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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140235
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】共振器及びフィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/145 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H03H9/145 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051275
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 清磨
(72)【発明者】
【氏名】奥出 貴之
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA26
5J097BB11
5J097CC05
5J097DD05
5J097DD07
5J097HB02
5J097HB08
5J097KK09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】壊された共振器から破壊の原因を定量的に解明する共振器及びフィルタ装置を提供する。
【解決手段】共振器51は、圧電性基板101と、圧電性基板に設けられる共振電極31と、を備える、共振電極は、第1バスバー電極73a及び複数の第1電極指72aにより第1櫛歯状電極が、第2バスバー電極73b及び複数の第2電極指72bにより第2櫛歯状電極が構成され、第1方向xに沿って交互に並ぶように設けられる。第1方向に沿って圧電性基板を見たときに、第1電極指及び第2電極指が重なる重なり領域21は、第1ピッチPaで第1方向に沿って交互に並ぶ第1電極指及び第2電極指の対が複数個含まれる第1領域21aと、第1ピッチと異なる第2ピッチPbの第2領域21bと、を含む。第1領域における第1櫛歯状電極及び第2櫛歯状電極の静電容量は、第2領域における第1櫛歯状電極及び第2櫛歯状電極の静電容量の0.9倍以上1.1倍以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電性を有する基板と、
前記基板に設けられる共振電極と、を備え、
前記共振電極は、
互いに対向する第1バスバー電極及び第2バスバー電極と、
前記第1バスバー電極から前記第2バスバー電極に向かって櫛歯状に延びる複数の第1電極指と、
前記第2バスバー電極から前記第1バスバー電極に向かって櫛歯状に延びる複数の第2電極指であって、前記第1電極指及び前記第2電極指が第1方向に沿って交互に並ぶように設けられる前記複数の第2電極指と、を含み、
前記第1バスバー電極及び前記複数の第1電極指により第1櫛歯状電極が構成され、
前記第2バスバー電極及び前記複数の第2電極指により第2櫛歯状電極が構成され、
前記基板には、前記第1方向に沿って前記基板を見たときに、前記第1電極指及び前記第2電極指が重なる重なり領域があり、
前記重なり領域は、
第1ピッチで前記第1方向に沿って交互に並ぶ前記第1電極指及び前記第2電極指の対が複数個含まれる第1領域と、
前記第1ピッチと異なる第2ピッチで前記第1方向に沿って交互に並ぶ前記第1電極指及び前記第2電極指の対が複数個含まれる第2領域と、を含み、
前記第1領域における前記第1櫛歯状電極及び前記第2櫛歯状電極の静電容量は、前記第2領域における前記第1櫛歯状電極及び前記第2櫛歯状電極の静電容量の0.9倍以上1.1倍以下である、
共振器。
【請求項2】
請求項1に記載の共振器であって、
前記第1領域及び前記第2領域の各々において、前記第1電極指及び前記第2電極指の対は5個以上含まれている、
共振器。
【請求項3】
請求項1に記載の共振器であって、
前記第1ピッチは、前記第2ピッチの0.99倍以上1.01倍以下である、
共振器。
【請求項4】
入力端子及び出力端子を接続する直列線路と、
前記直列線路から分岐する1つ以上の並列線路と、
前記直列線路に設けられる1つ以上の直列腕共振子と、
前記1つ以上の並列線路に設けられる1つ以上の並列腕共振子と、を備え、
前記入力端子又は前記出力端子に最も近い前記直列腕共振子及び前記並列腕共振子のうちの少なくとも1つが、請求項1から3のいずれか一項に記載の前記共振器である、
フィルタ装置。
【請求項5】
圧電性を有する基板と、
前記基板に設けられる共振電極と、を備え、
前記共振電極は、
互いに対向する第1バスバー電極及び第2バスバー電極と、
前記第1バスバー電極から前記第2バスバー電極に向かって櫛歯状に延びる複数の第1電極指と、
前記第2バスバー電極から前記第1バスバー電極に向かって櫛歯状に延びる複数の第2電極指であって、前記第1電極指及び前記第2電極指が第1方向に沿って交互に並ぶように設けられる前記複数の第2電極指と、を含み、
前記第1バスバー電極及び前記複数の第1電極指により第1櫛歯状電極が構成され、
前記第2バスバー電極及び前記複数の第2電極指により第2櫛歯状電極が構成され、
前記基板には、前記第1方向に沿って前記基板を見たときに、前記第1電極指及び前記第2電極指が重なる重なり領域があり、
前記重なり領域は、
前記第1電極指及び前記第2電極指が第1ピッチ及び第1ギャップで前記第1方向に沿って交互に並び、かつ、前記第1電極指及び前記第2電極指の対がJ(Jは2以上の整数)個含まれる第1領域と、
前記第1電極指及び前記第2電極指が、前記第1ピッチと異なる第2ピッチ及び第2ギャップで前記第1方向に沿って交互に並び、かつ、前記第1電極指及び前記第2電極指の対がK(Kは2以上の整数)個含まれる第2領域と、を含み、
前記第1ピッチを前記第1ギャップで除した第1値は、前記第2ピッチを前記第2ギャップで除した第2値の0.9倍以上1.1倍以下である、
共振器。
【請求項6】
請求項5に記載の共振器であって、
前記Jと前記第1値とを乗じた値は、前記Kと前記第2値とを乗じた値の0.9倍以上1.1倍以下である、
共振器。
【請求項7】
請求項5に記載の共振器であって、
前記Jは、前記Kの0.9倍以上1.1倍以下である、
共振器。
【請求項8】
請求項5に記載の共振器であって、
前記J及び前記Kは、5以上の整数である、
共振器。
【請求項9】
請求項5に記載の共振器であって、
前記第1ピッチは、前記第2ピッチの0.99倍以上1.01倍以下である、
共振器。
【請求項10】
入力端子及び出力端子を接続する直列線路と、
前記直列線路から分岐する1つ以上の並列線路と、
前記直列線路に設けられる1つ以上の直列腕共振子と、
前記1つ以上の並列線路に設けられる1つ以上の並列腕共振子と、を備え、
前記入力端子又は前記出力端子に最も近い前記直列腕共振子及び前記並列腕共振子のうちの少なくとも1つが、請求項5から9のいずれか一項に記載の前記共振器である、
フィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振器及びフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電基板と圧電基板上に形成されたIDT(Interdigital Transducer)電極とを有する複数の弾性表面波素子によって構成されるフィルタがある(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/159111号
【特許文献2】国際公開第2017/115870号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に記載のフィルタに対して、外部から過剰な電力が供給されたり、大きな電荷が与えられたりすると、フィルタが破壊されることがある。
【0005】
適切な使用条件から外れた過酷な試験条件でフィルタが破壊された場合、破壊時に供給された電力又は与えられた電荷を、破壊されたフィルタから見積もることは従来の技術では困難であった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、破壊された共振器から破壊の原因を定量的に解明することが可能な共振器及びフィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る共振器は、圧電性を有する基板と、前記基板に設けられる共振電極と、を備え、前記共振電極は、互いに対向する第1バスバー電極及び第2バスバー電極と、前記第1バスバー電極から前記第2バスバー電極に向かって櫛歯状に延びる複数の第1電極指と、前記第2バスバー電極から前記第1バスバー電極に向かって櫛歯状に延びる複数の第2電極指であって、前記第1電極指及び前記第2電極指が第1方向に沿って交互に並ぶように設けられる前記複数の第2電極指と、を含み、前記第1バスバー電極及び前記複数の第1電極指により第1櫛歯状電極が構成され、前記第2バスバー電極及び前記複数の第2電極指により第2櫛歯状電極が構成され、前記基板には、前記第1方向に沿って前記基板を見たときに、前記第1電極指及び前記第2電極指が重なる重なり領域があり、前記重なり領域は、第1ピッチで前記第1方向に沿って交互に並ぶ前記第1電極指及び前記第2電極指の対が複数個含まれる第1領域と、前記第1ピッチと異なる第2ピッチで前記第1方向に沿って交互に並ぶ前記第1電極指及び前記第2電極指の対が複数個含まれる第2領域と、を含み、前記第1領域における前記第1櫛歯状電極及び前記第2櫛歯状電極の静電容量は、前記第2領域における前記第1櫛歯状電極及び前記第2櫛歯状電極の静電容量の0.9倍以上1.1倍以下である。
【0008】
本発明の一側面に係る共振器は、圧電性を有する基板と、前記基板に設けられる共振電極と、を備え、前記共振電極は、互いに対向する第1バスバー電極及び第2バスバー電極と、前記第1バスバー電極から前記第2バスバー電極に向かって櫛歯状に延びる複数の第1電極指と、前記第2バスバー電極から前記第1バスバー電極に向かって櫛歯状に延びる複数の第2電極指であって、前記第1電極指及び前記第2電極指が第1方向に沿って交互に並ぶように設けられる前記複数の第2電極指と、を含み、前記第1バスバー電極及び前記複数の第1電極指により第1櫛歯状電極が構成され、前記第2バスバー電極及び前記複数の第2電極指により第2櫛歯状電極が構成され、前記基板には、前記第1方向に沿って前記基板を見たときに、前記第1電極指及び前記第2電極指が重なる重なり領域があり、前記重なり領域は、前記第1電極指及び前記第2電極指が第1ピッチ及び第1ギャップで前記第1方向に沿って交互に並び、かつ、前記第1電極指及び前記第2電極指の対がJ(Jは2以上の整数)個含まれる第1領域と、前記第1電極指及び前記第2電極指が、前記第1ピッチと異なる第2ピッチ及び第2ギャップで前記第1方向に沿って交互に並び、かつ、前記第1電極指及び前記第2電極指の対がK(Kは2以上の整数)個含まれる第2領域と、を含み、前記第1ピッチを前記第1ギャップで除した第1値は、前記第2ピッチを前記第2ギャップで除した第2値の0.9倍以上1.1倍以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、破壊された共振器から破壊の原因を定量的に解明することが可能な共振器及びフィルタ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、フィルタ装置11のzx面に平行な断面を模式的に示す図である。
図2図2は、フィルタ装置11の回路構成を示す図である。
図3図3は、共振器51の概要を示す模式図である。
図4図4は、領域21aにおける櫛歯状電極71a及び71b間の静電容量Caの求め方を説明するための図である。
図5図5は、共振器52の概要を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を極力省略する。
【0012】
図1は、フィルタ装置11のzx面に平行な断面を模式的に示す図である。なお、各図面には、x軸、y軸及びz軸を示すことがある。x軸、y軸及びz軸は、右手系の3次元の直交座標を形成する。以下、x軸の矢印方向をx軸+側、矢印とは逆方向をx軸-側と呼ぶことがあり、その他の軸についても同様である。なお、z軸+側及びz軸-側を、それぞれ「上側」及び「下側」と呼ぶこともある。また、x軸、y軸またはz軸にそれぞれ直交する面を、yz面、zx面またはxy面と呼ぶことがある。
【0013】
図1に示すように、フィルタ装置11は、弾性波装置171と、プリント基板301と、封止剤401と、を備える。弾性波装置171は、圧電基板101と、配線層151と、を含む。なお、フィルタ装置11は、プリント基板301の代わりにセラミック基板を備えてもよい。
【0014】
配線層151は、圧電基板101の上側(z軸+側)に設けられる。配線層151がパターニングされることにより、IDT電極70並びに配線電極81及び82が形成される。
【0015】
配線電極81は、バンプ211を通じてプリント基板301の下側(z軸-側)の面に設けられた配線電極311に電気的に接続される。配線電極311は、ビア及び内部配線電極を通じて、プリント基板301の上側の面に設けられた基板グランド端子341に電気的に接続される。
【0016】
配線電極82は、バンプ212を通じてプリント基板301の下側の面に設けられた配線電極312に電気的に接続される。配線電極312は、ビア及び内部配線電極を通じて、プリント基板301の上側の面に設けられた基板入力端子342に電気的に接続される。
【0017】
なお、配線電極311及び312がそれぞれ接続される端子は、基板グランド端子341及び基板入力端子342に限定されない。例えば、配線電極312は、ビア及び内部配線電極を通じて、プリント基板301の上側の基板出力端子(図示しない)に電気的に接続される構成であってもよい。
【0018】
弾性波装置171、バンプ211及び212並びにプリント基板301の下側の面は、封止剤401によって封止される。封止剤401は、例えば、モールド樹脂層である。
【0019】
図2は、フィルタ装置11の回路構成を示す図である。図2に示すように、フィルタ装置11は、直列線路S30と、並列線路P41、P42、P43及びP44と、直列腕共振子131、132、133及び134と、並列腕共振子241、242、243及び244と、を備える。
【0020】
フィルタ装置11は、ラダー型フィルタである。本実施形態では、フィルタ装置11は、無線周波数信号が入力端子Tinから出力端子Toutへ伝送されるとき、所定の周波数帯域(通過帯域)における当該無線周波数信号の周波数成分を通過させるバンドパスフィルタである。なお、フィルタ装置11は、無線周波数信号が出力端子Toutから入力端子Tinへ伝送される際にも、同様のバンドパスフィルタとして機能する。なお、フィルタ装置11は、所定の周波数帯域(阻止帯域)における無線周波数信号の周波数成分が減衰するバンドエリミネーションフィルタであってもよい。
【0021】
フィルタ装置11における圧電基板101は、圧電性を有し、xy面に平行な主面を有する基板である。本実施形態では、圧電基板101は、例えば、ニオブ酸リチウム、或いは、タンタル酸リチウムによって形成される。なお、圧電基板101は、一部が圧電性を有する構成であってもよい。具体的には、圧電基板101は、例えば、支持基板、表面に設けられた圧電薄膜(圧電体)、及び当該圧電薄膜と音速の異なる膜などの積層体によって構成されてもよい。
【0022】
圧電基板101の主面には、直列線路S30並びに並列線路P41、P42、P43及びP44が設けられる。直列線路S30は、例えば、無線周波数信号を通す伝送線路であり、入力端子Tin及び出力端子Toutを接続する。共振電極31、32、33及び34の各々は、直列線路S30に設けられる。本実施形態では、直列線路S30には、入力端子Tinに近い方から順に、共振電極31、32、33及び34が配置されている。
【0023】
詳細には、共振電極31は、入力端子Tinに接続された第1端と、第2端と、を有する。共振電極32は、共振電極31の第2端に接続された第1端と、第2端と、を有する。共振電極33は、共振電極32の第2端に接続された第1端と、第2端と、を有する。共振電極34は、共振電極33の第2端に接続された第1端と、出力端子Toutに接続された第2端と、を有する。
【0024】
並列線路P41、P42、P43及びP44の各々は、例えば、無線周波数信号を通す伝送線路であり、直列線路S30から分岐する。本実施形態では、並列線路P41は、直列線路S30における共振電極31と共振電極32との間に位置するノードN41から分岐する。並列線路P42は、直列線路S30における共振電極32と共振電極33との間に位置するノードN42から分岐する。並列線路P43は、直列線路S30における共振電極33と共振電極34との間に位置するノードN43から分岐する。並列線路P44は、直列線路S30における共振電極34と出力端子Toutとの間に位置するノードN44から分岐する。
【0025】
共振電極41、42、43及び44は、並列線路P41、P42、P43及びP44にそれぞれ設けられる。本実施形態では、共振電極41は、ノードN41に接続された第1端と、接地に接続された第2端と、を有する。共振電極42は、ノードN42に接続された第1端と、接地に接続された第2型と、を有する。共振電極43は、ノードN43に接続された第1端と、接地に接続された第2端と、を有する。共振電極44は、ノードN44に接続された第1端と、接地に接続された第2端と、を有する。
【0026】
圧電基板101の主面に形成された共振電極31、32、33及び34は、それぞれ直列腕共振子131、132、133及び134として機能する。
【0027】
圧電基板101の主面に形成された共振電極41、42、43及び44は、それぞれ並列腕共振子241、242、243及び244として機能する。
【0028】
入力端子Tin又は出力端子Toutに最も近い直列腕共振子131及び134並びに並列腕共振子241及び244は、原因解明用の共振器51である。直列腕共振子132及び133並びに並列腕共振子242及び243は、通常の共振器52である。共振器51及び52の詳細については後述する。
【0029】
なお、入力端子Tin又は出力端子Toutに最も近い直列腕共振子131及び134並びに並列腕共振子241及び244のうちの一部が、共振器51を有する構成であってもよい。
【0030】
図3は、共振器51の概要を示す模式図である。図3には、共振器51の一例として、直列腕共振子131が有する共振電極31及び圧電基板101を上側から見た平面図が示される。
【0031】
なお、図3には、共振器51の典型的な構造を説明するための一例が示されるが、共振器51の形状、サイズ及び向きなどは、この例に限定されるものではない。また、直列腕共振子134が有する共振電極34並びに並列腕共振子241及び244がそれぞれ有する共振電極41及び44も、共振電極31と同様の構成を有する。
【0032】
図3に示すように、共振電極31及び圧電基板101は、弾性表面波共振子として機能する。共振電極31は、櫛歯状電極71a及び71bと、反射器75a及び75bと、を含む。
【0033】
櫛歯状電極71aは、複数の電極指72a(第1電極指)と、バスバー電極73a(第1バスバー電極)と、を含む。櫛歯状電極71bは、複数の電極指72b(第2電極指)と、バスバー電極73b(第2バスバー電極)と、を含む。以下、電極指72a及び72bの各々を、電極指72と称することがある。
【0034】
バスバー電極73aは、第1端子T1に接続され、x軸方向(第1方向)に沿って延びる。本実施形態では、バスバー電極73aは、長軸及び短軸がx軸及びy軸にそれぞれ平行な矩形の電極である。
【0035】
バスバー電極73bは、バスバー電極73aに対してy軸+側に位置する。そして、バスバー電極73bは、第2端子T2に接続され、x軸方向に沿って延びる。バスバー電極73bは、バスバー電極73aとy軸方向(第2方向)に沿って対向している。
【0036】
本実施形態では、バスバー電極73bは、バスバー電極73aと略同じ形状を有する電極である。バスバー電極73aのx軸+側の縁及びバスバー電極73bのx軸+側の縁は、揃っている。バスバー電極73aのx軸-側の縁及びバスバー電極73bのx軸-側の縁は、揃っている。
【0037】
複数の電極指72aは、バスバー電極73aからバスバー電極73bに向かってバスバー電極73aから櫛歯状に延びる。本実施形態では、複数の電極指72aは、バスバー電極73aのy軸+側の縁からy軸+側に向かってy軸と平行に延びる矩形状の電極である。
【0038】
複数の電極指72aのy軸方向の長さは、略同じである。複数の電極指72aのx軸方向の幅は、略同じである。なお、複数の電極指72aのy軸方向の長さは、同じでなくてもよい。また、複数の電極指72aのx軸方向の幅は、同じでなくてもよい。
【0039】
複数の電極指72bは、バスバー電極73bからバスバー電極73aに向かって櫛歯状に延びる。そして、複数の電極指72bは、電極指72a及び72bがx軸方向に沿って交互に並ぶように設けられる。
【0040】
本実施形態では、複数の電極指72bは、バスバー電極73bのy軸-側の縁からy軸-側に向かってy軸と平行に延びる矩形状の電極である。
【0041】
複数の電極指72bのy軸方向の長さは、略同じである。具体的には、電極指72bのy軸方向の長さは、電極指72aのy軸方向の長さと略同じである。複数の電極指72aのx軸方向の幅は、略同じである。具体的には、電極指72bのx軸方向の幅は、電極指72aのx軸方向の幅と略同じである。なお、複数の電極指72bのy軸方向の長さは、同じでなくてもよい。また、複数の電極指72bのx軸方向の幅は、同じでなくてもよい。
【0042】
圧電基板101には、x軸方向に沿って圧電基板101を見たときに、電極指72a及び72bが重なる重なり領域21がある。重なり領域21のy軸+側の縁は、複数の電極指72aのy軸+側の先端と重なる。重なり領域21のy軸-側の縁は、複数の電極指72bのy軸-側の先端と重なる。重なり領域21は、ピッチ(或いは、周期)互いに異なる複数の領域を含む。
【0043】
ピッチは、例えば、電極指72bのx軸方向の幅と、電極指72b及び72a間の間隔すなわちギャップとの和である。言い換えると、ピッチは、隣接して対向する電極指72a及び72bの中心間距離である。なお、ピッチは、電極指72aのx軸方向の幅と、電極指72a及び72b間の間隔すなわちギャップとの和であってもよい。
【0044】
本実施形態では、重なり領域21は、例えば、領域21a(第1領域)、21b(第2領域)及び21cを含む。領域21a、21b及び21cは、x軸-側からx軸+側に向かってこの順に位置する。領域21a、21b、及び21cの各々は、同一のピッチ(或いは、周期)で並べられた電極指72aと電極指72bとがx軸方向に見て重なる領域である。
【0045】
領域21aでは、電極指72a及び72bがピッチPa(第1ピッチ)及びギャップGa(第1ギャップ)でx軸方向に沿って交互に並び、かつ、電極指72a及び72bの対23aがJ(Jは2以上の整数)個含まれる。
【0046】
つまり、領域21aでは、対23aが、ピッチPaの2倍すなわち波長λaの間隔でx軸方向に繰り返し並べられる。
【0047】
領域21aは、複数の単位領域22aを含む。単位領域22aは、例えば、y軸方向に平行な長辺とx軸方向に平行な短辺とを有する矩形状である。
【0048】
単位領域22aの長辺の長さ(以下、高さHと称することがある。)は、複数の電極指72aのy軸+側の各端部を結ぶ線と、複数の電極指72bのy軸-側の各端部を結ぶ線と、の間の距離である。
【0049】
単位領域22aの短辺の長さは、例えば、電極指72aを挟んで対向する2つの電極指72bの中心間距離である。なお、単位領域22aの短辺の長さは、電極指72bを挟んで対向する2つの電極指72aの中心間距離であってもよい。いずれの場合でも、単位領域22aの短辺の長さは、波長λaである。
【0050】
領域21bでは、電極指72a及び72bが、ピッチPaと異なるピッチPb(第2ピッチ)及びギャップGb(第2ギャップ)でx軸方向に沿って交互に並び、かつ、電極指72a及び72bの対23bがK(Kは2以上の整数)個含まれる。
【0051】
つまり、領域21bでは、電極指72a及び72bの対23bが、ピッチPbの2倍すなわち波長λbの間隔でx軸方向に繰り返し並べられる。
【0052】
領域21bは、複数の単位領域22bを含む。単位領域22bは、単位領域22aと同様の矩形状である。単位領域22cの長辺の長さ及び短辺の長さは、それぞれ高さH及び波長λbである。
【0053】
領域21cでは、電極指72a及び72bが、ピッチPa及びPbと異なるピッチPc、及びギャップGcでx軸方向に沿って交互に並び、かつ、電極指72a及び72bの対23cがL(Lは2以上の整数)個含まれる。
【0054】
つまり、領域21cでは、電極指72a及び72bの対23cが、ピッチPcの2倍すなわち波長λcの間隔でx軸方向に繰り返し並べられる。
【0055】
領域21cは、複数の単位領域22cを含む。単位領域22cは、単位領域22aと同様の矩形状である。単位領域22cの長辺の長さ及び短辺の長さは、それぞれ高さH及び波長λcである。
【0056】
図4は、領域21aにおける櫛歯状電極71a及び71b間の静電容量Caの求め方を説明するための図である。図4には、領域21aの周辺の拡大図が示される。
【0057】
図3及び図4に示すように、領域21aにおける櫛歯状電極71a及び71b間の静電容量Caは、所定数εと、領域21aにおける単位領域22aの面積Saと、領域21aに含まれる単位領域22aの個数Maと、を乗じた値を領域21aのギャップGaで除した値で近似できる。
【0058】
ここで、所定数εは、電極指72a及び72b間、及び電極指72a及び72bの周辺に位置する物質の物性に基づく数値であり、例えば誘電率である。所定数εは、各領域で略同じ値である。個数Maは、領域21aに含まれる対23aの個数Jで近似できる。単位領域22aの面積Saは、単位領域22aのx軸方向の長さである波長λa、すなわち、ピッチPaの2倍と、領域21aのy軸方向の長さである高さHと、の積である。ギャップGaは、領域21aにおいて隣り合う電極指72a及び72b間において、対向する縁間の距離である。
【0059】
すなわち、領域21aにおける櫛歯状電極71a及び71b間の静電容量Caは、近似的にCa=ε×2×Pa×H×J/Ga=ε×2×Va×H×Jで表すことができる。ここで、値Va(第1値)は、Pa/Gaである。
【0060】
静電容量Caと同様に、領域21bにおける櫛歯状電極71a及び71b間の静電容量Cbは、所定数εと、領域21bにおける単位領域22bの面積Sbと、領域21bに含まれる単位領域22bの個数Mbと、を乗じた値を領域21bのギャップGbで除した値で近似できる。
【0061】
具体的には、Cb=ε×Sb×Mb/GB=ε×2×Pb×H×Mb/GB≒ε×2×Vb×H×Kで表すことができる。ここで、値Vb(第2値)は、Pb/Gbである。
【0062】
静電容量Ca及びCbと同様に、領域21cにおける櫛歯状電極71a及び71b間の静電容量Ccは、近似的にCc=ε×2×Vc×H×Kで表すことができる。ここで、Vcは、Pc/Gcである。
【0063】
例えば、J×Vaは、K×Vbの0.9倍以上1.1倍以下である。すなわち、K×Vb×0.9≦J×Va≦K×Vb×1.1である。この式の各項にε×2×Hを乗ずると、ε×2×H×K×Vb×0.9≦ε×2×H×J×Va≦ε×2×H×K×Vb×1.1となる。この式は、Cb×0.9≦Ca≦Cb×1.1のように近似できる。すなわち、静電容量Caは、静電容量Cbの0.9倍以上1.1倍以下である。好ましくは、J×Vaは、K×Vbの0.95倍以上1.05倍以下である。
【0064】
また、例えば、K×Vbは、L×Vcの0.9倍以上1.1倍以下である。すなわち、静電容量Cbは、静電容量Ccの0.9倍以上1.1倍以下である。好ましくは、K×Vbは、L×Vcの0.95倍以上1.05倍以下である。
【0065】
なお、J×Vaは、L×Vcの0.9倍以上1.1倍以下であってもよい。すなわち、静電容量Caは、静電容量Ccの0.9倍以上1.1倍以下であってもよい。好ましくは、J×Vaは、L×Vcの0.95倍以上1.05倍以下であってもよい。
【0066】
また、J×Va、K×Vb及びL×Vcの各々は、J×Va、K×Vb及びL×Vcの平均値の0.9倍以上1.1倍以下である。すなわち、静電容量Ca、Cb及びCcの各々は、静電容量Ca、Cb及びCcの平均値の0.9倍以上1.1倍以下である。
【0067】
好ましくは、J×Va、K×Vb及びL×Vcの各々は、J×Va、K×Vb及びL×Vcの平均値の0.95倍以上1.05倍以下である。すなわち、静電容量Ca、Cb及びCcの各々は、静電容量Ca、Cb及びCcの平均値の0.95倍以上1.05倍以下である。
【0068】
例えば、Jは、Kの0.9倍以上1.1倍以下である。また、例えば、Kは、Lの0.9倍以上1.1倍以下である。
【0069】
好ましくは、Jは、Kの0.95倍以上1.05倍以下である。また、例えば、Kは、Lの0.95倍以上1.05倍以下である。
【0070】
本実施形態では、J、K及びLの各々は、J、K及びLの平均値の0.9倍以上1.1倍以下である。好ましくは、J、K及びLの各々は、J、K及びLの平均値の0.95倍以上1.05倍以下である。
【0071】
また、J、K及びLは、例えば、5以上の整数である。すなわち、各領域には、5つ以上の対が繰り返し並べられる。具体的には、領域21aには、5つ以上の対23aが繰り返し並べられる。領域21bには、5つ以上の対23bが繰り返し並べられる。領域21cには、5つ以上の対23cが繰り返し並べられる。
【0072】
また、例えば、領域21aにおける電極指72の繰り返しのピッチPaは、領域21bにおける電極指72の繰り返しのピッチPbの0.99倍以上1.01倍以下である。また、例えば、領域21bにおける電極指72の繰り返しのピッチPbは、領域21cにおける電極指72の繰り返しのピッチPcの0.99倍以上1.01倍以下である。
【0073】
好ましくは、ピッチPaは、ピッチPbの0.995倍以上1.005倍以下である。また、ピッチPbは、ピッチPcの0.995倍以上1.005倍以下である。
【0074】
本実施形態では、領域21a、21b及び21cのそれぞれにおける電極指72の繰り返しのピッチPa、Pb及びPcは、ピッチPa、Pb及びPcの平均値の0.99倍以上1.01倍以下である。
好ましくは、ピッチPa、Pb及びPcは、当該平均値の0.995倍以上1.005倍以下である。
【0075】
ピッチが大きいほど、外部から供給される電力又は与えられる電荷に対する耐性が高くなる。本実施形態では、ピッチPa、Pb及びPcの順に大きくなる。例えば、外部から供給される電力又は与えられる電荷が小さい場合、領域21aだけが破壊される。一方、外部から供給される電力又は与えられる電荷が大きい場合、領域21a及び21bが破壊されたり、領域21a、21b及び21cのすべてが破壊されたりする。
【0076】
反射器75a及び75bは、互いに平行な複数の電極指と、当該複数の電極指を接続するバスバー電極と、を含み、櫛歯状電極71a及び71bの弾性波伝搬方向における両端に設けられる。反射器75a及び75bは、例えば、同じ形状を有する。
【0077】
図5は、共振器52の概要を示す模式図である。図5に示すように、通常の共振器52は、原因解明用の共振器51と異なり、共振器52における電極指72のピッチPrが一定の櫛歯状電極を有する。言い換えると、共振器52は、単一のピッチPrで電極指72a及び72bが繰り返し並べられる櫛歯状電極を有する。
【0078】
なお、共振器51では、同じピッチで電極指72a及び72bが繰り返し並べられる領域が3つある構成について説明したが、これに限定するものではない。領域は、2つ又は4つ以上ある構成であってもよい。
【0079】
また、共振器51では、x軸+側に向かって領域21a、21b及び21cの順番にこれらが位置する構成について説明したが、これに限定するものではない。領域21a、21b及び21cの順番は、任意の順番であってもよい。
【0080】
また、共振器51では、領域21a、21b及び21cの各ピッチが異なる構成について説明したが、これに限定するものではない。3つの領域のうちの2つの領域でピッチが同じ構成であってもよい。この場合、ピッチが同じ2つの領域は、両端に位置する。
【0081】
また、共振器51では、J×Vaは、K×Vbの0.9倍以上1.1倍以下である構成について説明したが、これに限定するものではない。値Vaが値Vbの0.9倍以上1.1倍以下である構成であってもよい。例えば、J>Kのときは、K個の単位領域22aを含む領域とK個の単位領域22bを含む領域とを設定することによって、K×Vb×0.9≦K×Va≦K×Vb×1.1を満たすことが可能であるので、本発明の目的を達成することが可能である。つまり、K個の単位領域22aを含む領域の静電容量は、K個の単位領域22bを含む領域の静電容量の概ね0.9倍以上1.1倍以下である。また、J<Kのときは、J個の単位領域22aを含む領域とJ個の単位領域22bを含む領域とを設定することによって、J×Vb×0.9≦J×Va≦J×Vb×1.1を満たすことが可能であるので、本発明の目的を達成することが可能である。同様に、値Vbが値Vcの0.9倍以上1.1倍以下である構成であってもよい。
【0082】
また、フィルタ装置11では、4つの並列線路が設けられる構成について説明したが、これに限定するものではない。フィルタ装置11では、1つ、2つ、3つ、又は5つ以上の並列線路が設けられる構成であってもよい。
【0083】
また、フィルタ装置11では、4つの直列腕共振子が直列線路S30に設けられる構成について説明したが、これに限定するものではない。フィルタ装置11では、1つ、2つ、3つ、又は5つ以上の直列腕共振子が直列線路S30に設けられる構成であってもよい。
【0084】
また、フィルタ装置11では、各並列線路に1つの並列腕共振子が設けられる構成について説明したが、これに限定するものではない。フィルタ装置11では、各並列線路に2つ以上の並列腕共振子が設けられる構成であってもよい。
【0085】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明した。共振器51では、圧電基板101は、圧電性を有する。共振電極31は、圧電基板101に設けられる。共振電極31は、互いに対向するバスバー電極73a及び73bと、バスバー電極73aからバスバー電極73bに向かって櫛歯状に延びる複数の電極指72aと、バスバー電極73bからバスバー電極73aに向かって櫛歯状に延びる複数の電極指72bであって、電極指72a及び72bがx軸方向に沿って交互に並ぶように設けられる複数の電極指72bと、を含む。バスバー電極73a及び複数の電極指72aにより櫛歯状電極71aが構成される。バスバー電極73b及び複数の電極指72bにより櫛歯状電極71bが構成される。圧電基板101には、x軸方向に沿って圧電基板101を見たときに、電極指72a及び72bが重なる重なり領域21がある。重なり領域21は、ピッチPaでx軸方向に沿って交互に並ぶ電極指72a及び72bの対が複数個含まれる領域21aと、ピッチPaと異なるピッチPbでx軸方向に沿って交互に並ぶ電極指72a及び72bの対が複数個含まれる領域21bと、を含む。そして、領域21aにおける櫛歯状電極71a及び71bの静電容量は、領域21bにおける櫛歯状電極71a及び71bの静電容量の0.9倍以上1.1倍以下である。
【0086】
ピッチが大きいほど、外部から供給される電力又は与えられる電荷に対する耐性が高くなる。上記のように、電極指72a及び72bがピッチPaでx軸方向に沿って交互に並ぶ領域21aと、電極指72a及び72bがピッチPaと異なるピッチPbでx軸方向に沿って交互に並ぶ領域21bと、を重なり領域21が含む構成により、領域ごとにピッチが異なるので、いずれの領域が破壊されたかに基づいて、破壊時に供給された電力又は与えられた電荷を見積もることができる。したがって、破壊された共振器から破壊の原因を定量的に解明することが可能な共振器及びフィルタ装置を提供することができる。また、領域21aにおける櫛歯状電極71a及び71bの静電容量を、領域21bにおける櫛歯状電極71a及び71bの0.9倍以上1.1倍以下にする構成により、領域21aと領域21bとの境界付近における複数の単位領域22a及び複数の単位領域22bの静電容量のばらつきを抑制することができる。これにより、共振器51を伝搬する表面波の位相のずれを抑制することができるので、当該位相のずれに基づくリプルを小さくすることができる。
【0087】
また、共振器51では、圧電基板101は、圧電性を有する。共振電極31は、圧電基板101に設けられる。共振電極31は、互いに対向するバスバー電極73a及び73bと、バスバー電極73aからバスバー電極73bに向かって櫛歯状に延びる複数の電極指72aと、バスバー電極73bからバスバー電極73aに向かって櫛歯状に延びる複数の電極指72bであって、電極指72a及び72bがx軸方向に沿って交互に並ぶように設けられる複数の電極指72bと、を含む。バスバー電極73a及び複数の電極指72aにより櫛歯状電極71aが構成される。バスバー電極73b及び複数の電極指72bにより櫛歯状電極71bが構成される。圧電基板101には、x軸方向に沿って圧電基板101を見たときに、電極指72a及び72bが重なる重なり領域21がある。重なり領域21は、電極指72a及び72bがピッチPa及びギャップGaでx軸方向に沿って交互に並び、かつ、電極指72a及び72bの対23aがJ(Jは2以上の整数)個含まれる領域21aと、電極指72a及び72bが、ピッチPaと異なるピッチPb及びギャップGbでx軸方向に沿って交互に並び、かつ、電極指72a及び72bの対23bがK(Kは2以上の整数)個含まれる領域21bと、を含む。そして、ピッチPaをギャップGaで除した値Vaは、ピッチPbをギャップGbで除した値Vbの0.9倍以上1.1倍以下である。
【0088】
ピッチが大きいほど、外部から供給される電力又は与えられる電荷に対する耐性が高くなる。上記のように、電極指72a及び72bがピッチPaでx軸方向に沿って交互に並ぶ領域21aと、電極指72a及び72bがピッチPaと異なるピッチPbでx軸方向に沿って交互に並ぶ領域21bと、を重なり領域21が含む構成により、領域ごとにピッチが異なるので、いずれの領域が破壊されたかに基づいて、破壊時に供給された電力又は与えられた電荷を見積もることができる。したがって、破壊された共振器から破壊の原因を定量的に解明することが可能な共振器及びフィルタ装置を提供することができる。また、領域21aにおける値Vaが、領域21bにおける値Vbの0.9倍以上1.1倍以下である構成により、領域21aにおける単位領域22aの静電容量を、領域21bにおける単位領域22bの静電容量の概ね0.9倍以上1.1倍以下にすることができる。つまり、領域21aと領域21bとの境界付近における複数の単位領域22a及び複数の単位領域22bの静電容量のばらつきを抑制することができる。これにより、共振器51を伝搬する表面波の位相のずれを抑制することができるので、当該位相のずれに基づくリプルを小さくすることができる。
【0089】
また、共振器51では、Jと値Vaとを乗じた値は、Kと値Vbとを乗じた値の0.9倍以上1.1倍以下である。
【0090】
このような構成により、領域21a及び21bの静電容量のばらつきを抑制することができるので、共振器51を伝搬する表面波の位相のずれを効果的に抑制することができる。
【0091】
また、共振器51では、Jは、Kの0.9倍以上1.1倍以下である。
【0092】
このような構成により、各領域の静電容量のばらつき抑制を容易にすることができる。
【0093】
また、共振器51では、J及びKは、5以上の整数である。
【0094】
このような構成により、領域のサイズをある程度大きくすることができるので、領域21a、21b及び21cの存在の識別、及び、破壊された場合において、領域21a、21b及び21cのうちのいずれが破壊されたかの識別を容易にすることができる。
【0095】
また、共振器51では、ピッチPaは、ピッチPbの0.99倍以上1.01倍以下である。
【0096】
このように、ピッチのばらつきを抑制する構成により、共振器のQ値の劣化を抑制することができる。
【0097】
また、フィルタ装置11では、直列線路S30は、入力端子Tin及び出力端子Toutを接続する。並列線路P41、P42、P43及びP44は、直列線路S30から分岐する。直列腕共振子131、132、133及び134は、直列線路S30に設けられる。並列腕共振子241、242、243及び244は、並列線路P41、P42、P43及びP44にそれぞれに設けられる。入力端子Tin又は出力端子Toutに最も近い直列腕共振子及び並列腕共振子のうちの少なくとも1つが、共振器51である。
【0098】
このような構成により、外部から供給される電力又は与えられる電荷の影響を受けやすい直列腕共振子及び並列腕共振子を原因解明用の共振器51にすることができるので、入力される電力又は電荷に対する感度を高め、破壊時に供給された電力又は与えられた電荷を精度よく見積もることができる。
【0099】
なお、以上説明した各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0100】
<1>
圧電性を有する基板と、
前記基板に設けられる共振電極と、を備え、
前記共振電極は、
互いに対向する第1バスバー電極及び第2バスバー電極と、
前記第1バスバー電極から前記第2バスバー電極に向かって櫛歯状に延びる複数の第1電極指と、
前記第2バスバー電極から前記第1バスバー電極に向かって櫛歯状に延びる複数の第2電極指であって、前記第1電極指及び前記第2電極指が第1方向に沿って交互に並ぶように設けられる前記複数の第2電極指と、を含み、
前記第1バスバー電極及び前記複数の第1電極指により第1櫛歯状電極が構成され、
前記第2バスバー電極及び前記複数の第2電極指により第2櫛歯状電極が構成され、
前記基板には、前記第1方向に沿って前記基板を見たときに、前記第1電極指及び前記第2電極指が重なる重なり領域があり、
前記重なり領域は、
第1ピッチで前記第1方向に沿って交互に並ぶ前記第1電極指及び前記第2電極指の対が複数個含まれる第1領域と、
前記第1ピッチと異なる第2ピッチで前記第1方向に沿って交互に並ぶ前記第1電極指及び前記第2電極指の対が複数個含まれる第2領域と、を含み、
前記第1領域における前記第1櫛歯状電極及び前記第2櫛歯状電極の静電容量は、前記第2領域における前記第1櫛歯状電極及び前記第2櫛歯状電極の静電容量の0.9倍以上1.1倍以下である、
共振器。
【0101】
<2>
<1>に記載の共振器であって、
前記第1領域及び前記第2領域の各々において、前記第1電極指及び前記第2電極指の対は5個以上含まれている、
共振器。
【0102】
<3>
<1>又は<2>に記載の共振器であって、
前記第1ピッチは、前記第2ピッチの0.99倍以上1.01倍以下である、
共振器。
【0103】
<4>
入力端子及び出力端子を接続する直列線路と、
前記直列線路から分岐する1つ以上の並列線路と、
前記直列線路に設けられる1つ以上の直列腕共振子と、
前記1つ以上の並列線路に設けられる1つ以上の並列腕共振子と、を備え、
前記入力端子又は前記出力端子に最も近い前記直列腕共振子及び前記並列腕共振子のうちの少なくとも1つが、<1>から<3>のいずれか1つに記載の前記共振器である、
フィルタ装置。
【0104】
<5>
圧電性を有する基板と、
前記基板に設けられる共振電極と、を備え、
前記共振電極は、
互いに対向する第1バスバー電極及び第2バスバー電極と、
前記第1バスバー電極から前記第2バスバー電極に向かって櫛歯状に延びる複数の第1電極指と、
前記第2バスバー電極から前記第1バスバー電極に向かって櫛歯状に延びる複数の第2電極指であって、前記第1電極指及び前記第2電極指が第1方向に沿って交互に並ぶように設けられる前記複数の第2電極指と、を含み、
前記第1バスバー電極及び前記複数の第1電極指により第1櫛歯状電極が構成され、
前記第2バスバー電極及び前記複数の第2電極指により第2櫛歯状電極が構成され、
前記基板には、前記第1方向に沿って前記基板を見たときに、前記第1電極指及び前記第2電極指が重なる重なり領域があり、
前記重なり領域は、
前記第1電極指及び前記第2電極指が第1ピッチ及び第1ギャップで前記第1方向に沿って交互に並び、かつ、前記第1電極指及び前記第2電極指の対がJ(Jは2以上の整数)個含まれる第1領域と、
前記第1電極指及び前記第2電極指が、前記第1ピッチと異なる第2ピッチ及び第2ギャップで前記第1方向に沿って交互に並び、かつ、前記第1電極指及び前記第2電極指の対がK(Kは2以上の整数)個含まれる第2領域と、を含み、
前記第1ピッチを前記第1ギャップで除した第1値は、前記第2ピッチを前記第2ギャップで除した第2値の0.9倍以上1.1倍以下である、
共振器。
【0105】
<6>
<5>に記載の共振器であって、
前記Jと前記第1値とを乗じた値は、前記Kと前記第2値とを乗じた値の0.9倍以上1.1倍以下である、
共振器。
【0106】
<7>
<5>又は<6>に記載の共振器であって、
前記Jは、前記Kの0.9倍以上1.1倍以下である、
共振器。
【0107】
<8>
<5>から<7>のいずれか1つに記載の共振器であって、
前記J及び前記Kは、5以上の整数である、
共振器。
【0108】
<9>
<5>から<8>のいずれか1つに記載の共振器であって、
前記第1ピッチは、前記第2ピッチの0.99倍以上1.01倍以下である、
共振器。
【0109】
<10>
入力端子及び出力端子を接続する直列線路と、
前記直列線路から分岐する1つ以上の並列線路と、
前記直列線路に設けられる1つ以上の直列腕共振子と、
前記1つ以上の並列線路に設けられる1つ以上の並列腕共振子と、を備え、
前記入力端子又は前記出力端子に最も近い前記直列腕共振子及び前記並列腕共振子のうちの少なくとも1つが、<5>から<9>のいずれか1つに記載の前記共振器である、
フィルタ装置。
【符号の説明】
【0110】
11…フィルタ装置
21…重なり領域
21a、21b、21c…領域
22a、22b、22c…単位領域
23a、23b、23c…対
S30…直列線路
31、32、33、34、41、42、43、44…共振電極
P41、P42、P43、P44…並列線路
51、52…共振器
71a、71b…櫛歯状電極
72a、72b…電極指
73a、73b…バスバー電極
75a、75b…反射器
101…圧電基板
131、132、133、134…直列腕共振子
241、242、243、244…並列腕共振子
T1…第1端子
T2…第2端子
H…高さ
Ga、Gb、Gc…ギャップ
Sa、Sb…面積
Ca、Cb、Cc…静電容量
Pa、Pb、Pc…ピッチ
λa、λb、λc…波長
Tin…入力端子
Tout…出力端子
図1
図2
図3
図4
図5