(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140321
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】液圧ユニット
(51)【国際特許分類】
F15B 1/02 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F15B1/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051411
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸 祐哉
(72)【発明者】
【氏名】中村 博一
(72)【発明者】
【氏名】上林 淳浩
(72)【発明者】
【氏名】野口 陽生
【テーマコード(参考)】
3H086
【Fターム(参考)】
3H086AA26
3H086AB03
3H086AD07
3H086AD13
3H086AD70
(57)【要約】
【課題】アキュムレータのプラダにおけるガス圧をより簡単に検知する。
【解決手段】油圧ユニット(1)は、アキュムレータ(30)を含む油圧回路(2)を備える。油圧回路の運転開始時(S)、アキュムレータの油室(33)における油圧(PW)が目標圧力(P1)に達するまで、油室に対して作動油(W)を供給する。検知対象(F)の運転開始時において油圧が目標圧力に達するまで油室に対して供給される作動油の流量(Q)を時間(t)で積分した対象積分値(IF)を、検知基準(K)の運転開始時において油圧が目標圧力に達するまで油室に対して供給される作動油の流量を時間で積分した既知の基準積分値(IK)と比較することによって、アキュムレータのプラダ(32)におけるガス圧(PA)を検知する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アキュムレータ(30)を含む液圧回路(2)を備え、
前記液圧回路(2)の運転開始時(S)、前記アキュムレータ(30)の液室(33)における液圧(PW)が目標圧力(P1)に達するまで、前記液室(33)に対して作動液(W)を供給しており、
検知対象(F)の前記運転開始時(S)において前記液圧(PW)が前記目標圧力(P1)に達するまで前記液室(33)に対して供給される前記作動液(W)の流量(Q)を時間(t)で積分した対象積分値(IF)を、検知基準(K)の前記運転開始時(S)において前記液圧(PW)が前記目標圧力(P1)に達するまで前記液室(33)に対して供給される前記作動液(W)の前記流量(Q)を前記時間(t)で積分した既知の基準積分値(IK)と比較することによって、前記アキュムレータ(30)のプラダ(32)におけるガス圧(PA)を検知する、液圧ユニット。
【請求項2】
前記液圧回路(2)は、液圧ポンプ(10)を含み、
前記液圧ポンプ(10)は、モータ(12)によって駆動する固定容量ポンプ(11)であり、
前記流量(Q)は、前記モータ(12)の回転数(N)に応じて変化しており、
前記対象積分値(IF)及び前記基準積分値(IK)は、前記液圧(PW)が前記目標圧力(P1)に達するまで前記液室(33)に対して前記作動液(W)を供給するときの前記回転数(N)を前記時間(t)で積分することによって、求められる、請求項1に記載の液圧ユニット。
【請求項3】
前記液圧回路(2)は、液圧ポンプ(10)を含み、
前記液圧ポンプ(10)は、可変容量ポンプ(14)であり、
前記流量(Q)は、前記液圧ポンプ(10)の斜板角度(θ)又は斜軸角度に応じて変化しており、
前記対象積分値(IF)及び前記基準積分値(IK)は、前記液圧(PW)が前記目標圧力(P1)に達するまで前記液室(33)に対して前記作動液(W)を供給するときの前記斜板角度(θ)又は前記斜軸角度を前記時間(t)で積分することによって、求められる、請求項1に記載の液圧ユニット。
【請求項4】
前記対象積分値(IF)が、前記基準積分値(IK)よりも大きな第1閾値(E1)よりもさらに大きい場合、前記ガス圧(PA)の低下を判定する、請求項1から3のいずれか1つに記載の液圧ユニット。
【請求項5】
前記対象積分値(IF)が、前記第1閾値(E1)よりも大きな第2閾値(E2)よりもさらに大きい場合又は前記基準積分値(IK)よりも小さな第3閾値(E3)よりもさらに小さい場合、前記プラダ(32)の破損を判定する、請求項4に記載の液圧ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液圧ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
アキュムレータを含む液圧回路を備える液圧ユニットがある。液圧ユニットにおける液圧回路を正常に運転するためには、アキュムレータのプラダにおけるガス圧を検知する必要がある。アキュムレータのプラダにおけるガス圧を検知する手法として、例えば特許文献1に示すように、種々の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アキュムレータのプラダにおけるガス圧を検知するに際して、従来の検知手法では、専用のガス圧検知装置を準備したり、通常運転モードとは異なる専用のガス圧検知モードを準備したりする必要があるため、液圧ユニットの構成が複雑にならざるを得なかった。
【0005】
本開示の目的は、アキュムレータのプラダにおけるガス圧をより簡単に検知することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様に係る液圧ユニット(1)は、アキュムレータ(30)を含む液圧回路(2)を備え、前記液圧回路(2)の運転開始時(S)、前記アキュムレータ(30)の液室(33)における液圧(PW)が目標圧力(P1)に達するまで、前記液室(33)に対して作動液(W)を供給しており、検知対象(F)の前記運転開始時(S)において前記液圧(PW)が前記目標圧力(P1)に達するまで前記液室(33)に対して供給される前記作動液(W)の流量(Q)を時間(t)で積分した対象積分値(IF)を、検知基準(K)の前記運転開始時(S)において前記液圧(PW)が前記目標圧力(P1)に達するまで前記液室(33)に対して供給される前記作動液(W)の前記流量(Q)を前記時間(t)で積分した既知の基準積分値(IK)と比較することによって、前記アキュムレータ(30)のプラダ(32)におけるガス圧(PA)を検知する。
【0007】
第1態様に係る液圧ユニット(1)では、作動液(W)の液圧(PW)が目標圧力(P1)に達するまでアキュムレータ(30)の液室(33)に対して供給される作動液(W)の流量(Q)を時間(t)で積分することによって、対象積分値(IF)及び基準積分値(IK)が得られる。第1態様に係る液圧ユニット(1)では、対象積分値(IF)を基準積分値(IK)と比較するという簡単な手法によって、アキュムレータ(30)のプラダ(32)におけるガス圧(PA)を検知することができる。
【0008】
本開示の第2態様に係る液圧ユニット(1)は、第1態様に係る液圧ユニット(1)であって、前記液圧回路(2)は、液圧ポンプ(10)を含み、前記液圧ポンプ(10)は、モータ(12)によって駆動する固定容量ポンプ(11)であり、前記流量(Q)は、前記モータ(12)の回転数(N)に応じて変化しており、前記対象積分値(IF)及び前記基準積分値(IK)は、前記液圧(PW)が前記目標圧力(P1)に達するまで前記液室(33)に対して前記作動液(W)を供給するときの前記回転数(N)を前記時間(t)で積分することによって、求められる。
【0009】
第2態様に係る液圧ユニット(1)では、作動液(W)の流量(Q)を用いることなく、液圧ポンプ(10)(固定容量ポンプ(11))におけるモータ(12)の回転数(N)を時間(t)で積分することによって、対象積分値(IF)及び基準積分値(IK)を簡単に求めることができる。
【0010】
本開示の第3態様に係る液圧ユニット(1)は、第1態様に係る液圧ユニット(1)であって、前記液圧回路(2)は、液圧ポンプ(10)を含み、前記液圧ポンプ(10)は、可変容量ポンプ(14)であり、前記流量(Q)は、前記液圧ポンプ(10)の斜板角度(θ)又は斜軸角度に応じて変化しており、前記対象積分値(IF)及び前記基準積分値(IK)は、前記液圧(PW)が前記目標圧力(P1)に達するまで前記液室(33)に対して前記作動液(W)を供給するときの前記斜板角度(θ)又は前記斜軸角度を前記時間(t)で積分することによって、求められる。
【0011】
第3態様に係る液圧ユニット(1)では、作動液(W)の流量(Q)を用いることなく、液圧ポンプ(10)(可変容量ポンプ(14))における斜板角度(θ)又は斜軸角度を時間(t)で積分することによって、対象積分値(IF)及び基準積分値(IK)を簡単に求めることができる。
【0012】
本開示の第4態様に係る液圧ユニット(1)は、第1態様から第3態様のいずれか1つに係る液圧ユニット(1)であって、前記対象積分値(IF)が、前記基準積分値(IK)よりも大きな第1閾値(E1)よりもさらに大きい場合、前記ガス圧(PA)の低下を判定する。
【0013】
第4態様に係る液圧ユニット(1)では、対象積分値(IF)を第1閾値(E1)と比較するという簡単な手法によって、アキュムレータ(30)のプラダ(32)におけるガス圧(PA)の低下を判定することができる。
【0014】
本開示の第5態様に係る液圧ユニット(1)は、第4態様に係る液圧ユニット(1)であって、前記対象積分値(IF)が、前記第1閾値(E1)よりも大きな第2閾値(E2)よりもさらに大きい場合又は前記基準積分値(IK)よりも小さな第3閾値(E3)よりもさらに小さい場合、前記プラダ(32)の破損を判定する。
【0015】
第5態様に係る液圧ユニット(1)では、対象積分値(IF)を第2閾値(E2)又は第3閾値(E3)と比較するという簡単な手法によって、アキュムレータ(30)のプラダ(32)の破損を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る油圧ユニット(1)を示す。
【
図2】
図2は、油圧回路(2)の第1運転開始時(S1)におけるアキュムレータ(30)を示す。
【
図3】
図3は、油圧回路(2)の第2運転開始時(S2)におけるアキュムレータ(30)を示す。
【
図4】
図4は、作動油(W)の流量(PW)の時間(t)毎の変化をグラフで示す。
【
図5】
図5は、アキュムレータ(30)のプラダ(32)におけるガス圧(PA)の検知をフローチャートで示す。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る油圧ユニット(1)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
(油圧ユニット)
図1は、第1実施形態に係る液圧ユニットとしての油圧ユニット(1)を示す。油圧ユニット(1)は、液圧回路としての油圧回路(2)と、コントローラ(3)と、を備える。油圧回路(2)は、液圧ポンプとしての油圧ポンプ(10)と、アクチュエータ(20)と、アキュムレータ(30)と、液圧計としての油圧計(40)と、切換バルブ(50)と、排出バルブ(60)と、チェックバルブ(70)と、タンク(T)と、を含む。油圧回路(2)には、作動液としての作動油(W)が循環する。
【0018】
油圧ポンプ(10)は、固定容量ポンプ(11)である。油圧ポンプ(10)(固定容量ポンプ(11))として、例えば、ギヤポンプ、平衡形のベーンポンプなどがある。油圧ポンプ(10)は、モータ(12)に連結されており、モータ(12)によって駆動する。
【0019】
油圧ポンプ(10)から吐出される作動油(W)の流量(Q)は、モータ(12)の回転数(N)に応じて変化する。モータ(12)の回転数(N)が大きいほど、油圧ポンプ(10)からの作動油(W)の流量(Q)は、大きくなる。モータ(12)の回転数(N)が小さいほど、油圧ポンプ(10)からの作動油(W)の流量(Q)は、小さくなる。流量(Q)の単位として、例えば[L/min]が用いられる。回転数(N)の単位として、例えば[min-1]が用いられる。モータ(12)の回転数(N)は、回転数センサ(13)によって検知される。回転数センサ(13)として、例えばエンコーダなどがある。
【0020】
油圧ポンプ(10)に対する作動油(W)の供給源は、タンク(T)である。油圧ポンプ(10)から吐出された作動油(W)は、アクチュエータ(20)及びアキュムレータ(30)に供給され得る。
【0021】
アクチュエータ(20)は、油圧シリンダ機構である。アクチュエータ(20)は、主に、油圧ポンプ(10)から供給された作動油(W)によって、駆動する。詳細は後述するが、アクチュエータ(20)は、補助的に、アキュムレータ(30)から供給された作動油(W)によっても、駆動し得る。アクチュエータ(20)は、作動油(W)によって、機械的仕事を行う。アクチュエータ(20)は、シリンダ(21)と、ピストン(22)と、ロッド(23)と、を有する。
【0022】
ピストン(22)は、シリンダ(21)の内部に配置されている。シリンダ(21)の内部は、ピストン(22)よりも軸方向の後側(
図1の左側)の後室(24)と、ピストン(22)よりも軸方向の前側(
図1の右側)の前室(25)と、に区画されている。ロッド(23)は、シリンダ(21)内の前室(25)において、ピストン(22)の前面に連結されている。ロッド(23)は、軸方向に延びており、シリンダ(21)内の前室(25)におけるピストン(22)の前面から出発して、シリンダ(21)の外部に突出している。
【0023】
シリンダ(21)内の後室(24)に作動油(W)が供給されると、ピストン(22)が前方に移動して、ロッド(23)が前方に突出する。シリンダ(21)内の前室(25)に作動油(W)が供給されると、ピストン(22)が後方に移動して、ロッド(23)が後方に引っ込む。
【0024】
アキュムレータ(30)は、補助的に油圧ポンプ(10)と共に、アクチュエータ(20)に対して作動油(W)を供給したり、非常時に油圧ポンプ(10)に代わって、アクチュエータ(20)に対して作動油(W)を供給したりする。アキュムレータ(30)は、蓄圧器とも呼ばれており、作動油(W)の液圧としての油圧(PW)を蓄える。アキュムレータ(30)は、ガス(A)の圧縮性と作動油(W)の非圧縮性とを利用して、作動油(W)の油圧(PW)を、蓄積したり放出したりする。油圧(PW)の単位として、例えば[Pa]が用いられる。
【0025】
アキュムレータ(30)は、シェル(31)と、プラダ(32)と、を有する。シェル(31)は、例えば、略円柱状、略球状又は略長球状である。シェル(31)は、中空である。シェル(31)の一端部には、シェル(31)の内外を連通するガス封入口(31a)が設けられている。シェル(31)の他端部には、シェル(31)の内外を連通する作動油出入口(31b)が設けられている。
【0026】
シェル(31)の内部には、プラダ(32)が配置されている。プラダ(32)は、例えばゴムなどの弾性部材で形成されている。プラダ(32)は、例えば、中空の略球状又略長球状である。プラダ(32)は、風船のように膨張したり収縮したりする。プラダ(32)は、シェル(31)の内部において、ガス封入口(31a)を覆っている。プラダ(32)内には、ガス封入口(31a)を介して、ガス(A)が封入されている。ガス封入口(31a)は、油圧回路(2)の運転時、密閉されている。ガス(A)として、例えば窒素ガスなどがある。
【0027】
シェル(31)の内部におけるプラダ(32)が配置されていない部分には、液室としての油室(33)が形成されている。油室(33)は、作動油出入口(31b)に連通している。作動油(W)は、作動油出入口(31b)を介して油室(33)に出入りする。油圧ポンプ(10)から吐出された作動油(W)は、作動油出入口(31b)を介して油室(33)に供給される。作動油(W)は、作動油出入口(31b)を介して油室(33)から排出される。プラダ(32)は、隔膜として、シェル(31)の内部において、ガス(A)と作動油(W)(油室(33))とを分離する。
【0028】
プラダ(32)の体積と油室(33)の体積とは可変であり、両者の合計はシェル(31)の内部全体の体積である。作動油(W)が油室(33)に押し込まれると、作動油(W)の油圧(PW)によってプラダ(32)内のガス(A)が圧縮されて、プラダ(32)の体積が小さくなる。小さくなったプラダ(32)の体積分だけ、油室(33)の体積は大きくなる。大きくなった油室(33)の体積分だけ、油室(33)に多くの作動油(W)が蓄えられる。
【0029】
油圧計(40)は、アキュムレータ(30)の油室(33)に連通しており、油室(33)に蓄えられた作動油(W)の油圧(PW)を検出する。
【0030】
切換バルブ(50)は、アクチュエータ(20)と油圧ポンプ(10)との間且つアクチュエータ(20)とアキュムレータ(30)との間に、配置されている。切換バルブ(50)は、第1モード(51)と第2モード(52)と第3モード(53)との間で、切り換えられる。
【0031】
切換バルブ(50)が第1モード(51)のとき、油圧ポンプ(10)及び/又はアキュムレータ(30)からの作動油(W)がアクチュエータ(20)の後室(24)に供給されるとともに、前室(25)における作動油(W)がタンク(T)に排出される。切換バルブ(50)が第2モード(52)のとき、油圧ポンプ(10)及び/又はアキュムレータ(30)からの作動油(W)は、アクチュエータ(20)の後室(24)及び前室(25)のいずれにも供給されない。切換バルブ(50)が第3モード(53)のとき、油圧ポンプ(10)及び/又はアキュムレータ(30)からの作動油(W)がアクチュエータ(20)の前室(25)に供給されるとともに、後室(24)における作動油(W)がタンク(T)に排出される。
【0032】
排出バルブ(60)は、アキュムレータ(30)と切換バルブ(50)との間に配置されている。排出バルブ(60)は、開モード(61)と閉モード(62)との間で、切り換えられる。排出バルブ(60)が開モード(61)のとき、アキュムレータ(30)の油室(33)に蓄えられた作動油(W)は、作動油出入口(31b)を介して、タンク(T)に排出される。排出バルブ(60)が閉モード(62)のとき、アキュムレータ(30)の油室(33)に蓄えられた作動油(W)は、タンク(T)に排出されない。油圧回路(2)の運転時、排出バルブ(60)は、閉モード(62)である。油圧回路(2)の休止時、排出バルブ(60)は、開モード(61)である。
【0033】
チェックバルブ(70)は、逆止弁とも呼ばれている。チェックバルブ(70)は、油圧ポンプ(10)からアクチュエータ(20)及び/又はアキュムレータ(30)へ作動油(W)を通過させる。チェックバルブ(70)は、アクチュエータ(20)及び/又はアキュムレータ(30)から油圧ポンプ(10)への作動油(W)の逆流を阻止する。
【0034】
コントローラ(3)は、油圧回路(2)を制御する。コントローラ(3)は、例えば、マイコン及びプログラムで構成されている。コントローラ(3)は、油圧ポンプ(10)(モータ(12)及び回転数センサ(13))、油圧計(40)、切換バルブ(50)及び排出バルブ(60)に接続されており、これらとの間で検出信号や制御信号の送受を行う。
【0035】
(第1運転開始時)
図2は、油圧回路(2)の運転開始時(S)としての第1運転開始時(S1)におけるアキュムレータ(30)を示す。
図2では、第1運転開始時(S1)でのアキュムレータ(30)を、第1正常状態(S1a)、第1ガス圧低下状態(S1b)及び第1プラダ破損状態(S1c)の3パターンで示す。
【0036】
第1運転開始時(S1)は、例えば、油圧回路(2)を長期間休止した後に再び運転開始する場合である。油圧回路(2)の休止時には排出バルブ(60)が開モード(61)となるので、油圧回路(2)を長期間休止した場合には、アキュムレータ(30)の油室(33)に蓄えられた作動油(W)は、ほぼ全てタンク(T)に排出される場合がある。その場合、第1運転開始時(S1)では、アキュムレータ(30)の油室(33)は、空になる。アキュムレータ(30)の油室(33)は、大気圧(P0)となる。大気圧(P0)は、後述する目標圧力(P1)よりも小さい(P0<P1)。
【0037】
第1運転開始時(S1)において、アキュムレータ(30)におけるプラダ(32)のガス圧(PA)が低下していたり、アキュムレータ(30)におけるプラダ(32)が破損していたりすることがある。ガス圧(PA)の単位として、例えば[Pa]が用いられる。
【0038】
第1運転開始時(S1)では、排出バルブ(60)を閉モード(62)にするとともに、切換バルブ(50)を第2モード(52)とする。第1運転開始時(S1)では、油圧ポンプ(10)から吐出された作動油(W)は、アクチュエータ(20)に供給されずに、アキュムレータ(30)の油室(33)のみに供給される。第1運転開始時(S1)では、アキュムレータ(30)の油室(33)に供給される作動油(W)の流量(Q)は、油圧ポンプ(10)から吐出される作動油(W)の流量(Q)に一致する。
【0039】
油圧回路(2)の第1運転開始時(S1)、アキュムレータ(30)の油室(33)における油圧(PW)が目標圧力(P1)に達するまで、油圧ポンプ(10)からアキュムレータ(30)の油室(33)に対して、作動油(W)を供給する。油圧ユニット(1)のコントローラ(3)は、油圧計(40)からの検出信号に基づいて、アキュムレータ(30)の油室(33)における油圧(PW)が目標圧力(P1)に達したか否かを、判定する。目標圧力(P1)は、油圧ユニット(1)のコントローラ(3)に予め記憶されている。
【0040】
油圧回路(2)の第1運転開始時(S1)、アキュムレータ(30)の油室(33)における油圧(PW)が目標圧力(P1)に達するまで、アキュムレータ(30)の油室(33)に対して供給される作動油(W)の流量(Q)の合計を、総流量(R)とする。総流量(R)の単位として、例えば[L]が用いられる。総流量(R)は、油室(33)の体積に目標圧力(P1)に達するために要する圧縮分を加えた量に等しい。
【0041】
第1正常状態(S1a)は、アキュムレータ(30)のプラダ(32)が正常な状態である。第1正常状態(S1a)では、アキュムレータ(30)のプラダ(32)内におけるガス(A)のガス圧(PA)が低下しておらず、またプラダ(32)が破損していない。第1正常状態(S1a)でのプラダ(32)のガス圧(PA)を、第1正常ガス圧(PA1a)とする。第1正常状態(S1a)での総流量(R)を、第1正常総流量(R1a)とする。
【0042】
第1運転開始時(S1)にアキュムレータ(30)の油室(33)に作動油(W)を供給したとき、第1正常状態(S1a)の場合、作動油(W)を油室(33)に供給すればするほど、プラダ(32)による押し返し圧力が強くなる。第1正常状態(S1a)では、油室(33)における作動油(W)の油圧(PW)は、油室(33)に供給される作動油(W)が増えるに従って徐々に大きくなって、油室(33)における作動油(W)が第1正常総流量(R1a)に達したときに目標圧力(P1)に達する。
【0043】
第1ガス圧低下状態(S1b)は、アキュムレータ(30)のプラダ(32)内におけるガス(A)のガス圧(PA)が、第1正常状態(S1a)の場合に比較して低下した状態である。第1ガス圧低下状態(S1b)でのプラダ(32)のガス圧(PA)を、第1低下ガス圧(PA1b)とする。第1低下ガス圧(PA1b)は、第1正常ガス圧(PA1a)よりも小さい(PA1b<PA1a)。第1ガス圧低下状態(S1b)での総流量(R)を、第1ガス圧低下総流量(R1b)とする。
【0044】
第1運転開始時(S1)にアキュムレータ(30)の油室(33)に作動油(W)を供給したとき、第1ガス圧低下状態(S1b)の場合、第1正常状態(S1a)の場合と同様に、作動油(W)を油室(33)に供給すればするほど、プラダ(32)による押し返し圧力が強くなる。第1ガス圧低下状態(S1b)では、第1正常状態(S1a)の場合と同様に、油室(33)における作動油(W)の油圧(PW)は、油室(33)に供給される作動油(W)が増えるに従って徐々に大きくなって、油室(33)における作動油(W)が第1ガス圧低下総流量(R1b)に達したときに目標圧力(P1)に達する。
【0045】
しかしながら、第1ガス圧低下状態(S1b)では、プラダ(32)における第1低下ガス圧(PA1b)が第1正常ガス圧(PA1a)よりも小さいので、第1正常状態(S1a)の場合に比較して、プラダ(32)による押し返し圧力が弱い。第1ガス圧低下状態(S1b)では、油室(33)における作動油(W)の油圧(PW)が目標圧力(P1)に達するまでに、第1正常状態(S1a)の場合に比較して、より多くの作動油(W)を油室(33)に供給しなければならない。第1ガス圧低下総流量(R1b)は、第1正常総流量(R1a)よりも大きい(R1b>R1a)。
【0046】
第1プラダ破損状態(S1c)は、アキュムレータ(30)のプラダ(32)が破損した状態である。第1プラダ破損状態(S1c)でのプラダ(32)のガス圧(PA)を、第1プラダ破損ガス圧(PA1c)とする。第1プラダ破損ガス圧(PA1c)は、第1正常ガス圧(PA1a)及び第1低下ガス圧(PA1b)よりも小さく、ほぼゼロである(0≒PA1c<PA1b<PA1a)。第1プラダ破損状態(S1c)での総流量(R)を、第1プラダ破損総流量(R1c)とする。
【0047】
第1運転開始時(S1)にアキュムレータ(30)の油室(33)に作動油(W)を供給したとき、第1プラダ破損状態(S1c)の場合、第1正常状態(S1a)の場合及び第1ガス圧低下状態(S1b)の場合とは異なり、作動油(W)を油室(33)にいくら供給しても、プラダ(32)による押し返し圧力は強くならない(そもそもプラダ(32)による押し返し圧力が存在しない)。
【0048】
第1プラダ破損状態(S1c)では、第1正常状態(S1a)の場合及び第1ガス圧低下状態(S1b)の場合とは異なり、アキュムレータ(30)の油室(33)における作動油(W)の油圧(PW)は、プラダ(32)による押し返し圧力が存在しないため、油室(33)に供給される作動油(W)が増えるに従って単調に大きくなる。
【0049】
アキュムレータ(30)においてプラダ(32)が破損しているので、第1プラダ破損総流量(R1c)(油室(33)の体積)は、シェル(31)の内部全体の体積に目標圧力(P1)に達するために要する圧縮分を加えた量にほぼ等しい。第1プラダ破損総流量(R1c)は、第1正常総流量(R1a)及び第1ガス圧低下総流量(R1b)よりも大きい(R1c>R1b>R1a)。
【0050】
(第2運転開始時)
図3は、油圧回路(2)の運転開始時(t)としての第2運転開始時(S2)におけるアキュムレータ(30)を示す。
図3では、第2運転開始時(S2)でのアキュムレータ(30)を、第2正常状態(S2a)、第2ガス圧低下状態(S2b)及び第2プラダ破損状態(S2c)の3パターンで示す。以下の第2運転開始時(S2)の説明において、第1運転開始時(S1)と同様の事項については、詳細な説明を省略する。
【0051】
第2運転開始時(S1)は、例えば、油圧回路(2)を夜間に休止した翌日に再び運転開始する場合である。油圧回路(2)の休止時には排出バルブ(60)が開モード(61)となるものの、油圧回路(2)の休止期間が短いため、アキュムレータ(30)の油室(33)に蓄えられた作動油(W)は、全てタンク(T)に排出されるわけではなく、目標圧力(P1)に達するために必要な圧縮分のみがタンク(T)に排出され、油室(33)には作動油(W)が残存する。第2運転開始時(S2)では、アキュムレータ(30)の油室(33)には、タンク圧(PT)の作動油(W)が残存する。タンク圧(PT)は、タンク(T)の圧力に等しい。タンク圧(PT)は、目標圧力(P1)よりも小さい(PT<P1)。
【0052】
第2運転開始時(S2)における第2正常ガス圧(PA2a)、第2低下ガス圧(PA2b)及び第2プラダ破損ガス圧(PA2c)は、第1運転開始時(S1)における第1正常ガス圧(PA1a)、第1低下ガス圧(PA1b)及び第1プラダ破損ガス圧(PA1c)に相当する。第2運転開始時(S2)における第2総流量(R2)、第2正常総流量(R2a)、第2ガス圧低下総流量(R2b)及び第2プラダ破損総流量(R2c)は、第1運転開始時(S1)における第1総流量(R1)、第1正常総流量(R1a)、第1ガス圧低下総流量(R1b)及び第1プラダ破損総流量(R1c)に相当する。
【0053】
第2運転開始時(S2)における第2正常状態(S2a)及び第2ガス圧低下状態(S2b)については、アキュムレータ(30)の油室(33)にタンク圧(PT)の作動油(W)が残存すること以外、第1運転開始時(S1)における第1正常状態(S1a)及び第1ガス圧低下状態(S1b)と同様のため、詳細な説明を省略する。
【0054】
第2運転開始時(S2)にアキュムレータ(30)の油室(33)に作動油(W)を供給したとき、第2プラダ破損状態(S2c)の場合、油室(33)にはタンク圧(PT)の作動油(W)が残存している。作動油(W)は、非圧縮性であるが、昇圧するためにはわずかな圧縮分の油量が必要である。このため、第2プラダ破損状態(S2c)では、油室(33)における作動油(W)の油圧(PW)は、油室(33)に作動油(W)が供給されると直ぐに(第2プラダ破損総流量(R2c)のときに)、目標圧力(P1)に達する。
【0055】
第2運転開始時(S2)では、第1運転開始時(S1)の場合と異なり、第2プラダ破損総流量(R2c)は、第2正常総流量(R2a)及び第2ガス圧低下総流量(R2b)よりも小さい(R2c<R2a<R2b)。
【0056】
(作動油の流量)
図2,3に示すように、油圧回路(2)の運転開始時(S)において作動油(W)の油圧(PW)が目標圧力(P1)に達するまでアキュムレータ(30)の油室(33)に対して供給される作動油(W)の総流量(R)は、アキュムレータ(30)のプラダ(32)の状態に従って変化する。換言すると、油室(33)に対して供給される作動油(W)の総流量(R)を検知することによって、プラダ(32)のガス圧(PA)の低下やプラダ(32)の破損を間接的に検知することができる。
【0057】
図4は、作動油(W)の流量(Q)の時間(t)毎の変化をグラフで示す。
図4において、横軸は時間(t)で単位を[s]、縦軸は流量(Q)で単位を[L/min]とした。検知基準(K)の運転開始時(S)において作動油(W)の油圧(PW)が目標圧力(P1)に達するまで油室(33)に対して供給される作動油(W)の流量(Q)を時間(t)で積分した既知の値を、基準積分値(IK)とする。
【0058】
具体的には、検知基準(K)の運転開始時(S)において、作動油(W)の流量(Q)を、油室(33)に対して作動油(W)の供給を開始した開始時刻(t0)から、油室(33)における作動油(W)の油圧(PW)が目標圧力(P1)に達する到達時刻(t1)まで、時間(t)で積分することによって、基準積分値(IK)が得られる。基準積分値(IK)は、
図4のグラフの網掛部の面積でもある。
【0059】
検知基準(K)の運転開始時(S)とは、後述する検知対象(F)の運転開始時(S)によって比較(参照)されるための基準となるべく、予め設定された既知の運転開始時(S)である。検知基準(K)の運転開始時(S)は、アキュムレータ(30)のプラダ(32)が正常な状態における既知の運転開始時(S)である。基準積分値(IK)は、既知である。既知の基準積分値(IK)は、検知基準(K)の運転開始時(S)における実験又は初回運転時の記録などによって、既に得られている。基準積分値(IK)は、油圧ユニット(1)のコントローラ(3)に予め記憶されている。
【0060】
検知対象(F)の運転開始時(S)において作動油(W)の油圧(PW)が目標圧力(P1)に達するまで油室(33)に対して供給される作動油(W)の流量(Q)を時間(t)で積分した未知の値を、対象積分値(IF)とする。具体的には、検知対象(F)の運転開始時(S)において、作動油(W)の流量(Q)を、油室(33)に対して作動油(W)の供給を開始した開始時刻(t0)から、油室(33)における作動油(W)の油圧(PW)が目標圧力(P1)に達する到達時刻(t1)まで、時間(t)で積分することによって、対象積分値(IF)が得られる。対象積分値(IK)は、
図4のグラフの面積からも得られる。
【0061】
検知対象(F)の運転開始時(S)とは、油圧回路(2)を今から運転しようとする場合における未知の運転開始時(S)である。対象積分値(IF)は、未知である。
【0062】
図4では、対象積分値(IF)として、正常積分値(IFa)、ガス圧低下積分値(IFb)、作動油無プラダ破損積分値(IFc1)及び作動油有プラダ破損積分値(IFc2)を例示する。
【0063】
正常積分値(IFa)は、アキュムレータ(30)のプラダ(32)が正常な状態での対象積分値(IF)である。正常積分値(IFa)は、第1正常総流量(R1a)及び第2正常総流量(R2a)に相当する。第1正常総流量(R1a)と第2正常総流量(R2a)とは、厳密には互いに少し異なるが、簡単のため、正常積分値(IFa)に統一した。正常積分値(IFa)では、運転開始時(S)での油室(33)における作動油(W)の有無は、問われない。正常積分値(IFa)は、基準積分値(IK)にほぼ一致する。
【0064】
ガス圧低下積分値(IFb)は、アキュムレータ(30)のプラダ(32)内におけるガス(A)のガス圧(PA)が低下した状態での対象積分値(IF)である。ガス圧低下積分値(IFb)は、第1ガス圧低下状態(S1b)及び第2ガス圧低下状態(S2b)での対象積分値(IF)である。ガス圧低下積分値(IFb)は、第1ガス圧低下総流量(R1b)及び第2ガス圧低下総流量(R2b)に相当する。第1ガス圧低下総流量(R1b)及び第2ガス圧低下総流量(R2b)とは、厳密には互いに少し異なるが、簡単のため、ガス圧低下積分値(IFb)に統一した。ガス圧低下積分値(IFb)では、運転開始時(S)での油室(33)における作動油(W)の有無は、問われない。ガス圧低下積分値(IFb)は、基準積分値(IK)(正常積分値(IFa))よりも大きい。
【0065】
作動油無プラダ破損積分値(IFc1)は、運転開始時(S)においてアキュムレータ(30)の油室(33)に作動油(W)が存在せず且つアキュムレータ(30)のプラダ(32)が破損した状態での対象積分値(IF)である。作動油無プラダ破損積分値(IFc1)は、第1プラダ破損状態(S1c)での対象積分値(IF)である。作動油無プラダ破損積分値(IFc1)は、第1プラダ破損総流量(R1c)に相当する。作動油無プラダ破損積分値(IFc1)は、基準積分値(IK)(正常積分値(IFa))及びガス圧低下積分値(IFb)よりも大きい。
【0066】
作動油有プラダ破損積分値(IFc2)は、運転開始時(S)においてアキュムレータ(30)の油室(33)に作動油(W)が存在し且つアキュムレータ(30)のプラダ(32)が破損した状態での対象積分値(IF)である。作動油有プラダ破損積分値(IFc2)は、第2プラダ破損状態(S2c)での対象積分値(IF)である。作動油有プラダ破損積分値(IFc2)は、第2プラダ破損総流量(R2c)に相当する。作動油有プラダ破損積分値(IFc2)は、基準積分値(IK)(正常積分値(IFa))よりも小さい。
【0067】
基準積分値(IK)及び各対象積分値(IF)の大小関係は、以下のようになる。作動油有プラダ破損積分値(IFc2)<基準積分値(IK)≒正常積分値(IFa)<ガス圧低下積分値(IFb)<作動油無プラダ破損積分値(IFc1)。
【0068】
油圧ユニット(1)のコントローラ(3)は、対象積分値(IF)を基準積分値(IK)と比較することによって、アキュムレータ(30)のプラダ(32)におけるガス(A)のガス圧(PA)を検知する。対象積分値(IF)を基準積分値(IK)と比較するための具体的手法については、後述する。
【0069】
(モータの回転数)
上述したように、油圧ポンプ(10)は、モータ(12)によって駆動する固定容量ポンプ(11)である。アキュムレータ(30)の油室(33)に供給される作動油(W)の流量(Q)は、モータ(12)の回転数(N)に応じて変化する。
【0070】
図4のグラフの縦軸を、流量(Q)の代わりに回転数(N)とする。回転数(N)の単位を[min-1]とする。
図4のグラフの縦軸を回転数(N)にしたとしても、
図4のグラフの縦軸を流量(Q)にした場合に比較して、ほぼ相似なグラフが得られる。対象積分値(IF)及び基準積分値(IK)は、作動油(W)の油圧(PW)が目標圧力(P1)に達するまで油室(PW)に対して作動油(W)を供給するときにおけるモータ(12)の回転数(N)を時間(t)で積分することによって、求められる。
【0071】
(ガス圧検知フローチャート)
図5は、アキュムレータ(30)のプラダ(32)におけるガス圧(PA)の検知をフローチャートで示す。
図5に示すように、スタートから始まって、第1ステップ[H1]において、目標圧力(P1)と、基準積分値(IK)と、第1閾値(E1)と、第2閾値(E2)と、第3閾値(E3)と、を油圧ユニット(1)のコントローラ(3)に記憶(設定)する。
【0072】
第1閾値(E1)は、基準積分値(IK)よりも大きい。第1閾値(E1)は、例えば、基準積分値(IK)の110%である。第2閾値(E2)は、第1閾値(E1)よりも大きい。第2閾値(E2)は、例えば、基準積分値(IK)の120%である。第3閾値(E3)は、基準積分値(IK)よりも小さい。第3閾値(E3)は、例えば、基準積分値(IK)の50%である。
【0073】
第2ステップ[H2]において、排出バルブ(60)を閉モード(62)にするとともに、切換バルブ(50)を第2モード(52)にする。
【0074】
第3ステップ[H3]において、油圧ポンプ(10)を駆動させることによって、アキュムレータ(30)の油室(33)に対する作動油(W)の供給を開始する。アキュムレータ(30)の油室(33)に供給される作動油(W)の流量(Q)は、油圧ポンプ(10)から吐出される作動油(W)の流量(Q)に一致する。
【0075】
第4ステップ[H4]において、油圧ポンプ(10)(固定容量ポンプ(11))におけるモータ(12)の時間(t)毎の回転数(N)を、回転数センサ(13)によって検知しながら、コントローラ(3)に記憶する。
【0076】
第5ステップ[H5]において、アキュムレータ(30)の油室(33)に蓄えられた作動油(W)の油圧(PW)を、油圧計(40)によって検知しながら、油圧ユニット(1)のコントローラ(3)に記憶する。
【0077】
第6ステップ[H6]において、アキュムレータ(30)の油室(33)に蓄えられた作動油(W)の油圧(PW)が、目標圧力(P1)に到達したか否かを判定する。油圧(PW)が目標圧力(P1)に達していれば、第7ステップ[H7]に進む。油圧(PW)が目標圧力(P1)に達していなければ、第5ステップ[H5]に戻る。
【0078】
第7ステップ[H7]において、作動油(W)の油圧(PW)が目標圧力(P1)に達するまで油室(PW)に対して作動油(W)を供給するときにおけるモータ(12)の回転数(N)を時間(t)で積分することによって、対象積分値(IF)を求める(算出する)。なお、対象積分値(IF)の算出は、油圧ポンプ(10)による作動油(W)の供給開始(開始時刻(t0))から、油室(33)における作動油(W)の油圧(PW)が目標圧力(P1)に到達する(到達時刻(t1))まで、時々刻々と行ってもよい。
【0079】
第8ステップ[H8]において、対象積分値(IF)を、第3閾値(E3)(基準積分値(IK)の50%)と比較する。第8ステップ[H8]において、対象積分値(IF)が第3閾値(E3)よりもさらに小さい(対象積分値(IF)<第3閾値(E3))場合(
図4の作動油有プラダ破損積分値(IFc2)参照)、第9ステップ[H9]に進む。
【0080】
第9ステップ[H9]において、油圧ユニット(1)のコントローラ(3)は、アキュムレータ(30)におけるプラダ(32)の破損を判定する。プラダ(32)の破損は、プラダ(32)におけるガス圧(PA)がゼロであることに相当する。第9ステップ[H9]では、アキュムレータ(30)におけるプラダ(32)の破損を警告して、エンドに至る。
【0081】
第8ステップ[H8]において、対象積分値(IF)が第3閾値(E3)以上(対象積分値(IF)≧第3閾値(E3))である場合、第10ステップ[H10]に進む。
【0082】
第10ステップ[H10]において、対象積分値(IF)を、第2閾値(E2)(基準積分値(IK)の120%)と比較する。第10ステップ[H10]において、対象積分値(IF)が第2閾値(E2)よりもさらに大きい(対象積分値(IF)>第2閾値(E2))場合(
図4の作動油無プラダ破損積分値(IFc1)参照)、第11ステップ[H11]に進む。
【0083】
第11ステップ[H11]において、油圧ユニット(1)のコントローラ(3)は、アキュムレータ(30)におけるプラダ(32)の破損を判定する。プラダ(32)の破損は、プラダ(32)におけるガス圧(PA)がゼロであることに相当する。第11ステップ[H11]では、アキュムレータ(30)におけるプラダ(32)の破損を警告して、エンドに至る。
【0084】
第10ステップ[H10]において、対象積分値(IF)が第2閾値(E2)以下(対象積分値(IF)≦第2閾値(E2))である場合、第12ステップ[H12]に進む。
【0085】
第12ステップ[H12]において、対象積分値(IF)を、第1閾値(E1)(基準積分値(IK)の110%)と比較する。第12ステップ[H12]において、対象積分値(IF)が第1閾値(E1)よりもさらに大きい(対象積分値(IF)>第1閾値(E1))場合(
図4のガス圧低下積分値(IFb)参照)、第13ステップ[H13]に進む。
【0086】
第13ステップ[H13]において、油圧ユニット(1)のコントローラ(3)は、アキュムレータ(30)におけるプラダ(32)のガス圧(PA)の低下を判定する。第13ステップ[H13]では、アキュムレータ(30)におけるプラダ(32)のガス圧(PA)の低下を警告して、エンドに至る。
【0087】
第12ステップ[H12]において、対象積分値(IF)が第1閾値(E1)以下(対象積分値(IF)≦第1閾値(E1))である場合(
図4の正常積分値(IFa)参照)、第14ステップ[H14]に進む。
【0088】
第14ステップ[H14]において、油圧ユニット(1)のコントローラ(3)は、アキュムレータ(30)におけるプラダ(32)のガス圧(PA)が正常であると判定する。第14ステップ[H14]では、アキュムレータ(30)のプラダ(32)に関して特に警告せずに(警告無し)、エンドに至る。
【0089】
(作用効果)
本実施形態に係る油圧ユニット(1)では、作動油(W)の油圧(PW)が目標圧力(P1)に達するまでアキュムレータ(30)の油室(33)に対して供給される作動油(W)の流量(Q)を時間(t)で積分することによって、対象積分値(IF)及び基準積分値(IK)が得られる。本実施形態に係る油圧ユニット(1)では、対象積分値(IF)を基準積分値(IK)と比較するという簡単な手法によって、アキュムレータ(30)のプラダ(32)におけるガス圧(PA)を検知することができる。
【0090】
本実施形態に係る油圧ユニット(1)では、専用のガス圧検知装置(例えばプラダ(32)のガス圧(PA)を直接的に検出するためのガス圧計など)を準備する必要がないので、油圧ユニット(1)の構成が簡易になる。
【0091】
本実施形態に係る油圧ユニット(1)では、運転開始時(S)においてアキュムレータ(30)の油室(33)に作動油(W)を供給するという通常動作(通常運転モード)に際して、アキュムレータ(30)のプラダ(32)におけるガス圧(PA)を検知する。このように、本実施形態に係る油圧ユニット(1)では、通常運転モードとは異なる専用のガス圧検知モードを準備する必要がないので、油圧ユニット(1)の構成が簡易になる。
【0092】
本実施形態に係る油圧ユニット(1)では、作動油(W)の流量(Q)を用いることなく、油圧ポンプ(10)(固定容量ポンプ(11))におけるモータ(12)の回転数(N)を時間(t)で積分することによって、対象積分値(F)及び基準積分値(K)を簡単に求めることができる。作動油(W)の流量(Q)を直接的に測定できない場合に、有効である。
【0093】
本実施形態に係る油圧ユニット(1)では、対象積分値(IF)を第1閾値(E1)と比較するという簡単な手法によって、アキュムレータ(30)のプラダ(32)におけるガス圧(PA)の低下を判定することができる。
【0094】
本実施形態に係る油圧ユニット(1)では、対象積分値(IF)を第2閾値(E2)又は第3閾値(E3)と比較するという簡単な手法によって、アキュムレータ(30)のプラダ(32)の破損を判定することができる。
【0095】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態に係る油圧ユニット(1)を示す。以下の第2実施形態に係る油圧ユニット(1)の説明において、第1実施形態に係る油圧ユニット(1)と同様の構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0096】
第2実施形態に係る油圧ユニット(1)では、油圧ポンプ(10)は、可変容量ポンプ(14)である。油圧ポンプ(10)(可変容量ポンプ(14))として、例えば、ピストンポンプや非平衡形のベーンポンプなどがある。ピストンポンプには、斜板式と斜軸式とがある。油圧ポンプ(10)は、モータ(12)によって駆動する。
【0097】
本実施形態では、油圧ポンプ(10)(可変容量ポンプ(14))は、斜板式のピストンポンプである。油圧ポンプ(10)から吐出される作動油(W)の流量(Q)は、油圧ポンプ(10)における斜板(15)の斜板角度(θ)に応じて、変化する。斜板角度(θ)が大きいほど、ピストン(図示せず)の往復ストロークが大きくなって、流量(W)が大きくなる。斜板角度(θ)が小さいほど、ピストンの往復ストロークが小さくなって、流量(W)が小さくなる。斜板角度(θ)の単位として、例えば[°]がよく用いられる。斜板角度(θ)は、角度センサ(16)によって検知される。
【0098】
図4に二点鎖線で示すように、
図4のグラフの縦軸を、流量(Q)の代わりに斜板角度(θ)としてもよい。対象積分値(IF)及び基準積分値(IK)は、作動油(W)の油圧(PW)が目標圧力(P1)に達するまで油室(PW)に対して作動油(W)を供給するときにおける油圧ポンプ(10)(可変容量ポンプ(14))の斜板角度(θ)を時間(t)で積分することによって、求められる。
【0099】
本実施形態に係る油圧ユニット(1)では、作動油(W)の流量(Q)を用いることなく、油圧ポンプ(10)(可変容量ポンプ(14))における斜板角度(θ)を時間(t)で積分することによって、対象積分値(IF)及び基準積分値(IK)を簡単に求めることができる。作動油(W)の流量(Q)を直接的に測定できない場合に、有効である。
【0100】
<その他の実施形態>
第2実施形態に係る油圧ユニット(1)において、油圧ポンプ(10)(可変容量ポンプ(14))を、斜軸式のピストンポンプとしてもよい。この場合、油圧ポンプ(10)から吐出される作動油(W)の流量(Q)は、油圧ポンプ(10)における斜軸の斜軸角度に応じて、変化する。対象積分値(IF)及び基準積分値(IK)は、作動油(W)の油圧(PW)が目標圧力(P1)に達するまで油室(PW)に対して作動油(W)を供給するときにおける油圧ポンプ(10)(可変容量ポンプ(14))の斜軸角度を時間(t)で積分することによって、求められる。
【0101】
油圧回路(2)に流量計を設けてもよい。アキュムレータ(30)の油室(33)に供給される作動油(W)の流量(Q)を、流量計によって直接的に検出してもよい。対象積分値(IF)及び基準積分値(IK)は、作動油(W)の油圧(PW)が目標圧力(P1)に達するまで油室(PW)に対して作動油(W)を供給するときにおける(流量計によって直接的に検出された)作動油(W)の流量(Q)を時間(t)で積分することによって、求められてもよい。
【0102】
第4閾値を、さらに設定してもよい。第4閾値は、基準積分値(IK)よりも小さく且つ第3閾値(E3)よりも大きくてもよい。第4閾値は、例えば、基準積分値(IK)の90%でもよい。対象積分値(IF)が第3閾値(E3)以上であり且つ第4閾値(IK)よりも小さい(基準積分値(IK)の50%~90%である)場合に、アキュムレータ(30)におけるプラダ(32)のガス圧(PA)の増大を判定してもよい。
【0103】
作動液(W)としての作動水、液圧(PW)としての水圧、液圧ユニット(1)としての水圧ユニット、液圧回路(2)としての水圧回路、液室(33)としての水室、及び液圧ポンプ(10)としての水圧ポンプであってもよい。
【0104】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【符号の説明】
【0105】
W 作動油(作動液)
A ガス
T タンク
PW 油圧(液圧)
P0 大気圧
PT タンク圧
P1 目標圧力
PA ガス圧
Q 流量
R 総流量
N 回転数
θ 斜板角度
t 時間
S 運転開始時
K 検知基準
F 検知対象
IK 基準積分値
IF 対象積分値
E1 第1閾値
E2 第2閾値
E3 第3閾値
1 油圧ユニット(液圧ユニット)
2 油圧回路(液圧回路)
3 コントローラ
10 油圧ポンプ(液圧ポンプ)
11 固定容量ポンプ
12 モータ
13 回転数センサ
14 可変容量ポンプ
15 斜板
16 角度センサ
20 アクチュエータ
30 アキュムレータ
31 シェル
32 プラダ
33 油室(液室)
40 油圧計(液圧計)
50 切換バルブ
60 排出バルブ
70 チャッキバルブ