(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014025
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ステアリングハンドル
(51)【国際特許分類】
B62D 1/02 20060101AFI20240125BHJP
G05G 1/01 20080401ALI20240125BHJP
G05G 1/04 20060101ALI20240125BHJP
G05G 1/10 20060101ALI20240125BHJP
B60T 7/02 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B62D1/02
G05G1/01 Z
G05G1/04 Z
G05G1/10 A
B60T7/02 A
B60T7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116562
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】森田 文平
(72)【発明者】
【氏名】水戸 雅人
(72)【発明者】
【氏名】岡下 隆一
(72)【発明者】
【氏名】船津 基也
【テーマコード(参考)】
3D030
3D124
3J070
【Fターム(参考)】
3D030DB13
3D124AA24
3D124BB01
3D124CC31
3D124DD30
3D124DD67
3J070AA03
3J070AA13
3J070BA31
3J070CA07
3J070CA43
3J070CB01
3J070CC02
3J070DA01
(57)【要約】
【課題】操作性が良好で、かつ、操作状態を安定して維持可能なステアリングハンドルを提供すること。
【解決手段】ボス部5と、把持部10と、ボス部と把持部との間の領域に配置される操作レバー部50Rと、を備えるステアリングハンドル1。操作レバー部が、ボス部側に設けられる回転軸部43Rにより軸支されて、把持部の把持時に、上方へ持ち上げるような引上操作を可能に、構成される。操作レバー部が、回転操舵中心軸に略沿って延びるように形成されて、下端を、把持部の下端面13bより下方に位置させるように構成されて、下端側において回転操舵中心軸に略沿うように配置されるボス部側の面から下端面にかけて、引上操作面78Rとして構成される引上操作部75Rを備えるとともに、引上操作部を、把持部側に接近させるように引上操作可能に、回転軸部に軸支されている。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転操舵中心側に配置されるボス部と、該ボス部の周囲に配置されて回転操舵時に把持する把持部と、前記ボス部と前記把持部との間の領域に配置される操作レバー部と、を備える構成のステアリングハンドルであって、
該操作レバー部が、前記ボス部側に設けられる回転軸部により軸支されて、前記把持部の把持時に、上方へ持ち上げるような引上操作を可能として、アクセル操作若しくはブレーキ操作を入力させる構成とされて、
前記操作レバー部が、
前記回転操舵中心軸に略沿って延びるように形成されて、下端を、前記把持部の下端面より下方に位置させるように構成されて、下端側において前記回転操舵中心軸に略沿うように配置される前記ボス部側の面から下端面にかけて、引上操作面として構成される引上操作部を備えるとともに、
前記引上操作部を、前記把持部側に接近させるように引上操作可能に、前記回転軸部に軸支されていることを特徴とするステアリングハンドル。
【請求項2】
前記引上操作部が、前記回転操舵中心軸に略沿うような略板状として、下端側に、前記把持部側に向けつつ突出させるような湾曲部を、配設させていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングハンドル。
【請求項3】
前記把持部が、略四角環状として、直進操舵時に前後方向に略沿うように配置されるメイン把持領域を、備える構成とされ、
前記引上操作部が、前記メイン把持領域に略沿って前後に延びるように、前記メイン把持領域の前後の略全域にわたって配設されるとともに、前端側に、前記ボス部側に向かって延びるような延設部を、配設させていることを特徴とする請求項2に記載のステアリングハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転操舵中心側に配置されるボス部と、ボス部の周囲に配置されて回転操舵時に把持する把持部と、ボス部と把持部との間の領域に配置される操作レバー部と、を備える構成のステアリングハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリングハンドルとしては、ボス部と把持部との間に、アクセル操作若しくはブレーキ操作を入力可能な操作レバー部を、配設させる構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。この従来のステアリングハンドルでは、操作レバー部は、ボス部側に設けられる回転軸部によって軸支されるもので、先端側となる把持部側に設けられるレバー本体を、把持部を把持している手の親指以外の指(人差し指や中指等)によって引き上げるように操作可能とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6229221号公報(
図11,12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のステアリングハンドルでは、レバー本体は、把持部における上面に略沿うような平板状とされていることから、操作時に指を安定してかけられない場合があった。また、通常、アクセル操作やブレーキ操作は、操作後瞬時に手を離すものではなく、操作状態(指によって引き上げた状態)を所定の時間維持する必要があることから、従来の単なる平板状のレバー本体では、引き上げ状態を安定して維持し難かった。すなわち、従来のステアリングハンドルでは、操作性を良好とし、かつ、操作状態を安定して維持する点に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、操作性が良好で、かつ、操作状態を安定して維持可能なステアリングハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るステアリングハンドルは、回転操舵中心側に配置されるボス部と、ボス部の周囲に配置されて回転操舵時に把持する把持部と、ボス部と把持部との間の領域に配置される操作レバー部と、を備える構成のステアリングハンドルであって、
操作レバー部が、ボス部側に設けられる回転軸部により軸支されて、把持部の把持時に、上方へ持ち上げるような引上操作を可能として、アクセル操作若しくはブレーキ操作を入力させる構成とされて、
操作レバー部が、
回転操舵中心軸に略沿って延びるように形成されて、下端を、把持部の下端面より下方に位置させるように構成されて、下端側において回転操舵中心軸に略沿うように配置されるボス部側の面から下端面にかけて、引上操作面として構成される引上操作部を備えるとともに、
引上操作部を、把持部側に接近させるように引上操作可能に、回転軸部に軸支されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のステアリングハンドルでは、操作レバー部において回転操舵中心軸に略沿って延びるように形成される引上操作部が、把持部の下端面より下方に位置する下端側の部位に、引上操作面を配設させる構成とされており、引上操作面は、回転操舵中心軸に略沿うように配置されるボス部側の面から下端面にかけての部位から構成されている。そのため、把持部を把持している運転者の手における人差し指や中指等の指を、引上操作面に押し当てつつ、引上操作部を、把持部側に接近させるように、手前(把持部側)に引けば、操作レバー部を上方に持ち上げるように操作することができる。すなわち、本発明のステアリングハンドルでは、引上操作部に対して、指先を引っ掛け、その指先の引っ掛けた状態を維持するように手前に引くようにして、操作レバー部を操作できることから、操作性が良好であり、また、この引上操作部の引き上げ状態も、所定時間、安定して維持することができて、ブレーキ操作若しくはアクセル操作を、安定して行うことができる。
【0008】
したがって、本発明のステアリングハンドルでは、操作性が良好であり、かつ、操作状態を安定して維持可能である。
【0009】
また、本発明のステアリングハンドルにおいて、引上操作部を、回転操舵中心軸に略沿うような略板状として、下端側に、把持部側に向けつつ突出させるような湾曲部を、配設させる構成とすれば、把持部を把持している指を引上操作面に当接させる際に、引上操作部の下端側が指に食い込まず、操作時の触感を良好とすることができて、好ましい。また、湾曲部を配設させることにより、湾曲部の端縁と引上操作部における把持部側の面との間にスペースが生じるような態様となり、把持部に接近させるような引上操作時における引上ストロークを、湾曲部を設けない場合と比較して、大きく確保することができる。
【0010】
さらに、上記構成のステアリングハンドルにおいて、把持部を、略四角環状として、直進操舵時に前後方向に略沿うように配置されるメイン把持領域を備える構成とし、
引上操作部を、メイン把持領域に略沿って前後に延びるように、メイン把持領域の前後の略全域にわたって配設させるとともに、前端側に、ボス部側に向かって延びるような延設部を配設させる構成とすることが、好ましい。
【0011】
ステアリングハンドルを上記構成とすれば、引上操作部、すなわち、操作レバー部が、直進操舵時の把持部の前後の略全域にわたるように、前後で広く配設されていることから、メイン把持領域の把持位置にかかわらず、引上操作部を、安定して操作することができる。また、引上操作部の前端側には、ボス部側に向かって延びるような延設部が、形成されていることから、この延設部が、把持部を把持している手の指先と接触することにより、引上操作部から手が離れるような手のさらなる前方移動を規制するストッパとして作用することとなり、引上操作部を安定して操作することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態であるステアリングハンドルの平面図である。
【
図2】実施形態のステアリングハンドルの斜視図である。
【
図3】実施形態のステアリングハンドルの右側面図である。
【
図4】実施形態のステアリングハンドルにおいて、パッドとロアカバーとを除いた状態の前下方から見た概略斜視図である。
【
図5】実施形態のステアリングハンドルにおいて、パッドとロアカバーとを除いた状態の概略平面図である。
【
図6】実施形態のステアリングハンドルにおける左右方向に沿った概略縦断面図である。
【
図7】実施形態のステアリングハンドルにおいて、右側の操作レバー部付近を示す部分拡大縦断面図である。
【
図8】実施形態のステアリングハンドルにおいて使用されるリンク機構の概略斜視図である。
【
図9】実施形態のステアリングハンドルにおいて使用される操作レバー部の概略斜視図である。
【
図11】実施形態のステアリングハンドルにおいて、操作レバー部の押下操作の状態を示す部分拡大縦断面図である。
【
図12】実施形態のステアリングハンドルにおいて、操作レバー部の引上操作の状態を示す部分拡大縦断面図である。
【
図13】実施形態のステアリングハンドルにおいて、操作レバー部を押し下げる状態を説明する概略縦断面図である。
【
図14】実施形態のステアリングハンドルにおいて、操作レバー部を引き上げる状態を説明する概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態のステアリングハンドル1は、
図1~3に示すように、回転操舵中心軸C1側に配置されるボス部5と、ボス部5の周囲に配置されて回転操舵時に把持する把持部10と、ボス部5と把持部10との間の領域に配置される操作レバー部50L,50Rと、を備えている。実施形態のステアリングハンドル1では、
図1に示すように、把持部10は、直進操舵状態において、左右に幅広とした略四角環状とされており、操作レバー部50L,50Rは、左右一対として、ボス部5の右方と左方とに、配設されている。また、実施形態のステアリングハンドル1では、この左右一対の操作レバー部50L,50Rは、ボス部5内に配置されるリンク機構25によって、回転操作を同期される構成である。実施形態のステアリングハンドル1では、上下方向側から見た状態において、各操作レバー部50L,50Rは、
図1,2に示すように、ボス部5の上面側に配置される後述するパッド6と、把持部10(後述するメイン把持領域13L,13R)と、の間の隙間を埋めるように、前後に広く配設されている。すなわち、実施形態のステアリングハンドル1では、把持部10におけるメイン把持領域13L,13Rと操作レバー部50L,50Rとの間に運転者の指等を進入できる構成ではなく、把持部10における後述する後側部位10c(ハンドレスト部16)とパッド6との間の隙間のみに、運転者の手(指)を進入させることが可能な構成である(
図1参照)。
【0014】
また、実施形態のステアリングハンドル1は、ボス部5と把持部10とを相互に連結するように配置される芯材3を、有している。芯材3は、アルミニウム合金等からなる板金製とされるもので、
図1,3に示すように、把持部10の領域に配置される把持部側芯材3aと、ボス部5の領域に配置されるボス部側芯材3bと、把持部側芯材3aとボス部側芯材3bとを連結する連結部材3cと、を備えている。実施形態の場合、連結部材3cは、ボス部側芯材3bの後縁側と把持部側芯材3aの後側の領域とを連結するように、左右方向側の2箇所に、配設されている(
図1,4参照)。
【0015】
なお、本明細書では、前後,上下,左右の方向は、特に断らない限り、車両に搭載させた状態のステアリングハンドル1の直進操舵状態を基準として、把持部10の回転操舵中心軸C1(
図6参照)に沿った方向を上下方向とし、回転操舵中心軸C1と直交して車両の前後方向に略沿う方向を前後方向とし、回転操舵中心軸C1と直交して車両の左右方向に略沿う方向を左右方向としている。
【0016】
ボス部5は、
図1,6に示すように、芯材3におけるボス部側芯材3bと、ボス部側芯材3bの上方を覆う合成樹脂製のパッド6と、ボス部側芯材3bの側方と下方とを覆う合成樹脂製のロアカバー7と、を備えている。ロアカバー7は、図符号を付した説明を省略するが、ボス部側芯材3bと把持部側芯材3aとを連結する2つの連結部材3c,3cの周囲も、略全面にわたって覆うように構成されている(
図1参照)。ボス部側芯材3bは、略平板状として、ボス部5の下端近傍に配置されている(
図4~6参照)。ボス部側芯材3bの中央付近には、図示しないステアリングシャフトとの連結部位となるボス3baが、配設されている。また、ボス部5において、ボス部側芯材3bとパッド6との間における後述する台座部40L,40R間の領域には、図示しないエアバッグ装置が、収納されている。また、実施形態のステアリングハンドル1では、パッド6は、略全域にわたって、把持部10における把持面(具体的には、メイン把持領域13L,13Rにおける回転操舵中心軸C1と略直交するような上面13a)よりも上方となる位置に、配置されている(
図6参照)。すなわち、パッド6の上面6aは、把持面13aよりも上方に位置している。
【0017】
把持部10は、直進操舵状態において左右に幅広とした略四角環状とされており、詳細には、平面視における前側中央の部位の外側を、上側から前側を経て下側にかけて、パッド6とロアカバー7とによって、覆われている(
図1~3参照)。把持部10は、略四角環状とされる把持部側芯材3aの周囲に、クッション性を有した軟質合成樹脂製の被覆層11を、配設させて構成されている。把持部側芯材3aは、長尺の板状として、実施形態の場合、幅方向を、回転操舵中心軸C1と略直交させるように(すなわち、幅方向を、把持面13aに略沿わせるように)、配置されている(
図6,7参照)。被覆層11は、発泡ポリウレタン等の軟質発泡材から形成されている。把持部10は、直進操舵状態において、略左右対称形とされている。
【0018】
把持部10は、直進操舵状態において前後方向に略沿って配設される左側部位10aと右側部位10bとを、操舵時に主に把持するメイン把持領域13L,13Rとして、構成されている。メイン把持領域13L,13Rは、略左右対称形とされるとともに、断面略楕円形状として構成されている(
図1,5,6参照)。メイン把持領域13L,13Rの下端面13b側には、
図6,7に示すように、上方に向かって僅かに凹ませるような凹部14L,14Rが、形成されている。この凹部14L,14Rは、詳細な図示は省略するが、メイン把持領域13L,13Rの略全域にわたって連続的に形成されるもので、操作レバー部50L,50Rの非操作状態あるいは押下操作の状態(非引上操作状態)でメイン把持領域13L,13Rを把持している運転者の手MHにおいて、親指以外の4本の指MFの指先Faを当てるための部位である(
図7の二点鎖線参照)。詳細には、凹部14L,14Rは、メイン把持領域13L,13Rの内側にかけて上向きで傾斜するように(メイン把持領域13L,13Rにおける内側の領域の凹み量を大きくするように)、形成されている。このような凹部14L,14Rを設けることにより、メイン把持領域13L,13Rを把持している手MHの指先Faの位置を安定させることができて、把持状態を安定させることができる。各メイン把持領域13L,13Rは、上下方向側から見た状態において、前後の中央付近(詳細には、前後の中央よりやや後側となる位置)を、左右の外方に位置させるように、湾曲して形成されている。
【0019】
把持部10において、直進操舵時の後端側において左右方向に略沿って配設される後側部位10cは、車両停止時等において、把持部10(メイン把持領域13L,13R等)から離した手を置いて休めるためのハンドレスト部16を構成するもので、メイン把持領域13L,13Rよりも上下で幅広として(メイン把持領域13L,13Rよりも上方に突出するように形成されて、
図3参照)、
図2に示すように、前面16a側を、手を休ませやすいように、平面状としている。ハンドレスト部16の左右の略中央には、上端側から部分的に凹ませるような凹部17が、形成されている。把持部10における直進操舵時の前端側において、パッド6の左方と右方(各メイン把持領域13L,13Rの前端とパッド6との間)に配設される左前側部位10d,右前側部位10eには、
図1,2に示すように、上面側を凹ませるような凹部19L,19Rが、形成されている。具体的には、各凹部19L,19Rは、メイン把持領域13L,13Rに隣接した部位に、形成されている。この凹部19L,19Rは、各左前側部位10d,右前側部位10eにおける後面から上面を経て全面にかけて連続的に形成されるもので、この凹部19L,19Rには、詳細な図示は省略するが、メイン把持領域13L,13Rにおける前側の部位を把持している場合に、親指を収納することができる。
【0020】
操作レバー部50L,50Rは、ボス部5側に設けられる回転軸部43L,43Rに軸支されて、把持部10(メイン把持領域13L,13R)の把持時に、下方に押し込むような押下操作と、上方に持ち上げるような引上操作と、の2つの操作を可能として、アクセル操作とブレーキ操作とを入力させる構成とされている。実施形態のステアリングハンドル1では、押下操作時にアクセル操作を入力させ、引上操作時にブレーキ操作を入力させる構成である。詳細に後述するが、操作レバー部50L,50Rは、メイン把持領域13L,13Rを把持している運転者の手MHの親指MT側の領域によって押し下げられ、親指MT以外の他の指MF側の領域によって引き上げられるように、構成されている。操作レバー部50L,50Rの非操作状態あるいは引上操作の状態(すなわち、非押下操作状態)では、
図1の二点鎖線に示すように、親指MTは、メイン把持領域13L,13Rの上面13a側に押し当てられることとなり、操作レバー部50L,50Rの非操作状態あるいは押下操作の状態(すなわち、非引上操作状態)では、
図7の二点鎖線に示すように、親指MT以外の他の指MFの指先Faは、メイン把持領域13L,13Rの下端面13b側(凹部14L,14R内)に押し当てられることとなる。
【0021】
また、実施形態のステアリングハンドル1では、左右の操作レバー部50L,50Rは、リンク機構25により回転動作を同期される構成であり、例えば、一方の操作レバー部50Rを、メイン把持領域13Rを把持しつつ引上操作すれば、他方の操作レバー部50Lは、手が離れた状態であっても、上方に持ち上げられるように回転することとなる。左右の操作レバー部50L,50Rの回転動作を同期可能なリンク機構25は、
図4~6に示すように、ボス部5における前端側の領域内に配設されるもので、操作レバー部50L,50Rを取り付ける後述する台座部40L,40Rに取り付けられる取付ブラケット34に、取り付けられている。取付ブラケット34は、台座部40L,40Rの前面側において台座部40L,40R間を連結するように、上下方向に略沿って配設されている(
図4,6参照)。
【0022】
リンク機構25は、
図4,8に示すように、カムユニット26と、カムユニット26から延びて操作レバー部50L,50R側に連結される一対のリンク36L,36Rと、リンク36L,36Rと操作レバー部50L,50Rとを連結させる連結杆37L,37Rと、を備えるもので、実施形態の場合、把持面13aよりも下方となる位置に、配設されている。カムユニット26は、回転操舵中心軸C1に略直交しつつ略前後方向に沿うように配置される回転軸部32に軸支されて、取付ブラケット34に連結されている。取付ブラケット34には、回転軸部32を挿入可能な挿入用筒部34aが、前方に突出するように、形成されている(
図4,8参照)。カムユニット26は、カム部材27と、プッシャ28と、カムホルダ29と、を備えている。プッシャ28は、回転軸部32に対して回動不能に取り付けられるもので、内部に、図示しない圧縮コイルばねを、配設させている。カム部材27とカムホルダ29とは、回転軸部32に対して回動自在とされている。カムホルダ29は、カム部材27とリンク36L,36Rとを連結させるもので、カム部材27と一体的に回転軸部32に対して回転可能とされている。実施形態の場合、カムホルダ29は、中央付近を、回転軸部32に軸支されている。
【0023】
一対のリンク36L,36Rは、各操作レバー部50L,50Rに対応して配設されるもので、一端(端部36a)側を、中央付近を回転軸部32に軸支されるカムホルダ29の長手方向の端部29a,29b側に連結されて、回転軸部32を中心として点対称的に左方あるいは右方に延びるように配置されている(
図6,8参照)。リンク36L,36Rと操作レバー部50L,50Rとを連結させる連結杆37L,37Rは、リンク36L,36Rの他端(端部36b)側から後方に延びるように配置されるもので、端部37a側を、操作レバー部50L,50Rにおける後述する取付基材51L,51Rに形成される連結片57L,57Rの下端57a側に連結される構成である(
図4,6参照)。カムホルダ29は、操作レバー部50L,50Rの非操作状態(中立状態)においては、長手方向を上下方向に略沿わせるように配置されるもので、このとき、リンク36L,36Rは、カムホルダ29の上下方向側の端部29a,29b(回転軸部32の上方と下方と)から延びるような構成とされている(
図6参照)。
【0024】
そして、例えば、
図11に示すような操作レバー部50Rの押下操作時には、操作レバー部50Rの回転に伴って、リンク36Rが移動し、カムホルダ29が、カム部材27とともに、回転軸部32を中心として左方に向かって回転することとなる。このとき、仮に、右側の操作レバー部50Rのみを押下操作した場合にも、カムホルダ29の回転移動に伴って、左側の操作レバー部50Lを連結させているリンク36Lも右方に向かうように移動することから、左側の操作レバー部50Lも、同期して、押し下げられることとなる。この押下操作時には、カム部材27の回転移動に伴って、プッシャ28の内部に配置される図示しない圧縮コイルばねが、圧縮されることとなる。逆に、
図12に示すような操作レバー部50Rの引上操作時には、操作レバー部50Rの回転に伴うリンク36Rの移動によって、カムホルダ29が、カム部材27とともに、回転軸部32を中心として右方に向かって回転することとなり、このとき、仮に、右側の操作レバー部50Rのみを引上操作した場合にも、カムホルダ29の回転移動に伴って左側の操作レバー部50Lを連結させているリンク36Lも左方に向かうように移動することから、左側の操作レバー部50Lも、同期して、引き上げられることとなる。この引上操作時においても、カム部材27の回転移動に伴って、プッシャ28の内部に配置される図示しない圧縮コイルばねが、圧縮されることとなる。このような操作レバー部50L,50Rの操作状態(押下操作と引上操作)は、手を離せば、非操作状態に復元されることとなる。このとき、プッシャ28の内部に収納される圧縮コイルばねの復元により、カム部材27とカムホルダ29とが、中立状態に復帰するように回転移動することとなる。
【0025】
操作レバー部50L,50Rは、ボス部5内に配置される台座部40L,40Rに取り付けられるもので、取付基材51L,51Rと、レバー本体60L,60Rと、を備えている。なお、実施形態では、右側に配置される操作レバー部50Rと台座部40Rとを例に採り、詳細に説明をする。左側の操作レバー部50L,台座部40Lは、右側の操作レバー部50R,台座部40Rと略左右対称形とされていることから、同一の図符号の末尾に「L」を付して、詳細な説明を省略する。
【0026】
操作レバー部50Rを取り付ける台座部40Rは、金属製として、ボス部側芯材3bから上方に延びるように形成されるもので、詳細には、ボス3baの右方において、前後方向に略沿うように配置されて、上端側に、メイン把持領域13R側(右側、左右の外方)に突出する取付部41Rを、有している(
図5~7参照)。取付部41Rは、実施形態の場合、上面41aを、把持面13aと略一致した位置に配置させるように、構成されている(
図7参照)。取付部41Rには、操作レバー部50Rを軸支させる回転軸部43Rが、配設されている。回転軸部43Rは、操作レバー部50Rにおける取付基材51Rに形成される軸受部54Rに挿通されて操作レバー部50Rを軸支するもので、実施形態の場合、把持面13aに略沿いつつ、前後方向に略沿うように、配設されている(
図5,7参照)。すなわち、回転軸部43Rは、ボス部5の領域内に、配設されている。この回転軸部43Rは、詳細には、把持面13aより僅かに下方となる位置に配置されるもので、換言すれば、パッド6に覆われるようにして、把持部10(具体的には、メイン把持領域13R)の上下の略中央よりも上側となる位置に、配置されている。具体的には、回転軸部43Rは、軸芯C2を、メイン把持領域13Rの上下の幅寸法において上から1/6程度となる位置に、配置させている(
図7参照)。取付部41Rにおける回転軸部43Rよりも元部側(左側であって、左右方向の中央側)には、操作レバー部50Rの操作時の回転角度を規制するストッパ45Rが、配設されている。ストッパ45Rは、回転軸部43Rに軸支されている取付基材51Rにおける後述する横杆部53Rの先端53a側において上下方向側で先細り形状とされている先端部55Rの上方と下方とを覆うように配設されるもので、この先端部55Rの上面55a若しくは下面55bをそれぞれ当接可能な上側当接面45a,下側当接面45bを、備えている(
図7,11,12参照)。上側当接面45a及び下側当接面45bは、先細り状の先端部55Rの上面55a,下面55bに広い面で当接可能に、それぞれ、傾斜して形成されている。
【0027】
操作レバー部50Rにおける取付基材51Rは、金属製とされて、上下方向側から見て略逆L字形状とされるもので、前後方向に略沿って配置される縦杆部52Rと、縦杆部52Rの後端から左方(左右の中央側)に突出するように左右方向に略沿って配置される横杆部53Rと、を有する構成とされている(
図9参照)。縦杆部52Rは、レバー本体60Rにおける前側の領域内に配置されるもので、具体的には、レバー本体60Rの押下操作部61Rにおいて、後述する突出端60aよりも前側の領域内に、配置されている。縦杆部52Rの後端から延びる横杆部53Rは、レバー本体60Rの前後の中央付近から左方(左右の中央側)に突出するもので、具体的には、レバー本体60Rにおける突出端60a近傍部位から左方に突出するように、配置されている。横杆部53Rの先端53a側には、回転軸部43Rを挿通可能に貫通して形成される軸受部54Rが、形成されている。横杆部53Rにおいて、軸受部54Rよりも先端53a側となる先端部55Rは、上述したごとく、上下方向側で先細り形状とされており、この先端部55Rの上面55a及び下面55bを、それぞれ、台座部40Rに設けられるストッパ45Rに当接可能な構成とされている。また、横杆部53Rの先端53a側には、軸受部54Rの略直下の領域において、下方に延びるような連結片57Rが、形成されており、連結片57Rの下端57a側には、軸受部54Rの略直下となる位置で、上述したごとく、連結杆37Rの端部37aが、連結されている(
図4,7参照)。
【0028】
レバー本体60Rは、合成樹脂製とされるもので、実施形態の場合、ステアリングハンドル1を上下方向側から見た状態で、パッド6と、把持部10におけるメイン把持領域13Rと、の間の隙間を略埋めるように配置されている。詳細には、レバー本体60Rは、上下方向側から見た状態で、メイン把持領域13Rに略沿って前後に延びるように、メイン把持領域13Rの前後の略全域にわたって、配設される構成である(
図1,2参照)。さらに詳細には、レバー本体60Rは、メイン把持領域13Rの湾曲形状に略沿うように、上下方向側から見た状態で、前後の中間部位(詳細には前後の中央よりやや後側の部位)を、左右の外方(右方)に突出させるようにして、形成されている。レバー本体60Rは、把持面13aに略沿うように配置される押下操作部61Rと、押下操作部61Rにおける把持部10(メイン把持領域13R)側の端部61bから下方に延びるように配置される引上操作部75Rと、を有して、断面略逆L字形状とされている(
図6,7参照)。
【0029】
押下操作部61Rは、把持部10(メイン把持領域13R)に近接した位置において、把持面13aに略沿うとともに、把持部10(メイン把持領域13R)に略沿って前後に延びるように配設されるもので、実施形態の場合、上述したごとく、メイン把持領域13Rの前後の略全域にわたって、配設されている。また、押下操作部61Rは、メイン把持領域13Rの左側(把持部10の内側)において、間に僅かな隙間を設けられた状態で隣接されている。押下操作部61Rの上面61a側には、押下操作面62Rが、形成されている。押下操作面62Rは、
図5,9,10に示すように、操作面本体63Rと、操作面本体63Rにおける把持部10側の縁部63a(外縁)に形成される傾斜面70Rと、を備えている。操作面本体63Rは、前後の中間部位に配置される天井面64Rと、天井面64Rの前縁64a側に形成される前側傾斜部65Rと、天井面64Rの後縁64b側に形成される後側傾斜部66Rと、を備えている。傾斜面70Rは、操作面本体63Rから下降しつつ把持部10側(メイン把持領域13R側)に接近するように、操作面本体63Rに対して傾斜するように配置されている。具体的には、実施形態の場合、傾斜面70Rは、操作面本体63Rにおいて、前側傾斜部65Rの外方(右方)を除いた領域(天井面64Rと後側傾斜部66Rとの外方(右方)の領域)に、形成されている。
【0030】
操作面本体63Rにおける天井面64Rは、パッド6の上面6aと把持面(メイン把持領域13Rにおける上面13a)との間となる位置において、把持面13aに略沿うように配置されている(
図6,7参照)。詳細には、実施形態の場合、天井面64Rは、傾斜面70R側(メイン把持領域13R側)にかけて僅かに下降するように、把持面13aに対して僅かに傾斜している。操作面本体63Rにおける前側傾斜部65Rは、天井面64Rの前縁64a側において、天井面64Rから下降しつつ把持部10(詳細には右前側部位10e)に接近するように、天井面64Rに対して傾斜して配置されている(
図10参照)。実施形態の場合、前側傾斜部65Rは、平面視において、押下操作面62Rの前後の全長の1/5程度の領域に、形成されている(
図1参照)。また、実施形態の場合、前側傾斜部65Rは、天井面64Rの外縁(右縁)64c側に形成される傾斜面70R(具体的には、傾斜面70Rにおける前側部位71R)から、なだらかに連なるように形成されている。傾斜面70Rにおける前側部位71Rと、前側傾斜部65Rと、は、把持部10側の端縁(外縁71a,前縁65a)を、把持面13aと略同等となる位置に配置させるように、構成されている(
図10参照)。後側傾斜部66Rは、天井面64Rの後縁64b側において、天井面64Rから下降しつつ把持部10(詳細にはハンドレスト部16)に接近するように、天井面64R(すなわち、把持面13a)に対して傾斜して配置されている。後側傾斜部66Rは、平面視において、前後に広く、押下操作面62Rの前後の全長の2/5程度の領域に、形成されており、具体的には、レバー本体60Rにおいて最も右方に突出している突出端60aから後側の領域に、形成されている(
図1,9参照)。傾斜面70Rにおいて、後側傾斜部66Rの外側(右側)に配置される後側部位72Rは、
図10に示すように、後端72a側にかけて収束するように、形成されている。また、後側傾斜部66Rは、把持部10側となる後縁66aを、把持面13aよりも下方に位置させるように、構成されている(
図10参照)。具体的には、実施形態の場合、後側傾斜部66Rの後縁66aは、メイン把持領域13Rの上下の幅寸法において、上から1/3程度となる位置に、配置されている(
図10参照)。また、実施形態の場合、傾斜面70Rにおける前側部位71Rの把持面13aに対する傾斜角度αは、45°程度に設定され(
図7参照)、前側傾斜部65Rの把持面13aに対する傾斜角度βは、20°程度に設定され、後側傾斜部66Rの把持面13aに対する傾斜角度γは、30°程度に設定されている(
図10参照)。
【0031】
引上操作部75Rは、押下操作部61Rにおいて把持部10(メイン把持領域13R)側となる端部61b(外側の端部、右端)側から下方に(すなわち、回転操舵中心軸C1に略沿って)延びた下端側に配置されるもので、下端75aを、把持部10(メイン把持領域13R)の下端面13b(詳細には、外側下端面13c)よりも下方に位置させるように構成されている(
図6,7参照)。具体的には、引上操作部75Rは、押下操作部61Rから延びた下端75a側において、上下方向(回転操舵中心軸C1)に略沿った薄肉の略板状とされる領域を操作本体76Rとして、構成されている。この操作本体76Rは、
図7に示すように、全体を、メイン把持領域13Rにおける凹部14Rの凹みの先端面(すなわち、内側下端面13d)よりも下方に位置させるように、構成されている。この操作本体76Rは、レバー本体60Rにおける外縁60b側であって、押下操作面62Rにおける傾斜面70Rの略直下となる位置に、形成されている。詳細には、操作本体76Rは、
図7に示すように、外側面76cを、カバー本体60Rの外縁60b(外周面)よりも内側に位置させるように、構成されている。操作本体76Rの下端76a側には、メイン把持領域13Rとなる右側(外側)に向けるように突出する湾曲部77Rが、形成されている。湾曲部77Rは、実施形態の場合、端縁77bを、カバー本体60Rの外縁60b(外周面)よりも外方に突出させるように、構成されている(
図7参照)。そして、この操作本体76Rは、回転操舵中心軸C1に略沿うように配置されるボス部5側の面(内側面76b)から湾曲部77Rの下端面77aにかけてを、引上操作面78Rとして、構成されている。引上操作面78Rは、詳細には、天井面64Rと傾斜面70Rとの境界部位の略直下となる位置(すなわち、天井面64Rよりも左右の外方となる位置)に、形成されている(
図7参照)。実施形態の場合、引上操作面78Rと回転軸部43Rにおける軸芯C2との上下方向側での離隔距離(具体的には、引上操作面78Rの上下の略中央と軸芯C2との離隔距離H1、
図7参照)は、押下操作面62Rにおける天井面64Rと、回転軸部43Rにおける軸芯C2と、の上下方向側での離隔距離H2よりも大きく、具体的には、この離隔距離H2の8/3程度に、設定されている。また、引上操作部75R(操作本体76R)は、レバー本体60Rの前後の略全域にわたって、連続的に、形成されている(
図4参照)。すなわち、引上操作部75Rは、メイン把持領域13Rに略沿って前後に延びるように、メイン把持領域13Rの前後の略全域にわたって配設されている。そして、引上操作部75Rの前端75b側には、
図4,7,9に示すように、ボス部5側(左方、左右の中央側)に向かって延びるような延設部80Rが、配設されている。実施形態の場合、延設部80Rは、操作本体76Rの下半分程度の領域を延ばすようにして、形成されるもので、レバー本体60Rの幅方向の略全域にわたるように、形成されている(
図4,7参照)。
【0032】
実施形態のステアリングハンドル1では、押下操作部61Rの最大押下角度θ1と、引上操作部75Rの最大引上角度θ2と、は、ともに、15°程度に設定されている(
図11,12参照)。押下操作部61Rは、最大押下時に、
図11に示すように、天井面64Rを把持面13aより下方に位置させるように構成され、引上操作部75Rは、最大引上時に、
図12に示すように、操作本体76Rとメイン把持領域13Rとの間に僅かに隙間を設けられるように、構成されている。
【0033】
そして、実施形態のステアリングハンドル1では、操作レバー部50L,50Rにおいて回転操舵中心軸C1に略沿って延びるように形成される引上操作部75L,75R(操作本体76L,76R)が、把持部10の下端面13bより下方に位置する下端75a側の部位に、引上操作面78L,78Rを配設させる構成とされており、引上操作面78L,78Rは、回転操舵中心軸C1に略沿うように配置されるボス部5側の面(内側面76b)から下端面77aにかけての部位から構成されている。そのため、把持部10(メイン把持領域13L,13R)を把持している運転者の手MHにおける人差し指や中指等の指MFを、引上操作面78L,78Rに押し当てつつ、引上操作部75L,75R(操作本体76L,76R)を、把持部10(メイン把持領域13L,13R)側に接近させるように、手前(メイン把持領域13L,13R側)に引けば、操作レバー部50L,50Rを上方に持ち上げるように操作することができる(
図14参照)。すなわち、実施形態のステアリングハンドル1では、引上操作部75L,75R(操作本体76L,76R)に対して、指先Faを引っ掛け、その指先Faの引っ掛けた状態を維持するように手前に引くようにして、操作レバー部50L,50Rを操作できることから、操作性が良好であり、また、この引上操作部75L,75Rの引き上げ状態も、所定時間、安定して維持することができて、ブレーキ操作若しくはアクセル操作(実施形態の場合、ブレーキ操作)を、安定して行うことができる。
【0034】
したがって、実施形態のステアリングハンドル1では、操作性が良好であり、かつ、操作状態を安定して維持可能である。
【0035】
また、実施形態のステアリングハンドル1では、引上操作部75L,75Rにおける操作本体76L,76Rが、回転操舵中心軸C1に略沿うような略板状として、下端76a側に、把持部10(メイン把持領域13L,13R)側に向けつつ突出させるような湾曲部77L,77Rを、配設させている。そのため、メイン把持領域13L,13Rを把持している指Fを引上操作面78L,78Rに当接させる際に、引上操作部75L,75Rにおける操作本体76L,76Rの下端76a側が指に食い込まず、操作時の触感を良好とすることができる。また、外方に突出する湾曲部77L,77Rを配設させることにより、湾曲部77L,77Rの端縁77bと引上操作部75L,75R(操作本体76L,76R)における把持部10側の面(外側面76c)との間にスペースが生じるような態様となり(
図7,12参照)、把持部10(メイン把持領域13L,13R)に接近させるような引上操作時における引上ストロークを、湾曲部77L,77Rを設けない場合と比較して、大きく確保することができる。なお、このような点を考慮しなければ、引上操作部として、湾曲部を備えない構成としてもよい。
【0036】
さらに、実施形態のステアリングハンドル1では、引上操作部75L,75Rが、メイン把持領域13L,13Rに略沿って前後に延びるように、メイン把持領域13L,13Rの前後の略全域にわたって配設される構成であり、前端75b側に、ボス部5側に向かって延びるような延設部80L,80Rを有する構成とされている。そのため、引上操作部75L,75Rが、直進操舵時の把持部10の前後の略全域にわたるように、前後で広く配設されていることから、メイン把持領域13L,13Rの把持位置にかかわらず、引上操作部75L,75Rを、安定して操作することができる。また、引上操作部75L,75Rの前端75b側には、ボス部5側に向かって延びるような延設部80L,80Rが、形成されていることから、この延設部80L,80Rが、把持部10(メイン把持領域13L,13R)を把持している手MHの指先Faと接触することにより、引上操作部75L,75Rから手が離れるような手のさらなる前方移動を規制するストッパとして作用することとなり、引上操作部75L,75Rを安定して操作することもできる。なお、このような点を考慮しなければ、引上操作部として、延設部を配設させない構成としてもよく、さらには、引上操作部自体を、メイン把持領域(操作レバー部)の前後の略全域ではなく、例えば、操作レバー部の前後の中央付近の領域のみに、配設させる構成としてもよい。
【0037】
実施形態のステアリングハンドル1では、操作レバー部50L,50Rの押下操作あるいは引上操作により、車両の速度調整を行う構成である。このようなステアリングハンドル1は、下肢等に障害のある人のための車両に搭載されることを考慮されている。具体的には、実施形態のステアリングハンドル1では、操作レバー部50L,50Rの押下操作時にアクセル操作を入力し、引上操作時にブレーキ操作を入力する構成である。アクセル操作もブレーキ操作も、所望の速度まで変更(加速あるいは減速)させるために、操作状態を所定の時間維持する必要があり、また、通常、押下量や引上量が大きくなればなるほど、操作する運転者の手にかかる負荷も大きくなる。すなわち、大きな力で所定時間、操作レバー部50L,50Rの押下状態や引上状態を維持する必要がある。また、通常、運転時には、ブレーキよりもアクセルの方が操作機会が多く、また、操作時間も長い。
【0038】
実施形態のステアリングハンドル1では、操作レバー部50L,50Rの押下操作時に、アクセル操作を入力する構成であり、把持部10(メイン把持領域13L,13R)を把持している運転者の手MHにおける親指MTの付け根付近の部位(掌における拇指球TBの部位)によって、押下操作面62L,62R(天井面64L,64R)を押し下げるようにして、押下操作させる構成である。具体的には、実施形態のステアリングハンドル1では、押下操作面62L,62R(天井面64L,64R)の押下操作時(回転操作時)の回転半径r1が比較的大きく(
図11参照)、かつ、押下操作面62L,62R(天井面64L,64R)が、回転軸部43L,43Rの略側方に配置されることとなる。天井面64L,64Rを押し下げる際の押圧力F1の入力の方向は、回転軸部43L,43Rを中心とした回転操作時の軌跡R1における接線方向D1に略沿う方向となるが、実施形態のステアリングハンドル1では、この押圧力F1の入力の方向を、
図11に示すように、把持面13aに対して略直交する方向に近似させることが可能となることから、天井面64L,64Rを、略直下に向かって押し下げれば、操作レバー部50L,50Rを、下方へ押し込むように操作させることができる。また、押下操作面62L,62Rは、実施に押下される天井面64L,64Rの把持部10(メイン把持領域13L,13R)側の縁部に、傾斜面70L,70Rを配設させている。そのため、メイン把持領域13L,13Rを把持している手MHにおける拇指球TBの部位付近を、傾斜面70L,70Rをガイドとして、内側(操作レバー部50L,50R側)に向かってずらしつつ、押し込めば、天井面64L,64Rを押し下げることができて(
図13参照)、操作性が良好である。また、大きな力をかけやすい拇指球TB付近の部位によって、広い面で、安定して、天井面64L,64Rを押し下げることができることから、押下状態も、所定時間、安定して維持することができる。さらに、メイン把持領域13L,13Rの下面側には、上方に僅かに凹むような凹部14L,14Rが形成されていることから、親指MT以外の4本の指MFを、この凹部14L,14Rの内周面に指先Faを当てるようにして、メイン把持領域13L,13Rを把持すれば、押下操作時において、親指MTの付け根付近が内側にずれるように移動しても、メイン把持領域13L,13Rの把持状態を安定して維持することができる。すなわち、このような凹部14L,14Rを設けることにより、メイン把持領域13L,13Rの把持状態を安定させることができて、親指MTの付け根の付近の部位(掌における拇指球TBの部位)による押下操作も、安定して行うことができる。
【0039】
さらに詳細には、実施形態のステアリングハンドル1では、押下操作部61L,61Rの上面61a側に形成される押下操作面62L,62Rの操作面本体63L,63Rは、前後の中間部位に、把持面13aに略沿わせた天井面64L,64Rを配置させ、天井面64L,64Rの前縁64a側と後縁64b側とに、天井面64L,64Rから下降しつつ把持部10側に接近するような前側傾斜部65L,65Rと後側傾斜部66L,66Rとを、配設させている。そのため、メイン把持領域13L,13Rにおける前後の中央付近(天井面64L,64Rの側方の領域)から外れた前端側あるいは後端側の領域を把持している場合にも、メイン把持領域13L,13Rを把持している手MHを内側(操作レバー部50L,50R側)に向かってずらした際に、親指MTによって、前側傾斜部65L,65R若しくは後側傾斜部66L,66Rを円滑に押し下げることができる。また、前側傾斜部65L,65Rを設けることにより、例えば、運転者が、把持部10における左前側部位10d,右前側部位10eに形成される凹部19L,19Rに親指の先端を当てるようにして、メイン把持領域13L,13Rにおける前側の部位を把持している場合に、親指の付け根の部位が、なだらかに傾斜する前側傾斜部65L,65Rの領域に当たるような態様となる。さらに、後側傾斜部66L,66Rは、把持部10側となる後縁66aを、把持面13aよりも下方に位置させるように、構成されている。そのため、メイン把持領域13L,13Rにおける後側の領域を把持している場合に、親指の付け根付近となる拇指球付近の領域を、スムーズに後側傾斜部66L,66R上にずらすことができて、また、この後側傾斜部66L,66Rを拇指球付近の領域で、安定して押し下げることができる。
【0040】
さらに、実施形態のステアリングハンドル1では、操作レバー部50L,50Rの引上操作時に、ブレーキ操作を入力する構成であり、上述したごとく、把持部10(メイン把持領域13L,13R)を把持している運転者の手MHにおける親指MT以外の指MF(人差し指や中指等)の指先Faを引上操作面78L,78Rに押し当てて、手前(把持部10(メイン把持領域13L,13R)側)に引くことにより、操作レバー部50L,50Rを、上方に持ち上げるように引上操作する構成である(
図14参照)。このような引上操作は、メイン把持領域13L,13Rを把持している手MHの指先Faで引上操作部75L,75Rの操作本体76L,76Rを握り込むような操作によって、実現することができることから、操作性が良好である。特に、実施形態のステアリングハンドル1では、引上操作面78L,78Rが、押下操作面62L,62Rにおける天井面64L,64Rと比較して、回転軸部43L,43Rに対して上下に離れた位置で配置され、かつ、天井面64L,64Rよりも左右の外方に配置される構成である。すなわち、引上操作部75L,75Rは、押下操作部61L,61Rの操作時の回転半径r1と比較して、操作時の回転半径r2を大きくされることとなり(
図11,12参照)、引上操作時のトルクを、押下操作部61L,61Rの押下操作時のトルクよりも小さくできることから、押下操作と比較して、小さな引張力(軽い力)で操作することが可能となる。さらに、引上操作部75L,75Rにおける操作本体76L,76Rが、レバー本体60L,60Rの外縁60b側に形成されていることから、メイン把持領域13L,13Rを把持している手MHの指先Faから近く、指先Faによる握り込みが容易である。その結果、親指を除いた4本の指の指先で引き上げる構成であっても、操作性が良好で、かつ、引上状態を、所定時間、安定して維持することができる。
【0041】
また、実施形態のステアリングハンドル1では、操作レバー部50L,50Rにおいて、押下操作部61L,61Rの上面61a側に形成される押下操作面62L,62Rが、
図2,9,10に示すように、メインで押し下げられる天井面64L,64Rの周縁において、パッド6側(内側)を除いた三方を、下方にかけて傾斜させている構成であり、すなわち、内縁側を除いて三辺を面取りされたような形状とされていることから、拇指球TB付近の部位をずれ移動させるような押下操作部61L,61Rの操作時に、操作レバー部50L,50Rが、運転者の手に部分的に食い込んだり、部分的に強く当たることを抑制でき、快適に、操作することができる。
【0042】
なお、実施形態のステアリングハンドル1では、操作レバー部50L,50Rの押下操作時にアクセル操作を入力し、引上操作時にブレーキ操作を入力する構成であるが、勿論、押下操作時にブレーキ操作を入力し、引上操作時にアクセル操作を入力させる構成としてもよい。しかしながら、アクセル操作の方がブレーキ操作よりも操作機会が多く、また、操作時間も長い点や、押下操作の方が、引上操作と比較して大きな力をかけやすいという点等からは、実施形態のごとく、押下操作時にアクセル操作を入力し、引上操作時にブレーキ操作を入力する構成とすることが好ましい。
【0043】
さらに、実施形態では、引上操作部に加えて、押下操作部を有する構成の操作レバー部を備える構成のステアリングハンドルを、例に採り説明しているが、本発明は、ブレーキ操作若しくはアクセル操作を入力可能な引上操作部のみを有して、押下操作部を備えないタイプの操作レバー部を備えるステアリングハンドルにも、適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…ステアリングハンドル、5…ボス部、10…把持部、13L,13R…メイン把持領域、43L,43R…、回転軸部、50L,50R…操作レバー部、75L,75R…引上操作部、75a…下端、76L,76R…操作本体、76a…内側面、77L,77R…湾曲部、77a…下端面、78L,78R…引上操作面、80L,80R…延設部、C1…回転操舵中心軸。