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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140279
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】チューブ容器および容器入り物品
(51)【国際特許分類】
   B65D 35/10 20060101AFI20241003BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B65D35/10 A
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051342
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 隼
(72)【発明者】
【氏名】内麻 博之
(72)【発明者】
【氏名】尾下 由花
【テーマコード(参考)】
3E065
3E086
【Fターム(参考)】
3E065AA02
3E065BA16
3E065BB03
3E065DA04
3E065DA05
3E065DB05
3E065DC01
3E065DD05
3E065FA20
3E065GA10
3E065HA06
3E086AB03
3E086AD03
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BA29
3E086BB01
3E086BB23
3E086BB35
3E086BB55
3E086BB58
3E086BB63
3E086CA40
3E086DA03
3E086DA08
(57)【要約】
【課題】 植物由来のポリエチレン樹脂を含んだ材料から圧縮成形により形成され、ストレスクラックが発生し難い頭部を備えたチューブ容器を提供すること。
【解決手段】 チューブ容器は、チューブ形状を有する胴部と、注出口を有し、且つ前記胴部の一端に接合された頭部とを備え、前記頭部は、植物由来の低密度ポリエチレン樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを含み、前記頭部は、成形と前記胴部への接合とを圧縮成形によって行った成形品である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ形状を有する胴部と、
注出口を有し、且つ前記胴部の一端に接合された頭部と
を備え、
前記頭部は、植物由来の低密度ポリエチレン樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを含み、
前記頭部は、成形と前記胴部への接合とを圧縮成形によって行った成形品であるチューブ容器。
【請求項2】
前記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂である請求項1に記載のチューブ容器。
【請求項3】
前記頭部は、前記低密度ポリエチレン樹脂と前記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを5:95~95:5の質量比で含む請求項1に記載のチューブ容器。
【請求項4】
前記胴部は、押出成形品である請求項1に記載のチューブ容器。
【請求項5】
前記胴部は、ポリエチレン樹脂を含む最内層、第1接着層、中間層、第2接着層、およびポリエチレン樹脂を含む最外層が前記胴部の内側から前記胴部の外側へ順に積層された5層構造を有する請求項1に記載のチューブ容器。
【請求項6】
前記中間層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂を含む請求項5に記載のチューブ容器。
【請求項7】
前記最内層および前記最外層の各々が、前記ポリエチレン樹脂として植物由来のポリエチレン樹脂を含む請求項5に記載のチューブ容器。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載のチューブ容器と、
前記チューブ容器に充填された内容物と
を備え、前記胴部の他端がシールされている容器入り物品。
【請求項9】
チューブ形状を有する胴部の一端の位置で、植物由来の低密度ポリエチレン樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを含んだ材料を圧縮成形して、注出口を有し、且つ前記胴部の前記一端に接合された頭部を形成することを含んだチューブ容器の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法によりチューブ容器を製造することと、
前記チューブ容器に内容物を充填することと、
前記充填の後、前記胴部の他端をシールすることと
を含む、容器入り物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ容器および容器入り物品に関する。
【背景技術】
【0002】
歯磨き粉や化粧品等を収容するチューブ容器として現在流通しているものは、石油由来のポリエチレン樹脂を用いて形成されているものが主流である。近年は、環境負荷低減を目的として、石油由来のポリエチレン樹脂に替えて、カーボンニュートラルな材料であるバイオマス由来のポリエチレン樹脂を使用することが増えてきている。
【0003】
チューブ容器は、チューブ形状を有する胴部と、注出口を有する頭部とから構成される。チューブ容器の頭部の成形方法として、射出成形および圧縮成形の2種類の方法が知られている。これらの方法では、予め成形された胴部の一端に接合するように頭部を射出成形または圧縮成形により成形し、頭部の成形と胴部への接合を同時に行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-167860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、植物由来のポリエチレン樹脂を含んだ材料から圧縮成形により形成され、ストレスクラックが発生し難い頭部を備えたチューブ容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの側面によれば、
チューブ形状を有する胴部と、
注出口を有し、且つ前記胴部の一端に接合された頭部と
を備え、
前記頭部は、植物由来の低密度ポリエチレン樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを含み、
前記頭部は、成形と前記胴部への接合とを圧縮成形によって行った成形品であるチューブ容器が提供される。
【0007】
別の側面によれば、前記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂である上記側面に係るチューブ容器が提供される。
【0008】
更に別の側面によれば、前記頭部は、前記低密度ポリエチレン樹脂と前記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを5:95~95:5の質量比で含む上記側面の何れかに係るチューブ容器が提供される。
【0009】
更に別の側面によれば、前記胴部は、押出成形品である上記側面の何れかに係るチューブ容器が提供される。
【0010】
更に別の側面によれば、前記胴部は、ポリエチレン樹脂を含む最内層、第1接着層、中間層、第2接着層、およびポリエチレン樹脂を含む最外層が前記胴部の内側から前記胴部の外側へ順に積層された5層構造を有する上記側面の何れかに係るチューブ容器が提供される。
【0011】
更に別の側面によれば、前記中間層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂を含む上記側面の何れかに係るチューブ容器が提供される。
【0012】
更に別の側面によれば、前記最内層および前記最外層の各々が、前記ポリエチレン樹脂として植物由来のポリエチレン樹脂を含む上記側面の何れかに係るチューブ容器が提供される。
【0013】
更に別の側面によれば、
上記側面の何れかに係るチューブ容器と、
前記チューブ容器に充填された内容物と
を備え、前記胴部の他端がシールされている容器入り物品が提供される。
【0014】
更に別の側面によれば、チューブ形状を有する胴部の一端の位置で、植物由来の低密度ポリエチレン樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを含んだ材料を圧縮成形して、注出口を有し、且つ前記胴部の前記一端に接合された頭部を形成することを含んだチューブ容器の製造方法が提供される。
【0015】
更に別の側面によれば、
上記側面に係る方法によりチューブ容器を製造することと、
前記チューブ容器に内容物を充填することと、
前記充填の後、前記胴部の他端をシールすることと
を含む、容器入り物品の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、植物由来のポリエチレン樹脂を含んだ材料から圧縮成形により形成され、ストレスクラックが発生し難い頭部を備えたチューブ容器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るチューブ容器の構成を示す平面図。
図2】胴部の5層構造を示す断面図。
図3】チューブ容器の圧縮成形工程の一例を示す断面図。
図4】チューブ容器の圧縮成形工程の一例を示す断面図。
図5】チューブ容器の圧縮成形工程の別の例を示す断面図。
図6】チューブ容器の圧縮成形工程の別の例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。以下に記載する事項は、単独で又は複数を組み合わせて、上記側面の各々に組み入れることができる。
【0019】
上述のとおり、チューブ容器の頭部の成形方法として、射出成形および圧縮成形の2種類の方法が知られている。圧縮成形の方が、少ない金型数で生産速度を上げられるため、1金型当たりの生産効率が高い点、および樹脂の色替えが容易である点で優れている。そこで、本発明者らは、植物由来のポリエチレン樹脂を用いて圧縮成形でチューブ容器の頭部をチューブ容器の胴部の一端に形成したところ、胴部(押出成形品)の形状が保てず成形できなかったり、成形できたとしても成形歪が大きく、成形直後や保管後にクラックが生じたりするという問題に遭遇した。
【0020】
本発明者らは、上記問題を、植物由来の低密度ポリエチレン樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを併用することにより解決し、本発明を完成させるに至った。
【0021】
1.チューブ容器
一つの側面によれば、
チューブ形状を有する胴部と、
注出口を有し、且つ前記胴部の一端に接合された頭部と
を備え、
前記頭部は、植物由来の低密度ポリエチレン樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを含み、
前記頭部は、成形と前記胴部への接合とを圧縮成形によって行った成形品であるチューブ容器が提供される。
【0022】
本明細書において、「チューブ容器」の用語は、内容物を充填する前のチューブ容器、すなわち、胴部の他端(すなわち、頭部が接合されていない側の端)がシールされる前のチューブ容器を指す。本明細書において、内容物が充填された後のチューブ容器は、「容器入り物品」と呼ぶ。
【0023】
1-1.構造
以下に、本発明の一実施形態に係るチューブ容器の構造を、図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るチューブ容器の構成を示す平面図である。
【0024】
図1に示すように、チューブ容器10は、胴部11と、胴部11の一端に接合された頭部12とを備えている。チューブ容器10は、上述のとおり、内容物を充填する前のチューブ容器である。チューブ容器10は、胴部11に内容物を充填し、胴部11の他端をシールし、頭部12にキャップを嵌め合わせて使用される。ここで、内容物は、高粘度の液体であっても半固体であってもよい。内容物は、例えば、化粧品である。内容物の具体例として、保湿クリーム、洗顔料、クレンジング料、日焼け止め、シェービング剤、ヘアスタイリング剤、ヘアケア剤、ファンデーション等が挙げられる。
【0025】
胴部11は、チューブ形状を有する。胴部11は、例えば、押出成形品である。胴部11は、好ましくは、多層構造からなる押出成形品である。胴部11の層構造および樹脂組成については後述する。
【0026】
胴部11の一端には頭部12が接合され、胴部11の他端は、開口しており、シールされていない。胴部11のシールされていない端部は、開口部を覗いた時の形状が円形もしくは楕円形の円筒形状を有している。胴部11は、例えば30~190mm、好ましくは40~160mmの周長を有する。周長は、チューブ容器10の外周の長さを指す。
【0027】
頭部12は、成形と胴部11への接合とを圧縮成形によって行った成形品である。頭部12の樹脂組成および圧縮成形の仕方については後述する。頭部12は、ネジ式のスクリュータイプであってもよいし、打ち込み式の打栓タイプであってもよい。
【0028】
頭部12は、胴部11の一方の端部と一体に連続する肩部31と、肩部31の中央に設けられた円筒状の口部32とを備えている。頭部12は、円筒状の口部32に注出口を有している。
【0029】
肩部31は、チューブ容器10の外部空間に面した外面と、チューブ容器10の内部空間に面した内面との各々が、内部空間から外部空間へ向けて先細りした円錐台形状を有している。肩部31の外周縁は、胴部11と連続している。口部32は、肩部31の中心に、外側へ突き出るように設けられている。
【0030】
1-2.頭部の樹脂組成
頭部12は、植物由来の低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスLDPE)と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L-LDPE)とを含んでいる。直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L-LDPE)は、植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスL-LDPE)であってもよいし、石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(石油L-LDPE)であってもよい。一実施形態によれば、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(石油L-LDPE)である。
【0031】
頭部12は、植物由来の低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスLDPE)と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L-LDPE)とを、例えば5:95~95:5の質量比で、好ましくは10:90~90:10の質量比で、より好ましくは30:70~70:30の質量比で含むことができる。
【0032】
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L-LDPE)が、石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(石油L-LDPE)である場合、バイオマス度を高めるためには、植物由来の低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスLDPE)と石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(石油L-LDPE)とを、好ましくは50:50~95:5の質量比で、より好ましくは50:50~90:10の質量比で、更に好ましくは50:50~70:30の質量比で含むことができる。
【0033】
頭部12に占めるポリエチレン樹脂の割合は、例えば51質量%以上、好ましくは70質量%以上である。このように頭部12は、ポリエチレン樹脂を主成分として構成されるが、ポリエチレン樹脂に加えて、必要に応じて公知の添加剤を含有していてもよい。
【0034】
添加剤としては、樹脂用添加剤として知られている種々の添加剤を使用することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、帯電防止剤、充填剤、結晶核剤、着色顔料、艶消し剤、着色防止剤、防曇剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、滑剤(スリップ剤、離型剤を含む)、およびCO吸収剤などが挙げられる。添加剤の総含有量は、ポリエチレン樹脂100質量部に対して、例えば0.01~10質量部とすることができる。
【0035】
以下、「低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)」と「直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L-LDPE)」との構造の違いについて説明し、その後、「植物由来の低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスLDPE)」、「植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスL-LDPE)」、および「石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(石油L-LDPE)」について、具体的に説明する。
【0036】
低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L-LDPE)は、製造方法の違いにより、構造的に異なっている。すなわち、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)は、エチレンの重合体であり、エチレンがランダムに分岐して結合した構造を有する。このため、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)は、主鎖に種々の炭素数の側鎖が結合し、側鎖には、短鎖分枝(例えば、炭素数約20個以下の短鎖分枝)および長鎖分枝(例えば、炭素数約20個を超える長鎖分枝)が含まれる。一方、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L-LDPE)は、エチレンとα-オレフィンとの共重合体である。このため、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L-LDPE)は、主鎖に、長鎖分枝(例えば、炭素数約20個を超える長鎖分枝)は結合しておらず、短鎖分枝(例えば、炭素数約20個以下の短鎖分枝)のみが結合している。
【0037】
「植物由来の低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスLDPE)」
「植物由来の低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスLDPE)」は、植物を原料として用いて製造した、エチレンの重合体であり、エチレンがランダムに分岐して結合した構造を有する。「植物由来の低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスLDPE)」は、例えば、サトウキビ由来の低密度ポリエチレン樹脂である。サトウキビ由来の低密度ポリエチレン樹脂は、サトウキビを原料として用いて製造した、エチレンの重合体であり、エチレンがランダムに分岐して結合した構造を有する。
【0038】
「植物由来の低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスLDPE)」の密度は、0.91g/cm~0.93g/cmの範囲内にあることが好ましく、0.915g/cm~0.93g/cmの範囲内にあることがより好ましい。なお、本明細書に記載される樹脂の密度は、JIS K7112:1999に準拠した方法で得られた測定値である。
【0039】
また、「植物由来の低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスLDPE)」のメルトフローレート(MFR)は、0.1g/10分~10g/10分の範囲内にあることが好ましく、1g/10分~5g/10分の範囲内にあることがより好ましい。なお、本明細書に記載される樹脂のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210:1999に準拠した方法で得られた測定値である。メルトフローレートは、具体的には、190℃で21.18Nの荷重を樹脂に掛けた時に10分間で吐出される樹脂重量の測定値である。
【0040】
「植物由来の低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスLDPE)」は、例えば、Braskem社から販売されている植物由来の低密度ポリエチレンを使用することができ、その例として、SEB853、SBC818、SBF0323HC、STN7006、SPB618の商品名で販売されている樹脂が挙げられる。
【0041】
「植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスL-LDPE)」
「植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスL-LDPE)」は、植物を原料として用いて製造した、エチレンとα-オレフィンとの共重合体である。「植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスL-LDPE)」は、例えば、サトウキビ由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂である。サトウキビ由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、サトウキビを原料として用いて製造した、エチレンとα-オレフィンとの共重合体である。
【0042】
「α-オレフィン」は、3~20の炭素数を有するα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物であり、例えば、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンなど挙げられる。
【0043】
「植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスL-LDPE)」の密度は、0.91g/cm~0.93g/cmの範囲内にあることが好ましく、0.915g/cm~0.93g/cmの範囲内にあることがより好ましい。また、「植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスL-LDPE)」のメルトフローレート(MFR)は、0.1g/10分~10g/10分の範囲内にあることが好ましく、1g/10分~5g/10分の範囲内にあることがより好ましい。
【0044】
「植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスL-LDPE)」は、例えば、Braskem社から販売されている植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンを使用することができ、その例として、SLL118、SLL118/21、SLL218、SLL218/21、SLL318、SLH118、SLH218、SLH0820/30AFの商品名で販売されている樹脂が挙げられる。
【0045】
「石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(石油L-LDPE)」
「石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(石油L-LDPE)」は、石油を原料として用いて製造した、エチレンとα-オレフィンとの共重合体である。
【0046】
「α-オレフィン」は、3~20の炭素数を有するα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物であり、例えば、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンなど挙げられる。
【0047】
「石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(石油L-LDPE)」の密度は、0.91g/cm~0.93g/cmの範囲内にあることが好ましく、0.915g/cm~0.93g/cmの範囲内にあることがより好ましい。また、「石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(石油L-LDPE)」のメルトフローレート(MFR)は、0.1g/10分~10g/10分の範囲内にあることが好ましく、1g/10分~5g/10分の範囲内にあることがより好ましい。
【0048】
「石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(石油L-LDPE)」は、市販の石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を使用することができ、その例として、株式会社プライムポリマーからエボリュー(登録商標)、ネオゼックス(登録商標)、またはウルトゼックス(登録商標)の商品名で販売されている樹脂、日本ポリエチレン株式会社からノバテック(登録商標)の商品名で販売されている樹脂が挙げられる。
【0049】
1-3.胴部の層構造および樹脂組成
胴部11は、ラミネート加工により重ね合わせたシートをチューブ形状に丸めたものであってもよいし、押出成形品であってもよい。胴部11は、押出成形品であることが好ましい。
【0050】
胴部11が押出成形品であると、ラミネートチューブの胴部で見られるような重ね合わせ部分(すなわち、継ぎ目)がなく、シームレスな外観を実現することができる。また、胴部11が押出成形品であると、ラミネートチューブの胴部と比較して、厚肉化が容易であり、径の大きいチューブ容器でも十分な強度を保つことができる。
【0051】
本明細書において「押出成形品」の用語は、押出成形によりチューブ形状を有するように形成されたものを指す。言い換えると、「押出成形品」の用語は、押出成形直後にチューブ形状を有しているものを指す。したがって、「押出成形品」の用語は、シート形状に押出成形したものをチューブ形状に丸めたものを包含しない。
【0052】
以下、胴部11の層構造および樹脂組成について説明する。胴部11の層構造および樹脂組成は、特に限定されない。胴部11は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。
【0053】
好ましい態様において、胴部11は、5層構造を有する。図2は、胴部11の5層構造を示す断面図である。図2に示すように、胴部11は、ポリエチレン樹脂を含む最内層1a、第1接着層1b、中間層1c、第2接着層1d、およびポリエチレン樹脂を含む最外層1eが胴部11の内側から胴部11の外側へ順に積層された5層構造を有する。図2に示される胴部11は、最内層1a側の面がチューブ容器10の内部空間と隣接し、最外層1e側の面がチューブ容器10の外部空間と隣接する。
【0054】
胴部11は、例えば190~550μm、好ましくは240~500μmの厚みを有する。厚みは、チューブ容器10の壁の厚みを指し、胴部11の長手方向に沿って略等間隔に設定された3箇所で測定された厚みの平均値である。
【0055】
最内層1aは、例えば120~250μmの厚みを有する。第1接着層1bは、例えば1~30μmの厚みを有する。中間層1cは、例えば10~100μmの厚みを有する。第2接着層1dは、例えば1~30μmの厚みを有する。最外層1eは、例えば60~200μmの厚みを有する。
【0056】
(最内層1a)
最内層1aは、植物由来のポリエチレン樹脂を含む。好ましい実施形態において、最内層1aは、植物由来の低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスLDPE)と、植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスL-LDPE)とを含む。最内層1aは、植物由来の低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスLDPE)と植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスL-LDPE)とを、例えば9:1~4:6の質量比で含む。
【0057】
(第1接着層1b)
第1接着層1bは、最内層1aを中間層1cと接着する役割を果たす。第1接着層1bは、石油由来の接着性のポリエチレン樹脂(接着性PE)、例えば、石油由来の無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂(MA変性PE)を含む。
【0058】
(中間層1c)
中間層1cは、好ましくは、ガスバリア性を有する樹脂を含む。中間層1cを構成する樹脂は、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)である。
【0059】
(第2接着層1d)
第2接着層1dは、最外層1eを中間層1cと接着する役割を果たす。第2接着層1dは、石油由来の接着性のポリエチレン樹脂(接着性PE)、例えば、石油由来の無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂(MA変性PE)を含む。第2接着層1dは、第1接着層1bと同じ樹脂組成を有していてもよいし、第1接着層1bと異なる樹脂組成を有していてもよい。
【0060】
(最外層1e)
最外層1eは、植物由来のポリエチレン樹脂を含む。好ましい実施形態において、最外層1eは、植物由来の低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスLDPE)と、植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスL-LDPE)とを含む。最外層1eは、植物由来の低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスLDPE)と植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスL-LDPE)とを、例えば9:1~4:6の質量比で含む。最外層1eは、最内層1aと同じ樹脂組成を有していてもよいし、最内層1aと異なる樹脂組成を有していてもよい。
【0061】
(添加剤)
最内層1a、第1接着層1b、中間層1c、第2接着層1d、最外層1eは、樹脂を主成分として構成されるが、樹脂に加えて、必要に応じて公知の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、樹脂用添加剤として知られている種々の添加剤を使用することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、帯電防止剤、充填剤、結晶核剤、着色顔料、艶消し剤、着色防止剤、防曇剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、滑剤(スリップ剤、離型剤を含む)、およびCO吸収剤などが挙げられる。添加剤の総含有量は、各層の樹脂100質量部に対して、例えば0.01~10質量部とすることができる。
【0062】
上述の5層構造を、以下に層構造Aとしてまとめて記載する:
層構造A(5層構造)
最内層:植物由来の低密度ポリエチレン樹脂(植物LDPE)と植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスL-LDPE)との混合物
第1接着層:石油由来の接着性のポリエチレン樹脂(接着性PE)
中間層:エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)
第2接着層:石油由来の接着性のポリエチレン樹脂(接着性PE)
最外層:植物由来の低密度ポリエチレン樹脂(植物LDPE)と植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスL-LDPE)との混合物。
【0063】
胴部11は、上述の層構造Aに限定されず、以下に例示する層構造B~Hの何れかを有していてもよい。以下の層構造B~Hでは、多層構造の場合、胴部11の内側から胴部11の外側への積層順に、各層を構成する樹脂を記載する。
【0064】
層構造B(3層構造)
内層:石油由来の接着性の低密度ポリエチレン樹脂(接着性LDPE)と植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスL-LDPE)との混合物
中間層:エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)
外層:石油由来の接着性の低密度ポリエチレン樹脂(接着性LDPE)と植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスL-LDPE)との混合物。
【0065】
層構造C(2層構造)
内層:石油由来の高密度ポリエチレン樹脂(石油HDPE)
外層:石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(石油L-LDPE)と植物由来の低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスLDPE)との混合物。
【0066】
層構造D(単層構造)
単層:石油由来の低密度ポリエチレン樹脂(石油LDPE)と石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(石油L-LDPE)と植物由来の低密度ポリエチレン樹脂(バイオマスLDPE)との混合物。
【0067】
層構造E(5層構造)
最内層:低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)
第1接着層:石油由来の接着性のポリエチレン樹脂(接着性PE)
中間層:エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)
第2接着層:石油由来の接着性のポリエチレン樹脂(接着性PE)
最外層:低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)
層構造Eにおいて、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)は、石油LDPE、バイオマスLDPE、および石油LDPEとバイオマスLDPEとの混合物の何れであってもよい。
【0068】
層構造F(3層構造)
内層:石油由来の接着性の低密度ポリエチレン樹脂(接着性LDPE)と石油由来の接着性の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(接着性L-LDPE)との混合物
中間層:エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)
外層:石油由来の接着性の低密度ポリエチレン樹脂(接着性LDPE)と石油由来の接着性の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(接着性L-LDPE)との混合物。
【0069】
層構造G(2層構造)
内層:高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)
外層:低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)
層構造Gにおいて、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)は、石油HDPE、バイオマスHDPE、および石油HDPEとバイオマスHDPEとの混合物の何れであってもよい。また、層構造Gにおいて、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)は、石油LDPE、バイオマスLDPE、および石油LDPEとバイオマスLDPEとの混合物の何れであってもよい。
【0070】
層構造H(単層構造)
単層:低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)
層構造Hにおいて、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)は、石油LDPE、バイオマスLDPE、および石油LDPEとバイオマスLDPEとの混合物の何れであってもよい。
【0071】
上述の層構造A~Hのうち、バイオマス度を高めるという観点では、植物由来のポリエチレン樹脂を含んでいる層構造を採用することが好ましい。
【0072】
胴部11が、多層構造の押出成形品である場合、かかる押出成形品は、公知の共押出成形法に従って製造することができる。すなわち、樹脂材料を、各層毎に、別々の押出機で1つの金型へ押し出して、金型内で多層構造のチューブ形状を形成することにより製造することができる。
【0073】
胴部11は、チューブ形状の樹脂成形品(例えば押出成形品)の外面上に、1以上の追加の層を更に備えていてもよい。追加の層は、公知の加飾技術に従って、例えば、印刷(例えば、オフセット印刷、スクリーン印刷)、塗装(例えば、印刷層表面保護のクリア塗装、UV塗装)、ラベル貼り、ホットスタンプ、シュリンクフィルム貼り、蒸着、またはフィルム転写により、形成することができる。
【0074】
2.チューブ容器の製造方法
上述のチューブ容器10は、胴部11の一端の位置で、頭部12を形成するための樹脂材料を圧縮成形して、胴部11の一端に接合された頭部12を形成することにより製造することができる。したがって、別の側面によれば、チューブ形状を有する胴部の一端の位置で、植物由来の低密度ポリエチレン樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを含んだ材料を圧縮成形して、注出口を有し、且つ前記胴部の前記一端に接合された頭部を形成することを含んだチューブ容器の製造方法が提供される。
【0075】
2-1.チューブ容器の圧縮成形工程の一例
以下、チューブ容器10の圧縮成形工程の一例を図3および4を参照しながら説明する。図3は、圧縮成形前の様子を示し、図4は、圧縮成形後の様子を示す。
【0076】
図3に示すとおり、圧縮成形装置は、凸金型50と、凹金型60と、オリフィス70と、移動機構80とを備えている。
【0077】
凸金型50は、マンドレル51と、パンチ52と、押圧軸53とを備えている。マンドレル51は、先端が頭部12の内面周縁部に対応して先細りしており、この先端から他端まで伸びた貫通孔を有している。マンドレル51は、先端が下向きになるように上下可動に設置されている。押圧軸53は、マンドレル51の貫通孔内に設置されている。押圧軸53は、マンドレル51の貫通孔内で、その軸方向に可動である。パンチ52は、マンドレル51の先端側で押圧軸53の一端に支持されており、押圧軸53とともに、マンドレル51の貫通孔内でその軸方向に可動である。パンチ52の下面は、頭部12の内面中央部に対応して中央部が下方に突き出た形状を有している。
【0078】
凹金型60は、頭部12の外面に対応した形状のキャビティを有している。凹金型60は、凸金型50の真下にキャビティが上向きになるように設置されている。
【0079】
オリフィス70は、円柱形状を有している棒状の部材であって、先端側面が口部32の内面に対応した形状を有している。オリフィス70は、先端が凹金型60のキャビティ内に位置するように設置されている。オリフィス70は、上下に可動であって、上方へ向けて付勢されている。
【0080】
移動機構80は、凸金型50を上下動させる。また、移動機構80は、押圧軸53をマンドレル51に対して軸方向へ相対的に移動させる。
【0081】
図3に示す圧縮成形装置による圧縮成形に先立ち、円筒形の胴部11を押出成形により成形する。
【0082】
次に、図3に示すとおり、円筒形の胴部11を、円筒形のマンドレル51の周囲を覆い、下側端面がマンドレル51の下端よりも僅かに下方に位置するように設置する。なお、このとき、マンドレル51に対するパンチ52の相対位置は、例えば、最下点よりも上方にしておく。
【0083】
また、頭部12を形成するための樹脂材料12aを、凹金型60のキャビティ内に設置する。樹脂材料12aは、ここでは、ドーナツ形状とし、その穴を円柱状のオリフィス70が貫通するように設置する。ここで、樹脂材料12aは、例えば、200~300℃の温度に予熱しておく。樹脂材料12aは、例えば、0.3~5.0gの量で使用する。また、凹金型60の温度は、例えば、10~40℃の温度に設定する。
【0084】
次に、移動機構80は、凸金型50が下方へ移動するように動作する。具体的には、移動機構80は、マンドレル51とパンチ52と押圧軸53とが一体に下方へ移動するように動作する。凸金型50が下方へ移動すると、胴部11の下端は、キャビティの形状に沿って折れ曲がる。また、凸金型50が下方へ移動すると、パンチ52は、その下面中央部をオリフィス70の上方端面に当接させ、その後、オリフィス70を押し下げる。
【0085】
続いて、移動機構80は、マンドレル51の位置を固定したまま、パンチ52が下方へ移動するように動作する。こうすると、パンチ52は、オリフィス70を更に押し下げるとともに、樹脂材料12aを、凸金型50と凹金型60との間で広がるように流動させる。流動した樹脂材料12aの一部は、胴部11の下端部内面を溶融させる。その後、樹脂材料12aを冷却して固化させることにより、図3に示すように、樹脂材料12aからなり、胴部11と一体化された頭部12が得られる。
【0086】
次に、移動機構80は、凸金型50が上方へ移動するように動作する。その後、凸金型50から成形品を取り外す。このようにして、頭部12と胴部11との接合部に段差がないチューブ容器が得られる。
【0087】
2-2.チューブ容器の圧縮成形工程の別の例
チューブ容器10の圧縮成形工程の別の例を図5および6に示す。図5は、圧縮成形前の様子を示し、図6は、圧縮成形後の様子を示す。
【0088】
図5に示す圧縮成形装置では、凸金型50および凹金型60は、図3に示す圧縮成形装置とは上下逆に配置されている。このとき、凸金型50において、パンチ52は、マンドレル51に対する相対位置を、例えば、最上位になるようにしておく。また、図5に示す圧縮成形装置では、移動機構80は、凸金型50ではなく凹金型60を上下動させる。これらの点を除いて、図5に示す圧縮成形装置は、図3に示す圧縮成形装置と同様の構造を有している。
【0089】
図5に示す圧縮成形装置の動作については、図3に示す圧縮成形装置の動作と異なる点のみ以下に説明する。
【0090】
この例では、円筒形の胴部11をマンドレル51の周囲に設置した後、図5に示すとおり、ドーナツ形状の樹脂材料12aを、その穴をパンチ52の突出部が貫通するように設置する。
【0091】
次に、移動機構80は、凹金型60が下方へ移動するように動作する。凹金型60が下方へ移動すると、胴部11の上端は、キャビティの形状に沿って折れ曲がる。また、凹金型60が下方へ移動すると、樹脂材料12aは、凸金型50と凹金型60との間で広がるように流動する。流動した樹脂材料12aの一部は、胴部11の上端部内面を溶融させる。
【0092】
その後、樹脂材料12aを冷却して固化させることにより、図6に示すように、樹脂材料12aからなり、胴部11と一体化された頭部12が得られる。このようにして得られたチューブ容器も、頭部12と胴部11との接合部に段差がない。
【0093】
3.容器入り物品およびその製造方法
上述のチューブ容器10に内容物を充填し、チューブ容器の胴部11の他端(すなわち、頭部12が接合されていない側の端)をシールすることにより、容器入り物品を得ることができる。したがって、別の側面によれば、上述のチューブ容器と、前記チューブ容器に充填された内容物とを備え、前記胴部の他端がシールされている容器入り物品が提供される。更に別の側面によれば、「2.チューブ容器の製造方法」の欄に記載の方法によりチューブ容器を製造することと、前記チューブ容器に内容物を充填することと、前記充填の後、前記胴部の他端をシールすることとを含む、容器入り物品の製造方法が提供される。
【0094】
上述のとおり、内容物は、高粘度の液体であっても半固体であってもよい。内容物は、例えば、化粧品である。内容物の具体例として、保湿クリーム、洗顔料、クレンジング料、日焼け止め、シェービング剤、ヘアスタイリング剤、ヘアケア剤、ファンデーション等が挙げられる。
【0095】
シールは、チューブ容器のエンドシール加工として公知の方法により行うことができ、例えば、ヒートシール方式、超音波シール方式、ホットエアーシール方式により行うことができる。これにより、胴部21の他端が封止される。
【0096】
4.効果
上述のとおり、植物由来のポリエチレン樹脂は、圧縮成形した場合に成形できなかったり、成形できたとしても成形歪が大きく、成形直後や保管後にクラックが生じたりするという問題がある。これに対し、本発明のチューブ容器は、植物由来のポリエチレン樹脂を用いて圧縮成形により頭部を胴部の一端に形成することにより製造されるものであるが、特定の2種類の植物由来のポリエチレン樹脂を組み合わせて使用することにより、圧縮成形できないという問題を解消することができる。このため、本発明は、圧縮成形法の利点、例えば、少ない金型数で生産速度を上げられるため、1金型当たりの生産効率が高い点、および樹脂の色替えが容易である点などを享受することができる。加えて、本発明のチューブ容器は、頭部の樹脂材料として、特定の2種類の植物由来のポリエチレン樹脂を組み合わせて使用することにより、圧縮成形直後や保管後のクラック発生を防止し、ストレスクラックが生じ難いという効果を奏することができる。更に、本発明のチューブ容器は、植物由来のポリエチレン樹脂を含むため、石油由来のポリエチレン樹脂の場合と比べて、CO排出量の削減に寄与することができる。
【実施例0097】
[1]チューブ容器の製造
[1-1]例1
図1に示す構造を有するチューブ容器を、以下の手順で製造した。
【0098】
まず、以下の5層構造を有する胴部(図2参照)を製造した。
最内層1a:植物由来の低密度ポリエチレン樹脂(密度:0.923g/cm、MFR:2.7g/10min(190℃、21.18N荷重))と、植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度:0.916g/cm、MFR:2.3g/10min(190℃、21.18N荷重))とを50:50の質量比でドライブレンドすることにより得られた混合物
第1接着層1b:石油由来の無水マレイン酸変性低密度ポリエチレン(密度:0.93g/cm、MFR:1.0g/10min(210℃、21.18N荷重))
中間層1c:エチレン-ビニルアルコール共重合体(密度:1.14g/cm、MFR:12.0g/10min(210℃、21.18N荷重))
第2接着層1d:石油由来の無水マレイン酸変性低密度ポリエチレン(密度:0.93g/cm、MFR:1.0g/10min(210℃、21.18N荷重))
最外層1e:植物由来の低密度ポリエチレン樹脂(密度:0.923g/cm、MFR:2.7g/10min(190℃、21.18N荷重))と植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度:0.916g/cm、MFR:2.3g/10min(190℃、21.18N荷重))とを50:50の質量比でドライブレンドすることにより得られた混合物。
【0099】
具体的には、1軸チューブ押出機の5つのホッパーに、各層の樹脂材料(ペレット)を投入した。押出機およびダイの設定温度を170~200℃に設定し、60本/minの生産速度および9.1m/minの引取速度という成形条件で、最内層/第1接着層/中間層/第2接着層/最外層の5層構造を有するチューブを成形した。
【0100】
得られたチューブ(すなわち、胴部)の周長は108mmであり、長さは150mm、平均肉厚は0.46mmであった。また、最内層、第1接着層、中間層、第2接着層、最外層の厚みは、それぞれ、0.225mm、0.01mm、0.04mm、0.01mm、0.175mmであった。
【0101】
次に、図3に示す圧縮成形装置を用いて、胴部の一端に頭部を成形した。頭部を形成するための樹脂材料として、以下の樹脂を使用した。
【0102】
植物由来の低密度ポリエチレン樹脂(密度:0.923g/cm、MFR:2.7g/10min(190℃、21.18N荷重))(以下、バイオマスLDPEという)と、石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度:0.922g/cm、MFR:1.2g/10min(190℃、21.18N荷重))(以下、石油L-LDPEという)とを95:5の質量比でドライブレンドすることにより得られた混合物。
【0103】
圧縮成形は、上記の「2-1.チューブ容器の圧縮成形工程の一例」の欄に説明したとおり行った。樹脂材料は、1.4gの量で使用した。圧縮成形前に、樹脂材料を、260℃の温度に予熱した。また、凹金型の温度は、20℃の温度に設定した。
【0104】
[1-2]例2~7
頭部を形成するための樹脂材料を、以下の樹脂材料に変更したこと以外は、例1と同様の手順に従って例2~7のチューブ容器を製造した。例2~7で使用した「バイオマスLDPE」と「石油L-LDPE」は、例1で使用したものと同じである。
例2:バイオマスLDPEと石油L-LDPEとを90:10の質量比でドライブレンドすることにより得られた混合物
例3:バイオマスLDPEと石油L-LDPEとを70:30の質量比でドライブレンドすることにより得られた混合物
例4:バイオマスLDPEと石油L-LDPEとを50:50の質量比でドライブレンドすることにより得られた混合物
例5:バイオマスLDPEと石油L-LDPEとを30:70の質量比でドライブレンドすることにより得られた混合物
例6:バイオマスLDPEと石油L-LDPEとを10:90の質量比でドライブレンドすることにより得られた混合物
例7:バイオマスLDPEと石油L-LDPEとを5:95の質量比でドライブレンドすることにより得られた混合物。
【0105】
[1-3]比較例1
比較例1のチューブ容器は、例1で製造した胴部の一端に頭部を射出成形により成形することにより製造した。頭部を形成するための樹脂材料としては、バイオマスLDPEを使用した。比較例1で使用した「バイオマスLDPE」は、例1で使用したものと同じである。
【0106】
[1-4]比較例2
頭部を形成するための樹脂材料をバイオマスLDPEに変更したこと以外は、例1と同様の手順に従って比較例2のチューブ容器を製造した。比較例2で使用した「バイオマスLDPE」は、例1で使用したものと同じである。
【0107】
[1-5]比較例3
頭部を形成するための樹脂材料を、以下のバイオマスL-LDPEに変更したこと以外は、例1と同様の手順に従って比較例3のチューブ容器を製造した。
植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度:0.916g/cm、MFR:2.3g/10min(190℃、21.18N荷重))。
【0108】
[2]評価方法
[2-1]頭部の成形可否
頭部の成形可否を以下のとおり評価した。
・評価基準
〇 :成形できた
× :成形できなかった
【0109】
[2-2]ストレスクラック試験
得られたチューブ容器の頭部に10% Igepal(ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル)水溶液を付着させ、キャップをキャップ径×3.2N・cmのトルクで閉栓した後に65℃恒温槽にて所定時間にわたって保管した。試験は、6時間の保管、24時間の保管、30時間の保管により行った。各保管時間の後に、亀裂(crack)の有無を目視で判定し、以下の評価基準により評価した
・評価基準
AA:30時間保管後に亀裂が見られなかった
A :24時間保管後に亀裂が見られなかったが、30時間保管後に亀裂が見られた
B :6時間保管後に亀裂が見られなかったが、24時間保管後に亀裂が見られた
C :6時間保管後に亀裂が見られた
【0110】
[3]評価結果
評価結果を表1に示す。
【表1】
【0111】
例1のチューブ容器は、圧縮成形時に不具合を生じることなく製造することができた。また、例1のチューブ容器は、6時間保管のストレスクラック試験において亀裂が見られなかった。例2~7のチューブ容器は、圧縮成形時に不具合を生じることなく製造することができた。また、例2~7のチューブ容器は、30時間保管のストレスクラック試験においても亀裂が見られなかった。
【0112】
一方、比較例1のチューブ容器は、評価結果に問題はないが、射出成形により製造されたため、圧縮成形法の利点を享受することができない。比較例2のチューブ容器は、6時間保管のストレスクラック試験において亀裂が見られた。比較例3のチューブ容器は、圧縮成形時に、樹脂材料がベタついて金型に貼り付いた。
【0113】
これらの結果から、チューブ容器の頭部の樹脂材料として、バイオマスLDPEとバイオマスL-LDPEとを組み合わせて使用すると、「圧縮成形により形成可能であり、且つストレスクラックが発生し難い頭部」を備えたチューブ容器が得られることが分かる。
【0114】
なお、バイオマスLDPEとバイオマスL-LDPEの混合方法については、ペレットをブレンドする方法、溶融混錬の後に再ペレット化する方法があるが、いずれの方法でも上記効果が得られることを確認した。また、頭部を形成するための樹脂材料に添加剤や着色材を混合した場合でも上記効果が得られることを確認した。更に、添加剤や着色剤の添加方法についても、マスターバッチをブレンドする方法、溶融混錬の後に再ペレット化する方法があるが、いずれの方法でも上記効果が得られることを確認した。
【符号の説明】
【0115】
1a…最内層、1b…第1接着層、1c…中間層、1d…第2接着層、1e…最外層、10…チューブ容器、11…胴部、12…頭部、12a…樹脂材料、31…肩部、32…口部、50…凸金型、51…マンドレル、52…パンチ、53…押圧軸、60…凹金型、70…オリフィス、80…移動機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6