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特開2024-140221吊架線の延線ガイド装置及び吊架線の張り替え工事方法
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  • 特開-吊架線の延線ガイド装置及び吊架線の張り替え工事方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140221
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】吊架線の延線ガイド装置及び吊架線の張り替え工事方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/06 20060101AFI20241003BHJP
   B60M 1/28 20060101ALI20241003BHJP
   H02G 1/02 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
H02G1/06
B60M1/28 K
B60M1/28 N
H02G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051259
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】591048830
【氏名又は名称】日本電設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】内田 忠篤
(72)【発明者】
【氏名】豊原 義基
(72)【発明者】
【氏名】関山 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹田 良太
【テーマコード(参考)】
5G352
【Fターム(参考)】
5G352AA15
5G352AB09
5G352AL06
5G352CD09
5G352CD11
5G352CE05
5G352CL02
(57)【要約】
【課題】吊架線を可動ブラケット上に円滑に延線し、取り外した吊架線を円滑に撤去することができる延線ガイド装置を提供する。
【解決手段】延線ガイド装置1は、既設吊架線支持部材103及び既設吊架線Mを跨いで水平主パイプ101上に取り付けられる支持脚部4、それの上部の門形枠部5、それの上部に着脱自在の吊り上げ支持部材3、門形枠部5に方形に配置、支持されるガイドローラ6を具備する。支持脚部4の脚部材41,42の上端部間は開放して門形枠部5に接続される。ガイドローラ6は、固設ローラ61,62,63、水平開閉ローラ64を具備し、ローラ間に新設き電吊架線F又は撤去される既設吊架線Mを通して延線、撤去をガイドする。水平開閉ローラ64の回転で門形枠部5の下部を開き、新設き電線Fを取り出し、既設吊架線Mを取り込む。吊り上げ支持部材3に工具Wを掛け吊架線F,Mを吊り上げる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電車線路の吊架線張り替え工事に用いられる延線ガイド装置であって、
可動ブラケットの水平主パイプ上の既設の吊架線支持部材及び当該吊架線支持部材の上に支持されている既設吊架線を跨ぐように前記水平主パイプ上に取り付けられる支持脚部と、当該支持脚部の上部に支持される門形枠部と、当該門形枠部の上部に着脱自在に設けられる吊り上げ支持部材と、前記門形枠部に方形に配置されて支持され内側に新設吊架線及び取り外された既設吊架線を取り込んで延線をガイドする4つ一組のガイドローラとを具備し、
前記支持脚部は、それぞれ下端が前記既設の吊架線支持部材の外側において 前記水平主パイプ上に固定され、上方へ延びて上端部間が開放する第1及び第2の脚部材を具備し、
前記門形枠部は、下端が前記第1の脚部材の上端に接続されて上方へ垂直に延びる第1の縦枠と、下端が前記第2の脚部材の上端に接続されて上方へ垂直に延びる第2の縦枠と、当該第1及び第2の縦枠の上端部間を接続する上枠とからなり、
前記吊り上げ支持部材は、前記吊架線を吊り上げるための工具を掛けられるように上部が前記門形枠部から前記水平主パイプの軸線直交方向に張り出したアーム部を具備し、
前記一組のガイドローラは、前記第1、第2の縦枠及び前記上枠の内側にそれぞれ各枠と平行に配置されて軸支される3つの固設ローラと、一端が前記第1及び第2の縦枠のいずれか一方の下端部に垂直軸周りに回動自在に枢支され、他端がいずれか他方の下端部に係脱自在に支持され、かつ自身の軸線周りに回転自在の水平開閉ローラとを具備し、前記水平開閉ローラの前記垂直軸周りの回動により前記第1及び第2の縦枠の下端間が開閉自在に構成され、
前記支持脚部の一方の脚部は、内側の下部に、前記既設の吊架線支持部材から外された既設吊架線の仮保持部を具備することを特徴とする吊架線の張り替え工事用延線ガイド装置。
【請求項2】
前記門形枠部は、前記可動ブラケット上に支持された前記新吊架線に対して前記可動ブラケットの軸線方向に偏心して設けられ、それにより、当該新設吊架線に対して、前記ガイドローラで撤去される前記既設吊架線の干渉が回避可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載の吊架線の張り替え工事用延線ガイド装置。
【請求項3】
可動ブラケットの水平主パイプ上に既設の吊架線支持部材を介して既設の吊架線が支持されると共に、当該既設の吊架線の下方に位置して曲線引き金具により既設のトロリ線が支持されているシンプルカテナリ吊架方式の電車線をき電吊架方式に変更する工事の方法であって、
前記可動ブラケットの水平主パイプ上に、前記既設の吊架線を跨ぐように請求項1に記載の延線ガイド装置の支持脚部を固定する第1の工程と、
前記第1の工程に続いて、前記吊り上げ支持部材のアームに吊り上げ工具を掛け、当該吊り上げ工具により、前記既設の吊架線支持部材上から前記吊架線仮保持部へ前記既設吊架線を移動させて保持すると同時に、前記既設のトロリ線を前記曲線引き金具と共に当該既設吊架線の下方に移動させる第2の工程と、
前記第2の工程に続いて、前記水平主パイプから前記既設の吊架線支持部材を取り外し、これに替えて前記水平主パイプ上にき電吊架線支持用のクリートの下部材を取り付ける第3の工程と、
前記第3の工程に続いて、前記ガイドローラ間へ前記新設き電吊架線を取り込んで、延線する第4の工程と、
前記第4の工程に続いて、前記吊り上げ支持部材のアームに吊り上げ工具を掛け、当該吊り上げ工具により、前記ガイドローラ間に延線された前記新設き電吊架線を前記開閉ローラ上から吊り上げつつ当該開閉ローラを開放操作する第5の工程と、
前記第5の工程に続いて、前記吊り上げ工具を操作し、前記新設き電吊架線をガイドローラ間から下方へ脱出させて、前記クリートの下部材上へ置く第6の工程と、
前記第6の工程に続いて、前記下部材上へ前記クリートの上部材を取り付けて前記新設き電吊架線を挟持する第7の工程と、
前記第7の工程に続いて、前記既設のトロリ線を前記曲線引き金具と共に前記新設き電吊架線の下方に移動させて、当該トロリ線を当該新設き電吊架線の下に吊る第8の工程と、
前記第8の工程に続いて、前記吊架線仮保持部から前記既設吊架線を外し、前記吊り上げ工具により、当該既設吊架線を吊り上げ、前記ガイドローラ間に取り込む第9の工程と、
前記第9の工程に続いて、前記既設吊架線を前記ガイドローラにガイドさせて引き抜く第10の工程とを含むことを特徴とする工事方法。
【請求項4】
可動ブラケットの水平主パイプ上に既設の吊架線支持部材を介して既設の吊架線が支持されると共に、当該既設の吊架線の下方に位置して曲線引き金具により既設のトロリ線が支持されているシンプルカテナリ吊架方式の電車線において、当該既設吊架線を新設吊架線に張り替える工事の方法であって、
前記可動ブラケットの水平主パイプ上に、前記既設の吊架線を跨ぐように請求項1に記載の延線ガイド装置の支持脚部を固定する第1の工程と、
前記第1の工程に続いて、前記吊り上げ支持部材のアームに吊り上げ工具を掛け、当該吊り上げ工具により、前記既設の吊架線支持部材上から前記吊架線仮保持部へ前記既設吊架線を移動させて保持すると同時に、前記既設のトロリ線を前記曲線引き金具と共に当該既設吊架線の下方に移動させる第2の工程と、
前記第2の工程に続いて、前記ガイドローラ間へ前記新設吊架線を取り込んで、延線する第3の工程と、
前記第3の工程に続いて、前記吊り上げ支持部材のアームに吊り上げ工具を掛け、当該吊り上げ工具により、前記ガイドローラ間に延線された前記新設吊架線を前記開閉ローラ上から吊り上げつつ、当該開閉ローラを開放操作する第4の工程と、
前記第4の工程に続いて、前記吊り上げ工具を操作し、前記新設吊架線をガイドローラ間から脱出させて、前記既設の吊架線支持部材上へ置いて固定する第5の工程と、
前記第5の工程に続いて、前記既設のトロリ線を前記曲線引き金具と共に前記新設き電吊架線の下方に移動させて、当該トロリ線を当該新設吊架線の下に吊る第6の工程と、
前記第6の工程に続いて、前記吊架線仮保持部から前記既設吊架線を外し、前記吊り上げ工具により、当該既設吊架線を吊り上げ、前記ガイドローラ間に取り込む第7の工程と、
前記第7の工程に続いて、前記既設吊架線を前記ガイドローラにガイドさせて引き抜く第8の工程とを含むことを特徴とする工事方法。
【請求項5】
可動ブラケットの水平主パイプ上に既設の吊架線支持部材であるクリートを介して既設のき電吊架線が支持されると共に、当該既設のき電吊架線の下方に位置して曲線引き金具により既設のトロリ線が支持されているき電吊架方式の電車線において、当該既設のき電吊架線を新設のき電吊架線に張り替える工事の方法であって、
前記可動ブラケットの水平主パイプ上に、前記既設のき電吊架線を跨ぐように請求項1に記載の延線ガイド装置の支持脚部を固定する第1の工程と、
前記第1の工程に続いて、前記吊り上げ支持部材のアームに吊り上げ工具を掛け、当該吊り上げ工具により、前記既設のクリート上から前記吊架線仮保持部へ前記既設のき電吊架線を移動させて保持すると同時に、前記既設のトロリ線を前記曲線引き金具と共に当該既設のき電吊架線の下方に移動させる第2の工程と、
前記第2の工程に続いて、前記ガイドローラ間へ前記新設のき電吊架線を取り込んで、延線する第3の工程と、
前記第3の工程に続いて、前記吊り上げ支持部材のアームに吊り上げ工具を掛け、当該吊り上げ工具により、前記ガイドローラ間に延線された前記新設のき電吊架線を前記開閉ローラ上から吊り上げつつ、当該開閉ローラを開放操作する第4の工程と、
前記第4の工程に続いて、前記吊り上げ工具を操作し、前記新設のき電吊架線をガイドローラ間から脱出させて、前記既設のクリート上へ置いて固定する第5の工程と、
前記第5の工程に続いて、前記既設のトロリ線を前記曲線引き金具と共に前記新設のき電吊架線の下方に移動させて、当該トロリ線を当該新設のき電吊架線の下に吊る第6の工程と、
前記第6の工程に続いて、前記吊架線仮保持部から前記既設のき電吊架線を外し、前記吊り上げ工具により、当該既設のき電吊架線を吊り上げ、前記ガイドローラ間に取り込む第7の工程と、
前記第7の工程に続いて、前記既設のき電吊架線を前記ガイドローラにガイドさせて引き抜く第8の工程とを含むことを特徴とする工事方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車線路においてハンガを介してトロリ線を支持する吊架線の張り替え工事に際して、新旧吊架線の延線及び撤去に使用されるガイド装置と、これを用いた吊架線の張り替え工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブルトレイやケーブルラック等の敷設路に電力用ケーブルや制御用ケーブルを敷設する際に用いられるケーブル延線用ガイドローラとして、例えば特許文献1に記載されたものが提案されている。この装置は、4つのローラを方形に配置してなり、4つのローラ間にケーブルを通し、所定距離導いた後に、遠隔操作でガイドローラを開き、ケーブルをケーブルラック等の敷設路に自動的に敷設するものである。 門型のフレームからなるフレームの両脚部のうち一方の端にアーム付き回動体が枢着される。そのアーム付き回動体に開放ローラの一端が軸支される。開放ローラの他端は、他方の脚部の端に挿脱自在に装着される。そして、アームに係止されたロープ等の可撓性条材を引くことで、回動体と共に開放ローラを回動させ、開放ローラの他端を他方の脚部から離脱させることで、開放ローラを開き、延線されたケーブルを4つのローラ間から脱出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-261816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、電力を供給するき電線と別に、トロリ線を吊る吊架線を併架する一般的なシンプルカテナリ吊架方式から、き電線自体に吊架線の機能を持たせるき電吊架方式に吊架方式を変更する工事においては、電車の運行を止めないように、既設の吊架線とトロリ線を可動ブラケットに支持したまま、短時間のうちに手順よくき電吊架線を延線する必要がある。これは、同一吊架方式内における吊架線又はき電吊架線同士の新旧張り替え工事の場合も同様である。また、き電吊架線を含む吊架線は、可動ブラケットという特殊な支持物の上に支持金具を介して支持されるため、上記従来のケーブル延線用ガイドローラをそのまま、吊架線の延線工事に適用することができない。
従って、本発明は、き電吊架線を含む吊架線を可動ブラケット上に円滑に延線し、また可動ブラケット上から取り外した吊架線を円滑に撤去することができるき延線ガイド装置と、これを用いた吊架線の張り替え工事の方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の説明において添付図面の符号を参照するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明の延線ガイド装置1は、可動ブラケット101の水平主パイプ102上の既設の吊架線支持部材103及び当該吊架線支持部材103の上に支持されている既設吊架線Mを跨ぐように水平主パイプ101上に取り付けられる支持脚部4と、当該支持脚部4の上部に支持される門形枠部5と、当該門形枠部5の上部に着脱自在に設けられる吊り上げ支持部材3と、門形枠部5に方形に配置されて支持され内側に新設吊架線F及び取り外された既設吊架線Mを取り込んで延線をガイドする4つ一組のガイドローラ6とを具備する。支持脚部4は、それぞれ下端が既設の吊架線支持部材103の外側において水平主パイプ102上に固定され、上方へ延びて上端部間が開放する第1及び第2の脚部材を具備する。門形枠部は、下端が第1の脚部材41の上端に接続されて上方へ垂直に延びる第1の縦枠51と、下端が第2の脚部材42の上端に接続されて上方へ垂直に延びる第2の縦枠52と、当該第1及び第2の縦枠51,52の上端部間を接続する上枠53とからなる。吊り上げ支持部材3は、吊架線F,Mを吊り上げるための工具Wを掛けられるように上部が門形枠部5から水平主パイプ102の軸線直交方向に張り出したアーム部31を具備する。一組のガイドローラ6は、第1、第2の縦枠51,52及び上枠53の内側に、それぞれ各枠と平行に配置されて軸支される3つの固設ローラ61,62,63と、一端が第1及び第2の縦枠のいずれか一方の下端部に垂直軸64a周りに回動自在に枢支され、他端がいずれか他方の下端部に係脱自在に支持され、かつ自身の軸線周りに回転自在の水平開閉ローラ64とを具備する。水平開閉ローラ64の垂直軸64a周りの回動により、第1及び第2の縦枠51,52の下端間が開閉自在に構成される。支持脚部4の一方の脚部42は、内側の下部に、既設の吊架線支持部材103から外された既設吊架線Mの仮保持部43を具備する。
【0006】
上記課題を解決するための、本発明の吊架線の張り替え工事の方法は、可動ブラケット101の水平主パイプ102上に既設の吊架線支持部材103を介して既設の吊架線Mが支持され、当該既設の吊架線Mの下方に位置して曲線引き金具104により既設のトロリ線Tが支持されているシンプルカテナリ吊架方式の電車線路をき電吊架方式に変更する以下の工事の方法を含む。可動ブラケット101の水平主パイプ102上に、既設の吊架線Mを跨ぐように上記延線ガイド装置1の支持脚部4を固定する第1の工程と、これに続いて、吊り上げ支持部材3のアーム31に吊り上げ工具Wを掛け、当該吊り上げ工具Wにより、既設の吊架線支持部材103上から吊架線の仮保持部43へ既設吊架線Mを移動させて保持すると同時に、既設のトロリ線Tを曲線引き金具104と共に既設吊架線Mの下方に移動させる第2の工程と、これに続いて、水平主パイプ102から既設の吊架線支持部材103を取り外し、これに替えて水平主パイプ102上にき電吊架線支持用のクリート105の下部材105aを取り付ける第3の工程と、これに続いて、ガイドローラ6間へ新設き電吊架線Fを取り込んで、延線する第4の工程と、これに続いて、吊り上げ支持部材3のアーム31に吊り上げ工具Wを掛け、吊り上げ工具Wにより、ガイドローラ6間に延線された新設き電吊架線Fを開閉ローラ64上から吊り上げつつ、当該開閉ローラ64を開放操作する第5の工程と、これに続いて、吊り上げ工具Wを操作し、新設き電吊架線Fをガイドローラ6間から下方へ脱出させて、クリート105の下部材105a上へ置く第6の工程と、これに続いて、クリート105の下部材105a上へ上部材105bを取り付けて新設き電吊架線Fを挟持する第7の工程と、これに続いて、既設のトロリ線Mを曲線引き金具104と共に新設き電吊架線Fの下方に移動させて、当該トロリ線Tを当該新設き電吊架線Fの下に吊る第8の工程と、これに続いて、吊架線の仮保持部43から既設吊架線Mを外し、吊り上げ工具Wにより、既設吊架線Mを吊り上げ、ガイドローラ6間に取り込む第9の工程と、これに続いて、既設吊架線Mをガイドローラ6にガイドさせて引き抜く第10の工程とを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、き電吊架線を含む吊架線の張り替え工事において、可動ブラケット上に新設の吊架線を円滑、かつ安全に延線し、また可動ブラケットから取り外された既設の吊架線を円滑、かつ安全に撤去ることができ吊架線の延線ガイド装置と、これを用いて吊架線の張り替え工事を行う新たな方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】既設の吊架線をき電吊架線に張り替える工事において、可動ブラケット上に装着された本発明の延線ガイド装置の斜視図である。
図2図1の延線ガイド装置の正面図である。
図3図1の延線ガイド装置の側面図である。
図4図1の延線ガイド装置の平面図である。
図5図1の延線ガイド装置の分解斜視図である。
図6】シンプルカテナリ吊架方式の電車線における可動ブラケットを示す正面図である。
図7】吊架線の張り替え工法を順を追って示す説明図である。
図8】吊架線の張り替え工法を順を追って示す説明図である。
図9】吊架線の張り替え工法を順を追って示す説明図である。
図10】吊架線の張り替え工法を順を追って示す説明図である。
図11】吊架線の張り替え工法を順を追って示す説明図である。
図12】吊架線の張り替え工法を順を追って示す説明図である。
図13】吊架線の張り替え工法を順を追って示す説明図である。
図14】吊架線の張り替え工法を順を追って示す説明図である。
図15】吊架線の張り替え工法を順を追って示す説明図である。
図16】吊架線の張り替え工法を順を追って示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。延線ガイド装置1は、シンプルカテナリ吊架方式、き電吊架方式に拘わらず、吊架線を既設のものから新しいものに張り替える工事に使用される装置である。
【0010】
以下、電車線の吊架方式をシンプルカテナリ吊架方式からき電吊架方式に変更するために、既設の吊架線を新たなき電吊架線に張り替える工事に使用する場合を例にとって延線ガイド装置1を説明する。
【0011】
図1において、延線ガイド装置1は、可動ブラケット101の水平主パイプ102上に取り付けられる本体2と、本体2の上部に着脱自在の吊り上げ支持部材3とを具備する。
【0012】
本体2は、図1において、可動ブラケット101の水平主パイプ102上に取り付けられる支持脚部4と、当該支持脚部4の上部に支持される門形枠部5と、当該門形枠部5に方形に配置されて支持される4つ一組のガイドローラ6とを具備する。ガイドローラ6は、工事の進行に応じ、内側に新設のき電吊架線F又は取り外された既設の吊架線Mを取り込んで延線又は撤去をガイドする。
【0013】
図1~4は、既設吊架線Mが、吊架線支持部材103上から取り外され、支持脚部2に保持され、新設のき電吊架線Fがガイドローラ6間を延線される状態を示す。
【0014】
図1~4において、支持脚部4は、可動ブラケット101の水平主パイプ102上の既設の吊架線支持部材103及び既設吊架線Mを跨ぐように、水平主パイプ102上に取り付けられる。
【0015】
支持脚部4は、第1及び第2の脚部材41,42を具備する。脚部材41,42は、それぞれ下端が既設の吊架線支持部材103の外側において水平主パイプ上102に固定され、上方へ延びて上端部間が開放している。
【0016】
第1の脚部材41は、水平主パイプ102に対して垂直に延びているが,第2の脚部材42は、基部において水平主パイプ102に対して垂直に立ち上がり、途上から第1の脚部材41側へ傾斜して延び、上端において門形枠部5に接続されている。したがって、門形枠部5は、支持脚部4に対して可動ブラケット101の軸線方向に偏心している。それにより、可動ブラケット101上の吊架線とガイドローラ6間を延線される吊架線との干渉が回避される。
【0017】
第2の脚部42の内側の下部には、既設の吊架線支持部材103から取り外された既設吊架線Mを仮保持するためのフックボルト43が設けられている。
【0018】
門形枠部5は、下端が第1の脚部材41の上端に接続されて上方へ垂直に延びる第1の縦枠51と、下端が第2の脚部材42の上端に接続されて上方へ垂直に延びる第2の縦枠52と、第1及び第2の縦枠51,52の上端部間を接続する上枠53とを具備し、下部は支持脚部4側へ開放している。
【0019】
吊り上げ支持部材3は、下端部において門形枠部5の上枠53上に着脱自在に取り付けられる。吊り上げ支持部材3は、工事の進行に応じて適宜着脱されるもので、上部が門形枠部5から水平主パイプ102の軸線直交方向に張り出したアーム部31を具備する。アーム部31には、工事の進行に応じて既設の吊架線M又は新設のき電吊架線Fを吊り上げるためのレバーブロック(登録商標)、ウィンチ等の工具W(図3)が掛けられる。
【0020】
一組のガイドローラ6は、3つの固設ローラ61,62,63と、1つの開閉ローラ64とからなる。3つの固設ローラ61,62,63は、第1、第2の縦枠51,52及び上枠53の内側に、それぞれ各枠と平行に配置されて軸支される。
【0021】
開閉ローラ64は、一端側において第1の縦枠51の下端部に垂直軸64a周りに回動自在に枢支され、他端側の開閉ハンドル部64bにおいて、第2の縦枠52の下端部のローラ保持部52aに係脱自在に支持され、また自身の軸線周りに回転自在ある。したがって、開閉ローラ64は、垂直軸64a周りに水平回転して、門形枠部5の下部を支持脚部4側に開閉自在に構成される。なお、図示の実施形態において、ガイドローラ6は、門形枠部5の、水平主パイプ102の軸線直交方向の両側に1組ずつ、2組設けられている。
【0022】
次に、延線ガイド装置1を用いて、図6に示すシンプルカテナリ吊架方式を適用した既存の可動ブラケット101上に、新たにき電吊架線Fを延線する工事の方法を説明する。図6において、可動ブラケット101の水平主パイプ102上に、吊架線支持部材103を介して吊架線Mが支持され、その下方に、曲線引き金具104を介してトロリ線Tが吊られている。
【0023】
まず、図7に示すように、水平主パイプ上102に、既設の吊架線Mと吊架線支持部材103を跨ぐように、延線ガイド装置1の本体2を固定する。
【0024】
次いで、図8に示すように、既設吊架線Mを吊架線支持部材103から取り外すと共に、吊り上げ支持部材3を本体2上に取り付け、それのアーム31に吊り上げ工具Wを掛け、これにより、既設吊架線Mを吊り上げ、吊架線の仮保持部43へ移動させて保持する。これと同時に、既設のトロリ線Tを曲線引き金具104と共に、既設吊架線Mの下方に移動させる。
【0025】
続いて、図9に示すように、水平主パイプ102から既設の吊架線支持部材103を取り外し、これに替えて、水平主パイプ102上にき電吊架線の支持部材であるクリート105の下部材105aを取り付ける。
【0026】
続いて、図10に示すように、ガイドローラ6間へ新設き電吊架線Fを取り込んで、延線する。
【0027】
次いで、図11に示すように、吊り上げ支持部材3のアーム31に吊り上げ工具Wを掛け、これでガイドローラ6間に延線された新設き電吊架線Fを開閉ローラ64上から吊り上げて荷重を取りつつ、開閉ローラ64を開放操作する。
【0028】
次いで、図12に示すように、吊り上げ工具Wを操作し、新設き電吊架線Fをガイドローラ6間から下方へ脱出させて、クリート105の下部材105a上へ置く。
【0029】
次いで、図13に示すように、下部材105a上へクリートの上部材105bを取り付けて、新設き電吊架線Fを挟持する。ここまでの間、電車は既設吊架線Mの下に吊られたトロリ線Tの下を運行される。
【0030】
次いで、図14に示すように、既設のトロリ線Tを曲線引き金具104と共に新設き電吊架線Fの下方に移動させて、当該トロリ線Tを新設き電吊架線Fの下に吊る。ここから、き電吊架線Fの下のトロリ線Tは、き電吊架線Fから電力を受けるように接続される。したがって、電車は、き電吊架線F下のトロリ線Tから電力を受けて運行される。
【0031】
次いで、図15に示すように、吊架線の仮保持部43から既設吊架線Mを外し、吊り上げ工具Wにより、当該既設吊架線Mを吊り上げ、ガイドローラ6間に取り込む。
【0032】
次いで、図16に示すように、既設吊架線Mをガイドローラ6にガイドさせて引き抜く。
【0033】
以上のように、新吊架線(き電吊架線F)の延線、設置と旧吊架線Mの撤去を本体2の枠内で完結することができるので、工事の安全性が向上する。
【0034】
以上、既設の吊架線Mを新たなき電吊架線Fに張り替える工事において本発明の延線ガイド装置1を用いる方法を説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、既設の吊架線Mを新しい別の吊架線Mに張り替える工事、あるいは既設のき電吊架線Fを新たな別のき電吊架線Fに張り替える工事においても、同様に、水平主パイプ102上に本発明の延線ガイド装置1を取り付けることで、張り替え工事を短時間で安全かつ円滑に進めることができる。
なお、新旧吊架線M同士、又は新旧き電吊架線F同士のように、同種の吊架線同士の張り替え工事においては、吊架線支持部材103,105の付け替え工程は不要である。また、新旧き電吊架線F同士の張り替え工事に使用する延線ガイド装置1の吊架線の仮保持部43は、き電吊架線Fを可動ブラケット101から電気的に絶縁して保持できる構造のものとする。
【符号の説明】
【0035】
1 延線ガイド装置
2 本体
3 吊り上げ支持部材
31 アーム
4 支持脚部
41 第1の脚部
42 第2の脚部
43 吊架線の仮保持部
5 門形枠部
51 第1の縦枠
52 第2の縦枠
52a ローラ保持部
53 上枠
6 ガイドローラ
61 固設ローラ
62 固設ローラ
63 固設ローラ
64 開閉ローラ
64a 垂直軸
64b 操作ハンドル
101 可動ブラケット
102 水平主パイプ
103 吊架線支持部材
104 曲線引き金具
105 吊架線支持部材(クリート)
105a クリートの下部材
105b クリートの上部材
F き電吊架線
M 吊架線
W 吊り上げ工具
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
図9
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図16