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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140270
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/29 20060101AFI20241003BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G02F1/29
G02B6/26 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051330
(22)【出願日】2023-03-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載日 令和4年5月20日 ウェブサイトのアドレス(URL) https://confit.atlas.jp/guide/event/cleopr2022/subject/P-CTh6-03/tables?cryptoId= 発行日 令和4年7月31日~令和4年8月5日 刊行物(刊行物名、巻数、号数、該当ページ、発行所/発行元等) cleopr2022_Poster_all 該当ページ:P-CTh6-03(114ページ~115ページ) 発行元:CLEO-PR/ISOM/ODF Organizing Committees 展示日 令和4年8月4日(ポスター発表) 展示会名、開催場所 The 15th Pacific Rim Conference on Lasers and Electro-Optics(CLEO Pacific Rim,CLEO-PR2022) 札幌コンベンションセンター(札幌市白石区東札幌6条1丁目1-1) 展示日 令和4年7月31日~令和4年8月5日(ショートビデオ) 展示会名、開催場所 The 15th Pacific Rim Conference on Lasers and Electro-Optics(CLEO Pacific Rim,CLEO-PR2022) 札幌コンベンションセンター(札幌市白石区東札幌6条1丁目1-1)
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 尚明
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 優
(72)【発明者】
【氏名】田中 博
【テーマコード(参考)】
2H137
2K102
【Fターム(参考)】
2H137AB06
2H137BA02
2H137BA03
2H137BB02
2H137BC02
2H137BC06
2H137BC12
2H137BC23
2H137BC49
2H137BC64
2H137DB13
2K102AA09
2K102AA10
2K102AA14
2K102AA15
2K102AA21
2K102BA05
2K102BA07
2K102BA10
2K102BA16
2K102BA18
2K102BA20
2K102BB02
2K102BB03
2K102BB04
2K102BB08
2K102BC01
2K102BC04
2K102CA09
2K102DA01
2K102DA06
2K102DB01
2K102DC09
2K102DD02
2K102EA21
2K102EB02
2K102EB06
2K102EB08
2K102EB10
2K102EB16
2K102EB20
2K102EB25
(57)【要約】
【課題】光源として用いる素子が制限されない光源装置を提供すること。
【解決手段】光源装置1は、光を出力する光源11と、制御信号の入力部を有し、該制御信号に基づいて、入射した光が反射する角度の分布を制御可能に構成された空間光変調器60と、光源11から出力された光を分光して空間光変調器60に入射させると共に、空間光変調器60において反射された光の少なくとも一部を光源11に戻す回折格子50と、空間的に分散された状態で回折格子50から戻った光の一部のみを通過させるピンホール92と、を備える。そして、光源装置1においては、光源11及び空間光変調器60を含んで光共振器が形成されており、ピンホール92を通過して光源11に戻された光が出力される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出力する光源と、
制御信号の入力部を有し、該制御信号に基づいて、入射した光が反射する角度の分布を制御可能に構成された反射部と、
前記光源から出力された光を分光して前記反射部に入射させると共に、前記反射部において反射された光の少なくとも一部を前記光源に戻す回折格子と、
空間的に分散された状態で前記回折格子から戻った光の一部のみを通過させる空間フィルタと、を備え、
前記光源及び前記反射部を含んで光共振器が形成されており、前記空間フィルタを通過して前記光源に戻された光が出力される、光源装置。
【請求項2】
前記空間フィルタは、ピンホール、透過マスク、1若しくは複数のスリット、又はシングルモードファイバである、請求項1記載の光源装置。
【請求項3】
前記回折格子から戻った光を集光する集光レンズを更に備え、
前記空間フィルタは、前記集光レンズの集光点に設けられている、請求項2記載の光源装置。
【請求項4】
前記制御信号に基づいて前記反射部において反射される光の角度の分布が制御されることにより、前記回折格子から前記光源に戻される光の帯域幅が制御される、請求項1~3のいずれか一項記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一態様は、光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、Littman/Metcalf型の外部共振器半導体レーザが記載されている。特許文献1の外部共振器半導体レーザでは、エンドミラーを凹面鏡に変更し、その曲率半径を凹面鏡と回折格子との間の距離と等しくすることによって、広いスペクトル(帯域幅)が得られる構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7245642号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述したような外部共振器半導体レーザでは、回折格子で分光した光をエンドミラーで戻し、該光をシングルモードのLD(Laser Diode)等に結合させて波長限定を行っているため、光源として用いることができる素子が限られてしまう。
【0005】
本開示の一態様は上記実情に鑑みてなされたものであり、光源として用いる素子が制限されない光源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一態様に係る光源装置は、光を出力する光源と、制御信号の入力部を有し、該制御信号に基づいて、入射した光が反射する角度の分布を制御可能に構成された反射部と、光源から出力された光を分光して反射部に入射させると共に、反射部において反射された光の少なくとも一部を光源に戻す回折格子と、空間的に分散された状態で回折格子から戻った光の一部のみを通過させる空間フィルタと、を備える。そして、光源装置1においては、光源及び反射部を含んで光共振器が形成されており、空間フィルタを通過して光源に戻された光が出力される。
【0007】
本開示の一態様に係る光源装置では、光源から出力された光が回折格子において分光されて反射部に入射する。そして、反射部において反射された光の少なくとも一部が回折格子から光源に戻される。ここで、回折格子及び光源の間には、空間的に分散された状態で回折格子から戻った光の一部のみを通過させる空間フィルタが設けられており、該空間フィルタを通過して光源に戻された光が出力される。このように、回折格子及び光源の間に空間フィルタが設けられていることにより、光源に戻されて出力される光の波長が限定されることとなる。空間フィルタが波長限定機能を有することによって、光源(又は光共振器内に追加される光ファイバ等)に波長限定機能が求められず、様々な光源を利用することが可能になる。以上のように、本開示の一態様によれば、光源として用いる素子が制限されない光源装置を提供することができる。
【0008】
(2)上記(1)記載の光源装置において、空間フィルタは、ピンホール、透過マスク、1若しくは複数のスリット、又はシングルモードファイバであってもよい。このような構成によれば、空間的に分散された光について、適切に一部のみを通過させることができる。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)記載の光源装置は、回折格子から戻った光を集光する集光レンズを更に備え、空間フィルタは、集光レンズの集光点に設けられていてもよい。このような構成によれば、空間フィルタによる波長限定を適切に行うことができる。
【0010】
(4)上記(1)~(3)記載の光源装置では、制御信号に基づいて反射部において反射される光の角度の分布が制御されることにより、回折格子から光源に戻される光の帯域幅が制御されてもよい。このような構成によれば、制御信号を変化させることにより、反射部における光が反射する角度の分布が変化し、回折格子から光源に戻される光の帯域幅を変化させることができる。すなわち、このような構成によれば、回折格子から光源に戻される光の帯域幅を任意に調整することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様によれば、光源として用いる素子が制限されない光源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る光源装置を模式的に示した図である。
図2】空間光変調器に表示される変調パターンの一例を示す図である。
図3】シングルモードLDの波長限定機能を説明する図である。
図4】変形例に係る空間フィルタを説明する図である。
図5】変形例に係る空間フィルタを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、第1実施形態に係る光源装置1を模式的に示した図である。光源装置1は、外部共振型レーザ(ECL:External Cavity Laser)である。光源装置1は、例えばリットマン型の外部共振型レーザであり、回折格子の1次光をミラーで反射させて半導体レーザ内に戻す構成とされている。
【0015】
図1に示されるように、光源装置1は、光源ユニット10と、電流コントローラ20と、温度コントローラ30と、レンズ40(集光レンズ)と、回折格子50と、空間光変調器60(反射部)と、駆動回路70と、PC80と、レンズ91と、ピンホール92(空間フィルタ)と、を備えている。
【0016】
光源ユニット10は、光源11と、LDマウント12と、を含んで構成されている。光源11は、例えば850nmを中心波長とする自然放出スペクトルを持つ光を出力する半導体レーザ(LD:Laser Diode)である。光源11は、例えばFabry-Perot型の半導体レーザであってもよい。光源11が出力する光の中心波長は、10nm以上3mm以下であればよい。光源11の外部共振器に結合している側(光出力方向側)の端面は、反射防止コーティングがされていてもよい。光源11は、LDマウント12にマウントされている。LDマウント12は、TEC(Thermo-Electric Cooler)付きのマウントであってもよい。光源装置1においては、光源11及び空間光変調器60(後述)を含んで光共振器が形成されている。光源装置1では、外部共振器を経て光源11に戻された光(ピンホール92を通過して光源11に戻された光)が出力される。
【0017】
電流コントローラ20は、LDマウント12を介して光源11に電流を供給し、光源11に光を出力させる構成である。すなわち、光源11は、電流コントローラ20から供給される電流(注入電流)に応じた光を出力する。光源11は、供給(注入)される電流値に応じて、レーザ発振を起こすか、または、発振閾値以下で動作する。
【0018】
温度コントローラ30は、LDマウント12に備え付けられているTECに電流を供給することによりTECの吸熱(又は放熱)を制御し、TECを介して光源11の温度を一定に保つ構成である。
【0019】
レンズ40は、光源11から出力された光が回折格子50及び空間光変調器60を経て(外部共振器内を1周して)戻ってきた際に、該光をピンホール92に効率良く結合させるレンズである。すなわち、レンズ40は、回折格子50から戻った光をピンホール92に集光する集光レンズとして機能する。ピンホール92から放出された光は大きく広がっていくところ、レンズ40によって光のビーム径及び発散角が調整される。レンズ40の位置は、空間光変調器60に表示する変調パターン(位相パターン)の焦点距離に依らずに、高い光出力が得られる位置に固定されていてもよい。
【0020】
回折格子50は、光源11から出力された、種々の波長が混在した光を分光して空間光変調器60に入射させると共に、空間光変調器60において反射された光の少なくとも一部を光源11に戻す構成である。回折格子50では、波長毎に光が分けられ、1次光が空間光変調器60に向かうと共に、0次光が出力光として取り出される。
【0021】
空間光変調器60は、制御信号の入力部を有し、該制御信号に基づく変調パターンを表示することにより、入射した光が反射する角度の分布を制御する。空間光変調器60は、例えば、反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)である。変調パターン(位相パターン)は、PC80において生成され、PC80から駆動回路70に入力され、駆動回路70からの制御信号に基づいて空間光変調器60に表示される。このように、駆動回路70から空間光変調器60に入力される制御信号は、変調パターンの表示に係る信号である。
【0022】
空間光変調器60は、変調パターンとして、例えばレンズパターンを表示する。レンズパターンとして例えばフレネルレンズパターンを用いてもよい。以下、本実施形態では、レンズパターンがフレネルレンズパターンであるとして説明するが、レンズパターンは非球面レンズパターン等の他のレンズパターンであってもよい。フレネルレンズパターンの曲率半径は、例えば焦点距離を2倍した値となる。曲率半径は、凹面ミラーの場合に正の値、凸面ミラーの場合に負の値となる。焦点距離は、凸レンズの場合に正の値、凹レンズの場合に負の値となる。空間光変調器60では、変調パターンであるフレネルレンズパターンの焦点距離が変化させられることにより、フレネルレンズパターンの曲率半径が変化し、空間光変調器60において反射される光の角度の分布が変化する。空間光変調器60において反射される光の角度の分布が変化すると、空間光変調器60における反射前後の光の経路の一致度が変化する。空間光変調器60では、フレネルレンズパターンの曲率半径と、空間光変調器60-回折格子50間の距離との一致度が高いほど、空間光変調器60における反射前後の光の経路が一致する波長帯域(光源11への結合効率が高い波長帯域)が広くなる。このように空間光変調器60では、制御信号に基づいて反射される光の角度の分布が制御されることにより、回折格子50から光源11に戻される光の帯域幅を制御することができる。すなわち、空間光変調器60では、フレネルレンズパターンの焦点距離を変化させることにより、光スペクトルの広がりを制御することができる。このように、空間光変調器60は、光学部品の移動やアライメントを伴うことなく、光スペクトルの広がりを制御することができる。なお、光源11に戻される光の帯域幅は、例えば、光源11への結合効率の波長依存性と、光源11の発光スペクトルと、ピンホール92などの空間フィルタの透過率の波長依存性(例えば、回折格子50から光源11に戻される光の各波長における空間フィルタの透過率)などから定まる。
【0023】
反射型液晶の空間光変調器であった場合、空間光変調器60による位相変調は、偏光の影響を強く受ける。空間光変調器60は、位相変調できる偏光方向が図1中のx方向或いはy方向(すなわち、空間光変調器60における反射面60aと平行な方向)になるように配置される。空間光変調器60は、反射面60aと回折格子50における反射面とが平行になるように配置されていてもよいし、平行にならないように配置されていてもよい。空間光変調器60における位相変調できる偏光方向は、例えば、光源11から出力される光の直線偏光方向と一致させられる。また、空間光変調器60では、変調パターンの中心から延びる法線が、回折格子50上の光のビーム中心を通過するように、光学系の調整または変調パターン位置の調整が行われてもよい。空間光変調器60及び回折格子50は、空間光変調器60の反射面60aに係る曲率中心と、回折格子50に入射する光のビーム中心とが一致するように配置されていてもよい。より詳細には、空間光変調器60及び回折格子50は、空間光変調器60の反射面60aに係る曲率半径を変化させる場合の曲率中心の軌跡と、回折格子50に入射する光のビーム中心とが交わるように配置されていてもよい。なお、空間光変調器60の反射面60aに係る曲率中心とは、空間光変調器60に表示された変調パターンの曲率中心である。
【0024】
空間光変調器60は、必要に応じて、変調パターンに所定の面形状補正パターンを重畳させて表示してもよい。ここでの面形状補正パターンとは、空間光変調器60の反射面60aにおける形状を補正するパターンである。空間光変調器60は、光学系で発生した収差を補正するパターンをさらに重畳して表示してもよい。また、空間光変調器60は、x方向とy方向とで焦点距離の異なる変調パターン(フレネルレンズパターン)を表示してもよい。この場合、例えばy方向の焦点距離を最適化することにより、光源11に戻る光の結合効率を上げることができる。なお、空間光変調器60では、x方向の焦点距離だけを変化させて、上述した光の帯域幅の制御(光スペクトルの広がり制御)が行われてもよい。
【0025】
空間光変調器60では、変調されない光が0次光として現れてしまうという問題がある。このような問題に対する対策として、図2に示されるように、空間光変調器60に表示される変調パターンとして、フレネルレンズパターンにブレーズド回折格子パターンを重畳させたパターンを用いてもよい。図2では、ブレーズド回折格子パターン501と、フレネルレンズパターンにブレーズド回折格子パターンを重畳させたパターン502とが示されている。この場合、フレネルレンズパターンにブレーズド回折格子パターンを重畳させたパターン502によって回折された1次光が光源11に戻される光とされてもよい。
【0026】
ピンホール92は、空間的に分散(波長毎に分離)された状態で回折格子50から戻った光の一部のみを通過させることにより、光源11に戻される光の波長を限定する空間フィルタである。ここでの空間フィルタとは、光の透過率が空間的に分布を持つマスクとして機能するユニットであればよい。なお、空間フィルタとは、ピンホール92及びレンズ40を含むユニットであってもよいが、ここではピンホール92を空間フィルタとする。ピンホール92は、例えばレンズ40の集光点に設けられている。ピンホール92は、円形の穴92aが形成された遮蔽物であり、空間的に穴92aの位置に対応した波長の光のみを通過させ、その他の波長の光を通過させない空間フィルタである。ピンホール92の穴92aの径は、例えば1mm以下とされていてもよい。なお、ピンホール92の穴92aの大きさは、レンズ40の仕様に応じて設定されていてもよい。
【0027】
なお、ピンホール92を経て光源11に戻った光は、光源11を反射して再度ピンホール92(空間フィルタ)を通過するが、光源11に集光された際に分散状態ではなくなっているため、再度ピンホール92を通過する際には波長が限定されない。
【0028】
光源11とピンホール92との間には、レンズ91が設けられている。光源11から出射された光は、レンズ91を経てピンホール92方向に進む。回折格子50から戻された光は、レンズ40を経てピンホール92方向に進む。
【0029】
次に、本実施形態に係る光源装置1の作用効果について説明する。
【0030】
光源装置1は、光を出力する光源11と、制御信号の入力部を有し、該制御信号に基づいて、入射した光が反射する角度の分布を制御可能に構成された空間光変調器60と、光源11から出力された光を分光して空間光変調器60に入射させると共に、空間光変調器60において反射された光の少なくとも一部を光源11に戻す回折格子50と、空間的に分散された状態で回折格子50から戻った光の一部のみを通過させるピンホール92と、を備える。そして、光源装置1においては、光源11及び空間光変調器60を含んで光共振器が形成されており、ピンホール92を通過して光源11に戻された光が出力される。
【0031】
本実施形態に係る光源装置1では、光源11から出力された光が回折格子50において分光されて空間光変調器60に入射する。そして、空間光変調器60において反射された光の少なくとも一部が回折格子50から光源11に戻される。ここで、回折格子50及び光源11の間には、空間的に分散された状態で回折格子50から戻った光の一部のみを通過させるピンホール92が設けられており、該ピンホール92を通過して光源11に戻された光が出力される。このように、回折格子50及び光源11の間に空間フィルタであるピンホール92が設けられていることにより、光源11に戻されて出力される光の波長が限定されることとなる。ピンホール92が波長限定機能を有することによって、光源11(又は光共振器内に追加される光ファイバ等)に波長限定機能が求められず、様々な光源11を利用することが可能になる。以上のように、本実施形態によれば、光源11として用いる素子が制限されない光源装置1を提供することができる。
【0032】
図3は、シングルモードLDの波長限定機能を説明する図である。図3に示されるように、光源としてシングルモードLD311が用いられる場合、回折格子50から戻された光がシングルモードLD311に結合されることにより、光の波長が限定されている。このように、光源に波長限定機能を持たせている構成においては、光源の種類が制限されてしまう。この点、上述したように、本実施形態に係る光源装置1では、ピンホール92が波長限定機能を有しており、光源に波長限定機能が求められないため、光源として用いる素子が制限されない。
【0033】
光源装置1においては、空間フィルタとしてピンホール92が採用されていることにより、空間的に分散された光について、適切に一部のみを通過させることができる。すなわち、ピンホール92の穴92aに対応する位置の波長成分の光のみがピンホール92を通過することとなるため、適切に、ピンホール92の穴92aに対応する波長成分の光のみに限定することができる。
【0034】
光源装置1は、回折格子50から戻った光を集光するレンズ40を備え、ピンホール92(詳細にはピンホール92の穴92a)は、レンズ40の集光点に設けられていてもよい。このような構成によれば、ピンホール92による波長限定を適切に行うことができる。
【0035】
光源装置1では、制御信号に基づいて空間光変調器60において反射される光の角度の分布が制御されることにより、回折格子50から光源11に戻される光の帯域幅が制御されてもよい。このような構成によれば、制御信号を変化させることにより、空間光変調器60における光が反射する角度の分布が変化し、回折格子50から光源11に戻される光の帯域幅を変化させることができる。すなわち、このような構成によれば、回折格子50から光源11に戻される光の帯域幅を任意に調整することができる。
【0036】
以上、本実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されない。例えば、空間フィルタとしてピンホール92(図1参照)が用いられるとして説明したが、これに限定されず、図4に示されるように、空間フィルタは、透過マスク192であってもよい。透過マスク192は、上述したピンホール92と同様に、空間的に分散された状態で回折格子50から戻った光の一部のみを光源11方向に通過させる。透過マスク192は、例えば矩形であり、その中央部分に矩形の透過領域192aが形成されている。このような構成では、透過マスク192の透過領域192aに対応する位置の波長成分の光のみが透過マスク192を通過することとなるため、適切に、透過マスク192の透過領域192aに対応する波長成分の光のみに限定することができる。なお、透過領域192aの形状は矩形に限定されないが、例えば、光源11の出射端の形状に合った形状とされることにより、光の利用効率を向上させることができる。
【0037】
例えば、上述したシングルモードLD311(図3参照)と同等の波長限定機能を空間フィルタで実現したい場合には、レンズ40の集光点に矩形の透過マスク192を置いてもよい。この場合、透過マスク192の透過領域192aの大きさ及び形状は、シングルモードLDのエミッタ開口311a(図3参照)の大きさ及び形状と一致させてもよい。また、透過マスク192における透過領域192aの大きさは、レンズ40の仕様に応じて設定されていてもよい。
【0038】
また、図5に示されるように、空間フィルタは、シングルモードファイバ292であってもよい。シングルモードファイバ292は、上述したピンホール92又は透過マスク192と同様に、空間的に分散された状態で回折格子50から戻った光の一部のみを光源11方向に通過させる。シングルモードファイバ292は、所定の波長成分の光のみを伝搬させる。このようなシングルモードファイバ292によれば、適切に波長限定を行うことができる。
【0039】
シングルモードファイバ292と同等の波長限定機能を上述したピンホール92で実現したい場合には、レンズ40の集光点にピンホール92を置き、ピンホール92の穴92aの大きさをシングルモードファイバ292のモード径以上、又はモード径の3倍以下としてもよい。
【0040】
なお、光共振器内に光ファイバが設けられている構成において、例えば、上述したピンホール92又は透過マスク192等の空間フィルタが設けられる場合には、当該光ファイバに波長限定機能が求められないため、シングルモード以外の光ファイバ、例えば高非線形ファイバ等を用いることができる。高非線形ファイバが用いられることによって例えば非線形効果が生じやすくなる。非線形効果の例としては、例えば、自己位相変調 (Self-phase modulation)、相互位相変調 (Cross-phasemodulation)、変調不安定性 (Modulation instability)、誘導ラマン散乱 (Stimulated Raman scattering)、誘導ブリルアン散乱(Stimulated Brillouin scattering)、四光波混合 (Four-wavemixing)、及び、スーパーコンティニューム光発生 (Supercontinuum generation)等が挙げられる。これらの非線形効果を利用することにより、例えばスペクトルを更に広げる等、光のスペクトル制御の自由度が向上する。
【0041】
また、空間フィルタは、1又は複数のスリット(不図示)により構成されていてもよい。このようなスリットによっても、空間的に分散された状態で回折格子50から戻った光の一部のみを光源11方向に通過させることができる。これにより、適切に波長限定を行うことができる。
【符号の説明】
【0042】
1…光源装置、11…光源、40…レンズ(集光レンズ)、50…回折格子、60…空間光変調器(反射部)、92…ピンホール(空間フィルタ)、192…透過マスク(空間フィルタ)、292…シングルモードファイバ(空間フィルタ)。
図1
図2
図3
図4
図5