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特開2024-140239ロングノズル支持ホルダーおよびそれを用いた連続鋳造方法
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  • 特開-ロングノズル支持ホルダーおよびそれを用いた連続鋳造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140239
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ロングノズル支持ホルダーおよびそれを用いた連続鋳造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/10 20060101AFI20241003BHJP
   B22D 41/56 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B22D11/10 320Z
B22D11/10 320C
B22D11/10 330K
B22D41/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051281
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 義規
(72)【発明者】
【氏名】宮原 洋
【テーマコード(参考)】
4E004
4E014
【Fターム(参考)】
4E004FC05
4E014DD01
4E014EA01
(57)【要約】
【課題】安全にロングノズルに装着できるロングノズル支持ホルダーおよびそれを用いた連続鋳造方法を提供する。
【解決手段】、ロングノズルを用いて取鍋からタンディッシュ内に溶融金属を注湯しながら連続鋳造を行う際に、前記ロングノズルが装着されるロングノズル支持ホルダーであって、外周側に位置して、ロングノズル着脱装置に載置される支持ホルダー本体と、内周側に位置して、ロングノズルが直接装着されるロングノズル装着部材とを備え、前記ロングノズル装着部材が周方向に2以上に分割されているものである。そのロングノズル装着部材を有するロングノズル支持ホルダーを介して、ロングノズルを取鍋とタンディッシュとの間に設置し、前記取鍋から前記タンディッシュに溶融金属を注入する方法である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロングノズルを用いて取鍋からタンディッシュ内に溶融金属を注湯しながら連続鋳造を行う際に、前記ロングノズルが装着されるロングノズル支持ホルダーであって、
外周側に位置して、ロングノズル着脱装置に載置される支持ホルダー本体と、内周側に位置して、ロングノズルが直接装着されるロングノズル装着部材とを備え、前記ロングノズル装着部材が周方向に2以上に分割されている、ロングノズル支持ホルダー。
【請求項2】
請求項1に記載のロングノズル装着部材を有するロングノズル支持ホルダーを介して、ロングノズルを取鍋とタンディッシュとの間に設置し、前記取鍋から前記タンディッシュに溶融金属を注入する、連続鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロングノズルを用いて取鍋からタンディッシュ内に溶融金属を注湯しながら連続鋳造を行う際に、ロングノズルが装着されるロングノズル支持ホルダーに関し、それを用いた連続鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造では、図2に一例を示すように、取鍋11からタンディシュ14内に溶融金属(溶鋼)10を注湯する。その際に、ロングノズル(別名:エアシールパイプ)13と呼ばれる耐火物製のノズルの上端を取鍋11底部の溶湯注ぎ口(スライディングノズル12)に装着する。そして、ロングノズル13の下端をタンディシュ14内の溶融金属(溶鋼)10に浸漬させた状態で注湯している。
【0003】
取鍋11内の溶融金属(溶鋼)10がなくなると、取鍋11底部のスライディングノズル12からロングノズル13を取り外し、スイングタワー(図示せず)等によって、取鍋11を空になった取鍋から溶融金属10が満たされている取鍋に交換して、再びロングノズル13を取鍋11底部のスライディングノズル12に装着する。そして、タンディシュ14内に溶融金属10を注湯する。これによって、連続的に鋳造することができ、品質、生産性を向上させることができる。
【0004】
このように、ロングノズル13を取鍋11底部のスライディングノズル12に装着したり、取り外したりする際には、ロングノズル着脱装置15が用いられる。その際、図2図3に示すように、通常、ロングノズル13は、その上端部(嵌合部)がロングノズル支持ホルダー20に装着され、そのロングノズル支持ホルダー20がロングノズル着脱装置15のアーム15aの先端部(受け部)15bにセットされる。なお、図3において、(a)は概略側断面図、(b)は概略正面図、(c)は概略上面図であり、(d)は部分拡大断面図である。
【0005】
ロングノズル13を用いて取鍋11からタンディシュ14内に溶融金属が注湯される際、ロングノズル13の嵌合部と取鍋11底部のスライディングノズル12の間に隙間があると、溶融金属漏れが発生するおそれがある。加えて、溶融金属中へ隙間から空気が混入することで品質が悪化する。溶融金属10がロングノズル13内を流下する際、溶融金属流によってロングノズル13は下方に押し下げられる力を受ける。そのため、ロングノズル13を取鍋11底部のスライディングノズル12に押し付けることで隙間が生じることを防いでいる。また、ロングノズル13とロングノズル支持ホルダー20間に隙間があるとロングノズル13をスライディングノズル12に押し付けてもロングノズル13の十分な固定ができない。そのため、ロングノズル支持ホルダー20には、ロングノズル13が直接装着されるロングノズル装着部材22を充填材として設置する。
【0006】
鋳造終了後、ロングノズル13からロングノズル装着部材22と支持ホルダー本体21を取り外す。支持ホルダー本体21およびロングノズル装着部材22は新しいロングノズル13にとりつけて、再利用する。鋳造中、取鍋11底部のスライディングノズル12へのロングノズル13の押し付けはロングノズル支持ホルダー20をロングノズル支持装置15にて持ち上げられて行われる。ロングノズル13の上部外周は上端に向けて広くなるラッパ形状である。そのため、ロングノズル13がスライディングノズル12に押し付けられた際に、ロングノズル13と支持ホルダー本体21との間が狭くなる。すると、その間にあるロングノズル装着部材22が狭圧される。さらに高温の溶融金属10の影響で支持ホルダー本体21やロングノズル13が膨張し、間のロングノズル装着部材22が固着される。そのため、鋳造終了後に、外力を与えないとロングノズル13からロングノズル装着部材22や支持ホルダー本体21を取り外すことが困難となる。
【0007】
特許文献1には、ロングノズルの動きに円滑に追随し、寿命の長いその連続鋳造用ロングノズル支持ホルダーが開示されている。そのロングノズル支持ホルダーは内部に凸型の球面座と鋼球を組み合わせた球面軸受が設置され、その球面軸受に空気を噴き付けるための空気噴き付け手段を備えているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011-083775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ロングノズル装着部材22や支持ホルダー本体21を取り外す際にロングノズル13の上からロングノズル装着部材22に外力が加えられる。その際に、図4に示すように大型ハンマー23が使用されると、ロングノズル装着部材22や支持ホルダー本体21の上部が変形する。変形したロングノズル装着部材22や支持ホルダー本体21が再利用されるとロングノズル13篏合部と取鍋11底部のスライディングノズル12との間に隙間が発生してしまう。その隙間へ空気が吸引され、取鍋11からタンディッシュ14へ流入している溶融金属10中に空気が巻き込まれる。実際に空気が溶融金属に入り込む現象は期(3か月)に数回程度発生している。空気の成分である酸素、窒素は不純物であり各鋼種で基準量が定められている。空気が巻き込まれた際は溶融金属の成分を測定し、基準量以上の空気成分を含有する溶融金属が鋳造されると、生成した鋳片は不良品となる。
【0010】
また、支持ホルダー本体21やロングノズル装着部材22のロングノズル13への組み立て作業は、人力で重量物であるロングノズル装着部材22を持ちあげるなど、非定常作業が発生し、指の狭圧など安全性に問題があった。また、使用済みのロングノズル13からロングノズル装着部材22が取り外される際に、ロングノズル装着部材22がロングノズル13に強く固着している場合は大きな打撃力が必要となる。その場合、質量が6kgほどの大型ハンマーが使用されて、作業の安全性が低かった。ところが、特許文献1には、ロングノズル装着部材22の構造に関する開示がない。
【0011】
本発明は、上記した従来の課題を解決し、人力で安全にロングノズルに装着できるロングノズル支持ホルダーおよびそれを用いた連続鋳造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を有利に解決する本発明にかかるロングノズル支持ホルダーは、ロングノズルを用いて取鍋からタンディッシュ内に溶融金属を注湯しながら連続鋳造を行う際に、前記ロングノズルが装着されるロングノズル支持ホルダーであって、外周側に位置して、ロングノズル着脱装置に載置される支持ホルダー本体と、内周側に位置して、ロングノズルが直接装着されるロングノズル装着部材とを備え、前記ロングノズル装着部材が周方向に2以上に分割されていることを特徴とする。
【0013】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる連続鋳造方法は、上記ロングノズル装着部材を有するロングノズル支持ホルダーを介して、ロングノズルを取鍋とタンディッシュとの間に設置し、前記取鍋から前記タンディッシュに溶融金属を注入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるロングノズル支持ホルダーによれば、ロングノズル装着部材が分割されているので、個々の分割片が軽量となり、装着作業や解体作業について、重量物の取り扱いが軽減する。合わせて、ロングノズルとロングノズル装着部材との固着力が軽減し、ハンマーによる打撃作業の発生が低減するので、支持ホルダー本体やロングノズル装着部材の変形が抑制される。したがって、ロングノズル装着部材の再生利用率が上がり、ロングノズルと取鍋のスライディングノズルとの密着も向上するので鋳片の品質も向上する。もって、連続鋳造の安全性向上、生産性向上、品質改善に寄与するなど、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態にかかるロングノズル装着部材を例示する概念図であって、(a)は2分割型を示す斜視図であり、(b)は3分割型を示す斜視図であり、(c)は4分割型を示す斜視図であり、(d)は分割片を示す断面概念図である。
図2】取鍋からタンディシュ内に溶融金属を注湯している状態を示す図である。
図3】ロングノズルがロングノズル支持ホルダーに装着された状態を示す図であり、(a)は概略側断面図、(b)は概略正面図、(c)は概略上面図であり、(d)は部分拡大断面図である。
図4】使用後の支持ホルダー本体およびロングノズル装着部材をハンマリングによって解体する作業を示している。
図5】上記実施形態にかかるロングノズル装着部材の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態にかかるロングノズル装着部材を例示する概念図である。図1(a)に周方向に等分に2分割したロングノズル装着部材22を斜視図で示す。図1(b)に周方向に等分に3分割したロングノズル装着部材22を斜視図で示す。図1(c)に周方向に等分に4分割したロングノズル装着部材22を斜視図で示す。図1(d)にロングノズル装着部材22の一分割片22Aを概略断面図で示す。個々の分割片22Aは同一形状のものを組み合わせて、略円環状をなし、内周をロングノズル13の上部に装着し、外周を支持ホルダー21で囲繞され、支持される。
【0018】
ロングノズル装着部材22の分割数は2以上とする。分割片22Aは等分により、同一形状とすることが好ましい。ロングノズル装着部材22を分割することにより、個々の分割片22Aの重量が半分以下になる。ロングノズル装着部材22を人力で扱う際の作業負荷が軽減する。くわえて、1分割片22Aあたりのロングノズルと固着する面積が半分以下となり、1個当たりの固着力が半分以下となる。ロングノズル13と支持ホルダー20との解体作業時に、ロングノズル装着部材22の取り外し作業が軽減する。たとえば、質量が6kgほどの大型ハンマーではなく、質量3kg以下の軽量ハンマーでの打撃で取り外すことができるようになる。分割数は、3以上が好ましく、4以上がさらに好ましい。一方、分割数の上限を特に規定するものではないが、あまりに多いと、ロングノズル13への装着作業の負荷がかえって増加するので、分割数を10以下とすることが好ましく、6以下とすることがより好ましく、4以下とすることがさらに好ましい。
【0019】
本実施形態のロングノズル装着部材22は、小さな打撃力、あるいは、打撃することなく固着を解離することができるので、支持ホルダー本体21やロングノズル装着部材22を変形させることなく解体し、回収することができる。したがって、回収した支持ホルダー本体21やロングノズル装着部材22を再度使用してロングノズル13に装着してもロングノズル13の嵌合部と取鍋11のスライディングノズル12との間に隙間を生じることなく、押し付けることができる。したがって、溶融金属への空気の混入を抑制することができ、品質上優れた鋳片を鋳造できる。
【0020】
本実施形態では、溶融金属が溶鋼であり、鋼の連続鋳造に適用することが好ましい。溶鋼は高温であり、特に、ロングノズル13、支持ホルダー本体21およびロングノズル装着部材22の熱膨張で、ロングノズル13とロングノズル装着部材22との固着力が大きくなる。そこで、本実施形態の適用が有用である。
【0021】
なお、本実施形態の支持ホルダー本体とロングノズル装着部材との間に球面座や鋼球を配置して、球面軸受けとしてもよい。また、球面軸受に空気を吹き付ける手段を有していてもよい。
【0022】
本実施形態にかかる分割型のロングノズル装着部材の効果を図5に示す。鋼の連続鋳造後にロングノズルとロングノズル支持ホルダーを解体するにあたり、質量6kgの大型ハンマーが必要とされた頻度を非定常作業発生率として百分率で表した。また、ボイリング発生回数はロングノズル内に吸引された空気がタンディッシュ内湯面に気泡として現れた回数を期(3か月)当たりで評価した。従来の一体型ロングノズル装着部材を2分割型のングノズル装着部材にすることで、大型ハンマーにより解体する非定常作業が100%から半減した。分割数を増やすごとに非定常作業発生率は減少し、4分割型のロングノズル装着部材の使用では、大型ハンマーの使用を必要としなかった。
【0023】
この理由として、ロングノズル装着部材が多分割されることで、分割片当たりのロングノズルとロングノズル装着部材との接触面積が小さくなり、ロングノズル装着部材の固着から剥離するのに必要な外力が小さくなることと推定される。本実施形態の適用により。ロングノズル装着部材や支持ホルダーが変形することがなくなりロングノズルとスライディングノズルとの間に隙間が生じるのを抑制できた。その結果、溶融金属への空気の混入も抑えることができ、鋳片の歩留まりが向上した。
【0024】
ロングノズル装着部材は、たとえば、ステンレス鋳鋼SCH13などで作製される。質量6kgの大型ハンマーによる打撃力は、約650Nの応力と考えられる。SCH13の耐力は235N/mmであり、大型ハンマーの打撃が、ロングノズル装着部材の狭い範囲に集中した場合には、その耐力を超えてしまうおそれがある。その場合、ロングノズル装着部材は変形してしまう。本実施形態では、ロングノズル装着部材を周方向で3分割や4分割することにより、個々の分割片の固着力を1/3や1/4に軽減できる。たとえば、質量3kgのハンマーの打撃力220Nで十分にロングノズル装着部材の固着を解離することができる。したがって、ロングノズル装着部材の変形なく解体作業が行える。
【符号の説明】
【0025】
10 溶融金属(溶鋼)
11 取鍋(レードル)
12 スライディングノズル
13 ロングノズル
14 タンディシュ
15 ロングノズル着脱装置(ロングノズル支持装置)
15a ロングノズル着脱装置のアーム
15b ロングノズル着脱装置の受け部
20 ロングノズル支持ホルダー
21 支持ホルダー本体
22 ロングノズル装着部材
22A (ロングノズル装着部材の)分割片
23 ハンマー
図1
図2
図3
図4
図5