(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140264
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 37/20 20060101AFI20241003BHJP
F16L 19/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F16L37/20
F16L19/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051322
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】株式会社PILLAR
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南原 翔平
(72)【発明者】
【氏名】田邉 祐樹
【テーマコード(参考)】
3H014
3J106
【Fターム(参考)】
3H014EA07
3J106AB01
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD02
3J106BE13
3J106BE33
3J106CA02
3J106ED38
3J106EE20
3J106EF04
(57)【要約】
【課題】シール性能を向上させても、管継手の組み付け作業を容易に行えるようにする。
【解決手段】管継手1は、第1ホース91に接続され軸方向に延びるシール突起23を有する筒状の第1継手2と、第2ホース92に接続され、挿入部が軸方向から挿入されるシール溝33を有する筒状の第2継手3と、を備え、シール突起23がシール溝33に挿入されることで、シール突起23にシール面圧が発生する。管継手1は、テコの原理を利用してシール突起23をシール溝33に挿入するための組付機構4を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の配管に接続され、軸方向に延びる挿入部を有する筒状の第1継手と、
他の配管に接続され、前記挿入部が軸方向から挿入される被挿入部を有する筒状の第2継手と、を備え、
前記挿入部が前記被挿入部に挿入されることで、前記挿入部にシール面圧が発生する、管継手であって、
テコの原理を利用して前記挿入部を前記被挿入部に挿入するための組付機構を備える管継手。
【請求項2】
前記組付機構は、
前記第1継手及び前記第2継手のうちの一方の継手の外周において、前記一方の継手の径方向に延びる中心線回りに回転可能に設けられた回転部と、
前記回転部に設けられ、前記回転部の回転により、前記第1継手及び前記第2継手のうちの他方の継手に係合可能な係合部と、
前記回転部に設けられ、前記中心線上を支点として前記回転部を回転させる回転操作が行われる操作部と、を備え、
前記操作部は、前記回転操作により、前記係合部と前記他方の継手との係合部分である作用点に対して、前記挿入部が前記被挿入部に挿入される方向の力を付与する力点を有する、請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記係合部及び前記操作部は、前記回転部と一体に設けられている、請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
前記操作部は、前記回転操作により、前記一方の継手側に位置する操作前位置から、前記他方の継手側に位置する操作後位置まで移動可能であり、
前記一方の継手に設けられ、前記操作部を前記操作前位置に保持する保持部をさらに備える、請求項2又は請求項3に記載の管継手。
【請求項5】
前記操作部は、前記回転操作により、前記一方の継手側に位置する操作前位置から、前記他方の継手側に位置する操作後位置まで移動可能であり、
前記他方の継手に設けられ、前記回転操作時に前記操作部が前記操作後位置を超えて移動するのを阻止する阻止部をさらに備える、請求項2又は請求項3に記載の管継手。
【請求項6】
前記操作部は、前記回転操作により、前記一方の継手側に位置する操作前位置から、前記他方の継手側に位置する操作後位置まで移動可能であり、
前記他方の継手に設けられ、前記操作部が、前記操作後位置から前記操作前位置側へ移動するのを規制する規制部をさらに備える、請求項2又は請求項3に記載の管継手。
【請求項7】
前記作用点は、前記回転操作により、前記支点を中心とする所定の角度範囲で回転移動可能であり、
前記角度範囲は、前記一方の継手の軸線かつ前記中心線に対して垂直であって前記支点を通過する仮想線により、二等分される範囲に設定されている、請求項2又は請求項3に記載の管継手。
【請求項8】
前記回転部は、前記第2継手に設けられている、請求項2又は請求項3に記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車内に配置されるゴムホースや金属パイプ等の様々な配管を互いに連結する管継手として、特許文献1に記載された管継手が知られている。特許文献1の管継手は、一の配管が接続される本体と、他の配管が接続されるスリーブと、を備えている。本体には雌ねじと環状溝が形成されている。スリーブには、雄ねじと環状突起が形成されている。本体の雌ねじにスリーブの雄ねじが締め込まれると、本体の環状溝にスリーブの環状突起が圧入される。これにより、本体とスリーブとが接続され、その接続部分がシールされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記管継手において、シール性能を向上させるためには、環状溝に対する環状突起のシール面圧を高くする必要がある。しかし、シール面圧を高くすると、環状突起を環状溝に圧入するときの圧入荷重が高くなり、管継手の組み付け作業が重労働となる。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、シール性能を向上させても、管継手の組み付け作業を容易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示は、一の配管に接続され、軸方向に延びる挿入部を有する筒状の第1継手と、他の配管に接続され、前記挿入部が軸方向から挿入される被挿入部を有する筒状の第2継手と、を備え、前記挿入部が前記被挿入部に挿入されることで、前記挿入部にシール面圧が発生する、管継手であって、テコの原理を利用して前記挿入部を前記被挿入部に挿入するための組付機構を備える管継手である。
【0007】
本開示の管継手によれば、作業者は、テコの原理を利用した組付機構により、第1継手の挿入部を第2継手の被挿入部に容易に挿入することができる。これにより、挿入部に発生するシール面圧を高くしてシール性能を向上させても、管継手の組み付け作業を容易に行うことができる。
【0008】
(2)前記(1)の管継手において、前記組付機構は、前記第1継手及び前記第2継手のうちの一方の継手の外周において、前記一方の継手の径方向に延びる中心線回りに回転可能に設けられた回転部と、前記回転部に設けられ、前記回転部の回転により、前記第1継手及び前記第2継手のうちの他方の継手に係合可能な係合部と、前記回転部に設けられ、前記中心線上を支点として前記回転部を回転させる回転操作が行われる操作部と、を備え、前記操作部は、前記回転操作により、前記係合部と前記他方の継手との係合部分である作用点に対して、前記挿入部が前記被挿入部に挿入される方向の力を付与する力点を有するのが好ましい。
【0009】
この場合、作業者は、操作部によって、一方の継手に対して回転部を支点(中心線)回りに回転させる回転操作を行うことができる。その際、係合部が他方の継手に係合することで、その係合部分である作用点に対して、第1継手の挿入部が第2継手の被挿入部に挿入される方向の力が、操作部の力点から付与される。これにより、作業者は、テコの原理を利用して、第1継手の挿入部を第2継手の被挿入部に容易に挿入することができる。したがって、挿入部に発生するシール面圧を高くしてシール性能を向上させても、管継手の組み付け作業を容易に行うことができる。
【0010】
(3)前記(2)の管継手において、前記係合部及び前記操作部は、前記回転部と一体に設けられているのが好ましい。
この場合、管継手の構成を簡素化することができる。
【0011】
(4)前記(2)又は(3)の管継手において、前記操作部は、前記回転操作により、前記一方の継手側に位置する操作前位置から、前記他方の継手側に位置する操作後位置まで移動可能であり、前記一方の継手に設けられ、前記操作部を前記操作前位置に保持する保持部をさらに備えるのが好ましい。
この場合、作業者が操作部の回転操作を行う前に、操作部は、保持部によって一方の継手側の操作前位置に保持される。この状態で作業者が他方の継手を一方の継手に近づける際に、他方の継手が操作部と干渉するのを抑制することができる。これにより、管継手の組み付け作業をさらに容易に行うことができる。
【0012】
(5)前記(2)から(4)のいずか一の管継手において、前記操作部は、前記回転操作により、前記一方の継手側に位置する操作前位置から、前記他方の継手側に位置する操作後位置まで移動可能であり、前記他方の継手に設けられ、前記回転操作時に前記操作部が前記操作後位置を超えて移動するのを阻止する阻止部をさらに備えるのが好ましい。
この場合、作業者が操作部の回転操作を行ったときに、操作部が操作後位置を超えて移動するのを、阻止部により阻止することができる。これにより、操作部の誤操作に起因して操作部や係合部等が損傷するのを抑制することができる。
【0013】
(6)前記(2)から(5)のいずか一の管継手において、前記操作部は、前記回転操作により、前記一方の継手側に位置する操作前位置から、前記他方の継手側に位置する操作後位置まで移動可能であり、前記他方の継手に設けられ、前記操作部が、前記操作後位置から前記操作前位置側へ移動するのを規制する規制部をさらに備えるのが好ましい。
この場合、作業者が操作部の回転操作を行った後、操作部が操作後位置から操作前位置側へ移動するのを、規制部により規制することができる。これにより、係合部は他方の継手に係合された状態で保持されるので、振動等に起因して第1継手の挿入部が第2継手の被挿入部から抜け出る方向へ移動するのを抑制することができる。その結果、挿入部のシール面圧が低くなってシール性能が低下するのを抑制することができる。
【0014】
(7)前記(2)から(6)のいずか一の管継手において、前記作用点は、前記回転操作により、前記支点を中心とする所定の角度範囲で回転移動可能であり、前記角度範囲は、前記一方の継手の軸線かつ前記中心線に対して垂直であって前記支点を通過する仮想線により、二等分される範囲に設定されているのが好ましい。
操作部の回転操作時に、前記仮想線に沿う方向への作用点の移動量が大きくなるほど、前記軸線に沿う方向、つまり挿入部が被挿入部に挿入される方向への力が分散されて弱まってしまう。これに対して、上記(7)では、前記仮想線に沿う方向への作用点の移動量を可及的に小さくできるので、挿入部が被挿入部に挿入される方向への力が弱まるのを抑制することができる。また、上記(7)では、作用点が回転移動する角度範囲を可及的に小さくできるので、操作部の回転操作時の操作角度も小さくすることができる。これにより、管継手の組み付け作業を効率的に行うことができる。
【0015】
(8)前記(2)から(7)のいずか一の管継手において、前記回転部は、前記第2継手に設けられているのが好ましい。
一般に、被挿入部を有する第2継手は、挿入部を有する第1継手よりも軸方向に長くなる。上記(8)では、相対的に軸方向に長い第2継手に回転部が設けられるので、回転部を設けるためのスペースを確保するために、第2継手を軸方向に長くするのを極力抑えることができる。これにより、組み付け後の管継手全体が軸方向に長くなるのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、シール性能を向上させても、管継手の組み付け作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】
図1の第1継手を軸方向他方側かつ上側から見た斜視図である。
【
図4】
図1の第2継手を軸方向一方側かつ下側から見た斜視図である。
【
図8】管継手を組み付ける前の状態を示す側面図である。
【
図9】管継手の組み付け途中の状態を示す側面図である。
【
図10】管継手の組み付け途中の状態を示す側面図である。
【
図11】操作部の回転操作時に作用点が移動する角度範囲を示す拡大側面図である。
【
図12】互いに異なる2つの前記角度範囲を示す模式図である。
【
図13】第2実施形態に係る管継手の軸方向の断面図である。
【
図14】第3実施形態に係る管継手の斜視図である。
【
図18】
図14の管継手を組み付ける前の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、以下に記載する各実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、第1実施形態に係る管継手1の斜視図である。
図2は、
図1の管継手1の軸方向の断面図である。
図1及び
図2において、管継手1は、例えば電気自動車(EV)のバッテリーパックの冷却ラインに設けられ、冷却水(LLC)を通す第1ホース(一の配管)91及び第2ホース(他の配管)92を連結するために用いられる。第1ホース91及び第2ホース92は、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)等の樹脂材料からなる。
【0019】
管継手1は、第1継手2と第2継手3とを備えている。第1継手2及び第2継手3は、いずれも、ポリアミド(PA)又はガラス繊維強化ポリアミド(PA-GF)等の樹脂材料により円筒状に形成されている。第1継手2及び第2継手3は、同一の内径を有し、同一の軸線C上に配置された状態で互いに接続される。
【0020】
第1継手2は第1ホース91に接続され、第2継手3は第2ホース92に接続される。第1継手2及び第2継手3の各内部空間は、第1ホース91の内部空間と第2ホース92の内部空間とを連通している。すなわち、第1継手2及び第2継手3の各内部空間は、2本のホース91,92の間を繋ぐLLCの流路として機能する。
【0021】
以下、本明細書において、「軸方向」とは、軸線Cに沿う方向である。便宜上、
図2の左側を「軸方向一方側」といい、
図2の右側を「軸方向他方側」という。また、本明細書において、「径方向」とは、軸線Cに対して直交する方向であり、「周方向」とは、軸線C回りの方向である。
【0022】
<第1継手>
図3は、
図1の第1継手2を軸方向他方側かつ上側から見た斜視図である。
図2及び
図3において、第1継手2は、軸方向一方側に形成された第1接続部21と、軸方向他方側に形成された第1本体部22と、を備えている。第1接続部21は、第1ホース91との接続部分である。第1接続部21の外径は第1ホース91の内径よりも少し大きい。第1接続部21は、第1ホース91内に圧入され、第1ホース91の開口端部を押し広げる。第1ホース91の開口端部の内周面は、その復元力により第1接続部21の外周面を径方向内方へ締め付ける。これにより、第1接続部21は第1ホース91に接続され、第1接続部21の外周面と第1ホース91の内周面との間はシールされる。
【0023】
第1本体部22は、第2継手3との接続部分である。第1本体部22の内径は、第1接続部21の内径と同一である。第1本体部22の外径は、第1接続部21の外径よりも大きい。したがって、第1本体部22の径方向の厚みは、第1接続部21の径方向の厚みよりも大きい。
【0024】
第1本体部22は、径方向内側において軸方向他方側に延びるシール突起(挿入部)23と、径方向外側において軸方向他方側に延びる外筒部24と、を有している。シール突起23は、円筒状に形成されている。外筒部24は、シール突起23の径方向外方に間隔をあけて円筒状に形成されている。シール突起23と外筒部24との間には、軸方向他方側に開口する円環状の凹溝25が形成されている。
【0025】
第1本体部22は、外筒部24に設けられた一対の突出部26をさらに有している。一対の突出部26は、外筒部24において周方向に間隔あけて、それぞれ軸方向他方側に突出して設けられている。本実施形態の各突出部26は、第1本体部22と一体に設けられている。各突出部26における
図3の上側には、係合溝27が形成されている。係合溝27の詳細については後述する。
【0026】
<第2継手>
図4は、
図1の第2継手3を軸方向一方側かつ下側から見た斜視図である。
図2及び
図4において、第2継手3は、軸方向他方側に形成された第2接続部31と、軸方向一方側に形成された第2本体部32と、を備えている。第2接続部31は、第2ホース92との接続部分である。第2接続部31の外径は、第2ホース92の内径よりも少し大きい。第2接続部31は、第2ホース92内に圧入され、第2ホース92の開口端部を押し広げる。第2ホース92の開口端部の内周面は、その復元力により第2接続部31の外周面を径方向内方へ締め付ける。これにより、第2接続部31は第2ホース92に接続され、第2接続部31の外周面と第2ホース92の内周面との間はシールされる。
【0027】
第2本体部32は、第1継手2との接続部分である。第2本体部32の内径は、第2接続部31の内径と同一である。第2本体部32の外径は、第2接続部31の外径よりも大きく、かつ第1本体部22の外径と同一である。したがって、第2本体部32の径方向の厚みは、第2接続部31の径方向の厚みよりも大きく、かつ第1本体部22の径方向の厚みと同一である。
【0028】
第2本体部32は、径方向内側において軸方向一方側に開口するシール溝(被挿入部)33と、径方向外側において軸方向一方側に突出する凸部34と、を有している。シール溝33は、第1継手2のシール突起23が軸方向一方側から圧入(挿入)されるように円筒状に形成されている。シール溝33の外径は、シール突起23の外径と同一である。シール溝33の内径は、シール突起23の内径よりも少し大きい。凸部34は、第1継手2の凹溝25に挿入されるように円筒状に形成されている。凸部34の内径は、凹溝25の内径と同一である。凸部34の外径は、凹溝25の外径よりも小さい。
【0029】
第2本体部32は、一対の支持部35と、一対の切欠溝36と、をさらに有している。一対の支持部35は、それぞれ円柱状に形成されており、第2本体部32の外周面において、周方向に等間隔(180°の位相差)となる位置で、径方向外方に突出して設けられている。本実施形態の各支持部35は、第2本体部32と一体に設けられている。
【0030】
一対の切欠溝36は、第2本体部32の外周面において、それぞれ各支持部35と周方向に隣接して形成されている。各切欠溝36は、第1継手2の突出部26が軸方向一方側から挿入されるように形成されている。本実施形態の各切欠溝36は、略凹状に形成されており、第2本体部32の軸方向一方側かつ径方向外側に開口している。
【0031】
以上の構成により、第1継手2の凹溝25に第2継手3の凸部34が軸方向他方側から挿入されるとともに、第1継手2の各突出部26が第2継手3の各切欠溝36に軸方向一方側から挿入される。また、第1継手2のシール突起23は、第2継手3のシール溝33に、軸方向一方側から圧入される。シール突起23がシール溝33に圧入されると、シール突起23の内周面とシール溝33の内周面とが密着し、これら両内周面にシール面圧が発生する。これにより、第1継手2と第2継手3との接続部分がシールされる。
【0032】
<組付機構>
図1において、管継手1は、その組み付け時に使用される組付機構4をさらに備えている。なお、
図2では、組付機構4の図示を省略している。組付機構4は、テコの原理を利用して、第1継手2のシール突起23を第2継手3のシール溝33に挿入するときに用いられる。本実施形態の組付機構4は、例えば、第1継手2及び第2継手3と同一の樹脂材料からなる単一の棒状部材4Aで構成されている。
【0033】
図5は、
図1の管継手1の側面図である。
図6は、
図1の管継手1の平面図である。
図7は、組付機構4の斜視図である。
図5~
図7において、組付機構4(棒状部材4A)は、一対の回転部5と、一対の係合部6と、操作部7と、を備えている。一対の回転部5は、棒状部材4Aの長手方向両側において、それぞれ螺旋状に1周以上湾曲することで、有端円環状に形成されている。
【0034】
一対の回転部5は、それぞれ第2継手3の各支持部35に取り付けられている。具体的には、各回転部5は、各支持部35に嵌め込まれ、各支持部35の軸方向(第2継手3の径方向)に延びる中心線X1回りに回転可能に支持されている。各回転部5の中心線X1上の回転中心は、後述するテコの原理の支点P1として機能する。
【0035】
一対の係合部6は、棒状部材4Aの長手方向両端部において、それぞれ各回転部5と一体に設けられている。各係合部6は、延出部61と、作用部62と、を有している。延出部61は、回転部5の一端から当該回転部5の接線方向に延びている。作用部62は、延出部61の先端から湾曲し、径方向(中心線X1方向)の内方に向かって延びている。
【0036】
各係合部6は、対応する回転部5と共に中心線X1回りに回転する。その際、各係合部6における作用部62の先端部は、第2継手3の各切欠溝36内を移動するようになっている。各作用部62の中心線X1方向の長さは、切欠溝36の溝底に当接しない程度の寸法とされている。
【0037】
各作用部62の先端部は、各切欠溝36内を移動するときに、当該切欠溝36に挿入された突出部26の係合溝27に係合するようになっている。作用部62と係合溝27との係合部分は、後述するテコの原理の作用点P2として機能する。
【0038】
操作部7は、管継手1を組み付ける際に、作業者が一対の回転部5をそれぞれ支点P1回りに回転させる操作(以下、単に回転操作という)を行う部分である。操作部7は、棒状部材4Aの一対の回転部5の間において、これらの回転部5と一体に設けられている。本実施形態の操作部7は、平面視において例えば略U字状に形成されている。操作部7は、一対のアーム部71と、把持部72と、を有している。
【0039】
各アーム部71は、各回転部5の他端から、当該回転部5の接線方向、かつ係合部6の延出部61とは異なる方向に延びている。一対のアーム部71の先端側は、平面視において互いに近づくように延びるとともに、側面視において第2継手3の径方向外方まで延びている。
【0040】
把持部72は、一対のアーム部71の先端同士を連結する部分であり、中心線X1方向に延びている。把持部72は、回転操作時に、作業者によって把持される部分である。把持部72の中心線X1方向の中央部は、後述するテコの原理の力点P3として機能する。このため、支点P1から力点P3までの直線距離は、支点P1から作用点P2までの直線距離よりも長くなっている。
【0041】
図8は、管継手1を組み付ける前の状態を示す側面図である。
図5及び
図8において、 操作部7は、回転操作時に、支点P1回りに回転しながら移動する。操作部7は、回転操作により、第2継手3側に位置する操作前位置(
図8)から、第1継手2側に位置する操作後位置(
図5)まで移動可能である。
【0042】
<保持部>
図6及び
図8において、管継手1は、操作部7を操作前位置に保持する一対の保持部11をさらに備えている。一対の保持部11は、第2継手3の第2本体部32の外周面において、互いに周方向に間隔をあけて設けられている。
【0043】
各保持部11は、第1突起12と、第2突起13と、を有している。第1突起12及び第2突起13は、第2本体部32と一体に設けられている。第1突起12は、操作部7が操作前位置から操作後位置側へ移動するのを規制するものである。第1突起12は、第2本体部32の外周面から径方向外方に突出している。
【0044】
第1突起12は、操作部7が操作前位置にあるときに、アーム部71が所定圧力で当接する当接面12aを有している(
図5も参照)。アーム部71の当接面12aに対する所定圧力は、作業者が操作部7を操作後位置側へ押し込むと、アーム部71と当接面12aとの当接が解除される程度の圧力とされている。このため、当接面12aは、アーム部71の操作前位置から操作後位置への移動を許容し得る位置に配置されている。
【0045】
第2突起13は、操作前位置にある操作部7が操作後位置側とは反対側へ向かって移動するのを阻止するものである。第2突起13は、第2本体部32の外周面における第1突起12と近接する位置から、径方向外方に突出している。第2突起13は、操作部7が操作前位置にあるときに、アーム部71が当接する当接面13aを有している。当接面13aは、アーム部71が操作前位置から前記反対側へ移動するのを阻害する位置に配置されている。これにより、第2突起13は、操作部7が操作前位置から前記反対側へ移動するのを阻止している。
【0046】
<阻止部>
図5及び
図6において、管継手1は、回転操作時に、操作部7が操作後位置を超えて移動するのを阻止する一対の阻止部14をさらに備えている。一対の阻止部14は、第1継手2の第1本体部22の外周面において、互いに周方向に間隔をあけて、径方向外方に突出して設けられている。本実施形態の各阻止部14は、第1本体部22と一体に設けられている。
【0047】
各阻止部14は、操作部7が操作後位置にあるときに、各アーム部71が当接する当接面14aを有している(
図3も参照)。各当接面14aは、各アーム部71が操作後位置を超えて移動するのを阻害する位置に配置されている。これにより、各阻止部14は、操作部7が操作後位置を超えて移動するのを阻止している。
【0048】
<規制部>
管継手1は、操作部7が操作後位置から操作前位置側へ移動するのを規制する一対の規制部15をさらに備えている。一対の規制部15は、第1継手2の第1本体部22の外周面において、互いに周方向に間隔をあけて設けられている。一対の規制部15は、それぞれ各阻止部14と近接する位置から、径方向外方に突出している。本実施形態の各規制部15は、第1本体部22と一体に設けられている。
【0049】
各規制部15は、当接面15aと、乗り越え部15bと、を有している。乗り越え部15bは、平面視において規制部15の中心線X1方向の外側に形成されている。乗り越え部15bは、回転操作の途中において、操作部7のアーム部71が操作後位置よりも手前の位置で当接する部分である。乗り越え部15bに当接したアーム部71は、その状態から作業者が操作部7を操作後位置側へ押し込むことで、中心線X1方向の外側に撓み変形しながら、乗り越え部15bを乗り越えるようになっている。
【0050】
当接面15aは、乗り越え部15bを乗り越えて操作後位置まで移動したアーム部71が当接する面である。当接面15aは、操作後位置から操作前位置側へ移動するのを規制する位置に配置されている。これにより、各規制部15は、操作部7が操作後位置から操作前位置側へ移動するのを規制している。
【0051】
<管継手の組み付け途中の説明>
図9及び
図10は、いずれも管継手1の組み付け途中の状態を示す側面図である。
図9は、
図8に示す状態から、第1継手2を第2継手3側に近づけた状態を示している。この状態において、第1継手2の各突出部26の先端部は、第2継手3の対応する切欠溝36に挿入される。
図10は、
図9に示す状態から、操作部7の回転操作により係合部6を第1継手2の係合溝27に係合させた初期状態を示している。
図9及び
図10において、係合溝27は、軸方向一方側に形成された傾斜面27aと、軸方向他方側に形成された係合面27bと、を有している。
【0052】
傾斜面27aは、軸方向一方側から軸方向他方側へ向かうにしたがって、係合溝27の溝深さが徐々に深くなるように傾斜している。これにより、
図9に示す状態から、操作部7の回転操作によって係合部6が支点P1を中心として図中の反時計回り方向に回転するとき、係合部6の作用部62が、係合溝27の傾斜面27aと干渉するのを抑制できる。
【0053】
係合面27bは、係合部6の作用部62の外周面が係合する面である。係合面27bは、側面視において
図9の上下方向に真っすぐ延びている。
図9に示す状態から、作業者が操作部7の把持部72を操作後位置側(図中の左側)へ移動させる回転操作を行うと、係合部6の作用部62が係合溝27内を移動し、
図10に示すように作用部62の外周面が係合面27bに係合する。作用部62と係合面27bとの係合部分は、上記作用点P2として機能する。
【0054】
図10に示す状態から、作業者が操作部7の把持部72をさらに操作後位置側へ押し込み、回転部5と共に係合部6を支点P1回りに回転させると、テコの原理によって、把持部72の力点P3から、係合部6と係合溝27との係合部分である作用点P2に対して、軸方向他方側への力が付与される。この作用点P2に付与される力によって、第1継手2のシール突起23(
図2参照)は、第2継手3のシール溝33に徐々に圧入される。
【0055】
図5に示すように、作業者が操作部7の把持部72を操作後位置まで押し込むと、シール突起23は、シール溝33内の適正位置まで圧入された状態となる。これにより、シール突起23とシール溝33の両内周面にシール面圧が発生し、第1継手2と第2継手3との接続部分がシールされる。
【0056】
<作用点が移動する角度範囲>
図11は、操作部7の回転操作時に作用点P2が移動する角度範囲を示す拡大側面図である。
図11の2点鎖線で示す位置にある作用点P2(以下、作用点P21ともいう)は、
図10に示す状態、つまり、回転操作により作用部62(係合部6)が係合面27b(係合溝27)に係合した初期状態を示している。
図11の実線で示す位置にある作用点P2(以下、作用点P22ともいう)は、
図5に示す状態、つまり、回転操作によりシール突起23がシール溝33内の適正位置まで圧入されたとき(
図2参照)の作用部62と係合面27bとの係合状態を示している。
【0057】
図11において、作用点P2は、回転操作時に支点P1を中心とする所定の角度範囲θ1で回転移動する。角度範囲θ1は、第2継手3の軸線Cかつ支持部35の中心線X1に対して垂直であって支点P1を通過する仮想線Kにより、二等分される範囲に設定されている。以下、その理由について説明する。
【0058】
図12は、互いに異なる2つの前記角度範囲を示す模式図である。
図12の左図は、本実施形態の角度範囲θ1を示している。
図12の右図は、仮想線Kにより二等分されない範囲に設定された角度範囲θ2を示している。
図12に示すように、各角度範囲θ1,θ2の設定範囲が異なる場合でも、作用点P21から作用点P22までの軸方向の距離、つまりシール突起23をシール溝33内の適正位置まで圧入するための圧入距離Lは、同一距離にする必要がある。
【0059】
図12において、左図と右図の圧入距離Lを同一距離にすると、左図における作用点P21から作用点P22までの仮想線Kに沿う方向(図中の上下方向)の距離B1よりも、右図における作用点P21から作用点P22までの仮想線Kに沿う方向の距離B2が長くなる。このため、右図の作用点P2よりも左図の作用点P2のほうが、回転操作時に仮想線Kに沿う方向の移動量(軸ずれ)が大きくなる。前記移動量が大きくなるほど、軸線Cに沿う軸方向、つまりシール突起23がシール溝33に圧入される圧入方向への力が分散されて弱まってしまう。そこで、本実施形態では、作用点P2の前記移動量を可及的に小さくするために、作用点P2の角度範囲θ1は、仮想線Kにより二等分される範囲に設定されている。
【0060】
また、右図及び左図の圧入距離Lを同一距離にすると、右図の角度範囲θ1よりも左図の角度範囲θ2のほうが大きくなる。このため、右図における回転操作時の操作部7の操作角度α2よりも、左図における回転操作時の操作部7の操作角度α1のほうが大きくなる。そこで、本実施形態では、操作部7の操作角度α1を可及的に小さくする観点からも、作用点P2の角度範囲θ1は、仮想線Kにより二等分される範囲に設定されている。
【0061】
<作用効果>
本実施形態の管継手1によれば、作業者は、操作部7によって、第2継手3に対して回転部5を支点P1回りに回転させる回転操作を行うことができる。その際、係合部6が第1継手2に係合することで、その係合部分である作用点P2に対して、第1継手2のシール突起23が第2継手3のシール溝33に挿入される方向の力が、操作部7の力点P3から付与される。これにより、作業者は、テコの原理を利用した組付機構4により、第1継手2のシール突起23を第2継手3のシール溝33に容易に挿入することができる。したがって、シール突起23とシール溝33とのシール面圧を高くしてシール性能を向上させても、管継手1の組み付け作業を容易に行うことができる。
【0062】
組付機構4において、係合部6及び操作部7は、回転部5と一体に設けられるので、管継手1の構成を簡素化することができる。また、組付機構4は、樹脂材料からなるので、金属材料と比較してコスト安価に製作することができる。
【0063】
作業者が操作部7の回転操作を行う前に、操作部7は、保持部11によって第2継手3側の操作前位置に保持される(
図8参照)。この状態で作業者が第1継手2を第2継手3に近づける際(
図9参照)に、第1継手2が操作部7と干渉するのを抑制することができる。これにより、管継手1の組み付け作業をさらに容易に行うことができる。
【0064】
作業者が操作部7の回転操作を行ったときに、操作部7が操作後位置を超えて移動するのを、阻止部14により阻止することができる(
図5参照)。これにより、操作部7の誤操作に起因して操作部7や係合部6等が損傷するのを抑制することができる。
【0065】
作業者が操作部7の回転操作を行った後、操作部7が操作後位置から操作前位置側へ移動するのを、規制部15により規制することができる(
図5参照)。これにより、係合部6は第1継手2に係合された状態で保持されるので、振動等に起因して第1継手2のシール突起23が第2継手3のシール溝33から抜け出る方向へ移動するのを抑制することができる。その結果、シール突起23とシール溝33とのシール面圧が低くなってシール性能が低下するのを抑制することができる。
【0066】
回転操作により作用点P2が支点P1を中心として回転移動する角度範囲θ1は、第2継手3の軸線Cかつ径方向の中心線X1に対して垂直であって支点P1を通過する仮想線Kにより、二等分される範囲に設定されている(
図12参照)。これにより、仮想線Kに沿う方向への作用点P2の移動量(距離B1)を可及的に小さくできるので、シール突起23がシール溝33に圧入される方向への力が弱まるのを抑制することができる。また、角度範囲θ1を可及的に小さくできるので、操作部7の回転操作時の操作角度α1も小さくすることができる。これにより、管継手1の組み付け作業を効率的に行うことができる。
【0067】
一般に、シール溝33を有する第2継手3は、シール突起23を有する第1継手2よりも軸方向に長くなる。本実施形態の回転部5は、相対的に軸方向に長い第2継手3に設けられるので、回転部5を設けるためのスペースを確保するために、第2継手3が軸方向に長くなるのを極力抑えることができる。これにより、組み付け後の管継手1全体が軸方向に長くなるのを抑えることができる。
【0068】
[第2実施形態]
図13は、第2実施形態に係る管継手1の軸方向の断面図である。第2実施形態の管継手1は、第1継手2及び第2継手3の各構成が異なる点で、第1実施形態と相違する。なお、
図13では、組付機構4の図示を省略している。
【0069】
図13において、第1継手2は、第1接続部21と、第1本体部22と、挿入部28と、を備えている。挿入部28は、円筒状に形成されており、第1本体部22から軸方向他方側に延びている。挿入部28の外径は、第1本体部22の外径よりも小さく、かつ第1接続部21の外径と略同一である。挿入部28は、径方向外方に突出する円環状の係止部28aを有している。
【0070】
第2継手3は、第1実施形態と同様に、第2接続部31と、第2本体部32と、を備えている。第2本体部32の内周には、軸方向他方側から順に、小径面32a、段差面32b、及び大径面32cが形成されている。小径面32aの内径は、第1継手2の挿入部28の外径よりも少し大きい。段差面32bは、小径面32aの軸方向一端から径方向外方に延びる円環状の面である。大径面32cは、段差面32bの径方向外端から軸方向一方側に延びている。大径面32cの内径は、小径面32aの内径よりも大きい。
【0071】
第2継手3は、Oリング321、円環状のスペーサ322、Oリング323、リテーナリング324、及び円環状のリテーナ325をさらに備えている。Oリング321、スペーサ322、Oリング323、及びリテーナリング324は、この順に第2本体部32内に軸方向一方側から挿入され、それぞれ大径面32cに嵌合されている。
【0072】
リテーナ325は、リテーナリング324の軸方向一方側に隣接する位置において、第2本体部32に固定されている。リテーナ325は、第2本体部32の段差面32bとの間で、Oリング321、スペーサ322、Oリング323、及びリテーナリング324を挟持している。リテーナ325の内周には、第1継手2の挿入部28の係止部28aが係止される係止溝326が形成されている。各Oリング321,323の内径は、第1継手2の挿入部28の外径よりも少し小さい。スペーサ322、リテーナリング324、及びリテーナ325の内径は、挿入部28の外径よりも少し大きい。
【0073】
第2本体部32は、第1継手2の挿入部28が軸方向一方側から挿入される被挿入部37を有している。被挿入部37は、Oリング321、スペーサ322、Oリング323、リテーナリング324、及びリテーナ325の各内周面と、小径面32aとによって形成される第2本体部32の内部空間である。挿入部28が被挿入部37に挿入されると、係止溝326に係止部28aが係止されるとともに、各Oリング321,323の内周側が挿入部28の外周面に密着する。挿入部28の外周面における各Oリング321,323との密着部分には、シール面圧が発生する。これにより、第1継手2と第2継手3との接続部分がシールされる。
【0074】
第1継手2の第1本体部22は、その外周面に設けられた一対の支持部29を有している。各支持部29には、組付機構4の一対の回転部5(図示省略)がそれぞれ回転可能に支持される。本実施形態の他の構成は、第1実施形態と同様であるため、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0075】
以上、第2実施形態の管継手1においても、作業者は、テコの原理を利用した組付機構4により、第1継手2の挿入部28を第2継手3の被挿入部37に容易に挿入することができる。したがって、挿入部28に発生するシール面圧を高くしてシール性能を向上させても、管継手1の組み付け作業を容易に行うことができる。
【0076】
[第3実施形態]
<管継手の構成>
図14は、第3実施形態に係る管継手1の斜視図である。
図15は、その管継手1の側面図である。第3実施形態の管継手1は、組付機構4の構成が異なる点で、第1実施形態と相違する。本実施形態の組付機構4は、第1棒状部材4Bと、第2棒状部材4Cとにより構成されている。
【0077】
図16は、第3実施形態の管継手1の平面図である。
図17は、その管継手1における組付機構4の斜視図である。
図15~
図17において、組付機構4の第1棒状部材4Bは、一対の作用部41と、一対の回転部42と、操作部43と、を備えている。
【0078】
一対の作用部41は、第1棒状部材4Bの長手方向両側において、それぞれ螺旋状に1周以上湾曲することで、有端円環状に形成されている。一対の回転部42は、第1棒状部材4Bの長手方向両端部において、それぞれ各作用部41と一体に設けられている。各回転部42は、揺動部42aと、回転軸42bと、を有している。
【0079】
揺動部42aは、作用部41の一端から当該作用部41の接線方向に延びている。回転軸42bは、揺動部42aの先端から湾曲し、径方向(後述の中心線X2方向)の内方に向かって延びている。回転軸42bの先端部は、第1継手2の第1本体部22の外周に形成された取付孔24a(
図14参照)に差し込まれ、取付孔24aの中心線X2回りに回転可能に支持されている。各回転部42(回転軸42b)の中心線X2上の回転中心は、後述するテコの原理の支点P11として機能する。
【0080】
操作部43は、管継手1を組み付ける際に、作業者が一対の回転部42をそれぞれ支点P11回りに回転させる操作(以下、単に回転操作という)を行う部分である。操作部43は、第1棒状部材4Bの一対の作用部41の間において、これらの作用部41と一体に設けられている。本実施形態の操作部43は、第1実施形態の操作部7と同様に、平面視において略U字状に形成されている。操作部43は、一対のアーム部43aと、把持部43bと、を有している。
【0081】
各アーム部43aは、各作用部41の他端から、当該作用部41の接線方向、かつ回転部42の揺動部42aとは異なる方向に延びている。一対のアーム部43aの先端側は、平面視において互いに近づくように延びるとともに、側面視において第2継手3の径方向外方まで延びている。
【0082】
把持部43bは、一対のアーム部43aの先端同士を連結する部分であり、中心線X2方向に延びている。把持部43bは、回転操作時に、作業者によって把持される部分である。把持部43bの中心線X2方向の中央部は、後述するテコの原理の力点P13として機能する。このため、支点P11から力点P13までの直線距離は、支点P11から作用点P12(後述)までの直線距離よりも長くなっている。
【0083】
図18は、本実施形態の管継手1を組み付ける前の状態を示す側面図である。
図15及び
図18において、操作部43は、回転操作時に、支点P11回りに回転しながら移動する。操作部43は、回転操作により、支点P11よりも軸方向他方側に位置する操作前位置(
図18)から、支点P11よりも軸方向一方側に位置する操作後位置(
図15)まで移動可能である。
【0084】
図15及び
図16において、管継手1は、操作部43が操作後位置から操作前位置側へ移動するのを規制する一対の規制部17をさらに備えている。一対の規制部17は、第1継手2の第1本体部22の外周面において、互いに周方向に間隔をあけて設けられている。一対の規制部17は、第1本体部22の外周面から径方向外方に突出している。本実施形態の各規制部17は、第1本体部22と一体に設けられている。
【0085】
各規制部17は、当接面17aと、乗り越え部17bと、を有している。乗り越え部17bは、回転操作の途中において、操作部43のアーム部43aが操作後位置よりも手前の位置で当接する部分である。乗り越え部17bに当接したアーム部43aは、その状態から作業者が操作部43を操作後位置側へ押し込むことで、中心線X2方向の外側に撓み変形しながら、乗り越え部17bを乗り越えるようになっている。
【0086】
当接面17aは、乗り越え部17bを乗り越えて操作後位置まで移動したアーム部43aが当接する面である。当接面17aは、操作後位置から操作前位置側へ移動するのを規制する位置に配置されている。これにより、各規制部17は、操作部43が操作後位置から操作前位置側へ移動するのを規制している。
【0087】
図15~
図17において、組付機構4の第2棒状部材4Cは、係合部44と、一対の連結部45と、を備えている。係合部44は、第2棒状部材4Cの長手方向中間部において、半円弧状に形成されている。係合部44は、第2継手3の第2接続部31の外周面に沿って配置されるとともに、第2本体部32の軸方向他方側の端面32dに対向して配置される。
【0088】
一対の連結部45は、第2棒状部材4Cの長手方向両側において、係合部44と一体に設けられている。各連結部45は、延出部45aと、連結軸45bと、を有している。
延出部45aは、係合部44の端部から軸方向一方側に延びている。延出部45aは、第2本体部32の径方向外方を通過し、第1継手2の第1本体部22の径方向外方まで延びている。延出部45aの軸方向一方側の端部は、第1棒状部材4Bの作用部41よりも径方向外方に位置している。
【0089】
連結軸45bは、延出部45aの軸方向一方側の端部から、径方向内方に向かって延びている。各連結部45の連結軸45bは、第1棒状部材4Bの作用部41の内周側に挿入され、作用部41に連結されている。作用部41は、回転軸42bが中心線X2回りに回転することで、軸方向に移動(揺動)するようになっている。
図18に示す状態から作用部41が軸方向一方側へ移動するとき、作用部41と連結軸45bとの当接部分は、後述するテコの原理の作用点P12として機能する。
【0090】
<管継手の組み付け途中の説明>
図18に示すように、操作部43が操作前位置にある状態で第1継手2を第2継手3側に近づけると、係合部44は、第2継手3(第2本体部32)の端面32dよりも軸方向他方側に配置される。
図18に示す状態から、作業者が操作部43の把持部43bを操作後位置側(図中の左側)へ移動させる回転操作を行うと、回転部42が支点P11を中心として図中の反時計回り方向に回転する。
【0091】
このように回転部42が回転すると、テコの原理によって、操作部43の把持部43bの力点P13から、作用部41と連結軸45bとの当接部分である作用点P12に対して、軸方向一方側への力が付与される。この作用点P12に付与される力によって、作用部41及び連結軸45bは、支点P11に対して軸方向一方側へ移動し、これに追従して延出部45a及び係合部44も軸方向一方側へ移動する。これにより、係合部44は、第2継手3の端面32dに係合する。この状態から、作業者がさらに前記回転操作を行うと、第2継手3が係合部44により軸方向一方側へ押されることで、第2継手3のシール溝33に、第1継手2のシール突起23(
図2参照)が徐々に圧入される。
【0092】
図15に示すように、作業者が、操作部43の把持部43bをさらに操作後位置まで押し込むと、シール突起23は、シール溝33内の適正位置まで圧入された状態となる。これにより、シール突起23とシール溝33の両内周面にシール面圧が発生し、第1継手2と第2継手3との接続部分がシールされる。
本実施形態の他の構成は、第1実施形態と同様であるため、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0093】
第3実施形態の管継手1においても、作業者は、テコの原理を利用した組付機構4により、第1継手2のシール突起23を第2継手3のシール溝33に容易に挿入することができる。したがって、シール突起23とシール溝33とのシール面圧を高くしてシール性能を向上させても、管継手1の組み付け作業を容易に行うことができる。
【0094】
[その他]
以上のとおり開示した実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものでない。例えば、上記各実施形態の管継手1は、電気自動車での使用に限定されるものではない。上記各実施形態の組付機構4は、樹脂材料以外に、金属材料等の他の材料からなる部材(例えば針金)であってもよい。
【0095】
第1実施形態の組付機構4の係合部6及び操作部7は、回転部5と一体に設けられているが、回転部5と別体に設けられていてもよい。第1実施形態の回転部5は、第2継手3に設けられているが、第1継手2に設けられてもよい。その場合、回転部5を支持する支持部35は、第1継手2に設けられる。
【0096】
第2実施形態の回転部5(図示省略)は、第1継手2に設けられているが、第2継手3に設けられてもよい。その場合、回転部5を支持する支持部35は、第2継手3に設けられる。同様に、第3実施形態の回転部42は、第1継手2に設けられているが、第2継手3に設けられてもよい。その場合、規制部17も第2継手3に設けられる。また、係合部44は、第1継手2の第1本体部22の端面に係合させればよい。
【0097】
第1実施形態の保持部11は、第2継手3において、周方向に一対設けられているが、周方向の1箇所だけに設けられていてもよい。同様に、第1実施形態の阻止部14及び規制部15は、第1継手2において、それぞれ周方向に一対設けられているが、周方向の1箇所だけに設けられていてもよい。同様に、第3実施形態の規制部17は、第1継手2の周方向に一対設けられているが、周方向の1箇所だけに設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 管継手
2 第1継手
3 第2継手
4 組付機構
5 回転部
6 係合部
7 操作部
11 保持部
14 阻止部
15 規制部
23 シール突起(挿入部)
28 挿入部
33 シール溝(被挿入部)
37 被挿入部
91 第1ホース(一の配管)
92 第1ホース(他の配管)
C 軸線
P1 支点
P2 作用点
P3 力点
K 仮想線
X1 中心線
θ 角度範囲