(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140288
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】加湿器
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20241003BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20241003BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051359
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】梶尾 克宏
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AC07
5H127BA02
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB34
5H127BB37
5H127BB39
5H127EE17
(57)【要約】
【課題】燃料電池に対する空気の供給を停止するためのバイパス流路を、大型化を招くことなく、部品点数の低減を可能にし、配管の取り回しも良好にする加湿器を構成する。
【解決手段】
乾燥空気に燃料電池FCから送り出された含水空気の水分を与えることで加湿空気を生成して燃料電池FCに供給する加湿ユニットと、加湿ユニットに乾燥空気が流れる乾燥側流路DLと、加湿ユニットで生成された除湿空気が流れる除湿側流路ELと、加湿ユニットを収容するケースCとを備えて加湿器10を構成する。加湿器10は、乾燥側流路DLと除湿側流路ELとを接続するバイパス流路25と、乾燥側流路DLに流通する乾燥空気を、加湿ユニット又はバイパス流路25の何れか一方に切換可能な切換弁26とを備えており、バイパス流路25の一部をケースCに設けた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に供給される乾燥空気に対して前記燃料電池から送り出された含水空気の水分を与える加湿ユニットと、
前記加湿ユニットに接続され、前記乾燥空気が流通する乾燥側流路と、
前記加湿ユニットに接続され、前記含水空気が前記加湿ユニットにより除湿されて生成された除湿空気が流通する除湿側流路と、
前記乾燥空気が流入する流入ポートと前記除湿空気が流出する流出ポートとを有し、前記加湿ユニットを収容するケースと、
前記乾燥側流路と前記除湿側流路とを接続するバイパス流路と、
前記乾燥側流路に流通する前記乾燥空気を、前記加湿ユニット又は前記バイパス流路の何れか一方に切換可能な切換弁と、を備え、
前記バイパス流路の一部が前記ケースに設けられている加湿器。
【請求項2】
前記ケースが、前記燃料電池のエンドプレートに支持され前記加湿ユニットを収容するケース本体と、当該ケース本体のうち前記エンドプレートの反対側に配置される外壁とを備えており、
前記バイパス流路が前記外壁の外面に備えられている請求項1に記載の加湿器。
【請求項3】
前記外壁には、前記流入ポートと前記乾燥側流路との間に設けられ、前記乾燥空気を前記加湿ユニットに送り込む吸気部と、前記吸気部から送り込まれた前記乾燥空気が前記加湿ユニットで加湿されて生成された加湿空気を前記燃料電池に供給する供給部と、前記燃料電池から送り出された前記含水空気を受け入れて前記加湿ユニットに送り込む受給部と、前記受給部から送り込まれた前記含水空気が前記加湿ユニットで水分を奪われた前記除湿空気を前記除湿側流路に排出する排出部とが、外方に突出形成されており、
前記バイパス流路が、前記吸気部、前記供給部、前記受給部及び前記排出部に囲まれた凹状空間に配置されている請求項2に記載の加湿器。
【請求項4】
前記乾燥側流路には、前記乾燥空気を前記加湿ユニットと前記燃料電池との何れかを選択して供給可能な吸気制御弁が、前記切換弁より下流側に設けられている請求項1又は2に記載の加湿器。
【請求項5】
前記切換弁は、前記乾燥側流路に流れる前記乾燥空気を、前記加湿ユニットと、前記燃料電池と、前記バイパス流路との何れかを選択して切換可能に構成されている請求項1又は2に記載の加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池のカソード側に供給する空気を加湿する加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料ガスとしての水素と、酸化ガスとしての空気とが供給されることにより発電する燃料電池スタックを備えた燃料電池システムが示されている。
【0003】
特許文献1の燃料電池システムは車両に搭載可能に構成され、空気は加湿器で加湿された後に燃料電池スタックに供給される。加湿器は、燃料電池スタックから排出されるカソードオフガス(反応後の空気)に含まれる水分と熱を、外部から供給される乾燥状態の空気に与える(交換する)ように機能する。
【0004】
また、特許文献1では、加湿器に空気を供給する空気供給流路と、加湿器から空気を排出する空気排出路との間で空気を流す空気バイパス流路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される空気バイパス流路は、燃料電池の発電を停止する際に、空気供給流路に流れる空気を、空気排出路に排出し、燃料電池に対する空気の供給を停止することにより無駄な発電を停止するように機能する。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載される空気バイパス流路は、加湿器から比較的離れた位置に配置されているため、一対の流路を連通させるための管路と、この管路における空気の流れを制御する開閉弁とが必要となり、大型化を招き、部品点数の増大を招き、配管の取り回しも悪化させることが懸念される。
【0008】
このような理由から、燃料電池に対する空気の供給を停止するためのバイパス流路を、大型化を招くことなく、部品点数の低減を可能にし、配管の取り回しも良好にする加湿器が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る加湿器の特徴構成は、燃料電池に供給される乾燥空気に対して前記燃料電池から送り出された含水空気の水分を与える加湿ユニットと、前記加湿ユニットに接続され、前記乾燥空気が流通する乾燥側流路と、前記加湿ユニットに接続され、前記含水空気が前記加湿ユニットにより除湿されて生成された除湿空気が流通する除湿側流路と、前記乾燥空気が流入する流入ポートと前記除湿空気が流出する流出ポートとを有し、前記加湿ユニットを収容するケースと、前記乾燥側流路と前記除湿側流路とを接続するバイパス流路と、前記乾燥側流路に流通する前記乾燥空気を、前記加湿ユニット又は前記バイパス流路の何れか一方に切換可能な切換弁と、を備え、前記バイパス流路の一部が前記ケースに設けられている点にある。
【0010】
本構成によると、切換弁の制御によって乾燥空気を、流入ポートと、バイパス流路との何れかに供給することが可能となる。また、乾燥空気をバイパス流路に供給することにより、燃料電池への乾燥空気の供給を停止し、燃料電池での発電を迅速に停止できる。特に、バイパス流路の一部が、加湿ユニットを収容するケースに備えられているため、バイパス流路を配置する空間の確保を必要とせず、例えば、バイパス流路を乾燥側流路に接続するための管路、あるいは、バイパス流路を除湿側流路に接続するための管路を形成する工程の短縮も可能で大型化を招くこともない。従って、燃料電池に対する空気の供給を停止するためのバイパス流路を、部品点数の低減が可能で、配管の取り回しも良好にする加湿器が構成された。
【0011】
他の構成として、前記ケースが、前記燃料電池のエンドプレートに支持され前記加湿ユニットを収容するケース本体と、当該ケース本体のうち前記エンドプレートの反対側に配置される外壁とを備えており、前記バイパス流路を前記外壁の外面に備えても良い。
【0012】
これによると、例えば、バイパス流路を外壁の外面に溶着状態で支持することや、バイパス流路を外壁と一体的に形成することも可能となる。また、この構成では、バイパス流路が露出するためメンテナンスも容易に行える。
【0013】
他の構成として、前記外壁には、前記流入ポートと前記乾燥側流路との間に設けられ、前記乾燥空気を前記加湿ユニットに送り込む吸気部と、前記吸気部から送り込まれた前記乾燥空気が前記加湿ユニットで加湿されて生成された加湿空気を前記燃料電池に供給する供給部と、前記燃料電池から送り出された前記含水空気を受け入れて前記加湿ユニットに送り込む受給部と、前記受給部から送り込まれた前記含水空気が前記加湿ユニットで水分を奪われた前記除湿空気を前記除湿側流路に排出する排出部とが、外方に突出形成されており、前記バイパス流路が、前記吸気部、前記供給部、前記受給部及び前記排出部に囲まれた凹状空間に配置されても良い。
【0014】
これによると、バイパス流路が、吸気部、供給部、受給部、排出部の何れかに囲まれた凹状空間に配置されるため、バイパス流路が外壁の外面に大きく突出することがなく、加湿器の大型化を招くこともない。
【0015】
他の構成として、前記乾燥側流路には、前記乾燥空気を前記加湿ユニットと前記燃料電池との何れかを選択して供給可能な吸気制御弁が、前記切換弁より下流側に設けられても良い。
【0016】
これによると、例えば、燃料電池の内部の水分が過多である場合に、吸気制御弁の制御によって吸入ポートから吸入した乾燥空気を燃料電池に供給することにより、燃料電池の内部の水分の低下が可能となる。また、切換弁の制御によって吸入ポートから吸入した乾燥空気をバイパス流路に流すことも可能となる。特に、切換弁が、吸気制御弁より上流側に配置されているため、吸気制御弁の設定に拘わらず燃料電池に対する乾燥空気の遮断を確実に行える。
【0017】
他の構成として、前記切換弁は、前記乾燥側流路に流れる前記乾燥空気を、前記加湿ユニットと、前記燃料電池と、前記バイパス流路との何れかを選択して切換可能に構成されても良い。
【0018】
これによると、切換弁の制御によって吸入ポートからの乾燥空気を、燃料電池と、加湿ユニットと、バイパス流路との何れかに供給することが可能となる。つまり、単一の切換弁によって3つの流路の1つを選択して乾燥空気を供給するため、複数の弁を用いなくて済み、部品点数の低減を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】燃料電池と加湿器とのガス流路を模式的に示す図である。
【
図4】加湿器のケース本体とバイパス流路とを示す横断面図である。
【
図5】加湿器のケース本体の下部の横断面図である。
【
図6】別実施形態(a)のガス流路を模式的に示す図である。
【
図7】別実施形態(b)のガス流路を模式的に示す図である。
【
図8】別実施形態(c)のガス流路を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1に示すように、2つのエンドプレート1と、これらのエンドプレート1に挟み込まれる複数の燃料電池セル2を備えて燃料電池FCが構成されている。この燃料電池FCは一方のエンドプレート1の外面に加湿器10を備えている。尚、この燃料電池FCは、FCV(燃料電池自動車)に搭載されるものを示している。
【0021】
図面には示していないが、燃料電池FCの2つのエンドプレート1のうち、加湿器10が配置された面と反対側のエンドプレート1の外面に水素ガス(アノードガス)を供給する水素供給部を備えている。
【0022】
図1に示すように、一方のエンドプレート1は、空気(カソードガス)が供給される吸入孔1aと、反応後の空気(カソードオフガス)を排出する排出孔1bとが形成されている。また、他方のエンドプレート1には水素ガス(アノードガス)の供給孔(図示せず)と、反応後のガス(アノードオフガス)の排出口(図示せず)が形成される。
【0023】
燃料電池FCは、水素供給部からの水素ガス(アノードガス)が複数の燃料電池セル2のアノード側に供給され、加湿器10で加湿された加湿空気(カソードガス)が複数の燃料電池セル2のカソード側に供給されることにより発電を行う。
【0024】
燃料電池セル2は、カソード電極を構成する高分子電解質膜を適度の湿潤状態に維持することにより発電性能が高められる。この理由から燃料電池FCは、燃料電池セル2のカソード側に加湿空気を供給するための加湿器10が備えられている。
【0025】
燃料電池FCは、発電に伴い生成された水が、反応後の空気(カソードオフガス/以下、含水空気と称することもある)に含まれる状態で排出される。
図2~
図5に示すように、加湿器10は、含水空気に含まれる水分を加湿ユニット11で奪い、このように奪った水分で空気(カソードガス/乾燥空気)を、加湿することにより加湿空気を生成する。
【0026】
特に、燃料電池セル2の発電は発熱反応であるため含水空気の温度は上昇する。このため、加湿器10において含水空気に含まれる水分を乾燥空気に与えることにより、加湿空気の温度上昇も図られる。
【0027】
〔加湿器〕
この実施形態では、エンドプレート1が縦向き姿勢で設けられ、このエンドプレート1の外面に加湿器10が備えられている。
【0028】
図2、
図3の右側を加湿器10の右側(右部等)と定義し、この逆側を左側(左部等)と定義する。また、
図2の上側を加湿器10の上側(上部等)と定義し、この逆側を下側(下部等)と定義する。更に、
図3の下側を加湿器10の前側(前部等)と定義し、この逆側(エンドプレート1に近い側)を後側(後部等)と定義する。以下の説明では、この定義に従い加湿器10の各部の位置関係を説明する。
【0029】
図2~
図5に示すように、加湿器10は、加湿ユニット11をケースCに収容している。ケースCは、後部がエンドプレート1に連結する樹脂製(金属製でも良い)のケース本体12と、ケース本体12の前部側の開口を覆う樹脂製の外壁13とを備えている。
【0030】
図1~
図5に示すように、外壁13は、ケース本体12の前側の開口を覆うプレート状部を有している。外壁13は、プレート状部に対し、吸気ガイド13a(吸気部の一例)と、供給ガイド13b(供給部の一例)と、受給ガイド13c(受給部の一例)と、排出ガイド13d(排出部の一例)とがプレート状部から外方に膨らむように突出形成されている。
【0031】
外壁13には、吸気ガイド13a、供給ガイド13b、受給ガイド13c、排出ガイド13dの夫々に覆われる領域に対し、夫々のガイドに対応して吸気口13ap(流入ポートの一例)、供給口13bp、受給口13cp、排出口13dp(流出ポートの一例)が形成されている。
【0032】
この構成から、吸気ガイド13aは、乾燥側流路DLとしての第1流路21から供給される乾燥空気を、吸気口13apを通過させて加湿ユニット11に案内する。加湿ユニット11は、吸気口13apを介して供給された乾燥空気を加湿し、供給口13bpを通過させ供給ガイド13bに送り出す。供給ガイド13bは、加湿された加湿空気を加湿側流路HLとしての第2流路22に送り出す。
【0033】
受給ガイド13cは、含水側流路WLとしての第3流路23でから供給される含水空気を、受給口13cpを通過させて加湿ユニット11に案内する。加湿ユニット11は、受給口13cpを介して供給された含水空気から水分を奪い、先に説明したように乾燥空気に与えて加湿する。排出ガイド13dは、加湿ユニット11で水分が奪われ、排出口13dpから送り出された除湿空気を、除湿側流路ELとしての第4流路24に案内する。
【0034】
特に、この加湿器10は、ケース本体12の内部で乾燥側流路DLから供給された空気と、含水側流路WLから供給された空気とを分離する構造を有している。
【0035】
加湿器10は、ケース本体12の外部に吸気制御弁15と、切換弁26と、排気制御弁16とを備えている。吸気制御弁15と切換弁26とは電動アクチュエータの駆動によって内部の弁体を作動させ、流路の入り換えを行う。排気制御弁16は、調圧弁として機能する。
【0036】
〔加湿器:加湿部〕
図面には詳細を示していないが、加湿ユニット11は、複数の板状のセパレータと、複数のセパレータに挟み込まれ、湿度交換を行う加湿膜とを有する。セパレータは、乾燥空気を、加湿膜の一方の面に接触させて流すことにより加湿空気を得る流路と、含水空気を、加湿膜の他方の面に接触させて流すことにより加湿膜を介して含水空気に含まれる水分を乾燥空気に与え除湿空気を得る流路とを有している。
【0037】
この加湿器10は、第1流路21から吸気ガイド13aに供給された乾燥空気を、ケース本体12の内部において加湿ユニット11のセパレータの加湿膜に接触させた後に上側に流す構成である。このため、乾燥空気はセパレータから水分を与えられて加湿空気となり、供給ガイド13bから第2流路22に排出される。
【0038】
また、加湿器10は、第3流路23から受給ガイド13cに供給された含水空気を、ケース本体12の内部において複数のセパレータの加湿膜に接触させた後に、上側に流す構成である。このため、除湿空気はセパレータで水分を奪われて除湿空気となり、排出ガイド13dから第4流路24に排出される。
【0039】
〔加湿器:流路〕
図1~
図3に示すように、加湿器10は、吸入ポート10aと、供給ポート10bと、受給ポート10cと、排出ポート10dとを備えている。
【0040】
供給ポート10bは、エンドプレート1の吸入孔1aに接続されている。受給ポート10cはエンドプレート1の排出孔1bに接続されている。
【0041】
図1に示すように、第1流路21(乾燥側流路DL)が、吸入ポート10aと吸気ガイド13aとの間に形成され、第2流路22(加湿側流路HL)が、供給ガイド13bと供給ポート10bとの間に形成されている。
【0042】
また、第3流路23(含水側流路WL)が、受給ポート10cと受給ガイド13cとの間に形成され、第4流路24(除湿側流路EL)が、排出ガイド13dと排出ポート10dとの間に形成されている。
【0043】
吸入ポート10aは、コンプレッサ等の供給装置で加圧された乾燥空気が供給される。吸気制御弁15は、第1流路21に流れる乾燥空気を吸気ガイド13aに供給する供給位置と、第1流路21に流れる乾燥空気を分岐流路21aに分岐させる分岐位置とに切換自在に構成されている。分岐流路21aは、第2流路22に合流している。
【0044】
このような構成から、吸気制御弁15が、供給位置に設定されることにより、第1流路21に流れる乾燥吸気を吸気ガイド13aから加湿器10の内部の加湿ユニット11に供給して加湿する。これにより、加湿された加湿空気は、第2流路22に送り出され、カソードガスとして供給ポート10bから燃料電池セル2に供給される。
【0045】
また、吸気制御弁15は、分岐位置に設定されることにより、第1流路21の乾燥空気を供給ポート10bに送り、カソードガスとして燃料電池セル2に供給する。
【0046】
排気制御弁16は、この排気制御弁16の上流に接続する第4流路24の上流に流れる除湿空気の圧力を設定値に維持する。排出ポート10dから排出された除湿ガスは、車両のマフラー等を介して外部に排出される。
【0047】
図1、
図2に示すように、加湿器10は、吸入ポート10aから吸入した乾燥空気を排出ポート10dに流すバイパス流路25を備えている。バイパス流路25は乾燥空気の流動が可能な筒状であり、外壁13の外面に固定されている。
【0048】
特に、バイパス流路25は、ケースCの外壁13のうち、上側の供給ガイド13bと、排出ガイド13dとの一対のガイドの下側で、下側の吸気ガイド13aと、受給ガイド13cとの一対のガイドの上側となる凹状空間13eに嵌め込む位置に配置され、この外壁13に溶着や接着等の技術により固定されている。
【0049】
このバイパス流路25の始端部25a(上流部)は、切換弁26を介して第1流路21に連通している。このバイパス流路25の終端部25b(下流部)は、第4流路24に連通している。
【0050】
切換弁26は、吸入ポート10aから供給される乾燥空気を、第1流路21を介して吸気制御弁15に供給する連通位置と、第1流路21の乾燥空気を、バイパス流路25に供給するバイパス位置とに切換自在に構成されている。
【0051】
このような構成から、切換弁26が、バイパス位置に設定されることにより、第1流路21(乾燥側流路DL)と、第4流路24(除湿側流路EL)とを接続することにより、第1流路21に流れる乾燥空気を第4流路24に流し、燃料電池FCでの発電の抑制を可能にする。
【0052】
FCV(燃料電池自動車)では、燃料電池FCは、発電の迅速な停止を必要とすることもある。この発電の停止は、燃料電池FCに対する空気の供給を遮断することが有効であり、吸入ポート10aと排出ポート10dとをバイパス流路25により短絡的に連通させることにより、燃料電池セル2への空気の供給を遮断し、燃料電池FCでの発電の確実な停止を可能にしている。
【0053】
〔加湿器:外壁等の具体構成〕
図2~
図5に示すように、吸気ガイド13a、 供給ガイド13b、受給ガイド13c、排出ガイド13dの夫々は、外壁13のプレート状部分の外縁から外方に張り出すオーバーハング部が一体的に形成されている。更に、バイパス流路25の流動方向の両端部にオーバーハング部が一体的に形成されている。
【0054】
ケース本体12は、その外壁部に第1流路21の一部と、第2流路22の一部と、第3流路23と、第4流路24の端部の接続部24pとが一体的に形成されている。これら第1流路21の一部と、第2流路22の一部と、第3流路23と、第4流路24の端部の接続部24pとの端部の開口部が、ケース本体12の前側の開口外縁に並ぶ位置に配置される。
【0055】
これにより、外壁13がケース本体12の開口を覆う位置に固定されることにより、第1流路21の端部の第1開口部21Jが吸気ガイド13aのオーバーハング部に連通し、第2流路22の端部の第2開口部22Jが供給ガイド13bのオーバーハング部に連通する。
【0056】
これと同様に、外壁13がケース本体12の開口を覆う位置に固定されることにより、第3流路23の端部の第3開口23Jが受給ガイド13cのオーバーハング部に連通し、第4流路24の接続部24pの端部の第4開口24Jが排出ガイド13dのオーバーハング部に連通する。
【0057】
これと同様に、ケース本体12は、その外壁部に第1中継部12pと、第2中継部12qが一体的に形成されている。この第1中継部12pと、第2中継部12qとは、ケース本体12の前側の開口外縁に並ぶ位置に配置されている。
【0058】
更に、外壁13がケース本体12の開口を覆う位置に固定されることにより、第1中継部12pの第1中継開口12pJとバイパス流路25の上流側のオーバーハング部とが連通する。これと同様に、第2中継部12qの第2中継開口12qJとバイパス流路25の下流側のオーバーハング部とが連通する。
【0059】
図2~
図5に示すように、ケース本体12の第1流路21が吸気制御弁15の吸入側に接続している。この吸気制御弁15の排気側と供給ポート10bとの間に第2流路22(分岐流路21aとしても機能する)が形成されている。この第2流路22に対し、供給ガイド13bに接続する第2流路22が合流している。
【0060】
加湿器10は、切換弁26を吸気制御弁15の近傍に配置している。この切換弁26は、吸入ポート10aから乾燥空気が供給される第1流路21が接続する。また、切換弁26は、吸気制御弁15に乾燥空気を送る第1流路21が接続する。更に、切換弁26は、バイパス流路25の始端部25aが接続し、この始端部25aの下流側が第1中継部12pに接続する。
【0061】
図2、
図4に示すように、バイパス流路25の終端部25bの上流側が第2中継部12qに接続し、この終端部25bの下流側の端部が排気制御弁16に接続する。尚、バイパス流路25の終端部25bは排気制御弁16の内部空間において第4流路24と連通状態に達する。
【0062】
図2、
図5に示すように、ケース本体12の第3流路23は、受給ポート10cに連通する。第4流路24はホース状であり、この第4流路24の上流側は、ケース本体12に形成した接続部24pに接続している。また、この第4流路24の下流側は、排気制御弁16に接続している。
【0063】
尚、吸気制御弁15と切換弁26との配置は、分離状態で配置する構成に限らず、例えば、単一のブロックに吸気制御弁15と切換弁26とを収容するように構成することも考えられる。
【0064】
この実施形態では、吸気ガイド13a、 供給ガイド13b、受給ガイド13c、排出ガイド13d、バイパス流路25の夫々にオーバーハング部を形成していたが、アノードガス、アノードオフガスの給排を行う構成は、オーバーハング部を用いない構成であっても良い。この構成の加湿器10をアノードガスの加湿に用いることも可能であり、このように用いた場合には、アノードガス、アノードオフガスの給排を行う構成は、オーバーハング部を用いないように構成することも考えられる。
【0065】
つまり、例えば、吸気ガイド13a、 供給ガイド13b、受給ガイド13c、排出ガイド13d、バイパス流路25の夫々に対応する流路を接続する構成も考えられる。
【0066】
〔制御形態〕
図面には示していないが、燃料電池FCは、吸気制御弁15、排気制御弁16、切換弁26の夫々を制御する制御装置を備えている。この制御装置は、燃料電池セル2の内部の水分量を計測するセンサの信号と、車体の走行状態を示す制御信号とを取得する。
【0067】
制御装置は、センサから取得した水分量が、予め設定された閾値未満である場合に、切換弁26を連通位置に設定し、吸気制御弁15を供給位置に設定する。これにより、燃料電池セル2に対し加湿器10で加湿された加湿空気を供給し、効率の良い発電を可能にする。尚、燃料電池セル2の内部の水分量を燃料電池FCの発電状態に基づいて取得することも可能である。この理由から、制御装置は、燃料電池FCの発電状態から取得した水分量に基づいて吸気制御弁15を制御するように構成しても良い。
【0068】
これに対し、制御装置は、センサで取得した水分量、あるいは、発電状態に基づいて取得した水分量が予め設定された閾値を超えたことを判定した場合には切換弁26を連通位置に設定することで吸入ポート10aからの乾燥空気を第1流路21に流し、吸気制御弁15を分岐位置に操作する。これにより、加湿器10で加湿された加湿空気の供給を停止し、加湿されない乾燥空気を燃料電池FCに供給し、燃料電池セル2の内部の水分量を適正な値に戻す。尚、吸気制御弁15と、切換弁26とは流路を単純に切り換えるだけではなく、開度の設定により乾燥空気の供給量の設定を行うことや、乾燥空気を分岐の比率を任意に設定するように構成することも可能である。
【0069】
また、制御装置は、取得した制御信号から、車体が走行する状況にある場合や、車体の走行を一時的に停止させた場合のように電力を継続して必要とする場合には、切換弁26を連通位置に設定し、吸気制御弁15を供給位置に設定することにより、乾燥空気を、加湿器10を介して燃料電池FCに供給し、燃料電池FCでの発電を継続できる。
【0070】
これに対し、制御装置は、走行を停止したことを判定した場合、あるいは、発電停止を必要とする場合には、切換弁26をバイパス位置に操作する。これにより、乾燥空気が、バイパス流路25を介して排出ポート10dに流れ、燃料電池セル2への空気の供給が停止し無駄な発電を抑制する。
【0071】
〔実施形態の作用効果〕
このように、燃料電池FCで発電を行う際には、制御装置は、切換弁26を連通位置に設定し、吸気制御弁15を供給位置に設定する。この設定により吸入ポート10aに供給された乾燥空気は、第1流路21から吸気ガイド13aに供給される。
【0072】
吸気ガイド13aに供給された乾燥空気は、加湿器10の内部において加湿ユニット11のセパレータの加湿膜に接触することにより水分を与えられ加湿空気となり、供給ガイド13bに達する。供給ガイド13bに達した加湿空気(カソードガス)は、第2流路22から供給ポート10bに流れ、燃料電池セル2に供給される。
【0073】
また、燃料電池セル2に供給された加湿空気は、発電に伴い空気中の酸素が消費されると共に、生成される水分が与えられた含水空気(カソードオフガス)となる。このように生成された含水空気は受給ポート10cから第3流路23を介して受給ガイド13cに供給される。
【0074】
受給ガイド13cに供給された含水空気は、加湿ユニット11のセパレータの加湿膜に接触することにより水分が奪われた除湿空気として排出ガイド13dに達する。排出ガイド13dに達した除湿空気は第4流路24に送られ、排気制御弁16から排出ポート10dに送られ、この排出ポート10dから排出される。
【0075】
制御装置は、前述したように燃料電池セル2の内部の水分量が閾値を超えた場合に、吸気制御弁15を分岐位置に操作することにより、乾燥空気を燃料電池セル2に供給する。この供給により、燃料電池セル2の水分量を迅速に適正な値に復帰させる。
【0076】
更に、制御装置は、前述したように車体の走行を停止した場合のように、燃料電池セル2での発電を停止する場合や、低出力発電にする場合に切換弁26をバイパス位置に操作する。これにより、空気がバイパス流路25を介して排出ポート10dに流れ、燃料電池セル2に対する空気の供給が停止し無駄な発電を抑制する。
【0077】
加湿器10は、外壁13に吸気ガイド13a、 供給ガイド13b、受給ガイド13c、排出ガイド13dが突出形成されている。バイパス流路25は、これらのガイドの中間の凹状空間13eに配置する状態で外壁13に固定されている。これにより、バイパス流路25が外方に突出することがなく、メンテナンスも容易にする。
【0078】
これにより、バイパス流路25を形成するための配管を配置する空間の確保を必要としない。また、例えば、バイパス流路25を乾燥側流路DLに接続するための管路、あるいは、バイパス流路25を第4流路24に接続するための管路を接続する工程の短縮や省略が可能で、部品点数の増加を招くことがなく、加湿器10の大型化も抑制する。
【0079】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0080】
(a)実施形態に記載した吸気制御弁15を用いることなく、
図6に示すように、単一の切換弁26を用いる。
【0081】
切換弁26は、中立位置と、分岐位置と、バイパス位置との3位置に切換自在に構成されている。切換弁26は、中立位置では、吸入ポート10aからの乾燥空気を、吸気ガイド13aにのみ供給する。分岐位置では、吸入ポート10aからの乾燥空気を、第2流路22に合流させる。バイパス位置では、吸入ポート10aからの乾燥空気を、バイパス流路25に供給する。
【0082】
この別実施形態(a)では、単一の切換弁26を用いることより吸気制御弁15を必要としないため、部品点数を低減する。また、切換弁26は、スプールを3位置に切換自在な電磁弁を用いることや、回転型の弁体を用いるロータリ型の弁を用いることが可能である。
【0083】
(b)
図7に示すように、加湿器10が、矩形の外壁13に対し、吸気ガイド13aと 供給ガイド13bとを一方の対角線上に配置し、受給ガイド13cと排出ガイド13dとを他方の対角線上に配置して構成されている。このような構成の加湿器10の外壁13に対し、バイパス流路25を備える。
【0084】
また、この別実施形態(b)では、外壁13に対し、複数のガイドに対応して吸気口13ap、供給口13bp、受給口13cp、排出口13dpが形成されている。この構成では、吸気口13apから供給された乾燥ガスが対角線に沿って流れ、供給口13bpから加湿空気として送り出される。これと同様に受給口13cpに供給された含水空気が対角線に沿って流れ、排出口13dpから除湿空気として送り出される。
【0085】
この別実施形態(b)では、実施形態と同様に吸気ガイド13a、供給ガイド13b、受給ガイド13c、排出ガイド13dの夫々が外壁13のプレート状部から前側に膨らむように突出形成されている。
【0086】
この別実施形態(b)では、加湿器10のケース本体12の内部構造が、実施形態の加湿器10と一部異なるが、上側の受給ガイド13cと供給ガイド13bとの一対のガイドの下側で、下側の吸気ガイド13aと排出ガイド13dとの一対のガイド部の上側に凹状空間13eが形成されている。この凹状空間13eにバイパス流路25が備えられる。
【0087】
(c)
図8に示すように、バイパス流路25を加湿器10のケース本体12の内部に備える。この別実施形態(c)では、実施形態に記載した流路構成と共通する流路構成を有しており、バイパス流路25がケース本体12の内部に形成した点が、実施形態と異なっている。
【0088】
このようにケース本体12の内部にバイパス流路25を形成することにより、加湿器10の外部にバイパス流路25を備えた構成と比較して、加湿器10の外面の突出物の数を低減することが可能となる。
【0089】
この別実施形態(c)の異なる別実施形態として、別実施形態(b)と同様の構成の加湿器10のケース本体12の内部空間にバイパス流路25を備えることも考えられる。
【0090】
(d)バイパス流路25は直線状に形成するものに限らず、円弧状や、折れ曲がり状であって良く、直線状に形成するものであっても傾斜姿勢に設定することも可能である。
【0091】
(e)バイパス流路25は、加湿器10のケース本体12の上面や、下面に備える構成であって良く、一部がケース本体12の内部に配置されるものであっても良い。
【0092】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、燃料電池のカソード側に供給する空気を加湿する加湿器に利用できる。
【符号の説明】
【0094】
1 エンドプレート
10 加湿器
10a 吸入ポート
10d 排出ポート
11 加湿ユニット
12 ケース本体
13 外壁
13a 吸気ガイド(吸気部)
13b 供給ガイド(供給部)
13c 受給ガイド(受給部)
13d 排出ガイド(排出部)
13e 凹状空間
15 吸気制御弁
21 第1流路
21a 分岐流路
25 バイパス流路
26 切換弁
C ケース
FC 燃料電池
DL 乾燥側流路
WL 含水側流路