(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140271
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】粉体投入器およびそれを用いた粉体投入方法
(51)【国際特許分類】
B65B 39/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B65B39/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051332
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】591083299
【氏名又は名称】東レ・メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】伴 拓弥
【テーマコード(参考)】
3E055
【Fターム(参考)】
3E055AA03
3E055AA05
3E055BB01
3E055DA04
3E055DA16
(57)【要約】
【課題】袋等の容器に充填された透析用粉末剤等の粉体を投入口へ投入するために用いられる簡素な構成の投入装置を提供する。
【解決手段】容器に充填された粉体を投入口へ投入するために用いられる粉体投入器であって、前記容器を傾斜状態で保持する保持部と、前記容器から排出された前記粉体を前記投入口へと案内する開口および斜面からなる案内部と、前記投入口の縁に載置される載置部と、を有することを特徴とする粉体投入器。また、粉体が充填された容器の排出口から、粉体投入器を介して前記粉体を投入口へと投入する粉体投入方法であって、前記投入口を覆うように載置した前記粉体投入器の上に、前記排出口が前記容器の最下部に位置するように前記容器を傾斜状態で保持しながら、前記容器から排出された前記粉体を前記粉体投入器の斜面に沿って前記投入口に投入することを特徴とする粉体投入方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に充填された粉体を投入口へ投入するために用いられる粉体投入器であって、
前記容器を傾斜状態で保持する保持部と、
前記容器から排出された前記粉体を前記投入口へと案内する開口および斜面からなる案内部と、
前記投入口の縁に載置される載置部と、を有することを特徴とする粉体投入器。
【請求項2】
前記案内部が前記容器を並列に保持可能な幅を有し、該幅方向に複数の区画を有する、請求項1に記載の粉体投入器。
【請求項3】
前記案内部が、前記区画ごとに繰り返される曲面形状の凹部を有する、請求項2に記載の粉体投入器。
【請求項4】
前記容器を保持しない状態において前記案内部に被せることが可能な蓋部を有する、請求項1に記載の粉体投入器。
【請求項5】
前記案内部が透明材料からなる、請求項1に記載の粉体投入器。
【請求項6】
前記粉体が複数種類からなり、前記粉体の種類に応じて外観の異なる複数種類の構成を有する、請求項1に記載の粉体投入器。
【請求項7】
粉体が充填された容器の排出口から、粉体投入器を介して前記粉体を投入口へと投入する粉体投入方法であって、
前記投入口を覆うように載置した前記粉体投入器の上に、前記排出口が前記容器の最下部に位置するように前記容器を傾斜状態で保持しながら、前記容器から排出された前記粉体を前記粉体投入器の斜面に沿って前記投入口に投入することを特徴とする粉体投入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に充填された粉体を投入口へ投入するために用いられる粉体投入器およびそれを用いた粉体投入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体をタンク内で溶解するための粉体投入作業を行うにあたっては、粉体投入口の内部にあるホッパーから粉体投入口を経て粉末煙が上がり、タンクの周囲に飛散する恐れがある。そこで、粉体の飛散を防止するための様々な対策が講じられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、開封されて吐出口が形成された袋体内の粉末状内容物を溶解槽内に投入するための粉末状内容物の投入装置において、前記袋体を保持しつつ上下を反転させ、前記吐出口を下方に向かせる反転手段と、該反転手段にて反転された袋体の吐出口からの粉末状内容物の投入量を抑制する抑制手段と、を具備したことを特徴とする粉末状内容物の投入装置が開示されている。これによれば、抑制手段により袋体の吐出口からの粉末状内容物の投入量を抑制することにより、粉末状内容物の溶解槽への投入時における粉末の飛散を抑制し、装置内部の衛生を向上させることができるとともに、飛散した粉末が外部へ漏れて周囲の作業環境が悪化してしまうのを防止することができる。
【0004】
また、特許文献2には、粉末状又は液体状の内容物を収容した袋体を開封し、当該袋体内の内容物を外部に取り出すための袋体開封装置において、前記袋体の外表面の一部を覆いつつ密着して外部と隔成された閉塞空間を形成する密着手段と、該密着手段が前記袋体の外表面に密着することにより形成された閉塞空間内で当該袋体を開封する開封手段と、を具備したことを特徴とする袋体開封装置が開示されている。これによれば、密着手段が袋体の外表面に密着することにより形成された閉塞空間内において開封手段にて当該袋体を開封するので、袋体の開封箇所からの雑菌等の混入を防止できるとともに、周囲への飛散等を防止して作業環境の悪化を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-018373号公報
【特許文献2】特開2007-314189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や2の装置においては、透析治療で用いられる透析用粉末剤を溶解装置に投入するために、反転手段や密着手段を設けた特殊な投入装置を用いて粉末の飛散を防止しているが、より簡便な方法で粉末の飛散が防止できればなお便利である。そこで本発明の課題は、袋等の容器に充填された透析用粉末剤等の粉体を投入口へ投入するために用いられる簡素な構成の投入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る粉体投入器は、容器に充填された粉体を投入口へ投入するために用いられる粉体投入器であって、
前記容器を傾斜状態で保持する保持部と、
前記容器から排出された前記粉体を前記投入口へと案内する開口および斜面からなる案内部と、
前記投入口の縁に載置される載置部と、を有することを特徴とするものからなる。
【0008】
このような粉体投入器によれば、粉体容器から粉体投入口へのスムーズな粉体投入作業を実施することができる。
【0009】
本発明の粉体投入器において、前記案内部が前記容器を並列に保持可能な幅を有し、該幅方向に複数の区画を有することが好ましい。複数の粉体容器を案内部の各区画に配置することにより、粉体投入中の粉体容器aの隣に配置された粉体容器bを開封した上で粉体排出が開始しないよう非傾斜状態で保持しながら準備し、粉体容器aからの粉体投入が終了すると同時に粉体容器bを傾斜させて粉体投入を開始するようにすれば、粉体容器の切り替えを待ち時間なくスムーズに実施できる。案内部を2つに区画した場合には、粉体容器aとbからの粉体投入作業を交互に実施すればよい。案内部を3つ以上に区画した場合には、粉体容器a、b、c・・・の順に粉体投入作業を実施すればよい。あるいは、複数の粉体容器(例えばaおよびb)から同時に粉体を投入することにより、投入時間の短縮を図ることもできる。
【0010】
本発明の粉体投入器において、前記案内部が、前記区画ごとに繰り返される曲面形状の凹部を有することが好ましい。このような構成によれば、袋形状の粉体容器を用いる場合に、袋の長辺部が凹部に保持された状態で自立できるようにサポートすることができる。
【0011】
本発明の粉体投入器は、前記容器を保持しない状態において前記案内部に被せることが可能な蓋部を有することが好ましい。容器から投入口への粉体投入が終了した後は、粉体投入器を外して投入口を閉じることも可能であるが、粉体投入器を投入口の縁に載置したままで、案内部に蓋部を被せるようにすれば、粉体投入器の保管場所を別途に設ける必要がなくなる。また、粉体投入を一時的に休止する場合においても、投入口に夾雑物が侵入することを防止することができる。
【0012】
本発明の粉体投入器において、前記案内部が透明材料からなることが好ましい。粉体投入器の全部または少なくとも案内部を透明材料で形成することにより、粉体投入器を投入口の縁に載置したままで投入口の中の状況(例えば粉体の投入量や溶解状態)を目視確認することができる。また、少なくとも前記案内部に帯電防止加工を施すことにより、静電気により粉体が付着して投入口の中が見えなくなることを防止することができる。帯電防止加工の方法としては、透明な樹脂に帯電防止剤を練り込む方法や帯電防止剤を塗布する方法等が挙げられる。
【0013】
本発明の粉体投入器において、前記粉体が複数種類からなる場合に、前記粉体の種類に応じて外観の異なる複数種類の構成を有することが好ましい。例えば血液透析治療に用いられる透析液原液調製用の二種類の粉末剤(A剤/B剤)の袋は大きさが異なり、A剤は赤色、B剤は青色のように異なる着色がなされて取り違えの防止が図られているので、粉体投入器についても案内部の大きさを2通りに構成し、それぞれA剤とB剤の袋の大きさに合わせれば、誤った種類の粉末剤投入の防止が図られる。
【0014】
また上記課題を解決するために、本発明に係る粉体投入方法は、粉体が充填された容器の排出口から、粉体投入器を介して前記粉体を投入口へと投入する粉体投入方法であって、
前記投入口を覆うように載置した前記粉体投入器の上に、前記排出口が前記容器の最下部に位置するように前記容器を傾斜状態で保持しながら、前記容器から排出された前記粉体を前記粉体投入器の斜面に沿って前記投入口に投入することを特徴とする方法からなる。
【0015】
このような本発明の粉体投入方法によれば、排出口が容器の最下部に位置するように容器を傾斜状態で保持しながら、容器から排出された粉体を粉体投入器の斜面に沿って前記投入口に投入するので、粉体投入時の飛散を効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の粉体投入器およびそれを用いた粉体投入方法によれば、簡素な構成にて粉体容器から粉体投入口へのスムーズな粉体投入作業を、粉体投入時の飛散を防止しながら実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施態様に係る粉体投入器を示す斜視図である。
【
図2】本発明の他の実施態様に係る粉体投入器を示す斜視図である。
【
図3】本発明の粉体投入器に袋形状の容器を傾斜状態で保持させた状態を示す斜視図である。
【
図4】
図3の粉体投入器に袋形状の容器を2つ並べて保持させた状態を示す斜視図である。
【
図5】本発明の粉体投入器を2種類の異なるサイズで構成した例を示す正面図であり、(a)は大きいサイズ、(b)は小さいサイズの例を示す。
【
図6】
図5(a)および(b)の粉体投入器の背面図である。
【
図7】
図5(a)および(b)の粉体投入器の平面図である。
【
図8】
図5(a)および(b)の粉体投入器の下面図である。
【
図9】
図5(a)および(b)の粉体投入器の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係る粉体投入器1を示す斜視図である。粉体投入器1は、容器を傾斜状態で保持する保持部2と、開口5とその周囲の斜面からなる案内部3と、粉体投入口の縁に載置される載置部4とから構成されている。
【0019】
粉体投入器1は、ポリカーボネートやアクリル等の透明材料から形成されており、血液透析治療に用いられる透析液原液調製用の粉末剤を溶解装置の粉体投入口に投入するために用いることができる。また、粉体投入器1に袋が保持されていない状態においては、夾雑物が投入口に混入しないように開口5を覆うための蓋(図示略)を被せてもよい。
【0020】
図2は、本発明の他の実施態様に係る粉体投入器11を示す斜視図である。粉体投入器11は、容器を傾斜状態で保持する保持部12と、開口5とその周囲の斜面からなる案内部13と、粉体投入口の縁に載置される載置部14とから構成され、案内部13の幅方向中央には仕切り15が設けられて、2つの容器を並列に保持できるように案内部13が幅方向に2つの領域に区画されている。
【0021】
図3は、本発明の粉体投入器に袋形状の容器6を傾斜状態で保持させた状態を示す斜視図である。容器6の一部は開封されて粉体排出口7を形成し、粉体排出口7から排出された粉体が開口5を経て投入口へ投入されるように、粉体排出口7が案内部23の最下部に位置するように保持部22により傾斜状態で保持されている。このように容器6を開封して保持部22に向けて傾けるだけで、その後は手を離しても自立した状態で、容器6内の粉体が案内部23の斜面に沿ってスムーズに投入される構造となっている。粉体の投入中に、容器6は粉体充填量の減少に従い折れ曲がる等の変形をするが、当該構造によって滞留部が生じにくくなっている。また、開口5が粉体排出口7と同等の大きさであれば、開口5を介して投入口から粉体が逆流して飛散することが防止できる。
【0022】
図3においては袋形状の容器6が1つのみ描かれているが、
図4に示すように2つの容器6a、bを案内部23の区画23a、23bに配置することにより、保持部22に向けて下向きに傾けた状態で粉体投入中の容器6aの隣に配置された容器6bを、開封した状態で傾けずに保持部22の上に配置し、容器6aからの粉体投入が終了すると同時に容器6bを保持部22に向けて傾斜させて粉体投入を開始することができる。そして容器6bからの粉体投入作業中に、中身が空になった容器を新しい容器6aと交換し、容器6aを開封した上で傾けずに案内部23の上に配置する。このような操作を繰り返すことにより、容器6a、6bの切り替えのための待ち時間を短縮することができる。あるいは、複数の粉体容器6aおよび6bから同時に粉体を投入することにより、投入時間の短縮を図ることも可能である。
【0023】
図4において、仕切り15の両側の区画23a、23bの窪みを曲面形状に形成し、2つのハーフパイプ形状とすれば、容器6の保持安定性が向上するので好ましい。また、仕切り15の高さは、容器6が自立し、かつ、粉体投入作業の障害にならない高さであればよく、保持部22の上面より低くてもよい。
【0024】
図5~9は、本発明の粉体投入器を2種類の異なるサイズで構成した例を示す六面図であり、(a)は大きいサイズの粉体投入器21A、(b)は小さいサイズの粉体投入器21Bを示す。粉体投入器21A、21Bの材質は透明であるため裏側まで透視可能であり、破線は透視により視認可能な構造部分を示す。また、粉体投入器21A、21Bは左右対称の構造を有するので右側面図は記載を省略する。
【0025】
図5~9に示す粉体投入器21A、21Bによれば、例えば血液透析治療に用いられる透析液原液調製用の二種類の粉末剤(A剤/B剤)を溶解装置の粉体投入口に投入する際に、A剤とB剤の袋の大きさに合わせて粉体投入器21AをA剤用に、小さいサイズの粉体投入器21BをB剤用に用いることにより、粉体投入器21Aと粉体投入器21Bを取り違えて使用することを効果的に防止可能である。その他については、
図3~4に示す粉体投入器21と同様であるので、同じ部品番号を付することにより説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の粉体投入器およびそれを用いた粉体投入方法は、血液透析治療に用いられる透析液原液調製用の二種類の粉末剤(A剤/B剤)を溶解装置の粉体投入口に投入する作業を含む、粉体を投入口に投入する作業全般に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1、11、21、21A、21B 粉体投入器
2、12、22 保持部
3、13、23 案内部
4、14 載置部
5 開口
6、6a、6b 容器
7 粉体排出口
15 仕切り
23a、23b 区画