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  • 特開-制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140292
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/02 20210101AFI20241003BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20241003BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241003BHJP
   C25B 15/021 20210101ALI20241003BHJP
   C25B 15/023 20210101ALI20241003BHJP
   C25B 15/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C25B15/02
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B15/021
C25B15/023
C25B15/00 303
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051373
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 朋浩
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC01
4K021BC05
4K021CA06
4K021CA11
(57)【要約】
【解決手段】水電解スタック(12)を起動する指令を受けると、制御装置(22)は、水供給器(18)および水温調整器(20)を制御して、所定の温度よりも低い温度の水を水電解スタック(12)に供給し、その後、電源装置(16)を制御して、膜・電極構造体(32)に供給される電流の電流値を、零から定格値まで一気に上げる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と、アノード電極と、カソード電極とを含む膜・電極構造体が備えられた水電解スタックに水を供給する水供給器と、
前記水電解スタックに供給される前記水の温度を調整する水温調整器と、
前記膜・電極構造体に電流を供給する電源装置と、
を制御する制御装置であって、
コンピュータが実行可能な指令を実行する一以上のプロセッサを備え、
前記水電解スタックを起動する前記指令を受けると、前記水供給器および前記水温調整器を制御して、所定の温度よりも低い温度の前記水を前記水電解スタックに供給し、その後、前記電源装置を制御して、前記膜・電極構造体に供給される電流の電流値を、零から定格値まで一気に上げる、制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記膜・電極構造体への前記電流の供給が開始された後に、前記アノード電極に連通する流路に設けられた圧力センサによって検出される圧力が閾値を超えると、前記水温調整器を制御して、前記水電解スタックに供給される前記水の温度を、前記所定の温度よりも高くする、制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記膜・電極構造体への前記電流の供給を開始してから所定の時間が経過すると、前記水温調整器を制御して、前記水電解スタックに供給される前記水の温度を、前記所定の温度よりも高くする、制御装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記水電解スタックを停止する前記指令を受けると、前記電源装置を制御して、前記電流値を徐々に小さくするとともに、前記水温調整器を制御して、前記水の温度を徐々に下げる、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解システムにおける制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する水電解スタックを含む電解システムの研究開発が行われている。
【0003】
水電解スタックは、水を電解し、水素ガスおよび酸素ガスを生成する。特許文献1には、水電解スタックの起動方法が開示されている。この起動方法は、スタック電圧の上限値を設定し、スタック電圧と水電解スタックに流れる電流とを監視しながら、当該電流を定格値まで段階的に上昇させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-59503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近時、水電解スタックの起動時において、水の電解によって発生する酸素ガス中に、電解質膜を介して混入する水素ガスの濃度を低減することが待望されている。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、電解質膜と、アノード電極と、カソード電極とを含む膜・電極構造体が備えられた水電解スタックに水を供給する水供給器と、前記水電解スタックに供給される前記水の温度を調整する水温調整器と、前記膜・電極構造体に電流を供給する電源装置と、を制御する制御装置であって、コンピュータが実行可能な指令を実行する一以上のプロセッサを備え、前記水電解スタックを起動する前記指令を受けると、前記水供給器および前記水温調整器を制御して、所定の温度よりも低い温度の前記水を前記水電解スタックに供給し、その後、前記電源装置を制御して、前記膜・電極構造体に供給される電流の電流値を、零から定格値まで一気に上げる。
【発明の効果】
【0008】
上記の態様によれば、水電解スタックの起動時において、水の電解によって発生する酸素ガス中に、電解質膜を介して混入する水素ガスの濃度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態による電解システムの構成を示す模式図である。
図2図2は、起動処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態による電解システム10の構成を示す模式図である。電解システム10は、水電解スタック12と、気液分離器14と、電源装置16と、水供給器18と、水温調整器20と、制御装置22とを備える。
【0011】
水電解スタック12は、水を電解する複数の単位セル30を有する。各単位セル30は同じ構成を有する。図1は、1つの単位セル30のみを示している。単位セル30は、膜・電極構造体32を有する。膜・電極構造体32は、電解質膜34と、アノード電極36と、カソード電極38とを含む。電解質膜34は、例えば、水酸化物イオンOHを輸送可能なアニオン交換膜である。電解質膜34は、アノード電極36とカソード電極38とによって挟持される。
【0012】
単位セル30では、膜・電極構造体32に供給される電流に基づいて水が電解される。水は、水供給路40を通じて、各単位セル30のカソード電極38に供給される。カソード電極38は、電気化学反応により、水の一部を水素イオンHと水酸化物イオンOHとに分解する。
【0013】
水素イオンHは、カソード電極38で電子を受け取って、水素ガスとなる。各単位セル30で得られる水素ガスは、電解されなかった水とともに水排出路42に流出する。
【0014】
水酸化物イオンOHは、電解質膜34を介してアノード電極36に移動する。アノード電極36に移動した水酸化物イオンOHは、アノード電極36から電子を放出する。水酸化物イオンOHが電子を放出すると、酸素ガスと水とが発生する。各単位セル30で得られる酸素ガスは、酸素供給路44を通じて、例えば酸素タンク45に貯留される。
【0015】
酸素供給路44には、圧力制御弁46が設けられる。圧力制御弁46は、各単位セル30のアノード電極36で発生する酸素ガスの圧力を、例えば1~100MPaといった所定の圧力に維持する。各単位セル30では、電解質膜34を介してアノード電極36とカソード電極38とで大きい差圧が生じる。この差圧により、アノード電極36で発生した水の大部分は、電解質膜34を通じてカソード電極38に戻される。これに加えて、カソード電極38で発生した水素ガスが電解質膜34を通過してアノード電極36に移動するクロストークが低減される。なお、圧力制御弁46として、開度を調整可能なソレノイド弁、或いは、背圧弁等が挙げられる。
【0016】
気液分離器14は、水排出路42を通じて水電解スタック12から供給される水素含有水を、液水と水素ガスとに分離する。気液分離器14によって分離される液水は、水供給路40を通じて、水電解スタック12に供給される。つまり、気液分離器14は、水電解スタック12に供給される水の供給源である。気液分離器14によって分離される水素ガスは、例えば、電気化学式水素昇圧装置(図示せず)に供給されてもよい。
【0017】
電源装置16は、各単位セル30の膜・電極構造体32に電流を供給する装置である。電源装置16は、制御装置22の制御にしたがって動作する。電源装置16は、アノード電極36とカソード電極38とに電圧を印加し、アノード電極36とカソード電極38との間に電流を供給する。電源装置16は、アノード電極36とカソード電極38との間に供給される電流の大きさ(電流値)を調整可能に構成される。電流値は、制御装置22によって調整される。
【0018】
水供給器18は、水電解スタック12に水を供給する装置である。水供給器18は、制御装置22の制御にしたがって動作する。水供給器18は、水供給路40に設けられる。水供給器18は、ポンプであってもよいし、弁であってもよい。図1は、水供給器18がポンプである場合の例を示している。
【0019】
水温調整器20は、水電解スタック12に供給される水の温度を調整する装置である。水温調整器20は、制御装置22の制御にしたがって動作する。例えば、水温調整器20は、水供給路40内の水と熱交換する熱交換器20Aの熱量を調整することによって、水電解スタック12に供給される水を加熱または冷却してもよい。この場合、水温調整器20は、例えば、水供給路40に設けられる温度センサ48によって検出される水温と目標温度との偏差が小さくなるように、熱交換器20Aの熱量を調整する。
【0020】
制御装置22は、電解システム10を統括するコンピュータである。制御装置22には、複数のセンサが接続される。複数のセンサは、温度センサ48と、圧力センサ50とを含む。
【0021】
温度センサ48は、温度を検出するセンサである。温度センサ48は、各単位セル30のカソード電極38に連通する水供給路40に設けられる。温度センサ48は、水電解スタック12に供給される水の温度を検出する。温度センサ48により検出された水の温度は、制御装置22に供給される。
【0022】
圧力センサ50は、ガスの圧力を検出するセンサである。圧力センサ50は、各単位セル30のアノード電極36に連通する酸素供給路44に設けられる。本実施形態では、圧力センサ50は、圧力制御弁46と水電解スタック12との間の酸素供給路44に設けられる。圧力センサ50は、アノード電極36で生成されるガスの圧力を検出する。ガスは、アノード電極36に移動した水酸化物イオンOHから発生する酸素ガスと、当該酸素ガスとともに付随的に発生する僅かな水素ガスとを含む。圧力センサ50により検出されたガスの圧力は、制御装置22に供給される。
【0023】
また、制御装置22には、指令入力機器52が接続される。指令入力機器52は、少なくとも、水電解スタック12の起動指令または水電解スタック12の停止指令を入力可能な機器である。指令入力機器52は、レバー式オンオフスイッチであってもよい。
【0024】
制御装置22は、1以上のプロセッサと、記憶媒体とを含む。記憶媒体は、揮発性メモリと不揮発性メモリとによって構成され得る。プロセッサとしては、CPU、MCU等が挙げられる。揮発性メモリとしては、例えばRAM等が挙げられる。不揮発性メモリとしては、例えばROM、フラッシュメモリ等が挙げられる。コンピュータが実行可能な指令をプロセッサが実行することによって、制御装置22は、複数の機器を制御する。複数の機器は、電源装置16と、水供給器18と、水温調整器20とを含む。
【0025】
水電解スタック12を起動する起動指令を受けると、制御装置22は、起動処理を開始する。図2は、起動処理の手順を示すフローチャートである。水電解スタック12が起動する前の状態(停止状態)では、電源装置16と、水供給器18と、水温調整器20とは停止している。
【0026】
ステップS1において、制御装置22は、水供給器18を制御して、水供給路40と水排出路42との間で水を循環させながら水電解スタック12に水を供給する。この場合、各単位セル30の膜・電極構造体32に電流が供給されていない。そのため、各単位セル30では、水電解は実質的に行われない。
【0027】
ステップS2において、制御装置22は、水温調整器20を制御して、水電解スタック12に供給される水の温度を、起動温度に調整する。起動温度は、水電解スタック12の起動時の目標温度として、予め記憶媒体に記憶される。起動温度は、水電解スタック12での水電解効率が良好となる所定の温度よりも低く設定される。例えば、起動温度は、30℃である。起動温度は、20℃~70℃の範囲のなかから選択される。制御装置22は、温度センサ48によって検出される水の温度と、起動温度との偏差が所定値以下になると、ステップS3に移行する。
【0028】
ステップS3において、制御装置22は、電源装置16を制御して、膜・電極構造体32に供給される電流の電流値を、零から定格値まで一気に上げる。すなわち、制御装置22は、膜・電極構造体32に供給される電流値を、瞬時に上げる。換言すると、制御装置22からの電流指令値は、徐々に電流を上げる指令値ではなく、定格値の指令値を電源装置16に出力する。したがって、膜・電極構造体32に供給される電流の電流値が、段階的に上がるように制御されることはない。なお、「一気に」または「瞬時に」とは、電流値が零から定格値になるまでの時間が2秒以下である場合を意味する。また、電流値が零とは、イオン交換しない程度の微弱電流が膜・電極構造体32に供給されている場合を含む。
【0029】
膜・電極構造体32に供給される電流が零から定格値まで一気に上げられると、各単位セル30のアノード電極36に連通する流路上の水素ガス量が少ない。このことは、実験結果から明らかになっている。このような実験結果が得られたのは、次の理由が考えられる。
【0030】
すなわち、本実施形態では、水電解スタック12に供給される水の温度が、水電解効率が良好となる所定の温度よりも低く調整される(ステップS2)。そのため、水の温度が所定の温度より高い場合に比べると、カソード電極38に発生する水素ガスの量が減少する。その結果、水素ガスが電解質膜34を通過してアノード電極36に移動する量が減少する。一方、水の温度が所定の温度より低く調整されると、カソード電極38から電解質膜34を通過してアノード電極36に移動する水酸化物イオンOHが減少する。
【0031】
また、本実施形態では、膜・電極構造体32に供給される電流が零から定格値まで一気に上げられる。したがって、アノード電極36に移動する水酸化物イオンOHが減少しても、アノード電極36に発生する単位時間あたりの酸素ガス量は、膜・電極構造体32に供給される電流が徐々に上がる場合に比べると多くなる。
【0032】
つまり、アノード電極36で発生する酸素ガスに対して、当該アノード電極36に移動する水素ガスの相対量が減少する。その結果、各単位セル30のアノード電極36に連通する流路上の水素ガス量が少なくなると考えられる。
【0033】
制御装置22は、膜・電極構造体32に供給される電流値を一気に上げると、ステップS4に移行する。ステップS4において、制御装置22は、圧力センサ50によって検出される圧力を所定の第1閾値と比較する。第1閾値は、起動処理の際に圧力センサ50によって検出される圧力と比較される閾値である。第1閾値は、制御装置22の記憶媒体に予め記憶される。
【0034】
圧力が第1閾値以下である場合、制御装置22は、ステップS4に留まる。一方、圧力が第1閾値を超えると、制御装置22は、ステップS5に移行する。ステップS5において、制御装置22は、水温調整器20を制御して、水電解スタック12に供給される水の温度を、起動温度よりも高くする。この場合、水温調整器20は、水電解スタック12に供給される水を加熱する。これにより、電解質膜34を移動する水酸化物イオンOHの移動速度が高くなり、その結果、水電解スタック12での水電解効率が高められる。つまり、水の電解により発生するガス量の挙動によって電解効率を調整することができる。
【0035】
制御装置22は、温度センサ48によって検出される温度が起動温度よりも高いことを確認すると、起動処理を終了する。
【0036】
制御装置22は、上述の起動処理を終了すると、定常運転処理を開始する。定常運転処理では、水電解スタック12に供給される水の温度が、起動温度より高い所定の温度(通常温度)で保持される。また、定常運転処理では、水電解スタック12の膜・電極構造体32に供給される電流が定格値で保持される。
【0037】
水電解スタック12を停止する停止指令を受けると、制御装置22は、停止処理を開始する。この場合、制御装置22は、電源装置16を制御して、膜・電極構造体32に供給される電流値を徐々に小さくする。これに加えて、制御装置22は、水温調整器20を制御して、水電解スタック12に供給される水の温度を徐々に下げる。
【0038】
これにより、電解質膜34を移動する水酸化物イオンOHの移動速度が徐々に遅くなり、また、アノード電極36で発生する酸素ガス量が減少する。したがって、酸素供給路44の酸素ガスが徐々に減圧される。その結果、急激に酸素ガスが減圧される場合に比べて、カソード電極38から電解質膜34を通過した水素ガスが酸素ガスに混入することを抑制することができる。その結果、減圧された高純度の酸素ガスの用途が広がる。また、急激に酸素ガスが減圧される場合に比べて、電解質膜34の負荷を低減することができる。
【0039】
その後、圧力センサ50によって検出される圧力が所定の第2閾値以下になると、制御装置22は、水供給器18を停止し、停止処理を終了する。第2閾値は、停止処理の際に圧力センサ50によって検出される圧力と比較される閾値である。第2閾値は、制御装置22の記憶媒体に予め記憶される。第2閾値は、上記第1閾値と同じであってもよいし、上記第1閾値よりも小さくてもよい。
【0040】
上記の実施形態は、下記のように変形されてもよい。
【0041】
例えば、ステップS4において、制御装置22は、膜・電極構造体32への電流の供給を開始してからの時間を計時してもよい。この場合、膜・電極構造体32への電流の供給を開始してから所定の時間が経過すると、制御装置22は、ステップS5に移行する。
【0042】
このように、膜・電極構造体32への電流の供給を開始してから所定の時間が経過すると、制御装置22は、水電解スタック12に供給される水の温度を起動温度よりも高くすることができる。この場合、圧力センサ50によって検出される圧力が所定の閾値と比較することが回避される。そのため、実施形態の場合に比べて、制御装置22の負荷を軽減することができる。
【0043】
また例えば、水電解スタック12に供給される水の供給源は、上記実施形態では気液分離器14であったが、これに限定されない。例えば、水の供給源は、水タンクであってもよい。或いは、水の供給源は、水処理施設に接続される水供給配管であってもよい。
【0044】
また例えば、電解システム10は、上記実施形態ではAEM水電解システムであったが、これに限定されない。例えば、電解システム10は、PEM水電解システムであってもよい。なお、AEM水電解システムの場合、上述のように、アニオン交換膜である電解質膜34を含む膜・電極構造体32が水電解スタック12に備えられる。一方、PEM水電解システムの場合、プロトン交換膜である電解質膜34を含む膜・電極構造体32が水電解スタック12に備えられる。
【0045】
上記実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0046】
(付記1)
本開示は、電解質膜(34)と、アノード電極(36)と、カソード電極(38)とを含む膜・電極構造体(32)が備えられた水電解スタック(12)に水を供給する水供給器(18)と、前記水電解スタックに供給される前記水の温度を調整する水温調整器(20)と、前記膜・電極構造体に電流を供給する電源装置(16)と、を制御する制御装置(22)であって、コンピュータが実行可能な指令を実行する一以上のプロセッサを備え、前記水電解スタックを起動する前記指令を受けると、前記水供給器および前記水温調整器を制御して、所定の温度よりも低い温度の前記水を前記水電解スタックに供給し、その後、前記電源装置を制御して、前記膜・電極構造体に供給される電流の電流値を、零から定格値まで一気に上げる。
【0047】
これにより、酸素ガスに対して、電解質膜を透過する水素ガスの相対量を減少させることができる。その結果、水の電解によって発生する水素ガスと、当該水の電解によって発生する酸素ガスとの混合を低減することができる。
【0048】
(付記2)
本開示は、付記1に記載の制御装置であって、前記膜・電極構造体への前記電流の供給が開始された後に、前記アノード電極に連通する流路に設けられた圧力センサ(50)によって検出される圧力が閾値を超えると、前記水温調整器を制御して、前記水電解スタックに供給される前記水の温度を、前記所定の温度よりも高くしてもよい。これにより、水の電解により発生するガス量の挙動によって電解効率を調整することができる。
【0049】
(付記3)
本開示は、付記1に記載の制御装置であって、前記膜・電極構造体への前記電流の供給を開始してから所定の時間が経過すると、前記水温調整器を制御して、前記水電解スタックに供給される前記水の温度を、前記所定の温度よりも高くしてもよい。これにより、圧制御装置の負荷を軽減しながら、水の電解により発生するガス量の挙動によって電解効率を調整することができる。
【0050】
(付記4)
本開示は、付記1~付記3のいずれかに記載の制御装置であって、前記水電解スタックを停止する前記指令を受けると、前記電源装置を制御して、前記電流値を徐々に小さくするとともに、前記水温調整器を制御して、前記水の温度を徐々に下げてもよい。これにより、水の電解を徐々に停止させることができる。その結果、水の電解を直ちに停止させる場合に比べて、水の電解によって発生する水素ガスと、当該水の電解によって発生する酸素ガスとの混合を低減することができる。
【0051】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0052】
10…電解システム 12…水電解スタック
14…気液分離器 16…電源装置
18…水供給器 20…水温調整器
22…制御装置 30…単位セル
32…膜・電極構造体 34…電解質膜
36…アノード電極 38…カソード電極
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-04-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
酸素供給路44には、圧力制御弁46が設けられる。圧力制御弁46は、各単位セル30のアノード電極36で発生する酸素ガスの圧力を、例えば1~100MPaといった所定の圧力に維持する。各単位セル30では、電解質膜34を介してアノード電極36とカソード電極38とで大きい差圧が生じる。この差圧により、アノード電極36で発生した水の大部分は、電解質膜34を通じてカソード電極38に戻される。これに加えて、カソード電極38で発生した水素ガスが電解質膜34を通過してアノード電極36に移動するクロスリークが低減される。なお、圧力制御弁46として、開度を調整可能なソレノイド弁、或いは、背圧弁等が挙げられる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
(付記1)
本開示は、電解質膜(34)と、アノード電極(36)と、カソード電極(38)とを含む膜・電極構造体(32)が備えられた水電解スタック(12)に水を供給する水供給器(18)と、前記水電解スタックに供給される前記水の温度を調整する水温調整器(20)と、前記膜・電極構造体に電流を供給する電源装置(16)と、を制御する制御装置(22)であって、コンピュータが実行可能な指令を実行する一以上のプロセッサを備え、前記水電解スタックを起動する前記指令を受けると、前記水供給器および前記水温調整器を制御して、所定の温度よりも低い温度の前記水を前記水電解スタックに供給し、その後、前記電源装置を制御して、前記膜・電極構造体に供給される前記電流の電流値を、零から定格値まで一気に上げる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
(付記3)
本開示は、付記1に記載の制御装置であって、前記膜・電極構造体への前記電流の供給を開始してから所定の時間が経過すると、前記水温調整器を制御して、前記水電解スタックに供給される前記水の温度を、前記所定の温度よりも高くしてもよい。これにより、制御装置の負荷を軽減しながら、水の電解により発生するガス量の挙動によって電解効率を調整することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と、アノード電極と、カソード電極とを含む膜・電極構造体が備えられた水電解スタックに水を供給する水供給器と、
前記水電解スタックに供給される前記水の温度を調整する水温調整器と、
前記膜・電極構造体に電流を供給する電源装置と、
を制御する制御装置であって、
コンピュータが実行可能な指令を実行する一以上のプロセッサを備え、
前記水電解スタックを起動する前記指令を受けると、前記水供給器および前記水温調整器を制御して、所定の温度よりも低い温度の前記水を前記水電解スタックに供給し、その後、前記電源装置を制御して、前記膜・電極構造体に供給される前記電流の電流値を、零から定格値まで一気に上げる、制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記膜・電極構造体への前記電流の供給が開始された後に、前記アノード電極に連通する流路に設けられた圧力センサによって検出される圧力が閾値を超えると、前記水温調整器を制御して、前記水電解スタックに供給される前記水の温度を、前記所定の温度よりも高くする、制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記膜・電極構造体への前記電流の供給を開始してから所定の時間が経過すると、前記水温調整器を制御して、前記水電解スタックに供給される前記水の温度を、前記所定の温度よりも高くする、制御装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記水電解スタックを停止する前記指令を受けると、前記電源装置を制御して、前記電流値を徐々に小さくするとともに、前記水温調整器を制御して、前記水の温度を徐々に下げる、制御装置。