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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140258
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】顔認証装置
(51)【国際特許分類】
   G06V 40/16 20220101AFI20241003BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20241003BHJP
   B60R 25/25 20130101ALI20241003BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241003BHJP
【FI】
G06V40/16 A
B60R11/02 Z
B60R25/25
G06T7/00 510F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051312
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 悠希
(72)【発明者】
【氏名】九鬼 陽介
(72)【発明者】
【氏名】須行 洋平
【テーマコード(参考)】
3D020
5B043
【Fターム(参考)】
3D020BA20
3D020BB01
3D020BC13
3D020BE03
5B043AA09
5B043BA04
5B043DA06
5B043EA02
(57)【要約】
【課題】車外の人物を検知してから顔認証判定の成立までにかかる処理時間の短縮を図る。
【解決手段】顔認証装置1は、車両2と車外の人物Hとの距離Dが接近距離Dth以内となったかを判定する接近判定部1Aと、接近判定部1Aの判定が成立した場合に、複数のカメラ3のそれぞれで撮像された画像IMを順次取得する画像取得部1Bと、取得された画像IMを走査し、画像IMが人物Hの顔画像Ihを含む対象画像IOであるかを判定する顔検出部1Cと、顔検出部1Cの判定が成立した場合に、登録顔画像Iuと顔画像Ihとが一致するかを判定する顔認証部1Dと、を備える。画像取得部1Bは、複数のカメラ3のうち対象画像IOを撮像する可能性の高いカメラ3を優先カメラ3Pとして設定し、優先カメラ3Pの画像IMを他のカメラ3Qの画像IMよりも優先的に取得する。顔検出部1Cは、画像IMの全領域Rのうち一部の所定領域Rxについて走査する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両と前記車両の外部に存在する人物との距離が所定の接近距離以内となったか否かを判定する接近判定部と、
前記接近判定部の判定が成立した場合に、前記外部の異なる方向を向く複数のカメラのそれぞれで撮像された画像を順次取得する画像取得部と、
前記画像取得部で取得された前記画像を走査し、前記画像が前記人物の顔画像を含む対象画像であるか否かを判定する顔検出部と、
前記顔検出部の判定が成立した場合に、予め記憶されている登録顔画像と前記顔画像とが一致するか否かの判定である顔認証判定を実施する顔認証部と、を備え、
前記画像取得部は、前記複数のカメラのうち前記対象画像を撮像する可能性の高いカメラを優先カメラとして設定し、前記優先カメラで撮像された前記画像を、他のカメラで撮像された前記画像よりも優先的に取得し、
前記顔検出部は、前記画像の全領域のうち、予め設定された一部の所定領域について走査する
ことを特徴とする、顔認証装置。
【請求項2】
前記複数のカメラはいずれも、魚眼レンズが取り付けられたカメラであり、
前記所定領域は、前記全領域のうち、前記車両の車体が写る領域及び前記車両の近傍の地面が写る領域の双方を除く領域である
ことを特徴とする、請求項1に記載の顔認証装置。
【請求項3】
前記所定領域は、少なくとも前記人物の目間距離が所定値以上となる領域である
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の顔認証装置。
【請求項4】
前記画像取得部は、前記車両に対して前記人物が接近する接近方向を撮像範囲に含むカメラを前記優先カメラとして設定する
ことを特徴とする、請求項1に記載の顔認証装置。
【請求項5】
前記車両の拠点として登録された拠点位置に前記車両が存在するか否かを判定する拠点判定部をさらに備え、
前記画像取得部は、前記拠点判定部の判定が成立した場合に、過去に前記拠点位置で前記顔認証判定を成立させた前記画像を撮像した回数が最多のカメラを前記優先カメラとして設定する
ことを特徴とする、請求項1に記載の顔認証装置。
【請求項6】
前記複数のカメラには、前記車両の運転席側から第一側方を向く第一カメラと、前記車両の助手席側から前記第一側方とは別の第二側方を向く第二カメラとが含まれ、
前記画像取得部は、前記拠点判定部の判定が成立しない場合、且つ、前記第二側方から前記車両が施錠された場合に、前記第二カメラを前記優先カメラとして設定する
ことを特徴とする、請求項5に記載の顔認証装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、車両の外部に存在する人物が当該車両に登録された人物であるかの顔認証判定を実施する顔認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の外部に存在する人物を検知するとともに、検知した人物の顔画像が車両に予め登録された顔画像と一致するか否かの顔認証判定を実施する顔認証装置が知られている。例えば、特許文献1には、距離センサによって取得された車外の目標対象物と車両との距離が所定の距離閾値よりも小さくなることに応じて、車載カメラを起動させて、顔認証判定を実施する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-091755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両には、車外の領域を広く撮影するために、複数のカメラを備えたものがある。顔認証装置では、このような複数カメラで撮影された複数の画像を取得して、各画像に対して車外の人物の顔が写り込んでいるかの判定処理(顔検出処理)を行い、当該判定処理が成立した画像に対して顔認証判定を実施するものがある。しかし、顔検出処理において、各画像の全領域を走査すると、処理時間が長くなり得る。また、顔認証装置では、車外の人物が登録された人物である場合には、当該人物が車両に到達する前に顔認証判定を成立させることが好ましい。しかし、各カメラで撮影された画像を単純に一枚ずつ順に処理すると、車外の人物の顔が写り込まない画像の処理中に、当該人物が車両に到達する可能性がある。この場合、顔認証装置としての機能が十分に発揮されない。
【0005】
本件は、上記のような課題に鑑み創案されたものであり、車両の外部に存在する人物を検知してから顔認証判定の成立までにかかる処理時間の短縮を図ることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の顔認証装置は、以下に開示する態様(適用例)として実現でき、上記の課題の少なくとも一部を解決する。態様2以降の各態様は、何れもが付加的に適宜選択されうる態様であって、何れもが省略可能な態様である。態様2以降の各態様は、何れもが本件にとって必要不可欠な態様や構成を開示するものではない。
【0007】
態様1.開示する顔認証装置は、車両と前記車両の外部に存在する人物との距離が所定の接近距離以内となったか否かを判定する接近判定部と、前記接近判定部の判定が成立した場合に、前記外部の異なる方向を向く複数のカメラのそれぞれで撮像された画像を順次取得する画像取得部と、前記画像取得部で取得された前記画像を走査し、前記画像が前記人物の顔画像を含む対象画像であるか否かを判定する顔検出部と、前記顔検出部の判定が成立した場合に、予め記憶されている登録顔画像と前記顔画像とが一致するか否かの判定である顔認証判定を実施する顔認証部と、を備える。前記画像取得部は、前記複数のカメラのうち前記対象画像を撮像する可能性の高いカメラを優先カメラとして設定し、前記優先カメラで撮像された前記画像を、他のカメラで撮像された前記画像よりも優先的に取得する。前記顔検出部は、前記画像の全領域のうち、予め設定された一部の所定領域について走査する。
【0008】
態様2.上記の態様1において、前記複数のカメラはいずれも、魚眼レンズが取り付けられたカメラであることが好ましい。この場合、前記所定領域は、前記全領域のうち、前記車両の車体が写る領域及び前記車両の近傍の地面が写る領域の双方を除く領域であることが好ましい。
態様3.上記の態様1又は2において、前記所定領域は、少なくとも前記人物の目間距離が所定値以上となる領域であることが好ましい。
【0009】
態様4.上記の態様1~3のいずれかにおいて、前記画像取得部は、前記車両に対して前記人物が接近する接近方向を撮像範囲に含むカメラを前記優先カメラとして設定することが好ましい。
【0010】
態様5.上記の態様1~3のいずれかにおいて、前記顔認証装置は、前記車両の拠点として登録された拠点位置に前記車両が存在するか否かを判定する拠点判定部をさらに備えることが好ましい。この場合、前記画像取得部は、前記拠点判定部の判定が成立した場合に、過去に前記拠点位置で前記顔認証判定を成立させた前記画像を撮像した回数が最多のカメラを前記優先カメラとして設定することが好ましい。
【0011】
態様6.上記の態様5において、前記複数のカメラには、前記車両の運転席側から第一側方を向く第一カメラと、前記車両の助手席側から前記第一側方とは別の第二側方を向く第二カメラとが含まれることが好ましい。この場合、前記画像取得部は、前記拠点判定部の判定が成立しない場合、且つ、前記第二側方から前記車両が施錠された場合に、前記第二カメラを前記優先カメラとして設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
開示の顔認証装置によれば、車両の外部に存在する人物を検知してから顔認証判定の成立までにかかる処理時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一実施形態に係る顔認証装置が適用された車両とその外部の周辺状況とを併せて示す上面図である。
図2図1の顔認証装置のブロック図である。
図3図1の車両に搭載されたカメラで撮像された画像の一例を示す図である。
図4図1の顔認証装置で実施される処理を説明するためのフローチャート例である。
図5】第二実施形態に係る顔認証装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、実施形態としての顔認証装置について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0015】
実施形態の顔認証装置は、車両の外部(車外)を撮影する複数のカメラが搭載された車両に適用される装置である。顔認証装置は、車外に存在する人物と車両との距離が所定の接近距離以内となった場合に、画像取得処理と顔検出処理と顔認証処理とを順に実施する。画像取得処理では、複数のカメラのそれぞれで撮像された画像IMが順次取得される。顔検出処理では、取得された画像IMが走査され、走査された画像IMが車外の人物の顔画像Ihを含む対象画像IOであるか否かの判定(以下「検出判定」という)が実施される。顔認証処理は、画像IMが対象画像IOである場合に実施される処理である。顔認証処理では、対象画像IOに含まれる顔画像Ihが、予め記憶されている登録顔画像Iuと一致するか否かの判定である顔認証判定が実施される。
【0016】
実施形態の顔認証装置は、顔検出処理において、画像IMの全領域のうち予め設定された一部の所定領域についてのみ走査する。これにより、顔検出処理に係る時間を短縮する。また、実施形態の顔認証装置は、画像取得処理において、複数のカメラのうち対象画像IOを取得する可能性の高い一つのカメラを優先カメラとして設定し、当該優先カメラで撮像された画像IMを、他のカメラで撮像された画像IMよりも優先的に取得する。このように、優先カメラで撮像された画像IMを優先的に取得することで、検出判定を早期に成立させて、車外の人物を検知してから顔認証判定の成立までにかかる処理時間を短縮する。
【0017】
以下の説明では、車両の前進方向を前方(車両前方)とし、この反対方向を後方(車両後方)とする。また、車両の前方を向いた状態を基準にして左右を定める。なお、左右方向は車両前後方向と直交する。以下、左右方向を「車幅方向」ともいい、車両前後方向を単に「前後方向」という。車幅方向及び前後方向の双方に直交する方向を上下方向と定義する。
【0018】
なお、実施形態において、車両は、車幅方向の右側に運転席が設けられた右ハンドル車であるものとする。つまり、実施形態において、特許請求の範囲の「運転席側から第一側方」は「右方」であり、「助手席側から前記第一側方とは別の第二側方」は「左方」であるものとする。
【0019】
[1.第一実施形態]
[1-1.全体構成]
図1図4を参照して、第一実施形態の顔認証装置1について説明する。図1に示すように、顔認証装置1は、複数のカメラ3を搭載した車両2に適用される。なお、顔認証装置1は、図1に示すように車両2に搭載されるものであってもよく、車両2の外部に設けられて車両2との通信を介して上記の処理を実施するものであってもよい。
【0020】
第一実施形態において、顔認証装置1は、車両2の外部に存在する人物Hが車両2に対して接近する接近方向ADを取得し、取得した接近方向ADを撮像範囲に含むカメラ3を優先カメラ3Pとして設定するものである。以下、「車両2の外部に存在する人物H」を、単に「人物H」とよぶ。車両2には、接近方向AD及び人物Hと車両2との距離Dを取得(算出)する装置として、例えば、通信装置4が設けられる。
【0021】
複数のカメラ3は、いずれも車外を撮影する撮像装置であり、それぞれが車外の異なる方向を向く。ここでは、車両2のアラウンドビュー画像を生成するために設けられた前方カメラ31,後方カメラ32,右方カメラ33(第一カメラ)及び左方カメラ34(第二カメラ)の四つのカメラが、複数のカメラ3として用いられる。
【0022】
各カメラ31~34は、いずれも魚眼カメラである。魚眼カメラは、標準レンズよりも広い画角ΔA(例えば、水平方向に約190[°]、垂直方向に約150[°]の画角)を持つ魚眼レンズが取り付けられたカメラであり、標準カメラよりも広い範囲を撮影可能である。車両2では、このように複数のカメラ3に魚眼カメラが適用されることで、車外の全周囲の撮像が可能となる。
【0023】
なお、アラウンドビュー画像とは、車両2を上方から俯瞰したときの景色に相当する合成画像であり、各カメラ31~34で撮像された画像を基に、図示しない車載装置により生成される。このように、既存の車両2に搭載されたカメラ3を活用することで、廉価な顔認証装置1を提供できる。
【0024】
前方カメラ31は、例えば、車両2の前端面に配置されて、車両2の前方を向く。前方カメラ31の撮像範囲には、車両2の前方に加えて、車両2の右前方及び左前方が含まれてよい。後方カメラ32は、例えば、車両2の後端面に配置されて、車両2の後方を向く。後方カメラ32の撮像範囲には、車両2の後方に加えて、車両2の右後方及び左後方が含まれてよい。右方カメラ33は、例えば、右サイドミラーに配置されて、車両2の右方を向く。右方カメラ33の撮像範囲には、車両2の右方に加えて、車両2の右側面が含まれてよい。左方カメラ34は、例えば、左サイドミラーに配置されて、車両2の左方を向く。左方カメラ34の撮像範囲には、車両2の左方に加えて、車両2の左側面が含まれてよい。
【0025】
通信装置4は、人物Hの携帯端末Hd(例えば、スマートフォンやスマートキー)と通信可能に構成された装置であり、携帯端末Hdとの通信を介して接近方向AD及び距離Dを取得するものである。通信装置4と携帯端末Hdとの通信には、例えば、Bluetooth(登録商標)通信が用いられ、予めペアリングされた携帯端末Hd〔例えば、登録顔画像Iuの人物(以下、「登録人物U」とよぶ)が所持する携帯端末〕との通信が成立した場合に、情報を取得する。
【0026】
距離Dは、例えば、AOA(Angle Of Arrival)方式を用いて算出される。距離Dの算出には、電波の反射時間の差に基づくTOA(Time Of Arrival)方式が用いられてもよい。通信装置4は、AOA方式を用いて、車両2の任意の位置(例えば、車両2の前後方向の中心Pの位置や、この中心Pを通り前後方向に直交する仮想平面)に対する人物Hの角度を算出してよい。接近方向ADは、算出した距離D及び角度を用いて算出されてよい。なお、ここで算出される角度あるいは接近方向ADは、例えば「基準となる位置から反時計回りに20度」のような数値でもよいし、例えば、「中心Pよりも右方」や「中心Pよりも前方」という大まかな方向であってもよい。AOA方式或いはTOA方式による距離検出や、AOA方式による角度検出については公知であるため、具体的な説明は割愛する。
【0027】
顔認証装置1は、上述の処理(演算)を実施する電子計算機(コンピューター)であり、マイクロプロセッサー(中央処理装置),メモリ(メインメモリ),記憶装置(ストレージ),インタフェース装置などが内蔵される。顔認証装置1の入力側には、複数のカメラ3及び通信装置4が接続される。顔認証装置1の入力側には、登録顔画像Iuを登録するための図示しない入力装置が接続されていてもよい。顔認証装置1の出力側には、車載機器(例えば、車両2のドアの開錠状態と施錠状態とを切り替えるアクチュエータ)や車載機器を制御するための制御装置が接続されてよい。
【0028】
[1-2.顔認証装置]
図2に示すように、顔認証装置1には、上述の処理を実施するための機能要素として、接近判定部1A,画像取得部1B,顔検出部1C及び顔認証部1Dが設けられる。これらの機能要素は電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、ソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
【0029】
接近判定部1Aは、距離Dが所定の接近距離Dth以内となったか否かの接近判定を実施するものである。接近判定部1Aは、通信装置4から距離Dを受信し、受信した距離Dが接近距離Dth以内である(D≦Dth)と判定した場合に、接近判定の成立を示す信号を画像取得部1Bに伝達する。接近距離Dthは、人物Hが車両2に到着する前に、人物Hが車両2に接近したことを検知できる距離であって、例えば、5[m]に設定される。なお、接近判定部1Aは、受信した距離Dが接近距離Dth以内にない(D>Dth)と判定した場合には、人物Hが車両2に接近していないと判断して、画像取得部1Bへの信号の伝達を行わない。
【0030】
画像取得部1Bは、上述の画像取得処理を実施するものである。画像取得部1Bは、接近判定部1Aから接近判定の成立を示す信号を受信した場合に、複数のカメラ3のそれぞれで撮像された画像IMを順次取得する。つまり、画像取得部1Bは、複数のカメラ3から同時に画像IMを取得するのではなく、複数のカメラ3の一つずつから順番に画像IMを取得する。画像取得部1Bにより取得された画像IMは、取得された順に顔検出部1Cに伝達される。
【0031】
画像取得部1Bは、優先カメラ3Pで撮像された画像IMを、優先カメラ3P以外のカメラ3で撮像された画像IMよりも優先的に取得する。以下、「優先カメラ3P以外のカメラ3」を「他のカメラ3Q」ともよぶ。上述の通り、第一実施形態では、優先カメラ3Pが、接近方向ADを撮像範囲に含むカメラ3とされる。このため、画像取得部1Bは、通信装置4から接近方向ADを取得し、取得した接近方向ADを撮像範囲に含むカメラ3を優先カメラ3Pとして設定する。
【0032】
例えば、図1に示すように、人物Hが車両2の右方から接近してくる場合(接近方向ADが右方である場合)には、画像取得部1Bは、右方を撮像範囲に含む右方カメラ33を優先カメラ3Pとして設定し、右方カメラ33の画像IMを優先的に取得する。ここで、「優先的に」とは、優先カメラ3Pの画像IMを他のカメラ3Qの画像IMよりも「先に」取得するという意味であってよい。或いは、優先カメラ3Pの画像IMを他のカメラ3Qの画像IMよりも「多く」取得するという意味であってよい。
【0033】
前者の場合、画像取得部1Bは、はじめに優先カメラ3Pから画像IMを取得し、その後、他のカメラ3Qから順次画像IMを取得する。例えば、右方カメラ33を優先カメラ3Pとして設定した場合、画像取得部1Bは、右方カメラ33,前方カメラ31,左方カメラ34,後方カメラ32,右方カメラ33,前方カメラ31・・・の順で画像IMを取得する。なお、この場合において、画像取得部1Bは、少なくとも、優先カメラ3Pの画像IMを他のカメラ3Qの画像IMよりも先に取得すればよく、他のカメラ3Qの画像IMを取得する順番は上記の順番に限らない。
【0034】
後者の場合、画像取得部1Bは、例えば、優先カメラ3Pの画像IMを取得した後に、他のカメラ3Qのうちの一つから画像IMを取得する順序で繰り返し画像IMを取得する。例えば、右方カメラ33を優先カメラ3Pとして設定した場合、画像取得部1Bは、右方カメラ33,前方カメラ31,右方カメラ33,左方カメラ34,右方カメラ33,後方カメラ32,右方カメラ33,前方カメラ31・・・の順で画像IMを取得する。なお、この場合、画像取得部1Bは、少なくとも、優先カメラ3Pの画像IMを他のカメラ3Qの画像IMよりも多く取得すればよく、優先カメラ3Pの画像IMを取得する頻度や、他のカメラ3Qの画像IMを取得する順番は上記の例に限らない。上記二つのいずれの取得方法であっても、優先カメラ3Pの画像IMが他のカメラ3Qの画像IMよりも優先(重要視)される。
【0035】
顔検出部1Cは、上述の顔検出処理を実施するものである。顔検出部1Cは、画像取得部1Bから順番に伝達される画像IMを一つずつ走査し、走査した画像IMが顔画像Ihを含む対象画像IOであるか否かを判定する検出判定を実施する。
【0036】
検出判定が成立した場合、すなわち、走査した画像IMに顔画像Ihが含まれていた場合、顔検出部1Cは、検出判定の成立を示す信号を顔認証部1Dに伝達する。これとともに、顔検出部1Cは、当該検出判定を成立させた画像IM(すなわち、顔画像Ihが含まれている対象画像IO)を顔認証部1Dに伝達する。なお、顔検出部1Cは、対象画像IOに含まれる顔画像Ihのみを顔認証部1Dに伝達してもよい。顔検出部1Cは、検出判定が成立しない場合、すなわち、走査した画像IMに顔画像Ihが含まれていない場合には、走査した画像IMの次に画像取得部1Bから伝達された画像IMについて、走査及び検出判定を実施する。
【0037】
顔検出部1Cは、画像IMの走査において、画像IMの全領域Rのうち、予め設定された一部の所定領域Rxについて走査する。つまり、顔検出部1Cは、画像全体の領域Rのうち所定領域Rxを除く領域については走査せずに、検出判定を実施する。
【0038】
図3を参照して、所定領域Rxについて詳述する。図3は、右方カメラ33で撮像された画像IMの一例であって、検出判定を成立させる画像IMの一例を示す図である。なお、図3において、黒塗りの領域は右方カメラ33で撮影されない領域を示している。
【0039】
右方カメラ33が魚眼カメラである場合、図3に示すように、画像IMには、車両2の車体(右側面)が写り込む車体領域Ra(図3にドット塗で示す領域)が含まれる。また、当該画像IMには、車両2の近傍の地面が写る地面領域Rb(図3にハッチング塗りで示す領域)が含まれる。顔検出部1Cでは、これらの領域Rb,Rbは、人物Hの顔が写り込まない領域として、走査する領域から除外される。つまり、所定領域Rxは、全領域Rのうち、車体領域Ra及び地面領域Rbの双方を除く領域とされる。
【0040】
さらに、本実施形態では、所定領域Rxが、少なくとも、人物Hの目間距離Xが所定値Xth以上となる領域とされる。この領域は、カメラ3を用いた実験やシミュレーションにより予め設定されてよい。
【0041】
なお、目間距離Xとは、画像IMに写る人物Hの右目と左目との間隔であり、目間距離Xに応じて顔画像Ihの大きさが定められる。顔画像Ihの大きさは、後続する顔認証処理の演算負荷に影響する。詳述すると、顔画像Ihの大きさが小さいほど、解像度が低い顔画像Ihに対して顔認証処理を行うこととなるため、顔認証処理の演算負荷が重くなる。このため、所定値Xthは、顔認証処理の演算負荷が重くなりすぎない程度の大きさの顔画像Ihを取得可能な値とされることが好ましい。本実施形態では、これらの領域(すなわち、車体領域Ra,地面領域Rb及び目間距離Xが所定値Xth以上となる領域)に鑑み、所定領域Rxが、図3に示すように、画像IMの全領域Rのうち上側且つ中央の矩形の領域として設定される。
【0042】
顔検出部1Cによる、所定領域Rxの走査方法,検出判定の方法及び顔画像Ihの取得方法については公知の手法を採用可能である。一例として、顔検出部1Cは、所定領域Rxに対し探索ウィンドウ(数ピクセル×数ピクセルの探索枠)の位置を1ピクセルずつ移動させながら走査する。そして、各探索ウィンドウのフレーム画像を、予め機械学習により作成しておいた識別器にかけて、当該フレーム画像が顔画像Ihであるか否かを判定する。顔検出部1Cは、当該判定が成立した場合に、上記のフレーム画像を顔画像Ihとして取得するとともに、画像IMが顔画像Ihを含む対象画像IOであると判定(すなわち検出判定が成立したと判定)する。
【0043】
顔認証部1Dは、上述の顔認証処理を実施するものである。顔認証部1Dは、顔検出部1Cから検出判定の成立を示す信号を受信した場合に、顔検出部1Cから伝達された顔画像Ihが登録顔画像Iuと一致するか否かの判定である顔認証判定を実施する。顔認証部1Dは、例えば、顔画像Ihにおける顔特徴を抽出し、抽出した顔特徴を登録顔画像Iuの顔特徴と照合し、同一の人物の顔特徴であるか否かを判定することで顔認証判定を実施する。
【0044】
[1-3.フローチャート]
図4は、顔認証装置1で実施される上述の処理を説明するためのフローチャート例である。図4のフローチャートは、例えば、接近判定部1Aで実施される接近判定が成立すると開始される。また、図4のフローチャートは、接近判定部1Aで実施される接近判定が非成立となった場合、携帯端末Hdが車両2内に存在する場合、或いは、顔認証部1Dで実施される顔認証判定が成立した場合に終了する。
【0045】
ステップS1では、接近方向ADが取得される。続くステップS2では、取得した接近方向ADを撮像範囲に含むカメラ3が優先カメラ3Pとして設定される。続くステップS3では、ステップS2で設定された優先カメラ3Pが考慮されて画像IMが取得され、ステップS4に進む。例えば、図1に示す状態で、はじめてステップS3の処理が実施される場合には、他のカメラ3Qよりも優先して、優先カメラ3Pとしての右方カメラ33の画像IMが取得される。
【0046】
ステップS4では、ステップS3で取得された画像IMに基づき検出判定が成立したか否かが判定される。ステップS4で検出判定が成立したと判定された場合には、ステップS5に進む。ステップS5では、顔認証判定が成立したか否かが判定される。ステップS5で顔認証判定が成立したと判定された場合、すなわち、ステップS4の検出判定を成立させた画像IMに写る人物Hの顔画像Ihが、登録人物Uの登録顔画像Iuと一致する場合には、このフローを終了する。このように、優先カメラ3Pで撮像された画像IMが優先的に処理されることで、このフローの開始から終了までにかかる処理時間の短縮を図ることができる。
【0047】
一方で、ステップS4で検出判定が成立しないと判定された場合、すなわち、優先カメラ3Pの画像IMに人物Hの顔画像Ihが含まれない場合には、ステップS3に戻る。また、ステップS5で顔認証判定が成立しないと判定された場合にも、ステップS3に戻る。なお、上記の「優先カメラ3Pの画像IMに人物Hの顔画像Ihが含まれない場合」としては、例えば、人物Hが車両2側を向いていない場合や、人物Hが優先カメラ3Pの撮像範囲から移動した場合などが挙げられる。
【0048】
ステップS4又はステップS5からステップS3に戻った場合のステップS3では、前回のステップS3で取得された画像IMを撮像したカメラ3とは別のカメラ3で撮像された画像IMが取得され、ステップS4に進む。例えば、はじめてのステップS3で、上記のように右方カメラ33の画像IMが取得された場合には、次のステップS3では他のカメラ3Q(例えば前方カメラ31)の画像IMが取得される。
【0049】
その後、ステップS4及びステップS5の判定がいずれも成立したと判定された場合には、このフローを終了する。このように、他のカメラ3Qの画像IMについても処理することで、人物Hが予期しない動きをした場合(例えば人物Hが優先カメラ3Pの撮像範囲から移動した場合)でも顔認証判定を成立させることができる。また、三回目以降のステップS3でも、優先カメラ3Pで撮像された画像IMが優先的に取得されることで、他のカメラ3Qの画像IMの処理中に、登録人物Uが車両2に到達することを抑制できる。
【0050】
[1-4.作用,効果]
(1)上述の顔認証装置1では、画像取得部1Bが複数のカメラ3のそれぞれで撮像された画像IMを順次取得し、顔検出部1Cが画像取得部1Bで取得された順に画像IMを一つずつ処理する。このように、複数のカメラ3で撮像された画像IMを同時に処理するのではなく、順番に処理することで、顔認証装置1の演算負荷が重くなり処理速度が低下することを抑制できる。さらに、顔検出部1Cは、画像IMの全領域Rのうち所定領域Rxについてのみ走査する。これにより顔検出処理に係る時間をさらに短縮できる。よって、人物Hを検知してから顔認証判定の成立までにかかる処理時間の短縮を図ることができる。
【0051】
また、顔認証装置1は、複数のカメラ3のうち対象画像IOを取得する可能性の高いカメラ3を優先カメラ3Pとして設定し、当該優先カメラ3Pで撮像された画像IMを、他のカメラ3Qで撮像された画像IMよりも優先的に取得する。これにより、より早期に顔認証判定を成立させることができるとともに、対象画像IOを取得する可能性の低い他のカメラ3Qの画像IMの処理中に、登録人物Uが車両2に到達することを抑制できる。
【0052】
(2)上述の顔認証装置1において、所定領域Rxは、画像IMの全領域Rのうち、車体領域Ra及び地面領域Rbの双方を除く領域とされる。このように、人物Hの顔が写る可能性の低い領域を走査する領域から除外することで、顔検出処理の精度の低下を抑制しつつ顔検出処理にかかる時間の短縮を図れる。
【0053】
(3)また、上記の顔認証装置1において、所定領域Rxは、目間距離Xが所定値Xth以上となる領域とされる。これにより、少なくとも目間距離Xが所定値Xth未満の顔画像Ihしか検出されない領域が走査されないので、後続する顔認証処理の演算負荷が重くなることを抑制できる。延いては、人物Hを検知してから顔認証判定の成立までにかかる処理時間の短縮を図ることができる。
【0054】
(4)上記の顔認証装置1では、接近方向ADを撮像範囲に含むカメラ3が優先カメラ3Pとして設定されるので、人物Hを撮像する可能性のより高いカメラ3の画像IMを優先的に処理できる。よって、人物Hを検知してから顔認証判定の成立までにかかる処理時間の短縮を図ることができる。
【0055】
[2.第二実施形態]
上述した顔認証装置1では、接近方向ADを撮像範囲に含むカメラ3を優先カメラ3Pとして設定するもの例示したが、優先カメラ3Pの設定方法は上述の例に限らない。例えば、接近方向ADの取得ができない場合には、顔認証装置1は別の方法で優先カメラ3Pを設定してよい。以下、図5を参照して、第二実施形態の顔認証装置1′について説明する。以下の説明では、上述した第一実施形態と異なる構成をおもに説明し、第一実施形態の構成と対応する構成については第一実施形態の符号にダッシュ(′)を付し、重複する説明は省略する。
【0056】
第二実施形態の顔認証装置1′は、車両2′の拠点として登録された拠点位置P1に車両2′が存在するか否かに応じて、優先カメラ3Pを設定するものである。拠点位置P1は、車両2′に登録された地点であれば特に限定されないが、車両2′が高い頻度で駐車される地点(例えば、自宅や職場)とされる。
【0057】
第二実施形態において、顔認証装置1′は、拠点位置P1に車両2′が存在する場合には、過去に拠点位置P1で顔認証判定を成立させた画像IMを撮像した回数が最多のカメラ3を優先カメラ3Pとして設定する。つまり、第二実施形態の顔認証装置1′は、車両2′が拠点位置P1に存在するときには、過去の顔認証判定の成立に最も多く寄与したカメラ3を優先カメラ3Pとして設定するものである。
【0058】
また、顔認証装置1′は、拠点位置P1以外の位置に車両2′が存在する場合であって、且つ、助手席側の側方である左方から車両2′が施錠された場合には、左方カメラ34を優先カメラ3Pとして設定する。拠点位置P1以外の位置で車両2′が左方から施錠されるケースとしては、例えば、ショッピングセンターなどで登録人物Uが同乗者(例えば子供)の降車を補助してから車両2′を施錠する場合が挙げられる。このような場合、登録人物Uは、乗車時に、自身が搭乗するよりも先に同乗者の乗車を補助する可能性がある。第二実施形態の顔認証装置1′はこのようなケースにおいて、左方カメラ34を優先カメラ3Pとして設定することで、人物Hを検知してから顔認証判定の成立までにかかる処理時間の短縮を図るものである。
【0059】
[2-1.構成]
車両2′には、複数のカメラ3と通信装置4′と測位装置5と助手席側のドアハンドルボタン6(以下、「助手席側ボタン6」とよぶ)とが設けられる。本実施形態において、通信装置4′は、接近方向ADの取得を行なわず、距離Dのみを取得(算出)する。
【0060】
測位装置5は、GNSS(Global Navigation Satellite System,全球測位衛星システム)や図示しない車速センサの検出情報などに基づいて、車両2′の現在位置Pの位置情報(緯度や経度や高度)を計測するものである。
【0061】
助手席側ボタン6は、助手席側のドアハンドル(図示せず)に設けられて手動で操作される物理ボタンである。助手席側ボタン6が操作された場合、助手席側ボタン6の操作信号は、車両2′のドアの開錠状態と施錠状態とを切り替えるアクチュエータ(図示せず)に伝達される。これにより、ドアの開錠状態と施錠状態とが切り替えられる。助手席側ボタン6の操作信号は、顔認証装置1′にも伝達される。
【0062】
顔認証装置1′は、上述の処理(演算)を実施する電子計算機(コンピューター)である。顔認証装置1′の入力側には、複数のカメラ3,通信装置4′,測位装置5及び助手席側ボタン6が接続される。なお、顔認証装置1′の入力側には、登録顔画像Iuや拠点位置P1を登録するための図示しない入力装置が接続されていてもよい。顔認証装置1′の出力側には、車載機器(例えば、上記のアクチュエータ)や車載機器を制御するための制御装置が接続されてよい。
【0063】
顔認証装置1′には、上述の処理を実施するための機能要素として、接近判定部1A,画像取得部1B′,顔検出部1C及び顔認証部1Dが設けられる。さらに、顔認証装置1′には、拠点判定部1E及び記憶部1Fが設けられる。
【0064】
拠点判定部1Eは、拠点位置P1に車両2′が存在するか否かの判定である拠点判定を実施するものである。拠点判定部1Eは、測位装置5から車両2′の現在位置Pの位置情報を取得し、取得した位置情報が拠点位置P1の位置情報と概ね一致するか否かを判定することで、拠点判定を実施する。拠点判定部1Eは、拠点判定の結果を画像取得部1B′に伝達する。拠点判定部1Eは、上記の判定が成立した場合には、拠点位置P1に車両2′が存在することを示す信号を記憶部1Fに伝達してもよい。
【0065】
記憶部1Fは、拠点位置P1で顔認証判定を成立させた画像IM(以下、「正画像IC」ともよぶ)を撮像したカメラ3が、正画像ICを撮像した回数を記憶するものである。記憶部1Fは、拠点位置P1に車両2′が存在することを示す信号を拠点判定部1Eから受信した場合、且つ、顔認証判定の成立を示す信号を顔認証部1Dから受信した場合に、正画像ICを撮像したカメラ3を特定する。そして、記憶部1Fは、複数のカメラ3ごとに正画像ICを撮像した回数をカウントし、当該回数の最も多いカメラを拠点カメラ3Bとして記憶する。
【0066】
画像取得部1B′は、第一実施形態の画像処理部1Bと同様に、画像取得処理を実施するものである。上述の通り、第二実施形態では、優先カメラ3Pが、拠点位置P1に車両2′が存在するか否かに応じて設定される。このため、画像取得部1B′は、拠点判定部1Eから拠点判定の結果を受信し、受信した結果に応じて優先カメラ3Pを設定する。
【0067】
具体的には、画像取得部1B′は、拠点判定部1Eから拠点判定の成立を示す結果を受信した場合には、記憶部1Fを参照し、拠点カメラ3Bを優先カメラ3Pとして設定する。また、画像取得部1B′は、拠点判定部1Eから拠点判定の非成立を示す結果を受信した場合には、この結果を受信している間に助手席側ボタン6から操作信号を受信したか否かを判定する。そして、画像取得部1B′は、助手席側ボタン6から操作信号を受信したと判定した場合には、左方カメラ34を優先カメラ3Pとして設定する。
【0068】
なお、画像取得部1B′は、助手席側ボタン6から操作信号を受信しないと判定した場合には、優先カメラ3Pを設定せずに、予め設定された順序で(例えば、上面視で、前方カメラ31から時計回りに)画像IMを取得してよい。或いは、この場合、画像取得部1B′は、運転席側の側方である右方から登録人物Uが車両2′に接近する可能性が高いと判断して、右方カメラ33を優先カメラ3Pとして設定してもよい。
【0069】
[2-2.作用,効果]
(1)上述の顔認証装置1′では、車両2′が拠点位置P1に存在する場合には、拠点カメラ3Bが優先カメラ3Pとして設定される。このように、顔認証装置1′では、接近方向ADが分からなくても、優先カメラ3Pを設定することができる。よって、人物Hを検知してから顔認証判定の成立までにかかる処理時間の短縮を図ることができる。
【0070】
(2)また、上述の顔認証装置1′では、車両2′が拠点位置P1以外の位置に存在する場合であって、車両2′が助手席側から施錠された場合には、左方カメラ34が優先カメラ3Pとして設定される。このように、登録人物Uの降車後の行動を加味して優先カメラ3Pを設定することで、接近方向ADが分からなくても、人物Hを検知してから顔認証判定の成立までにかかる処理時間の短縮を図ることができる。
その他、第二実施形態の顔認証装置1′においても、第一実施形態の顔認証装置1から得られる作用,効果の(1)~(3)と同様の作用,効果を得ることができる。
【0071】
[3.その他]
上述の顔認証装置1,1′の構成及び顔認証装置1,1′で実施される処理は一例である。例えば、所定領域Rxは、少なくとも、画像IMの全領域Rのうちの一部の領域であればよく、上述した領域に限らない。
【0072】
顔認証装置1,1′は、車両2,2′に搭載された全てのカメラ3から画像IMを取得しなくてもよい。例えば、後方カメラ32で撮像された画像IMから、バックドアの開閉が困難であると判定した場合、顔認証装置1,1′は、後方カメラ32で撮像された画像IMを取得しなくてもよい。
【0073】
また、顔認証装置1,1′が適用される車両2,2′の構成も一例である。例えば、車両2,2′には、距離Dを取得する装置として、通信装置4,4′に代えて、又は、加えて、車外の物体を検知するレーダ装置が設けられてよい。車両2′において、車両2′が助手席側の側方(第二側方)から施錠されたことを検知する装置は、助手席側ボタン6でなくてもよい。例えば、車両2′には、助手席側ボタン6に代えて、又は、加えて、車両2′のスマートキーから発信される微弱な電波を受信する受信機が用いられてもよい。この場合、受信機は、受信した電波の発信方向を特定することで、車両2′が助手席側の側方(第二側方)から施錠されたか否かを判定してよい。
【0074】
複数のカメラ3は、少なくとも二つ以上で、且つ、異なる方向を向いていればよく、アラウンドビュー画像を生成するためのカメラ31~34に限らない。また、カメラ3は、魚眼カメラでなくてもよい。
車両は、車幅方向の左側に運転席が設けられた左ハンドル車であってもよい。この場合、特許請求の範囲の「運転席側から第一側方」は「左方」であり、「助手席側から前記第一側方とは別の第二側方」は「右方」となる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本件は、車両に適用される顔認証装置の製造産業に利用可能であり、その顔認証装置を搭載した車両の製造産業にも利用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1,1′ 顔認証装置
1A 接近判定部
1B,1B′ 画像取得部
1C 顔検出部
1D 顔認証部
1E 拠点判定部
2,2′ 車両
3 カメラ
3P 優先カメラ
3Q 他のカメラ
31 前方カメラ
32 後方カメラ
33 右方カメラ
34 左方カメラ
AD 接近方向
D 距離
Dth 接近距離
H 人物(車外の人物)
IM 画像
IO 対象画像
Ih 顔画像
Iu 登録顔画像
R 全領域
Ra 車体領域(車両の車体が写る領域)
Rb 地面領域(車両の近傍の地面が写る領域)
Rx 所定領域
X 目間距離
Xth 所定値
図1
図2
図3
図4
図5