第2の状態に移行する際のクリック感が提供される。このような構成の弾性部材6aによっても、前述した第1実施形態のプッシュスイッチ1と同様の機能および効果を提供することができる。
【0118】
以上、本発明の各実施形態のプッシュスイッチを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の各実施形態の各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、本発明の各実施形態の各構成に任意の構成のものを付加することができる。
【0119】
本発明の属する分野および技術における当業者であれば、本発明の原理、考え方、および範囲から有意に逸脱することなく、記述された本発明の各実施形態のプッシュスイッチの構成の変更を実行可能であろうし、変更された構成を有するプッシュスイッチもまた、本発明の範囲内である。
【0120】
また、図3図19に示されたプッシュスイッチの構成要素の数や種類は、説明のための例示にすぎず、本発明は必ずしもこれに限られない。本発明の原理および意図から逸脱しない範囲において、任意の構成要素が追加若しくは組み合わされ、または任意の構成要素が削除された態様も、本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0121】
1…プッシュスイッチ 2…ケース 21…底板 21a…第1の底面 21b…第2の底面 211…中央部 212…第1の端子用スペース 213…可動接点用台座 214…第2の端子用スペース 215…封止部材用台座 216…弾性部材用台座 217…係合凸部 218…第1の係止壁 219…第3の端子用スペース 22…前壁 221…前側ボス 23…側壁 231…第1の側壁 232…第2の側壁 233…第2の係止壁 234…ガイド溝 235…パンチング用溝 236…ストッパー 24…後壁 241…後側ボス 25…収納部 251…接点収納空間 26…係合部 261…傾斜部 262…平坦部 3…固定接点 31…中央固定接点 311…露出部 312…接触部 313…延伸部 314…端子部 315…接続部 32…外側固定接点 321…露出部 322…延伸部 323…端子部 324…接続部 4…可動接点 41…中央可動部 42…外縁部 5…封止部材 51…下面 52…上面 6…弾性部材 61…下面 62…上面 6a…弾性部材 61a…支持部 611a…本体部 62a…中央部 621a…本体部 622a…押圧部 63a…バネ部 631a…本体部 632a…第1の接続部 633a…第2の接続部 7…キャップ 71…ベース部 72…突出部 73…押圧部 8…カバー 81…トッププレート 811…開口 812…前側ボス穴 813…後側ボス穴 814…接続部 815…肉抜き部 82…延伸部 821…係合孔 83…ボス 500…プッシュスイッチ 501a…中央固定接点 501b…外側固定接点 502…ケース 503…可動接点 504…ラバーシート 505…キャップ 505a…下側突出部 505b…上側突出部 506…カバー 600…プッシュスイッチ 601a…中央固定接点 601b…外側固定接点 602…ケース 603…可動接点 604…キャップ 605…カバー 606…コイルバネ 100…回路基板 110…ボス穴 120…係合凹部 130…端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19