IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

特開2024-140304屋内用エネルギーハーベスティング装置
<>
  • 特開-屋内用エネルギーハーベスティング装置 図1
  • 特開-屋内用エネルギーハーベスティング装置 図2
  • 特開-屋内用エネルギーハーベスティング装置 図3
  • 特開-屋内用エネルギーハーベスティング装置 図4
  • 特開-屋内用エネルギーハーベスティング装置 図5
  • 特開-屋内用エネルギーハーベスティング装置 図6
  • 特開-屋内用エネルギーハーベスティング装置 図7
  • 特開-屋内用エネルギーハーベスティング装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140304
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】屋内用エネルギーハーベスティング装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241003BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/35 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051390
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】染谷 拓
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】村本 充広
(72)【発明者】
【氏名】大内 弘世
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA06
5G503BA04
5G503BB03
5G503CA11
5G503DA13
5G503DA18
(57)【要約】
【課題】本発明により、ESRの大きいEDLCを用い、発電量が微弱な環境下でも、充電を可能にし、且つ充電時間を短縮しつつアプリケーションの稼働を可能にする屋内用エネルギーハーベスティング装置を提供する。
【解決手段】本発明の屋内用エネルギーハーベスティング装置は、発電素子と電力制御部と蓄電部とを備える。前記電力制御部は、負荷への出力を制御する出力部を有する。前記蓄電部は、前記発電素子と前記出力部の間に接続され、前記発電素子の発電電力により充電される。前記蓄電部は、第1の蓄電デバイスと、第2の蓄電デバイスと、を有する。前記第1の蓄電デバイスは、少なくとも1つのEDLCを含む。前記第2の蓄電デバイスは、前記第1の蓄電デバイスより充電容量が小さく、かつ、前記第1の蓄電デバイスよりESRが小さい。前記第2の蓄電デバイスは、前記第1の蓄電デバイスと並列接続状態に設けられた。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電素子と電力制御部と蓄電部とを備える屋内用エネルギーハーベスティング装置であって、
前記電力制御部は、負荷への出力を制御する出力部を有し、
前記蓄電部は、前記発電素子と前記出力部の間に接続され、前記発電素子の発電電力により充電され、
前記蓄電部は、第1の蓄電デバイスと、第2の蓄電デバイスと、を有し、
前記第1の蓄電デバイスは、少なくとも1つの電気2重層キャパシタを含み、
前記第2の蓄電デバイスは、前記第1の蓄電デバイスより充電容量が小さく、かつ、前記第1の蓄電デバイスよりESR(等価直列抵抗)が小さく、
前記第2の蓄電デバイスは、前記第1の蓄電デバイスと並列接続状態に設けられたことを特徴とする
屋内用エネルギーハーベスティング装置。
【請求項2】
前記電力制御部は、前記蓄電部の電圧が、第1の閾値電圧を超えると、前記負荷へ前記出力部より電力の供給が開始され、
前記蓄電部の電圧が、第2の閾値電圧を下回ると、前記負荷への電力の供給が停止させるように制御することを特徴とする、請求項1に記載の屋内用エネルギーハーベスティング装置。
【請求項3】
前記第2の蓄電デバイスは、少なくとも1つの積層セラミックコンデンサを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の屋内用エネルギーハーベスティング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内用エネルギーハーベスティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、周囲の環境から未利用のエネルギーを集めて電力に変換する環境発電技術の開発が盛んになっている。この中に、電波、室内光、振動、熱(温度差が必要)などの身の回りに存在する微小なエネルギーを活用したエネルギーハーべスティング(環境発電技術)が挙げられる。この技術を利用したエネルギーハーベスティング装置は、電子回路や無線技術の低消費電力化により、周囲の環境から電気エネルギーを得ることで、配線や電池交換なしで動作する、ワイヤレスセンサやリモコンスイッチに応用できるため、注目されている。また、室内光のような低照度の環境下で太陽電池を発電させて、発電した電力を蓄電池に蓄積し、この蓄積した電力により負荷装置を駆動する試みがなされている。この場合、蓄電池としては、大容量でリーク電流の小さいことから、リチウムイオンキャパシタを用いることが望まれる。
例えば、特許文献1には、発電素子として室内光のような低照度の環境下でも発電できる太陽電池と、リチウムイオンキャパシタ(LIC)及び電気二重層キャパシタ(EDLC)を備える蓄電部とを備える蓄電システムが記載されている。この蓄電システムは、LICとEDLCの並列接続状態と直列接続状態とを選択的に設定するスイッチ部を設けることにより、発電素子が発電を行う場合に、短時間で負荷装置の動作を復帰させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6127108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の蓄電部として使用されているLICとEDLCは、ESR(等価直列抵抗)が大きい。そのため、負荷(例えば、環境モニターなどのアプリケーション)の起動時の突入電流のピーク電流による電圧降下が大きく、必要な電圧の維持が一時的に保てなくなり、起動できなくなる問題があった。起動時の電圧降下を抑制する為に、蓄電部は充電容量を大きくする、ESRの小さい蓄電部で構成する必要がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、本発明のエネルギーハーベスティング装置を用いることにより、ESRの大きいEDLCを用い、発電量が微弱な環境下でも、充電を可能にし、且つ充電時間を短縮しつつアプリケーションの稼働を可能にする屋内用エネルギーハーベスティング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明によれば、以下のものが提供される。
〔1〕 発電素子と電力制御部と蓄電部とを備える屋内用エネルギーハーベスティング装置であって、
前記電力制御部は、負荷への出力を制御する出力部を有し、
前記蓄電部は、前記発電素子と前記出力部の間に接続され、前記発電素子の発電電力により充電され、
前記蓄電部は、第1の蓄電デバイスと、第2の蓄電デバイスと、を有し、
前記第1の蓄電デバイスは、少なくとも1つの電気2重層キャパシタを含み、
前記第2の蓄電デバイスは、前記第1の蓄電デバイスより充電容量が小さく、かつ、前記第1の蓄電デバイスよりESR(等価直列抵抗)が小さく、
前記第2の蓄電デバイスは、前記第1の蓄電デバイスと並列接続状態に設けられたことを特徴とする
屋内用エネルギーハーベスティング装置。
〔2〕 前記電力制御部は、前記蓄電部の電圧が、第1の閾値電圧を超えると、前記負荷へ前記出力部より電力の供給が開始され、
前記蓄電部の電圧が、第2の閾値電圧を下回ると、前記負荷への電力の供給が停止させるように制御することを特徴とする、〔1〕に記載の屋内用エネルギーハーベスティング装置。
〔3〕 前記第2の蓄電デバイスは、少なくとも1つの積層セラミックコンデンサを含むことを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の屋内用エネルギーハーベスティング装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、ESRの大きいEDLCを用い、発電量が微弱な環境下でも、充電を可能にし、且つ充電時間を短縮しつつアプリケーションの稼働を可能にする屋内用エネルギーハーベスティング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る屋内用エネルギーハーベスティング装置の回路構成を示すグロック図である。
図2】本発明の一実施形態の屋内用エネルギーハーベスティング装置のおけるスイッチ制御の説明図である。
図3】実施例1のEDLCの放電特性及び屋内用エネルギーハーベスティング装置の出力特性を示す図である。
図4】実施例1のEDLCの充電特性を示す図である。
図5】比較例1のEDLCの放電特性及び屋内用エネルギーハーベスティング装置の出力特性を示す図である。
図6】比較例1のEDLCの充電特性を示す図である。
図7】比較例3のタンタル電解コンデンサの充電特性を示す図である。
図8】比較例4のEDLCの放電特性及び屋内用エネルギーハーベスティング装置の出力特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。
【0009】
(屋内用エネルギーハーベスティング装置)
図1は、本発明の一実施形態に係る屋内用エネルギーハーベスティング装置(本実施形態のエネルギーハーベスティング装置ともいう)100の回路構成を示すグロック図である。本実施形態のエネルギーハーベスティング装置100は、発電素子10と電力制御部50と蓄電部30とを備える。前記電力制御部50は、外部の負荷200への出力を制御する出力部54を有する。前記蓄電部30は、前記発電素子10と前記出力部54との間に接続され、前記発電素子10の発電電力により充電される。前記蓄電部30は、第1の蓄電デバイス32と、第2の蓄電デバイス34と、を有する。前記第1の蓄電デバイス32は、少なくとも1つの電気2重層キャパシタ(EDLC)を含む。前記第2の蓄電デバイス34は、前記第1の蓄電デバイス32より充電容量が小さく、かつ、前記第1の蓄電デバイス32よりESR(等価直列抵抗)が小さい。また、前記第2の蓄電デバイス34は、前記第1の蓄電デバイス32と並列接続状態に設けられたことを特徴とする。
前記第2の蓄電デバイス34は、少なくとも1つの積層セラミックコンデンサを含むことが好ましい。また、前記電力制御部50は、前記蓄電部30の電圧が、第1の閾値電圧(A)を超えると、前記負荷200へ前記出力部54より電力の供給が開始され;前記蓄電部30の電圧が、第2の閾値電圧(B)を下回ると、前記負荷200への電力の供給が停止させるに制御することが好ましい。
【0010】
上記負荷200は、前記出力部54と通して本実施形態のエネルギーハーベスティング装置100と接続されている。その他の電気配線や電池交換なしで動作することができるデバイスであれば特に限定されない。例えば、センサ、アクチュエータ、タイマー、及び無線トランシーバー/レシーバーがあげられ、必要に応じて組合せて使用される。その中には、ワイヤレスセンサやリモコンスイッチが好ましい。
ワイヤレスセンサの一例としては、温度や湿度などをセンサにより測定し、無線通信により測定データを送信する環境モニター装置などが挙げあれる。そのような環境モニター装置の低消費電力化として、測定及び送信時後、スリープ状態に移行し、一定の時間間隔で再起動して測定・送信を繰り返して、待機電力を抑える方法などがあり、一回の測定・送信に消費する電力は小さくなっている。また、低電圧駆動化が進んでおり、例えば、1.8V程度で動作するCPUやICなどが搭載された環境モニター装置がある。その結果、測定・送信動作の数回分の消費電力を賄うには、本実施形態に係る蓄電部は、それほど大きな(1ファラッド以上など)容量や、5V程度の電圧は必要なくても対応可能となりつつある。
【0011】
上記負荷200の具体例としては、例えば、Subギガ帯送信機能付き温湿度センサーモジュールが挙げられる。
【0012】
〔発電素子〕
本実施形態に係る発電素子30の種類は、屋内においても、周囲の環境から電気エネルギーを得ることができれば特に限定されない。電波、室内光、振動、熱(温度差が必要)などの身の回りに存在する微小なエネルギーから電気エネルギーを活用したマイクロ環境発電技術が得る発電素子が挙げられる。例えば、光を電気に変換する素子、電波を電気に変換する素子、振動等の機械的な動作を電気に変換する素子、温度差のある熱を電気に変換する素子等があげられる。
【0013】
光を電気に変換する素子としては、アモルファスシリコン太陽電池や色素増感太陽電池等の太陽電池があげられる。電波を電気に変換する素子としては、マイクロ波を直流電流に変換するレクテナ等が挙げられる。振動等の機械的な動作を電気に変換する素子としては、圧電素子、電磁誘導素子、エレクトレット素子等が挙げられる。温度差のある熱を電気に変換する素子としては、ゼーベック素子、ペルチェ素子等があげられる。
その中において、太陽電池が好ましく、蛍光灯やLED照明といった屋内光から電気エネルギーへ変換でき、屋内の低照度下(JIS照度基準、1000lx以下、好ましく500lx以下)でも、効率よく電気エネルギーへ変換できるアモルファスシリコン太陽電池が好ましい。太陽電池は、受光面側に配列された複数の太陽電池セルを直列に接続し、所定の出力電圧Vsが得られるように構成されている。
【0014】
本実施形態に係る発電素子30が太陽電池である場合、その最大出力動作電圧は、例えば、1000lx以下の環境で2.0~5.0Vであることが好ましく、開放電圧は、6.0V以下がより好ましい。
【0015】
本実施形態に係る発電素子30の具体例として、例えば、およそ14平方センチメートル(凡そ名刺サイズの1/4)の太陽電池が挙げられる。このような太陽電池を用いる場合、照度500lxの屋内光での発電電力は数100μW程度である(5μW/cm)。
【0016】
〔蓄電部〕
本実施形態に係る蓄電部30は、図1に示すように、第1の蓄電デバイス32と第1の蓄電デバイス34とを並列接続してからなるものである。第1の蓄電デバイス32が1つ又は1つ以上のEDLCを含む。第1の蓄電デバイス32が1つのEDLCを含むことが好ましい。
電気二重層キャパシタ(EDLC)は、電気二重層という物理現象を利用することで蓄電量が著しく高められたコンデンサ(キャパシタ)である。EDLCはウルトラ・キャパシタ(英:ultracapacitor)やスーパー・キャパシタ(英:supercapacitor)とも呼ばれる。
【0017】
本実施形態に係るEDLCは、少なく1つの電極において、電気二重層という物理現象を利用して蓄電量が高められる蓄電デバイスであれば、特に限定されない。本実施形態に係るEDLCは、正極と負極のいずれにおいても、電気二重層という物理現象を利用して蓄電量が高められる蓄電デバイスであることが好ましい。EDLCが積層セラミックコンデンサに比べ、特に小容量なEDLCはESR,インピーダンスが大きい。しかし、特許文献1のリチウムイオンキャパシタ(LIC)に比べてEDLCは、完全放電が可能であり、下限電圧に制限がない。そのため、過放電防止の制御回路は必要ない。
本実施形態に係るEDLCは、完全放電が可能であり、下限電圧に制限がない電気二重層キャパシタであることより好ましい。過放電防止の制御回路は必要ないため、本実施形態の屋内用エネルギーハーベスティング装置に構成することが好適であるからである。
【0018】
本実施形態に係るEDLCは、アプリケーションによって、静電容量が異なる、さまざまなタイプのものを用いることができる。例えば、100mF以下程度の小容量である、小型のコイン型やラミネート型から、100F以上の大容量である、円筒型・角型などを多数接続した大型モジュールなどが挙げられる。本実施形態に係る発電素子を用いて、適正な充電時間になる観点から、100mF以下程度の小容量型が好ましい。50mF以下程度の小容量型がより好ましい。20mF以下程度の小容量型がより好ましい。本実施形態の屋内用エネルギーハーベスティング装置と接続する負荷200が、問題なく動作し、本実施形態に係る発電素子を用いて、適正な充電時間の観点から、本実施形態に係るEDLCの容量は、0.1mF以上であること好ましく、0.5mF以上であることより好ましい。1mF以上であることが更に好ましい。
【0019】
本実施形態に係るEDLCの具体例として、静電容量が5mFであり、ESRが5Ωであり、25℃での漏れ電流のMAX値が2μAで、27mm×17mmのEDLCを使用した。
【0020】
本実施形態に係ると第2の蓄電デバイス34は、第1の蓄電デバイス32としてのEDLCより充電容量が小さく、かつ、ESR(等価直列抵抗)が小さければ、その種類が特に限定されない。
【0021】
本実施形態に係る第2の蓄電デバイス34は、積層セラミックコンデンサ(MLCC)及びタンタルポリマーキャパシタからなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。前記第2の蓄電デバイスは、少なくとも1つの積層セラミックコンデンサを含むことがより好ましい。
【0022】
積層セラミックコンデンサ(MLCC)は、例えば、酸化チタンやチタン酸バリウムなどの誘電体と電極を、多数積み重ねたチップタイプのセラミックコンデンサである。チップのサイズ、積層厚み、積層数などによって、数pF~500μFの静電容量を有するMLCCが得られる。
本実施形態に係るMLCCは、第1の蓄電デバイス32としてのEDLCの充電容量より、静電容量が小さく、EDLCよりESRが小さければ、特に限定されない。本実施形態に係る屋内用エネルギーハーベスティング装置のアプリケーションの観点から、10μF~500μFであることが好ましく、20μF~300μFであることがより好ましく、50μF~200μFであることが更に好ましい。
本実施形態に係るMLCCの具体例としては、例えば、静電容量が100μFであり、ESRが2mΩ(100kHz)であり、25℃での漏れ電流のMAX値が10μAであり、サイズが3.2mm×1.6mm×1.6mmであるMLCCが挙げられる。
【0023】
タンタルポリマーキャパシタ(タンタルポリマーコンデンサ)は、陰極層に導電性高分子(導電性ポリマー)を採用することにより、従来の二酸化マンガンタイプのチップタンタルコンデンサよりも低いESR(等価直列抵抗)を実現させた導電性高分子チップタンタルコンデンサである。1μF~1500μFの静電容量を有する。
本実施形態に係るタンタルポリマーキャパシタは、第1の蓄電デバイス32としてのEDLCの充電容量より、静電容量が小さく、EDLCよりESRが小さければ、特に限定されない。本実施形態に係る屋内用エネルギーハーベスティング装置のアプリケーションの観点から、10μF~500μFであることが好ましく、20μF~300μFであることがより好ましく、50μF~200μFであることが更に好ましい。
本実施形態に係るタンタルポリマーキャパシタの具体例としては、例えば、静電容量が100μFであり、ESRが70mΩ(100kHz)であり、25℃での漏れ電流のMAX値が100μA(10V、25℃)で、サイズが3.5mm×2.8mm×1.9mmであるタンタルポリマーキャパシタを使用した。
【0024】
本実施形態にかかる蓄電部30は、好ましく、EDLCとMLCCとを含み、かつ、EDLCとMLCCとが並列接続されることが好ましい。EDLCの充電容量が1mF~200mFであり、MLCCの静電容量が10μF~500μFであることがより好ましい。
また、本実施形態の蓄電部30は、EDLCとタンタルポリマーキャパシタとを含み、EDLCとタンタルポリマーキャパシタとが並列で電気接続されてもよい。その場合、EDLCの充電容量が1mF~200mFであり、タンタルポリマーキャパシタの静電容量が10μF~500μFであることが好ましい。
【0025】
〔電力制御部〕
本実施形態に係る電力制御部50は、電圧監視回路52と、入力部55と、出力部54と、スイッチ(S1)56と、スイッチ(S2)58とを含むことが好ましい。
電圧監視回路52は、蓄電部30の両端の電圧を検出する回路である。出力部54は、本実施形態の屋内用エネルギーハーベスティング装置を負荷200に接続させ、負荷200に電力を供給する構成である。スイッチ(S1)56は、出力部54の導通を制御するスイッチである。スイッチ(S2)55は、入力部55の導通を制御するスイッチである。
スイッチ(S1)56を開放(OFF)し、かつ、スイッチ(S2)55を短絡(ON)した場合、発電素子10と蓄電部30とを接続する。発電素子10から蓄電部30への充電を開始する。スイッチ(S1)56を短絡し(ON)した場合、蓄電部30と負荷200とを接続する。蓄電部30から負荷への放電を開始し、負荷が動作を開始する。この時、発電素子10が発電しているおり、蓄電部30が過充電にならない範囲において、発電素子10で発電される電力も蓄電部30から放電される電力と負荷200へ供給される。
【0026】
図2は本発明の一実施形態の屋内用エネルギーハーベスティング装置のおけるスイッチ制御の説明図である。横軸が時間であり、縦軸が蓄電部30の端子間の電圧(上段)及び出力部54の電圧(下段)である。太陽電池が所定の発電を開始する。その時刻をT0とする。電力制御部50による制御により発電素子10と蓄電部30を接続する。この時、蓄電部30と出力部54を接続するスイッチ(S1)55は開放(OFF)状態である。発電素子10が発電した電力は、蓄電部30に充電し、蓄電部30の電圧が所定の第1の閾値電圧(A、例えば、3.3V)に達する。その時刻がT1とする。時刻T1において、電力制御部50の蓄電部30と出力部54を接続するスイッチ1(S1)が短絡(ON)し、蓄電部30に充電された電力は、出力部54を介して負荷200側へ供給開始する。蓄電部30の電圧が所定の第2の閾値電圧(B、例えば、2.1V)を下回る。その時刻がT2とする。時刻T2において、スイッチ(S1)56を開放し、出力部54を介して負荷側200への電力供給を停止する。尚、時刻T1において、負荷200が接続していない場合、一旦、スイッチ(S2)55を開放し、蓄電部30の過充電を防止する。蓄電部30の自己放電などで、蓄電30が所定の再充電開始電圧(例えば、第1の閾値電圧Aの95%)まで低下すると、再びスイッチ(S2)55を短絡(ON)し、蓄電部30への充電を開始する。この過放電防止は、負荷200がせつぞくされていても負荷200の消費電力が著しく小さく、再充電開始電圧まで低下しない場合にも行われる。
【0027】
第1の閾値電圧(A)と第2の閾値電圧(B)の値は、アプリケーション、発電素子10、蓄電部30、負荷200に基づいて適宜で選択すればよく、特に限定されない。例えば、発電素子10が太陽電池であり;蓄電部30は、EDLCとMLCCとを含み、EDLCの充電容量が1mF~200mFであり、MLCCの静電容量が10μF~500μFである場合、第1の閾値電圧(A)が3.0~3.3Vになり、第1の閾値電圧(A)が1.8~2.5Vになるように、設定することが好ましい。
【0028】
本実施形態にかかる電圧監視回路52は、蓄電部30の両端の電圧を検出し、スイッチ1(S1)56及びスイッチ1(S2)55を制御することができれば、特に限定されない。公知の方法で用いることができる。
【0029】
本実施形態にかかるスイッチ1(S1)56及びスイッチ1(S2)55としては、機械式接点を用いたスイッチで構成される例を示している。スイッチは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体スイッチング素子を用いた半導体スイッチを含んで構成されていてもよい。
【実施例0030】
以下本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
実施例1の屋内用エネルギーハーベスティング装置は、図1に示すように、発電素子と電力制御部と蓄電部とを備えた。本実施例の蓄電部は、発電素子と電力制御部の出力部との間に設けられ、並列電気接続された第1の蓄電デバイスと第2の蓄電デバイスを備えた。
本実施例の発電素子として、6セルタイプの太陽電池で、大きさが14平方センチメートル(凡そ名刺サイズの縦横長さ寸法の半分、面積1/4)の太陽電池を用いた。照度500lxの屋内光での発電電力は、動作電圧2.6Vの時の動作電流がおよそ90μA程度であった(18μW/cm)。
【0032】
本実施例の第1の蓄電デバイスとして、静電容量が5mFであり、ESRが5Ω(100kHz)であり、25℃での漏れ電流のMAX値が2μAであるEDLC(サイズ:27x17x0.4mm)が使用された。
本実施例の第2の蓄電デバイスとして、静電容量が100μFであり、ESRが2mΩ(100kHz)であり、25℃での漏れ電流のMAX値が10μA/10VであるMLCC(サイズ:3.2mm×1.6mm×1.6mm)が使用された。
【0033】
第1の蓄電デバイスと第2の蓄電デバイスとを合わせた蓄電部の実装面積は、30mmx20mmで、実装高さは、1.6mm(第2の蓄電デバイス高さ)あった。
本実施例の電力制御部は、蓄電部の両端の電圧を検出する電圧監視回路と、電力制御部の出力部の導通を制御するスイッチ(S1)56と、電力制御部の入力部と、蓄電部及び出力部を制御するスイッチ(S1)56への導通を制御するスイッチ(S2)55を備えた。
【0034】
本実施例の負荷として、Subギガ帯送信機能付き温湿度センサーモジュールを用いた。
この温湿度センサーモジュールは、温湿度の測定と測定データ送信を凡そ15msで行い、この時の平均消費電流は20mA程度である。1回の測定・測定データ送信後にスリープモードに入り、低消費電力化している。スリープモード時の待機電流は2μA以下であり、測定・測定データ送信の間隔は1分で実施した。
【0035】
本実施例の屋内用エネルギーハーベスティング装置を室内に配置した。測定した屋内の照度を分光放射照度計で測定した。屋内光の照度が500lxであった。図2に示すように、太陽電池が所定の発電を開始し、電力制御部による制御により太陽電池と蓄電部を接続した。この時、蓄電部と出力部を接続するスイッチ(S1)56は開放状態であった。蓄電部へ発電された電力が充電され、蓄電部の電圧が所定の第1の閾値電圧(A=3.3V)に達する(T1)と、電力制御部の蓄電部と出力部を接続するスイッチ(S1)が短絡し、蓄電部に充電された電力の供給を出力部54を介して負荷側へ供給開始した。一定時間後、蓄電部の電圧が所定の第2の閾値電圧(B=2.1V)を下回った(T2)。そのとき、スイッチ(S1)56を開放し、出力部54を介して負荷200側への電力供給を停止した。本実施例の屋内用エネルギーハーベスティング装置の構成を表1にまとめた。
【0036】
<動作の評価>
本実施例の屋内用エネルギーハーベスティング装置の出力特性を図3に示す。
図3に示すように、第1の閾値電圧(A=3.3V)に達して出力開始(負荷起動)し、負荷200に起因する突入電流により蓄電部30の端子間において電圧降下が発生するが、第1の蓄電デバイスよりESRの小さい第2の蓄電デバイスにより、電圧降下を抑制し、第2の閾値電圧(2.1V)以上を確保することで、センサーモジュール初期化・測定・送信を正常に動作した。
動作の評価結果は、以下の基準で判断し、その結果を表1に示す。
〇:電圧降下を抑制し、センサーモジュール初期化・測定・送信を正常に動作した場合。
×:電圧降下によって、センサーモジュール初期化・測定・送信を正常に動作しなかった場合。
【0037】
<充電時間の評価>
本実施例の屋内用エネルギーハーベスティング装置の充電特性を図4に示す。5mFまで充電時間が約32分であった。
充電時間の測定値から、以下の基準で評価し、その結果は表1に示す。
〇:時間が35分(実施例1及び実施例2)以下である。
×:時間が35分を超える。
【0038】
<実装面積の評価>
本実施例の実装高さは、以下の基準で判断し、その結果を表1に示す。
〇:蓄電部実装高さが2mm以下である。
×:蓄電部実装高さが2mmを超える。
【0039】
(実施例2)
本実施例の屋内用エネルギーハーベスティング装置は、本実施例の第2の蓄電デバイスとして、静電容量が100μFであり、ESRが70mΩ(100kHz)であり、25℃での漏れ電流のMAX値が100μAであるタンタルポリマーキャパシタ(サイズ 3.5x2.8x1.9)を用いた以外は、実施例1の装置と同じであった。
本実施例の屋内用エネルギーハーベスティング装置を実施例1と同様な方法で評価し、その結果を表1に示す。また、充電時間が約34分であった。
【0040】
(比較例1)
本比較例の屋内用エネルギーハーベスティング装置は、本比較例の蓄電部は、第1の蓄電デバイスのみを含み、この第1の蓄電デバイスとして、静電容量が10mFであり、ESRが5Ω(100kHz)であり、25℃での漏れ電流のMAX値が2μAであるEDLCを用いた以外は、実施例1の装置と同じであった。
【0041】
本比較例の屋内用エネルギーハーベスティング装置を実施例1と同様な方法で評価し、その結果を表図5と6、表1に示す。
図5図3と同じであったが、図6に示すように、充電時間が約70分であった。実施例1より2倍以上増えった。
【0042】
(比較例2)
本比較例の屋内用エネルギーハーベスティング装置は、本比較例の第1の蓄電デバイスとして、静電容量が5mFであり、ESRが5Ω(100kHz)であり、25℃での漏れ電流のMAX値が2μAであるEDLCを2つ並列接続したものを用いた以外は、比較例1の装置と同じであった。
本比較例の屋内用エネルギーハーベスティング装置を実施例1と同様な方法で評価し、その結果を表1に示す。
表1に示すように、比較例1と同じ結果であった。
【0043】
(比較例3)
本比較例の屋内用エネルギーハーベスティング装置は、本比較例の第1の蓄電デバイスとして、静電容量が1mFであり、ESRが50mΩ(100kHz)であり、25℃での漏れ電流のMAX値が6μAであるタンタル電解コンデンサ(サイズ7.3x6.1x3.55)を5つ並列接続したものを用いた以外は、比較例1の装置と同じであった。
本比較例の屋内用エネルギーハーベスティング装置を実施例1と同様な方法で評価し、その結果を表1に示す。
図7に示すように、充電時間が約55分であった。実施例1より約2倍増えった。
【0044】
(比較例4)
本比較例の屋内用エネルギーハーベスティング装置は、本比較例の蓄電部は、第1の蓄電デバイスのみを含む以外は、実施例1の装置と同じであった。
本比較例の屋内用エネルギーハーベスティング装置を実施例1と同様な方法で評価し、その結果を表図8、表1に示す。
図8に示すように、第1の閾値電圧(A=3.3V)に達したから、出力開始(負荷起動)したが、出力電圧が降下し、センサーモジュール初期化・測定・送信を正常に動作しなかった。
【0045】
【表1】
【0046】
(考察)
表1の結果から分かるように、実施例1と実施例2において、5ΩのESRを有するEDLCを用いても、MLCC若しくはタンタルポリマーキャパシタをEDLCと並列接続することによって、低照度下(500lx以下)屋内環境下で短い充電時間で太陽電池より効率よく蓄電することができ、アプリケーションの稼働を可能にした。しかも蓄電部の実装高さが増大することを抑制できた。特に実施例1で充電時間が最も短かった。
【0047】
一方、比較例1と2において、実施例1よりトータル容量2倍のEDLCのみを用いた。動作に問題がなかったが充電時間が実施例1より2倍以上長くなった。また、比較例3において、実施例1と同じトータル容量である、5つのタンタル電解コンデンサを用いた。動作に問題がなかったが充電時間が実施例1より2倍以上長くなった。また、実装高さが実施例1よりかなり大きくなった。
比較例4において、実施例1と同じEDLCのみを用いた。MLCCを用いなったため、負荷起動時の突入電量より電圧降下を生じ、供給電圧が低下した。動作ができなかった。
【符号の説明】
【0048】
100:屋内用エネルギーハーベスティング装置
10:発電素子(PV)
30:蓄電部
32:第1の蓄電デバイスデバイス
34:第2の蓄電デバイスデバイス
50:電力制御部
52:電圧監視回路
54:出力部
55:入力部
56:スイッチS1
58:スイッチS2
200:負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8