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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140230
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241003BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051268
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100172362
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達哉
(72)【発明者】
【氏名】佐賀 彩子
(72)【発明者】
【氏名】山澤 航太朗
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA24
5H770BA01
5H770CA02
5H770DA03
5H770DA41
5H770PA24
5H770PA28
5H770PA42
5H770QA01
5H770QA08
5H770QA28
(57)【要約】
【課題】電力変換装置を流動性のある密着部材を介して放熱体に取り付ける場合の作業効率を向上させることが可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】この電力変換装置100では、電力変換装置筐体1を構成する背面プレート1aは、回路基板部2と対向する内表面11aと、電力変換装置筐体1とは別個に設けられた放熱体3に対して流動性のある密着部材4を介して対向する外表面11bとを有するとともに、外表面11bの外周近傍に溝11cが設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面プレートと、前記背面プレートを覆うカバー部材とを含む電力変換装置筐体と、
前記電力変換装置筐体の内部に配置され、スイッチング素子を含む、回路基板部と、を備え、
前記電力変換装置筐体を構成する前記背面プレートは、前記回路基板部と対向する内表面と、前記電力変換装置筐体とは別個に設けられた放熱体に対して流動性のある密着部材を介して対向する外表面とを有するとともに、前記外表面の外周近傍に溝が設けられている、電力変換装置。
【請求項2】
前記電力変換装置筐体を構成する前記背面プレートは、フィンが設けられていない金属プレートである、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記電力変換装置筐体を構成する前記背面プレートに設けられる前記溝は、前記回路基板部に当接する前記内表面の部分に対応する前記外表面の部分を取り囲むように周状に設けられている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電力変換装置筐体を構成する前記背面プレートは、前記溝の内周側の開口端の角部が丸形形状に構成されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記電力変換装置筐体を構成する前記背面プレートは、前記溝の内周側の底面側の角部が丸形形状に構成されている、請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記電力変換装置筐体を構成する前記背面プレートに設けられる前記溝は、開口端から底面側に向かって先細るように構成されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記電力変換装置筐体を構成する前記背面プレートの前記外表面において、前記溝が延びる方向に直交する方向における前記溝の幅は、前記溝の深さよりも大きい、請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力変換装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、背面に冷却フィンが複数設けられるインバータ装置が開示されている。特許文献1では、配電盤の内部の風洞に冷却フィンを挿入し、風洞の板面にインバータ装置を取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-108323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されている電力変換装置(インバータ装置)は、ヒートシンクが放熱フィンを含むことにより、電力変換装置が大型化するという課題がある。そこで、ヒートシンクを設けずに、配電盤の板面(板金等の金属製)に取り付けて板金を放熱体とする場合がある。
【0006】
この場合に、電力変換装置の外表面と放熱体との間に隙間が形成されると電力変換装置の外表面と放熱体との間に空気が残り、空気を介して電力変換装置から放熱体に伝熱されるため、熱伝導率が低下するという課題が生じる。そのため、隙間が形成されないように流動性のある密着部材を電力変換装置の外表面と、壁部などの放熱体との間に塗布する場合がある。
【0007】
ここで、密着部材の塗布量が少ないと電力変換装置の外表面と放熱体との間の隙間が形成されることを抑制することが困難となる。そこで、取付作業現場では、作業者は不足しないように電力変換装置に密着部材を過度に塗布し、電力変換装置の外表面と放熱体との隙間からはみ出した流動性のある密着部材を清掃する場合がある。この結果、清掃作業を行う必要があるため、電力変換装置を放熱体に取り付ける場合の作業効率が低くなるという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、電力変換装置を流動性のある密着部材を介して放熱体に取り付ける場合の作業効率を向上させることが可能な電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の一局面による電力変換装置は、背面プレートと、背面プレートを覆うカバー部材とを含む電力変換装置筐体と、電力変換装置筐体の内部に配置され、スイッチング素子を含む、回路基板部と、を備え、電力変換装置筐体を構成する背面プレートは、回路基板部と対向する内表面と、電力変換装置筐体とは別個に設けられた放熱体に対して流動性のある密着部材を介して対向する外表面とを有するとともに、外表面の外周近傍に溝が設けられている。
【0010】
この発明の一の局面による電力変換装置では、上記のように構成することにより、電力変換装置筐体を放熱体に固定した場合に、密着部材が圧迫されて、電力変換装置筐体の外表面に沿って流れたとしても、溝に密着部材が流れ込むことにより、溝よりも背面プレートの外周側に密着部材が流れることを抑制することができる。これにより、作業者は、電力変換装置筐体の背面プレートに流動性のある密着部材を多く塗布した場合でも、密着部材が電力変換装置筐体からはみ出ることはないため、はみ出した密着部材を拭き取って清掃する作業が必要なくなる。この結果、電力変換装置を流動性のある密着部材を介して放熱体に取り付ける場合の作業効率を向上させることができる。また、電力変換装置筐体に溝が設けられているため、放熱体に溝が設けられている場合と異なり、放熱体の平面部分であればどこでも取り付けることができる。その結果、電力変換装置筐体の配置の自由度が低下することを抑制することが可能である。
【0011】
上記一の局面による電力変換装置において、好ましくは、電力変換装置筐体を構成する背面プレートは、フィンが設けられていない金属プレートである。このように構成すれば、背面プレートにフィンが設けられていないため、電力変換装置を小型化することができる。
【0012】
上記一の局面による電力変換装置において、好ましくは、電力変換装置筐体を構成する背面プレートに設けられる溝は、回路基板部に当接する内表面の部分に対応する外表面の部分を取り囲むように周状に設けられている。このように構成すれば、周状の溝の内側に流動性のある密着部材を塗布することにより、密着部材が流れる方向に関わらず、余分な密着部材を溝に流すことができる。この結果、余分な密着部材が溝よりも外側に流れることを効果的に抑制することができる。
【0013】
上記一の局面による電力変換装置において、好ましくは、電力変換装置筐体を構成する背面プレートは、溝の内周側の開口端の角部が丸形形状に構成されている。このように構成すれば、溝の内周側に密着部材を設けた場合に、丸形形状の湾曲した部分に沿って流動性のある密着部材が流れやすくなるため、角部が尖っている場合と比べて、余分な密着部材を確実に溝に流すことができる。この結果、余分な密着部材が背面プレートの外側に流れることをさらに抑制することができる。
【0014】
この場合、好ましくは、電力変換装置筐体を構成する背面プレートは、溝の内周側の底面側の角部が丸形形状に構成されている。このように構成すれば、底面側の角部が丸形形状に構成されているため、角部が尖っている場合と比べて底面の表面積が小さくなる。これによって、溝の底面における表面張力が大きくなるため、流動性のある密着部材を保持しやすくなる。
【0015】
上記一の局面による電力変換装置において、好ましくは、電力変換装置筐体を構成する背面プレートに設けられる溝は、開口端から底面側に向かって先細るように構成されている。このように構成すれば、外周側の開口端側から底面側に向かって下方に傾斜する傾斜面が形成されるため、余分な密着部材が溝の底面側から開口端部に流れにくくなり、溝に流れた密着部材が背面プレートの外周側に流れることを抑制することができる。また、内周側の開口端側から底面側に向かって下方に傾斜する傾斜面が形成されるため、余分な密着部材が溝に流れやすくなる。これにより、密着部材が背面プレートの外側に流れることをさらに抑制することができる。
【0016】
上記一の局面による電力変換装置において、好ましくは、電力変換装置筐体を構成する背面プレートの外表面において、溝が延びる方向に直交する方向における溝の幅は、溝の深さよりも大きい。このように構成すれば、溝の幅が大きいため、密着部材を溜めることが可能な溝の容量を大きくすることができる。これにより、密着部材が背面プレートの外側に流れることをさらに抑制することができる。また、溝の深さを小さくすることにより、背面プレートの溝と放熱体との間に空気が溜まることを抑制することができる。この結果、密着部材が外部にはみ出すことを抑制しつつ、熱伝導率が低くなることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記のように、電力変換装置を流動性のある密着部材を介して放熱体に取り付ける場合の作業効率を向上させることが可能な電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態の電力変換装置を示した斜視図である。
図2】一実施形態の電力変換装置の回路構成を示す図である。
図3】一実施形態の電力変換装置を放熱体に取り付けた状態を示す断面図である。
図4】一実施形態の背面プレートを説明するための斜視図である。
図5】一実施形態の背面プレートを説明するための底面図である。
図6】本発明の電力変換装置を放熱体に取り付ける様子を示す斜視図である。
図7図5のVII-VII線に沿った断面図である。
図8】一実施形態の溝に密着部材が流れる様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1図8を参照して、本実施形態による電力変換装置100の構成について説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の電力を変換する電力変換装置100は、冷却フィンが設けられていないフィンレスタイプである。電力変換装置100は、表示部50と、操作部60とが設けられている。なお、本実施形態では、表示部50および操作部60が設けられている側を正面側として、Y1側とし、Y1側と反対の背面側をY2側とし、Y1側とY2側とを結んだ方向をY方向とする。Y方向と直交する上下方向をZ方向とし、上面側をZ1側とし、底面側をZ2側とする。また、Y方向およびZ方向に直交する左右方向をX方向とし、Y1側からY2側を見た場合の左側をX1側とし、右側をX2側とする。
【0022】
図2を参照して、電力変換装置100の回路構成について説明する。電力変換装置100は、入力された交流の電力を出力側のモータ30の回転数に合わせた交流の電力に変換して出力するように構成されている。本実施形態では、電力変換装置100は、電源20から入力端子を介して入力される交流電力を3相(U相、V相およびW相)の交流電力に変換するように構成されている。また、電力変換装置100は、変換したU相、V相およびW相の交流電力を、出力端子U、VおよびWを介して外部に出力するように構成されている。なお、出力端子U、VおよびWは、モータ30に接続されている。電力変換装置100は、コンバータ回路21と、コンデンサ22と、インバータ回路23とを含む。
【0023】
コンバータ回路21は、電源20から供給された交流を直流に変換する(整流する)。コンバータ回路21は、順方向の電流を通し、逆方向の電流を通さない半導体素子のダイオードが用いられている。
【0024】
コンデンサ22は、充放電を繰り返すことにより、コンバータ回路21により整流された電流を平滑化する。
【0025】
インバータ回路23は、電圧または周波数を変更した交流を出力するための回路である。インバータ回路23は、複数のスイッチング素子2aを含む。複数のスイッチング素子2aは1つのモジュールとして構成される。
【0026】
図3に示すように、電力変換装置100は、電力変換装置筐体1と、回路基板部2とを備える。電力変換装置100は、密着部材4を介して放熱体3と対向する。
【0027】
電力変換装置筐体1は、背面プレート1aと、背面プレート1aを覆うカバー部材1bとを含む。背面プレート1aは、Y1側の面である内表面11aと、Y2側の面である外表面11bとを有する。
【0028】
背面プレート1aは、フィンが設けられていない金属プレートである。背面プレート1aは、伝熱性の高い金属であればよく、たとえば、ステンレスまたはアルミニウムから形成される。背面プレート1aは、角に放熱体3に取り付けて固定するための取付孔が設けられる。
【0029】
背面プレート1aの内表面11aは、回路基板部2と対向する。具体的には、背面プレート1aの内表面11aには、Y1側に突出する凸部12が設けられている。背面プレート1aの内表面11aは、X1側の凸部12には、スイッチング素子2aが取り付けられる。これにより、背面プレート1aの内表面11aは、X1側の凸部12において回路基板部2のインバータ回路23を構成するスイッチング素子2aと密着部材4を介して対向する。図3の破線の矢印で示すように、背面プレート1aは、スイッチング素子2aを含む回路基板部2から発生した熱を放熱体3に伝熱する。また、X2側の凸部12(図4参照)には、制御用のスイッチング素子2aが取り付けられる。X2側の凸部12において制御用のスイッチング素子2aと密着部材4を介して対向する。背面プレート1aは、制御用のスイッチング素子2aから発生した熱を放熱体3に伝熱する。ここで放熱体3は、例えば配電盤を構成する板金等の金属製の板である。
【0030】
図4および図5に示すように、背面プレート1aの外表面11bの外周近傍に密着部材4の流出を防止するための溝11cが設けられている。背面プレート1aに設けられる溝11cは、回路基板部2に当接する内表面11aの部分(凸部12)に対応する外表面11bの部分を取り囲むように周状に設けられている。なお、凸部12および内表面11aには溝11cは設けられていない。背面プレート1aの外表面11bの外周近傍とは、背面プレート1aの中心と外周とを結んだ線の中点よりも外周に近い位置を指し、外周に近いほど好ましい。溝11cは、放熱体3に取り付けて固定するための取付孔よりも内側に配置される。溝11cは、矩形状でもよく、角が丸い四角形でもよく、楕円形でもよい。
【0031】
図3に示すように、背面プレート1aの外表面11bは、電力変換装置筐体1とは別個に設けられた放熱体3に対して流動性のある密着部材4を介して対向する。
【0032】
カバー部材1bは、Y2側に開口している。カバー部材1bの開口した部分には、カバー部材1bの開口した部分を覆うように背面プレート1aが取り付けられている。カバー部材1bは、内部に回路基板部2が配置される。カバー部材1bは、たとえば、樹脂で構成されている。
【0033】
回路基板部2は、インバータ回路23が形成された回路基板を含む複数の基板が積層されている。回路基板部2は、スイッチング素子2aが実装された状態で、背面プレート1aに対向するように配置される。
【0034】
図3および図6に示すように、放熱体3は、電力変換装置筐体1と別個に設けられる。放熱体3は、冷却機能を有する冷却体でもよく、電力変換装置100を収納するための筐体であってもよい。放熱体3は、伝熱性の高い素材で構成されており、たとえば、アルミニウムまたはステンレスなどにより構成される。放熱体3は、電力変換装置筐体1が取り付けられて、固定される。放熱体3は、溝11cは設けられていない。放熱体3には、背面プレート1aを介して回路基板部2から発生した熱が、伝熱される。放熱体3は、伝熱された熱を放熱する。なお、図6では、背面プレート1aを背面側に配置して取り付けている例を示しているが、電力変換装置100を90度回転し、背面プレート1aをZ2側に配置させて放熱体3に取り付けてもよい。
【0035】
図3に示すように、密着部材4は、流動性を有する物質である。密着部材4は、熱伝導率が高い物質である。密着部材4は、たとえば、シリコンコンパウンドである。図5においてハッチングで示すように、密着部材4は、電力変換装置筐体1の外表面11bの溝11cに囲まれた部分に塗布される。なお、図3では、密着部材4を他の部材と比べて大きさを強調して表している。
【0036】
図7に基づいて、溝11cの構造について説明する。電力変換装置筐体1を構成する背面プレート1aは、溝11cの内周側の開口端(Y2側の端部)の角部11dが丸形形状に形成されている。また、溝11cの外周側の開口端の角部11eが丸形形状に形成されている。溝11cの内周側に密着部材4が塗布される。なお、本明細書では、互いに交差する方向に延びる2辺が交わる部分を角部とし、角部が湾曲していることを角部が丸形形状に形成されているとする。
【0037】
背面プレート1aに設けられる溝11cの内周側の底面側(Y1側)の角部11eが丸形形状に構成されている。
【0038】
背面プレート1aに設けられる溝11cは、開口端から底面側(Y1側)に向かって先細るように構成されている。具体的には、外周面および内周面が互いに近づくように各々傾斜し、断面視で底面部分がほぼ平坦である。
【0039】
背面プレート1aの外表面11bにおいて、溝11cが延びる方向に直交する方向(図7では、X方向)における溝11cの幅wは、溝11cの深さ(Y方向の長さ)h1よりも大きい。なお、図7では、図5においてX方向に沿って切断しているため、幅wはX方向の長さであるが、Z方向に沿って切断した場合はZ方向の長さとなる。
【0040】
溝11cの深さh1は、背面プレート1aの厚み(Y方向の長さ)h2よりも小さい。h1は、好ましくは、密着部材4を多く溜めることが可能な深さを確保するように、たとえば、h2の2分1以下に形成される。より好ましくは、熱伝導率を向上させつつ、密着部材4を溜めることが可能な深さを確保するために、h1は、h2の4分の1以下に形成される。さらに好ましくは、放熱体3と密着部材4との間に隙間が形成されることを抑制するために、h1は、h2の10分の1以下に形成される。
【0041】
図8に示すように、電力変換装置筐体1が放熱体3に取り付けられた場合に、電力変換装置筐体1と放熱体3との距離が小さくなることにより、密着部材4は、電力変換装置筐体1と放熱体3とに圧迫されてY方向の高さが小さくなり、X方向およびZ方向に流れる。本実施形態では、流れた密着部材4は、溝11c内に流れる。
【0042】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0043】
本実施形態では、上記のように、電力変換装置筐体1を構成する背面プレート1aは、回路基板部2と対向する内表面11aと、電力変換装置筐体1とは別個に設けられた放熱体3に対して流動性のある密着部材4を介して対向する外表面11bとを有するとともに、外表面11bの外周近傍に溝11cが設けられている。これにより、電力変換装置筐体1を放熱体3に固定した場合に、密着部材4が圧迫されて、電力変換装置筐体1の外表面11bに沿って流れたとしても、溝11cに密着部材4が流れ込むことにより、溝11cよりも背面プレート1aの外周側に密着部材4が流れることを抑制することができる。これにより、作業者は、電力変換装置筐体1の背面プレート1aに流動性のある密着部材4を多く塗布した場合でも、電力変換装置筐体1から密着部材4がはみ出ることはないため、はみ出した密着部材4を拭き取って清掃する作業が必要なくなる。この結果、電力変換装置100を流動性のある密着部材4を介して放熱体3に取り付ける場合の作業効率を向上させることができる。また、電力変換装置筐体1に溝11cが設けられているため、放熱体3に対して複数配置する場合に放熱体3に溝11cが設けられている場合と異なり、放熱体3の平面部分であればどこでも取り付けることができる。その結果、電力変換装置筐体1の配置の自由度が低下することを抑制することが可能である。
【0044】
また、本実施形態では、電力変換装置筐体1を構成する背面プレート1aは、フィンが設けられていない金属プレートである。これにより、背面プレート1aにフィンが設けられていないため、電力変換装置100を小型化することができる。
【0045】
また、本実施形態では、電力変換装置筐体1を構成する背面プレート1aに設けられる溝11cは、回路基板部2に当接する内表面11aの部分に対応する外表面11bの部分を取り囲むように周状に設けられている。これにより、周状の溝11cの内側に流動性のある密着部材4を塗布することにより、背面プレート1aの外表面11bに沿って流動性のある密着部材4が流れる方向に関わらず、余分な密着部材4を溝11cに流すことができる。この結果、余分な密着部材4が溝11cよりも外側に流れることを効果的に抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では、電力変換装置筐体1を構成する背面プレート1aは、溝11cの内周側の開口端の角部11dが丸形形状に構成されている。これにより、溝11cの内周側に密着部材4を設けた場合に、丸形形状の湾曲した部分に沿って流動性のある密着部材4が流れやすくなるため、角部が尖っている場合と比べて、余分な密着部材4を確実に溝11cに流すことができる。この結果、余分な密着部材4が背面プレート1aの外側に流れることをさらに抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態では、電力変換装置筐体1を構成する背面プレート1aは、溝11cの内周側の底面側の角部11fが丸形形状に構成されている。これにより、底面側の角部11fが丸形形状に構成されているため、角部が尖っている場合と比べて底面の表面積が小さくなる。これによって、溝11cの底面における表面張力が大きくなるため、流動性のある密着部材4を保持しやすくなる。
【0048】
また、本実施形態では、電力変換装置筐体1を構成する背面プレート1aに設けられる溝11cは、開口端から底面側に向かって先細るように構成されている。これにより、外周側の開口端側から底面側に向かって下方に傾斜する傾斜面が形成されるため、余分な密着部材4が溝11cの底面側から開口端部に流れにくくなり、溝11cに流れた密着部材4が背面プレート1aの外周側に流れることを抑制することができる。また、内周側の開口端側から底面側に向かって下方に傾斜する傾斜面が形成されるため、余分な密着部材4が溝11cに流れやすくなる。これにより、密着部材4が背面プレート1aの外側に流れることをさらに抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態では、電力変換装置筐体1を構成する背面プレート1aの外表面11bにおいて、溝11cが延びる方向に直交する方向における溝11cの幅wは、溝11cの深さh1よりも大きい。これにより、溝11cの幅wが大きいため、密着部材4を溜めることが可能な溝11cの容量を大きくすることができる。これにより、密着部材4が背面プレート1aの外側に流れることをさらに抑制することができる。また、溝11cの深さh1を小さくすることにより、背面プレート1aの溝11cと放熱体3との間に空気が溜まることを抑制することができる。この結果、密着部材4が外部にはみ出すことを抑制しつつ、熱伝導率が低くなることを抑制することができる。
【0050】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0051】
たとえば、上記実施形態では、溝が周状である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明の溝は、断続的に設けられていてもよく、3方向だけを囲むように設けられていてもよい。たとえば、図6のように取り付ける場合は、密着部材が流れにくいZ1側に設けなくてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、溝の角部が丸形形状である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、溝の角部が斜めに切断されていてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、電力変換装置が、電力を3相の交流に変換する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、電力変換装置が、電力を単相の交流に変換する構成であってもよい。また、電力変換装置の回路構成は、実施形態の回路構成に限られない。また、入力する電力も三相ではなく単相であってもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、溝が外周側および内周側がともに傾斜している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、内周側だけが傾斜していてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、電力変換装置筐体を構成する背面プレートに設けられる溝は、開口端から底面側に向かって先細るように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、電力変換装置筐体を構成する背面プレートに設けられる溝は、底面側から開口端に向かって先細るように構成されていてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、電力変換装置筐体を構成する背面プレートに設けられる溝は、開口端から底面側に向かって先細るように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、溝は、開口端から底面側に向かって幅が同じであってもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、背面プレートの外表面において、溝が延びる方向に直交する方向における溝の幅は、溝の深さよりも大きい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、溝が延びる方向に直交する方向における溝の幅は、溝の深さよりと同じでもよく、小さくてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、スイッチング素子から発作した熱を放熱体が放熱する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、スイッチング素子に加えて、コンデンサから発生した熱を放熱体が放熱してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 電力変換装置筐体
1a 背面プレート
1b カバー部材
2 回路基板部
2a スイッチング素子
3 放熱体
4 密着部材
11a 内表面
11b 外表面
11c 溝
100 電力変換装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8