(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140330
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】建設機械の健全性を判定する装置
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20241003BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051424
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エルセラフィ ハテム
(72)【発明者】
【氏名】柿田 将幸
(72)【発明者】
【氏名】眞保 友彰
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD17
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA01
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA11
2G064AB02
2G064AB22
2G064BA02
2G064BD02
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】建設機械の健全性を判定する際に、音声信号に依存せず、かつより正確な診断結果を得る装置を提案する。
【解決手段】建設機械の健全性を判定する装置は演算部を備え、前記演算部は、加速度計を介して前記建設機械の振動を測定し、前記振動に基づいて前記建設機械の重量クラスを決定し、前記建設機械の機械動作の結果を測定し、前記重量クラスおよび前記機械動作の結果に基づいて、前記建設機械の健全性を判定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の健全性を判定する装置であって、
前記装置は演算部を備え、
前記演算部は、
‐加速度計を介して前記建設機械の振動を測定し、
‐前記振動に基づいて前記建設機械の重量クラスを決定し、
‐前記建設機械の機械動作の結果を測定し、
‐前記重量クラスおよび前記機械動作の結果に基づいて、前記建設機械の健全性を判定する、
装置。
【請求項2】
前記振動は、前記建設機械が待機状態にある間に測定される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、スマートフォンまたはマイクロコントローラを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記機械動作の開始時刻および終了時刻を測定し、前記開始時刻および前記終了時刻に基づいて、前記機械動作の持続時間を算出し、
前記建設機械の健全性は、さらに前記持続時間に基づいて判定される、
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、複数の前記重量クラスにそれぞれ関連付けられた基準持続時間を記憶し、
前記建設機械の健全性は、さらに前記基準持続時間に基づいて判定される、
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記装置は、複数の前記重量クラスにそれぞれ関連付けられた振動閾値および振動パターンを記憶し、
前記建設機械の前記重量クラスは、さらに、前記振動閾値および前記振動パターンに基づいて決定される、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、前記機械動作の基準開始位置および基準終了位置を記憶し、
前記演算部は、前記機械動作の開始位置および終了位置を測定し、
前記装置は、前記基準開始位置、前記基準終了位置、前記開始位置および前記終了位置を表示する、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、前記健全性に基づき、前記建設機械に対する処置に関する情報を出力する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は、複数の前記機械動作をそれぞれ表す情報を含むリストを記憶し、
前記装置は、前記リストに含まれる各前記機械動作について、その機械動作に関する測定がすでに行われたか否かを示す情報を表示する、
請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記装置はユーザインタフェースを備え、
前記ユーザインタフェースは、
健全性の判定開始を命令するための操作部と、
前記重量クラスおよび前記機械動作のうち少なくとも一方を表示する表示部と、
を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記装置は、前記重量クラス、前記機械動作、および前記健全性を、CSV形式で出力する、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建設機械の健全性を判定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械に関しては、その基本性能を測定し、潜在的な故障を事前に診断・予測し、故障前にメンテナンスを行い、工事の中断を回避することが重要である。基本性能とは、その建設機械の本来の性能や基準とするスペックである。この点、市場においては、故障の自動自己診断のためのツール(自動自己診断ツール)としては、未熟練者でも利用しやすく、安価で使いやすいものであることが求められる。
【0003】
例えば、特許文献1は、自動自己診断技術として、診断時間を短縮するために、建設機械の稼動音に基づいて、当該建設機械の各部位の異常の有無を診断し、異常があると診断されたときに異常診断部位の情報に基づいて異常の原因を特定し、その特定結果を表示することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術には、音声信号を利用するものがあるが、そのような技術では、測定精度が音声センサ(マイク等)の配置に依存する。
【0006】
また、従来の技術では、ユーザが建設機械の重量クラスを正しく入力することが要求されるが、この入力を誤ると正しい診断ができない。
【0007】
本開示はこのような状況に鑑み、音声信号に依存せず、かつより正確な診断結果を得る技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の一例は、
建設機械の健全性を判定する装置であって、
前記装置は演算部を備え、
前記演算部は、
‐加速度計を介して前記建設機械の振動を測定し、
‐前記振動に基づいて前記建設機械の重量クラスを決定し、
‐前記建設機械の機械動作の結果を測定し、
‐前記重量クラスおよび前記機械動作の結果に基づいて、前記建設機械の健全性を判定する。
【0009】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。
【0010】
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例をいかなる意味においても限定するものではない。
【発明の効果】
【0011】
本開示の技術は、音声信号に依存せず、かつより正確な診断結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態による建設機械診断システムの概略構成例を示す図。
【
図2】本実施形態による、プロセッサ10の概略機能構成例を示すブロック図。
【
図3】性能測定装置1の情報取得部101の内部機能構成例を示す図。
【
図4】性能測定装置1の重量クラス分類部102の内部機能構成例を示す図。
【
図6】性能測定装置1の動作分類部103の内部機能構成例を示す図。
【
図7】同じ建設機械の様々な動作に対応する加速度信号の波形例。
【
図8】健全性診断部104の処理を説明するためのフローチャート。
【
図9】
図8のステップS110の詳細な処理を説明するためのフローチャート。
【
図11】性能測定装置1の基本性能報告部105の内部機能構成例を示す図。
【
図12】性能測定装置1の記憶デバイス20に含まれるデータ保存部207が保持する情報の一例である履歴ログリスト1201の構成例を示す図。
【
図13】性能測定装置1の記憶デバイス20に含まれる性能基準値保持部203が保持する性能基準値情報1301の構成例を示す図。
【
図14】性能測定装置1の記憶デバイス20に含まれる動作範囲基準値保持部204が保持する動作範囲基準値情報1401の構成例を示す図。
【
図15】性能測定装置1の記憶デバイス20に含まれる動作別代表波形保持部202が保持する動作別代表波形情報1501の構成例を示す図。
【
図16】性能測定装置1の記憶デバイス20に含まれるリコメンデーション情報保持部205が保持するリコメンデーション情報1601の構成例を示す図。
【
図17】性能測定装置1の記憶デバイス20に含まれる動作リスト保持部206が保持する動作リスト情報1701(テーブル)の構成例を示す図。
【
図18】性能測定装置1への入力情報1801の例と当該装置1からの出力情報1802の例とを対比して示す図。
【
図19】性能測定装置1の表示画面、あるいはユーザ端末4の表示画面に表示されるユーザインタフェースの例。
【
図20】本実施形態による性能測定診断処理を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<システム構成例>
図1は、一実施形態による建設機械診断システム(建設機械の健全性を判定する装置)の概略構成例を示す図である。
【0014】
建設機械診断システムは、性能測定装置1と、センサ群2と、ユーザ端末4と、を備え、建設機械3を診断対象とする。
図1のシステム構成例では、ユーザ端末4と性能測定装置1とを別々の装置として表しているが、ユーザ端末4に性能測定装置1の各機能および各データ保持部/保存部などを実装するようにしてもよい。また、
図1のシステム構成例では、ユーザ端末4とセンサ群2とを別々の装置として表しているが、ユーザ端末4にセンサ群2の一部または全部を実装するようにしてもよい。
【0015】
性能測定装置1は、例えば、プロセッサ10と、記憶デバイス20と、通信デバイス30と、を備える。
【0016】
センサ群2は、建設機械の状態診断のアプリケーションで使用することができる異なる複数のセンサで構成され、例えば、加速度計21を備える。さらに、センサ群2は、マイクロフォン22と、カメラ23と、を含むことができる(これらに限定されるものではない)。加速度計21は、重力と振動を検出する能力を持つ加速度を測定する、デバイスに組み込まれる可能性のある微小電子機械システム(MEMS)規模のセンサである。マイクロフォン22は、独立のマイクロフォンであってもよいし、性能測定装置1に内蔵される小型マイクロフォンであってもよい。カメラ23は、例えば、独立の小型カメラでもよいし、性能測定装置1やユーザ端末4に内蔵される小型カメラであってもよい。
【0017】
建設機械3は、例えば、油圧ショベル、ホイールローダ、ブルドーザなどの各種建設機械である。建設機械3は、建設機械3の可動部(例えば、油圧ショベルの場合は、ブーム、アーム、バケットなど)の現在の角度をリアルタイムに検知する角度センサ13を含む。
【0018】
ユーザ端末4は、例えば、スマートフォン、マイクロコントローラ、パーソナルコンピュータ(PC)などのコンピュータデバイスで構成することができる。なお、マイクロコントローラは、ポータブルコントローラ、制御基盤、等と呼ばれるものであってもよい。とくにスマートフォンまたはマイクロコントローラを用いることにより、オペレータの利便性が向上する。
【0019】
性能測定装置1のプロセッサ10、記憶デバイス20、および通信デバイス30と、センサ群2の各種センサと、建設機械3の角度センサ13とは、例えば、通信デバイスを介して接続される。また、通信デバイス30は、例えば、診断結果などを無線でユーザ端末4に送信することができるように構成されている。
【0020】
プロセッサ10は、演算部として機能する。プロセッサ10は、CPUなどの演算装置で構成され、記憶デバイス20から関連する各種プログラムを読み込み、内部メモリ(図示せず)に展開することにより、各処理部を生成する。当該各処理部は、情報取得部101と、重量クラス分類部102と、動作分類部103と、健全性診断部104と、基本性能報告部105と、を含む。各処理の動作の詳細については後述する。
【0021】
記憶デバイス20は、重量基準値保持部201と、動作別代表波形保持部202と、性能基準値保持部203と、動作範囲基準値保持部204と、リコメンデーション情報保持部205と、動作リスト保持部206と、データ保存部207と、を含む。
【0022】
重量基準値保持部201は、例えば、新たに診断(検査)する建設機械の重量クラスの分類の基準となる、重量クラスごとのノイズ振動の規模の基準値を記憶している。
【0023】
動作別代表波形保持部202は、例えば、新たに診断(検査)する機械動作の分類の基準となる、機械動作ごとの代表的なセンサ波形のパターンを記憶している。
【0024】
性能基準値保持部203は、例えば、製造者(メーカ)が設定した検査すべき機械動作の健全状態の基準値(標準値)の情報を保持(格納)する。健全状態の基準値の情報の一例として、特定の建設機械のアーム引き動作は、理想的には3.9秒(または3.9秒±0.4秒の範囲内)かかるといった情報が挙げられる。
【0025】
動作範囲基準値保持部204は、例えば、建設機械の動作範囲の基準値(標準値)を保持(格納)する。動作範囲の基準値情報の一例として、ブーム上げは0度から90度までとするといった情報が挙げられる。
【0026】
リコメンデーション情報保持部205は、建設機械の健全性の状態に応じて、オペレータに提示するための推奨事項の情報を記憶している。例えば、「アームシリンダの調子が悪いようです。このレポートをメンテナンス部門に見せて、対策を取らせてください。」といった推奨事項の情報である。
【0027】
動作リスト保持部206は、特定の診断(検査)タイプに関する全ての関連動作の情報を記憶する。診断対象の動作としては、例えば、(a)アーム引き、(b)アーム押し、(c)ブーム上げ、(d)ブーム下げ、(e)バケット掘削、(f)バケット放土などが挙げられる。
【0028】
データ保存部207は、記憶デバイスで構成され、性能測定装置1が扱う様々なデータ(情報取得部101からの集約されたセンサデータを含む)を保存する。
【0029】
<性能測定装置の構成例>
図2は、本実施形態による、プロセッサ10の概略機能構成例を示すブロック図である。性能測定装置1における主な機能は、情報取得部101と、重量クラス分類部102と、動作分類部103と、健全性診断部104と、基本性能報告部105と、によって実現される。
【0030】
情報取得部101は、センサデータを所定の形式で集約し、処理できる状態にする。なお、センサデータの一例として、建設機械の負荷振動を検出する加速度計データが挙げられ、負荷の一例としてアームが挙げられる。
【0031】
重量クラス分類部102は、情報取得部101から取得したデータを処理し、たとえば建設機械が動作していないとき(すなわち建設機械が待機状態にあるとき)の振動(ノイズ振動)の大きさを検出する。一般的に、より重い建設機械はより小さいノイズ振動を示し、より軽い建設機械はより大きいノイズ振動を示すので、重量クラスごとに基準値を記憶しておき、測定されたノイズ振動を、データベース等に記憶された基準値(閾値、標準値、等)と比較することにより、建設機械の重量クラスを分類することができる。
【0032】
このように、建設機械の振動(とくに重量クラスの決定に用いられる部分)は、建設機械が待機状態にある間に測定される。このようにすると、特定の動作を必要とせず、効率的に重量クラスを決定することができる。
【0033】
動作分類部103は、たとえば情報取得部101および重量クラス分類部102から取得したデータを処理し、診断の際に行われた動作のタイプの情報を出力する。動作分類部103の処理の一例として、加速度計が検知した波形を用いて、機械動作がアーム引きであると分類することが挙げられる。
【0034】
健全性診断部104は、たとえば情報取得部101、重量クラス分類部102および動作分類部103から取得したデータを処理し、特定の建設機械の健全性(たとえば健全な状態か否か)を示す診断結果を出力する。また、例えば、健全性診断部104は、加速度計を用いて、建設機械のアームの動作検査から取得した振動を処理し、そして、振動のピークレベルに基づいて、機械がアーム引きを実行するのにどれくらいの時間がかかったかを示す情報を出力するようにする。
【0035】
基本性能報告部105は、健全性診断部104の演算結果に基づき、オペレータに対して結果を報告(出力)する。たとえば、基本性能報告部105は、正しい動作範囲の検証のために、動作範囲基準値保持部204に対して、現在の建設機械に対応する動作範囲基準値のデータを要求する。そして、基本性能報告部105は、動作範囲基準値の情報を、例えばユーザ端末4(携帯端末(スマートフォン)やコンピュータ(PC)等)に転送してその出力画面に当該情報を表示させる。なお、ユーザ端末4に性能測定装置1が実装されている場合には、動作範囲基準値の情報などは直接表示画面に出力されることになる。これにより、オペレータは、診断における建設機械の動作が正しい動作範囲であったか否か確認したり、建設機械が健全状態か否か把握したりすることができるようになる。
【0036】
<情報取得部101の内部機能構成例>
図3は、性能測定装置1の情報取得部101の内部機能構成例を示す図である。
【0037】
情報取得部101は、センササンプリング周波数設定部1011と、データフォーマット設定部1012と、データ取得時間設定部1013と、を備える。
【0038】
センササンプリング周波数設定部1011は、センサ群2の何れか(例えば加速度計)からデータを取得するサンプリング周波数を設定する機能を有する。当該サンプリング周波数は、予め決めておいてもよいし、オペレータや他のユーザが決めるようにしてもよい。例えば、加速度計からデータを取得するためのサンプリング周波数を100サンプル/秒と設定することが考えられる。
【0039】
データフォーマット設定部1012は、取得したセンサデータをどのようなフォーマットで処理するかについて設定する機能を有する。例えば、データフォーマットとして、CSV形式が挙げられる。
【0040】
データ取得時間設定部1013は、データ取得の制限時間を設定する機能を有する。制限時間は、手動(テスト自体の長さに関係なく20秒間データを収集するなど)または自動(オペレータに、データ取得を開始し、診断(検査)を実行し、その後データ取得を停止するように求める)で設定することができる。
【0041】
<重量クラス分類部102の内部機能構成例>
図4は、性能測定装置1の重量クラス分類部102の内部機能構成例を示す図である。
【0042】
重量クラス分類部102は、バイアス除去部1021と、絶対値取得部1022と、ノイズ規模抽出部1023と、重量クラス決定部1024と、を備える。
【0043】
バイアス除去部1021は、加速度信号におけるバイアス成分(直流成分)を除去する。バイアスを除去することによって、信号を正規化することができる。
【0044】
絶対値取得部1022は、加速度信号の絶対値を取得し、すなわち正負を表す符号を破棄する。加速度はベクトル量であり、正および負の値の両方を含み得るが、後続の処理では信号の大きさのみが参照される。
【0045】
ノイズ規模抽出部1023は、信号において、建設機械の動作がまだ開始されていない期間におけるノイズの規模を抽出する。オペレータが、性能測定装置1に動作開始を指示した後、実際の建設機械の動作を開始するまでに、ある程度の時間(たとえば2~5秒)がかかる。したがって、動作開始の指示の直後、短い所定時間(たとえば0.5秒~1秒)の期間で、ノイズ振動の規模を測定することができる。なお、ノイズ振動の規模は、たとえば期間内の信号の値を平均することによって取得することができる。
【0046】
重量クラス決定部1024は、ノイズ規模抽出部1023が取得したノイズ振動の規模を、重量基準値保持部201に予め記憶されたノイズ振動の規模の基準値と比較し、これによって重量クラスを決定する。重量基準値保持部201には、重量クラスごとに異なる基準値が記憶されており、測定されたノイズ振動の規模に基づいて重量クラスを決定することができる。
【0047】
図5に、ノイズ振動の規模の例を示す。
図5(a)は、20トンの重量クラスに属する建設機械のアーム引き動作における加速度信号を示す。
図5(b)は、40トンの重量クラスに属する建設機械のアーム引き動作の加速度信号を示す。
【0048】
図5(a)のアーム引き動作は13.4秒の時点で開始されており、期間51は、待機状態における(すなわちアーム引き動作開始前の)20トンの建設機械のノイズ振動を示す。
図5(b)のアーム引き動作は9.1秒の時点で開始されており、期間52は、待機状態における(すなわちアーム引き動作開始前の)40トンの建設機械のノイズ振動を示す。このように、40トンに対応するノイズ振動の規模は、20トンに対応するノイズ振動の規模より小さい。
【0049】
このため、重量基準値保持部201に、基準値として20トンのノイズ振動の規模の最小値を記憶しておけば、20トンの建設機械と40トンの建設機械とを正しく分類することができる。なお、基準値は、40トンのノイズ振動の規模の最大値であってもよく、20トンのノイズ振動の規模と40トンのノイズ振動の規模の中間の値であってもよい。
【0050】
図5の例では2つの重量クラスのみを示すが、3つ以上の重量クラスが定義されてもよい。
【0051】
このように、重量基準値保持部201は、複数の重量クラスにそれぞれ関連付けられた振動閾値を記憶してもよく、建設機械の重量クラスは、これらの振動閾値に基づいて決定されてもよい。このようにすると、実際の振動に基づいて適切な分類を行うことができる。
【0052】
<動作分類部103の内部機能構成例>
図6は、性能測定装置1の動作分類部103の内部機能構成例を示す図である。
【0053】
動作分類部103は、特徴分析部1031と、パターンマッチング部1032と、分類部1033と、を備える。
【0054】
特徴分析部1031は、様々な特徴を分析し、建設機械の動作に関する更なる情報を収集する。特徴分析の一例として、加速度計21の信号のピーク振幅と減衰(本明細書ではロールオフと呼ばれる)の形状の分析が挙げられる。
【0055】
パターンマッチング部1032は、特徴分析部1031から取得した情報と動作別代表波形保持部202に保存されているパターンとの照合を行い、マッチする(たとえば所定誤差範囲内にある)パターンを抽出する。
【0056】
分類部1033は、パターンマッチング部による照合結果に基づいて、行われている動作の種類を判定(特定)する。
【0057】
図7に、同じ建設機械の様々な動作に対応する加速度信号の波形例を示す。アーム引き、アーム押し、バケット掘削、バケット放土、ブーム上げ、ブーム下げ、の6種類の動作が示される。各動作の開始時点および終了時点には固有の波形パターンがあり、測定された波形のパターンに基づいて、測定された加速度信号がどの動作に対応するものであるかを決定することができる。また、各動作の開始時点および終了時点も特定することができる。
【0058】
動作を区別するためのパターンの特徴は、たとえば、以下の振幅の大きさおよび減衰を含む。信号のロールオフ部分は動作ごとに異なる形状を有し、動作ごとに異なる期間に発生する。振幅の特徴(たとえばピーク値および/またはピーク振幅)と、ロールオフ部分の特徴との両方を用いて、パターンマッチングを行うことができる。
【0059】
パターンマッチングの基準となるパターンは、動作別代表波形保持部202に予め記憶される。パターンは動作ごとに記憶される。さらに、パターンは重量クラスごとに記憶されてもよい。
【0060】
なお、パターンは重量クラスの分類に用いられてもよい。たとえば、動作別代表波形保持部202は、複数の重量クラスにそれぞれ関連付けられた振動パターンを記憶してもよく、建設機械の重量クラスは、これらの振動パターンに基づいて決定されてもよい。このようにすると、実際の振動パターンに基づいて適切な分類を行うことができる。
【0061】
<健全性診断処理>
図8は、健全性診断部104の処理を説明するためのフローチャートである。まずステップS101において、健全性診断部104は、加速度信号のバイアスを除去する。この処理は、たとえば重量クラス分類部102のバイアス除去部1021と同様にして実行することができる。
【0062】
次に、ステップS102において、健全性診断部104は、加速度信号の絶対値を取得する。この処理は、たとえば重量クラス分類部102の絶対値取得部1022と同様にして実行することができる。
【0063】
次に、ステップS103において、健全性診断部104は、加速度信号からノイズ成分を除去する。ノイズ成分を除去するための具体的な演算処理は、当業者が公知技術等に基づいて適宜設計可能である。
【0064】
次に、ステップS104において、健全性診断部104は、加速度信号にローパスフィルタを適用する。これによってスムージングが行われ、ピークがより明確となる。
【0065】
次に、ステップS105において、健全性診断部104は、加速度信号のピークのうち最初のピークを検出する。ピークを検出するための具体的な演算処理は、当業者が公知技術等に基づいて適宜設計可能である。たとえば、ピーク検出のためのスキャンが、加速度信号の包絡線に基づいて行われ、所定の閾値を超えるピークが検出される。この閾値は適応的に算出されてもよく、加速度の平均値および/または分散に基づいて算出されてもよい。包絡線に関する処理の具体的内容は、当業者が公知技術等に基づいて適宜設計することができる。
【0066】
次に、ステップS106において、健全性診断部104はピークのエネルギーを検査する。ピークのエネルギーが所定の基準より大きい場合(たとえば所定閾値を超える振幅が所定時間以上持続する場合)には、ピークは真のピークであると判定され、そうでない場合には、ピークは真のピークではない(スパイクである)と判定される。この判定のために、健全性診断部104は積分器を含んでもよい。
【0067】
次に、ステップS107において、ステップS106の結果に基づいて処理が分岐する。ピークがスパイクである場合には、処理はステップS108に進み、ピークが真のピークである場合には、処理はステップS109に進む。
【0068】
ステップS108において、健全性診断部104は、加速度信号から当該スパイクを除去する。その後、健全性診断部104は、処理をステップS105に戻し、スパイクが除去された加速度信号に基づいてピーク検出を繰り返す。
【0069】
ステップS109において、健全性診断部104は、当該ピークが最初のピークであるか否かを判定する。最初のピークである場合には、処理はステップS110に進み、そうでない場合(たとえば2番目のピークである場合)には、処理はステップS114に進む。
【0070】
ステップS110において、健全性診断部104は、偽ピークの検査を行う。オペレータは、ユーザ端末4を介して性能測定装置1の動作開始を指示した後、センサ群2またはユーザ端末4を所定の載置場所に設置する(たとえば所定のカップホルダ内に入れる)前に、誤ってセンサ群2またはユーザ端末4を手で振ってしまう場合があり、そのような場合には建設機械の動作に関連しないピーク(偽ピーク)が検出される。健全性診断部104は、ピークがこのような偽ピークであるか否かを判定する。具体的な判定処理の例は、
図9および
図10を参照して後述する。
【0071】
次に、ステップS111において、ステップS110の結果に基づいて処理が分岐する。ピークが偽ピークである場合には、処理はステップS113に進み、ピークが真のピークである場合には、処理はステップS112に進む。
【0072】
ステップS112において、健全性診断部104は、当該ピークを最初のピークとして抽出し、当該ピークの発生時刻を記憶する。この最初のピークは、建設機械の動作が開始された時点に対応する。
【0073】
ステップS113において、健全性診断部104は、当該ピーク(偽ピークまたは最初のピーク)を加速度信号から除去し、処理をステップS105に戻す。
【0074】
上述のステップS109において、ピークが最初のピークでない場合(たとえば2番目のピークである場合)には、処理はステップS114に進む。ステップS114において、健全性診断部104は、当該ピークを2番目のピークとして抽出し、当該ピークの発生時刻を記憶する。この2番目のピークは、建設機械の動作が終了した時点に対応する。
【0075】
次に、ステップS115において、健全性診断部104は、2番目のピークの発生時刻から最初のピークの発生時刻を減算し、これによって建設機械の動作の持続時間を算出する。言い換えると、健全性診断部104は、機械動作の開始時刻および終了時刻を測定し、開始時刻および終了時刻に基づいて、機械動作の持続時間を算出する。このようにして、健全性診断部104は、建設機械の機械動作の結果を測定する。建設機械の健全性は、この持続時間に基づいて判定される。
【0076】
このように、動作の持続時間に基づいて健全性を判定することにより、建設機械の実際の動作を評価することができ、より正確な判定が可能となる。
【0077】
図9は、
図8のステップS110の詳細な処理を説明するためのフローチャートである。また、
図10は、偽ピークを含む加速度信号の例である。ステップS110において、
図10の偽ピーク61が処理中であるとする。
【0078】
まずステップS110aにおいて、健全性診断部104は、加速度信号の最大値62を検出する。
【0079】
次に、ステップS110bにおいて、健全性診断部104は、現在処理中の偽ピーク61の発生時刻と、最大値62の発生時刻との時間差を計算する。
【0080】
次に、ステップS110cにおいて、健全性診断部104は、時間差が閾値を超えているか否かを判定する。通常、オペレータがセンサ群2またはユーザ端末4を配置した時刻から建設機械の操作を開始する時刻まで、一定の時間を要する(この時間は例えば10秒を超える)。したがって、閾値を例えば10秒とし、この時間差が閾値を超えていれば、ピークは偽ピークであると判定することができる。時間差が閾値を下回る場合、処理はステップS110dに進む。健全性診断部104は、判定結果を決定し記憶する。この判定結果は後続のステップS111で利用される。
【0081】
図10の例では、この時間差が16秒であり、閾値を超えているので、偽ピーク61を正しく偽ピークであると判定し、除去することができる。このようにして、正しい持続時間63が測定される。
【0082】
なお、この閾値は、診断対象の建設機械の各動作に要する時間より長い時間とすると好適である。とくに、建設機械が健全でない場合に各動作に要する時間より長い時間とするとさらに好適である。
【0083】
ステップS110cで時間差が閾値を超えている場合、ステップS110eに進む。ステップS110eにおいて偽ピークと判断して、速度信号の最大値を検出する処理ステップS110aに戻る。
【0084】
<基本性能報告部105の内部機能構成例>
図11は、性能測定装置1の基本性能報告部105の内部機能構成例を示す図である。
【0085】
基本性能報告部105は、基準比較部1051と、結果報告部1052と、動作範囲確認部1053と、リコメンデーション情報取得部1054と、を備える。
【0086】
基準比較部1051は、重量クラス分類部102による分類結果と、動作分類部103による分類結果とに基づき、性能基準値保持部203に保持されている様々な性能基準値のうちから、決定された重量クラスおよび動作に対応するものを選択する。そして、基準比較部1051は、健全性診断部104による診断(判定)結果を、選択された性能基準値と比較し、診断対象の建設機械(特定の動作:例えば、アーム引き動作)が健全な状態にあるか否かを判断する。
【0087】
結果報告部1052は、当該建設機械の健全性に関するレポートを作成し、生データ(測定データ)と共に、記憶デバイス20のデータ保存部207に送信する。これにより、当該建設機械の健全性に関する履歴ログを生成することができる。
【0088】
動作範囲確認部1053は、診断対象の建設機械のオペレータが正しい動作範囲で診断を行ったか否か確認するために、動作分類部103の分類結果に対応する動作範囲基準値を動作範囲基準値保持部204から取得し、その情報を出力する(表示画面上に表示する)。例えば、アーム引きの場合、動作範囲基準値保持部204に保持されている基準動作範囲の情報は、開始角度位置が170度、終了角度位置が15度であり、オペレータは診断実施後に当該建設機械に内蔵されている角度センサ13で確認することができる。
【0089】
このように、動作範囲基準値保持部204は、機械動作の基準開始位置および基準終了位置を記憶してもよく、情報取得部101は、機械動作の実際の開始位置および実際の終了位置を測定してもよく、ユーザ端末4は、基準開始位置、基準終了位置、実際の開始位置および実際の終了位置を表示してもよい。このようにすると、オペレータが容易に動作の結果を確認することができる。
【0090】
リコメンデーション情報取得部1054は、基準比較部1051による比較結果に基づいて、リコメンデーション情報保持部205に予め保持されている情報セットから、今回の診断内容に対応する適切なリコメンデーション情報を取得する。
【0091】
<データ保存部207が保持する情報の例>
図12は、性能測定装置1の記憶デバイス20に含まれるデータ保存部207が保持する情報の一例である履歴ログリスト1201の構成例を示す図である。
【0092】
履歴ログリスト1201は、各建設機械(重量クラス毎)の動作およびサンプル別の複数の履歴ファイルで構成される。例えば、
図12の上図のリストに示されるファイルのうち任意の履歴ファイル12012(履歴ログファイル)を選択すると、
図12の下図に示すファイル内容を閲覧することができる。
【0093】
履歴ファイルは、例えば、CSV形式のファイルとして保存され、履歴ファイルのタイトルには、日付(デバイスのOSが自動的に付与)、建設機械の重量クラス(重量クラス分類部102から取得)、動作の情報(動作分類部103から取得)、サンプル番号(オペレータによる操作不備の動作に対する診断結果を除き、実験を繰り返したい場合)、診断結果(基本性能報告部105から報告された情報)が記されている。
【0094】
このようにして、データ保存部207は、とくに、重量クラス、機械動作、および健全性を、CSV形式で保存するので、性能測定装置1は、これらの情報をCSV形式で出力することができる。これによって、後続段階におけるデータの分析がより容易となる。
【0095】
図12の下図は、履歴ファイルの例を示している。履歴ファイル12012は、データの取得時間120121と、測定データである生データ120122と、動作内容を示す動作120123と、サンプル番号120124と、診断結果を示す結果120125と、を構成項目として含む。
【0096】
<性能基準値保持部203が保持する情報の例>
図13は、性能測定装置1の記憶デバイス20に含まれる性能基準値保持部203が保持する性能基準値情報1301の構成例を示す図である。
【0097】
性能基準値情報1301は、重量クラス13011毎に、動作13012と、基準13013と、許容誤差13014と、を含む管理情報である。
【0098】
重量クラス13011は、建設機械の重量クラスを示す情報であり、たとえば20トンまたは40トンである。動作13012は、該当建設機械の動作であり、例えば、アーム引き、バケット掘削などを含む。基準13013は、例えば、対応する動作にかかる基準持続時間(例えば、3.5秒)である。許容誤差13014は、基準13013と一致していなくても正常と判断できる範囲(許容範囲:例えば、±0.4秒)を示している。
【0099】
性能基準値保持部203は、複数の重量クラスにそれぞれ関連付けられた基準持続時間を記憶してもよく、建設機械の健全性は、このような重量クラスごとの基準持続時間に基づいて判定されてもよい。このようにすると、各重量クラスに特化して適切な判定を行うことができる。
【0100】
性能基準値情報1301を用いることにより、診断対象の動作を推定できるようになる。例えば、健全性診断部104の診断結果が3.6秒であった場合、対応の重量クラスにおける動作アーム引きの性能基準値情報の基準値が3.5秒で許容誤差範囲が±0.4秒であれば、診断対象の動作がアーム引きと推定できる。
【0101】
<動作範囲基準値保持部204が保持する情報の例>
図14は、性能測定装置1の記憶デバイス20に含まれる動作範囲基準値保持部204が保持する動作範囲基準値情報1401の構成例を示す図である。
【0102】
動作範囲基準値情報1401は、重量クラス14011毎に、動作14012と、開始角度14013と、終了角度14014と、を含む管理情報である。
【0103】
重量クラス14011は、建設機械の重量クラスを示す情報であり、たとえば20トンまたは40トンである。動作14012は、該当建設機械の動作であり、例えば、アーム引き、バケット掘削などを含む。開始角度14013は、対応する動作の開始の角度を示す情報である。終了角度14014は、対応する動作の終了の角度を示す情報である。例えば、ブーム上げ動作であれば、開始角度0度、終了角度90度である。
【0104】
<動作別代表波形保持部202が保持する情報の例>
図15は、性能測定装置1の記憶デバイス20に含まれる動作別代表波形保持部202が保持する動作別代表波形情報1501の構成例を示す図である。
【0105】
動作別代表波形情報1501は、重量クラス15011毎に、各動作(150111、150112)に関する、代表波形を取得した取得時間情報と、対応する波形と、によって構成される。当該動作別代表波形情報1501には、重量クラスごとに利用可能な全ての動作に対して、異なる波形が保存されることが想定される。
【0106】
<リコメンデーション情報保持部205が保持する情報の例>
図16は、性能測定装置1の記憶デバイス20に含まれるリコメンデーション情報保持部205が保持するリコメンデーション情報1601の構成例を示す図である。
【0107】
リコメンデーション情報1601は、ドリフト値16011と、ドリフト値に対応する、対処方法のリコメンデーション内容16012(推奨情報)と、によって構成される。
【0108】
ドリフト値16011は、測定結果が基準値からどの程度離れているかを示す情報であり、パーセンテージで表示される。例えば、ある重量クラスの理想的なアーム引き持続時間は3.2秒、許容誤差は±0.3秒なので、(0.3/3.2)×100=9.4%に相当することになる。仮に測定時間が3.4秒だった場合、D1は((3.4-3.2)/3.2)×100で6.25%になる。この場合、D1はドリフト値16011で示される9.4%より低いので、この場合のリコメンデーション内容16012は「当該建設機械の当該対象部分は健全な状態にあります。対処不要です。」となる。一方、例えば、測定時間のドリフトD2%がドリフト値16011で示される9.4%より高い場合のリコメンデーション内容16012は「当該建設機械の当該対象部分は健全性に問題があります。可能な限りメンテナンス担当に連絡し、この報告書を見せて下さい。」となる。
【0109】
このように、基準値からの乖離度合いに応じて重要度(対処の重要性)を設定するなど、様々な形で推奨情報を提示することが可能となる。このように、性能測定装置1は、健全性(または健全性に関する判定の結果)に基づき、建設機械に対する処置に関する情報を出力する。これによって、オペレータは建設機械に対して必要な処置をとることができる。
【0110】
<動作リスト保持部206が保持する情報の例>
図17は、性能測定装置1の記憶デバイス20に含まれる動作リスト保持部206が保持する動作リスト情報1701(テーブル)の構成例を示す図である。
【0111】
動作リスト情報1701は、重量クラス毎に、状態17011と、動作17012と、によって構成される。
【0112】
状態17011は、動作の診断が完了しているか否かを示す情報である。動作診断済の場合は「○」マークで示し、動作診断が完了していない場合は「×」マークで示すことにより、対応する動作の診断状態を示すことができる。このように、動作リスト保持部206は、複数の機械動作をそれぞれ表す情報を含むリストを記憶する。
【0113】
さらに、結果17013(診断結果)、基準17014(基準値)、許容誤差17015(基準値に対する許容誤差範囲)、その他の欄(図示せず)を追加して、ユーザが機械の全体的な状態を視覚化できるようにしてもよい。
【0114】
動作リスト情報1701により、特定の重量クラスの建設機械に関して健全性の診断が完了しているかを提示することができる。これによって、ユーザが利用可能な動作を確認できるようにするとともに、診断実施済の動作と未実施の動作を追跡することができるようになる。
【0115】
なお、性能測定装置1の記憶デバイス20は、動作リスト保持部206に、全ての建設機械の各重量クラスについて、状態17011が空欄となっている(あるいは全ての動作の状態が未了(×)となっている)動作リスト情報1701を予め保持するように構成してもよい。また、オペレータが、対象の建設機械3の診断を開始する際に、当該建設機械3の全ての動作を動作リスト情報1701として動作リスト保持部206に登録するようにしてもよい。過去に診断したことがある同一重量クラスの建設機械がある場合には、過去に使用した際の動作リスト情報1701を流用する(前回の結果17013および状態17011の情報はリセット)こともできる。
【0116】
<入力情報と出力情報>
図18は、性能測定装置1への入力情報1801の例と当該装置1からの出力情報1802の例とを対比して示す図である。
【0117】
入力情報1801としては、例えば、診断前にデータ収集を開始するための開始指示(スタートボタン押下)および診断を停止/終了させるための停止指示18011(ストップボタン押下)、が挙げられる。ただし、入力情報1801は、これらに限定されるものではない。また、所定基準が満たされた場合または開始から一定時間後に自動的に停止させることも可能である。
【0118】
出力情報1802には、例えば、動作リスト18021(完了状態マーク付)と、建設機械の重量クラス18022と、建設機械の動作18023と、動作範囲基準値18024と、健全性18025と、基準値18026(許容誤差を含む)と、リコメンデーション18027と、報告書18028と、履歴ログ18029と、を含めることができる。
【0119】
動作リスト18021を出力することにより、ユーザがどの機械の動作が既に診断され、どの動作の診断が完了していないかを追跡できるようになる。
図17に示されるように、診断が完了している動作には、診断完了を示すマーク(「○」)を含めることができる。
【0120】
建設機械の重量クラス18022を出力することにより、今回実施された診断で自動的に分類された建設機械の重量クラス(例:20トン)を確認することができるようになる。
【0121】
建設機械の動作18023を出力することにより、今回実施された診断で自動的に分類された建設機械の動作(例:アーム引き)を確認することができるようになる。
【0122】
動作範囲基準値18024を出力することにより、建設機械のオペレータが動作を正しく行ったかを確認するための情報を提供することができる。例えば、基準開始角度と基準終了角度を出力することにより、オペレータは、建設機械3に内蔵されている角度センサ13の角度と照合し、動作範囲が基準値と合致しているか確認することができる。
【0123】
健全性18025を出力することにより、対象の動作診断によって当該動作を実施する部位(例えば、アーム)が健全な状態か否かを確認するための情報を提供することができる。健全性18025を示す情報としては、例えば、最近実施した試験の結果を出力することが考えられる。
【0124】
基準値18026の情報を出力することにより、特定の建設機械の特定の動作に対する、診断のための基準値(許容誤差を含む)を確認するための情報を提供することができる。
【0125】
リコメンデーション18027を出力することにより、オペレータ(ユーザ)が健全性18025の情報を解釈し、メンテナンスに連絡する必要があるかどうか決定するための情報(推奨事項)を提供することができる。
【0126】
報告書18028は、上述のすべての出力(たとえば動作リスト18021、建設機械の重量クラス18022、建設機械の動作18023、動作範囲基準値18024、健全性18025、基準値18026、リコメンデーション18027)に生データを追加した情報として出力することができる。
【0127】
履歴ログ18029を出力することにより、ユーザが過去の全ての診断内容を追跡するのに役立つ情報を提供することができる。
【0128】
<GUIの構成例>
図19は、性能測定装置1の表示画面、あるいはユーザ端末4の表示画面に表示されるユーザインタフェースの例である。ユーザインタフェースは、たとえばGUI(Graphical User Interface)として構成される。GUIは表示部を構成し、例えば、入力用GUI G1(入力画面)、実行中GUI G2(実行画面)、および診断結果表示用GUI G3(結果画面)が挙げられる。
【0129】
入力用GUI G1では、診断済の動作と、診断未了の動作を確認することができる。
図19の例では、6つの動作が用意されており、最初の2つだけが診断済であることが示されている。なお、入力用GUI G1においては、診断を開始する方法を表示するようにしてもよいし、単純に開始ボタンを押下することにより診断を開始させるようにしてもよい。このように、入力用GUI G1は、健全性の判定開始を命令するための操作部として開始ボタンを備える。これによって、オペレータは容易に開始を命令することができる。
【0130】
実行中GUI G2では、ユーザ(またはオペレータ)が選択した建設機械の動作が実行中であることが示される。この例では、動作終了後、オペレータは停止ボタンを押すことになる。ただし、停止ボタンを省略して動作終了を自動的に判定することも可能である。
【0131】
診断結果表示用GUI G3には、分類された重量クラス、分類された動作、およびオペレータが確認するための基準範囲が表示されるが、オペレータに動作範囲の確認を求める指示を表示するようにしてもよい。また、診断結果は、参考として、基準と許容範囲とともに表示され、ドリフト値とリコメンデーションも表示される。さらに、動作リスト(テーブル:
図17参照)が、完了(○)あるいは未了(×)のマークされた動作の情報とともに表示される。
図19の例では、動作O13が完了(○)とマークされ、診断結果が動作リストに記入されている。
【0132】
このように、性能測定装置1またはユーザ端末4は、リストに含まれる各機械動作について、その機械動作に関する測定がすでに行われたか否かを示す情報を表示する。このようにすると、ユーザが各動作を漏れなく重複なく実行することができる。
【0133】
なお、診断結果表示用GUI G3は、上記の情報をすべて表示する必要はなく、たとえば重量クラスおよび機械動作(分類された動作)のうち少なくとも一方を表示してもよい。少なくともこのような表示があれば、オペレータは建設機械の重量クラスまたは自身が行った動作を適切に確認することができる。
【0134】
診断結果表示GUI G3には、保存ボタンや繰り返し実行指示ボタンを含めることができる。オペレータ(ユーザ)が保存ボタンを押下すると、報告書および生データが履歴ログに保存される。測定が正しく行われなかった場合、動作範囲が正しくなかった場合、あるいはその他の問題が生じたような場合には、オペレータ(ユーザ)が繰り返しボタンを押下することにより、当該誤った測定結果等を記録することなく、表示画面が入力用GUI G1に遷移するように構成することができる。
【0135】
<性能測定診断処理>
図20は、本実施形態による性能測定診断処理を説明するためのフローチャートである。
【0136】
(i)ステップS201
性能測定装置1が動作を開始する。
【0137】
(ii)ステップS202
オペレータが、性能測定装置1(あるいは同装置の機能が実装された端末(加速度計内蔵のスマートフォン))を診断対象の建設機械の所定の場所(例えば、キャビネットのカップホルダ内や床に設けられたボックス内等)に、建設機械の動作中の振動を検知できる(拾える)ように適切に載置し、性能測定装置1に対して診断スタートを指示する(例えば、診断スタートボタンを押下する)と、プロセッサ10は、当該指示を受け付ける。なお、載置場所は、センサの種類に応じて異なるようにしてもよい。
【0138】
(iii)ステップS203
オペレータが、動作リスト情報1701(
図17参照)から対象の建設機械の診断未了の動作を確認し、次に診断すべき動作を選択する。動作リスト情報1701には診断対象の全ての動作がリストアップされており、診断済の動作には完了(○)のマークが付され、診断未了の動作には未了(×)のマークが付されている。オペレータが選択する建設機械の動作には、例えば、アーム引き、アーム押し、ブーム上げ、ブーム下げ、バケット掘削、バケット放土などがある。
【0139】
なお、オペレータは診断対象動作としていずれの動作を選択したかを入力する必要はないが、変形例として、選択した動作をユーザが入力し、プロセッサ10が当該選択を受け付けてもよい。
【0140】
(iv)ステップS204
プロセッサ10の情報取得部101は、関連データの取得を開始する。例えば、情報取得部101は、センサ群2のうち少なくとも1つ(例えば、加速度計21)を動作させ、当該センサによって取得されたデータを収集する。このように、プロセッサ10は、加速度計21を介して建設機械の振動を測定する。
【0141】
(v)ステップS205
オペレータが建設機械を操作し、ステップS204で選択した動作(例えば、アーム引き)を実行すると、健全性診断部104は、動作中にセンサ群2の少なくとも1つによって取得されたデータを収集し、データ保存部207に格納する。
【0142】
(vi)ステップS206
プロセッサ10は、ステップS205で収集したデータを分析し、いくつかの分析結果を生成する。
【0143】
例えば、健全性診断部104は、センサが取得したデータ(例えば、加速度計によって取得された振動波形のピーク値)から動作に掛かった時間を算出し、当該分析データ(振動波形とピーク間時間)をデータ保存部207に格納するとともに、動作分類部103に受け渡す。
【0144】
重量クラス分類部102は、健全性診断部104で取得した分析データを取得し、当該分析データに基づいて建設機械の重量クラスを特定する。このように、プロセッサ10は、振動に基づいて建設機械の重量クラスを決定する。
【0145】
動作分類部103は、健全性診断部104で取得した分析データを取得し、当該分析データ(例えば、振動波形)と予め動作別代表波形保持部202に保持されている波形とを比較してマッチングを取り、診断対象の動作を特定する。この際に、重量クラスを参照してもよい。
【0146】
基本性能報告部105は、動作範囲基準値保持部204から、動作分類部103によって特定された動作に対応する動作範囲基準値のデータを取得し、当該動作範囲基準値と分析データとを比較し、当該動作に関して診断対象の建設機械が健全な状態であるか(健全な状態からどの程度外れているか)判断する。この際に、重量クラスを参照してもよい。このように、プロセッサ10は、重量クラスおよび機械動作の結果に基づいて、建設機械の健全性を判定する。
【0147】
(vii)ステップS207
プロセッサ10は、重量クラス分類部102によって特定された重量クラス、動作分類部103によって特定された動作、基本性能報告部105によって判断された健全性、および動作範囲(動作範囲基準値の情報を含む)を、例えばユーザ端末4(携帯端末(スマートフォン)やコンピュータ(PC))に転送してその出力画面に当該情報を表示する。
【0148】
より具体的には、オペレータ(ユーザ)がどの動作を選択したか、オペレータが正しく動作したかを確認するための動作範囲(開始位置と停止位置)、および建設機械の健全性(動作の実行時間)を基準値(製造時の基準値)と比較した結果を出力する。これらの情報により、どのような状態が健全性ありでどのような状態が健全性なしなのかの判断の参考にすることができる。
【0149】
(viii)ステップS208
プロセッサ10は、リコメンデーション情報保持部205から、基本性能報告部105の診断結果に対応するリコメンデーション内容16012(
図16参照)を取得し、例えば、ユーザ端末4の画面上に表示する(診断結果表示用GUI G3(
図19)参照)。
【0150】
図16で説明したように、リコメンデーション内容16012は、当該建設機械の当該動作の健全性が、基準値(製造時の基準値)からどの程度ずれているかを基に生成(選択)される。例えば、建設機械の健全性が製造基準値からD%ずれた場合、「当該建設機械の当該対象部分は健全性に問題があります。可能な限り、メンテナンス担当に連絡し、この報告書を見せて下さい。」というような勧告をすることができる。
【0151】
(ix)ステップS209
オペレータは、センサデータが適切に収集されたか判断し、適切に収集されている場合には保存ボタンを押下し、適切に収集されていない場合には繰り返しボタンを押下する。プロセッサ10は、どちらのボタンが押下されたか判断する。保存ボタンが押下された場合(ステップS209でYesの場合)、処理はステップS210に移行する。繰り返しボタンが押下された場合(ステップS209でNoの場合)、処理はステップS204に移行する。
【0152】
(x)ステップS210
プロセッサ10は、報告書(建設機械の動作種別、診断結果、リコメンデーション情報)と生データを記憶デバイスに履歴ログとして保存する。これら報告書および生データは、さらなる分析が必要なときに参照することができる。
【0153】
(xi)ステップS211
プロセッサ10は、診断対象の建設機械の動作リストにおける、診断を行った動作に対して、完了(診断済)マーク(○)を付与する。
【0154】
(xii)ステップS212
プロセッサ10は、当該診断対象の建設機械の全動作について診断が完了しているか判断する。全動作について診断が完了している場合(ステップS212でYesの場合)には、処理はステップS213に移行し、すなわち性能測定診断処理は終了する。未診断の動作が残っている場合(ステップS212でNoの場合)には、処理はステップS204に移行する。
【0155】
<実施例>
A:実施例1
(1)性能測定装置1の機能を実装するデバイスの例
上述したように、性能測定装置1の機能を実装するメインデバイスの例として、スマートフォンを使用することが考えられる。スマートフォンに内蔵されたMEMS(Micro Electro Mechanical System)センサ(加速度計など)をデータ取得のためのメインセンサとして利用することができる。センサ(加速度計)で取得したデータの処理・解析は、スマートフォンのCPUで行うことができる。
【0156】
スマートフォンのメモリは、生データとその結果を保存するために使用することができる。この実施例において、性能測定診断処理の機能は、スマートフォンに対してアプリケーションの形で実装される。
【0157】
(2)ユースケース
想定されるユースケース(オペレータの動作を含む)の例として以下のようなものが考えられる。
【0158】
(i)オペレータは、スマートフォンにおいてスタートボタンを押下し、建設機械のキャビネットのカップホルダ内に載置する。
【0159】
(ii)オペレータは、スマートフォンの性能測定診断処理に関するアプリケーションを起動する。
【0160】
(iii)オペレータは、動作一覧から診断を行う建設機械の動作(例えば、アーム引き)を選択して実行する。
【0161】
(iv)オペレータは、スタートボタンを押下してもよく、センサ(たとえば加速度計)はこれに応じてデータの取得を開始してもよい。なお、スタートボタンは省略してもよく、その場合にはセンサは上記(i)の時点でデータの取得を開始してもよい。
【0162】
(v)オペレータは、建設機械を操作し、動作(たとえばアーム引き)を実行する。
【0163】
(vi)動作実行中は、スマートフォンの加速度計がスマートフォン筐体内部の振動を検知する。
【0164】
(vii)オペレータは、アーム引き動作完了後、停止ボタンを押してデータ取得処理を停止してもよい。
【0165】
(viii)その後、スマートフォンは、集計された加速度計のデータ(振動レベルを示すもの、アーム引き動作の開始時刻と停止時刻を示すもの)の解析を開始する。
【0166】
(ix)アルゴリズムの構成(以下は実行順序を限定するものではない)
(ix-1)建設機械の動作時間の自動測定
加速度計21のデータにより、建設機械動作の開始時刻と停止時刻を自動的に検出することができる。
(ix-2)建設機械動作の自動分類
診断対象の建設機械の動作に関し、加速度計21による波形データのピーク解析を行うことにより、どの動作が実行されたか自動的に検出することができる。
(ix-3)建設機械の重量クラスの自動分類
診断対象の建設機械の重量クラスが自動的に特定される。
【0167】
(x)画面出力
【0168】
スマートフォンの画面(診断結果表示用GUI G3)には、建設機械の重量クラス(例:20トン)と、建設機械の動作の種類(例:アーム引き)と、動作基準範囲(例:開始角度170度、終了角度10度)と、動作時間と、基準持続時間および許容誤差と、リコメンデーションコメント(ドリフト値を含む)と、近々に診断された動作(例:アーム引き)に完了マーク(〇)が付され、結果表示を含む動作リスト(更新版)と、報告書および生データを保存するための保存ボタンと、間違い(例えば、オペレータによる操作ミスなど)があった場合にテストを繰り返すための繰り返しボタン(例えば、オペレータが基準と異なる動作範囲で動作を実行してしまった場合)と、が表示される(
図19参照)。
【0169】
B:実施例2
実施例1の変形例として、加速度計を内蔵したArduino(登録商標)などのマイクロコントローラを使用することもできる。なお、マイクロコントローラは、ポータブルコントローラ、制御基盤、等と呼ばれるものであってもよい。実施例1で説明した同じ処理を、コンピュータに接続されたマイクロコンピュータで繰り返し(無線または有線)、制御と出力の可視化を行うことができる。なお、マイクロコンピュータの中には、CPUやメモリを内蔵し、表示デバイスさえ接続すれば機能するものもある。
【0170】
<まとめ>
(i)本実施形態によると、建設機械診断システム(建設機械の健全性を判定する装置)は、性能測定装置1と、センサ群2と、ユーザ端末4と、を備えており、建設機械3(例えば、油圧ショベルなど)の実際に実行された動作(例えば、アーム引き)をセンサ(例えば、加速度計21)で検知して得られるセンサ波形データに基づき、建設機械の重量クラスを特定する処理と、実際に実行された動作を特定する処理と、当該特定した動作に対応する性能基準値および許容誤差値(
図13参照)を記憶デバイスから取得し、当該性能基準値(動作にかかる基準持続時間)および許容誤差値と実際に実行された動作の特徴値(例えば、センサ波形におけるピーク間の時間:1つの動作にかかった実際の時間(動作時間))と、を比較し、建設機械の健全性を判定する処理と、を実行する。
【0171】
つまり、動作の特徴値(動作時間)が基準値の許容誤差範囲内であれば、当該建設機械の当該動作は健全な状態であると判断され、そうでなければ健全性に問題ありと判断される。そして、この健全性の判定結果は、性能測定装置1を実装したスマートフォンなどのユーザ端末4の表示部に、あるいは性能測定装置1とは独立したスマートフォンなどのユーザ端末4の表示部に、出力される。これにより、オペレータは、健全性に関する判定結果を見て、建設機械のメンテナンスの必要性を判断することができるようになる。
【0172】
(ii)性能測定装置1は、建設機械の動作を実際に実行した際の開始位置の建設機械の所定の部位(例えば、アームやブーム)の角度および終了位置の所定の部位の角度を角度センサ13で検知した値を表示部に、建設機械の健全性の判定結果と共に出力してもよい。これにより、オペレータは、正しく動作を実行したか判断することができる。正しくなかった場合には、当該動作に対する診断結果を破棄(リセット)し、同一動作に関する診断を再度実行することができる。
【0173】
(iii)性能測定装置1は、記憶デバイス20に、さらに、性能基準値からの乖離度に応じた対処方法に関する、複数種類のリコメンデーション情報を保持しており、健全性の判定結果に対応するリコメンデーション情報を判定結果とともに表示部に出力するようにしてもよい。建設機械の健全性に問題がある場合には、どのような対処方法を採ればいいのか、未熟なオペレータであっても認識することができるようになる。
【0174】
(iv)性能測定装置1は、記憶デバイス20に、さらに、建設機械の複数の動作のそれぞれの診断状態(診断完了か未了か)および診断結果を示す動作リスト情報を保持し、当該動作リスト情報において、健全性を判定する処理が完了した動作に関し、診断状態が診断完了を示す情報と判定結果を入力して動作リスト情報を更新し、当該更新した動作リスト情報を表示部に出力する。このようにすることにより、診断対象の建設機械において、動作全体のどの程度まで診断が完了しているか即座に認識することが可能となる。
【0175】
(v)オペレータによる保存指示(診断結果表示用GUI G3に表示される保存ボタンの押下)を検知すると、性能測定装置1は、判定結果および実際に実行された動作の検知データを診断履歴ログ(
図12参照)として記憶デバイス20に保存する。診断履歴ログを参照することにより、建設機械が定期的に各動作の健全性診断を行ったか確認することができるとともに、健全性に問題がないとしても劣化が徐々に進んでいるか否かについても確認することができる。
【0176】
一方、オペレータによる繰り返し指示(診断結果表示用GUI G3に表示される繰り返しボタンの押下)を検知すると、性能測定装置1は、判定結果および特定された動作のセンサによる検知データをリセットし、同一動作について再度診断を実行する。これにより、オペレータが建設機械の診断対象の部位(例えば、アームなど)の動作を適切に実行できなかったような場合に、当該動作に関するデータを診断履歴ログに残さずに済むため、診断結果の検証が行いやすくなる。
【0177】
(vi)
図18に示されるように、オペレータが性能測定装置1に入力すべき情報は、診断開始の指示のみである(さらに診断停止の指示を入力するようにしてもよい)。一方、性能測定装置1の出力情報は、健全性に関する判定結果と、特定した重量クラスおよび動作の種類の情報と、特定した動作の動作範囲基準値の情報と、特定した動作の性能基準値と、判定結果に対応するリコメンデーション情報と、特定した動作のセンサによる検知データと、を含む情報となっている。このように、オペレータは最小限の情報のみを入力すれば適切な診断結果が得られる(入力項目を極限的に減らすことができる)ので、オペレータの負担を軽減することができる。また、経験が乏しいオペレータであっても適切な診断結果を得ることができる。結果として、ヒューマンエラーの可能性を低減することができる。
【0178】
さらに、音声信号に依存しないので、より正確な診断が可能となる。
【0179】
(vii)なお、上述の例では、履歴ログは、記憶デバイスに保存するようにしているが、サーバ/クラウドサーバに転送して管理することにより、データの一元化・集中化を図り、更新性を向上させることもできる。
【0180】
(viii)本開示の実施形態の機能は、ソフトウェアのプログラムコードによっても実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をシステム或は装置に提供し、そのシステム或は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本開示を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
【0181】
また、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータ上のメモリに書きこまれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータのCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。
【0182】
さらに、実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワークを介して配信することにより、それをシステム又は装置のハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納し、使用時にそのシステム又は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしても良い。
【0183】
最後に、ここで述べたプロセス及び技術は本質的に如何なる特定の装置に関連することはなく、コンポーネントの如何なる相応しい組み合わせによってでも実装できることを理解する必要がある。更に、汎用目的の多様なタイプのデバイスがここで記述した教示に従って使用可能である。ここで述べた方法のステップを実行するのに、専用の装置を構築するのが有益であることが判るかもしれない。また、実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。本開示は、具体例に関連して記述したが、これらは、すべての観点に於いて限定の為ではなく説明の為である。当業者には、本開示を実施するのに相応しいハードウェア、ソフトウェア、及びファームウエアの多数の組み合わせがあることが解るであろう。例えば、記述したソフトウェアは、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Java(登録商標)等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
【0184】
さらに、上述の実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていても良い。
【符号の説明】
【0185】
1 性能測定装置(建設機械の健全性を判定する装置)
2 センサ群(建設機械の健全性を判定する装置)
3 建設機械
4 ユーザ端末(建設機械の健全性を判定する装置)
10 プロセッサ(演算部)
20 記憶デバイス
30 通信デバイス
21 加速度計
22 マイクロフォン
23 カメラ
101 情報取得部
102 重量クラス分類部
103 動作分類部
104 健全性診断部
105 基本性能報告部
201 重量基準値保持部
202 動作別代表波形保持部
203 性能基準値保持部
204 動作範囲基準値保持部
205 リコメンデーション情報保持部
206 動作リスト保持部
207 データ保存部