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特開2024-140249端末装置、端末装置の制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140249
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】端末装置、端末装置の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/14 20180101AFI20241003BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20241003BHJP
   H04W 92/18 20090101ALI20241003BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20241003BHJP
【FI】
H04W76/14
H04W88/06
H04W92/18
H04W84/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051299
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】森本 恵一
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067EE02
5K067EE04
5K067EE10
5K067EE25
5K067LL14
(57)【要約】
【課題】端末装置がアクセスポイントを介して無線通信装置と通信できない場合であっても、端末装置が当該無線通信装置の状態を確認することができるようにすることが求められている。
【解決手段】端末装置100は、第1の無線通信方式の無線通信接続を確立する第1の通信処理部151と、前記第1の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて、無線通信装置に、当該無線通信装置が有する機能の実行を指示する指示情報を送信するよう制御する送信制御部154と、NAN規格にしたがった第2の無線通信方式の無線通信接続を、前記無線通信装置との間で確立する第2の通信処理部152と、前記指示情報に対する応答がない場合に、前記第2の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて、前記無線通信装置から前記無線通信装置の状態を示す状態情報を取得する状態情報取得部155とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の無線通信方式の無線通信接続を確立する第1の通信処理部と、
前記第1の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて、無線通信装置に、当該無線通信装置が有する機能の実行を指示する指示情報を送信するよう制御する送信制御部と、
NAN(Neighbor Awareness Network)規格にしたがった通信方式であり前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式の無線通信接続を、前記無線通信装置との間で確立する第2の通信処理部と、
前記指示情報に対する応答がない場合に、前記第2の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて、前記無線通信装置から前記無線通信装置の状態を示す状態情報を取得する状態情報取得部と
を有する端末装置。
【請求項2】
前記状態情報を表示するよう制御する表示制御部をさらに有する
請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記状態情報は、前記無線通信装置の前記第1の無線通信方式の無線通信接続の状態についての前記無線通信装置による診断の結果を示す情報を含む
請求項1又は2に記載の端末装置。
【請求項4】
前記状態情報は、前記無線通信装置の前記第1の無線通信方式の無線通信接続の状態についての前記無線通信装置による診断の結果を示す情報を含み、
前記状態情報取得部は、さらに、前記診断の結果とともに、前記無線通信装置の前記第1の無線通信方式の前記無線通信接続の不良を解消するためにユーザーが参照すべき情報である参照情報を、前記第2の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて、前記無線通信装置から取得し、
前記表示制御部は、さらに、前記参照情報を表示するよう制御する
請求項2に記載の端末装置。
【請求項5】
前記状態情報は、前記無線通信装置の前記第1の無線通信方式の無線通信接続の状態についての前記無線通信装置による診断の結果を示す情報を含み、
前記端末装置は、前記無線通信装置の前記第1の無線通信方式の前記無線通信接続の不良を解消するためにユーザーが参照すべき情報である参照情報を記憶する記憶部を有し、
前記表示制御部は、さらに、前記診断の結果に対応する前記参照情報を表示するよう制御する
請求項2に記載の端末装置。
【請求項6】
前記送信制御部は、さらに、前記指示情報に対する応答がない場合、前記第2の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて前記無線通信装置に前記指示情報を送信するよう制御する
請求項1に記載の端末装置。
【請求項7】
前記状態情報は、前記無線通信装置の前記機能に関する状態を示す情報を含み、
前記送信制御部は、前記状態情報が前記機能の異常を示す場合には、前記第2の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて前記無線通信装置に前記指示情報を送信しないよう制御する
請求項6に記載の端末装置。
【請求項8】
前記状態情報は、前記機能を実行するために前記無線通信装置が備える消耗品の残量についての情報を含み、
前記表示制御部は、さらに、前記状態情報が前記消耗品の不足を示す場合には、前記消耗品の不足を通知する警告を表示するよう制御する
請求項2に記載の端末装置。
【請求項9】
前記第2の通信処理部は、前記指示情報の送信先の前記無線通信装置のMAC(Media access Control)アドレスに基づいて、前記第2の無線通信方式の前記無線通信接続の接続対象を特定する
請求項1に記載の端末装置。
【請求項10】
第1の無線通信方式の無線通信接続を用いて、無線通信装置に、当該無線通信装置が有する機能の実行を指示する指示情報を送信するよう制御し、
NAN規格にしたがった通信方式であり前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式の無線通信接続を、前記無線通信装置との間で確立し、
前記指示情報に対する応答がない場合に、前記第2の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて、前記無線通信装置から前記無線通信装置の状態を示す状態情報を取得する
端末装置の制御方法。
【請求項11】
第1の無線通信方式の無線通信接続を確立する第1の通信処理ステップと、
前記第1の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて、無線通信装置に、当該無線通信装置が有する機能の実行を指示する指示情報を送信するよう制御する送信制御ステップと、
NAN規格にしたがった通信方式であり前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式の無線通信接続を、前記無線通信装置との間で確立する第2の通信処理ステップと、
前記指示情報に対する応答がない場合に、前記第2の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて、前記無線通信装置から前記無線通信装置の状態を示す状態情報を取得する状態情報取得ステップと
をコンピューターに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端末装置、端末装置の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信を用いて印刷する技術が知られている。例えば、特許文献1は、端末装置と印刷装置がアクセスポイントに無線通信接続しており、このアクセスポイントを介して端末装置から印刷装置へとデータを無線通信で送信することにより、印刷を実現する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-19146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、印刷装置とアクセスポイントとの間の無線通信接続に問題が発生した場合などには、端末装置から印刷指示が送信されても、印刷が実行されない。このとき、端末装置はアクセスポイントを介して印刷装置と通信できないため、端末装置からは印刷装置の状態を確認することができない。このため、端末装置がアクセスポイントを介して印刷装置などの無線通信装置と通信できない場合であっても、端末装置が当該無線通信装置の状態を確認することができるようにするための技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示にかかる端末装置は、第1の無線通信方式の無線通信接続を確立する第1の通信処理部と、前記第1の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて、無線通信装置に、当該無線通信装置が有する機能の実行を指示する指示情報を送信するよう制御する送信制御部と、NAN規格にしたがった通信方式であり前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式の無線通信接続を、前記無線通信装置との間で確立する第2の通信処理部と、前記指示情報に対する応答がない場合に、前記第2の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて、前記無線通信装置から前記無線通信装置の状態を示す状態情報を取得する状態情報取得部とを有する。
【0006】
また、本開示にかかる端末装置の制御方法では、第1の無線通信方式の無線通信接続を用いて、無線通信装置に、当該無線通信装置が有する機能の実行を指示する指示情報を送信するよう制御し、NAN規格にしたがった通信方式であり前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式の無線通信接続を、前記無線通信装置との間で確立し、前記指示情報に対する応答がない場合に、前記第2の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて、前記無線通信装置から前記無線通信装置の状態を示す状態情報を取得する。
【0007】
また、本開示にかかるプログラムは、第1の無線通信方式の無線通信接続を確立する第1の通信処理ステップと、前記第1の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて、無線通信装置に、当該無線通信装置が有する機能の実行を指示する指示情報を送信するよう制御する送信制御ステップと、NAN規格にしたがった通信方式であり前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式の無線通信接続を、前記無線通信装置との間で確立する第2の通信処理ステップと、前記指示情報に対する応答がない場合に、前記第2の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて、前記無線通信装置から前記無線通信装置の状態を示す状態情報を取得する状態情報取得ステップとをコンピューターに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態にかかる通信システムの構成の一例を示す模式図である。
図2】実施の形態にかかる端末装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3】実施の形態にかかる無線通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
図4】実施の形態にかかる端末装置の動作の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】実施の形態にかかる無線通信装置の動作の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0010】
Wi-Fi Allianceの認定プログラムの一つであるWi-Fi Awareには、装置間でアクセスポイントを介さずに無線通信するNAN(Neighbor Awareness Network)と呼ばれる通信プロトコルが規定されている。以下、Wi-Fi Allianceによって定められた、このNANについての規格をNAN規格と称す。以下で説明される実施の形態では、アクセスポイントを介した通信の他に、このNAN規格にしたがった通信が行われる。
【0011】
図1は、実施の形態にかかる通信システム10の構成の一例を示す模式図である。通信システム10は、端末装置100、無線通信装置200、及びアクセスポイント300を含む。アクセスポイント300は、無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイントである。なお、この無線LANは、具体的には、例えば、Wi-Fi(登録商標)ネットワークである。
【0012】
本実施の形態において、端末装置100は、アクセスポイント300を介した通信により、無線通信装置200が有する機能を利用する。また、無線通信装置200は、アクセスポイント300を介した通信で端末装置100から受信した指示に基づいて、無線通信装置200が有する機能を実行する。本実施の形態では、無線通信装置200が有する機能は、一例として印刷機能である。ただし、無線通信装置200が有する機能はこれに限られず、スキャン機能など任意の機能であってもよい。
【0013】
通信システム10において、無線通信装置200とアクセスポイント300との間の無線通信接続に問題が発生した場合などには、端末装置100から指示が送信されても、無線通信装置200の機能が実行されない。このとき、端末装置100はアクセスポイント300を介して無線通信装置200と通信できないため、端末装置100は、アクセスポイント300を介する通信により無線通信装置200の状態を確認することができない。そこで、本実施の形態では、端末装置100は、NAN規格にしたがった通信により、無線通信装置200の状態を確認する。
【0014】
なお、本開示では、アクセスポイント300を介した通信を行う無線通信方式をNW(ネットワーク)無線通信方式とも称すこととする。NW無線通信方式は、Wi-Fi(登録商標)規格にしたがってアクセスポイント300を介した通信を行う方式ということもできるし、インフラストラクチャーモードの無線通信方式ということもできる。また、本開示では、NAN規格にしたがった通信方式をNAN無線通信方式とも称すこととする。図1では、端末装置100についてのNW無線通信方式の無線通信接続CNWは適切に確立されているが、無線通信装置200についてはNW無線通信方式の無線通信接続CNWに問題が生じている。このため、後述するように、端末装置100は、NAN無線通信方式の通信CNANにより、無線通信装置200の状態を確認する。
【0015】
端末装置100は、例えば、PC(Personal Computer)、スマートフォン、タブレット端末等のユーザーによって操作される装置である。また、本実施の形態では、無線通信装置200は、一例として、印刷装置(プリンター)である。通信システム10において、端末装置100と無線通信装置200は、上述した通り、NAN無線通信方式の通信、すなわちNAN規格にしたがった通信を行う。
【0016】
以下、端末装置100及び無線通信装置200の具体的な構成及び処理について説明する。まず、端末装置100について説明する。図2は、端末装置100の構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、端末装置100は、記憶部110、無線通信部120、表示部130、操作部140、及び制御部150を有する。
【0017】
記憶部110は、制御部150の処理を実現するためのプログラム及び端末装置100の処理に用いられるデータが格納される記憶装置である。この記憶装置は、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリー等の不揮発性記憶装置であってもよく、RAM(Random access Memory)等のメモリーを含んでもよい。
【0018】
無線通信部120は、無線通信を行うハードウェアである。すなわち、無線通信部120は、無線通信インターフェースである。無線通信部120は、送信回路、受信回路、及びアンテナを含みうる。
【0019】
表示部130及び操作部140は、ユーザーインターフェースである。表示部130は、各種情報をユーザーに対して表示するディスプレイ等で構成される。操作部140は、ユーザーからの入力操作を受け付けるボタン等で構成される。なお、表示部130及び操作部140は、タッチパネル等によって一体に構成されてもよい。
【0020】
制御部150は、端末装置100の各構成を制御する例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーである。制御部150は、複数のプロセッサーを有してもよい。制御部150は、プログラムをメモリーへ読み込み、プログラムを実行する。これにより、本実施の形態では、制御部150は、通信処理部151、通信処理部152、入力受付部153、送信制御部154、状態情報取得部155、及び表示制御部156の処理を実行する。
【0021】
端末装置100は、通信処理部151と通信処理部152を備えており、2種類の異なる無線通信方式での通信が可能な構成を備えている。
通信処理部151は、NW無線通信方式の通信を実行する処理を行う。この処理は、NW無線通信方式の無線通信接続を確立する処理を含む。具体的には、通信処理部151は、アクセスポイント300のSSID(Service Set Identifier)及びパスワードを用いて、アクセスポイント300とNW無線通信方式の無線通信接続を確立する。
【0022】
通信処理部152は、NAN無線通信方式の通信を、無線通信装置200との間で実行する処理を行う。この処理は、NAN無線通信方式の無線通信接続を無線通信装置200との間で確立する処理を含む。具体的には、通信処理部152は、NAN規格にしたがって後述するNANクラスターに端末装置100を所属させた後、当該NANクラスターに所属する無線通信装置200とNAN規格にしたがった無線通信接続を確立する。以下、NAN規格にしたがった無線通信接続、つまり、NAN無線通信方式の無線通信接続をNAN接続とも称す。ここで、本実施の形態において、NAN規格にしたがった無線通信接続とは、具体的には、NANデータリンク(NAN Data Link)である。端末装置100と無線通信装置200のNAN接続(NANデータリンク)を確立するための通信処理部152の処理の詳細については後述する。本実施の形態では、通信処理部152は、NW無線通信方式の無線通信接続を用いて端末装置100から送信された指示情報に対して応答がない場合に、無線通信装置200との間でNAN接続を確立するが、応答の有無にかかわらず無線通信装置200との間でNAN接続を確立してもよい。例えば、通信処理部152は、指示情報の送信の前に、NAN接続の確立を行ってもよいし、指示情報の送信の直後に、NAN接続の確立を行ってもよい。
【0023】
入力受付部153は、操作部140を介してユーザーが入力した指示又は情報などを受付ける。本実施の形態では、入力受付部153は、無線通信装置200の機能の実行の指示を受付ける。具体的には、入力受付部153は、ユーザーが操作部140を介して行った印刷指示を受付ける。この指示は、機能を実行させる装置を指定する指示、すなわち無線通信装置200を指定する指示を含んでもよい。また、この指示は、印刷対象のデータを指定する指示を含んでもよい。また、この指示は、さらに、印刷設定を指定する指示を含んでもよい。
【0024】
送信制御部154は、NW無線通信方式の無線通信接続又はNAN無線通信方式の無線通信接続を用いた情報の送信を制御する。特に、本実施の形態では、送信制御部154は、NW無線通信方式の無線通信接続を用いて、無線通信装置200に、当該無線通信装置200が有する機能の実行を指示する指示情報を送信するよう制御する。例えば、送信制御部154は、入力受付部153が印刷指示を受付けた場合、印刷の実行を指示する指示情報をNW無線通信方式の無線通信接続を用いて無線通信装置200に送信するよう制御する。印刷の実行を指示する指示情報は、印刷対象のデータを含んでもよいし、印刷設定を指定する情報を含んでもよい。
【0025】
なお、無線通信装置200のNW無線通信方式の無線通信接続に問題が生じている場合には、端末装置100から指示情報が送信されても、端末装置100は、この指示情報に対する応答を無線通信装置200から得られない。そこで、本実施の形態では、指示情報に対して応答がない場合、後述するように、端末装置100は、NAN無線通信方式の無線通信接続を用いて、無線通信装置200の状態を確認する。
【0026】
また、送信制御部154は、端末装置100が送信した指示情報に対する無線通信装置200からの応答がない場合、NAN接続を用いて無線通信装置200に指示情報を送信するよう制御してもよい。すなわち、送信制御部154は、NW無線通信方式の無線通信接続を用いて送信された指示情報を、NAN接続を用いて送信し直すよう制御してもよい。これにより、NW無線通信方式の無線通信接続で指示情報が伝送できない場合であっても、無線通信装置200の機能を利用することができる。特に、送信制御部154は、後述する状態情報取得部155が取得した状態情報が、指示情報で実行が指示された機能の異常を示さない場合に限り、指示情報を、NAN接続を用いて送信し直すよう制御してもよい。換言すると、送信制御部154は、取得された状態情報が機能の異常を示す場合には、NAN接続を用いて指示情報を送信しないよう制御してもよい。これにより、機能を実行することができないにもかかわらず、指示情報が送信されることを防ぐことができる。なお、本実施の形態において、機能の異常とは、機能の実行を妨げる異常であればよく、例えば、機能を実行するために動作する、無線通信装置200の機械的な構成要素の異常であってもよいし、機能を実行するために無線通信装置200が備える消耗品の不足であってもよい。具体的には、例えば、機能の異常は、印刷装置である無線通信装置200における紙詰まりの発生であってもよいし、無線通信装置200における色材又は用紙(印刷媒体)の不足であってもよい。
【0027】
なお、送信制御部154は、指示情報のこのような再送信を、ユーザーからの指示に応じて行ってもよい。すなわち、送信制御部154は、NAN接続を用いた指示情報の送信指示を入力受付部153が受付けた場合に、指示情報の再送信を行う制御を実施してもよい。また、送信制御部154は、無線通信装置200のNW無線通信方式の無線通信接続の不良を示す状態情報が取得されたことを確認した上で、NAN接続を用いた指示情報の送信を行ってもよい。
【0028】
状態情報取得部155は、NW無線通信方式の無線通信接続を用いて送信された指示情報に対する無線通信装置200からの応答がない場合に、NAN接続を用いて、無線通信装置200から無線通信装置200の状態を示す状態情報を取得する。例えば、状態情報取得部155は、NW無線通信方式の無線通信接続を用いて指示情報が送信されてから所定の時間が経過しても無線通信装置200から応答が得られない場合、NAN接続を介して、無線通信装置200に対して、状態情報の送信を要求する。これにより、状態情報取得部155は、NAN接続を介して、無線通信装置200から状態情報を取得する。
【0029】
本実施の形態では、特に、状態情報取得部155は、状態情報として、無線通信装置200のNW無線通信方式の無線通信接続の状態に関する情報を取得する。より詳細には、本実施の形態では、状態情報取得部155は、無線通信接続の状態に関する情報として、無線通信装置200により行われた、無線通信装置200のNW無線通信方式の無線通信接続の状態についての診断の結果を取得する。このように、状態情報取得部155が取得する状態情報は、無線通信装置200のNW無線通信方式の無線通信接続の状態についての無線通信装置200による診断の結果を示す情報を含んでもよい。これにより、無線通信接続に関する無線通信装置200の自己診断処理(具体的には後述する診断部243の処理)の結果を遠隔で活用することができる。
【0030】
また、状態情報取得部155は、NAN接続を用いて、無線通信装置200のNW無線通信方式の無線通信接続の状態についての診断の結果とともに、無線通信装置200から参照情報を取得してもよい。ここで、参照情報とは、無線通信装置200のNW無線通信方式の無線通信接続の不良を解消するためにユーザーが参照すべき情報である。参照情報は、具体的には、例えば、無線通信接続の不良を解消するためにユーザーが行うべき作業を示したマニュアルであってもよい。
【0031】
また、状態情報取得部155は、状態情報として、無線通信装置200の機能に関する状態を示す情報を取得してもよい。すなわち、状態情報取得部155が取得する状態情報は、無線通信装置200の機能に関する状態を示す情報を含んでもよい。なお、ここでいう無線通信装置200の機能は、より詳細には、端末装置100からの要求に応じて無線通信装置200が提供する機能ということもできる。機能に関する状態を示す情報は、機能における異常の有無を示す情報であってもよい。また、機能に異常が発生している場合には、機能に関する状態を示す情報は、機能における異常の内容を示す情報を含んでもよい。例えば、機能に関する状態を示す情報は、機械的な構成要素の異常の発生、消耗品の不足による異常の発生などを示してもよい。なお、後述するように、本実施の形態では、状態情報取得部155は、機能に関する状態を示す情報として、無線通信装置200により行われた、無線通信装置200の機能についての診断の結果を取得する。状態情報取得部155は、無線通信装置200が様々な機能を備える場合、全ての機能について機能に関する状態を示す情報を取得してもよいし、特定の機能について機能に関する状態を示す情報を取得してもよい。特定の機能について機能に関する状態を示す情報を取得する場合、状態情報取得部155は、無線通信装置200に対して状態情報の送信を要求する際、状態情報を取得する必要がある機能を無線通信装置200に通知してもよい。この場合、状態情報取得部155は、NW無線通信方式の無線通信接続で送信された指示情報で実行が指示された機能を無線通信装置200に通知してもよい。
【0032】
また、状態情報取得部155は、機能に関する状態を示す情報として、機能を実行するために無線通信装置200が備える消耗品(例えば、色材、用紙など)の残量についての情報を取得してもよい。すなわち、状態情報取得部155が取得する状態情報は、無線通信装置200の機能を実行するために無線通信装置200が備える消耗品の残量についての情報を含んでもよい。消耗品の残量についての情報は、機能を実行する上で消耗品の残量が不足しているか否かを示してもよいし、消耗品の残量自体を示してもよい。
【0033】
表示制御部156は、表示部130による表示を制御する。本実施の形態では、表示制御部156は、状態情報取得部155が取得した情報を表示部130に表示するよう制御する。すなわち、表示制御部156は、無線通信装置200から送信された状態情報を表示するよう制御する。なお、状態情報が無線通信装置200における消耗品の不足を示す場合には、表示制御部156は、消耗品の不足を通知する警告を表示するよう制御してもよい。状態情報が表示されることによって、ユーザーは無線通信装置200の状態を把握することができ、ユーザーの利便性が向上する。また、消耗品の不足の警告が表示されることにより、消耗品の補充をユーザーに促すことができる。
【0034】
また、状態情報取得部155が上述した参照情報を取得した場合には、表示制御部156は、当該参照情報を表示するよう制御してもよい。なお、表示制御部156は、無線通信装置200以外から取得した参照情報を表示するよう制御してもよい。例えば、端末装置100の記憶部110が予め参照情報を記憶していてもよく、この場合には、表示制御部156は、記憶部110に記憶された参照情報を表示部130に表示するよう制御してもよい。このとき、表示制御部156は、状態情報取得部155が取得した状態情報に含まれる、無線通信装置200による診断の結果に対応する参照情報を表示するよう制御してもよい。すなわち、表示制御部156は、記憶部110が記憶する様々な参照情報のうち、診断の結果に対応する参照情報だけを抽出して表示するよう制御してもよい。参照情報が表示されることによって、ユーザーは無線通信接続のトラブルを解決するために助けとなる情報を容易に得ることができ、ユーザーの利便性が向上する。
【0035】
次に、無線通信装置200について説明する。図3は、無線通信装置200の構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、無線通信装置200は、記憶部210、無線通信部220、印刷部230、及び制御部240を有する。また、無線通信装置200は、印刷部230で実行される印刷機能のために、色材231及び印刷媒体232を備えている。なお、色材231及び印刷媒体232は上述した消耗品の一例である。なお、無線通信装置200は、他の構成要素を備えていてもよい。例えば、無線通信装置200は、タッチパネルディスプレイなどのユーザーインターフェースをさらに備えていてもよいし、スキャナーなどをさらに備えていてもよい。
【0036】
記憶部210は、制御部240の処理を実現するためのプログラム及び無線通信装置200の処理に用いられるデータが格納される記憶装置である。この記憶装置は、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリー等の不揮発性記憶装置であってもよく、RAM等のメモリーを含んでもよい。
【0037】
無線通信部220は、無線通信を行うハードウェアである。すなわち、無線通信部220は、無線通信インターフェースである。無線通信部220は、送信回路、受信回路、及びアンテナを含みうる。
【0038】
印刷部230は、用紙などの印刷媒体232に印刷を行うための構成を有する。具体的には、例えば、印刷部230は、印刷エンジンを含む。印刷エンジンとは、印刷媒体232への画像の印刷を、色材231を用いて実行する機械的構成である。印刷エンジンは、例えば、インクジェット方式により、色材231であるインクを用いて印刷を行う機構を有してもよい。あるいは、印刷エンジンは、例えば、電子写真方式により、色材231であるトナーを用いて印刷を行う機構を有してもよい。また、印刷部230は、印刷媒体232を搬送する搬送機構を有してもよい。
【0039】
制御部240は、無線通信装置200の各構成を制御する例えばCPU等のプロセッサーである。制御部240は、複数のプロセッサーを有してもよい。制御部240は、プログラムをメモリーへ読み込み、プログラムを実行する。これにより、本実施の形態では、制御部240は、通信処理部241、通信処理部242、診断部243、送信制御部244、指示情報取得部245、及び機能実行部246の処理を実行する。
【0040】
無線通信装置200は、通信処理部241と通信処理部242を備えており、2種類の異なる無線通信方式での通信が可能な構成を備えている。
通信処理部241は、NW無線通信方式の通信を実行する処理を行う。この処理は、NW無線通信方式の無線通信接続を確立する処理を含む。具体的には、通信処理部241は、アクセスポイント300のSSID及びパスワードを用いて、アクセスポイント300とNW無線通信方式の無線通信接続を確立する。
【0041】
通信処理部242は、NAN無線通信方式の通信を、端末装置100との間で実行する処理を行う。この処理は、NAN接続を端末装置100との間で確立する処理を含む。端末装置100と無線通信装置200のNAN接続を確立するための通信処理部242の処理の詳細については後述する。
【0042】
診断部243は、無線通信装置200の状態を診断し、無線通信装置200の状態を示す状態情報を生成する。すなわち、診断部243は、診断の結果を含む状態情報を生成する。診断部243は、NW無線通信方式の無線通信接続の状態を診断する。例えば、診断部243は、pingコマンドを実行してアクセスポイント300にパケットを送信することにより、NW無線通信方式の無線通信接続の状態を診断する。具体的には、診断部243は、pingコマンドの実行により送信されたパケットに対する応答を確認することで、NW無線通信方式の無線通信接続が正常に確立された状態であるか、それとも当該無線通信接続が不良な状態であるかを判定する。ここで、不良な状態とは、無線通信接続が確立できていない状態だけでなく、接続が不安定な状態を含む。診断部243は、例えば、pingコマンドの実行により送信されたパケットに対する応答が得られない場合、無線通信接続が確立していないと判定する。また、診断部243は、pingコマンドの実行により送信されたパケットに対する応答が得られるまでの時間が閾値を超える場合、無線通信接続が不安定であると判定する。なお、ここでは、NW無線通信方式の無線通信接続の状態を診断する方法の一例としてpingコマンドの実行を挙げたが、この方法に限らず、診断部243は、他の公知の診断技術を用いることにより、無線通信接続の状態を診断してもよい。また、診断部243は、NW無線通信方式の無線通信接続のために現在設定されている設定情報を含む状態情報を生成してもよい。例えば、診断部243は、アクセスポイント300との接続のために用いている設定情報(例えばSSIDとパスワードのいずれか一方又は両方)を含む状態情報を生成してもよいし、無線通信装置200に現在割り当てられているIP(Internet Protocol)アドレスを含む状態情報を生成してもよい。
【0043】
また、診断部243は、無線通信装置200が備える機能であって、他の装置からの要求に応じて提供する機能の状態を診断して状態情報を生成してもよい。本実施の形態では、具体的には、診断部243は、印刷機能の状態を診断してもよい。例えば、診断部243は、印刷部230の異常の有無を判定してもよいし、色材231又は印刷媒体232といった消耗品の不足の程度を診断してもよい。なお、印刷部230の異常は、印刷部230を構成する構成要素の故障であってもよいし、紙詰まりの発生などであってもよい。診断部243は、無線通信装置200が備える公知の診断技術を用いて機能の状態を診断すればよい。例えば、診断部243は、印刷部230の故障を検知するセンサー又は紙詰まりを検知するセンサーからの信号を確認することにより、印刷部230の異常を検知してもよい。また、診断部243は、消耗品の残量を検出するセンサーからの信号を確認することにより、消耗品の不足の程度を診断してもよい。
【0044】
送信制御部244は、NW無線通信方式の無線通信接続又はNAN無線通信方式の無線通信接続を用いた情報の送信を制御する。特に、本実施の形態では、送信制御部244は、NAN無線通信方式の無線通信接続、すなわちNAN接続を用いて、端末装置100に、診断部243が生成した状態情報を送信するよう制御する。例えば、送信制御部244は、状態情報の送信の要求を、NAN接続を介して端末装置100から受信すると、状態情報を端末装置100に送信する制御を行う。送信される状態情報は、端末装置100から状態情報の送信の要求があったことを契機に診断部243により実施された診断の結果を含んでもよいし、診断部243が定期的に行った診断の結果のうちの最新の診断の結果を含んでもよい。
【0045】
送信制御部244は、NAN接続を用いて、状態情報とともに上述した参照情報を端末装置100に送信してもよい。この場合、送信制御部244は、例えば無線通信装置200の記憶部210に予め記憶された参照情報を送信するよう制御する。なお、送信制御部244は、記憶部210が記憶する様々な参照情報のうち、診断部243の診断の結果に対応する参照情報だけを抽出して送信するよう制御してもよい。
【0046】
なお、上述した通り、送信される状態情報は、無線通信装置200の機能に関する状態を示す情報であってもよい。また、無線通信装置200が複数の様々な機能を備える場合、送信制御部244は端末装置100から指定された機能についての状態情報を送信するよう制御してもよい。また、送信制御部244は、機能に関する状態情報として、機能を実行するために無線通信装置200が備える消耗品(例えば、色材231及び印刷媒体232)の残量についての情報を送信するよう制御してもよい。
【0047】
指示情報取得部245は、通信処理部241が確立したNW無線通信方式の無線通信接続又は通信処理部242が確立したNAN接続を用いて、端末装置100から指示情報を取得する。本実施の形態では、具体的には、指示情報取得部245は印刷の実行を指示する指示情報を端末装置100から取得する。指示情報取得部245は、端末装置100からの指示情報を取得した場合、当該指示情報の伝送に用いられた無線通信接続を用いて、当該端末装置100に応答を返す。なお、この応答は、指示情報を受付けたことを通知するパケットであってもよいし、機能の実行結果を示すパケットなどであってもよい。
【0048】
機能実行部246は、無線通信装置200の機能を実行するための処理を行う。具体的には、機能実行部246は、指示情報取得部245が取得した指示情報にしたがって機能を実行する処理を行う。本実施の形態では、機能実行部246は、具体的には、印刷の実行を指示する指示情報にしたがった印刷を、印刷部230を用いて実行する。
【0049】
次に、端末装置100と無線通信装置200のNAN接続を確立するための通信処理部152及び通信処理部242の処理の詳細について説明する。NAN接続を確立するために、まず、端末装置100と無線通信装置200は、NANクラスターを構成する。その後、端末装置100と無線通信装置200は、NAN接続、すなわち、NANデータリンクを構築する。
【0050】
NAN規格では、ディスカバリーウィンドウ(DW:Discovery Window)と呼ばれる期間が規定されている。ディスカバリーウィンドウは、主に、装置がサービスの報知及び検索を行うための間欠的に発生する通信期間であり、所定の周期で到来する。ディスカバリーウィンドウを共有する装置の集合はNANクラスターと呼ばれる。マスター(Master)として動作する装置は、NANクラスターにまだ属していない他の装置に、当該NANクラスターを認識させるためのディスカバリービーコン(Discovery Beacon)を送信する。また、マスターとして動作する装置は、各装置がディスカバリーウィンドウと同期するためのシンクロナイゼーションビーコン(Synchronization Beacon)を送信する。本実施の形態において、端末装置100がマスターとして動作してもよいし、無線通信装置200がマスターとして動作してもよい。
【0051】
NANクラスターを構成する各装置は、ディスカバリーウィンドウ内で信号を送受信することにより、各装置が提供するサービスを確認することができる。具体的には、ディスカバリーウィンドウ内では、サービスディスカバリーフレーム(Service Discovery Frame)と呼ばれるフォーマットのフレームで構成される信号が送信される。
【0052】
NANクラスターを構成する装置は、当該NANクラスターを構成する他の装置と、ディスカバリーウィンドウ期間に限らずに相互通信することが可能なデータリンクを確立することができる。つまり、NANクラスターを構成する装置間で、NAN接続を行うことができる。NAN規格において、上述したデータリンクはNANデータリンクと呼ばれている。
【0053】
端末装置100と無線通信装置200がNAN接続するためには、まず、端末装置100と無線通信装置200がディスカバリーウィンドウを共有する必要がある。ディスカバリーウィンドウを共有するために、端末装置100と無線通信装置200のいずれかがマスターとして動作する。例えば、端末装置100がマスターとして動作する場合、端末装置100の通信処理部152は、ディスカバリービーコン及びシンクロナイゼーションビーコンを端末装置100から送信する処理を行なう。これに対し、無線通信装置200の通信処理部242は、端末装置100から送信されたディスカバリービーコン及びシンクロナイゼーションビーコンに基づいて、ディスカバリーウィンドウに同期する処理、すなわちNANシンクロナイゼーションを行う。
【0054】
端末装置100と無線通信装置200がディスカバリーウィンドウを共有すると、端末装置100の通信処理部152は、NW無線通信方式の無線通信接続を用いて送信された指示情報の送信先の無線通信装置200を、NANクラスター(つまりディスカバリーウィンドウを共有する装置群)の中から特定する。すなわち、通信処理部152は、状態情報を要求すべき装置を特定する。換言すると、通信処理部152は、状態情報を取得するために確立すべきNAN接続の接続対象の装置を特定する。本実施の形態では、通信処理部152は、NW無線通信方式の無線通信接続による指示情報の送信先の無線通信装置200のMAC(Media access Control)アドレスに基づいて、NANクラスターのなかから、NAN接続の接続対象を特定する。これにより、適切にNAN接続の接続対象を特定することができる。なお、このMACアドレスは、例えば、端末装置100と無線通信装置200との間でNW無線通信方式の無線通信接続による通信が正常に行われていた時期に取得され、記憶部110に記憶されている。通信処理部152は、例えば、NANクラスターを構成する装置が送信したサービスディスカバリーフレームに含まれるMACアドレスを確認することにより、NANクラスターを構成する各装置のMACアドレスを確認する。なお、通信処理部152は、他の装置にサービスディスカバリーフレームを送信させるために、各装置のサービスを問い合わせるメッセージを、NANクラスターを構成する各装置に対してブロードキャストしてもよい。
【0055】
端末装置100の通信処理部152がNAN接続の接続対象の無線通信装置200を特定すると、端末装置100の通信処理部152と、無線通信装置200の通信処理部242は、NAN規格にしたがった接続手順にしたがって、NANデータリンクを確立する処理を実行する。以上により、端末装置100と無線通信装置200との間でNAN接続が確立される。
【0056】
次に、端末装置100の動作の流れと無線通信装置200の動作の流れについて説明する。まず、端末装置100の動作の流れについて説明する。図4は、実施の形態にかかる端末装置100の動作の流れの一例を示すフローチャートである。以下、図4を参照しつつ、動作の流れについて説明する。なお、以下で説明する動作に先だって、端末装置100はNW無線通信方式の無線通信接続を正常に確立しているものとする。
【0057】
ステップS100において、入力受付部153は、ユーザーから、無線通信装置200の機能の実行の指示を受付ける。本実施の形態では、入力受付部153は、具体的には、印刷指示を受付ける。
【0058】
次に、ステップS101において、端末装置100の送信制御部154は、NW無線通信方式の無線通信接続を用いて、ステップS100で受付けられた指示に対応する指示情報を無線通信装置200に送信するよう制御する。送信制御部154は、例えば、入力受付部153で指定された無線通信装置200に指示情報を送信するよう制御するが、所定の無線通信装置200に指示情報を送信してもよい。NW無線通信方式の無線通信接続による指示情報の送信先とされる無線通信装置200は、例えば、過去に、端末装置100との、NW無線通信方式の無線通信接続による通信に成功したことがある無線通信装置200である。ただし、NW無線通信方式の無線通信接続による指示情報の送信先とされる無線通信装置200は、IPアドレスが予め特定されている装置であればよく、必ずしも、過去に、端末装置100との、NW無線通信方式の無線通信接続による通信に成功したことがある無線通信装置200でなくてもよい。
【0059】
ステップS101で送信された指示情報に対して、送信先の無線通信装置200から応答があった場合(ステップS102でYES)、指示情報が正常に伝送されているため、端末装置100の処理は終了する。これに対し、無線通信装置200から応答がない場合(ステップS102でNO)、処理はステップS103へ移行する。
【0060】
例えば、次のようなケースの場合、無線通信装置200からの応答は得られない。例えば、アクセスポイント300が交換されたにもかかわらず、新たなアクセスポイント300と無線通信接続するための設定が無線通信装置200において行われていない場合には、端末装置100は、以前は正常に通信可能であった無線通信装置200とはもはや通信できないため、応答が得られない。また、アクセスポイント300と無線通信装置200の相対的な位置関係を変更するなどして、アクセスポイント300と無線通信装置200の電波環境が変化した場合にも、端末装置100は、無線通信装置200と正常に通信できなくなる恐れがある。また、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバーなどによって、無線通信装置200のIPアドレスが更新されたにもかかわらず、端末装置100が、無線通信装置200の更新前のIPアドレスを用いて指示情報を送信した場合も、無線通信装置200からの応答は得られない。なお、無線通信装置200からの応答が得られないケースについて例示したが、これらは例示に過ぎず、上述したケース以外のケースで、処理がステップS103へ移行してもよい。
【0061】
ステップS103において、端末装置100の通信処理部152は、無線通信装置200とNAN接続を確立する。なお、上述した通り、NAN接続を確立するために、通信処理部152は、NAN規格にしたがった処理を実行し、端末装置100をNANクラスターに所属させる。その後、通信処理部152は、ステップS101における指示情報の送信先である無線通信装置200を、NANクラスターを構成する装置のなかから特定し、NAN接続を確立する。
【0062】
次に、ステップS104において、状態情報取得部155は、ステップS103で確立されたNAN接続を介して、無線通信装置200に対して、状態情報の送信を要求する。そして、ステップS105において、状態情報取得部155は、ステップS103で確立されたNAN接続を介して、無線通信装置200から状態情報を取得する。なお、上述した通り、本ステップにおいて、状態情報取得部155は、NAN接続を介して、無線通信装置200からさらに参照情報を取得しうる。
【0063】
次に、ステップS106において、表示制御部156は、ステップS105で取得した状態情報を表示部130に表示するよう制御する。また、ステップS105において参照情報も取得された場合には、表示制御部156は、当該参照情報も表示部130に表示するよう制御する。また、上述した通り、表示制御部156は、無線通信装置200から取得した参照情報ではなく、記憶部110に予め記憶された参照情報であって、取得された状態情報で示される無線通信装置200の状態に対応する参照情報を表示部130に表示するよう制御してもよい。
【0064】
そして、ステップS105で取得された状態情報が、指示情報で実行が指示された機能の異常を示さない場合には(ステップS107でNO)、処理はステップS108へ移行する。これに対し、状態情報が、指示情報で実行が指示された機能の異常を示す場合には(ステップS107でYES)、NAN接続で指示情報の送信が行われても機能の実行はできないため、処理は終了する。
【0065】
ステップS108において、端末装置100の送信制御部154は、ステップS101において送信対象とされた指示情報を、ステップS103で確立されたNAN接続を用いて、無線通信装置200に送信し直す。これにより、無線通信装置200において、印刷が実行される。
【0066】
次に、無線通信装置200においてNW無線通信方式の無線通信接続に問題が発生している場合の無線通信装置200の動作の流れについて説明する。図5は、実施の形態にかかる無線通信装置200の動作の流れの一例を示すフローチャートである。
【0067】
ステップS200は、図4におけるステップS103と対応するステップであり、本ステップにおいて、無線通信装置200の通信処理部242は、端末装置100とNAN接続を確立する。
【0068】
次のステップS201は、図4におけるステップS104と対応するステップであり、本ステップにおいて、無線通信装置200は、NAN接続を介して端末装置100から状態情報の送信要求を受信する。
【0069】
次に、ステップS202において、診断部243は、無線通信装置200の状態を診断し、状態情報を生成する。なお、本フローチャートでは、診断部243は、状態情報の送信要求を受信した後に診断及び状態情報の生成を行っているが、診断部243は、状態情報の送信要求を受信する前に、診断及び状態情報の生成を行ってもよい。
【0070】
次に、ステップS203において、無線通信装置200の送信制御部244は、ステップS200で確立されたNAN接続を用いて、端末装置100に、ステップS202で生成された状態情報を送信するよう制御する。なお、上述した通り、送信制御部244は、NAN接続を用いて、状態情報とともに、状態情報が示す無線通信装置200の状態に対応する参照情報を端末装置100に送信するよう制御してもよい。
【0071】
そして、端末装置100がNAN接続を用いて指示情報の送信を行った場合(すなわち、図4のステップS108の処理が行われた場合)、無線通信装置200は以下で述べるステップS204及びステップS205の処理を行う。
【0072】
ステップS204において、無線通信装置200の指示情報取得部245は、ステップS200で確立されたNAN接続を介して、端末装置100から指示情報を取得する。そして、ステップS205において、機能実行部246は、ステップS204で取得した指示情報にしたがって機能を実行する処理を行う。すなわち、機能実行部246は、指示情報にしたがった印刷を、印刷部230を用いて実行する。
【0073】
以上、実施の形態について説明した。本実施の形態によれば、NW無線通信方式の無線通信接続を用いて送信された指示情報に対して応答がない場合、NAN接続を用いて、状態情報が伝送される。このため、端末装置100がNW無線通信方式の無線通信接続を用いて無線通信装置200と通信できない場合であっても、端末装置100は無線通信装置200の状態を確認することができる。
【0074】
以上、実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0075】
また、上述の例において、プログラムは、コンピューターに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピューターに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピューター可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピューター可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリー、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリー技術、CD-ROM、digital versatile disk(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピューター可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピューター可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0076】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
(付記1)
第1の無線通信方式の無線通信接続を確立する第1の通信処理部と、
前記第1の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて、無線通信装置に、当該無線通信装置が有する機能の実行を指示する指示情報を送信するよう制御する送信制御部と、
NAN(Neighbor Awareness Network)規格にしたがった通信方式であり前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式の無線通信接続を、前記無線通信装置との間で確立する第2の通信処理部と、
前記指示情報に対する応答がない場合に、前記第2の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて、前記無線通信装置から前記無線通信装置の状態を示す状態情報を取得する状態情報取得部と
を有する端末装置。
(付記2)
前記状態情報を表示するよう制御する表示制御部をさらに有する
付記1に記載の端末装置。
(付記3)
前記状態情報は、前記無線通信装置の前記第1の無線通信方式の無線通信接続の状態についての前記無線通信装置による診断の結果を示す情報を含む
付記1又は2に記載の端末装置。
(付記4)
前記状態情報は、前記無線通信装置の前記第1の無線通信方式の無線通信接続の状態についての前記無線通信装置による診断の結果を示す情報を含み、
前記状態情報取得部は、さらに、前記診断の結果とともに、前記無線通信装置の前記第1の無線通信方式の前記無線通信接続の不良を解消するためにユーザーが参照すべき情報である参照情報を、前記第2の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて、前記無線通信装置から取得し、
前記表示制御部は、さらに、前記参照情報を表示するよう制御する
付記2に記載の端末装置。
(付記5)
前記状態情報は、前記無線通信装置の前記第1の無線通信方式の無線通信接続の状態についての前記無線通信装置による診断の結果を示す情報を含み、
前記端末装置は、前記無線通信装置の前記第1の無線通信方式の前記無線通信接続の不良を解消するためにユーザーが参照すべき情報である参照情報を記憶する記憶部を有し、
前記表示制御部は、さらに、前記診断の結果に対応する前記参照情報を表示するよう制御する
付記2に記載の端末装置。
(付記6)
前記送信制御部は、さらに、前記指示情報に対する応答がない場合、前記第2の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて前記無線通信装置に前記指示情報を送信するよう制御する
付記1から5のいずれか一項に記載の端末装置。
(付記7)
前記状態情報は、前記無線通信装置の前記機能に関する状態を示す情報を含み、
前記送信制御部は、前記状態情報が前記機能の異常を示す場合には、前記第2の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて前記無線通信装置に前記指示情報を送信しないよう制御する
付記6に記載の端末装置。
(付記8)
前記状態情報は、前記機能を実行するために前記無線通信装置が備える消耗品の残量についての情報を含み、
前記表示制御部は、さらに、前記状態情報が前記消耗品の不足を示す場合には、前記消耗品の不足を通知する警告を表示するよう制御する
付記2に記載の端末装置。
(付記9)
前記第2の通信処理部は、前記指示情報の送信先の前記無線通信装置のMAC(Media access Control)アドレスに基づいて、前記第2の無線通信方式の前記無線通信接続の接続対象を特定する
付記1から8のいずれか一項に記載の端末装置。
(付記10)
第1の無線通信方式の無線通信接続を用いて、無線通信装置に、当該無線通信装置が有する機能の実行を指示する指示情報を送信するよう制御し、
NAN規格にしたがった通信方式であり前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式の無線通信接続を、前記無線通信装置との間で確立し、
前記指示情報に対する応答がない場合に、前記第2の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて、前記無線通信装置から前記無線通信装置の状態を示す状態情報を取得する
端末装置の制御方法。
(付記11)
第1の無線通信方式の無線通信接続を確立する第1の通信処理ステップと、
前記第1の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて、無線通信装置に、当該無線通信装置が有する機能の実行を指示する指示情報を送信するよう制御する送信制御ステップと、
NAN規格にしたがった通信方式であり前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式の無線通信接続を、前記無線通信装置との間で確立する第2の通信処理ステップと、
前記指示情報に対する応答がない場合に、前記第2の無線通信方式の前記無線通信接続を用いて、前記無線通信装置から前記無線通信装置の状態を示す状態情報を取得する状態情報取得ステップと
をコンピューターに実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0077】
10…通信システム、100…端末装置、110…記憶部、120…無線通信部、130…表示部、140…操作部、150…制御部、151…通信処理部、152…通信処理部、153…入力受付部、154…送信制御部、155…状態情報取得部、156…表示制御部、200…無線通信装置、210…記憶部、220…無線通信部、230…印刷部、231…色材、232…印刷媒体、240…制御部、241…通信処理部、242…通信処理部、243…診断部、244…送信制御部、245…指示情報取得部、246…機能実行部、300…アクセスポイント
図1
図2
図3
図4
図5