(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140323
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01C 15/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A01C15/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051414
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 英希
(72)【発明者】
【氏名】飛田 秀平
(72)【発明者】
【氏名】山崎 仁史
【テーマコード(参考)】
2B052
【Fターム(参考)】
2B052BA03
2B052BC05
2B052BC16
2B052DC01
2B052DC09
2B052DC14
2B052DD01
(57)【要約】
【課題】 施肥装置を有する田植え機のような作業車両が、知られている。ところで、本発明者は、作業車両ユーザーのさまざまなニーズを考慮し、便利な機能が田植え機のような作業車両へつぎつぎと実装される趨勢はますます加速すると考えている。しかしながら、従来の作業車両については、便利な機能を利用するときの使い勝手が必ずしもよくないことに本発明者は気付いた。より具体的には、たとえば、正確な肥料散布が必ずしも行われないことに本発明者は気付いた。
【解決手段】 施肥装置100を備えた田植え機であって、あらかじめ設定された施肥量での施肥作業が行われるように、施肥装置100は車輪スリップ率に応じて制御される田植え機である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施肥装置(100)を備えた作業車両であって、
あらかじめ設定された施肥量での施肥作業が行われるように、施肥装置(100)は車輪スリップ率に応じて制御されることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
昇降操作で圃場へ接地可能であるフロート(200)を備え、
スリップ測定開始タイミングからスリップ測定終了タイミングまでのスリップ測定期間において測定された車輪駆動量および車体移動量を利用することにより、車輪スリップ率は算出され、
フロート(200)が圃場へ接地されるように下降されるタイミングとして、スリップ測定開始タイミングは設定され、
接地されたフロート(200)が上昇されるタイミングとして、スリップ測定終了タイミングは設定されることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
圃場の走行経路は複数の工程へ分割されており、
車輪スリップ率は各々の工程について算出され、
任意の工程における施肥装置(100)の制御は直前の工程について算出された車輪スリップ率に応じて行われることを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
圃場の外周部の枕地における走行が行われることにより、算出された車輪スリップ率はキャンセルされることを特徴とする請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
施肥装置(100)が車輪スリップ率に応じて制御される施肥作業が行われながら、少なくとも車体位置、車体方位および施肥量についてのデータが圃場の各々のデータ測定点において測定され、
圃場は圃場区画に分割されており、
データ測定点は圃場区画ごとに区別され、
圃場区画単位のデータが生成されるとき、各々の圃場区画に属するデータ測定点の内、車体方位が基準方位から所定のレベルを超えてズレているデータ測定点は除外され、圃場区画単位のデータは除外されなかったデータ測定点を利用することにより生成され、
直進ラインに沿う走行のための自動直進制御が行われ、
直進ラインの基準となる第一の直進ライン基準点(A)、および直進ラインの基準となる第二の直進ライン基準点(B)を結ぶ直線の方位として、基準方位は得られることを特徴とする請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
スリップ測定開始タイミングからスリップ測定終了タイミングまでのスリップ測定期間において測定された車輪駆動量および車体移動量を利用することにより、車輪スリップ率は算出され、
マニュアル指示に応じて、スリップ測定開始タイミングおよびスリップ測定終了タイミングは設定され、
スリップ測定開始タイミングからの車輪駆動量が所定の車輪駆動量に達していないとき、スリップ測定終了タイミングを設定するためのマニュアル指示はリジェクトされることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項7】
スリップ測定開始タイミングからスリップ測定終了タイミングまでのスリップ測定期間において測定された車輪駆動量および車体移動量を利用することにより、車輪スリップ率は算出され、
直進ラインに沿う走行のための自動直進制御が行われ、
直進ラインの基準となる第一の直進ライン基準点(A)が取得されるタイミングとして、スリップ測定開始タイミングは設定され、
直進ラインの基準となる第二の直進ライン基準点(B)が取得されるタイミングとして、スリップ測定終了タイミングは設定されることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項8】
直進ラインの方位と異なる方位における走行が所定の車体移動量を超えて行われることにより、算出された車輪スリップ率はキャンセルされることを特徴とする請求項7に記載の作業車両。
【請求項9】
昇降操作で圃場へ接地可能であるフロート(200)を備え、
フロート(200)はスリップ測定期間において接地されていることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の作業車両。
【請求項10】
施肥作業を行いながら、少なくとも車体位置、車体方位および施肥量についてのデータを圃場の各々のデータ測定点において測定する作業車両であって、
圃場は圃場区画に分割されており、
データ測定点は圃場区画ごとに区別され、
圃場区画単位のデータが生成されるとき、各々の圃場区画に属するデータ測定点の内、車体方位が基準方位から所定のレベルを超えてズレているデータ測定点は除外され、圃場区画単位のデータは除外されなかったデータ測定点を利用することにより生成されることを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植え機のような作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
施肥装置を有する田植え機のような作業車両が、知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-268418号公報
【特許文献2】特開2011-206032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者は、作業車両ユーザーのさまざまなニーズを考慮し、便利な機能が田植え機のような作業車両へつぎつぎと実装される趨勢はますます加速すると考えている。
【0005】
しかしながら、従来の作業車両については、便利な機能を利用するときの使い勝手が必ずしもよくないことに本発明者は気付いた。
【0006】
より具体的には、たとえば、正確な肥料散布が必ずしも行われないことに本発明者は気付いた。
【0007】
本発明は、上述された従来の課題を考慮し、使い勝手を向上することができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明は、施肥装置(100)を備えた作業車両であって、
あらかじめ設定された施肥量での施肥作業が行われるように、施肥装置(100)は車輪スリップ率に応じて制御されることを特徴とする作業車両である。
【0009】
第2の本発明は、昇降操作で圃場へ接地可能であるフロート(200)を備え、
スリップ測定開始タイミングからスリップ測定終了タイミングまでのスリップ測定期間において測定された車輪駆動量および車体移動量を利用することにより、車輪スリップ率は算出され、
フロート(200)が圃場へ接地されるように下降されるタイミングとして、スリップ測定開始タイミングは設定され、
接地されたフロート(200)が上昇されるタイミングとして、スリップ測定終了タイミングは設定されることを特徴とする第1の本発明の作業車両である。
【0010】
第3の本発明は、圃場の走行経路は複数の工程へ分割されており、
車輪スリップ率は各々の工程について算出され、
任意の工程における施肥装置(100)の制御は直前の工程について算出された車輪スリップ率に応じて行われることを特徴とする第2の本発明の作業車両である。
【0011】
第4の本発明は、圃場の外周部の枕地における走行が行われることにより、算出された車輪スリップ率はキャンセルされることを特徴とする第3の本発明の作業車両である。
【0012】
第5の本発明は、施肥装置(100)が車輪スリップ率に応じて制御される施肥作業が行われながら、少なくとも車体位置、車体方位および施肥量についてのデータが圃場の各々のデータ測定点において測定され、
圃場は圃場区画に分割されており、
データ測定点は圃場区画ごとに区別され、
圃場区画単位のデータが生成されるとき、各々の圃場区画に属するデータ測定点の内、車体方位が基準方位から所定のレベルを超えてズレているデータ測定点は除外され、圃場区画単位のデータは除外されなかったデータ測定点を利用することにより生成され、
直進ラインに沿う走行のための自動直進制御が行われ、
直進ラインの基準となる第一の直進ライン基準点(A)、および直進ラインの基準となる第二の直進ライン基準点(B)を結ぶ直線の方位として、基準方位は得られることを特徴とする第4の本発明の作業車両である。
【0013】
第6の本発明は、スリップ測定開始タイミングからスリップ測定終了タイミングまでのスリップ測定期間において測定された車輪駆動量および車体移動量を利用することにより、車輪スリップ率は算出され、
マニュアル指示に応じて、スリップ測定開始タイミングおよびスリップ測定終了タイミングは設定され、
スリップ測定開始タイミングからの車輪駆動量が所定の車輪駆動量に達していないとき、スリップ測定終了タイミングを設定するためのマニュアル指示はリジェクトされることを特徴とする第1の本発明の作業車両である。
【0014】
第7の本発明は、スリップ測定開始タイミングからスリップ測定終了タイミングまでのスリップ測定期間において測定された車輪駆動量および車体移動量を利用することにより、車輪スリップ率は算出され、
直進ラインに沿う走行のための自動直進制御が行われ、
直進ラインの基準となる第一の直進ライン基準点(A)が取得されるタイミングとして、スリップ測定開始タイミングは設定され、
直進ラインの基準となる第二の直進ライン基準点(B)が取得されるタイミングとして、スリップ測定終了タイミングは設定されることを特徴とする第1の本発明の作業車両である。
【0015】
第8の本発明は、直進ラインの方位と異なる方位における走行が所定の車体移動量を超えて行われることにより、算出された車輪スリップ率はキャンセルされることを特徴とする第7の本発明の作業車両である。
【0016】
第9の本発明は、昇降操作で圃場へ接地可能であるフロート(200)を備え、
フロート(200)はスリップ測定期間において接地されていることを特徴とする第6から第8のいずれかの本発明の作業車両である。
【0017】
第10の本発明は、施肥作業を行いながら、少なくとも車体位置、車体方位および施肥量についてのデータを圃場の各々のデータ測定点において測定する作業車両であって、
圃場は圃場区画に分割されており、
データ測定点は圃場区画ごとに区別され、
圃場区画単位のデータが生成されるとき、各々の圃場区画に属するデータ測定点の内、車体方位が基準方位から所定のレベルを超えてズレているデータ測定点は除外され、圃場区画単位のデータは除外されなかったデータ測定点を利用することにより生成されることを特徴とする作業車両である。
【発明の効果】
【0018】
第1の本発明により、使い勝手を向上することが可能である。
【0019】
第2の本発明により、第1の本発明の効果に加えて、構成を簡素化することが可能である。
【0020】
第3の本発明により、第2の本発明の効果に加えて、作業者の負担を軽減することが可能である。
【0021】
第4の本発明により、第3の本発明の効果に加えて、作業者の負担をさらに軽減することが可能である。
【0022】
第5の本発明により、第4の本発明の効果に加えて、使い勝手をさらに向上することが可能である。
【0023】
第6の本発明により、第1の本発明の効果に加えて、構成を簡素化することが可能である。
【0024】
第7の本発明により、第1の本発明の効果に加えて、構成を簡素化することが可能である。
【0025】
第8の本発明により、第7の本発明の効果に加えて、作業者の負担を軽減することが可能である。
【0026】
第9の本発明により、第6から第8のいずれかの本発明の効果に加えて、利便性を向上することが可能である。
【0027】
第10の本発明により、使い勝手を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明における実施の形態の田植え機の説明図
【
図2】本発明における実施の形態の田植え機の車輪スリップ施肥補正の説明図(その一)
【
図3】本発明における実施の形態の田植え機の車輪スリップ施肥補正の説明図(その二)
【
図4】本発明における実施の形態の田植え機の車輪スリップ施肥補正の説明図(その三)
【
図5】本発明における実施の形態の田植え機の車輪スリップ施肥補正の説明図(その四)
【
図6】本発明における実施の形態の田植え機のステアリングセンサー近傍の説明図
【
図7】本発明における実施の形態の田植え機の施肥装置近傍の説明図
【
図8】(a)本発明における実施の形態の田植え機の可変施肥メッシュマップ作成の説明図(その一)、(b)本発明における実施の形態の田植え機の可変施肥メッシュマップ作成の説明図(その二)
【
図9】本発明における実施の形態の田植え機の可変施肥メッシュマップ作成の説明図(その三)
【
図10】(a)本発明における実施の形態の田植え機のロボット施肥の説明図(その一)、(b)本発明における実施の形態の田植え機のロボット施肥の説明図(その二)、(c)本発明における実施の形態の田植え機のロボット施肥の説明図(その三)
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
【0030】
以下同様であるが、いくつかの構成要素は図面において示されていないこともあり、透視的にまたは省略的に示されていることもある。
【0031】
本実施の形態の田植え機の動作について説明しながら、コントローラー509などにより実現される、本発明に関連した発明の作業車両動作制御方法についても説明する。
【0032】
本実施の形態の田植え機は、施肥装置100を有する作業車両であって、本発明における作業車両の具体的な例である。
【0033】
(1)はじめに、
図1から9を参照しながら、本発明における実施の形態の田植え機の構成および動作について具体的に説明する。
【0034】
ここに、
図1は本発明における実施の形態の田植え機の説明図であり、
図2、3、4および5は本発明における実施の形態の田植え機の車輪スリップ施肥補正の説明図(その一から四)であり、
図6は本発明における実施の形態の田植え機のステアリングセンサー506近傍の説明図であり、
図7は本発明における実施の形態の田植え機の施肥装置100近傍の説明図であり、
図8(a)および8(b)ならびに9は本発明における実施の形態の田植え機の可変施肥メッシュマップ作成の説明図(その一から三)である。
【0035】
あらかじめ設定された施肥量での施肥作業が行われるように、施肥装置100は車輪スリップ率に応じて制御される。
【0036】
GNSSセンサー502で測定された車体508の走行距離、および後輪回転センサー505で測定された後輪回転数から決定される距離を利用してスリップ率を算出することにより、コントローラー509は施肥量を圃場のスリップ率に応じて変更する。後輪駆動で駆動される施肥装置100の施肥量はスリップ率に影響されて変動するので、正確な肥料散布が行われるように、スリップ率が増大すると施肥量は減少させられ、スリップ率が減少すると施肥量は増大させられる。
【0037】
もちろん、後輪回転がHST変速設定の通りに行われることが保証されるのであれば、後輪回転センサー505は不要である。
【0038】
スリップ測定開始タイミングからスリップ測定終了タイミングまでのスリップ測定期間において測定された車輪駆動量および車体移動量を利用することにより、車輪スリップ率は算出される。昇降操作で圃場へ接地可能であるフロート200が圃場へ接地されるように下降されるタイミングとして、スリップ測定開始タイミングは設定される。接地されたフロート200が上昇されるタイミングとして、スリップ測定終了タイミングは設定される。
【0039】
たとえば、フロート200が接地しているとき、スリップ率算出のための測定は一工程ずつ行われ、つぎの工程の施肥量は前の工程のスリップ率に基づき変更されることにより、正確な肥料散布が実現される(
図2参照)。
【0040】
圃場の走行経路は複数の工程へ分割されている。車輪スリップ率は各々の工程について算出される。任意の工程における施肥装置100の制御は直前の工程について算出された車輪スリップ率に応じて行われる。
【0041】
作業直前の所定の時間帯において算出されたスリップ率の平均値に応じた施肥量が採用され、施肥量をリアルタイムに変更することにより、正確な肥料散布が実現される変形例の態様も考えられる。
【0042】
スリップ率算出のための測定はフロート接地距離が十分である場合において行われ、フロート接地距離が短い場合における測定はスリップ率算出のためにカウントされない。現実のスリップ率から大きく逸脱するスリップ率が短いフロート接地距離に起因して算出されにくいので、正確なスリップ率が採用されやすい。
【0043】
圃場の外周部の枕地における走行が行われることにより、算出された車輪スリップ率はキャンセルされる。
【0044】
つまり、GNSSセンサー502のような位置情報取得装置を利用することにより、圃場作業の最終工程における枕地作業の開始が認識されると、登録されたスリップ率は消去されるような態様が考えられる(
図3参照)。
【0045】
施肥装置100が車輪スリップ率に応じて制御される施肥作業が行われながら、少なくとも車体位置、車体方位および施肥量についてのデータが圃場の各々のデータ測定点において測定される。圃場は圃場区画に分割されている。データ測定点は圃場区画ごとに区別される。
【0046】
GNSSセンサー502のためのGNSSアンテナ、および施肥量が自由に変更可能である施肥装置100が搭載されている田植え機において、コントローラー509は、液晶モニターパネル501での表示などのために、時系列ごとの施肥量、GNSS座標および車体方位などのログデータを圃場区画としてのメッシュごとの施肥量、圃場深さおよび肥沃度などのメッシュマップデータに変換する(
図8(a)および8(b)ならびに9参照)。いわゆるアグリサポート画面では、点描状の作業結果マップが時系列ごとのログデータから生成されて表示されるが、画面仕様を踏襲しながら、たとえば、横走り行程のデータより安定的である往復行程のログデータを基準方位に基づいて選別して、たとえば、平均値の算出などによる統合化を行うことにより、国際データ交換規格であるISOXML規格に準拠する、メッシュマップ化ルールに応じたマップが作成される。
【0047】
圃場区画単位のデータが生成されるとき、各々の圃場区画に属するデータ測定点の内、車体方位が基準方位から所定のレベルを超えてズレているデータ測定点は除外され、圃場区画単位のデータは除外されなかったデータ測定点を利用することにより生成される。
【0048】
時系列ごとのn個のログデータがメッシュ510の内部に存在する場合において、n個のデータの車体方位に応じて、メッシュごとの施肥量、圃場深さおよび肥沃度などを変動させるためのルールが考えられる。
【0049】
往復行程のデータ、および畦際などの横走り行程のデータの両方がメッシュ510の内部に存在する場合において、両方のデータの内、多い方が優先されるように、データ個数nが所定の値以上であるとき、n個の車体方位データの最頻値を求め、最頻値から所定の値以上外れた値のデータをメッシュごとの施肥量、圃場深さおよび肥沃度などの計算において除外する構成が採用されてもよい。
【0050】
データ個数nが所定の値未満であるとき、データの除外なしにメッシュ510の内部の全てのデータを施肥量、圃場深さおよび肥沃度などの計算に利用する構成が採用されてもよい。
【0051】
時系列ごとの全部でN個のログデータが存在する場合において、N個のデータの車体方位に応じて、メッシュごとの施肥量、圃場深さおよび肥沃度などを変動させるためのルールが考えられる。
【0052】
往復行程と横走り行程で出現するデータの性質が異なることがあるが、往復行程のデータはしばしば最頻値のデータであるので、往復行程のデータのみが計算のために利用され、横走り行程のデータが除外されるように、データ個数Nが所定の値以上であるとき、N個の車体方位データの平均値、標準偏差σを求め、平均値±ασ(αは任意の正の数)の範囲に存在しないデータを除外する構成が採用されてもよい。
【0053】
データ個数Nが所定の値未満であるとき、データの除外なしに全てのデータを計算に利用する構成が採用されてもよい。
【0054】
直進ラインに沿う走行のための自動直進制御が行われる。直進ラインの基準となる第一の直進ライン基準点A、および直進ラインの基準となる第二の直進ライン基準点Bを結ぶ直線の方位として、基準方位は得られる。
【0055】
時系列ごとのn個のログデータがメッシュ510の内部に存在する場合において、直進アシストに利用される第一および第二の直進ライン基準点AおよびBの座標をデータにそれぞれ追加することにより、第一および第二の直進ライン基準点AおよびBの座標、およびn個のデータの車体方位に応じて、メッシュごとの施肥量、圃場深さおよび肥沃度などを変動させるためのルールが考えられる。
【0056】
直進アシストが利用されている場合において、直進アシストが利用されているときのデータのみが利用されるように、データ個数nが所定の値以上であるとき、第一および第二の直進ライン基準点AおよびBを結ぶ直線の方位と、n個の車体方位データと、の間の方位差を求め、方位差が所定の値以上のデータをメッシュごとの施肥量、圃場深さおよび肥沃度などの計算において除外する構成が採用されてもよい。
【0057】
旋回が行われた地点、または矩形圃場の短辺側の枕地地点を結果的に除外することができるので、車体508の緯度および経度のみを可変施肥ログデータの位置情報として出力するのではなく、第一および第二の直進ライン基準点AおよびBのデータが追加されたログデータがメッシュマップ作成のために利用可能である。
【0058】
データ個数nが所定の値未満であるとき、データの除外なしにメッシュ510の内部の全てのデータを施肥量、圃場深さおよび肥沃度などの計算に利用する構成が採用されてもよい。
【0059】
直進アシストが利用されていない作業のデータが除外されるように、第一および第二の直進ライン基準点AおよびBの座標が追加されていないデータを、メッシュごとの施肥量、圃場深さおよび肥沃度などの計算において除外する構成が採用されてもよい。
【0060】
第一および第二の直進ライン基準点AおよびBのデータが空である場合においては、最初の基準線取得のための走行が行われた、または第一および第二の直進ライン基準点AおよびBの消去が枕地で行われたと判断されるので、そのようなデータが不適切に利用されることがほとんどない。
【0061】
直進アシストがほとんどまたは全く利用されていない場合において、全てのデータが利用されるように、第一および第二の直進ライン基準点AおよびBの座標が追加されているデータ個数が、全てのデータ個数の所定の割合以下である場合において、データの除外なしにメッシュ510の内部の全てのデータを施肥量、圃場深さおよび肥沃度などの計算に利用する構成が採用されてもよい。
【0062】
直進アシストが利用されていない、または車体型式がアンテナなしの型式である場合においては、枕地走行が行われたか否かを判断するための情報が存在しないので、データ除外は行われない。
【0063】
なお、マニュアル指示に応じて、スリップ測定開始タイミングおよびスリップ測定終了タイミングは設定されてもよく、スリップ測定開始タイミングからの車輪駆動量が所定の車輪駆動量に達していないとき、スリップ測定終了タイミングを設定するためのマニュアル指示はリジェクトされてもよい。
【0064】
つまり、スリップ率算出のための測定開始指示が行われた後、車体508の走行が所定の距離を超えて行われなければ、測定終了指示は受け付けられないような態様が考えられる。これは、測定終了点が測定開始点からある程度は離れていない場合においては、正確なスリップ率の算出が困難であるので、所定のレベル以上の車体走行を要求するためである。
【0065】
また、第一の直進ライン基準点Aが取得されるタイミングとして、スリップ測定開始タイミングは設定されてもよく、第二の直進ライン基準点Bが取得されるタイミングとして、スリップ測定終了タイミングは設定されてもよい。
【0066】
直進アシスト制御のための第一および第二の直進ライン基準点AおよびBを取得するための直進ライン基準点取得動作が実行されているとき、スリップ率は算出される(
図4参照)。直進ライン基準点取得動作のキャンセルにともない、スリップ率の算出もキャンセルされる。直進ライン基準点取得動作の実行をトリガーとして、圃場への進入の開始が確実に判別されるので、スリップ率算出のための測定を圃場内の適切な位置で行うことができる。
【0067】
つまり、第一および第二の直進ライン基準点AおよびB、または第一および第二の直進ライン基準点AおよびBを結ぶことにより得られた直進ライン基準線が削除されると、スリップ率は削除されるような態様が考えられる。
【0068】
スリップ率算出のための測定は第一および第二の直進ライン基準点AおよびBが取得されたつぎの工程で自動的に行われる変形例の態様も考えられる(
図5参照)。ステアリングセンサー506は、モータードライバー503および操舵モーター504などを利用することにより駆動されるステアリング部材に設けられており、旋回動作実行を判別するための角度センサーである(
図6参照)。第一および第二の直進ライン基準点AおよびBが取得される枕地の近傍における圃場深さは、枕地以外の場所における圃場深さと比べ、旋回動作にともなう圃場のえぐれなどのためにしばしば大きいので、第一および第二の直進ライン基準点AおよびBが取得された工程のつぎの工程でスリップ率算出のための測定を行うことにより、スリップ率の精度が良化することがある。
【0069】
直進ラインの方位と異なる方位における走行が所定の車体移動量を超えて行われることにより、算出された車輪スリップ率はキャンセルされる。
【0070】
第一および第二の直進ライン基準点AおよびBに基づく基準線向きと異なる向きに所定の距離を超える車体508の走行が行われた場合において、枕地処理または異なる圃場への進入が行われたと判定され、スリップ率補正はキャンセルされてスリップ率の設定値リセットが行われる。的確なスリップ率とは大きく異なるスリップ率が枕地において算出されることがあるので、正確な肥料散布がこのような設定値リセットで実現されやすい。
【0071】
フロート200はスリップ測定期間において接地されている。
【0072】
第一および第二の直進ライン基準点AおよびBにより決定された基準線が取得された後、フロート200が接地されている間の車体走行距離が測定される。フロート接地が行われる植付け部下降にともなう測定開始、および植付け部上昇にともなう測定終了のタイミングを利用することにより、スリップ率が正確に算出される。
【0073】
スリップ率が規定量と比べて大きくズレていると判定されたときのみ、施肥装置100のいわゆる電動調量繰出し部をスリップ率に応じて自動的に動作させることが望ましい(
図7参照)。スリップが多くなるとゲージ507が左へ移動して施肥量が減らされ、スリップが少なくなるとゲージ507が右へ移動して施肥量が増やされるように、ゲージ507がスリップ率補正に基づき移動する、スリップ率に応じた施肥量の調節において、微小な測定誤差などに起因する不適切な動作は排除されるので、正確な肥料散布の制御が適切に実現される。
【0074】
(2)つぎに、
図10(a)から10(c)を主として参照しながら、本発明における実施の形態の田植え機の構成および動作についてより具体的に説明する。
【0075】
ここに、
図10(a)から10(c)は、本発明における実施の形態の田植え機のロボット施肥の説明図(その一から三)である。
【0076】
図10(a)に示されているように、いわゆるロボットザルビオ施肥機において、耕深が旋回のために深くなりやすい長方形圃場の短辺の植付け時は、自動減肥するソフトウェア構成とする(
図10(a)参照)。衛星からの情報にて高収量および低収量ゾーンを確認し、圃場の深さの認識なしに施肥量を変化させると、倒伏の恐れがしばしばあるが、倒伏が防げる。
【0077】
なお、ティーチング工程の長方形圃場の短辺の植付け時は、自動減肥する構成としてもよい(
図10(a)参照)。
【0078】
また、長方形圃場の短辺の植付け時は、減肥率を選択可能な構成としてもよい(
図10(a)参照)。さらに安価に旋回場所の減肥が可能となる。
【0079】
また、オートデフロック作動時には、自動減肥するソフトウェア構成としてもよい(
図10(a)参照)。深い場所での倒伏が防止できる。
【0080】
可変施肥機において、デフロック操作時には、減肥させる構成とする(
図10(a)参照)。デフロック操作させるような圃場で減肥をする構成になっていないと、稲が倒伏する可能性があるが、深田部分での倒伏が防止できる。
【0081】
直進可変施肥機において、第一および第二の直進ライン基準点AおよびBを位置検出しその90度方向の枕地植えで、自動減肥するソフトウェア構成とする(
図10(b)参照)。可変施肥機で前輪に超音波センサーを設け深さにより減肥させていると、センサーが高価でコストアップの要因になるが、安価に可変施肥機が構成できる。
【0082】
なお、自動減肥する減肥率を選択できるソフトウェア構成としてもよい(
図10(b)参照)。
【0083】
また、上述された90度方向の枕地植えのいわゆる畦クラッチ操作で、自動減肥するソフトウェア構成としてもよい(
図10(b)参照)。
【0084】
可変施肥機において、いわゆるピタ植え操作時には、減肥させる構成とする(
図10(c)参照)。畦際部分のピタ植え操作で減肥していないと、稲が倒伏する可能性があるが、稲の倒伏が防止できる。
【0085】
なお、機械の位置より90度方向の枕地植えでは、自動減肥するソフトウェア構成としてもよい(
図10(b)参照)。可変施肥機で前輪に超音波センサーを設け深さにより減肥させていると、センサーが高価でコストアップの要因になるが、安価に可変施肥機が構成できる。
【0086】
なお、本発明に関連した発明のプログラムは、上述された本発明に関連した発明の作業車両動作制御方法の全部または一部のステップ(または工程、動作および作用など)の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、コンピュータと協働して動作するプログラムである。
【0087】
また、本発明に関連した発明の記録媒体は、上述された本発明に関連した発明の作業車両動作制御方法の全部または一部のステップ(または工程、動作および作用など)の全部または一部の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した記録媒体であり、読取られたプログラムがコンピュータと協働して利用されるコンピュータ読取り可能な記録媒体である。
【0088】
なお、上述された「一部のステップ(または工程、動作および作用など)」は、それらの複数のステップの内の一つまたはいくつかのステップを意味する。
【0089】
また、上述された「ステップ(または工程、動作および作用など)の動作」は、上述されたステップの全部または一部の動作を意味する。
【0090】
また、本発明に関連した発明のプログラムの一利用形態は、インターネット、光、電波または音波などのような伝送媒体の中を伝送され、コンピュータにより読取られ、コンピュータと協働して動作するという形態であってもよい。
【0091】
また、記録媒体としては、ROM(Read Only Memory)などが含まれる。
【0092】
また、コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)などのような純然たるハードウェアに限らず、ファームウェア、OS(Operating System)、そしてさらに周辺機器を含んでもよい。
【0093】
なお、上述されたように、本発明の構成は、ソフトウェア的に実現されてもよいし、ハードウェア的に実現されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明における作業車両は、使い勝手を向上することができ、田植え機のような作業車両に利用する目的に有用である。
【符号の説明】
【0095】
100 施肥装置
200 フロート
501 液晶モニターパネル
502 GNSSセンサー
503 モータードライバー
504 操舵モーター
505 後輪回転センサー
506 ステアリングセンサー
507 ゲージ
508 車体
509 コントローラー
510 メッシュ
A 第一の直進ライン基準点
B 第二の直進ライン基準点