(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140316
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】水分散性ブロックイソシアネート、接着剤および繊維処理剤
(51)【国際特許分類】
C08G 18/80 20060101AFI20241003BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20241003BHJP
C08G 18/28 20060101ALI20241003BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20241003BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08G18/80
C08G18/00 C
C08G18/28 090
C08G18/08 009
C08G18/08 019
C09J175/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051405
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】柴田 辰也
(72)【発明者】
【氏名】福田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】高松 孝二
【テーマコード(参考)】
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4J034CA02
4J034CA04
4J034CA13
4J034CA17
4J034CB01
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC03
4J034CC05
4J034CC26
4J034CC45
4J034CC52
4J034CC62
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4J034CD09
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4J034DA01
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4J040EF051
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4J040GA05
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4J040JB02
4J040MA05
4J040MB05
4J040MB09
(57)【要約】
【課題】優れた硬度を有する樹脂硬化物を得ることができる水分散性ブロックイソシアネート、接着剤および繊維処理剤を提供すること。
【解決手段】水分散性ブロックイソシアネートは、ブロックイソシアネート基と、親水性基と、アルコキシシリル基とを含有する。そのため、水分散性ブロックイソシアネートは、優れた硬度を有する樹脂硬化物を得ることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックイソシアネート基と、
親水性基と、
アルコキシシリル基と
を含有する、水分散性ブロックイソシアネート。
【請求項2】
イソシアネート化合物(A)と、
前記イソシアネート化合物(A)に前記親水性基を付加する親水性基付加剤(B)と、
前記イソシアネート化合物(A)に前記アルコキシシリル基を付加するアルコキシシリル基付加剤(C)と、
前記イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基をブロックするブロック剤(D)と
の反応生成物である、請求項1に記載の水分散性ブロックイソシアネート。
【請求項3】
前記イソシアネート化合物(A)が、イソシアネートモノマーの誘導体を含み、
前記イソシアネートモノマーが、
鎖状脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートおよび芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記誘導体が、
イソシアヌレート誘導体、および/または、アルコール付加体である、
請求項2に記載の水分散性ブロックイソシアネート。
【請求項4】
多価アルコール(E)により変性されている、請求項3に記載の水分散性ブロックイソシアネート。
【請求項5】
前記親水性基が、ノニオン性基、アニオン性基およびカチオン性基からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の水分散性ブロックイソシアネート。
【請求項6】
前記親水性基が、ノニオン性基であり、
前記親水性基付加剤(B)が、片末端封止ポリオキシエチレングリコールである、請求項2に記載の水分散性ブロックイソシアネート。
【請求項7】
前記親水性基が、アニオン性基であり、
前記親水性基付加剤(B)が、
スルホ基含有活性水素化合物と、前記スルホ基含有活性水素化合物のスルホ基を中和する塩基とを含有する
、および/または、
カルボキシ基含有活性水素化合物と、前記カルボキシ基含有活性水素化合物のカルボキシ基を中和する塩基とを含有する
、請求項2に記載の水分散性ブロックイソシアネート。
【請求項8】
前記親水性基が、カチオン性基であり、
前記親水性基付加剤(B)が、
3級アミノ基含有活性水素化合物と、前記3級アミノ基含有活性水素化合物の3級アミノ基を、3級アンモニウム化させる酸、および/または、4級アンモニウム化させる4級化剤とを含有する
、および/または、
4級アンモニウム基含有活性水素化合物を含有する、
請求項2に記載の水分散性ブロックイソシアネート。
【請求項9】
前記アルコキシシリル基付加剤(C)が、活性水素基と、アルコキシシリル基とを併有し、前記活性水素基がアミノ基である、請求項2に記載の水分散性ブロックイソシアネート。
【請求項10】
前記アルコキシシリル基付加剤(C)の前記活性水素基が、前記イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基100モルに対して、20モル以上40モル以下である、請求項9に記載の水分散性ブロックイソシアネート。
【請求項11】
前記ブロック剤(D)が、ピラゾール系化合物を含む、請求項2に記載の水分散性ブロックイソシアネート。
【請求項12】
請求項1に記載の水分散性ブロックイソシアネートを含有する、接着剤。
【請求項13】
請求項1に記載の水分散性ブロックイソシアネートを含有する、繊維処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散性ブロックイソシアネート、接着剤および繊維処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロックイソシアネートは、ブロックイソシアネート基を含有する。ブロックイソシアネート基は、ブロック剤によりブロックされたイソシアネート基である。
【0003】
イソシアネート基がブロック剤によりブロックされているため、ブロックイソシアネートは、優れたポットライフを有する。また、ブロックイソシアネートにおいて、ブロック剤は、加熱により解離し、イソシアネート基を再生させる。そのため、ブロックイソシアネートは、主剤に対する硬化剤として、好適に使用される。より具体的には、ブロックイソシアネートを含む硬化剤と、主剤との反応により、樹脂硬化物が得られる。樹脂硬化物は、各種産業分野において、広範に使用される。
【0004】
ブロックイソシアネートとしては、例えば、以下の水分散性ブロックイソシアネートが、提案されている。例えば、まず、親水性基含有ポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体と、メトキシPEGとの反応により、合成される。そして、親水性基含有ポリイソシアネートと、ブロック剤としてのテトラメチルグアニジン(TMG)およびジメチルピラゾール(DMP)との反応により、水分散性ブロックイソシアネートが、製造される。また、例えば、親水性基含有ポリイソシアネートと、ブロック剤としてのジメチルピラゾール(DMP)との反応により、水分散性ブロックイソシアネートが、製造される。そして、水分散性ブロックイソシアネートと、アクリルポリオール(主剤)とが混合され、塗料組成物が調製される。塗料組成物は、塗布および硬化され、樹脂硬化物が形成される(例えば、特許文献1(合成例3、実施例35、比較例21、実施例58および比較例32))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2015/025776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、上記の樹脂硬化物の用途によっては、硬度のさらなる向上が、要求される場合がある。
【0007】
本発明は、優れた硬度を有する樹脂硬化物を得ることができる水分散性ブロックイソシアネート、接着剤および繊維処理剤である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、ブロックイソシアネート基と、親水性基と、アルコキシシリル基とを含有する、水分散性ブロックイソシアネートを、含んでいる。
【0009】
本発明[2]は、イソシアネート化合物(A)と、前記イソシアネート化合物(A)に前記親水性基を付加する親水性基付加剤(B)と、前記イソシアネート化合物(A)に前記アルコキシシリル基を付加するアルコキシシリル基付加剤(C)と、前記イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基をブロックするブロック剤(D)との反応生成物である、上記[1]に記載の水分散性ブロックイソシアネートを、含んでいる。
【0010】
本発明[3]は、前記イソシアネート化合物(A)が、イソシアネートモノマーの誘導体を含み、前記イソシアネートモノマーが、鎖状脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートおよび芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記誘導体が、イソシアヌレート誘導体、および/または、アルコール付加体である、上記[2]に記載の水分散性ブロックイソシアネートを、含んでいる。
【0011】
本発明[4]は、多価アルコール(E)により変性されている、上記[3]に記載の水分散性ブロックイソシアネートを、含んでいる。
【0012】
本発明[5]は、前記親水性基が、ノニオン性基、アニオン性基およびカチオン性基からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[2]~[4]のいずれか一項に記載の水分散性ブロックイソシアネートを、含んでいる。
【0013】
本発明[6]は、前記親水性基が、ノニオン性基であり、前記親水性基付加剤(B)が、片末端封止ポリオキシエチレングリコールである、上記[2]~[5]のいずれか一項に記載の水分散性ブロックイソシアネートを、含んでいる。
【0014】
本発明[7]は、前記親水性基が、アニオン性基であり、前記親水性基付加剤(B)が、スルホ基含有活性水素化合物と、前記スルホ基含有活性水素化合物のスルホ基を中和する塩基とを含有する、および/または、カルボキシ基含有活性水素化合物と、前記カルボキシ基含有活性水素化合物のカルボキシ基を中和する塩基とを含有する、上記[2]~[5]のいずれか一項に記載の水分散性ブロックイソシアネートを、含んでいる。
【0015】
本発明[8]は、前記親水性基が、カチオン性基であり、前記親水性基付加剤(B)が、3級アミノ基含有活性水素化合物と、前記3級アミノ基含有活性水素化合物の3級アミノ基を、3級アンモニウム化させる酸、および/または、4級アンモニウム化させる4級化剤とを含有する、および/または、4級アンモニウム基含有活性水素化合物を含有する、上記[2]~[5]のいずれか一項に記載の水分散性ブロックイソシアネートを、含んでいる。
【0016】
本発明[9]は、前記アルコキシシリル基付加剤(C)が、活性水素基と、アルコキシシリル基とを併有し、前記活性水素基がアミノ基である、上記[2]~[8]のいずれか一項に記載の水分散性ブロックイソシアネートを、含んでいる。
【0017】
本発明[10]は、前記アルコキシシリル基付加剤(C)の前記活性水素基が、前記イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基100モルに対して、20モル以上40モル以下である、上記[9]に記載の水分散性ブロックイソシアネートを、含んでいる。
【0018】
本発明[11]は、前記ブロック剤(D)が、ピラゾール系化合物を含む、上記[2]~[10]のいずれか一項に記載の水分散性ブロックイソシアネートを、含んでいる。
【0019】
本発明[12]は、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の水分散性ブロックイソシアネートを含有する、接着剤を、含んでいる。
【0020】
本発明[13]は、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の水分散性ブロックイソシアネートを含有する、繊維処理剤を、含んでいる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の水分散性ブロックイソシアネートは、ブロックイソシアネート基と、親水性基と、アルコキシシリル基とを含有する。そのため、水分散性ブロックイソシアネートは、優れた硬度を有する樹脂硬化物を得ることができる。
【0022】
より具体的には、水分散性ブロックイソシアネートが加熱されると、ブロックイソシアネート基が脱ブロックし、遊離のイソシアネート基を形成する。そのため、水分散性ブロックイソシアネートは、公知の主剤と硬化反応し、樹脂硬化物を得ることができる。
【0023】
また、上記の水分散性ブロックイソシアネートは、水分散されることによって、アルコキシシリル基が、加水分解し、水酸基を形成する。そして、この水酸基の少なくとも一部は、脱水縮合によって、シラノール架橋構造を形成する。すなわち、樹脂硬化物が、シラノール架橋構造を含有する。その結果、樹脂硬化物は、優れた硬度を有する。
【0024】
また、本発明の接着剤は、上記の水分散性ブロックイソシアネートを含有する。そのため、上記の接着剤によれば、優れた硬度を有する接着剤層(硬化塗膜)が得られる。
【0025】
また、本発明の繊維処理剤は、上記の水分散性ブロックイソシアネートを含有する。そのため、上記の繊維処理剤によれば、優れた硬度を繊維に付与できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
1.水分散性ブロックイソシアネート
(1)原料化合物
水分散性ブロックイソシアネートは、ブロックイソシアネート基と、親水性基と、アルコキシシリル基とを含有する有機化合物である。水分散性ブロックイソシアネートは、例えば、イソシアネート化合物(A)と、イソシアネート化合物(A)に親水性基を付加する親水性基付加剤(B)と、イソシアネート化合物(A)にアルコキシシリル基を付加するアルコキシシリル基付加剤(C)と、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基をブロックするブロック剤(D)との反応によって、得られる。すなわち、水分散性ブロックイソシアネートは、例えば、イソシアネート化合物(A)と、親水性基付加剤(B)と、アルコキシシリル基付加剤(C)と、ブロック剤(D)との反応生成物である。
【0027】
[イソシアネート化合物(A)]
イソシアネート化合物(A)は、水分散性ブロックイソシアネートの主骨格を形成する原料化合物である。イソシアネート化合物(A)は、複数のイソシアネート基を有している。イソシアネート化合物(A)としては、例えば、ポリイソシアネート単量体(イソシアネートモノマー)、および、ポリイソシアネート誘導体(イソシアネートモノマーの誘導体)が挙げられる。
【0028】
ポリイソシアネート単量体として、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、および、芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0029】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、鎖状脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0030】
鎖状脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、および、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0031】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、および、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0032】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、および、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0033】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、および、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0034】
ポリイソシアネート誘導体は、上記したポリイソシアネート単量体から、公知の方法で誘導される。ポリイソシアネート誘導体として、例えば、イソシアヌレート誘導体、イミノオキサジアジンジオン誘導体、アルコール付加体、アロファネート誘導体、ビウレット誘導体、ウレア誘導体、オキサジアジントリオン誘導体、カルボジイミド誘導体、ウレトジオン誘導体および、ウレトンイミン誘導体が挙げられる。アルコール付加体としては、例えば、トリオール付加体が挙げられ、好ましくは、トリメチロールプロパン付加体が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0035】
イソシアネート化合物(A)は、単独使用または2種類以上併用できる。イソシアネート化合物(A)は、硬化性(反応性)の観点から、好ましくは、ポリイソシアネート誘導体(イソシアネートモノマーの誘導体)を含み、より好ましくは、ポリイソシアネート誘導体(イソシアネートモノマーの誘導体)からなる。
【0036】
ポリイソシアネート誘導体(イソシアネートモノマーの誘導体)におけるイソシアネートモノマーとしては、硬度および耐候性の観点から、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート、および、芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、鎖状脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、および、芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。つまり、イソシアネートモノマーは、好ましくは、鎖状脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートおよび芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種である。ポリイソシアネート誘導体(イソシアネートモノマーの誘導体)におけるイソシアネートモノマーとして、耐スリップ性の観点から、さらに好ましくは、芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられ、とりわけ好ましくは、キシリレンジイソシアネート(XDI)が挙げられる。
【0037】
また、ポリイソシアネート誘導体(イソシアネートモノマーの誘導体)において、誘導体の種類は、特に制限されない。誘導体として、硬度および耐スリップ性の観点から、好ましくは、イソシアヌレート誘導体、アルコール付加体、アロファネート誘導体、および、ビウレット誘導体が挙げられ、より好ましくは、イソシアヌレート誘導体、および、アルコール付加体が挙げられる。つまり、誘導体は、より好ましくは、イソシアヌレート誘導体、および/または、アルコール付加体である。誘導体として、さらに好ましくは、イソシアヌレート誘導体が挙げられる。
【0038】
イソシアネート化合物(A)の平均イソシアネート基数は、例えば、2以上、好ましくは、2.5以上である。また、イソシアネート化合物(A)の平均イソシアネート基数は、例えば、4以下、好ましくは、3.5以下である。
【0039】
イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基含有量(NCO%)は、例えば、5質量%以上、好ましくは、7質量%以上である。また、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基含有量(NCO%)は、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下である。
【0040】
イソシアネート化合物(A)は、詳しくは後述するように、親水性基付加剤(B)、アルコキシシリル基付加剤(C)、および、ブロック剤(D)と反応し、イソシアネート残基を形成する。このような反応におけるイソシアネート化合物(A)の配合割合については、後述する。
【0041】
[親水性基付加剤(B)]
親水性基付加剤(B)は、イソシアネート化合物(A)に親水性基を付加する原料化合物である。より具体的には、親水性基付加剤(B)は、イソシアネート基に対して反応可能な活性水素基と、親水性基とを併有する。
【0042】
活性水素基としては、例えば、水酸基、アミノ基およびメルカプト基が挙げられ、好ましくは、水酸基およびアミノ基が挙げられる。親水性基としては、例えば、ノニオン性基、アニオン性基およびカチオン性基が挙げられる。つまり、親水性基は、ノニオン性基、アニオン性基およびカチオン性基からなる群から選択される少なくとも1種を含有する。ノニオン性基としては、例えば、ポリオキシエチレン基が挙げられる。アニオン性基としては、例えば、カルボキシ基(カルボン酸基)およびスルホ基(スルホン酸基)が挙げられる。カチオン性基としては、例えば、4級アンモニウム基が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0043】
親水性基付加剤(B)は、イソシアネート化合物(A)に付加する親水性基の種類に応じて、選択される。
【0044】
例えば、親水性基が、ノニオン性基を含む場合には、親水性基付加剤(B)としては、例えば、ノニオン性基含有活性水素化合物が挙げられる。
【0045】
ノニオン性基含有活性水素化合物としては、例えば、ポリオキシエチレン基含有活性水素化合物が挙げられる。ポリオキシエチレン基含有活性水素化合物は、主鎖または側鎖にポリオキシエチレン基を含み、少なくとも1つの活性水素基を有する化合物である。ポリオキシエチレン基において、オキシエチレン単位の繰り返し数は、例えば、3以上、好ましくは、5以上である。また、オキシエチレン単位の繰り返し数は、例えば、100以下、好ましくは、50以下である。
【0046】
ポリオキシエチレン基含有活性水素化合物として、より具体的には、ポリオキシエチレングリコール、片末端封止ポリオキシエチレングリコール、および、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。ポリオキシエチレン基含有活性水素化合物として、好ましくは、片末端封止ポリオキシエチレングリコールが挙げられる。より具体的には、親水性基が、ポリオキシエチレン基(ノニオン性基)である場合、好ましくは、親水性基付加剤(B)が、片末端封止ポリオキシエチレングリコールである。
【0047】
片末端封止ポリオキシエチレングリコールとしては、例えば、モノアルコキシポリオキシエチレングリコールが挙げられる。モノアルコキシポリオキシエチレングリコールは、ポリオキシエチレン基を有する。また、モノアルコキシポリオキシエチレングリコールは、一方の分子末端に、水酸基(活性水素基)を有する。また、モノアルコキシポリオキシエチレングリコールの他方の分子末端が、アルキル基で封止されている。アルキル基としては、例えば、炭素数1~20のアルキル基が挙げられ、好ましくは、炭素数1~4のアルキル基が挙げられ、より好ましくは、メチルおよびエチルが挙げられる。モノアルコキシポリオキシエチレングリコールとしては、例えば、メトキシポリオキシエチレングリコール(MeOPEG)、および、エトキシポリオキシエチレングリコールが挙げられ、好ましくは、メトキシポリオキシエチレングリコールが挙げられる。
【0048】
ポリオキシエチレン基含有活性水素化合物の数平均分子量は、例えば、200以上、好ましくは、400以上である。また、ポリオキシエチレン基含有活性水素化合物の数平均分子量は、例えば、2000以下、好ましくは、1500以下である。なお、ポリオキシエチレン化合物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定できる。
【0049】
また、例えば、親水性基が、アニオン性基を含む場合には、親水性基付加剤(B)は、好ましくは、アニオン性基含有活性水素化合物と、塩基とを含有する。
【0050】
アニオン性基含有活性水素化合物としては、例えば、カルボキシ基含有活性水素化合物およびスルホ基含有活性水素化合物が挙げられる。カルボキシ基含有活性水素化合物としては、例えば、ヒドロキシアルカンカルボン酸が挙げられる。ヒドロキシアルカンカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、および、6-ヒドロキシヘキサン酸が挙げられる。スルホ基含有活性水素化合物としては、例えば、ヒドロキシアルカンスルホン酸およびアミノスルホン酸が挙げられる。ヒドロキシアルカンスルホン酸としては、例えば、ヒドロキシメタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸および3-ヒドロキシプロパンスルホン酸が挙げられる。アミノスルホン酸としては、例えば、2-(シクロヘキシルアミノ)-エタンスルホン酸(CHES)および3-(シクロヘキシルアミノ)-プロパンスルホン酸(CAPS)が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。アニオン性基含有活性水素化合物として、好ましくは、スルホ基含有活性水素化合物が挙げられる。
【0051】
より具体的には、親水性基が、カルボキシ基(カルボン酸基)である場合、好ましくは、親水性基付加剤(B)は、カルボキシ基含有活性水素化合物を含有する。また、親水性基が、スルホ基(アニオン性基)である場合、好ましくは、親水性基付加剤(B)が、スルホ基含有活性水素化合物を含有する。より好ましくは、親水性基が、スルホ基(アニオン性基)であり、親水性基付加剤(B)が、スルホ基含有活性水素化合物を含有する。スルホ基含有活性水素化合物として、さらに好ましくは、アミノスルホン酸が挙げられ、とりわけ好ましくは、3-(シクロヘキシルアミノ)-プロパンスルホン酸(CAPS)が挙げられる。
【0052】
また、親水性基がアニオン性基である場合、親水性基付加剤(B)は、好ましくは、塩基を含有する。より具体的には、親水性基付加剤(B)は、カルボキシ基含有活性水素化合物のカルボキシ基を中和する塩基、および/または、スルホ基含有活性水素化合物のスルホ基を中和する塩基を含有する。
【0053】
塩基は、アニオン性基含有活性水素化合物のアニオン性基を中和する中和剤である。塩基は、ルイス塩基を示す。塩基としては、有機塩基および無機塩基が挙げられる。有機塩基は、有機成分を含むルイス塩基である。有機塩基としては、例えば、3級アミンおよび2級アミンが挙げられる。3級アミンとしては、例えば、トリアルキルアミンおよびアルカノールアミンが挙げられる。トリアルキルアミンとしては、例えば、炭素数1~4のトリアルキルアミンが挙げられる。そのようなトリアルキルアミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミンおよびジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA)が挙げられる。アルカノールアミンとしては、例えば、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびトリイソプロパノールアミンが挙げられる。2級アミンとしては、例えば、複素環式アミンが挙げられる。複素環式アミンとしては、例えば、モルホリンが挙げられる。これら有機塩基は、単独使用または2種類以上併用できる。無機塩基は、無機成分からなるルイス塩基である。無機塩基としては、例えば、アンモニア、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、および、アルカリ土類金属炭酸塩が挙げられる。アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムが挙げられる。アルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムが挙げられる。アルカリ金属炭酸水素塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウムが挙げられる。アルカリ土類金属炭酸塩としては、例えば、炭酸マグネシウムおよび炭酸カルシウムが挙げられる。これら無機塩基は、単独使用または2種類以上併用できる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。塩基として、好ましくは、有機塩基が挙げられ、より好ましくは、3級アミンが挙げられ、さらに好ましくは、トリアルキルアミンが挙げられ、とりわけ好ましくは、ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA)が挙げられる。
【0054】
親水性基が、アニオン性基を含む場合には、とりわけ好ましくは、親水性基付加剤(B)は、スルホ基含有活性水素化合物および塩基を含有する。
【0055】
また、例えば、親水性基が、カチオン性基を含む場合には、親水性基付加剤(B)は、好ましくは、カチオン性基前駆体を含有する。
【0056】
カチオン性基前駆体としては、例えば、3級アミノ基含有活性水素化合物が挙げられる。3級アミノ基含有活性水素化合物としては、例えば、3級アミノアルコールが挙げられる。3級アミノアルコールとしては、例えば、N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、N-エチル-N,N-ジエタノールアミン、N-n-ブチル-N,N-ジエタノールアミン、N-t-ブチル-N,N-ジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン(別名2-(ジメチルアミノ)エタノール(DMAE))、N、N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、N、N-ジエチルプロパノールアミン、N、N-ジエチルイソプロパノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、2-[[2-(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノール、N-エチル-N-(2-ヒドロキシエチル)ニトロソアミン、N,N,N’-トリメチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)ビス(2-アミノエチル)エーテル、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール、2-(ジイソプロピルアミノ)エタノール、および、トリエタノールアミンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。カチオン性基前駆体として、好ましくは、3級アミノ基含有活性水素化合物が挙げられる。
【0057】
より具体的には、親水性基が、4級アンモニウム基(カチオン性基)である場合、好ましくは、親水性基付加剤(B)が、3級アミノ基含有活性水素化合物を含有する。3級アミノ基含有活性水素化合物として、好ましくは、3級アミノアルコールが挙げられ、とりわけ好ましくは、N,N-ジメチルエタノールアミン(別名2-(ジメチルアミノ)エタノール(DMAE))が挙げられる。
【0058】
また、親水性基がカチオン性基である場合、親水性基付加剤(B)は、好ましくは、3級アミノ基含有活性水素化合物の3級アミノ基を3級アンモニウム化させる酸、および/または、4級アンモニウム化させる4級化剤を含有する。
【0059】
酸は、3級アミノ基含有活性水素化合物の3級アミノ基を3級アンモニウム化する変性剤である。酸は、ルイス酸を示す。酸としては、有機酸および無機酸が挙げられる。有機酸としては、例えば、蟻酸および酢酸が挙げられる。無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸および硝酸が挙げられる。4級化剤は、3級アミノ基含有活性水素化合物の3級アミノ基を4級アンモニウム化させる変性剤である。4級化剤としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、および、メチルクロライドが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。好ましくは、酸が挙げられ、より好ましくは、有機酸が挙げられ、さらに好ましくは、酢酸が挙げられる。
【0060】
また、親水性基が、カチオン性基を含む場合には、親水性基付加剤(B)は、上記のカチオン性基前駆体(3級アミノ基含有活性水素化合物)および4級化剤に代替して、4級アンモニウム基含有活性水素化合物を含有できる。また、親水性基付加剤(B)は、上記のカチオン性基前駆体(3級アミノ基含有活性水素化合物)および4級化剤とともに、4級アンモニウム基含有活性水素化合物を含有できる。4級アンモニウム基含有活性水素化合物としては、例えば、トリアルキルアルカノールアンモニウム化合物が挙げられる。トリアルキルアルカノールアンモニウム化合物としては、例えば、塩化コリン、臭化コリン、ヨウ化コリン、酢酸コリン、炭酸コリン、リン酸コリン、水酸化コリン、クエン酸コリン、酒石酸コリン、重酒石酸コリン、および、乳酸コリンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0061】
親水性基が、カチオン性基を含む場合には、とりわけ好ましくは、親水性基付加剤(B)は、3級アミノ基含有活性水素化合物および酸を含有する。
【0062】
これら親水性基付加剤(B)は、単独使用または2種類以上併用できる。親水性基付加剤(B)として、耐スリップ性の観点から、好ましくは、ノニオン性基含有活性水素化合物が挙げられ、より好ましくは、ポリオキシエチレン基含有活性水素化合物が挙げられ、さらに好ましくは、片末端封止ポリオキシエチレングリコールが挙げられる。
【0063】
上記の親水性基付加剤(B)は、詳しくは後述するように、イソシアネート化合物(A)と反応し、イソシアネート化合物(A)に親水性基を付加する。このような反応における親水性基付加剤(B)の配合割合については、後述する。
【0064】
[アルコキシシリル基付加剤(C)]
アルコキシシリル基付加剤(C)は、イソシアネート化合物(A)にアルコキシシリル基を付加する原料化合物である。より具体的には、アルコキシシリル基付加剤(C)は、イソシアネート基に対して反応可能な活性水素基と、アルコキシシリル基とを併有する。
【0065】
活性水素基としては、例えば、水酸基、アミノ基およびメルカプト基が挙げられ、好ましくは、アミノ基が挙げられる。アルコキシシリル基としては、例えば、トリアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、および、トリアルコキシシリル基が挙げられる。モノアルコキシシリル基としては、例えば、ジアルキルモノアルコキシシリル基が挙げられ、より具体的には、例えば、ジメチルメトキシシリル基およびジメチルエトキシシリル基が挙げられる。ジアルコキシシリル基としては、例えば、モノアルキルジアルコキシシリル基が挙げられ、より具体的には、例えば、メチルジメトキシシリル基およびメチルジエトキシシリル基が挙げられる。トリアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基およびトリフェノキシシリル基が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0066】
アルコキシシリル基付加剤(C)としては、例えば、アミノシラン化合物が挙げられる。アミノシラン化合物として、より具体的には、例えば、アミノ基含有シランカップリング剤が挙げられる。アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、および、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリエトキシシランが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。アルコキシシリル基付加剤(C)として、好ましくは、アミノシラン化合物が挙げられ、より好ましくは、アミノ基含有シランカップリング剤が挙げられ、さらに好ましくは、3-アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0067】
上記のアルコキシシリル基付加剤(C)は、詳しくは後述するように、イソシアネート化合物(A)と反応し、イソシアネート化合物(A)にアルコキシシリル基を付加する。このような反応におけるアルコキシシリル基付加剤(C)の配合割合については、後述する。
【0068】
[ブロック剤(D)]
ブロック剤(D)は、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基を、脱離可能に封止し、ブロックイソシアネートを形成する原料化合物である。
より具体的には、ブロック剤(D)としては、例えば、ブロック基含有化合物が挙げられる。
【0069】
ブロック剤(D)としは、例えば、グアニジン系化合物、イミダゾール系化合物、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、1~2級アミン系化合物、イミン系化合物、オキシム系化合物、カルバミン酸系化合物、尿素系化合物、酸アミド系化合物、酸イミド系化合物、トリアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、メルカプタン系化合物、重亜硫酸塩、イミダゾリン系化合物、および、ピリミジン系化合物が挙げられる。
【0070】
グアニジン系化合物として、例えば、3,3-ジアルキルグアニジン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)、および、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが挙げられる。
【0071】
イミダゾール系化合物として、例えば、イミダゾール(IMZ)、ベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、および、2-アミン-イミダゾールが挙げられる。
【0072】
アルコール系化合物として、例えば、モノアルコール(1価アルコール)が挙げられる。モノアルコールとして、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、1-オクタノール、2-オクタノール、シクロへキシルアルコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,2-トリクロロエタノール、2-(ヒドロキシメチル)フラン、2-メトキシエタノール、メトキシプロパノール、2-エトキシエタノール、n-プロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-エトキシエトキシエタノール、2-エトキシブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、2-ブトキシエチルエタノール、2-ブトキシエトキシエタノール、N,N-ジブチル-2-ヒドロキシアセトアミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-モルホリンエタノール、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール、3-オキサゾリジンエタノール、2-ヒドロキシメチルピリジン、フルフリルアルコール、12-ヒドロキシステアリン酸、トリフェニルシラノール、および、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルが挙げられる。
【0073】
フェノール系化合物として、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n-プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n-ブチルフェノール、s-ブチルフェノール、t-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ノニルフェノール、ジ-n-プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ-n-ブチルフェノール、ジ-s-ブチルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール、ジ-n-オクチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジ-n-ノニルフェノール、ニトロフェノール、ブロモフェノール、クロロフェノール、フルオロフェノール、ジメチルフェノール、スチレン化フェノール、メチルサリチラート、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、ヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシル、4-[(ジメチルアミノ)メチル]フェノール、4-[(ジメチルアミノ)メチル]ノニルフェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸、2-ヒドロキシピリジン、2-ヒドロキシキノリン、8-ヒドロキシキノリン、2-クロロ-3-ピリジノール、および、ピリジン-2-チオールが挙げられる。
【0074】
活性メチレン系化合物として、例えば、メルドラム酸、マロン酸ジアルキル、アセト酢酸アルキル、2-アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセチルアセトン、および、シアノ酢酸エチルが挙げられる。マロン酸ジアルキルとして、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ-t-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル、マロン酸メチルn-ブチル、マロン酸エチルn-ブチル、マロン酸メチルs-ブチル、マロン酸エチルs-ブチル、マロン酸メチルt-ブチル、マロン酸エチルt-ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジベンジル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸エチルフェニル、マロン酸t-ブチルフェニル、および、イソプロピリデンマロネートが挙げられる。アセト酢酸アルキルとして、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n-プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n-ブチル、アセト酢酸t-ブチル、アセト酢酸ベンジル、および、アセト酢酸フェニルが挙げられる。
【0075】
1~2級アミン系化合物として、例えば、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、カルバゾール、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル)アミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン(DiPA)、イソプロピルエチルアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンアミン、2,2,5-トリメチルヘキサメチレンアミン、N-イソプロピルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ビス(3,5,5-トリメチルシクロヘキシル)アミン、ピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、t-ブチルメチルアミン、t-ブチルエチルアミン、t-ブチルプロピルアミン、t-ブチルブチルアミン、t-ブチルベンジルアミン、t-ブチルフェニルアミン、2,2,6-トリメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン、(ジメチルアミノ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリドン、6-メチル-2-ピペリジン、および、6-アミノカプロン酸が挙げられる。
【0076】
イミン系化合物として、例えば、エチレンイミン、ポリエチレンイミン、および、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジンが挙げられる。
【0077】
オキシム系化合物として、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム(MEKO)、シクロヘキサノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ペンゾフェノオキシム、2,2,6,6-テトラメチルシクロヘキサノンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、メチルt-ブチルケトンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチル2,4-ジメチルペンチルケトンオキシム、メチル3-エチルへプチルケトンオキシム、メチルイソアミルケトンオキシム、n-アミルケトンオキシム、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオンモノオキシム、4,4’-ジメトキシベンゾフェノンオキシム、および、2-ヘプタノンオキシムが挙げられる。
【0078】
カルバミン酸系化合物として、例えば、N-フェニルカルバミン酸フェニルが挙げられる。
【0079】
尿素系化合物として、例えば、尿素、チオ尿素、および、エチレン尿素が挙げられる。
【0080】
酸アミド系化合物は、言い換えれば、ラクタム系化合物である。酸アミド系化合物として、例えば、アセトアニリド、N-メチルアセトアミド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、ピロリドン、2,5-ピペラジンジオン、および、ラウロラクタムが挙げられる。
【0081】
酸イミド系化合物として、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、および、フタルイミドが挙げられる。
【0082】
トリアゾール系化合物として、例えば、1,2,4-トリアゾール、および、ベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0083】
ピラゾール系化合物として、例えば、ピラゾール、3-メチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾール、3,5-ジフェニルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、および、3,5-ジアルキルピラゾールが挙げられる。3,5-ジアルキルピラゾールは、ピラゾール環の4位に置換基を有していない。3,5-ジアルキルピラゾールとして、例えば、3,5-ジメチルピラゾール(DMP)、3,5-ジイソプロピルピラゾール、3,5-ジ-t-ブチルピラゾールが挙げられる。
【0084】
メルカプタン系化合物として、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、および、ヘキシルメルカプタンが挙げられる。
【0085】
重亜硫酸塩として、例えば、重亜硫酸ソーダが挙げられる。
【0086】
イミダゾリン系化合物として、例えば、2-メチルイミダゾリン、および、2-フェニルイミダゾリンが挙げられる。
【0087】
ピリミジン系化合物として、例えば、2-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジンが挙げられる。
【0088】
また、ブロック剤(D)として、さらに、例えば、ベンゾオキサゾロン、無水イサト酸、および、テトラブチルホスホニウム-アセタートも挙げられる。
【0089】
これらは、単独使用または2種類以上併用できる。ブロック剤(D)は、好ましくは、ピラゾール系化合物を含み、より好ましくは、ピラゾール系化合物からなる。ピラゾール系化合物として、好ましくは、3,5-ジフェニルピラゾール、および、3,5-ジアルキルピラゾールが挙げられ、より好ましくは、3,5-ジアルキルピラゾールが挙げられ、さらに好ましくは、3,5-ジメチルピラゾール(DMP)が挙げられる。
【0090】
上記のブロック剤(D)は、詳しくは後述するように、イソシアネート化合物(A)と反応し、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基を封止し、ブロックイソシアネート基(潜在イソシアネート基)を形成する。このような反応におけるブロック剤(D)の配合割合については、後述する。
【0091】
(2)水分散性ブロックイソシアネートの製造方法
水分散性ブロックイソシアネートは、水分散性ブロックイソシアネートは、例えば、イソシアネート化合物(A)と、親水性基付加剤(B)と、アルコキシシリル基付加剤(C)と、ブロック剤(D)とを反応させることにより、製造される。
【0092】
より具体的には、例えば、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基の一部と、親水性基付加剤(B)とを反応させることにより、イソシアネート化合物(A)に、親水性基を付加する。また、例えば、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基の一部(上記の一部とは別の一部)と、アルコキシシリル基付加剤(C)とを反応させることにより、イソシアネート化合物(A)に、アルコキシシリル基を付加する。また、例えば、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基の残部と、ブロック剤(D)とを反応させることにより、ブロックイソシアネート基(潜在イソシアネート基)を形成する。これにより、ブロックイソシアネート基と、親水性基と、アルコキシシリル基とを含有する水分散性ブロックイソシアネートが製造される。
【0093】
[反応割合]
上記の反応において、イソシアネート化合物(A)と、親水性基付加剤(B)と、アルコキシシリル基付加剤(C)と、ブロック剤(D)との配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0094】
例えば、親水性基付加剤(B)として、ノニオン性基含有活性水素化合物が使用される場合、ノニオン性基含有活性水素化合物の活性水素基が、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基100モルに対して、例えば、1モル以上、好ましくは、3モル以上、より好ましくは、5モル以上である。また、ノニオン性基含有活性水素化合物の活性水素基が、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基100モルに対して、例えば、20モル以下、好ましくは、15モル以下、より好ましくは、10モル以下である。
【0095】
また、例えば、親水性基付加剤(B)として、アニオン性基含有活性水素化合物および塩基が使用される場合、アニオン性基含有活性水素化合物の活性水素基が、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基100モルに対して、例えば、1モル以上、好ましくは、3モル以上、より好ましくは、5モル以上である。また、アニオン性基含有活性水素化合物の活性水素基が、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基100モルに対して、例えば、20モル以下、好ましくは、15モル以下、より好ましくは、10モル以下である。また、塩基が、アニオン性基含有活性水素化合物のアニオン性基100モルに対して、例えば、50モル以上、好ましくは、70モル以上である。また、塩基が、アニオン性基含有活性水素化合物のアニオン性基100モルに対して、例えば、130モル以下、好ましくは、110モル以下である。
【0096】
また、例えば、親水性基付加剤(B)として、3級アミノ基含有活性水素化合物および酸が使用される場合、3級アミノ基含有活性水素化合物の活性水素基が、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基100モルに対して、例えば、1モル以上、好ましくは、3モル以上、より好ましくは、5モル以上である。また、3級アミノ基含有活性水素化合物の活性水素基が、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基100モルに対して、例えば、20モル以下、好ましくは、15モル以下、より好ましくは、10モル以下である。また、酸が、3級アミノ基含有活性水素化合物の3級アミノ基100モルに対して、例えば、50モル以上、好ましくは、70モル以上である。また、酸が、3級アミノ基含有活性水素化合物の3級アミノ基100モルに対して、例えば、130モル以下、好ましくは、110モル以下である。
【0097】
また、例えば、アルコキシシリル基付加剤(C)の活性水素基が、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基100モルに対して、例えば、10モル以上、好ましくは、20モル以上、より好ましくは、25モル以上である。また、アルコキシシリル基付加剤(C)の活性水素基が、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基100モルに対して、例えば、50モル以下、好ましくは、40モル以下、より好ましくは、35モル以下である。
【0098】
また、例えば、ブロック剤(D)が、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基100モルに対して、例えば、50モル以上、好ましくは、55モル以上、より好ましくは、60モル以上である。また、ブロック剤(D)が、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基100モルに対して、例えば、80モル以下、好ましくは、75モル以下、より好ましくは、70モル以下である。
【0099】
また、親水性基付加剤(B)の活性水素基と、アルコキシシリル基付加剤(C)の活性水素基と、ブロック剤(D)との総量が、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基100モルに対して、例えば、90モル以上、好ましくは、95モル以上、より好ましくは、99モル以上である。また、親水性基付加剤(B)の活性水素基と、アルコキシシリル基付加剤(C)の活性水素基と、ブロック剤(D)との総量が、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基100モルに対して、例えば、120モル以下、好ましくは、110モル以下、より好ましくは、105モル以下である。
【0100】
[反応順序]
上記の反応において、イソシアネート化合物(A)と、親水性基付加剤(B)と、アルコキシシリル基付加剤(C)と、ブロック剤(D)との反応順序は、特に制限されず、各成分の反応活性および反応速度に応じて、適宜選択される。
【0101】
例えば、イソシアネート化合物(A)と、親水性基付加剤(B)と、アルコキシシリル基付加剤(C)と、ブロック剤(D)とを同時に反応させることができる。また、例えば、イソシアネート化合物(A)と、親水性基付加剤(B)と、アルコキシシリル基付加剤(C)と、ブロック剤(D)とを、任意の順序で、順次反応させることができる。
【0102】
好ましくは、イソシアネート化合物(A)と、親水性基付加剤(B)と、アルコキシシリル基付加剤(C)と、ブロック剤(D)とを、順次反応させる。また、この場合、好ましくは、反応の順序は、親水性基付加剤(B)の種類に応じて、選択される。
【0103】
より具体的には、親水性基付加剤(B)が、ノニオン性基含有活性水素化合物である場合、好ましくは、まず、イソシアネート化合物(A)と、親水性基付加剤(B)とを、上記の割合で反応させる。次いで、これらの反応生成物と、ブロック剤(D)とを、上記の割合で反応させる。その後、これらの反応生成物と、アルコキシシリル基付加剤(C)とを、上記の割合で反応させる。これにより、ブロックイソシアネート基と、親水性基(ノニオン性基)と、アルコキシシリル基とを含有する水分散性ブロックイソシアネートが、製造される。
【0104】
また、例えば、親水性基付加剤(B)が、アニオン性基含有活性水素化合物および塩基を含有する場合には、まず、イソシアネート化合物(A)と、ブロック剤(D)とを、上記の割合で反応させる。次いで、これらの反応生成物と、アルコキシシリル基付加剤(C)とを、上記の割合で反応させる。その後、これらの反応生成物と、アニオン性基含有活性水素化合物とを上記の割合で反応させ、さらに、アニオン性基を、塩基により中和する。これにより、ブロックイソシアネート基と、親水性基(アニオン性基)と、アルコキシシリル基とを含有する水分散性ブロックイソシアネートが、製造される。
【0105】
また、例えば、親水性基付加剤(B)が、カチオン性基前駆体として、3級アミノ基含有活性水素化合物および酸を含有する場合には、まず、イソシアネート化合物(A)と、ブロック剤(D)とを、反応させる。次いで、これらの反応生成物と、アルコキシシリル基付加剤(C)とを、反応させる。その後、これらの反応生成物と、3級アミノ基含有活性水素化合物とを上記の割合で反応させ、さらに、3級アミノ基と酸とを反応させ、4級アンモニウム基(カチオン性基)を形成する。これにより、ブロックイソシアネート基と、親水性基(カチオン性基)と、アルコキシシリル基とを含有する水分散性ブロックイソシアネートが、製造される。
【0106】
なお、上記の各反応は、溶剤の不存在下における反応であってもよく、溶剤の存在下における反応であってもよい。好ましくは、上記の各反応は、溶剤の存在下における反応である。溶剤としては、例えば、ケトン類、エステル類(例えば、酢酸エチル)、ニトリル類、脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテルエステル類、エーテル類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、および、極性非プロトン類が挙げられる。また、溶剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0107】
また、上記の各反応における反応条件は、特に制限されず、原料化合物(イソシアネート化合物(A)、親水性基付加剤(B)、アルコキシシリル基付加剤(C)、および、ブロック剤(D))の種類および量に応じて、設定される。
【0108】
[反応生成物]
上記の反応における反応生成物は、水分散性ブロックイソシアネートである。より具体的には、水分散性ブロックイソシアネートは、イソシアネート化合物(A)およびブロック剤(D)に由来するブロックイソシアネート基と、親水性基付加剤(B)に由来する親水性基と、アルコキシシリル基付加剤(C)に由来するアルコキシシリル基とを含有する。
【0109】
ブロックイソシアネート基と、親水性基と、アルコキシシリル基との割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0110】
例えば、反応硬化性の観点から、ブロックイソシアネート基と、親水性基と、アルコキシシリル基との総量100モルに対して、ブロックイソシアネート基が、例えば、50モル以上、好ましくは、55モル以上、より好ましくは、60モル以上である。また、反応硬化性の観点から、ブロックイソシアネート基と、親水性基と、アルコキシシリル基との総量100モルに対して、ブロックイソシアネート基が、例えば、80モル以下、好ましくは、75モル以下、より好ましくは、70モル以下である。
【0111】
また、水分散性の観点から、例えば、ブロックイソシアネート基と、親水性基と、アルコキシシリル基との総量100モルに対して、親水性基が、例えば、1モル以上、好ましくは、3モル以上、より好ましくは、5モル以上である。また、水分散性の観点から、ブロックイソシアネート基と、親水性基と、アルコキシシリル基との総量100モルに対して、親水性基が、例えば、20モル以下、好ましくは、15モル以下、より好ましくは、10モル以下である。
【0112】
また、樹脂硬化物の硬度および耐スリップ性の観点から、例えば、ブロックイソシアネート基と、親水性基と、アルコキシシリル基との総量100モルに対して、アルコキシシリル基が、例えば、10モル以上、好ましくは、20モル以上、より好ましくは、25モル以上である。また、樹脂硬化物の撥水性の観点から、ブロックイソシアネート基と、親水性基と、アルコキシシリル基との総量100モルに対して、アルコキシシリル基が、例えば、50モル以下、好ましくは、40モル以下、より好ましくは、35モル以下である。
【0113】
ブロックイソシアネート基と、親水性基と、アルコキシシリル基との割合が上記範囲であれば、とりわけ優れた硬度、水分散性、接着性および耐スリップ性を得ることができる。
【0114】
[水分散液]
上記の水分散性ブロックイソシアネートは、親水性基を有するため、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を製造できる。
【0115】
水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を得る方法は、特に制限されないが、例えば、まず、上記の原料化合物(イソシアネート化合物(A)、親水性基付加剤(B)、アルコキシシリル基付加剤(C)、および、ブロック剤(D))を、上記の溶剤の存在下で反応させて、水分散性ブロックイソシアネートの溶液を得る。次いで、水分散性ブロックイソシアネートの溶液と、水とを撹拌し、水分散性ブロックイソシアネートの乳化液を得る。その後、水分散性ブロックイソシアネートの乳化液から、溶剤を除去する。溶剤を除去する方法としては、例えば、蒸留および抽出が挙げられる。また、必要により、水を添加し、固形分濃度を調整する。これにより、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液が得られる。
【0116】
水分散性ブロックイソシアネートの水分散液の固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上である。また、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液の固形分濃度は、例えば、60質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
【0117】
3.変形例
水分散性ブロックイソシアネートは、さらに、多価アルコール(E)により変性されていてもよい。後述する耐スリップ性の観点から、水分散性ブロックイソシアネートは、好ましくは、多価アルコール(E)により変性されている。
【0118】
水分散性ブロックイソシアネートが多価アルコール(E)により変性される場合、例えば、イソシアネート化合物(A)が多価アルコール(E)により変性される。そして、イソシアネート化合物(A)のアルコール変性体が、ブロックイソシアネート基と、親水性基と、アルコキシシリル基とを含有する。
【0119】
多価アルコール(E)としては、例えば、2価アルコール、3価アルコール、および、4価以上のアルコールが挙げられる。2価アルコールとしては、例えば、芳香環含有2価アルコール、および、炭素環不含有2価アルコールが挙げられる。炭素環含有2価アルコールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび1,4-ベンゼンジメタノール(1,4-BDM)が挙げられる。炭素環不含有2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール(EG)、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール(BD)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびジプロピレングリコールが挙げられる。3価アルコールとしては、例えば、グリセリンおよびトリメチロールプロパンが挙げられる。4価以上のアルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトールおよびジグリセリンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。耐スリップ性の観点から、多価アルコール(E)として、好ましくは、2価アルコールが挙げられ、より好ましくは、炭素環含有2価アルコールが挙げられ、とりわけ好ましくは、1,4-ベンゼンジメタノール(1,4-BDM)が挙げられる。
【0120】
多価アルコール(E)の量は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、多価アルコール(E)の量は、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基100モルに対して、例えば、1モル以上、好ましくは、3モル以上、より好ましくは、5モル以上である。また、多価アルコール(E)の量は、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基100モルに対して、例えば、20モル以下、好ましくは、15モル以下、より好ましくは、10モル以下である。
【0121】
多価アルコール(E)により水分散性ブロックイソシアネートを変性する方法としては、特に制限されないが、例えば、イソシアネート化合物(A)と、親水性基付加剤(B)と、アルコキシシリル基付加剤(C)と、ブロック剤(D)との反応が完結する前に、任意のタイミングで、多価アルコール(E)を配合する。
【0122】
多価アルコール(E)を配合するタイミングは、例えば、ブロック剤(D)の配合前である。例えば、上記したように、親水性基付加剤(B)が、ノニオン性基含有活性水素化合物である場合、好ましくは、まず、イソシアネート化合物(A)と、親水性基付加剤(B)とを、上記の割合で反応させる。次いで、上記の方法では、これらの反応生成物と、ブロック剤(D)とを、上記の割合で反応させる。
【0123】
このとき、多価アルコール(E)を、ブロック剤(D)の配合前に添加し、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基と、多価アルコール(E)とを反応させる。より具体的には、イソシアネート化合物(A)と親水性基付加剤(B)との反応生成物に対して、多価アルコールを配合して、イソシアネート化合物(A)と親水性基付加剤(B)との反応生成物を、多価アルコール(E)で変性させる。その後、これらの反応生成物のアルコール変性体と、ブロック剤(D)とを、上記の割合で反応させる。その後、これらの反応生成物と、アルコキシシリル基付加剤(C)とを、上記の割合で反応させる。これにより、ブロックイソシアネート基と、親水性基と、アルコキシシリル基とを含有し、かつ、多価アルコール(E)で変性された水分散性ブロックイソシアネートが、製造される。
【0124】
なお、親水性基付加剤(B)として、アニオン性基含有活性水素化合物および塩基が使用される場合も、好ましくは、上記と同様に、多価アルコール(E)を、ブロック剤(D)の配合前に添加する。また、親水性基付加剤(B)として、3級アミノ基含有活性水素化合物および酸が使用される場合も、好ましくは、上記と同様に、多価アルコール(E)を、ブロック剤(D)の配合前に添加する。つまり、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基と、多価アルコール(E)とを反応させる。また、多価アルコール(E)を添加する以外は、上記の方法で、原料化合物(イソシアネート化合物(A)、親水性基付加剤(B)、アルコキシシリル基付加剤(C)、および、ブロック剤(D))を順次反応させる。これにより、ブロックイソシアネート基と、親水性基と、アルコキシシリル基とを含有し、かつ、多価アルコール(E)で変性された水分散性ブロックイソシアネートが、製造される。また、上記の方法で、多価アルコール(E)で変性された水分散性ブロックイソシアネートを、水分散させることができる。つまり、多価アルコール(E)で変性された水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を得ることができる。
【0125】
4.作用効果
上記の水分散性ブロックイソシアネートは、ブロックイソシアネート基と、親水性基と、アルコキシシリル基とを含有する。そのため、水分散性ブロックイソシアネートは、優れた硬度を有する樹脂硬化物を得ることができる。
【0126】
より具体的には、水分散性ブロックイソシアネートが加熱されると、ブロックイソシアネート基が脱ブロックし、遊離のイソシアネート基を形成する。そのため、水分散性ブロックイソシアネートは、公知の主剤と硬化反応し、樹脂硬化物を得ることができる。
【0127】
また、上記の水分散性ブロックイソシアネートは、水分散されることによって、アルコキシシリル基が、加水分解し、水酸基を形成する。そして、この水酸基の少なくとも一部は、脱水縮合によって、シラノール架橋構造を形成する。すなわち、樹脂硬化物が、シラノール架橋構造を含有する。その結果、樹脂硬化物は、優れた硬度を有する。
【0128】
そのため、上記の水分散性ブロックイソシアネートは、例えば、樹脂硬化物を得るための硬化性樹脂組成物において、硬化剤として、好適に使用される。
【0129】
5.硬化性樹脂組成物および樹脂硬化物
硬化性樹脂組成物としては、例えば、1液硬化型樹脂組成物および2液硬化型樹脂組成物が挙げられ、好ましくは、2液硬化型樹脂組成物が挙げられる。2液硬化型樹脂組成物は、例えば、主剤および硬化剤を備える。
【0130】
主剤としては、例えば、硬化剤と反応可能な成分が挙げられる。より具体的には、主剤は、例えば、上記の水分散性ブロックイソシアネートブロックイソシアネート基の脱ブロックにより得られる遊離のイソシアネート基と反応し、樹脂硬化物を形成可能な成分である。例えば、樹脂硬化物がポリウレタン樹脂である場合、主剤としては、例えば、活性水素基含有化合物が挙げられる。活性水素基含有化合物は、分子中に1つ以上の活性水素基を含有する化合物である。活性水素基含有化合物としては、例えば、ポリオール化合物およびポリアミン化合物が挙げられる。活性水素基含有化合物として、好ましくは、ポリオール化合物が挙げられる。
【0131】
ポリオール化合物として、例えば、低分子量ポリオール、および、高分子量ポリオールが挙げられる。ポリオール化合物として、好ましくは、高分子量ポリオールが挙げられる。
【0132】
高分子量ポリオールの数平均分子量は、例えば、300以上、好ましくは、400以上、より好ましくは、500以上である。高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する。高分子量ポリオールとして、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオール、および、フッ素含有ポリオールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。高分子量ポリオールとして、好ましくは、ポリウレタンポリオールおよびアクリルポリオールが挙げられる。
【0133】
主剤は、硬化性樹脂組成物の用途に応じて、選択される。例えば、硬化性樹脂組成物が、後述する接着剤として使用される場合、主剤は、好ましくは、優れた接着性を得るためのポリオール化合物を含有する。そのようなポリオール化合物として、より具体的には、ポリウレタンポリオールが挙げられる。また、例えば、硬化性樹脂組成物が、後述する繊維処理剤として使用される場合、主剤は、好ましくは、優れた撥水性を得るためのポリオール化合物を含有する。そのようなポリオール化合物として、より具体的には、アクリルポリオールおよびフッ素含有ポリオールが挙げられ、環境性の観点から、好ましくは、アクリルポリオールが挙げられる。
【0134】
主剤は、好ましくは、活性水素基含有化合物(ポリオール化合物)の水分散液として調製される。活性水素基含有化合物(ポリオール化合物)は、公知の方法により、水に分散される。活性水素基含有化合物(ポリオール化合物)の水分散液の固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上である。また、活性水素基含有化合物(ポリオール化合物)の水分散液の固形分濃度は、例えば、60質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
【0135】
硬化剤は、上記の水分散性ブロックイソシアネートを含む。硬化剤として、好ましくは、上記の水分散性ブロックイソシアネートの水分散液が挙げられる。
【0136】
主剤および/または硬化剤は、添加剤を含有できる。添加剤としては、例えば、触媒、エポキシ樹脂、塗工性改良剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、沈降防止剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、充填剤、有機微粒子、無機微粒子、および、防カビ剤が挙げられる。添加剤の添加のタイミングおよび添加量は、その目的および用途により適宜決定される。
【0137】
硬化性樹脂組成物において、主剤および硬化剤は、例えば、個別に調製される。そして、主剤および硬化物は、使用時に配合される。これにより、主剤(活性水素基含有化合物)および硬化剤(水分散性ブロックイソシアネート)を含む樹脂混合物が得られる。
【0138】
主剤および硬化剤の配合割合は、特に制限されず、適宜設定される。例えば、主剤の固形分(活性水素基含有化合物)100質量部に対して、硬化剤の固形分(水分散性ブロックイソシアネート)が、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、より好ましくは、10質量部以上である。また、主剤の固形分(活性水素基含有化合物)100質量部に対して、硬化剤の固形分(水分散性ブロックイソシアネート)が、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下、より好ましくは、20質量部以下である。
【0139】
また、主剤(活性水素基含有化合物)の活性水素基に対する、硬化剤の潜在イソシアネート基の当量比(潜在イソシアネート基/活性水素基)は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.5以上である。また、主剤(活性水素基含有化合物)の活性水素基に対する、硬化剤の潜在イソシアネート基の当量比(潜在イソシアネート基/活性水素基)は、例えば、5以下、好ましくは、3以下である。
【0140】
そして、樹脂混合物は、必要に応じて、公知の方法で被塗物に塗布され、乾燥される。これにより、乾燥膜(未架橋塗膜)が形成される。
【0141】
被塗物としては、特に制限されない。被塗物としては、例えば、金属材料、樹脂材料、無機材料、および、繊維材料が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0142】
塗布方法は、特に制限されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、フローコート法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、および、ダイレクトコート法が挙げられる。
【0143】
その後、乾燥膜(未架橋塗膜)が、加熱される。加熱条件は、ブロック剤(D)の種類、および、主剤の樹脂の種類に応じて、選択される。すなわち、ブロック剤(D)がブロックイソシアネート基から脱離し、イソシアネート基を再生させ、硬化剤と主剤とが架橋反応する条件が、加熱条件として、適宜選択される。
【0144】
例えば、加熱温度は、例えば、80℃以上、好ましくは、100℃以上である。また、加熱温度は、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。加熱時間は、例えば、10秒以上、好ましくは、30秒以上である。また、加熱時間は、例えば、1時間以下、好ましくは、30分以下である。
【0145】
上記の加熱により、ブロックイソシアネート基からブロック剤(D)が脱離し、遊離のイソシアネート基が再生される。そして、遊離のイソシアネート基と、主剤とが架橋反応し、樹脂硬化物が得られる。
【0146】
また、水分散性ブロックイソシアネートは、アルコキシシリル基の加水分解により、水酸基を有している。そして、上記の加熱により、水酸基の少なくとも一部が、脱水縮合し、シラノール架橋構造を形成する。そのため、樹脂硬化物は、シラノール架橋構造を含有する。その結果、樹脂硬化物は、優れた硬度を有する。
【0147】
なお、上記の説明では、主剤および硬化剤が反応することにより、硬化性樹脂組成物が硬化し、樹脂硬化物が形成されている。しかし、主剤および硬化物は、反応しなくともよい。この場合においても、硬化性樹脂組成物は、主剤および硬化剤を含む。しかし、硬化剤は、主剤と反応せずに、自己架橋する。このような場合にも、硬化性樹脂組成物が硬化し、樹脂硬化物が形成される。
【0148】
6.用途
水分散性ポリイソシアネートおよび硬化性樹脂組成物は、上記したように、優れた硬度を有する樹脂硬化物を形成できる。そのため、水分散性ポリイソシアネートおよび硬化性樹脂組成物は、硬度が要求される各種用途において、好適に使用される。そのような用途としては、例えば、接着剤、繊維処理剤、撥水剤、塗料組成物、帯電防止剤、製紙用処理剤、湿潤紙力増強剤、記録媒体の受理層、電着塗装組成物、抗菌-抗ウイルス組成物、カプセル化された組成物、光学部材およびラテックス組成物が挙げられる。
【0149】
用途として、好ましくは、接着剤、繊維処理剤、撥水剤および塗料組成物が挙げられ、より好ましくは、接着剤および繊維処理剤が挙げられる。
【0150】
換言すると、接着剤として、好ましくは、上記の水分散性ブロックイソシアネートを含有する接着剤が挙げられる。このような接着剤は、上記の水分散性ブロックイソシアネートを含有するため、優れた硬度を有する接着剤層(硬化塗膜)が得られる。
【0151】
さらに、上記の接着剤によれば、優れた接着性が得られる。その理由は、以下の通り推察される。すなわち、上記したように、水分散性ブロックイソシアネートは、シラノール架橋構造を形成する。つまり、樹脂硬化物が、シラノール架橋構造を含有する。そのため、シラノール架橋構造により、接着強度が、とりわけ向上すると推察される。
【0152】
また、繊維処理剤として、好ましくは、上記の水分散性ブロックイソシアネートを含有する繊維処理剤が挙げられる。このような繊維処理剤は、上記の水分散性ブロックイソシアネートを含有するため、優れた硬度を繊維に付与できる。
【0153】
さらに、上記の繊維処理剤によれば、優れた耐スリップ性を、繊維に付与できる。その理由は、以下の通り推察される。すなわち、上記したように、水分散性ブロックイソシアネートは、シラノール架橋構造を形成する。つまり、繊維を被覆する樹脂硬化物が、シラノール架橋構造を含有する。そのため、シラノール架橋構造に由来するミクロな凹凸が、繊維のスリップを抑制すると推察される。
【実施例0154】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
【0155】
1.硬化性樹脂組成物および接着剤
[硬化剤 水分散性ブロックイソシアネート]
実施例1
室温(25℃)において、攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量2Lの反応器に、ヘキサメチンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート誘導体(イソシアネート化合物(A)、商品名:タケネートD-170N、固形分100質量%、イソシアネート基含有量20.7%、三井化学社製)200質量部と、酢酸エチル(溶媒)とを仕込んだ。
【0156】
次いで、反応器に、数平均分子量1000のメトキシポリオキシエチレングリコール(MeOPEG、数平均分子量1000、親水性基付加剤(B))を加えた。そして、HDIのイソシアヌレート誘導体とメトキシポリオキシエチレングリコールとを反応させた。
【0157】
なお、メトキシポリオキシエチレングリコールの活性水素基(水酸基)の量は、HDIのイソシアヌレート誘導体が有するイソシアネート基100モルに対して、表1に示すモル数であった。
【0158】
次いで、反応器に、3,5-ジメチルピラゾール(DMP、ブロック剤(D))を加えた。そして、上記の反応生成物とDMPとを反応させた。
【0159】
なお、DMPの量は、HDIのイソシアヌレート誘導体が有するイソシアネート基100モルに対して、表1に示すモル数であった。
【0160】
次いで、反応器に、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(アルコキシシリル基付加剤(C)、信越化学工業社製、商品名:KBE-903)を加えた。そして、上記の反応生成物とKBE-903とを反応させた。
【0161】
なお、KBE-903の活性水素基(アミノ基)の量は、HDIのイソシアヌレート誘導体が有するイソシアネート基100モルに対して、表1に示すモル数であった。
【0162】
次いで、FT-IRスペクトルを測定し、遊離のイソシアネート基が消失していることを確認した。これによって、水分散性ブロックイソシアネートを含む反応液を得た。
【0163】
次いで、水分散性ブロックイソシアネートを含む反応液120質量部に、水250質量部を添加した。その後、反応液と水とをホモミキサーで攪拌して乳化させ、乳化液を得た。次いで、減圧条件下において、乳化液から、酢酸エチル(溶媒)を留去するともに、水の一部を留去した。
【0164】
以上によって、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を調製した。水分散性ブロックイソシアネートの水分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0165】
比較例1
3-アミノプロピルトリエトキシシラン(アルコキシシリル基付加剤(C)、信越化学工業社製、商品名:KBE-903)を配合しなかった。また、3,5-ジメチルピラゾール(DMP、ブロック剤)の配合量を、表1に示す処方に変更した。
【0166】
これ以外は、実施例1と同じ方法で、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を調製した。水分散性ブロックイソシアネートの水分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0167】
[主剤 ポリウレタンポリオール(ポリウレタン樹脂)]
合成例1
室温(25℃)において、攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量3Lの反応器に、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(商品名:PTG-2000SN、保土谷化学社製)703.3質量部と、トリエチレングリコール(東京化成工業社製)52.8質量部と、N-メチルジエタノールアミン(東京化成工業社製)144.6質量部と、アセトニトリル293.3質量部とを仕込んで、それらを液温40℃以下で30分間攪拌した。
【0168】
次いで、反応器に、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(商品名:タケネート 600、三井化学社製)346.1質量部を加えた。そして、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと、ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、トリエチレングリコールと、N-メチルジエタノールアミンとを30分間反応させた。
【0169】
その後、反応器にオクチル酸第一錫(商品名:スタノクト、三菱ケミカル社製)0.4質量部を加えて、液温が75℃になるまで反応器を加温した。そして、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと、ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、トリエチレングリコールと、N-メチルジエタノールアミンとを液温75℃にて3時間反応させた。その後、FT-IRスペクトルを測定することで、イソシアネート基が反応したことを確認した。これによって、ポリウレタンポリオールを生成した。
【0170】
その後、ポリウレタンポリオールを含む反応液を室温(25℃)まで冷却させ、反応液に、酢酸72.9質量部と、アセトニトリル586.7質量部とを添加して、1時間攪拌した。以上によって、ポリウレタンポリオールのアセトニトリル溶液を得た。
【0171】
次いで、20LのSUS製容器に、15℃~25℃に冷却した水4431.8質量部を仕込み、ホモミキサーで攪拌しながら、水に、ポリウレタンポリオールのアセトニトリル溶液2083.3質量部加えて乳化させた。
【0172】
次いで、減圧条件下において、乳化液から、アセトニトリル(溶媒)を留去するともに、水の一部を留去した。
【0173】
以上によって、ポリウレタンポリオールの水分散液(主剤)を調製した。ポリウレタンポリオールの水分散液の固形分濃度は、26.2質量%であった。
【0174】
[硬化性樹脂組成物(接着剤)]
製造例1
実施例1および比較例1で得られた水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を、硬化剤として使用した。また、合成例1で得られたポリウレタンポリオールの水分散液を、主剤として使用した。そして、主剤および硬化剤を混合して、硬化性樹脂組成物(接着剤)を製造した。
【0175】
より具体的には、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液(硬化剤)と、合成例1のポリウレタンポリオールの水分散液(主剤)とを混合し、混合分散液を得た。なお、ポリウレタンポリオールの水分散液が含有する固形分に対する、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液が含有する固形分の質量比(水分散性ブロックイソシアネート/ポリウレタンポリオール)は、1/6であった。
【0176】
その後、混合分散液に水を加えて30分間攪拌し、最終的な固形分濃度を20質量%に調整した。これによって、硬化性樹脂組成物(接着剤)を製造した。
【0177】
[評価]
(1)硬度
硬化性樹脂組成物(接着剤)を、ガラスからなる基材上に、乾燥厚み50μmとなるように塗布した。その後、硬化性樹脂組成物(接着剤)の塗膜を、150℃で30分間硬化させた後、23℃で7日間養生した。
【0178】
次いで、BYK社製のペンデュラム硬度計(ケーニッヒ振り子)により、ASTM D4366に準拠して、硬度を測定した。測定条件を、以下に示す。
【0179】
基材:ガラス
装置:ペンデュラム硬度計
装置メーカー:BYK-Gardner GmbH
配合条件:主剤/硬化剤:6/1(質量比)
硬化条件:150℃×30分
測定条件:ケーニッヒ振り子 12°
評価:3回測定の平均値
【0180】
(2)接着性
硬化性樹脂組成物(接着剤)を、ガラスまたはABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)からなる基材上に、乾燥厚み50μmとなるように塗布した。その後、硬化性樹脂組成物(接着剤)の塗膜を、130℃で30分間硬化させた。
【0181】
次いで、JIS K5600-5-6(1999)に基づいて、塗膜の硬化物の密着性を、25マスの碁盤目試験により評価した。評価基準を、以下に示す。
【0182】
○:密着部位20マス以上
×:密着部位20マス未満
【0183】
【0184】
2.硬化性樹脂組成物および繊維処理剤
[硬化剤 水分散性ブロックイソシアネート]
実施例2~8
表2に記載の処方に変更した。これ以外は、実施例1と同じ方法で、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液(20質量%)を調製した。
【0185】
実施例9
室温(25℃)において、攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量2Lの反応器に、ヘキサメチンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート誘導体(イソシアネート化合物(A)、商品名:タケネートD-170N、固形分100質量%、イソシアネート基含有量20.7%、三井化学社製)200質量部と、酢酸エチル(溶媒)とを仕込んだ。
【0186】
次いで、反応器に、3,5-ジメチルピラゾール(DMP、ブロック剤(D))を加えた。そして、HDIのイソシアヌレート誘導体とDMPとを反応させた。
【0187】
なお、DMPの量は、HDIのイソシアヌレート誘導体が有するイソシアネート基100モルに対して、表2に示すモル数であった。
【0188】
次いで、反応器に、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(アルコキシシリル基付加剤(C)、信越化学工業社製、商品名:KBE-903)を加えた。そして、上記の反応生成物とKBE-903とを反応させた。
【0189】
なお、KBE-903の活性水素基(アミノ基)の量は、HDIのイソシアヌレート誘導体が有するイソシアネート基100モルに対して、表2に示すモル数であった。
【0190】
次いで、反応器に、3-(シクロヘキシルアミノ)-プロパンスルホン酸(親水性基付加剤(B)、CAPS、東京化成工業社製)を加えた。そして、上記の反応生成物とCAPSとを反応させた。
【0191】
なお、CAPSの活性水素基(アミノ基)の量は、HDIのイソシアヌレート誘導体が有するイソシアネート基100モルに対して、表2に示すモル数であった。
【0192】
次いで、反応器に、中和剤として、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(有機塩基、DMCHA、東京化成工業社製)を加えた。これにより、CAPSに由来するスルホ基(スルホン酸)を、DMCHAで中和した。
【0193】
なお、DMCHAの量は、HDIのイソシアヌレート誘導体が有するイソシアネート基100モルに対して、表2に示すモル数であった。また、DMCHAの量は、CAPSに由来するスルホ基1モルに対して、1モルであった。
【0194】
次いで、FT-IRスペクトルを測定し、遊離のイソシアネート基が消失していることを確認した。これによって、水分散性ブロックイソシアネートを含む反応液を得た。
【0195】
次いで、水分散性ブロックイソシアネートを含む反応液120質量部に、水250質量部を添加した。その後、反応液と水とをホモミキサーで攪拌して乳化させ、乳化液を得た。次いで、減圧条件下において、乳化液から、酢酸エチル(溶媒)を留去するともに、水の一部を留去した。
【0196】
以上によって、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を調製した。水分散性ブロックイソシアネートの水分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0197】
実施例10
CAPSに代えて、2-(ジメチルアミノ)エタノール(親水性基付加剤(B)、DMAE、東京化成工業社製)を使用した。また、塩基(DMCHA)に代えて、酢酸を使用し、2-(ジメチルアミノ)エタノールに由来する3級アミノ基を、3級アンモニウム化した。これ以外は、実施例9と同じ方法で、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液(20質量%)を調製した。
【0198】
実施例11~14
表3に記載の処方に変更した。これ以外は、実施例1と同じ方法で、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液(20質量%)を調製した。
【0199】
実施例16
室温(25℃)において、攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量2Lの反応器に、ヘキサメチンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート誘導体(イソシアネート化合物(A)、商品名:タケネートD-170N、固形分100質量%、イソシアネート基含有量20.7%、三井化学社製)200質量部と、酢酸エチル(溶媒)とを仕込んだ。
【0200】
次いで、反応器に、数平均分子量1000のメトキシポリオキシエチレングリコール(MeOPEG、数平均分子量1000、親水性基付加剤(B))を加えた。そして、HDIのイソシアヌレート誘導体とメトキシポリオキシエチレングリコールとを反応させた。
【0201】
なお、メトキシポリオキシエチレングリコールの活性水素基(水酸基)の量は、HDIのイソシアヌレート誘導体が有するイソシアネート基100モルに対して、表3に示すモル数であった。
【0202】
次いで、反応器に、1,4―ブタンジオール(多価アルコール(E)、BD)を加えた。そして、上記の反応生成物とBDとを反応させた。
【0203】
なお、BDの活性水素基(水酸基)の量は、HDIのイソシアヌレート誘導体が有するイソシアネート基100モルに対して、表3に示すモル数であった。
【0204】
次いで、反応器に、3,5-ジメチルピラゾール(DMP、ブロック剤(D))を加えた。そして、上記の反応生成物とDMPとを反応させた。
【0205】
なお、DMPの量は、HDIのイソシアヌレート誘導体が有するイソシアネート基100モルに対して、表1に示すモル数であった。
【0206】
次いで、反応器に、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(アルコキシシリル基付加剤(C)、信越化学工業社製、商品名:KBE-903)を加えた。そして、上記の反応生成物とKBE-903とを反応させた。
【0207】
なお、KBE-903の活性水素基(アミノ基)の量は、HDIのイソシアヌレート誘導体が有するイソシアネート基100モルに対して、表3に示すモル数であった。
【0208】
次いで、FT-IRスペクトルを測定し、遊離のイソシアネート基が消失していることを確認した。これによって、水分散性ブロックイソシアネートを含む反応液を得た。
【0209】
次いで、水分散性ブロックイソシアネートを含む反応液120質量部に、水250質量部を添加した。その後、反応液と水とをホモミキサーで攪拌して乳化させ、乳化液を得た。次いで、減圧条件下において、乳化液から、酢酸エチル(溶媒)を留去するともに、水の一部を留去した。
【0210】
以上によって、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を調製した。水分散性ブロックイソシアネートの水分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0211】
実施例16~18
多価アルコール(E)の処方を、表3に記載の通りに変更した。これ以外は、実施例16と同じ方法で、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液(20質量%)を調製した。
【0212】
実施例19~20
アルコキシシリル基付加剤(C)の処方を、表3に記載の通りに変更した。これ以外は、実施例1と同じ方法で、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液(20質量%)を調製した。
【0213】
[主剤 アクリルポリオール(アクリル樹脂)]
合成例2
500mLフラスコに、アクリル酸ステアリル75.0g、ステアリルジメチルアミン塩酸塩1.0g、ポリオキシエチレン(10モル)ラウリルエーテル4.0g、ドデシルメルカプタン0.15g、トリプロピレングリコール25.0g、および、水144.5gを入れ、45℃で混合攪拌した。これにより、混合液を得た。
【0214】
上記の混合液に超音波を照射し、上記の各成分を水中に乳化分散させた。次いで、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.25gを、混合液に添加した。そして、上記の各成分を、混合液内で、窒素雰囲気下60℃に加熱し、6時間かけてラジカル重合させた。これにより、アクリルポリオールの水分散液(主剤)を得た。アクリル樹脂の水分散液(主剤)の固形分濃度は30.0質量%であった。
【0215】
[硬化性樹脂組成物(繊維処理剤)]
製造例2
各実施例および各比較例で得られた水分散性ブロックイソシアネートの水分散液を、硬化剤として使用した。また、合成例2で得られたアクリルポリオールの水分散液を、主剤として使用した。そして、主剤および硬化剤を混合して、硬化性樹脂組成物(繊維処理剤)を製造した。
【0216】
より具体的には、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液(硬化剤)と、合成例2のアクリルポリオールの水分散液(主剤)とを混合し、混合分散液を得た。なお、アクリルポリオールの水分散液が含有する固形分に対する、水分散性ブロックイソシアネートの水分散液が含有する固形分の質量比(水分散性ブロックイソシアネート/アクリルポリオール)は、1/6であった。
【0217】
その後、混合分散液に水を加えて30分間攪拌し、最終的な固形分濃度を3.5質量%に調整した。これによって、硬化性樹脂組成物1(繊維処理剤)を製造した。
【0218】
また、混合分散液に添加する水の量を変更して、最終的な固形分濃度を20質量%に調整した。これによって、硬化性樹脂組成物2(繊維処理剤)を製造した。
【0219】
[評価]
(1)撥水性
実施例1および比較例1の水分散性ブロックイソシアネートを含む硬化性樹脂組成物1(繊維処理剤、固形分濃度3.5質量%)に、綿布(JIS L0803(2011)準拠、カナキン3号)を浸漬した。次いで、綿布を硬化性樹脂組成物(繊維処理剤)から引き上げて、十分に絞り、ウエットピックアップを100%とした。その後、綿布を、常温(25℃)において、暗所で24時間乾燥させた。次いで、常温乾燥後の綿布を、170℃の加熱炉で3分間、加熱乾燥させた。
【0220】
次いで、加熱乾燥後の綿布を、JIS L0217(1995)に準拠して、家庭用全自動洗濯機で10回洗濯した。このとき、洗濯水37Lに対して、粉末洗剤(商品名:アタック高活性バイオEX、花王社製)を30g加えた。洗濯後の綿布を常温(25℃)において、暗所で24時間乾燥させた。これにより、試験布を得た。
【0221】
その後、試験布に、水とイソプロピルアルコールとの混合液(水/イソプロピルアルコール=9/1(質量比))20μLを滴下し、3分後の液滴の状態を観察した。その結果、実施例1の水分散性ブロックイソシアネートを含む硬化性樹脂組成物(繊維処理剤)を使用した場合と、比較例1の水分散性ブロックイソシアネートを含む硬化性樹脂組成物(繊維処理剤)を使用した場合とにおいて、試験布に対する液滴の染み込みの度合いは同程度であった。
【0222】
一方、合成例2で得られたアクリルポリオールの水分散液について、硬化剤を使用せず、上記と同様に評価した。その結果、試験布に対する液滴の染み込みの度合いは、実施例1および比較例1の水分散性ブロックイソシアネートを含む硬化性樹脂組成物(繊維処理剤)を使用した場合の試験布に対する液滴の染み込みの度合いに比べて、高かった。つまり、実施例1および比較例1の水分散性ブロックイソシアネートを含む硬化性樹脂組成物(繊維処理剤)を使用した場合に、試験布の撥水性が向上することが確認された。
【0223】
(2)耐スリップ性(糸すべり耐性)
各実施例および各比較例の水分散性ブロックイソシアネートを含む硬化性樹脂組成物1(繊維処理剤、固形分濃度3.5質量%)に、綿布(JIS L0803(2011)準拠、カナキン3号)を浸漬した。次いで、綿布を硬化性樹脂組成物(繊維処理剤)から引き上げて、十分に絞り、ウエットピックアップを100%とした。その後、綿布を、常温(25℃)において、暗所で24時間乾燥させた。次いで、常温乾燥後の綿布を、170℃の加熱炉で3分間、加熱乾燥させた。
【0224】
次いで、加熱乾燥後の綿布を、JIS L1096(2010)に準拠して、縦35cmおよび横4cmの長方形に裁断した。
【0225】
その後、長手方向10cm(短部端縁から10cm)の部分において、綿布を折り返して、試験布を、縦25cmおよび横4cmの長方形に形成した。そして、折り目から1.3cm離れた部位において、綿布同士を、ミシンで縫い付けた。その後、折り目を切断し、縦32.4cmおよび横4cmの試験布を得た。なお、縫い付け条件を下記する。
【0226】
ミシン;家庭用ミシン(brother社製 S71-SL)
針;普通針11番、
糸;綿ミシン用♯60(白)
縫目の方向;短辺と並行
縫目の間隔;1.8mm
【0227】
その後、チャック幅5.0cmの引張試験機を用いて引張速度100mm/minで、試験布の縫い目を引張り、荷重―伸び曲線Aを作成した。また、同じ試験布の縫い目のない部分を、上記の条件で引張り、荷重―伸び曲線Bを作成した。
【0228】
そして、荷重―伸び曲線Aと、荷重―伸び曲線Bとを、同一グラフ上に作図した。曲線Aにおける伸びと、曲線Bにおける伸びとの差が1mmとなる場合の荷重を、滑脱抵抗力(N)とした。
【0229】
比較例1における滑脱抵抗力(N)を100としたとき、各実施例および各比較例の滑脱抵抗力の相対値を算出した。また、滑脱抵抗力の相対値を、以下の基準で評価した。
【0230】
◎:滑脱抵抗力の相対値130以上
○:滑脱抵抗力の相対値120以上~130未満
△:滑脱抵抗力の相対値110以上~120未満
×:滑脱抵抗力の相対値110未満
【0231】
(3)耐候性
各硬化性樹脂組成物(繊維処理剤)を使用して、繊維を処理し、繊維表面(樹脂硬化物)の耐候性を確認した。
【0232】
より具体的には、各実施例および各比較例の水分散性ブロックイソシアネートを含む硬化性樹脂組成物2(繊維処理剤、固形分濃度20質量%)に、レベリング剤(商品名:BYK-348、ビックケミー・ジャパン社製)加えて、30分間攪拌した。レベリング剤の添加割合は、硬化性樹脂組成物2(繊維処理剤、固形分濃度20質量%)100質量部に対して、0.5質量部であった。これによって、耐候性評価液を調製した。
【0233】
次いで、耐候性評価液をポリプロピレン基材に塗布した。次いで、耐候性評価液の塗膜を、150で30分間硬化させた。これにより、硬化膜(樹脂硬化物)を得た。
【0234】
その後、スガ試験機社製 ウエザーメーター FDPを使用し、昼条件(28W/m2、60℃、相対湿度10%、4時間)と、夜条件(0W/m2、50℃、相対湿度100%、4時間)とを交互に繰り返した。つまり、硬化膜(樹脂硬化物)を、耐光性試験に供した。
【0235】
そして、硬化膜(樹脂硬化物)の168時間後の黄変度(b*)を、MINOLTA製 色彩色差計 CR―200を使用して、測定した。そして、耐光性試験前の黄変度(b*(0))に対する、耐光性試験後の黄変度(b*)の差(黄変度の変化量(Δb*=b*-b*(0)))を、以下の基準で評価した。
【0236】
3点(○);黄変度の変化量(Δb*)が1未満
2点(△);黄変度の変化量(Δb*)が1以上3未満
1点(×);黄変度の変化量(Δb*)が3以上
【0237】
【0238】
【表3】
表中の略号の詳細を下記する。
[イソシアネート化合物(A)]
D-170N;ヘキサメチンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート誘導体、商品名:タケネートD-170N、固形分100質量%、三井化学社製
D-370N;ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)のイソシアヌレート、商品名:スタビオD-370N、固形分100質量%、三井化学社製
D-131N;キシリレンジイソシアネート(XDI)のイソシアヌレート誘導体、商品名:タケネートD-131N、固形分75質量%、三井化学社製
D-127N;1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3-H6XDI)のイソシアヌレート、商品名:タケネートD-127N、固形分75質量%、三井化学社製
D-204EA-1;トリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート、商品名:タケネートD-204、固形分50質量%、三井化学社製
D-160N;ヘキサメチンジイソシアネート(HDI)のトリメチロールプロパン(TMP)付加体、商品名:タケネートD-160N、固形分75質量%、三井化学社製
D-178NL;ヘキサメチンジイソシアネート(HDI)のアロファネート誘導体、商品名:タケネートD-178NL、固形分100質量%、三井化学社製
D-165N;ヘキサメチンジイソシアネート(HDI)のビウレット誘導体、商品名:タケネートD-165N、固形分100質量%、三井化学社製
[親水性基付加剤(B)]
MeOPEG;メトキシポリオキシエチレングリコール、メトキシPEG1000
CAPS;3-シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸
DMCHA;N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン
DMAE;ジメチルアミノエタノール
[アルコキシシリル基付加剤(C)]
3-アミノプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業社製、商品名:KBE-903
[ブロック剤(D)]
DMP;3,5-ジメチルピラゾール
MEKO;メチルエチルケトンオキシム
IMZ;イミダゾール
DiPA;ジイソプロピルアミン
[多価アルコール(E)]
BD;1,4―ブタンジオール
EG;エチレングリコール
1,4BDM;1,4-ベンゼンジメタノール