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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140244
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】回転駆動力伝達機構
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B25J17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051290
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】野田 彩華
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀之
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707CY36
3C707HS27
3C707HT25
3C707HT36
(57)【要約】
【課題】コンパクトな構成を有すると共に、モータの回転軸の回転エネルギーを効率良く蓄積・解放することができる回転駆動力伝達機構を提供すること。
【解決手段】回転駆動源と、前記回転駆動源の回転を出力する出力軸との間に設けられた回転駆動力伝達機構であって、前記回転駆動源の回転中心軸及び前記出力軸と同一軸上に設けられ、前記回転駆動源の回転力を前記出力軸に伝達するねじりコイルばねを有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動源と、前記回転駆動源の回転を出力する出力軸との間に設けられた回転駆動力伝達機構であって、
前記回転駆動源の回転中心軸及び前記出力軸と同一軸上に設けられ、前記回転駆動源の回転力を前記出力軸に伝達するねじりコイルばねを有する回転駆動力伝達機構。
【請求項2】
前記回転駆動力伝達機構は、前記ねじりコイルばねを収容するハウジングと、前記前記ハウジング内部に固定された固定モジュールとを有し、
前記ねじりコイルばねは、巻回部と、前記巻回部の両端に位置する直線部とを有し、
前記直線部は前記固定モジュールに固定されている請求項1に記載の回転駆動力伝達機構。
【請求項3】
前記固定モジュールは、前記ねじりコイルばねの前記直線部の円形断面を少なくとも3点で押さえる請求項2に記載の回転駆動力伝達機構。
【請求項4】
前記固定モジュールは、前記ねじりコイルの巻回部に挿入されて前記巻回部を支持するガイド部を有する請求項2に記載の回転駆動力伝達機構。
【請求項5】
前記固定モジュールは、前記ねじりコイルばねの前記直線部に係合する溝を有する請求項2に記載の回転駆動力伝達機構。
【請求項6】
前記固定モジュールは、第1固定部材と、前記第1固定部材に固定される第2固定部材とを有し、前記ねじりコイルばねの前記直線部は、前記第1固定部材と前記第2固定部材の間に挟持される請求項2に記載の回転駆動力伝達機構。
【請求項7】
前記第1固定部材は第1溝部を有し、前記第2固定部材は前記第1溝部に組み合わされる第2溝部を有し、前記第1固定部材に前記第2固定部材が固定されると、前記ねじりコイルばねの前記直線部は、前記第1溝部と前記第2溝部により挟持される請求項6に記載の回転駆動力伝達機構。
【請求項8】
前記第1固定部材に前記第2固定部材が固定された状態で、前記第1固定部材と記第2固定部材の間には隙間が形成される請求項7に記載の回転駆動力伝達機構。
【請求項9】
前記回転駆動力伝達機構はロボットの関節部に設けられ、
前記回転駆動源はモータであり、前記回転駆動源の回転を出力する出力軸は、前記関節部の出力軸である請求項8に記載の回転駆動力伝達機構。
【請求項10】
回転駆動源と、
前記回転駆動源の回転を出力する出力軸と、
前記回転駆動源と前記出力軸の間に設けられた、請求項1~9のいずれかに記載の回転駆動力伝達機構と、
前記出力軸の回転により回動するアームと、
を有するロボット。
【請求項11】
回転駆動力を生成する回転駆動源と、
前記回転駆動源の回転軸に接続された、請求項1~9のいずれかに記載の回転駆動力伝達機構と、
を有するアクチュエータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転駆動力伝達機構に関し、例えば、ロボットの関節部に設けられて、アクチュエータの回転駆動力を関節部の出力軸に伝達する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
関節を有するロボットとして、工業用ロボット、医療ロボット、介護ロボット等が知られている。ロボットの関節部を回動させるために、回転駆動力を生成するアクチュエータ(モータ)が関節部に設けられる。特許文献1には、モータを備えたロボット関節部が開示されている。
特許文献1のロボットの関節部は、モータ及び歯車列(変速機)で構成される動力伝達系統と、クラッチ及びねじりコイルばねで構成されるエネルギー蓄積・解放系統とを有している。コイルばねは、動力伝達系統に作用するエネルギー(トルク)を蓄積及び開放するための部材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-126854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のロボットの関節部では、モータ及び歯車列で構成される動力伝達系統と、クラッチ及びコイルばねで構成されるエネルギー蓄積・解放系統とが、並列に配置されている。つまり、モータ及び歯車列で構成される動力伝達系統の横に、クラッチ及びコイルばねで構成されるエネルギー蓄積・解放系統が配置される。その結果、モータ及び歯車列で構成される動力伝達系統を設けるスペースに加えて、クラッチ及びコイルばねで構成されるエネルギー蓄積・解放系統を設けるためのスペースが必要になり、ロボットの関節部を小型化することができない。また、エネルギー蓄積・解放系統が動力伝達系統に並列配置されているので、モータの回転軸とコイルばねの長手方向が平行になる。つまり、コイルばねは、モータの回転軸の回転エネルギーを蓄積・解放する際に、コイルばねに並列して回転するモータの回転軸の回転エネルギーを蓄積・解放することになり、効率的な回転エネルギーの蓄積・解放ができない。
【0005】
本発明は、上記した課題を解決するために、コンパクトな構成を有すると共に、モータの回転軸の回転エネルギーを効率良く蓄積・解放することができる回転駆動力伝達機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の1つの態様に係る回転駆動力伝達機構は、回転駆動源と、前記回転駆動源の回転を出力する出力軸との間に設けられた回転駆動力伝達機構であって、前記回転駆動源の回転中心軸及び前記出力軸と同一軸上に設けられ、前記回転駆動源の回転力を前記出力軸に伝達するねじりコイルばねを有する。
【0007】
前記回転駆動力伝達機構は、前記ねじりコイルばねを収容するハウジングと、前記前記ハウジング内部に固定された固定モジュールとを有してもよい。前記ねじりコイルばねは、巻回部と、前記巻回部の両端に位置する直線部とを有してもよい。前記直線部は前記固定モジュールに固定されてもよい。
【0008】
好ましくは、前記固定モジュールは、前記ねじりコイルばねの前記直線部の円形断面を少なくとも3点で押さえる。
前記固定モジュールは、前記ねじりコイルの巻回部に挿入されて前記巻回部を支持(ガイド)するガイド部を有してもよい。
前記固定モジュールは、前記ねじりコイルばねの前記直線部に係合する溝を有してもよい。
【0009】
前記固定モジュールは、第1固定部材と、前記第1固定部材に固定される第2固定部材とを有してもよい。前記ねじりコイルばねの前記直線部は、前記第1固定部材と前記第2固定部材の間に挟持されてもよい。
前記第1固定部材は第1溝部を有してもよい。前記第2固定部材は前記第1溝部に組み合わされる第2溝部を有してもよい。好ましくは、前記第1固定部材に前記第2固定部材が固定されると、前記ねじりコイルばねの前記直線部は、前記第1溝部と前記第2溝部により挟持される。
【0010】
前記第1固定部材に前記第2固定部材が固定された状態で、好ましくは、前記第1固定部材と記第2固定部材の間に隙間が形成される。
前記回転駆動力伝達機構はロボットの関節部に設けられてもよい。前記回転駆動源はモータであってもよい。前記回転駆動源の回転を出力する出力軸は、前記関節部の出力軸であってもよい。
【0011】
本発明の他の態様によれば、回転駆動源と、前記回転駆動源の回転を出力する出力軸と、前記回転駆動源と前記出力軸の間に設けられた、上記した回転駆動力伝達機構と、前記出力軸の回転により回動するアームと、を有するロボットが提供される。
【0012】
本発明のさらに他の態様によれば、回転駆動力を生成する回転駆動源と、前記回転駆動源の回転軸に接続された、上記した回転駆動力伝達機構と、を有するアクチュエータ装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の回転駆動力伝達機構は、コンパクトな構成を有すると共に、回転駆動源の回転エネルギーを効率良く蓄積・解放することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態のロボットの斜視図である。
図2図1のロボットの関節部の断面図である。
図3図2のねじりコイルばね、第1固定モジュール及び第2固定モジュールの斜視図である。
図4図3の第1固定モジュールの第1固定部材の斜視図である。
図5図3の第1固定モジュールの第2固定部材を示す図である。
図6】ねじりコイルばねの直線部を把持する第1固定部材と第2固定部材の端面図である。
図7】実施形態の効果を説明するための比較例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。但し、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするため、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。また、先に説明した図に記載の要素については、後の図の説明において適宜に参照する場合がある。尚、本発明の範囲は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で変更及び修正等をすることが可能である。
【0016】
本発明の実施形態を図1図6に基づいて説明する。図1は、2つのアーム12及び14を有する多関節ロボット10を示している。多関節ロボット10は、以下の記載ではロボット10と称する。
【0017】
図1に示すように、ロボット10は、基台(ベースジョイント)20の上に設けられている。ロボット10は、基台20から上方に延びる支持部11と、支持部11の上端に設けられた第1アーム12と、第1アーム12の先端に接続された第2アーム14と、第2アーム14の先端に設けられたエンドエフェクタ16とを有している。
【0018】
符号J1は支持部11の中心軸を示し、符号J2は第1アーム12の回転中心軸を示し、符号J3は第2アーム14の回転中心軸を示し、符号J4はエンドエフェクタ16の回転中心軸を示している。
【0019】
第1アーム12は、第1関節部13により回転中心軸J2回りに回動される。第1関節部13の内部には、第1アーム12を駆動するためのアクチュエータ等が設けられている。第2アーム14は第2関節部15により回転中心軸J3回りに回動される。第2関節部15の内部には、第2アーム14を駆動するためのアクチュエータ等が設けられている。エンドエフェクタ16は第3関節部17により回転中心軸J4回りに回動される。第3関節部17の内部には、エンドエフェクタ16を駆動するためのアクチュエータ等が設けられている。尚、支持部11も、中心軸J1回りに回転可能な構成としてよい。
【0020】
ロボット10には、電源(図示せず)からケーブル(図示せず)を介して電力が供給される。また、ロボット10には、制御装置(図示せず)からケーブルまたは無線を介して制御信号が供給される。ロボット10の第1アーム12、第1関節部13、第2アーム14、第2関節部15、エンドエフェクタ16及び第3関節部17は、それぞれ、制御装置から受信する制御信号に基づいて動作する。
【0021】
次に、ロボット10の第1関節部13、第2関節部15及び第3関節部17について説明する。尚、3つの関節部13、15及び17はほぼ同様な構造を有しているので、以下の記載では、第2関節部15を説明し、第1関節部13及び第3関節部17の説明は省略する。
【0022】
図2は第2関節部15の内部構造を示した断面図である。
図2に示すように、第2関節部15のハウジング22の内部には、駆動源であるアクチュエータ30が設けられている。アクチュエータ30は、例えば、ステップモータであり、回転駆動源と称してもよい。アクチュエータ30は、第2関節部15のハウジング22内部の第1プレート部材24に取り付けられている。
【0023】
アクチュエータ30は出力軸32を有する。出力軸32は、第1プレート部材24の開口部24aを通って、図2において左方向に延びている。出力軸32はカップリング34を介して減速機40の入力軸42に接続されている。アクチュエータ30の出力軸32と、減速機40の入力軸42は同軸上に配置されている。減速機40の入力軸42には、エンコーダ44が付設されている。エンコーダ44は、減速機40の入力軸42の回転数を検出する。エンコーダ44は、ハウジング22内部の第2プレート部材25に取り付けられている。尚、第1プレート部材24と第2プレート部材25は、複数本(図2では2本)の接合部材28aにより接合されている。
【0024】
減速機40の入力軸42は、第2プレート部材25の開口部25aを通って、図2において右方向に延びている。減速機40はハウジング22内部の第3プレート部材26に取り付けられている。減速機40は、例えば、遊星歯車等から構成されており、所定の減速比で、回転を伝達する。減速機40の本体(遊星歯車等)は、第3プレート部材26の左側に位置している。第2プレート部材25と第3プレート部材26は、複数本(例えば、4本)の接合部材28bにより接合されている。尚、図2には、複数本の接合部材28bのうちの2本が示されている。
【0025】
本実施形態では、減速機40と、第2関節部15の出力軸50との間に、ねじりコイルばね60が設けられている。ねじりコイルばね60の中心軸と、減速機40の入力軸42と、第2関節部15の出力軸50は、同軸上に配置されている(直列配置されている)。また、本実施形態では、ねじりコイルばね60の右端部を減速機40に繋げる第1固定モジュール70と、ねじりコイルばね60の左端部を第2関節部15の出力軸50に繋げる第2固定モジュール80とが設けられている。ねじりコイルばね60の右端部は第1固定モジュール70に固定さていれる。ねじりコイルばね60の左端部は第2固定モジュール80に固定されている。第1固定モジュール70はボルト71により、減速機40に固定されている。第2固定モジュール80は、第2関節部15の出力軸50に固定されている。
【0026】
第2関節部15の出力軸50の右端部50aは第2固定モジュール80に接続されており、第2関節部15の出力軸50の左端部50bは第2アーム14の基部(下端)に接続されている。軸受36は、ハウジング22の外壁である第4プレート部材27の開口部27aに取り付けられている。軸受36と第2固定モジュール80の間には、ナット37が設けられており、軸受36はナット37により支持されている。第2関節部15の出力軸50は、軸受36により、ハウジング22に対して回転可能に支持されている。第3プレート部材26と第4プレート部材27は、複数本(例えば、4本)の接合部材29により接合されている。尚、図2には、複数本の接合部材29のうちの2本が示されている。
【0027】
アクチュエータ(モータ)30が回転すると、アクチュエータ30の出力軸32の回転がカップリング34を介して減速機40に伝達される。減速機40において回転数を下げて、トルクを上げ、当該トルク(回転)を、第1固定モジュール70を介してねじりコイルばね60に伝達する。ねじりコイルばね60の回転は、第2固定モジュール80を介して第2関節部15の出力軸50に伝達される。第2関節部15の出力軸50が回転すると、第2アーム14の下端が回転する(図1の回転中心軸J3を中心に回転する)。第2関節部15の出力軸50は、回転駆動源(アクチュエータ30)の回転を出力する出力軸であり、第2関節部15は、当該出力軸と回転駆動源の間に設けられた回転駆動力伝達機構であると言える。
【0028】
図3は第1固定モジュール70と、第2固定モジュール80と、これら2つの固定モジュール70、80の間に設けられたねじりコイルばね60とを示している。第1固定モジュール70は、第1固定部材72と第2固定部材74を有している。第2固定部材74は、ボルト76により、第1固定部材72に取り付けられている。第1固定モジュール70は、第1固定部材72と第2固定部材74により、ねじりコイルばね60の右端部60aを挟持することにより、ねじりコイルばね60の右端部(直線部)60aを固定する。符号74cは第2固定部材74の右側面を指している。
【0029】
第2固定モジュール80は、第3固定部材82と第4固定部材84を有している。第4固定部材84は、ボルト86により、第3固定部材82に取り付けられている。ボルト86は、第3固定部材82の貫通孔85bに螺合する。第2固定モジュール80は、第3固定部材82と第4固定部材84により、ねじりコイルばね60の左端部60b(図2)を挟持することにより、ねじりコイルばね60の左端部60bを固定する。本実施形態では、第1固定モジュール70と第2固定モジュール80は、ほぼ同じ構造を有している。つまり、第1固定部材72は第3固定部材82とほぼ同じ構造を有しており、第2固定部材74と第4固定部材84はほぼ同じ構造を有している。
【0030】
図4は第1固定部材72の斜視図である。図5(a)は第2固定部材74の斜視図であり、図5(b)は第2固定部材74の正面図であり、図5(c)は第2固定部材74の上面図であり、図5(d)は第2固定部材74の底面図であり、図5(e)は第2固定部材74の右側面図であり、図5(f)は第2固定部材74の背面図である。図6は、第2固定部材74を第1固定部材72にボルト76で固定することにより、第1固定部材72と第2固定部材74の間にねじりコイルばね60を固定した状態を示す図である。
【0031】
以下、図2図6を参照して、第1固定モジュール70の構造を詳細に説明する。
図4に示すように、第1固定モジュール70の第1固定部材72は、円形部73と、円形部73から接線方向に延びる延出部75とを有する。延出部75は略台形の板状部分である。以下の説明において、第1固定部材72がねじりコイルばね60と接触する面を、第1固定部材72の内側面と称し、反対側の面を第1固定部材72の外側面と称する。また、円形部73及び延出部75についても、同じ意味で、内側面と外側面という表現を使用する。
【0032】
図4に示すように、第1固定部材72の円形部73の外周部73aには、第1固定部材72の内側面から外側面に向けて貫通する複数(10個)の貫通孔73bが形成されている。また、第1固定部材72の延出部75の2つの外縁部75aには、第1固定部材72の内側面から外側面に向けて貫通する複数(4個)の貫通孔75bが形成されている。貫通孔75bには雌ネジが切られており、ボルト76(図3)により第2固定部材74を第1固定部材72に取り付ける際、ボルト76の雄ネジ部が貫通孔75bの雌ネジに螺合する。延出部75の外縁部75aにより規定される面は、第2固定部材74が第1固定部材72に取り付けられると第1固定部材72が第2固定部材74と対向する面であり、以下の説明において、第1固定部材72の対向面72aと称する場合がある。
【0033】
図4に示すように、第1固定部材72の円形部73の内側面は、外周部73aと、外周部73aにほぼ囲まれた内周部73cとを有する。円形部73の内周部73cは凹部となっている。以下の説明では、内周部73cを第1凹部73cと称する場合がある。円形部分73の内周部73cの中央には、中空円筒形状のガイド部77が設けられている。ガイド部77は、ねじりコイルばね60の巻回部60cに挿入されて、巻回部60cの動きを支持(ガイド)する。本実施形態では、ガイド部77は円形部73と一体的に形成されている。図2及び図3から分かるように、ガイド部77はねじりコイルばね60の長手方向に延びている。また、第2固定モジュール80のガイド部87も、ねじりコイルばね60の長手方向に延びている。ガイド部77及びガイド部87は、ねじりコイルばね60の巻回部60cの内部に延びている。ガイド部77とガイド部78の外径は同じである。ガイド部77及びガイド部78の外径は、ねじりコイルばね60の巻回部60cの内径より小さい。つまり、本実施形態では、ガイド部77及びガイド部87は、所定の遊び(径方向の隙間)を持って、巻回部60cに内挿されている。
【0034】
図4に示すように、延出部75の中央部75c(2つの外縁部75aに挟まれた部分)には、延出部75の延出方向と同じ方向に延びる凹部が形成されている。以下の説明では、中央部75cを第2凹部75cと称する場合がある。円形部73の第1凹部73cと延出部72bの第2凹部75cは連続しており、第1凹部73cと第2凹部75cにより1つの溝78が形成さている。第2凹部75cは、断面がU字状の溝(U溝)である。
【0035】
図5に示すように、第2固定部材74は、第2固定部材74を第1固定部材72に固定するためのボルト76が貫通する貫通孔74aを4つ有する。4つの貫通孔74aは、第1固定部材72の4つの貫通孔75b(図4)に対応している。また、第2固定部材74は、第1固定部材72に対向する面74bにV溝(断面がV字状の溝)79を有する。
【0036】
図3及び図4から分かるように、ねじりコイルばね60の右端部60aは、ねじりコイルばね60の巻回部(胴部)60cから延びる直線部である。ねじりコイルばね60の右端部60aは、溝78に係合しており(ねじりコイルばね60の直径方向の半分程度が溝78に収容されており)、溝78の第2凹部75cに沿って延びて、第1固定モジュール70の延出部75の先端75dに至っている。図3及び図6に示すように、溝78に収容されていないねじりコイルばね60の直径方向の半分程度(図6のねじりコイルばね60の上側半分程度)は、第2固定部材74のV溝79に係合している。ねじりコイルばね60の右端部60aは、ボルト76により第2固定部材74を第1固定部材72に固定することにより、第1固定部材72に対して固定される。U溝78とV溝79の組み合わせを溝と称してもよい。この場合、固定モジュール70は、ねじりコイルばね60の直線部60aに係合する溝(U溝78、V溝79)を有すると言える。
【0037】
尚、図6に示すように、本実施形態では、ボルト76により第2固定部材74を第1固定部材72に固定した状態において、第2固定部材74の面74bと第1固定部材72の対向面72aとの間に、隙間(クリアランス)Cが形成されている。つまり、第2固定部材74の面74bは、第1固定部材72の対向面72aと接触していない。これは、ねじりコイルばね60の直径と、U溝78及びV溝79との関係が所定の関係を有しているからである。所定の関係とは、図6のように、ねじりコイルばね60が第1固定部材72と第2固定部材74に挟まれて固定された状態で、ねじりコイルばね60の断面の上半分の2箇所60d、60eがV溝79に接触し、ねじりコイルばね60の断面の下半分の1箇所60fがU溝78に接触するという関係である。このような関係が成立すれば、ねじりコイルばね60は、第1固定部材72と第2固定部材74の間で、断面で見て3点でしっかりと固定される。もしボルト76により第2固定部材74を第1固定部材72に固定した状態において、第2固定部材74の面74bと第1固定部材72の対向面72aとの間に隙間Cが形成されず、面74bと対向面72aが接触すると、ねじりコイルばね60はU溝78とV溝79により形成される空間内で動くことができ、第2固定部材74を第1固定部材72に取り付けても、ねじりコイルばね60は第1固定部材72と第2固定部材74により固定されないことになる。
【0038】
ボルト76により第2固定部材74を第1固定部材72に固定した状態において、第2固定部材74と第1固定部材72の間に、クリアランスCが形成されるようにすると、ねじりコイルばね60の直径が大きくなっても、ねじりコイルばね60を第1固定部材72と第2固定部材74の間にしっかりと固定することができる。
【0039】
次に、第2関節部15の動作について説明する。
図2に示したように、ねじりコイルばね60の長手方向(中心軸)は第2関節部15の出力軸50と一致している。つまり、ねじりコイルばね60と出力軸50は同軸上に配置されている。よって、ロボット10の第2アーム14に意図しない力が作用して、当該力により出力軸50が回転した場合(例えば、ねじりコイルばね60を絞る方向に出力軸50が回転した場合)、ねじりコイルばね60は縮径しながら当該回転(トルク)を吸収・蓄積することができる。本実施形態では、このようなトルク蓄積を少ない部品(ねじりコイルばね60)で達成することができる。また、ねじりコイルばね60の巻回部60cはガイド部77、87に外挿されているので、ねじりコイルばね60が縮径する際に、ガイド部77、87にガイドされながら縮径する。よって、ねじりコイルばね60の縮径動作がガイド部77、87の長手方向中心軸からずれない。つまり、ねじりコイルばね60の縮径動作が安定して行われる。
尚、上記の記載において、意図しない力が第2アーム14に作用してねじりコイルばね60が縮径動作する場合を説明したが、意図しない力によりねじりコイルばね60が拡径動作する場合も、上記した記載と同様に、ねじりコイルばね60により当該力を蓄積・開放することができる。
【0040】
本実施形態では、ねじりコイルばね60がガイド部77、78の外周で縮径する場合、第2関節部15の出力軸50の回転角度がモータ30の出力軸32の回転角度に対して、例えば、90度以上ずれることを許容できるように構成されている。つまり、モータ30に対して第2アーム14が意図せずに回動してしまう場合に、90度以上の回動(ねじり)を許容できるように構成されている。上記した意図しない力が作用した後に当該力が作用しなくなると、ねじりコイルばね60に蓄積されたエネルギーは、ねじりコイルばね60の拡径動作により滑らかに開放される。
【0041】
ねじりコイルばね60の右端部60aは第1固定部材72のU溝78と第2固定部材74のV溝79に係合して動けないようになっているので、上記したねじりコイルばね60の縮径動作の際に、ねじりコイルばね60の右端部60aはガタつくことがない。ねじりコイルばね60の左端部60bも、第3固定部材82のU溝(図示せず)と第4固定部材84のV溝(図示せず)に係合して移動不可になっているので、上記したねじりコイルばね60の縮径動作の際に、ねじりコイルばね60の左端部60bはガタつくことがない。
【0042】
図6に示したように、ねじりコイルばね60の外周面と固定部品(第1固定モジュール70)が3点(60d、60e、60f)で接触することにより、モータ(駆動源)30から大きなトルクがねじりコイルばね60に作用した場合でも、安定したねじりコイルばね60の固定が実現される。また、第1固定部材72と第2固定部材74の間には隙間Cがあるので、ねじりコイルばね60の外径の寸法のばらつきを許容した上で、ねじりコイルばね60の端部60a、60bをしっかりと固定することが出来る。
【0043】
本実施形態の第2関節部15を使用すれば、モータ30が第2アーム14を回動している間に、意図しない力(逆トルク)が第2アーム14に作用した場合に、当該意図しない力をねじりコイルばね60により吸収しながら、モータ30による第2アーム14の駆動を滑らかに行うことができる。つまり、意図しない力が第2アーム14に作用した場合であっても、モータ30からの動力を、ガタなく第2アーム14に伝達することができる。従って、第2アーム14のスムーズな動きが保証される。
【0044】
尚、上記の記載において、第2アーム14を回転させる第2関節部15の構成・動作を説明したが、第1アーム12を回転させる第1関節部13の構成・動作も第2関節部15と同様である。エンドエフェクタ16を回転させる第3関節部17の構成・動作も第2関節部15と同様である。
【0045】
図7は実施形態の効果を説明するための比較例の構成を示す図である。本発明の実施形態の第2関節部15では、図2に示したように、モータ30の出力軸32と、減速機(歯車列)40の入力軸42と、コイルばね60と、第2関節部15の出力軸(負荷)50が同軸上に配置(直列配置)されている。これに対し、図7のようにモータ125と歯車列127と負荷(関節部の出力軸)が同軸上に配置され、クラッチ131及びコイルばね129が並列配置されている構成では、モータ125及び歯車列127で構成される動力伝達系統の横に、クラッチ131及びコイルばね129で構成されるエネルギー蓄積・解放系統が配置される。その結果、モータ125及び歯車列127で構成される動力伝達系統を設けるスペースに加えて、クラッチ131及びコイルばね129で構成されるエネルギー蓄積・解放系統を設けるためのスペースが必要になる。また、負荷から動力伝達系統に意図しないトルク(エネルギー)が作用した場合、当該エネルギーは動力伝達系統に直列配置されていないコイルばね129の縮径動作・拡径動作により吸収(蓄積)・解放されないので、当該エネルギーを効率良く蓄積・解放することができず、動力伝達系統が損傷するおそれがある。本実施形態の第2関節部15では、ねじりコイルばね60がモータ30の出力軸32と第2関節部15の出力軸50との間に直列配置され、モータ30の出力軸32と第2関節部15の出力軸50との間に作用するトルク(エネルギー)を直列的に蓄積・解放するので、効率良く、当該エネルギーを蓄積・開放することができる。
【0046】
尚、本実施形態は、図示した構成に限定されない。例えば、減速機40は設けなくてもよい。また、図6では、ねじりコイルばね60は、その外周面の3箇所60d、60e、60fで第1固定モジュール70(第1固定部材72と第2固定部材74)に接触していたが、ねじりコイルばね60が第1固定モジュール70と接触する箇所は4以上でもよい。第1固定部材72に形成された溝78の断面形状はU字状ではなくてもよい(例えば、V字状でもよい)。第2固定部材74に形成された溝79の断面形状はV字状でなくてもよい(例えば、U字状でもよい)。
ガイド部77の直径はガイド部87の直径と等しくなくてもよい。
【0047】
ロボット10は、例えば、工業用ロボット、医療ロボット、介護ロボット等である。本実施形態の関節部13、15、17をロボット10に使用すると、しなやかな動きを行うことができる。医療ロボットや介護ロボットの場合(あるいは、デリケートな動きが求められる工業用ロボットの場合)、しなやかな動きが求められるので、本実施形態の関節部を使用すると有利である。
【0048】
アクチュエータ30と、アクチュエータ30に接続された第2関節部15とにより、アクチュエータ装置が構成される。
【符号の説明】
【0049】
10…ロボット
12…第1アーム
13…第1関節部
14…第2アーム
15…第2関節部
16…エンドエフェクタ
17…第3関節部
30…アクチュエータ(モータ)
32…アクチュエータの出力軸
40…減速機
50…第2関節部15の出力軸
60…ねじりコイルばね
70…第1固定モジュール
72…第1固定部材
74…第2固定部材
78…U溝
79…V溝
80…第2固定モジュール
82…第3固定部材
84…第4固定部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7