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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140314
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ブロー成形容器及びブロー成形方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20241003BHJP
   B29C 49/46 20060101ALI20241003BHJP
   B29C 49/12 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B65D1/02 210
B29C49/46
B29C49/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051403
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】奥山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】塩川 満
【テーマコード(参考)】
3E033
4F208
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA18
3E033DA10
3E033DB01
3E033DD02
3E033FA03
3E033GA02
4F208AG07
4F208AG24
4F208AG25
4F208AG26
4F208AG28
4F208AH55
4F208LA02
4F208LA04
4F208LB01
4F208LG03
4F208LG19
4F208LG28
4F208LH06
4F208LN03
4F208LN07
4F208LN23
(57)【要約】
【課題】加圧媒体として液体を用いたブロー成形を容易に行うことを可能とするブロー成形容器及びブロー成形方法を提供することである。
【解決手段】容器口部2にネックリング3が設けられたボトル形状のブロー成形容器1であって、ネックリング3に、少なくともネックリング3の上側及び径方向外側に開口する切欠き3aが設けられていることを特徴とするブロー成形容器1、及び、金型11にプリフォーム20を設置するプリフォーム設置工程と、膨張体12fを備えたノズル12を口筒部21に対向して配置するノズル配置工程と、液体Lを供給して膨張体12fを有底筒状部22の内部で膨張させて有底筒状部22をキャビティ11aに沿った形状に成形するブロー成形工程と、膨張体12fの内部の液体Lをノズル12の内部に引き戻して膨張体12fを元の形状に復元する復元工程と、を有することを特徴とするブロー成形方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器口部にネックリングが設けられたボトル形状のブロー成形容器であって、
前記ネックリングに、少なくとも前記ネックリングの上側及び径方向外側に開口する切欠きが設けられていることを特徴とするブロー成形容器。
【請求項2】
容器内面に、容器底部の中心から前記容器口部にまで連続して延びる帯状の凹部が設けられている、請求項1に記載のブロー成形容器。
【請求項3】
前記容器口部における前記容器内面に上向きの段差面が設けられ、
前記凹部が前記段差面に開口している、請求項2に記載のブロー成形容器。
【請求項4】
口筒部と有底筒状部とを備えた合成樹脂製のプリフォームから、容器口部にネックリングが設けられたボトル形状のブロー成形容器を成形するブロー成形方法であって、
キャビティを備えた金型に前記プリフォームを設置するプリフォーム設置工程と、
液体が供給される膨張体を備えたノズルを前記口筒部に対向して配置するノズル配置工程と、
液体を供給して前記膨張体を前記有底筒状部の内部で膨張させて前記有底筒状部を前記膨張体により押し広げて前記キャビティに沿った形状に成形するブロー成形工程と、
前記膨張体の内部の前記液体を前記ノズルの内部に引き戻して前記膨張体を元の形状に復元する復元工程と、を有することを特徴とするブロー成形方法。
【請求項5】
前記ノズルとして、前記ブロー成形工程において前記口筒部の内側に間隔を空けて配置されるガイド筒を有するものを用いる、請求項4に記載のブロー成形方法。
【請求項6】
前記プリフォーム設置工程の後、前記ブロー成形工程と同時または前記ブロー成形工程の前に、延伸ロッドにより前記膨張体を下方に向けて弾性変形させて前記プリフォームを下方に向けて延伸する延伸工程をさらに有する、請求項4または5に記載のブロー成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形容器及びブロー成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料、化粧品、薬品、洗剤、シャンプー等のトイレタリーなどの種々の液体を収納するための合成樹脂製の容器として、容器口部にネックリングが設けられたボトル形状のブロー成形容器が多く用いられている。
【0003】
このようなブロー成形容器は、口筒部と有底筒状部とを備えた合成樹脂製のプリフォームをブロー成形することにより製造されるのが一般的である。
【0004】
従来、プリフォームを容器に成形するブロー成形方法として、プリフォームの内部に供給する加圧媒体として、空気等の気体(圧縮性流体)に替えて、あるいは気体とともに水等の液体(非圧縮性流体)を用いるようにしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。液体を用いたブロー成形方法によれば、プリフォームの賦形性を高めてブロー成形工程の時間を短縮することができるので、加圧媒体として気体のみを用いた場合に比べて、その成形コストを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7220194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、加圧媒体として液体を用いたブロー成形方法では、ブロー成形工程を行った後、成形後の容器の内部から加圧媒体である液体を取り出すとともに容器の内面に付着した液体を乾燥させる工程を行う必要があり、その作業が煩雑であるという問題点があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、加圧媒体として液体を用いたブロー成形を容易に行うことを可能とするブロー成形容器及びブロー成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のブロー成形容器は、容器口部にネックリングが設けられたボトル形状のブロー成形容器であって、前記ネックリングに、少なくとも前記ネックリングの上側及び径方向外側に開口する切欠きが設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明のブロー成形容器は、上記構成において、容器内面に、容器底部の中心から前記容器口部にまで連続して延びる帯状の凹部が設けられているのが好ましい。
【0010】
本発明のブロー成形容器は、上記構成において、前記容器口部における前記容器内面に上向きの段差面が設けられ、前記凹部が前記段差面に開口しているのが好ましい。
【0011】
本発明のブロー成形方法は、口筒部と有底筒状部とを備えた合成樹脂製のプリフォームから、容器口部にネックリングが設けられたボトル形状のブロー成形容器を成形するブロー成形方法であって、キャビティを備えた金型に前記プリフォームを設置するプリフォーム設置工程と、液体が供給される膨張体を備えたノズルを前記口筒部に対向して配置するノズル配置工程と、液体を供給して前記膨張体を前記有底筒状部の内部で膨張させて前記有底筒状部を前記膨張体により押し広げて前記キャビティに沿った形状に成形するブロー成形工程と、前記膨張体の内部の前記液体を前記ノズルの内部に引き戻して前記膨張体を元の形状に復元する復元工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明のブロー成形方法は、上記構成において、前記ノズルとして、前記ブロー成形工程において前記口筒部の内側に間隔を空けて配置されるガイド筒を有するものを用いるのが好ましい。
【0013】
本発明のブロー成形方法は、上記構成において、前記プリフォーム設置工程の後、前記ブロー成形工程と同時または前記ブロー成形工程の前に、延伸ロッドにより前記膨張体を下方に向けて弾性変形させて前記プリフォームを下方に向けて延伸する延伸工程をさらに有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加圧媒体として液体を用いたブロー成形を容易に行うことを可能とするブロー成形容器及びブロー成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るブロー成形容器の半断面図である。
図2図1におけるA-A線に沿う断面図である。
図3図1におけるB-B線に沿う断面図である。
図4】変形例に係るブロー成形容器の容器口部の半断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るブロー成形方法に用いられるブロー成形装置の一例を示す説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係るブロー成形方法に用いられるプリフォームの半断面図である。
図7図6におけるC-C線に沿う断面図である。
図8】ノズル配置工程を完了した状態のブロー成形装置を示す説明図である。
図9図8に示すブロー成形装置の要部の拡大図である。
図10】ブロー成形工程を開始した状態のブロー成形装置を示す説明図である。
図11】ブロー成形工程を完了した状態のブロー成形装置を示す説明図である。
図12】復元工程を開始した状態のブロー成形装置を示す説明図である。
図13】復元工程を完了した状態のブロー成形装置を示す説明図である。
図14】ノズルを容器口部から離脱させた状態のブロー成形装置を示す説明図である。
図15】変形例に係るブロー成形装置を示す説明図である。
図16】プリフォーム設置工程及びノズル配置工程を完了した状態の変形例に係るブロー成形装置を示す説明図である。
図17】延伸工程を行っている状態の変形例に係るブロー成形装置を示す説明図である。
図18】延伸工程を行いつつブロー成形工程を開始した状態の変形例に係るブロー成形装置を示す説明図である。
図19】延伸工程及びブロー成形工程を完了した状態の変形例に係るブロー成形装置を示す説明図である。
図20】復元工程を開始した状態の変形例に係るブロー成形装置を示す説明図である。
図21】復元工程を完了した状態の変形例に係るブロー成形装置を示す説明図である。
図22】ノズルを容器口部から離脱させた状態の変形例に係るブロー成形装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明をより具体的に例示説明する。
【0017】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るブロー成形容器1は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)などの合成樹脂製であり、ブロー成形によって形成されている。
【0018】
なお、本明細書及び特許請求の範囲においては、上下方向は、図1に示すようにブロー成形容器1を正立姿勢とした状態における上下方向を意味するものとする。
【0019】
ブロー成形容器1は、その容器口部2にネックリング3が設けられたボトル形状となっている。本実施形態では、容器口部2は略円筒状であり、その外周面には図示しないキャップをねじ結合によって装着するための雄ねじ2aが一体に設けられている。
【0020】
容器口部2は、雄ねじ2aに替えてキャップを打栓により装着するための環状突起が一体に設けられた構成とすることもできる。また、容器口部2は、雄ねじ2aの下方に環状突起2bが一体に設けられた構成とすることもできる。
【0021】
ネックリング3は、容器口部2の下端に一体に設けられている。図2に示すように、ネックリング3は、容器口部2の外周面から径方向外側に向けて突出するとともに容器口部2の周方向の全周に亘って延びるフランジ状となっている。
【0022】
図1図2に示すように、ネックリング3には、少なくともネックリング3の上側及び径方向外側に開口する切欠き3aが設けられている。本実施形態では、切欠き3aは、ネックリング3の下側にも開口し、ネックリング3を上下方向に貫通している。また、本実施形態では、ネックリング3には複数(8本)の切欠き3aが周方向に等間隔に並べて設けられている。それぞれの切欠き3aは、ネックリング3の容器口部2との境界部分から容器口部2の軸線Oを中心とした径方向に沿って延びており、ネックリング3の径方向外側端にまで達している。すなわち、ネックリング3は、複数の切欠き3aによって周方向に分断された構成となっている。なお、切欠き3aは、少なくとも1本設けられていれば、その本数は種々変更可能である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態では、容器口部2の下方には、下方に向けて徐々に拡径する形状の容器首部5が一体に連ねて設けられ、容器首部5の下方には外側に凸の湾曲形状の容器肩部6を介して円筒状の容器胴部7が一体に連ねて設けられている。また、容器胴部7の下端には、容器底部8が一体に連ねて設けられている。
【0024】
なお、ブロー成形容器1は、容器口部2を有するボトル形状であれば、その形状は図1に示す形状に限らず、種々変更可能である。
【0025】
図1に示すように、ブロー成形容器1は、容器内面1aに、容器底部8の中心から容器口部2にまで連続して延びる帯状の凹部9が設けられた構成とすることもできる。本実施形態では、凹部9は、容器口部2の上端に開口している。凹部9は、図2に示すように、容器口部2においては長手方向に垂直な断面(軸線Oに垂直な方向の横断面)が矩形形状の溝状となっており、図3に示すように、容器胴部7においては、容器口部2における溝幅よりも溝幅が広く且つ容器口部2における溝深さよりも溝深さが浅い湾曲した溝状となっている。また、詳細は図示しないが、凹部9は、容器首部5、容器肩部6及び容器底部8においては、その軸線Oからの距離が大きいほど溝幅が大きく且つ溝深さが浅くなるように変化する形状となっている。すなわち、凹部9は、凹部9が設けられない周方向の他の部分よりも肉厚が薄い薄肉部となっている。なお、凹部9の容器口部2における長手方向に垂直な断面形状は、矩形形状に限らず、種々の形状であってもよい。
【0026】
図4に変形例として示すように、ブロー成形容器1は、容器口部2における容器内面1aに上向きの段差面2cが設けられ、凹部9が段差面2cに開口している構成とすることもできる。この場合、段差面2cは、容器口部2の内周に軸線Oを中心として全周に亘って延びる環状となっており、複数の凹部9はそれぞれ段差面2cに開口している。容器口部2の段差面2cよりも上側は、図示しないキャップのシール筒が当接するシール面として用いることができる。また、図4に示す変形例では、ネックリング3に設けられる切欠き3aは、ネックリング3の上側及び径方向外側にのみ開口し、ネックリング3の下側には開口しない溝状となっている。
【0027】
上記構成のブロー成形容器1は、本発明の一実施形態に係るブロー成形方法により成形ないし製造することができる。
【0028】
本実施形態に係るブロー成形方法は、例えば図5に示す構成のブロー成形装置10を用いて実施することができる。
【0029】
ブロー成形装置10は、プリフォーム20をブロー成形することにより、プリフォーム20から容器口部2にネックリング3が設けられたボトル形状のブロー成形容器1を成形するものである。
【0030】
プリフォーム20としては、図6図7に示すように、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)などの熱可塑性を有する合成樹脂製であって、口筒部21と有底筒状部22とを備えた形状のものが用いられる。
【0031】
口筒部21は、ブロー成形によっては延伸されない部分であり、ブロー成形容器1の容器口部2と同様の形状を有している。すなわち、口筒部21は、それぞれ容器口部2の雄ねじ2a、環状突起2b、ネックリング3、切欠き3aに対応した形状の雄ねじ21a、シール突起21b、ネックリング23、切欠き23aを有している。
【0032】
有底筒状部22は、口筒部21よりも肉厚が厚い有底円筒状となっており、口筒部21の下方に一体に連なっている。
【0033】
また、プリフォーム20の内面20aには、有底筒状部22の底部22aの中心から口筒部21にまで連続して延びる帯状の凹部24が設けられている。本実施形態では、凹部24は、口筒部21の上端に開口している。凹部24は、その長手方向に垂直な断面が矩形形状の溝状となっており、当該断面形状は底部22aの中心から口筒部21までの全範囲において同一となっている。
【0034】
プリフォーム20としては、上記形状のものに限らず、口筒部21と有底筒状部22とを備えた形状であれば、成形後の容器の形状等に応じて種々の形状のものを用いることができる。
【0035】
図5に示すように、ブロー成形装置10は、ブロー成形用の金型11を有している。金型11は、ブロー成形容器1の最終形状に対応した形状のキャビティ11aを有している。キャビティ11aは、金型11の上面において上方に向けて開口している。金型11は、有底筒状部22がキャビティ11aの内部に配置されるとともに口筒部21が金型11から上方に突出した状態となるように、プリフォーム20を設置することができる。
【0036】
詳細は図示しないが、金型11は左右に型開きすることができるようになっており、プリフォーム20をブロー成形容器1に成形した後に金型11を左右に開くことで、ブロー成形容器1を金型11から取り出すことができる。
【0037】
金型11の上方には、ノズル12が設けられている。ノズル12は本体ブロック12aを有し、本体ブロック12aは金型11に対して上下方向に相対移動自在となっている。本体ブロック12aの下端には支持ブロック12bが固定され、この支持ブロック12bにより支持されて本体ブロック12aの下端にはブローノズル12cが装着されている。ブローノズル12cは、本体ブロック12aの内部に設けられた加圧室12dに連なる吐出口12eを有している。
【0038】
ノズル12には膨張体12fが設けられている。膨張体12fは、例えばシリコンゴムなどの、加圧室12dから吐出口12eに供給される液体Lの圧力によって弾性変形して膨張することができる弾性体によって薄い板状に形成されており、その外周縁部がブローノズル12cと支持ブロック12bとの間に挟持されて吐出口12eを閉塞している。本実施形態では、膨張体12fは、吐出口12eを閉塞する部分が上方すなわち加圧室12dの側に向けて凸のドーム状となっている。
【0039】
ノズル12は、ガイド筒12gを有する構成とすることもできる。ガイド筒12gは、プリフォーム20の口筒部21の内径よりも小径且つ吐出口12eと同軸の円筒状であり、その上端に一体に設けられたフランジ状部分12hが支持ブロック12bと膨張体12fとの間に挟持されてノズル12に固定保持されている。
【0040】
本体ブロック12aの内部に設けられた加圧室12dには、配管P1により加圧液体供給部30が接続されている。加圧液体供給部30は、配管P1を通して加圧室12dに液体Lを供給することができる。加圧液体供給部30から加圧室12dに液体Lが供給されると、加圧室12dの内部の液体Lが加圧され、当該液体Lが吐出口12eから膨張体12fに向けて供給されて、膨張体12fは液体Lの圧力によって下方に向けて弾性変形ないし膨張する。
【0041】
また、加圧液体供給部30は、逆方向に作動することで、配管P1を通して加圧室12dの内部の液体Lを加圧液体供給部30に吸い戻すことができる。加圧液体供給部30が加圧室12dに供給した液体Lを加圧液体供給部30に吸い戻すと、加圧室12dの内部の液体Lが減圧され、膨張体12fは元の形状にまで復元する。
【0042】
加圧液体供給部30としては、例えば、シリンダ30aとプランジャー30bとを有するプランジャーポンプを用いることができる。なお、加圧液体供給部30は、プランジャーポンプに限らず、他の構成のものであってもよい。
【0043】
金型11、ノズル12及び加圧液体供給部30の作動は、図示しない制御手段により統合的に制御される。
【0044】
次に、このような構成のブロー成形装置10を用いてプリフォーム20からボトル形状のブロー成形容器1を成形する方法(本実施形態に係るブロー成形方法)について説明する。
【0045】
まず、プリフォーム設置工程を行う。プリフォーム設置工程においては、図5に示すように、予めヒーター等の加熱手段(不図示)を用いて延伸性を発現する程度の所定の温度(例えば80℃~150℃)にまで加熱しておいたプリフォーム20を、キャビティ11aを備えたブロー成形用の金型11に設置し、型締めする。このとき、ノズル12は、金型11に対して上方に離間した位置にある。
【0046】
プリフォーム設置工程が完了すると、次にノズル配置工程を行う。ノズル配置工程においては、図8に示すように、液体Lが供給される膨張体12fを備えたノズル12を金型11に向けて下降させることで、ノズル12を金型11に設置されたプリフォーム20の口筒部21に対向するように配置する。
【0047】
図9に示すように、ノズル配置工程が完了すると、プリフォーム20は、支持ブロック12bの下面と金型11の上面との間にネックリング23が挟持されることで、金型11ないしノズル12に固定保持される。このとき、支持ブロック12bの下面と金型11の上面との間には、ネックリング23が挟まれることにより隙間S1が設けられている。また、ノズル配置工程が完了すると、ブローノズル12c及び膨張体12fが口筒部21の真上に位置するとともに、ガイド筒12gが口筒部21の内側に間隔を空けて配置される。
【0048】
ここで、ノズル配置工程が完了した状態において、口筒部21の内周面とガイド筒12gの外周面との間、口筒部21の上端とフランジ状部分12hとの間及び口筒部21の外周面と支持ブロック12bの内周面との間には、それぞれ互いに連なる隙間S2が設けられている。また、ネックリング23には、それぞれネックリング23を上下方向に貫通するとともに径方向に延びる複数の切欠き23aが設けられているので、隙間S2は切欠き23aを通して支持ブロック12bの下面と金型11の上面との間の隙間S1に連通している。すなわち、ノズル配置工程が完了した状態において、プリフォーム20の内部空間は、隙間S2、切欠き23a及び隙間S1からなる排気路を介して金型11の外部空間に開放されている。
【0049】
なお、ノズル配置工程においては、ノズル12(本実施形態ではノズル12の支持ブロック12bの下面)をネックリング23に当接させることなく、ノズル12の他の部分(本実施形態ではフランジ状部分12hの下面)をプリフォーム20の口筒部21の上端に当接させることでプリフォーム20を固定保持する構成とすることもできる。この場合、プリフォーム20の内部空間を外部空間に開放する排気路を確保するために、ノズル12のプリフォーム20の口筒部21の上端との当接部分に径方向に延びる溝を設けるようにしてもよい。
【0050】
ノズル配置工程が完了すると、次にブロー成形工程を行う。ブロー成形工程においては、図10に示すように、加圧液体供給部30を正方向(加圧方向)に作動させ、加圧液体供給部30から加圧室12dに液体Lを供給して加圧室12dを加圧する。加圧室12dが加圧されると、加圧された液体Lがブローノズル12cの吐出口12eから膨張体12fに供給される。液体Lが供給された膨張体12fは、液体Lの圧力により下方に向けて弾性変形し、プリフォーム20の有底筒状部22の内部で膨張する。このように、液体Lの圧力により膨張体12fが有底筒状部22の内部で膨張することで、有底筒状部22は膨張体12fにより押し広げられてブロー成形される。そして、図11に示すように、膨張体12fが金型11のキャビティ11aに沿う形状にまで膨張すると、有底筒状部22が膨張体12fによりキャビティ11aの内面に押し付けられてキャビティ11aに沿う形状に成形ないし賦形される。
【0051】
このように、ブロー成形工程においては、液体Lが供給されて膨張する膨張体12fによりプリフォーム20の有底筒状部22が金型11のキャビティ11aに沿う形状にまで押し広げられることで、プリフォーム20はボトル形状のブロー成形容器1にブロー成形される。
【0052】
ここで、金型11に設置されたプリフォーム20の内部空間は、隙間S2、切欠き23a及び隙間S1からなる排気路を介して金型11の外部空間に開放されている。また、プリフォーム20の内面20aには、有底筒状部22の底部22aの中心から口筒部21にまで連続して延びる帯状の凹部24が設けられており、これらの凹部24の上端側部分は隙間S2に連通している。したがって、膨張体12fがプリフォーム20の有底筒状部22の内部で膨張すると、プリフォーム20の内部の空気が、膨張体12fに押し出されて凹部24及び上記排気路を通って外部に排気される。したがって、ブロー成形の際に、プリフォーム20の内部に空気が残ることなく、有底筒状部22の全体が膨張体12fに当接して当該膨張体12fにより直接的に押し広げられるようにして、プリフォーム20の賦形性を高めることができる。
【0053】
また、本実施形態のように、ノズル12として、口筒部21の内側に間隔を空けて配置されるガイド筒12gを有するものを用いた場合には、ブロー成形工程において、膨張した膨張体12fがガイド筒12gに案内されて口筒部21に直接当接しないようにすることができる。これにより、ブロー成形工程において口筒部21が膨張体12fにより押し広げられて拡径することを防止することができる。
【0054】
ブロー成形工程が完了すると、次に復元工程を行う。復元工程においては、図12に示すように、加圧液体供給部30を逆方向(吸引方向)に作動させ、膨張体12fの内部の液体Lをノズル12の内部すなわち加圧室12dに引き戻す。これにより膨張体12fは収縮するが、ブロー成形されたブロー成形容器1は、金型11のキャビティ11aの内部において当該ブロー成形後の形状に保持される。そして、図13に示すように、膨張体12fを元の形状に復元し、加圧液体供給部30の作動を停止させる。
【0055】
ブロー成形方法が完了すると、図14に示すように、ノズル12を金型11に対して上昇させ、この状態で金型11を開いてブロー成形容器1を金型11から取り出す。これにより、ブロー成形方法が完了する。
【0056】
このように、本実施形態に係るブロー成形方法によれば、液体Lが供給されて膨張する膨張体12fによりプリフォーム20の有底筒状部22を金型11のキャビティ11aに沿う形状にまで押し広げることで、プリフォーム20をボトル形状のブロー成形容器1にブロー成形することができる。このとき、ブロー成形において加圧媒体として用いられる液体Lは、膨張する膨張体12fの内部に収容され、膨張体12fを介してプリフォーム20の有底筒状部22に圧力を加えるので、プリフォーム20の内面20aないしブロー成形容器1の内面に直接付着することがない。また、ブロー成形の後、加圧媒体である液体Lは、復元工程において、膨張体12fの収縮に伴いブロー成形されたブロー成形容器1の内部からノズル12の内部に引き戻される。したがって、本実施形態に係るブロー成形方法によれば、ブロー成形工程の後、ブロー成形容器1の内部から液体Lを取り出す工程及びブロー成形容器1の内面に付着した液体を乾燥させる工程を行うことを不要として、加圧媒体として液体Lを用いたブロー成形を容易に行うことができる。
【0057】
また、ブロー成形容器1の内部に液体Lが付着することがないので、成形後のブロー成形容器1を、内部に汚れのない清潔なものとすることができる。
【0058】
さらに、液体Lを廃棄することなく繰り返し利用することができるので、ブロー成形に係るコストを低減することができる。
【0059】
本実施形態に係るブロー成形方法は、延伸工程を有する構成とすることもできる。
【0060】
この場合、本実施形態に係るブロー成形方法は、例えば図15に示す構成の変形例に係るブロー成形装置10を用いて実施することができる。
【0061】
変形例に係るブロー成形装置10は、図5に示すブロー成形装置10に加えて延伸ロッド40を有している。延伸ロッド40は、本体ブロック12aに上下方向に移動自在に支持されて加圧室12dの内部に突出しており、その下端は膨張体12fの上面に対向している。延伸ロッド40は、図示しない駆動源により駆動され、図16に示す位置から下方に移動して膨張体12fを下方に向けて弾性変形させることができる。
【0062】
なお、図15に示す変形例に係るブロー成形装置10は、延伸ロッド40以外の基本的な構成は図5に示すブロー成形装置10と同様であるので、図15において図5に示すブロー成形装置10に対応する部分に同一の符号を付し、再度の説明は省略する。
【0063】
変形例に係るブロー成形装置10を用いたブロー成形方法では、まず、図16に示すように、キャビティ11aを備えた金型11にプリフォーム20を設置するプリフォーム設置工程及び液体Lが供給される膨張体12fを備えたノズル12を口筒部21に対向して配置するノズル配置工程を行う。このとき、延伸ロッド40は、加圧室12dの内部に収容された初期位置のままである。
【0064】
ノズル配置工程が完了すると、次に延伸工程を行う。延伸工程においては、図17に示すように、延伸ロッド40を下降させ、延伸ロッド40により膨張体12fを下方に向けて押して弾性変形させる。延伸ロッド40により押されて弾性変形する膨張体12fは、プリフォーム20の有底筒状部22の内部にまで達する。このとき、加圧液体供給部30はまだ作動していない。そして、延伸ロッド40をさらに下降させ、図18に示すように、延伸ロッド40により下方に向けて弾性変形する膨張体12fによりプリフォーム20の有底筒状部22の下端を押して有底筒状部22を下方に向けて延伸する。このように、延伸工程においては、有底筒状部22が、膨張体12fを介して延伸ロッド40に下方に向けて延伸される。
【0065】
延伸ロッド40による有底筒状部22の下方への延伸が開始されると、当該延伸の開始と同時または当該延伸の開始後にブロー成形工程が開始される。図18に示すように、ブロー成形工程においては、延伸工程を行いつつ、加圧液体供給部30を正方向(加圧方向)に作動させ、加圧液体供給部30から加圧室12dに液体Lを供給して加圧室12dすなわち膨張体12fの内部の液体Lを加圧する。これにより、膨張体12fは、延伸ロッド40により下方に向けて弾性変形されつつ軸線を中心とした径方向に膨張し、プリフォーム20の有底筒状部22を下方及び径方向外側に延伸させる。そして、図19に示すように、膨張体12fが、延伸ロッド40により金型11のキャビティ11aの下端にまで弾性変形しつつその全体がキャビティ11aに沿う形状にまで膨張すると、有底筒状部22が膨張体12fによりキャビティ11aの内面に押し付けられてキャビティ11aに沿う形状に成形ないし賦形される。
【0066】
そして、復元工程においては、図20に示すように、延伸ロッド40を元の位置にまで上昇させ、次いで加圧液体供給部30を逆方向(吸引方向)に作動させ、膨張体12fの内部の液体Lをノズル12の内部すなわち加圧室12dに引き戻す。これにより、図21に示すよう、膨張体12fを元の形状にまで収縮させ、加圧液体供給部30の作動を停止させる。
【0067】
ブロー成形方法が完了すると、図22に示すように、ノズル12を金型11に対して上昇させ、この状態で金型11を開いてブロー成形容器1を金型11から取り出す。これにより、ブロー成形方法が完了する。
【0068】
このように、本実施形態に係るブロー成形方法を、延伸工程を有する構成とすることにより、プリフォーム20を二軸延伸ブロー成形することができる。これにより、プリフォーム20の成形性をより高めることができる。
【0069】
なお、延伸工程は、ノズル配置工程の前に行ってもよい。また、ブロー成形工程は、延伸工程が完了した後に行ってもよい。
【0070】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0071】
例えば、前記実施の形態では、図5、15に示す構成のブロー成形装置10を用いて本発明のブロー成形方法を行う場合を示したが、他の構成のブロー成形装置等を用いて本発明のブロー成形方法を行うこともできる。
【0072】
また、前記実施形態では、プリフォーム20を、内面20aに有底筒状部22の底部22aの中心から口筒部21にまで連続して延びる帯状の凹部24を備えた構成とし、このプリフォーム20をブロー成形して形成されるブロー成形容器1を、容器内面1aに容器底部8の中心から容器口部2にまで連続して延びる帯状の凹部9が設けられた構成としているが、これに限らず、プリフォーム20を、凹部24が口筒部21(非延伸部)と有底筒状部22(延伸部)との境界を跨ぐが容器底部8にまで延びない構成とし、このプリフォーム20をブロー成形して形成されるブロー成形容器1を、容器内面1aに、容器口部2から容器首部5、容器肩部6または容器胴部7にまで連続して延びるが容器底部8までは達しない帯状の凹部9が設けられた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 ブロー成形容器
1a 容器内面
2 容器口部
2a 雄ねじ
2b 環状突起
2c 段差面
3 ネックリング
3a 切欠き
5 容器首部
6 容器肩部
7 容器胴部
8 容器底部
9 凹部
10 ブロー成形装置
11 金型
11a キャビティ
12 ノズル
12a 本体ブロック
12b 支持ブロック
12c ブローノズル
12d 加圧室
12e 吐出口
12f 膨張体
12g ガイド筒
12h フランジ状部分
20 プリフォーム
20a 内面
21 口筒部
21a 雄ねじ
21b シール突起
22 有底筒状部
22a 底部
23 ネックリング
23a 切欠き
24 凹部
30 加圧液体供給部
30a シリンダ
30b プランジャー
40 延伸ロッド
L 液体
O 軸線
P1 配管
S1 隙間
S2 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
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