(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140291
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】混合ガスを使用した漏れ検査装置及び漏れ検査方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/20 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G01M3/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051364
(22)【出願日】2023-03-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.販売日 令和 5年 3月 4日 2.販売した場所 株式会社デンソー西尾製作所(愛知県西尾市下羽角町住崎1)
(71)【出願人】
【識別番号】510186292
【氏名又は名称】株式会社 マルナカ
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(74)【代理人】
【識別番号】110001759
【氏名又は名称】弁理士法人よつ葉国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 貢
(72)【発明者】
【氏名】榎本 和巳
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA21
2G067AA25
2G067CC04
2G067CC13
2G067DD17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】探査ガスとして「一部のヘリウムガスとその他大部分の空気から構成された」混合ガスを用い、探査ガス中のヘリウム濃度を規定濃度範囲に常時調整しながらヘリウムガスを繰り返し再利用することが可能な混合ガスを使用した漏れ検査装置及び漏れ検査方法を提供する。
【解決手段】第1蓄圧タンク26内の低濃度ヘリウム探査ガスの一部分を抽出して、精製筒35において精製し高濃度ヘリウム探査ガスとする。そして高濃度ヘリウム探査ガスを中間タンク24において第1蓄圧タンク26から攪拌バルブ41を介して移送されて来る元の低濃度ヘリウム探査ガスに再帰混合し、第1蓄圧タンク26に圧送して膨張させる、という一部精製・再帰混合・攪拌プロセスを繰り返し実施し、低濃度ヘリウム探査ガス中のヘリウム濃度を設定濃度に調整し、次の被試験体11に係る漏れ検査に再利用する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の真空環境下に置かれた被試験体(11、11’)の内部に探査ガスを充填し前記被試験体(11、11’)から漏洩する前記探査ガスを検出する漏れ検査方法であって、
前記探査ガスは、「一部の検出対象ガス(He)とその他大部分の残余ガス(Air)から構成された」混合ガスの形態で繰り返し使用され、
前記被試験体(11、11’)に充填した前記探査ガスは、漏れ検査終了後に第1タンク(22)に回収し、次に前記第1タンク(22)から第2タンク(26)に移送して探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度を計測し、
前記探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度が規定濃度範囲の下限値以下である場合、『前記第2タンク(26)内の「検出対象ガス(He)の濃度が規定濃度範囲の下限値以下である」低濃度探査ガスの一部分を抽出して、「検出対象ガス(He)の濃度を濃縮する」精製部(35)に移送すると共にその低濃度探査ガスの残部を第3タンク(24)に移送し、
前記第3タンク(24)において「前記精製部(35)から移送されて来る検出対象ガス(He)の濃度が濃縮された」高濃度探査ガスと、前記第2タンク(26)から移送されて来る前記低濃度探査ガスとを再帰混合し、前記第2タンク(26)に圧送して膨張させる』という一部精製・再帰混合・攪拌プロセスを繰り返し実施しながら、前記低濃度探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度を規定濃度に調整し、次の被試験体(11、11’)に係る漏れ検査に再利用する
ことを特徴とする混合ガスを使用した漏れ検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の漏れ検査方法において、
前記第2タンク(26)内の探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度と、前記精製部(35)から前記第3タンク(24)に移送されて来る前記高濃度探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度をそれぞれ計測しながら、
前記第2タンク(26)から一部抽出する前記低濃度探査ガスの流量(v1)と、前記精製部(35)から分離・排気される廃棄ガスの流量(v3)をそれぞれ調整して前記低濃度探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度を規定濃度に調整する
ことを特徴とする混合ガスを使用した漏れ検査方法。
【請求項3】
請求項1に記載の漏れ検査方法において、
前記第3タンク(24)において再帰混合される前記高濃度探査ガスと前記低濃度探査ガスに対し、残余ガス(Air)又は検出対象ガス(He)を別途加えながら前記低濃度探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度を規定濃度に調整する
ことを特徴とする混合ガスを使用した漏れ検査方法。
【請求項4】
請求項1に記載の漏れ検査方法において、
前記被試験体(11’)が真空排気できない場合、前記被試験体(11’)の内部に探査ガスを供給し、前記被試験体(11’)の内部から流出する前記探査ガスに対し別の精製部(18)で空気を除去した後に前記第1タンク(22)に回収し必要に応じ前記一部精製・再帰混合・攪拌プロセスを繰り返し実施しながら前記被試験体(11’)の内部に探査ガスを充填する
ことを特徴とする混合ガスを使用した漏れ検査方法。
【請求項5】
請求項4に記載の漏れ検査方法において、
前記被試験体(11’)の内部に空気を供給し、前記被試験体(11’)の内部から流出する探査ガスに対し前記精製部(18)で空気を除去した後に前記第1タンク(22)に回収し必要に応じ前記一部精製・再帰混合・攪拌プロセスを繰り返し実施しながら前記被試験体(11’)の内部から探査ガスを回収する
ことを特徴とする混合ガスを使用した漏れ検査方法。
【請求項6】
請求項1に記載の漏れ検査方法において、
前記被試験体(11、11’)の内部に供給される探査ガス中の検出対象ガス(He)の前記規定濃度は10%以下である
ことを特徴とする混合ガスを使用した漏れ検査方法。
【請求項7】
所定の真空環境下で被試験体(11、11’)を収容可能な真空容器(12)と、被試験体(11、11’)から漏れ出る「一部の検出対象ガス(He)とその他大部分の残余ガス(Air)から構成される」探査ガス中の前記検出対象ガス(He)を検出する探査ガス検出器(14)とを有する漏れ検査手段(10、10’)と、
被試験体(11、11’)から回収される探査ガスを貯蔵する第1タンク(22)と、探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度を調整するための第3タンク(24)と、被試験体(11、11’)に供給される探査ガスを貯蔵する第2タンク(26)と、前記第3タンク(24)内の探査ガスを前記第2タンク(26)に圧送するガス圧縮機(25)とを有する探査ガス回収・供給手段(20)と、
前記第2タンク(26)内の検出対象ガス(He)の濃度を濃縮する精製筒(35)と、前記第2タンク(26)から前記精製筒(35)に導入される探査ガスの流量(v1)を調整する第1流量調整弁(33)と、前記精製筒(35)から分離・排気される廃棄ガスの流量(v3)を調整する第2流量調整弁(38)とを有する探査ガス精製手段(30)と、
前記第2タンク(26)の探査ガスを前記第3タンク(24)に移送する帰還路(41a)と、前記第2タンク(26)中の検出対象ガス(He)の濃度を計測する第2ガス濃度計(42)とを有する探査ガス攪拌手段(40)と、を備えた
ことを特徴とする混合ガスを使用した漏れ検査装置。
【請求項8】
請求項7に記載の漏れ検査装置において、
前記探査ガス精製手段(30)は、前記精製筒(35)から前記第3タンク(24)に移送されて来る高濃度探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度を計測する第1ガス濃度計(37)と、前記第2タンク(26)から前記精製筒(35)に導入される低濃度探査ガスの流量(v1)を計測する第1流量計(33)と、前記精製筒(35)から前記第3タンク(24)に移送されて来る高濃度探査ガスの流量(v2)を計測する第2流量計(36)と、前記精製筒(35)から排気される廃棄ガスの流量(v3)を計測する第3流量計(39)と、
前記第1ガス濃度計(37)の計測値と前記流量計(33、36、39)の各計測値に基づいて、前記第1流量調整弁(33)及び前記第2流量調整弁(38)を個別に制御する制御装置(43)と、を有する
ことを特徴とする混合ガスを使用した漏れ検査装置。
【請求項9】
請求項7に記載の漏れ検査装置において、
前記探査ガス攪拌手段(40)は、前記第3タンク(24)に残余ガス(Air)又は検出対象ガス(He)を供給する残余ガス供給手段(44、45)又は検出対象ガス供給手段(46、47)を有する
ことを特徴とする混合ガスを使用した漏れ検査装置。
【請求項10】
請求項7に記載の漏れ検査装置において、
前記漏れ検査手段(10’)は、被試験体(11’)の内部から回収される探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度を濃縮する別の精製筒(18)を被試験体(11’)と前記第1タンク(22)の間に直列に備える
ことを特徴とする混合ガスを使用した漏れ検査装置。
【請求項11】
請求項7に記載の漏れ検査装置において、
前記漏れ検査手段(10’)は、被試験体(11’)の内部に残余ガス(Air)を導入する残余ガス導入機構(19)を被試験体(11’)と前記供給タンク(28)の間に並列に備える
ことを特徴とする混合ガスを使用した漏れ検査装置。
【請求項12】
請求項7に記載の漏れ検査装置において、
前記被試験体(11、11’)の内部に供給される探査ガス中の検出対象ガス(He)の前記規定濃度は10%以下である
ことを特徴とする混合ガスを使用した漏れ検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、探査ガスとして混合ガスを使用した漏れ検査装置及び漏れ検査方法に関し、更に詳細には探査ガスとして「一部のヘリウムガスとその他大部分の空気から構成された」混合ガスを用い、探査ガス中のヘリウム濃度を規定濃度範囲に常時調整しながらヘリウムガスを繰り返し再利用することが可能な混合ガスを使用した漏れ検査装置及び漏れ検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気密性を必要とする機械部品や自動車部品などの被試験体の漏れ検査として、真空容器法が広く用いられている。この真空容器法では、真空容器内で真空下に置かれた被試験体の内部に探査ガスを導入・密封し、被試験体から真空容器内に漏れ出た探査ガスを探査ガス検出器で検出している。
【0003】
真空容器法で使用される探査ガスとして、水素に次いで分子量の小さい不活性ガスのヘリウムガスが一般に用いられている。ヘリウムガスは希少ガス且つ高コストであることから、真空容器法の探査ガスとして使用されるヘリウムガスは、回収して再利用することが望ましい。そのためヘリウムガスを回収し再利用する漏れ検査装置が開示されている(例えば、特許文献1及び2を参照。)。
【0004】
また、ヘリウムガスを回収して再利用する漏れ検査を多数実行すると、回収したヘリウムガスの濃度が低下する。これは、回収の過程で空気が探査ガスに混入するためである。この濃度が低下したヘリウムガスを分離膜で精製し、精製したヘリウムガスをリターンタンクに導入することで、一定濃度のヘリウムガスを被試験体に導入する漏れ検査装置が開示されている(例えば、特許文献3を参照。)。
【0005】
このようにヘリウムガスの回収、或いはヘリウムガスの回収と精製を行う漏れ検査装置は、希少で高コストなヘリウムガスの使用量を大幅に削減して漏れ検査を実行することができると考えられる。特に、特許文献3に記載の漏れ検査装置は、精製した高純度のヘリウムガスを導入することから、濃度補償が確保されており、より実用的な手段であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-311770号公報
【特許文献2】特開2019-35608号公報
【特許文献3】特開2017-142096公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
被試験体の内部に探査ガスを導入する真空容器法の漏れ検査では、一般に被試験体の内部を真空排気して探査ガスを被試験体の内部に導入する。被試験体の真空排気時間は短時間であるため、被試験体の内部から空気を完全に取り除くことは難しく、被試験体内部の狭小部、各種のバルブ及び長い配管に空気が残留してしまう。
【0008】
そのことから、特許文献1及び2に記載のヘリウムガス回収手段を使用した漏れ検査を実行したとしても、回収したヘリウムガスの濃度は僅かに(例えば0.1%から0.5%程度)低下し、数10回の繰り返し検査毎に、既存のヘリウムガスを新規の高濃度のヘリウムガスに入れ替える必要が生じてしまう。例えば、0.1%/回の低下の場合、50回の検査後にはヘリウムガスの濃度は95%に低下することになる。この場合、高濃度(例えば99.5%)のヘリウムガスに入れ替える必要が生じてしまう。
【0009】
このように、既存のヘリウムガスを高濃度のヘリウムガスに入れ替えるのは、既存のヘリウムガスに高濃度のヘリウムガスを補充する場合であっても、ヘリウムガスの濃度向上が大きくないからである。例えば95%の低濃度ヘリウムガスに99.5%の高濃度ヘリウムガスを同量補充しても、そのヘリウム濃度は約97%でしかなく、ヘリウムガスの濃度向上は小さい。したがって、新規の高濃度ヘリウムガスの入替が必要となる。機械部品や自動車部品の製造現場の漏れ検査では、500回/日(500回/日×1分/回=500分/日=約8時間/日)の多数回の検査が行われることから、ヘリウムガス回収手段を取り付けた漏れ検査装置では、1日に10回程度以上である新規高濃度ヘリウムガスの入替が必要となる。
【0010】
他方、特許文献3に記載の漏れ検査装置は、回収したヘリウムガスの濃度低下を回避するために、回収した低濃度のヘリウムガスを精製筒で精製し、高濃度ヘリウムガスを製造し、これを探査ガスとして再利用するものである。
【0011】
しかしながら、精製筒に用いられている分離膜は、ガス分離性能が非常に高いものではないことから、分離膜で高濃度(例95%)のヘリウムガスの精製を行うと、数10%程度のヘリウムガスが他のガスとともに排気されてしまう。
【0012】
また、被試験体の中には、内部の真空排気が不可能な被試験体(低剛性な被試験体)がある。このような内部の真空排気が不可能な被試験体では、探査ガスを被試験体内部を通過させながら空気を探査ガスで置換する必要がある。被試験体内部を通過した探査ガスは空気と共に大気中に廃棄(ダンプ)される。
【0013】
上記特許文献1~3に記載の漏れ検査装置は、被試験体が内部の真空排気が不可能な場合の、ヘリウムガスの回収・精製手段については開示されていない。
【0014】
さらに、特許文献1~3の漏れ検査装置では、探査ガスとして高濃度(例99.5%)ヘリウムガスが用いられている。特に、特許文献3の漏れ検査装置では、真空引きした検査対象部材内に残留する少量の空気によって、回収したヘリウムガスの濃度が徐々に低下して来ることを考慮して、検査対象部材内に供給する前に毎回、別系統のリークマスターから漏洩するヘリウムガスのリーク量をヘリウムリークディテクタによって事前に測定することとしている。
【0015】
また、特許文献3の漏れ検査装置では、ヘリウムガス濃度が所定の値未満の場合、コンプレッサによって加圧しながらリターンタンク内のヘリウムガスを分離膜に供給・精製して真空タンクに回収し、回収したヘリウムガスを真空ポンプで吸引しコンプレッサによって昇圧しながらリターンタンクに充填することとしている。すなわち、ヘリウムガスの精製は、リターンタンク内のヘリウムガスをコンプレッサによって加圧しながら分離膜に供給することにより成されている。
【0016】
そのため、特許文献3の漏れ検査装置は、漏れ検査に時間を要すると共に、ヘリウムガスの濃度が所定の値未満の場合の精製に時間を要することになる。
【0017】
そこで、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであり、その目的は、気密性を必要とする機械部品や自動車部品など被試験体の漏れ検査において、漏れ検査に使用される探査ガスとして「一部のヘリウムガスとその他大部分の空気から構成された」混合ガスを用い、探査ガス中のヘリウム濃度を規定濃度範囲に常時調整しながらヘリウムガスを繰り返し再利用してヘリウムガスの消費量を大幅に低減すると共に、探査ガス中のヘリウム濃度が規定濃度範囲に常時維持された信頼性の高い漏れ検査を繰り返し実施することが可能な混合ガスを使用した漏れ検査装置及び漏れ検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するための本発明に係る混合ガスを使用した漏れ検査方法は、所定の真空環境下に置かれた被試験体(11、11’)の内部に探査ガスを充填し前記被試験体(11、11’)から漏洩する前記探査ガスを検出する漏れ検査方法であって、前記探査ガスは、「一部の検出対象ガス(He)とその他大部分の残余ガス(Air)から構成された」混合ガスの形態で繰り返し使用され、前記被試験体(11、11’)に充填した前記探査ガスは、漏れ検査終了後に第1タンク(22)に回収し、次に前記第1タンク(22)から第2タンク(26)に移送して探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度を計測し、前記探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度が規定濃度範囲の下限値以下である場合、『前記第2タンク(26)内の「検出対象ガス(He)の濃度が規定濃度範囲の下限値以下である」低濃度探査ガスの一部分を抽出して、「検出対象ガス(He)の濃度を濃縮する」精製部(35)に移送すると共にその低濃度探査ガスの残部を第3タンク(24)に移送し、前記第3タンク(24)において「前記精製部(35)から移送されて来る検出対象ガス(He)の濃度が濃縮された」高濃度探査ガスと、前記第2タンク(26)から移送されて来る前記低濃度探査ガスとを再帰混合し、前記第2タンク(26)に圧送して膨張させる』という一部精製・再帰混合・攪拌プロセスを繰り返し実施しながら、前記低濃度探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度を規定濃度に調整し、次の被試験体(11、11’)に係る漏れ検査に再利用することを特徴とする。
【0019】
上記構成では、探査ガスは、「一部の検出対象ガス(He)とその他大部分の残余ガス(Air)から構成された」混合ガスの形態で繰り返し使用されるようになっている。特に、探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度が規定濃度範囲の下限値以下となった場合、低濃度探査ガスの一部分のみを抽出し、その抽出した一部分の低濃度探査ガスを精製し、精製した高濃度探査ガスを元の低濃度探査ガスに再帰混合することによって、検出対象ガス(He)の濃度が規定濃度に常時調整されるようになっている。つまり、全体の探査ガスの濃度調整は一部分(少量)の探査ガスの精製によって済むことになる。このように、検出対象ガス(He)が大部分の残余ガス(Air)との混合ガス形態で使用されることと、検出対象ガス(He)の濃度調整が一部分の探査ガスの精製によって成されることにより、漏れ検査に使用される検出対象ガス(He)の消費量を大幅に低減することが可能となると共に、探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度が規定濃度に常時調整された信頼性の高い漏れ検査を実施することが可能となる。
【0020】
本発明に係る混合ガスを使用した漏れ検査方法の第2の特徴は、前記第2タンク(26)内の探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度と、前記精製部(35)から前記第3タンク(24)に移送されて来る前記高濃度探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度をそれぞれ計測しながら、前記第2タンク(26)から一部抽出する前記低濃度探査ガスの流量(v1)と、前記精製部(35)から分離・排気される廃棄ガスの流量(v3)をそれぞれ調整して前記低濃度探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度を規定濃度に調整することである。
【0021】
上記構成では、探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度が規定濃度範囲の下限値以下となった場合、精製部(35)において廃棄される検出対象ガス(He)の量をゼロ又は最小限にし、濃度調整に必要な残余ガス(Air)量を排気して低濃度探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度を規定濃度に効率的に調整することが可能となる。
【0022】
本発明に係る混合ガスを使用した漏れ検査方法の第3の特徴は、前記第3タンク(24)において再帰混合される前記高濃度探査ガスと前記低濃度探査ガスに対し、残余ガス(Air)又は検出対象ガス(He)を別途補充しながら前記低濃度探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度を規定濃度に調整することである。
【0023】
上記構成では、残余ガス(Air)又は検出対象ガス(He)を別途補充することにより、精製部(35)における残余ガス(Air)の排気による探査ガスの全体量の減少を防止することができる。これにより、漏れ検査で使用される検出対象ガス(He)の濃度が規定濃度に調整された探査ガスの全体量を常時確保することが可能となる。
【0024】
本発明に係る混合ガスを使用した漏れ検査方法の第4の特徴は、前記被試験体(11’)が真空排気できない場合、前記被試験体(11’)の内部に探査ガスを供給し、前記被試験体(11’)の内部から流出する前記探査ガスに対し別の精製部(18)で空気を除去した後に前記第1タンク(22)に回収し必要に応じ前記一部精製・再帰混合・攪拌プロセスを繰り返し実施しながら前記被試験体(11’)の内部に探査ガスを充填することである。
【0025】
上記構成では、被試験体(11’)が真空排気できない場合であっても、被試験体(11’)の内部に探査ガスを充填することができる。
【0026】
本発明に係る混合ガスを使用した漏れ検査方法の第5の特徴は、前記被試験体(11’)の内部に空気を供給し、前記被試験体(11’)の内部から流出する探査ガスに対し前記精製部(18)で空気を除去した後に前記第1タンク(22)に回収し必要に応じ前記一部精製・再帰混合・攪拌プロセスを繰り返し実施しながら前記被試験体(11’)の内部から探査ガスを回収することである。
【0027】
上記構成では、被試験体(11’)が真空排気できない場合であっても、被試験体(11’)の内部から探査ガスを回収することができる。
【0028】
本発明に係る混合ガスを使用した漏れ検査方法の第6の特徴は、前記被試験体(11、11’)の内部に供給される探査ガス中の検出対象ガス(He)の前記規定濃度は10%以下であることである。
【0029】
上記構成では、漏れ検査における検出対象ガス(He)の消費量を大幅に低減することができる。
【0030】
上記目的を達成するための本発明に係る混合ガスを使用した漏れ検査装置の第1の特徴は、所定の真空環境下で被試験体(11、11’)を収容可能な真空容器(12)と、被試験体(11、11’)から漏れ出る「一部の検出対象ガス(He)とその他大部分の残余ガス(Air)から構成される」探査ガス中の前記検出対象ガス(He)を検出する探査ガス検出器(14)とを有する漏れ検査手段(10、10’)と、被試験体(11、11’)から回収される探査ガスを貯蔵する第1タンク(22)と、探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度を調整するための第3タンク(24)と、被試験体(11、11’)に供給される探査ガスを貯蔵する第2タンク(26)と、前記第3タンク(24)内の探査ガスを前記第2タンク(26)に圧送するガス圧縮機(25)とを有する探査ガス回収・供給手段(20)と、前記第2タンク(26)内の検出対象ガス(He)の濃度を濃縮する精製筒(35)と、前記第2タンク(26)から前記精製筒(35)に導入される探査ガスの流量(v1)を調整する第1流量調整弁(33)と、前記精製筒(35)から分離・排気される廃棄ガスの流量(v3)を調整する第2流量調整弁(38)とを有する探査ガス精製手段(30)と、前記第2タンク(26)の探査ガスを前記第3タンク(24)に移送する帰還路(41a)と、前記第2タンク(26)中の検出対象ガス(He)の濃度を計測する第2ガス濃度計(42)とを有する探査ガス攪拌手段(40)とを備えたことを特徴とする。
【0031】
上記構成では、上記混合ガスを使用した漏れ検査方法の上記第1の特徴を好適に実施することができる。
【0032】
本発明に係る混合ガスを使用した漏れ検査装置の第2の特徴は、前記探査ガス精製手段(30)は、前記精製筒(35)から前記第3タンク(24)に移送されて来る高濃度探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度を計測する第1ガス濃度計(37)と、前記第2タンク(26)から前記精製筒(35)に導入される低濃度探査ガスの流量(v1)を計測する第1流量計(33)と、前記精製筒(35)から前記第3タンク(24)に移送されて来る高濃度探査ガスの流量(v2)を計測する第2流量計(36)と、前記精製筒(35)から排気される廃棄ガスの流量(v3)を計測する第3流量計(39)と、前記第1ガス濃度計(37)の計測値と前記流量計(33、36、39)の各計測値に基づいて、前記第1流量調整弁(33)及び前記第2流量調整弁(38)を個別に制御する制御装置(43)とを有することである。
【0033】
上記構成では、上記混合ガスを使用した漏れ検査方法の上記第2の特徴を好適に実施することができる。
【0034】
本発明に係る混合ガスを使用した漏れ検査装置の第3の特徴は、前記探査ガス攪拌手段(40)は、前記第3タンク(24)に残余ガス(Air)又は検出対象ガス(He)を供給する残余ガス供給手段(44、45)または検出対象ガス供給手段(46、47)を有することである。
【0035】
上記構成では、上記混合ガスを使用した漏れ検査方法の上記第3の特徴を好適に実施することができる。
【0036】
本発明に係る混合ガスを使用した漏れ検査装置の第4の特徴は、前記漏れ検査手段(10’)は、被試験体(11’)の内部から回収される探査ガス中の検出対象ガス(He)の濃度を濃縮する別の精製筒(18)を被試験体(11’)と前記第1タンク(22)の間に直列に備えることである。
【0037】
上記構成では、上記混合ガスを使用した漏れ検査方法の上記第4の特徴を好適に実施することができる。
【0038】
本発明に係る混合ガスを使用した漏れ検査装置の第5の特徴は、前記漏れ検査手段(10’)は、被試験体(11’)の内部に残余ガス(Air)を導入する残余ガス導入機構(19)を被試験体(11’)と前記供給タンク(28)の間に並列に備えることである。
【0039】
上記構成では、上記漏れ検査方法の上記第5の特徴を好適に実施することができる。
【0040】
本発明に係る混合ガスを使用した漏れ検査装置の第6の特徴は、探査ガス中の検出対象ガス(He)の規定濃度は10%以下であることである。
【0041】
上記構成では、上記混合ガスを使用した漏れ検査方法の上記第6の特徴を好適に実施することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の漏れ検査方法及びそれを実施する漏れ検査装置によれば、気密性を必要とする機械部品や自動車部品など被試験体の漏れ検査において、探査ガスとして「一部の検出対象ガスとその他大部分の残余ガスから構成された」混合ガスを繰り返し再利用して検出対象ガスの消費量を大幅に低減すると共に、探査ガス中の検出対象ガスの濃度が規定濃度に常時維持された信頼性の高い漏れ検査を繰り返し実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る漏れ検査装置の要部構成を示す説明図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る漏れ検査装置による一部精製・再帰混合・攪拌プロセスを示す概念図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る漏れ検査装置による探査ガスの補充プロセスを示す概念図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る漏れ検査装置による漏れ検査工程を示すプロセス図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る漏れ検査装置による漏れ検査工程の内の探査ガスの回収・攪拌・一部精製を示すプロセス図である。
【
図6】漏れ検査装置による探査ガスの回収・攪拌・一部精製プロセスにおける制御装置の制御を示すフロー図である。
【
図7】漏れ検査装置による探査ガスの回収・攪拌・一部精製プロセスにおける制御装置の制御を示すフロー図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る漏れ検査装置の要部構成を示す説明図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る漏れ検査装置による漏れ検査工程を示すプロセス図である。
【
図10】本発明の漏れ検査装置における「精製筒への探査ガスの導入流量」と「廃棄ガス量又は再生ガス量中のヘリウム濃度」との相関を示す説明図である。
【
図11】本発明の漏れ検査装置における「精製筒への探査ガスの導入流量」及び「精製筒での廃棄割合」とヘリウム再生率との相関を示す説明図である。
【
図12】本発明の漏れ検査装置による実際の一部精製・再帰混合・攪拌プロセスを示す概念図である。
【
図13】本発明の漏れ検査装置による実際の探査ガスの補充プロセスを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、添付図面を参照しながら本発明について説明する。
【0045】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る漏れ検査装置100の要部構成を示す説明図である。
この漏れ検査装置100は、機械部品、例えば自動車部品の気密検査で多用されている真空容器法において、探査ガスとして「一部のヘリウムガス(検出対象ガス)とその他大部分の空気(残余ガス)から構成された」混合ガスを使用し、使用した探査ガスは漏れ検査終了後に回収され、次の漏れ検査に繰り返し供給することができるように構成されている。特に、回収した探査ガス中のヘリウム濃度が規定濃度範囲(例えば、設定濃度の105%から95%の範囲)の下限値以下となる場合に、ヘリウムガスの濃度調整が一部分の探査ガスの精製によって成され、回収した探査ガスが次の被試験体11の漏れ検査に繰り返し再利用することができるように構成されている。その結果、漏れ検査におけるヘリウムガスの消費量を大幅に低減することができると共に、探査ガス中のヘリウム濃度が規定濃度範囲に常時維持された信頼性の高い漏れ検査を繰り返し実施することが可能となる。
【0046】
なお、本実施形態における「探査ガス中のヘリウム濃度の設定濃度(設定値)」は、例えば10%である。従って、本実施形態における「ヘリウム濃度の規定濃度範囲」とは、探査ガス中のヘリウム濃度が10.5%から9.5%の範囲内を意味している。また、本実施形態における「ヘリウム濃度の規定濃度範囲の下限値」とは、設定濃度が10%の場合は9.5%を意味している。
【0047】
また、被試験体11から回収された探査ガスについては、先ず回収タンク22に回収され、次に回収用ポンプ23によって中間タンク24に移送され、そしてガス圧縮機25によって第1蓄圧タンク26に移送された後、第2ガス濃度計42によって第1蓄圧タンク26内の探査ガス中のヘリウム濃度が常時計測されるようになっている。
【0048】
詳細については後述するが、第1蓄圧タンク26内の探査ガス中のヘリウム濃度が規定濃度範囲の下限値以下となる場合、精製バルブ31が開となり、第1蓄圧タンク26内の探査ガスの一部は「ガス分離機能を持つ分離膜」を搭載した精製筒35に移送される。一方、探査ガスの残部は、攪拌バルブ41が開となり中間タンク24に移送される。従って、探査ガスの残部は中間タンク24と第1蓄圧タンク26との間を常時攪拌されることになる。
【0049】
そして、中間タンク24において、精製筒35から移送されて来るヘリウム濃度が濃縮された探査ガス(以下、「高濃度ヘリウム探査ガス」ともいう。)と、第1蓄圧タンク26から移送されて来るヘリウム濃度が規定濃度範囲の下限値以下である探査ガス(以下、「低濃度ヘリウム探査ガス」ともいう。)が再帰混合され、その再帰混合ガスはガス圧縮機25によって中間タンク24から第1蓄圧タンク26に移送され第1蓄圧タンク26内で膨張して攪拌されることになる。この一部精製・再帰混合・攪拌プロセスが繰り返し実施されることにより、第1蓄圧タンク26内の低濃度ヘリウム探査ガスは、ヘリウム濃度が規定濃度範囲内の設定濃度(10%)に調整された探査ガス(以下、「規定濃度ヘリウム探査ガス」ともいう。)となる。
【0050】
なお、ここで言う「一部精製」とは、第1蓄圧タンク26内の探査ガス(元の低濃度ヘリウム探査ガス)から一部分を抽出して精製筒35において高濃度ヘリウム探査ガスに再生することを意味している。また、「再帰混合」とは、精製筒35で再生した「高濃度ヘリウム探査ガス」を元の「低濃度ヘリウム探査ガス」に戻して混合することを意味している。また、ここで言う「攪拌」とは、高濃度ヘリウム探査ガスと低濃度ヘリウム探査ガスの再帰混合ガスを加圧して第1蓄圧タンク26内で膨張させるプロセスを繰り返し行うことにより再帰混合ガス中のヘリウム濃度を均一化することを意味している。
【0051】
本漏れ検査装置100の構成としては、被試験体11の内部及び外部を真空状態にすると共に、被試験体11から漏れ出るヘリウムガス(探査ガス)を検出する『漏れ検査部10』と、被試験体11の内部に探査ガスを供給すると共に、漏れ検査終了後に被試験体11の内部から探査ガスを回収する『探査ガス回収・供給サイクル20』と、探査ガス中のヘリウム濃度が規定濃度範囲の下限値以下となった場合に低濃度ヘリウム探査ガスの一部分を抽出して高濃度ヘリウム探査ガスとし、元の低濃度ヘリウム探査ガスに再帰混合する『ヘリウムガス精製サイクル30』と、高濃度ヘリウム探査ガスと高濃度ヘリウム探査ガスの混合ガスを加圧して第1蓄圧タンク26に戻しながら攪拌すると共に、必要に応じその混合ガス中に空気又はヘリウムガスを加えて漏れ検査に必要な所定量の規定濃度ヘリウム探査ガスを備蓄する『ガス攪拌サイクル40』とを具備して構成されている。以下、各構成について更に説明する。
【0052】
先ず、上記漏れ検査部10の構成としては、被試験体11を真空環境下で収容する真空容器12と、真空容器12の内部を真空排気する第1真空ポンプ13と、真空容器12と第1真空ポンプ13との間の連通を切断/許可する第1真空バルブ13aと、被試験体11から漏れ出る探査ガス(ヘリウムガス)を検知する探査ガス検出器14と、被試験体11と第2真空ポンプ16との間の連通を切断/許可する第2真空バルブ15と、被試験体11の内部を真空排気する第2真空ポンプ16とを備えている。
【0053】
被試験体11の内容積は、例えば4L(リットル)である。漏れ検査に使用される探査ガスについては、濃度10%のヘリウムガスと濃度90%の空気とから構成された混合ガスである。従って、本実施形態におけるヘリウム濃度の設定濃度は10%であり、ヘリウム濃度の規定濃度範囲は9.5%から10.5%であり、ヘリウム濃度の規定濃度範囲の下限値は9.5%である。
【0054】
探査ガスの供給・回収に係る真空排気時の被試験体11の内部圧力は、例えば2000Pa(大気圧の1/50)に設定される。この2000Paの真空環境下では被試験体11の内部に残留する探査ガス量は、探査ガスについての状態方程式より0.08NLと推定される。ここで「NL(ノルマルリットル)」とは標準状態(0℃、1atm)換算での気体の体積を表している。因みに、漏れ検査時の被試験体11内部の探査ガスの圧力は0.5MPaであるため、1回の漏れ検査で使用される探査ガス量は、4L×0.5/0.1=20NLとなる(∵1atm=0.1MPa)。
【0055】
次に、上記探査ガス回収・供給サイクル20の構成としては、被試験体11の内部から回収される探査ガスの流れを切断/許可する回収バルブ21と、回収された探査ガスを一時的に貯蔵する回収タンク22と、被試験体11内部の探査ガスを吸引する回収用ポンプ23と、精製筒35から移送されて来る「高濃度ヘリウム探査ガス」と第1蓄圧タンク26から移送されて来る「低濃度ヘリウム探査ガス」とを再帰混合する中間タンク24と、中間タンク24内で再帰混合した探査ガスを第1蓄圧タンク26に圧送するガス圧縮機25と、被試験体11から回収された探査ガスを一時的に貯蔵する第1蓄圧タンク26と、第1蓄圧タンク26と第2蓄圧タンク28との間の連通を切断/許可する第1供給バルブ27と、被試験体11に供給される規定濃度ヘリウム探査ガスを貯蔵する第2蓄圧タンク28と、被試験体11の内部と第2蓄圧タンク28との間の連通を切断/許可する第2供給バルブ29とを備えている。
【0056】
第1蓄圧タンク26の探査ガス容量は、1回の探査ガス使用量20NLよりも大きくするために、例えば内容積は25L、圧力は0.8MPaとすることが可能である。すなわち、第1蓄圧タンク26の探査ガス容量は200NL(>1回の探査ガス使用量20NL)とすることが可能である。一方、漏れ検査部10直前の第2蓄圧タンク28の内容積は12.5L、圧力は0.8MPaとすることが可能である。すなわち、第2蓄圧タンク28の探査ガス容量は100NL(>1回の探査ガス使用量20NL)とすることが可能である。なお、第1蓄圧タンク26内の探査ガスは、ガス攪拌サイクル40で常時攪拌することでヘリウム濃度が均一化されている。なお、被試験体11から回収した探査ガス中のヘリウム濃度は第2ガス濃度計42により監視されるようになっている。
【0057】
上記装置設定で、探査ガスの回収・供給を繰り返し実行して漏れ検査を多数回実行し、探査ガス中のヘリウム濃度が設定濃度10%から規定濃度範囲の下限値9.5%に低下するまでに要する漏れ検査の回数を調査した。なお、被試験体11内部の真空排気は第2真空ポンプ16で行い、検査終了後の探査ガスの回収は回収用ポンプ23で行った。また、調査は10回実施した。その結果、漏れ検査の回数は平均で125回であった。なお、1回当たりの漏れ検査時間は、被試験体11の入替作業を含めて1分であった。
【0058】
回収した探査ガス中のヘリウム濃度が低下する要因については、回収後に被試験体11内部に残留した探査ガス中に含まれるヘリウムガスが被試験体11の入れ替えによって外部に廃棄されることに起因するものと考えられる。因みに、1回の検査で廃棄されるヘリウムガス量については、被試験体11内部に残留する探査ガス量が0.08NLであることから、1回の漏れ検査当たりの廃棄ヘリウムガス量は0.08NL×10%=0.008NL=8NmLと推定される。
【0059】
ここで、漏れ検査を500回/日実施すると仮定すると、廃棄ヘリウムガス量は、4NL/日(=0.008NL/回×500回/日)となる。この廃棄ヘリウムガス量は、「第1蓄圧タンク26の探査ガス量(=200NL)のヘリウムガス量20NL(=200NL×10%)」と「第2蓄圧タンク28の探査ガス量(=100NL)のヘリウムガス量10NL(=100NL×10%)」との合計のヘリウムガス量30NLと比較して約1/8の量である。
【0060】
次に、上記ヘリウムガス精製サイクル30の構成としては、第1蓄圧タンク26と精製筒35との間の連通を切断/許可する精製バルブ31と、第1蓄圧タンク26から一部抽出される低濃度ヘリウム探査ガスの圧力を下げる減圧バルブ32と、精製筒35に導入される低濃度ヘリウム探査ガスの流量を調整する第1可変流量バルブ33と、精製筒35から分離・排気される廃棄ガスの流量を計測する第1流量計34と、低濃度ヘリウム探査ガスを高濃度ヘリウム探査ガスに再生する精製筒35と、高濃度ヘリウム探査ガスの流量を計測する第2流量計36と、高濃度ヘリウム探査ガス中のヘリウム濃度を計測する第1ガス濃度計37と、精製筒35から分離・排気される廃棄ガスの流量を調整する第2可変流量バルブ38と、廃棄ガスの流量を計測する第3流量計39とを備えている。
【0061】
上述した通り、第1蓄圧タンク26内の探査ガス中のヘリウム濃度が設定濃度10%から規定濃度範囲の下限値9.5%になるまでの漏れ検査の回数は125回であった。従って、この漏れ検査装置100では125回の漏れ検査毎に、探査ガスの精製が必要となる。具体的には、第1蓄圧タンク26内の探査ガスの一部を精製筒35に導入し、精製筒35において高濃度ヘリウム探査ガスに再生する。そして、高濃度ヘリウム探査ガスは中間タンク24において第1蓄圧タンク26から移送されて来る元の低濃度ヘリウム探査ガスに再帰混合し、ガス圧縮機35によって第1蓄圧タンク26に圧送して膨張させる、一部精製・再帰混合・攪拌プロセスを繰り返し実施することにより、第1蓄圧タンク26内の探査ガス中のヘリウム濃度を設定濃度10%まで精製する。
【0062】
また、詳細については後述するが、精製筒35に導入される低濃度ヘリウム探査ガスの流量については、第1可変流量バルブ33によって調整され、第1可変流量バルブ33は第1流量計34の計測信号に基づいて制御装置43によって制御されるようになっている。他方、精製筒35から分離・排気される廃棄ガス量については、第2可変流量バルブ38によって調整され、第2可変流量バルブ38は第3流量計39と第2流量計36と第1ガス濃度計37の各計測信号に基づいて制御装置43によって制御されるようになっている。
【0063】
次に、上記ガス攪拌サイクル40の構成としては、探査ガスについて第1蓄圧タンク26から中間タンク24への移送を切断/許可する攪拌バルブ41と、第1蓄圧タンク26に貯蔵される探査ガス中のヘリウム濃度を計測する第2ガス濃度計42と、探査ガス中のヘリウム濃度を規定濃度範囲に入るように制御する制御装置43と、空気ライン45から中間タンク24内の混合ガスに加えられる空気の質量流量を制御する第1質量流量制御器44と、空気を供給する空気ライン45と、ヘリウムガスボンベ47から中間タンク24内の混合ガスに加えられるヘリウムガスの質量流量を制御する第2質量流量制御器46と、ヘリウムガスを供給するヘリウムガスボンベ47とを備えている。
【0064】
制御装置43は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)によって構成することができる。制御装置43は、第1ガス濃度計37と第2ガス濃度計42の各ヘリウム濃度の計測値を取り込みながら、各バルブ27,31,41、各可変流量バルブ32,38、並びに各質量流量制御器44,46をそれぞれ制御して、低濃度ヘリウム探査ガス中のヘリウム濃度を規定濃度範囲に収束するようにする。なお、制御装置43による探査ガス中のヘリウム濃度の制御例については、
図6及び
図7を参照しながら後述する。
【0065】
図2は、本発明の第1実施形態に係る漏れ検査装置100による一部精製・再帰混合・攪拌プロセスを示す概念図である。
先ず、
図2(A)は漏れ検査に使用された探査ガスが第1蓄圧タンク26内に回収された状態を表している。なお、説明の都合上、中間タンク24内の探査ガスの量はゼロ[NL]とし、第1蓄圧タンク26内の低濃度ヘリウム探査ガスの量はV
0[NL]、ヘリウム濃度はd
0で規定濃度範囲の下限値以下とする。この場合、ヘリウム量はd
0V
0[NL]である。因みにこの低濃度ヘリウム探査ガスは、ガス圧縮機25と帰還路41aによって第1蓄圧タンク26と中間タンク24との間を繰り返し循環させられている。
【0066】
図2(B)は、探査ガスの一部抽出を表している。第1蓄圧タンク26内の探査ガス(低濃度ヘリウム探査ガス)の一部が抽出されて精製筒35に導入される。探査ガスの抽出割合aは、精製筒35への導入量v1と探査ガスの全量V
0との比によって規定することができる。抽出割合aは、後述するように、廃棄割合b、ヘリウム濃度の設定濃度d
1と規定濃度下限値d
0から一意的に決定されることになる。従って、この精製筒35への導入量v1についても、廃棄割合b、ヘリウム濃度の設定濃度d
1と規定濃度下限値d
0から一意的に決定されることになる。この場合、精製筒35への探査ガスの導入量v1は、aV
0[NL]であり、第1可変流量バルブ33によって調整される。また、導入される探査ガス中のヘリウム濃度はd
0である。従って、精製筒35へのヘリウムの導入量は、ad
0V
0[NL]である。
【0067】
図2(C)は、精製筒35へ導入した探査ガスについての廃棄割合bを表している。廃棄ガス割合bは、廃棄ガス量v3と精製筒35への導入量v1(=再生ガス量v2+廃棄ガス量v3)との比によって規定することができる。廃棄ガス割合bは、例えば再生ガス量v2中に含まれるヘリウム量が最大であり、且つ再生ガス量v2に含まれる再生空気量が最小(ゼロ)となるように、決定することができる。再生ガス量v2に含まれるヘリウム量の最大値は、ad
0V
0[NL]である。また、再生ガス量v2中に含まれる再生ヘリウム量は、再生ガス量v2中のヘリウム濃度をcとして、cv2=ca(1-b)V
0[NL]となる。従って、この再生ヘリウム量が最大値ad
0V
0[NL]に等しくなれば良い。従って、ca(1-b)V
0=ad
0V
0より、再生ヘリウム量が最大値となるときの再生ガス量中のヘリウム濃度cは、c=d
0/(1-b)と求められる。
【0068】
他方、再生ガス量v2に含まれる再生空気量は、(1-c)a(1-b)V0[NL]であるから、上記ヘリウム濃度cを左式に代入して整理する。従って、再生空気量は、(1-b-d0)aV0[NL]となる。従って、再生空気量をゼロにする破棄割合bは、1-b-d0=0、すなわち、b=1-d0と求められる。従って、低濃度ヘリウム探査ガス中のヘリウム濃度d0が規定濃度範囲の下限値=0.095(9.5%)の場合、廃棄割合bは、1-0.095=0.905と求められる。
【0069】
一方、第1蓄圧タンク26内の低濃度ヘリウム探査ガスの残部については中間タンク24に移送される。低濃度ヘリウム探査ガスの残部量は、(1-a)V0[NL]であり、探査ガス中のヘリウム濃度はd0である。
【0070】
図2(D)は、精製筒35から移送されて来る高濃度ヘリウム探査ガスと、第1蓄圧タンク26から移送されて来た低濃度ヘリウム探査ガスとの再帰混合を表している。ad
0V
0[NL]の再生ガス量v2が中間タンク24に移送される一方、abV
0[NL]の空気が廃棄ガス量v3として外部に排気されることになる。廃棄割合b=0.905の場合、再生ガス量v2中のヘリウム量はad
0V
0[NL]であり、ヘリウム濃度cは100%となる。この場合、中間タンク24内のヘリウム量は、ad
0V
0+d
0(1-a)V
0=d
0V
0[NL]となる。また、中間タンク24内の再帰混合ガスの全量は、ad
0V
0+(1-a)V
0[NL]となる。
【0071】
図2(E)は、中間タンク24内で再帰混合した再帰混合ガスの攪拌を表している。攪拌は、混合ガスをガス圧縮機25で加圧し第1蓄圧タンク26に移送して膨張させることを繰り返すことにより行われる。攪拌後、探査ガスの全量V
1=ad
0V
0+(1-a)V
0[NL]となる。
【0072】
従って、第1蓄圧タンク26内のヘリウム濃度d
1は、d
1=d
0V
0/{ad
0V
0+(1-a)V
0}=d
0/(ad
0-a+1)となる。従って、ヘリウム濃度d
1を設定濃度=0.1(=10%)とすると共に、ヘリウム濃度の規定濃度範囲の下限値をd
0=0.095(=9.5%)とする場合、0.095/(a×0.095-a+1)=0.1より、a=0.06となる。すなわち、上記
図2(C)において廃棄割合b=0.905の場合、上記
図2(B)の抽出割合aは、ヘリウム濃度d
1の設定濃度d
1(=10%)と規定濃度範囲の下限値d
0(=9.5%)から一意的に決定されることになる。
【0073】
なお、上記
図2(C)に示されるように、a(1-d
0)V
0[NL]の廃棄ガス量が外部に廃棄されることになるため、探査ガスの全量V
1は、一部精製前の探査ガスの全量V
0に比べ、a(1-d
0)V
0[NL]の廃棄ガス量v3に相当分だけ減少している。
【0074】
従って、
図3に示されるように、d
1×a(1-d
0)V
0[NL]のヘリウム量を、第2質量流量制御器46とヘリウムガスボンベ47から補充すると共に、(1-d
1)×a(1-d
0)V
0[NL]の空気量を第1質量流量制御器44と空気ライン45から補充することより、ヘリウム濃度を設定濃度d
1に維持したまま探査ガスの全量を元の量V
0[NL]に保持することが可能となる。
【0075】
図4は、本発明の第1実施形態に係る漏れ検査装置100による漏れ検査工程を示すプロセス図である。
先ずプロセスP1では、被試験体11を真空容器12の内部にセットする。全てのバルブを閉とする。
【0076】
次にプロセス2では、第1真空バルブ13aを開として真空容器12の内部を第1真空ポンプ13によって真空排気する。真空容器12の内部が所定の真空度(例えば2000Pa)に到達したら第1真空バルブ13aを閉として第1真空ポンプ13の運転を停止する。
【0077】
次にプロセスP3では、第2真空バルブ15を開として被試験体11の内部を第2真空ポンプ16によって真空排気する。被試験体11の内部が所定の真空度(例えば2000Pa)に到達したら第2真空バルブ15を閉として第2真空ポンプ16の運転を停止する。
【0078】
次にプロセスP4では、探査ガス検出器14により真空容器12の内部にヘリウム漏れが無いことを判定する。
【0079】
次にプロセスP5では、第2蓄圧タンク28より探査ガスを被試験体11に導入し、探査ガス検出器14によって被試験体11から漏れ出るヘリウムガスの漏れ量を判定する。
【0080】
次にプロセスP6では、被試験体11から探査ガスを回収・攪拌・一部精製する。探査ガスを回収し、探査ガス中のヘリウム濃度が規定濃度範囲の下限値9.5%以下となる場合、探査ガス中のヘリウム濃度が設定濃度10%に等しくなるように探査ガスの一部精製が成される。この探査ガスの一部精製については
図5を参照しながら後述する。
【0081】
次にプロセスP7では、探査ガス回収後、真空容器12を大気暴露し、被試験体11を取り出す。以後、全ての被試験体11についてプロセスP1からプロセスP7を繰り返し実施する。
【0082】
図5は、上記漏れ検査装置100による漏れ検査工程の内の探査ガスの回収・攪拌・一部精製を示すプロセス図である。
【0083】
先ずプロセスP6-1では、被試験体11内の探査ガスを第1蓄圧タンク26に移送する。この場合、回収バルブ21が開となり回収用ポンプ23が駆動される。被試験体11内の探査ガスは、回収用ポンプ23によって中間タンク24に移送される。中間タンク24に移送された探査ガスは、ガス圧縮機25によって第1蓄圧タンク26に圧送される。
【0084】
次にプロセスP6-2では、第1蓄圧タンク26内の探査ガスを攪拌する。この場合、第1蓄圧タンク26内の探査ガスは、ガス圧縮機25によって加圧状態になっている。従って、攪拌バルブ41が開になると、第1蓄圧タンク26内の探査ガスは攪拌バルブ41を通り、自動的に圧力の低い中間タンク24に移送されることになる。
【0085】
中間タンク24に戻された探査ガスは、ガス圧縮機25によって第1蓄圧タンク26に再び圧送されることになる。このように、第1蓄圧タンク26に移送された探査ガスは、攪拌バルブ41→中間タンク24→ガス圧縮機25→第1蓄圧タンク26→攪拌バルブ41→・・・という経路で繰り返し循環され、中間タンク24及び第1蓄圧タンク26内で好適に攪拌されることになる。これにより、ヘリウムガスが探査ガス中に均一に拡散され、ヘリウム濃度分布が一様になる。
【0086】
次にプロセスP6-3では、攪拌中の探査ガス中のヘリウム濃度を計測する。攪拌中の探査ガス中のヘリウム濃度は、第2ガス濃度計42によって計測される。
【0087】
次にプロセスP6-4では、探査ガス中のヘリウム濃度が規定濃度範囲の下限値以下か否かを判定する。探査ガス中のヘリウム濃度が規定濃度範囲の下限値以下の場合(YES)、プロセスP6-5を実行する。一方、探査ガス中のヘリウム濃度が規定濃度範囲の下限値を上回っている場合(NO)、プロセスP6-6を実行する。
【0088】
次にプロセスP6-5では、精製バルブ31を開とし探査ガスを一部精製する。探査ガスの精製は、第1蓄圧タンク26中の探査ガスを精製筒35に導入して、精製筒35において探査ガス中の空気を分離・排気することにより行われる。精製筒35に導入される探査ガスの流量(精製筒35への導入量v1)は、第1可変流量バルブ33によって調整される一方、探査ガス中から分離・排気される空気の流量(廃棄ガス量v3)は第2可変流量バルブ38によって調整される。なお、第1可変流量バルブ33、及び第2可変流量バルブ38は、第1流量計34、第2流量計36および第3流量計39並びに第1ガス濃度計37の各計測値に基づいて制御装置43によって制御されることになる。
【0089】
精製バルブ31から流出される探査ガスは、減圧バルブ32によって例えば0.8MPaから0.5MPaに減圧されるようになっている。精製筒35への探査ガスの導入流量(精製筒35への探査ガスの導入量v1を処理時間で割った値)は、例えば15.4NL/minに等しくなるように、第1可変流量バルブ33によって調整されるようになっている。なお、第1可変流量バルブ33の制御は、第1流量計34の計測信号を取り込みながら制御装置43によって行われる。
【0090】
一方、精製筒35から分離・排気される空気の流量(廃棄ガス量v3を処理時間で割った値)は、例えば4.8NL/minに等しくなるように、第2可変流量バルブ38によって調整されるようになっている。なお、第2可変流量バルブ38の制御は、第3流量計39の計測信号を取り込みながら制御装置43によって行われる。これにより、精製筒35から流出される精製された探査ガスの流量は、自動的に10.6(=15.4-4.8)NL/minに調整されることになる。なお、精製筒35への探査ガスの導入流量が少ない方が、高いヘリウム再生率が期待できる。
【0091】
因みに、第1蓄圧タンク26において探査ガス中のヘリウム濃度が9.5%から10%に上昇するのに要した時間は3分3秒であった。この時、精製筒35に導入されたヘリウムガス量は4.70NLであり、精製されたヘリウムガス量は4.69NLであった。これより、精製筒35から分離・排気されたヘリウムガス量は1回の精製で10(=(4.70-4.69)×103)NmLであり、精製筒35のヘリウム再生率は99.8%(=4.69/4.70×100%)と見積もられる。ここで、漏れ検査が1日当たり500回実施されると仮定すると、ヘリウム濃度が10%から9.5%になる漏れ検査の回数は125回であることから、探査ガスの精製は1日当たり4回実施されることになる。これより、精製筒35から排気されるヘリウムガス量は40(=10×4)NmLと非常に少量であることが分かる。
【0092】
プロセスP6-6では、精製バルブ31を閉と、第1供給バルブ27を開とし、探査ガスを第2蓄圧タンク28に移送する。以下に、探査ガスの回収・攪拌・一部精製プロセスにおける制御装置43の動作について説明する。
【0093】
図6及び
図7は、漏れ検査装置100による探査ガスの回収・攪拌・一部精製プロセスにおける制御装置43の制御を示すフロー図である。なお、説明の都合上、精製筒35での廃棄割合bについては、再生ガス量v2中の再生空気量はゼロ[NL]且つ廃棄ガス量v3中の廃棄ヘリウム量はゼロ[NL]となるように決定されることとする。更に被試験体11内部に残留する探査ガス量はゼロ[NL]とする。
【0094】
先ずステップS1では、被試験体11毎の漏れ検査の終了を検知する。漏れ検査の終了については、例えば探査ガス検出器14の測定停止に係る電気信号によって制御装置43に認識させることができる。
【0095】
ステップS2では、回収バルブ21を開とし、回収用ポンプ23及びガス圧縮機25を駆動する。これにより、被試験体11内部の探査ガス量(20NL)は、回収タンク22→中間タンク24→第1蓄圧タンク26という経路で第1蓄圧タンク26に圧送されることになる。
【0096】
ステップS3では、攪拌バルブ41を開とする。その結果、第1蓄圧タンク26内の探査ガスは攪拌バルブ41を通り中間タンク24に戻され、中間タンク24と第1蓄圧タンク26との間を繰り返し循環させられる。
【0097】
ステップS4では、第2ガス濃度計42の計測信号を取り込む。
【0098】
ステップS5では、探査ガス中のヘリウム濃度が規定濃度範囲の下限値9.5%以下であるか否かを判定する。探査ガス中のヘリウム濃度が規定濃度範囲の下限値9.5%以下である場合(YES)、ステップS6を実行する。一方、探査ガス中のヘリウム濃度が規定濃度範囲の下限値9.5%以下でない場合(NO)、第2供給バルブ27を開とし探査ガスを第2蓄圧タンク28に補充(圧送)する。補充後第2供給バルブ27を閉とする。これにより、第1蓄圧タンク26内の探査ガス量は200NLと、第2蓄圧タンク28内の探査ガス量は100NLとなる。
【0099】
ステップS6では、精製バルブ31を開とし、第1蓄圧タンク26内の探査ガスを精製筒35に導入する。
【0100】
ステップS7では、第1流量計34、第2流量計36、第3流量計39の各計測信号を取り込む。
【0101】
ステップS8では、第1可変流量バルブ33を駆動して精製筒35への探査ガスの導入流量を調整する。なお、導入流量の目標値については、精製筒35への導入量v1(上記
図2(B))と処理時間から決定され、その導入量v1は、抽出割合aによって、即ち、ヘリウム濃度の設定濃度d
1と規定濃度範囲の下限値d
0、並びに廃棄割合b(上記
図2(B))によって決定されることになる。
【0102】
ステップS9では、精製筒35への探査ガスの導入流量は規定範囲か否かを判定する。精製筒35への探査ガスの導入流量が規定範囲である場合(YES)、ステップS10を実行する。一方、精製筒35への探査ガスの導入流量が規定範囲でない場合(NO)、再度ステップS8を実行する。
【0103】
ステップS10では、第2可変流量バルブ38を駆動して廃棄ガスの排気流量を調整する。なお、「廃棄ガス」とは精製筒35において低濃度ヘリウム探査ガスから分離・排気され、再利用されることのない全部又は大部分を空気で占められたガスのことである。
【0104】
ステップS11では、廃棄ガスの排気流量は規定範囲であるか否かを判定する。廃棄ガスの排気流量が規定範囲である場合(YES)、ステップS12を実行する。一方、廃棄ガスの排気流量が規定範囲でない場合(NO)、再度ステップS10を実行する。
【0105】
ステップS12では、第1ガス濃度計37の計測信号を取り込む。なお、第1ガス濃度計37は、精製筒35において精製された高濃度ヘリウム探査ガス量(上記
図2(C)中の「再生ガス量v2」)中のヘリウム濃度(上記
図2(C)中の「c」)を計測している。
【0106】
ステップS13では、精製探査ガス中のヘリウム濃度は所定範囲か否かを判定する。なお、ここで言う「所定範囲」とは、高濃度ヘリウム探査ガス量(再生ガス量v2)中のヘリウム量(上記
図2(C)中の「再生ヘリウム量」)が最大値(=a×d
0V
0[NL])となり、且つ再生ガス中の空気量(上記
図2(C)中の「再生空気量」)がゼロとなるときの再生ガス量v2中のヘリウム濃度cである。この場合、再生ガス量v2中のヘリウム濃度cは100%又は100%の近似値に等しくなる。
【0107】
精製探査ガス中のヘリウム濃度が所定範囲である場合(YES)、ステップS14を実行する。一方、精製探査ガス中のヘリウム濃度が所定範囲内でない場合(NO)、ステップS10を再度実行する。
【0108】
ステップS14では、第2ガス濃度計42の計測信号を取り込む。
【0109】
ステップS15では、再帰混合ガス中のヘリウム濃度が設定濃度(10%)か否かを判定する。再帰混合ガス中のヘリウム濃度が設定濃度(10%)である場合(YES)、ステップS16を実行する。一方、再帰混合ガス中のヘリウム濃度が設定濃度(10%)でない場合(NO)、再度ステップS10を実行する。なお、「再帰混合ガス」とは、低濃度ヘリウム探査ガスから一部抽出し精製された高濃度ヘリウム探査ガスを、元の低濃度ヘリウム探査ガスに再帰混合することにより生成された混合ガスを意味している。
【0110】
ステップS16では、第1質量流量制御器44又は第2質量流量制御器46を駆動して、空気ライン45又はヘリウムガスボンベ47から再帰混合ガスに空気又はヘリウムガスを補充する。なお、再帰混合ガスに補充される空気量又はヘリウム量は、廃棄ガス量v3(上記
図2(D))とヘリウム濃度の設定濃度d
1(10%)を基に制御装置43によって算出されることになる。例えば、上記
図2(D)より、廃棄ガス量v3=a(1-d
0)V
0[NL]だから、補充すべきヘリウム量は、d
1a(1-d
0)V
0[NL]、補充すべき空気量は、(1-d
1)a(1-d
0)V
0[NL]とそれぞれ求められることになる。
【0111】
ステップS17では、精製バルブ31を閉とし、第2供給バルブ27を開とし第1蓄圧タンク26内の規定ヘリウム濃度探査ガスを第2蓄圧タンク28に補充(圧送)する。補充後第2供給バルブ27を閉とする。
【0112】
以上の通り、制御装置43が上記ステップS2において回収バルブ21を開とし、回収用ポンプ23及びガス圧縮機25を駆動することにより、被試験体11内部の探査ガスが第1蓄圧タンク26に自動的に回収されることになる。そして上記ステップS3において制御装置43が攪拌バルブ41を開とすることにより、第1蓄圧タンク26内の探査ガスの攪拌が自動的に開始されることになる。そして上記ステップS5において第2ガス濃度計42によって計測された、第1蓄圧タンク26内の探査ガス中のヘリウム濃度が規定濃度範囲の下限値を下回っている場合、上記ステップS6において制御装置43が精製バルブ31を開とすることにより、第1蓄圧タンク26内の探査ガスの一部精製が自動的に開始されることになる。そして上記ステップS8において第1可変流量バルブ33を駆動することにより、精製筒35への探査ガスの導入流量の調整が自動的に行われることになる。同様に上記ステップS10において廃棄ガスの排気流量の調整が自動的に行われることになる。
【0113】
その結果、精製筒35において精製された高濃度ヘリウム探査ガスは、中間タンク24において低濃度ヘリウム探査ガスに再帰混合され攪拌されることになる。そしてステップS16において精製筒35において分離・廃棄された廃棄ガス量に相当する「ヘリウム濃度が設定濃度(10%)に調整された」規定濃度ヘリウム探査ガスが、同じく「ヘリウム濃度が設定濃度(10%)に調整された」再帰混合ガスに補充されることになる。そしてステップS17において、漏れ検査に必要な使用量(本実施形態では20NL)に相当する規定濃度ヘリウム探査ガスが、第1蓄圧タンク26から第2蓄圧タンク28に圧送され補充されることになる。これにより、漏れ検査に使用されるヘリウムガスの消費量を大幅に低減することが可能となると共に、被試験体11に供給される探査ガス中のヘリウム濃度が規定濃度範囲に常時維持された信頼性の高い漏れ検査を繰り返し実施することが可能となる。
【0114】
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態に係る漏れ検査装置200の要部構成を示す説明図である。
この漏れ検査装置200は、内部の真空排気を実施することが不可能な被試験体11’(いわゆる「低剛性被試験体」)用の漏れ検査装置であり、上記漏れ検査装置100と同様に、被試験体11’内部の探査ガスを回収・攪拌・一部精製し、漏れ検査に使用されるヘリウムガスの消費量を大幅に低減すると共に、探査ガスのヘリウム濃度が規定濃度範囲に常時維持された信頼性の高い漏れ検査を繰り返し実行することができるように構成されている。
【0115】
従って、探査ガス回収・供給サイクル20、ヘリウムガス精製サイクル30、並びにガス攪拌サイクル40については、上記漏れ検査装置100と共通している。上記漏れ検査装置100との相違点は漏れ検査部10’のみである。具体的には、漏れ検査装置100の第2真空バルブ15及び第2真空ポンプ16が取り除かれて、新たに被試験体11’の下流側に精製筒導入バルブ17及び第2精製筒18、上流側に空気導入バルブ19がそれぞれ追加されている。
【0116】
すなわち、この漏れ検査装置200では、被試験体11’内部に導入された探査ガスは、空気によって外部に押し出され、探査ガス回収・供給サイクル20によって回収されるようになっている。そのため、回収される探査ガスに含まれる空気を除去するために、回収タンク22の上流側に第2精製筒18が設けられている。また、被試験体11’と第2精製筒18との間に、連通を切断/許可するための精製筒導入バルブ17が設けられている。また、被試験体11’と第2供給バルブ29との間に、空気を導入するための空気導入弁19が、第2供給バルブ29に対し並列に設けられている。
【0117】
図9は、本発明の第2実施形態に係る漏れ検査装置200による漏れ検査工程を示すプロセス図である。
【0118】
先ずプロセスP1’では、被試験体11’を真空容器12内にセットする。被試験体11’の内部容積は、上記漏れ検査装置100と同様に4Lの被試験体11’を準備し、探査ガスとして、濃度10%のヘリウムと濃度90%の空気から構成された混合ガスを用いた。漏れ検査時の被試験体11’内部の探査ガス圧力は0.5MPaとし、漏れ検査1回の探査ガス使用量は、20NLとした。ここで、探査ガスのヘリウム濃度の安定化を図るために第1蓄圧タンク26と第2蓄圧タンク28の各容積は、上記漏れ検査装置100の各々4倍とした。すなわち、第1蓄圧タンク26は容積100Lと、圧力0.8MPaと、探査ガス容量を800NLとする一方、漏れ検査部10’直前の第2蓄圧タンク28は容積50Lと、圧力0.8MPaと、探査ガス容量を400NLとした。
【0119】
次にプロセスP2’では、第1真空バルブ13aを開として真空容器12の内部を第1真空ポンプ13によって真空排気する。真空容器12の内部が所定の真空度(例えば2000Pa)に到達したら第1真空バルブ13aを閉として第1真空ポンプ13の運転を停止する。
【0120】
次にプロセスP3’では、被試験体11’内部に探査ガスを供給する。探査ガスの被試験体11’への供給方式は、探査ガスによる置換方式を採用するこことができる。また、被試験体11’の容積が4Lであることから探査ガスの第2精製筒18への導入量を6Lとした。また、探査ガス導入流量は、第2精製筒18での廃棄ヘリウム量を低減するために30L/minとした(置換時間12秒(=6L/30L/min×60秒/min))。ここで、探査ガス導入流量は、第2精製筒18の排気側の流量調整バルブ(図示せず)により設定した。
【0121】
なお、探査ガスと空気は、第2精製筒18を通過して探査ガス回収・供給サイクル20に導入されることから、この漏れ検査装置200では第1蓄圧タンク26の探査ガスのヘリウム濃度は上昇する。例えば、探査ガスのヘリウム濃度が設定濃度10%から規定濃度範囲の上限値10.5%になり、そしてヘリウムガス精製サイクル30で精製してヘリウム濃度を設定濃度10%まで戻す実験を10回実施し、探査ガスのヘリウム濃度が規定濃度範囲の上限値10.5%になる時間と、廃棄されるヘリウムガス量と空気量を見積もった。その結果、探査ガスのヘリウム濃度が設定濃度10%から規定濃度範囲の上限値10.5%になる時間は28分、検査1回当たりの廃棄されるヘリウム量は39NmL、検査1回当たりの廃棄される空気量は1.7NL、ヘリウムガス精製サイクル30の精製筒35の精製で廃棄されるヘリウム量は37NmL、廃棄される空気量は57.6NLであった。
【0122】
したがって、ヘリウムガス精製サイクル30で常時精製する場合の、補充するヘリウム流量は40NmL/min、空気流量は3.7NL/minと見積もられた。実際、ヘリウムガス精製サイクル30で常時精製を実行し、これら流量のヘリウムガスと空気ガスを中間タンク24に導入したところ、蓄圧タンク26の探査ガスのヘリウム濃度は安定した。なお、これらヘリウムガスと空気の導入は、第2質量流量制御器46および第1質量流量制御器44によって行われ、第2質量流量制御器46および第1質量流量制御器44は制御装置43によって制御される。
【0123】
次にプロセスP4’では、探査ガス検出器14により漏れ判定する。
【0124】
次にプロセスP5’では、被試験体11’内部を空気で満たしながら探査ガスを回収・攪拌・一部精製する。探査ガス回収・供給サイクル20による探査ガスの回収、ヘリウムガス精製サイクル30による探査ガス中の一部精製、並びにガス攪拌サイクル40による探査ガスの攪拌について上記漏れ検査装置100と殆ど同じであるため、これらについての説明については省略することとする。
【0125】
次にプロセスP6’では、探査ガス回収後、真空容器12を大気暴露し、被試験体11を取り出す。以後、全ての被試験体11についてプロセスP1’からプロセスP5’を繰り返し実施する。
【0126】
(検証例:精製筒35の性能を考慮した補充ヘリウム量と補充空気量)
ところで、上記
図2及び
図3における本発明に係る一部精製・再帰混合・攪拌プロセスにおいては、説明の都合上、精製筒35での廃棄ガス量v3中の廃棄ヘリウム量がゼロ、且つ再生ガス量v2中の再生空気量が共にゼロ(再生ガス量中のヘリウム濃度cが100%)となるように、「精製筒35への探査ガスの導入量v1」及び「精製筒35での廃棄割合b(=廃棄ガス量v3/精製筒35への探査ガスの導入量v1)」を決定している。しかし、実際の漏れ検査装置においては、廃棄ガス量v3中の廃棄ヘリウム量および再生ガス量v2中の再生空気量が共にゼロとなることはないと考えられる。これは、精製筒35の分離膜の特性(性能)および処理時間に依るところが大きいと考えられる。
【0127】
例えば、
図10(a)に示されるように、精製筒35への探査ガスの導入流量q(=v1/T、T:処理時間)を大きくしていくと、廃棄ガス量v3中のヘリウム濃度は0.02%から7.58%に徐々に増加し、廃棄ヘリウム量がゼロになることは決してない。一方、
図10(b)に示されるように、精製筒35への探査ガスの導入流量qを大きくしていくと、再生ガス量v2中の空気の濃度は85.3%(=100%-14.7%)から70%(=100%-30.0%)に推移し、再生ガス量v2中のヘリウム濃度cが100%になることはない。
【0128】
従って、実際の漏れ検査装置においては、ヘリウム再生率η=(再生ガス量v2中のヘリウム量)/(精製筒35への探査ガスの導入量v1中のヘリウム量)、というパラメータを新たに導入し、このヘリウム再生率ηを考慮して、精製筒35への探査ガスの導入量v1、および廃棄割合bを決定する方がより効率的である。
図11に示されるように、ヘリウム再生率ηは、0<η<1の範囲を可変する。
【0129】
更に、実際の漏れ検査装置における被試験体11からの探査ガスの回収工程(
図6のステップS2)では、被試験体11の内部には回収不能な0.08NLの探査ガス量(=ヘリウム量0.008NL+空気量0.072NL)が残留する。これは、すなわち、1回の漏れ検査につき0.08NLの探査ガスが第1蓄圧タンク26から無条件に廃棄されることを意味している。従って、
図7のステップS16における空気又はヘリウムガスの補充では、被試験体11から回収不能な探査ガス量についても、廃棄ガス量v3相当分と同様に、検査回数分だけ補充する必要がある。
【0130】
上述した通り、第1蓄圧タンク26内の探査ガス中のヘリウム濃度が設定値の10%から規定濃度範囲の下限値9.5%になるまでの検査回数は125回である。従って、125回の漏れ検査で廃棄される探査ガス量は、0.08NL×125=10NL(=ヘリウム量1.0NL+空気量9.0NL、ヘリウム濃度d
1=0.1)であるから、
図7のステップS16における空気又はヘリウムガスの補充では、ヘリウム量1.0NLと空気量9.0NLをそれぞれ補充する必要がある。
【0131】
図12及び
図13は、ヘリウム再生率ηと「被試験体11から回収不能な検査回数分の探査ガス量の補充」を考慮した本発明の漏れ検査装置による一部精製・再帰混合・攪拌・補充プロセスを示す概念図である。
【0132】
特に
図12(D)において、ヘリウム再生率ηを導入し、廃棄割合bをヘリウム再生率ηと「再生ガス量v2中のヘリウム濃度c」によって決定している。なお、ヘリウム再生率ηは、再生ガス量v2中のヘリウム濃度c、廃棄割合b、規定濃度範囲の下限値のヘリウム濃度d
0を用いて下記式1のように表される。
(式1):ヘリウム再生率η=再生ガス量v2中の再生ヘリウム量/導入ヘリウム量=c(1-b)aV
0/d
0aV
0=c(1-b)/d
0
従って、廃棄割合bは、式1をbについて解くことにより下記式2のように表される。
(式2):廃棄割合b=1-ηd
0/c
従って、再生ガス量v2はヘリウム再生率ηを用いて下記式3のように表される。
(式3):再生ガス量v2=(1-b)aV
0=(ηd
0/c)aV
0[NL]
また、廃棄ガス量v3はヘリウム再生率ηを用いて下記式4のように表される。
(式4):廃棄ガス量v3=baV
0=(1-ηd
0/c)aV
0[NL]
【0133】
図12(D)において、中間タンク24で探査ガスの残部に再帰混合される「再生ガス量v2中の再生ヘリウム量」および再生空気量は、ヘリウム再生率ηを用いて下記式5、下記式6のようにそれぞれ表される。
(式5):再生ヘリウム量=再生ガス量v2×ヘリウム濃度c=ηd
0aV
0[NL]
(式6):再生空気量=再生ガス量v2-再生ヘリウム量=(ηd
0/c)aV
0-ηd
0aV
0=(1/c-1)ηd
0aV
0[NL]
【0134】
図12(E)において、中間タンク24から再帰混合ガスの圧送直後の第1蓄圧タンク26内の探査ガスの全量V1は、ヘリウム再生率ηを用いて下記式7のように表される。
(式7):探査ガスの全量V
1=再生ガス量v2+探査ガスの残部=(1-b)aV
0+(1-a)V
0=(1-ab)V
0={1-a(1-ηd
0/c)}V
0[NL]
また、同第1蓄圧タンク26内のヘリウム量は、ヘリウム再生率ηを用いて下記式8のように表される。
(式8):ヘリウム量=再生ヘリウム量+探査ガス残部中のヘリウム量=ηd
0aV
0+d
0(1-a)V
0={1-(1-η)a}d
0V
0[NL]
従って、中間タンク24から再帰混合ガスの圧送直後の第1蓄圧タンク26内の探査ガスのヘリウム濃度d
1は、ヘリウム再生率ηを用いて下記式9のように表される。
(式9):ヘリウム濃度d
1=ヘリウム量/探査ガスの全量V
1={1-(1-η)a}d
0/{1-a(1-ηd
0/c)}
【0135】
図13において、廃棄ガス量v3相当分のヘリウム濃度d
1の探査ガス量と、「被試験体11から回収不能な検査回数分(125回)のヘリウム濃度d
1の探査ガス量v4(=10NL)」とをそれぞれ補充している。
従って、第1蓄圧タンク26に補充すべき補充ヘリウム量は、ヘリウム再生率ηを用いて下記式10のように表される。
(式10):補充ヘリウム量=d
1×(v3+v4)=d
1×{(1-ηd
0/c)aV
0+v4}[NL]
【0136】
従って、第1蓄圧タンク26に補充すべき補充空気量は、ヘリウム再生率ηを用いて下記式11のように表される。
(式11):補充空気量=(1-d1)×(v3+v4)=(1-d1)×{(1-ηd0/c)aV0+v4}[NL]
【0137】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明してきた。本発明の実施形態は上記だけに限定されることはなく、本発明の技術的特徴を逸脱しない範囲内において種々の修正・変更を加えることが可能である。例えば、探査ガス中の検出対象ガスについてはヘリウムに代えて、他のガス(例えば、水素、アルゴン)を使用することも可能である。また、残余ガスについても空気に代えて他の不活性ガス(例えば、窒素、二酸化炭素)を使用することも可能である。
【符合の説明】
【0138】
10 漏れ検査部(漏れ検査手段)
10’ 漏れ検査部(漏れ検査手段)
11 被試験体
11’ 被試験体
12 真空容器
13 第1真空ポンプ
13a 第1真空バルブ
14 探査ガス検出器(ヘリウムリークディテクタ)
15 第2真空バルブ
16 第2真空ポンプ
17 精製筒導入バルブ
18 第2精製筒(別の精製筒)
19 空気導入バルブ(残余ガス導入機構)
20 探査ガス回収・供給サイクル(探査ガス回収・供給手段)
21 回収バルブ
22 回収タンク(第1タンク)
23 回収用ポンプ
24 中間タンク(第3タンク)
25 ガス圧縮機
26 第1蓄圧タンク(第2タンク)
27 第1供給バルブ
28 第2蓄圧タンク
29 第2供給バルブ
30 ヘリウムガス精製サイクル(探査ガス精製手段)
31 精製バルブ
32 減圧バルブ
33 第1可変流量バルブ(第1流量調整弁)
34 第1流量計
35 精製筒(精製部)
36 第2流量計
37 第1ガス濃度計
38 第2可変流量バルブ(第2流量調整弁)
39 第3流量計
40 ガス攪拌サイクル(探査ガス攪拌手段)
41 攪拌バルブ
41a 帰還路
42 第2ガス濃度計
43 制御装置(PLC)
44 第1質量流量制御器(残余ガス供給手段)
45 空気ライン(残余ガス供給手段)
46 第2質量流量制御器(検出対象ガス供給手段)
47 ヘリウムガスボンベ(検出対象ガス供給手段)
48 開放バルブ
100 漏れ検査装置
200 漏れ検査装置