(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140334
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】フライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241003BHJP
【FI】
H02M7/48 F
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051428
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110858
【弁理士】
【氏名又は名称】柳瀬 睦肇
(74)【代理人】
【識別番号】100172627
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 亘
(72)【発明者】
【氏名】池田 昌隆
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770DA31
5H770DA44
5H770EA01
5H770HA02X
5H770JA11X
5H770LA02X
5H770LB09
(57)【要約】
【課題】電流制限をかけるピークリミッタ動作中にスイッチ素子に耐圧以上の電圧が印加されることを防止できるマルチレベルインバータの電流制限装置を提供する。
【解決手段】本発明は、フライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータからの出力電流を制限する装置であって、出力電流を検出する電流検出回路17と、ピークリミッタ回路18と、制御素子16と、前記ハイサイド側又はローサイド側の複数のスイッチ素子と、一つのスイッチ素子11のオン・オフ制御を行う第1の信号波形(波形1')を供給する第1の波形合成部12と、ピークリミッタ動作中に、一つのPWM信号波形(波形1)を第1の波形合成部12に供給する第1のPWM信号部13と、第2の波形合成部14と、第2のPWM信号部15を有し、制御素子部16は第1のPWM信号部13及び第2のPWM信号部15を制御するマルチレベルインバータの電流制限装置である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンデンサとハイサイド側及びローサイド側それぞれに複数のスイッチ素子を有するフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータからの出力電流を制限する装置であって、
前記出力電流を検出する電流検出回路と、
前記電流検出回路により検出された前記出力電流が所定範囲外である場合に、前記出力電流が所定範囲内になるようにピークリミッタ動作を行うピークリミッタ回路と、
前記ピークリミッタ回路がピークリミッタ動作中であるか否かを判断する制御素子と、
前記ハイサイド側又はローサイド側の複数のスイッチ素子のうちの一つのスイッチ素子と、
前記一つのスイッチ素子のオン・オフ制御を行う第1の信号波形を供給する第1の波形合成部と、
前記制御素子により前記ピークリミッタ回路がピークリミッタ動作中であると判断した場合に、前記複数のスイッチ素子のうちの一つのスイッチ素子に供給する前記第1の信号波形を生成するための複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形を、前記第1の波形合成部に供給する第1のPWM信号部と、
前記第1の信号波形を生成するための第2の信号波形を、前記第1の波形合成部に供給する第2の波形合成部と、
前記第2の信号波形を生成するための前記複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形以外の全てのPWM信号波形を、前記第2の波形合成部に供給する第2のPWM信号部と、
を有し、
前記制御素子部は、前記第1のPWM信号部及び前記第2のPWM信号部を制御するものであり、
前記ピークリミッタ回路は、前記第1の信号波形を生成するための第3の信号波形を、前記第1の波形合成部に供給するものであり、
前記第2の信号波形は、前記第2の波形合成部において前記全てのPWM信号波形を合成したものであり、
前記第1の信号波形は、前記PWM信号波形と前記第2の信号波形と前記第3の信号波形を合成したものであることを特徴とするフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ピークリミッタ回路が前記ピークリミッタ動作中でないと前記制御素子部が判断した場合に、前記第2の波形合成部から前記第2の信号波形が出力されず、前記第1のPWM信号部から出力される複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形が、前記第1の波形合成部から出力される前記第1の信号波形と同一であることを特徴とするフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記ハイサイド側の複数のスイッチ素子のオン・オフ制御は、前記ローサイド側の複数のスイッチ素子と同一のオン・オフ制御を行うことを特徴とするフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記ピークリミッタ回路がピークリミッタ動作を行うことは、前記マルチレベルインバータからの出力電流に電流制限をかけることであることを特徴とするフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータは、スイッチ素子にかかる電圧が少なくなるため、低耐圧のスイッチ素子を用いることができる。
【0003】
しかし、インバータの出力側の負荷量が大きくなると、
図9に示すように電流検出回路により電流を検出し、ピークリミッタ回路により電流制限をかける従来のピークリミッタ動作を行う。即ち、波形1と波形Bを波形合成部により合成した波形1'をスイッチ素子に入力する(
図10参照)。マルチレベルインバータでは、このリミッタ動作を行うとオン・オフ状態のアンバランスが生じ、
図11に示すように、あるスイッチ素子に耐圧以上の電圧が印加され、スイッチ素子が破損する可能性がある。これに関連した技術が特許文献1に記載されている。なお、
図11は、例えば3レベルのフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータにリミッタ動作を行った時の出力電流波形である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の種々の態様は、電流制限をかけるピークリミッタ動作中にスイッチ素子に耐圧以上の電圧が印加されることを防止できるフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に本発明の種々の態様について説明する。
【0007】
[1]複数のコンデンサとハイサイド側及びローサイド側それぞれに複数のスイッチ素子を有するフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータからの出力電流を制限する装置であって、
前記出力電流を検出する電流検出回路と、
前記電流検出回路により検出された前記出力電流が所定範囲外である場合に、前記出力電流が所定範囲内になるようにピークリミッタ動作を行うピークリミッタ回路と、
前記ピークリミッタ回路がピークリミッタ動作中であるか否かを判断する制御素子と、
前記ハイサイド側又はローサイド側の複数のスイッチ素子のうちの一つのスイッチ素子と、
前記一つのスイッチ素子のオン・オフ制御を行う第1の信号波形を供給する第1の波形合成部と、
前記制御素子により前記ピークリミッタ回路がピークリミッタ動作中であると判断した場合に、前記複数のスイッチ素子のうちの一つのスイッチ素子に供給する前記第1の信号波形を生成するための複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形を、前記第1の波形合成部に供給する第1のPWM信号部と、
前記第1の信号波形を生成するための第2の信号波形を、前記第1の波形合成部に供給する第2の波形合成部と、
前記第2の信号波形を生成するための前記複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形以外の全てのPWM信号波形を、前記第2の波形合成部に供給する第2のPWM信号部と、
を有し、
前記制御素子部は、前記第1のPWM信号部及び前記第2のPWM信号部を制御するものであり、
前記ピークリミッタ回路は、前記第1の信号波形を生成するための第3の信号波形を、前記第1の波形合成部に供給するものであり、
前記第2の信号波形は、前記第2の波形合成部において前記全てのPWM信号波形を合成したものであり、
前記第1の信号波形は、前記PWM信号波形と前記第2の信号波形と前記第3の信号波形を合成したものであることを特徴とするフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置。
【0008】
本発明の一態様に係る上記[1]のフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置は、電流検出回路により検出されたフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータからの出力電流が所定範囲外である場合(インバータの出力側の負荷量が大きくなる場合や出力短絡が生じる場合等)に、前記出力電流が所定範囲内になるようにピークリミッタ動作を行うピークリミッタ回路と、制御素子によりピークリミッタ回路がピークリミッタ動作中であると判断した場合に、複数のスイッチ素子のうちの一つのスイッチ素子に供給する第1の信号波形を生成するための複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形を、第1の波形合成部に供給する第1のPWM信号部と、第1の信号波形を生成するための第2の信号波形を、第1の波形合成部に供給する第2の波形合成部を有する。これにより、ピークリミッタ動作時にスイッチ素子に耐圧以上の電圧が印加されることを防止できる。
【0009】
[2]上記[1]において、
前記ピークリミッタ回路が前記ピークリミッタ動作中でないと前記制御素子部が判断した場合に、前記第2の波形合成部から前記第2の信号波形が出力されず、前記第1のPWM信号部から出力される複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形が、前記第1の波形合成部から出力される前記第1の信号波形と同一であることを特徴とするフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置。
【0010】
[3]上記[1]又は[2]において、
前記ハイサイド側の複数のスイッチ素子のオン・オフ制御は、前記ローサイド側の複数のスイッチ素子と同一のオン・オフ制御を行うことを特徴とするフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置。
【0011】
[4]上記[1]又は[2]において、
前記ピークリミッタ回路がピークリミッタ動作を行うことは、前記マルチレベルインバータからの出力電流に電流制限をかけることであることを特徴とするフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の種々の態様によれば、電流制限をかけるピークリミッタ動作中にスイッチ素子に耐圧以上の電圧が印加されることを防止できるフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】フライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータのスイッチ素子を示す回路図である。
【
図2】本発明の一態様に係るフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置であって、
図1に示すスイッチ素子(SW素子1)の駆動を制御する方法を説明する模式図である。
【
図3】本発明の一態様に係るフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置であって、
図1に示すスイッチ素子(SW素子2)の駆動を制御する方法を説明する模式図である。
【
図4】本発明の一態様に係るフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置であって、
図1に示すスイッチ素子(SW素子3)の駆動を制御する方法を説明する模式図である。
【
図5】本発明の一態様に係るフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置であって、
図1に示すスイッチ素子(SW素子n)の駆動を制御する方法を説明する模式図である。
【
図6】フライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの通常動作時のゲート波形を示す図である。
【
図7】
図2に示すフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置のピークリミッタ動作時のゲート波形を示す図である。
【
図8】本発明の一態様に係るフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置のピークリミッタ動作時の波形全体を示す図である。
【
図9】従来のライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置を示す模式図である。
【
図10】
図9に示す電流制限装置の波形1、波形B及び波形1'を示す図である。
【
図11】
図9に示す電流制限装置のスイッチ素子に耐圧以上の電圧が印加される際にリミッタ動作を行った時の出力電流波形、各ゲート信号、上側のスイッチ素子の両端電圧波形及び下側のスイッチ素子の両端電圧波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0015】
図1は、フライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータのスイッチ素子を示す回路図である。
図2は、本発明の一態様に係るフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置であって、
図1に示すスイッチ素子(SW素子1)の駆動を制御する方法を説明する模式図である。
【0016】
本発明の一態様に係るフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置は、複数のコンデンサとハイサイド側及びローサイド側それぞれに複数のスイッチ素子を有するフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータからの出力電流を制限する装置である。
前記電流制限装置は、出力電流を検出する電流検出回路17と、
前記電流検出回路17により検出された前記出力電流が所定範囲外である場合に、前記出力電流が所定範囲内になるようにピークリミッタ動作を行うピークリミッタ回路18と、
前記ピークリミッタ回路18がピークリミッタ動作中であるか否かを判断する制御素子16と、
前記ハイサイド側又はローサイド側の複数のスイッチ素子(
図1のSW素子1、2、3、・・・n、nは4以上の自然数)のうちの一つのスイッチ素子(
図1のSW素子1)11と、
前記一つのスイッチ素子11のオン・オフ制御を行う第1の信号波形(波形1')を供給する第1の波形合成部(波形合成(2))12と、
前記制御素子16により前記ピークリミッタ回路18がピークリミッタ動作中であると判断した場合に、前記複数のスイッチ素子(
図1のSW素子1、2、3、・・・n)のうちの一つのスイッチ素子(
図1のSW素子1)11に供給する前記第1の信号波形(波形1')を生成するための複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形(波形1)を、前記第1の波形合成部(波形合成(2))12に供給する第1のPWM信号部(SW素子1のPWM信号部)13と、
前記第1の信号波形(波形1')を生成するための第2の信号波形(波形A1)を、前記第1の波形合成部(波形合成(2))12に供給する第2の波形合成部(波形合成(1))14と、
前記第2の信号波形(波形A1)を生成するための前記複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形(波形1)以外の全てのPWM信号波形(波形2、3、・・・n)を、前記第2の波形合成部(波形合成(1))14に供給する第2のPWM信号部15と、を有する。
前記制御素子部16は、前記第1のPWM信号部(SW素子1のPWM信号部)13及び前記第2のPWM信号部15を制御するものである。
前記ピークリミッタ回路18は、前記第1の信号波形(波形1')を生成するための第3の信号波形(波形B)を、前記第1の波形合成部(波形合成(2))12に供給するものである。
前記第2の信号波形(波形A1)は、前記第2の波形合成部(波形合成(1))14において前記全てのPWM信号波形(波形2、3、・・・n)を合成したものである。
前記第1の信号波形(波形1')は、前記PWM信号波形(波形1)と前記第2の信号波形(波形A1)と前記第3の信号波形(波形B)を合成したものである。
【0017】
また、ピークリミッタ回路18がピークリミッタ動作中でないと制御素子部16が判断した場合に、前記第2の波形合成部(波形合成(1))14から前記第2の信号波形(波形A1)が出力されず、前記第1のPWM信号部13から出力される複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形(波形1)が、前記第1の波形合成部(波形合成(2))12から出力される前記第1の信号波形(波形1')と同一である。
【0018】
以下に詳細に説明する。
上記のフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置は、ピークリミッタ動作中でない場合とピークリミッタ動作中である場合の2種類の動作がある。
【0019】
<ピークリミッタ動作中でない場合(通常動作の場合)>
フライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置は、
図1の出力電流を検出する電流検出回路17を有し、この電流検出回路17により検出された出力電流が所定範囲内である場合、ピークリミッタ回路18はピークリミッタ動作を行わない。
制御素子部16によりピークリミッタ回路18がピークリミッタ動作中でないと判断された場合は、制御素子16が第2の波形合成部(波形合成(1))14からの出力を許可しないので、第2の波形合成部(波形合成(1))14から第2の信号波形(波形A1)が出力されない。そして、複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形(波形1)が第1のPWM信号部(SW素子1のPWM信号)13から第1の波形合成部(波形合成(2))12へ出力され、第1の波形合成部(波形合成(2))12から第1の信号波形(波形1')がスイッチ素子(
図1のSW素子1)11へ出力される。この際、波形1'は波形1と同一である。
【0020】
同様に、
図3に示すように、制御素子16が第2の波形合成部(波形合成(1))14からの出力を許可しないので、第2の波形合成部(波形合成(1))14から第2の信号波形(波形A2)が出力されない。そして、複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形(波形2)が第1のPWM信号部(SW素子2のPWM信号)13から第1の波形合成部(波形合成(2))12へ出力され、第1の波形合成部(波形合成(2))12から第1の信号波形(波形2')がスイッチ素子(
図1のSW素子2)11へ出力される。この際、波形2'は波形2と同一である。なお、
図3は、
図1に示すスイッチ素子(SW素子2)の駆動を制御する方法を説明する模式図である。
【0021】
同様に、
図4に示すように、制御素子16が第2の波形合成部(波形合成(1))14からの出力を許可しないので、第2の波形合成部(波形合成(1))14から第2の信号波形(波形A3)が出力されない。そして、複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形(波形3)が第1のPWM信号部(SW素子3のPWM信号)13から第1の波形合成部(波形合成(2))12へ出力され、第1の波形合成部(波形合成(2))12から第1の信号波形(波形2')がスイッチ素子(
図1のSW素子3)11へ出力される。この際、波形3'は波形3と同一である。なお、
図4は、
図1に示すスイッチ素子(SW素子3)の駆動を制御する方法を説明する模式図である。
【0022】
同様に、
図5に示すように、制御素子16が第2の波形合成部(波形合成(1))14からの出力を許可しないので、第2の波形合成部(波形合成(1))14から第2の信号波形(波形An)が出力されない。nは4以上の自然数である。そして、複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形(波形n)が第1のPWM信号部(SW素子nのPWM信号)13から第1の波形合成部(波形合成(2))12へ出力され、第1の波形合成部(波形合成(2))12から第1の信号波形(波形n')がスイッチ素子(
図1のSW素子n)11へ出力される。この際、波形n'は波形nと同一である。なお、
図5は、
図1に示すスイッチ素子(SW素子n)の駆動を制御する方法を説明する模式図である。
【0023】
図6は、フライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの通常動作時のゲート波形を示す図である。
図6のゲート波形から上述した説明と一致していることが分かる。
【0024】
<ピークリミッタ動作中である場合>
フライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置は、
図1の出力電流を検出する電流検出回路17を有する。この電流検出回路17により検出された出力電流が所定範囲外である場合に、前記出力電流が所定範囲内になるようにピークリミッタ回路18がピークリミッタ動作を行う。
制御素子部16は、第1のPWM信号部(SW素子1のPWM信号部)13及び第2のPWM信号部15を制御するものである。
【0025】
図2に示す制御素子16によりピークリミッタ回路18がピークリミッタ動作中であると判断した場合に、
図2に示すように、ハイサイド側又はローサイド側の複数のスイッチ素子(
図1のSW素子1、2、3、・・・n、nは4以上の自然数)のうちの一つのスイッチ素子(
図1のSW素子1)11に供給する前記第1の信号波形(波形1')を生成するための複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形(波形1)を、第1のPWM信号部(SW素子1のPWM信号部)13から第1の波形合成部(波形合成(2))12に供給する。
【0026】
第2の信号波形(波形A1)を生成するための複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形(波形1)以外の全てのPWM信号波形(波形2、3、・・・n)を、第2のPWM信号部(SW素子2のPWM信号、SW素子3のPWM信号、・・・SW素子nのPWM信号)15から第2の波形合成部(波形合成(1))14に供給する。
【0027】
第1の信号波形(波形1')を生成するための第2の信号波形(波形A1)を、第2の波形合成部(波形合成(1))14から第1の波形合成部(波形合成(2))12に供給する。なお、第2の信号波形(波形A1)は、前記第2の波形合成部(波形合成(1))14において前記全てのPWM信号波形(波形2、3、・・・n)が合成された波形である。
【0028】
制御素子16により第2の波形合成部(波形合成(1))14の出力を許可し、第1の波形合成部(波形合成(2))12が第1の信号波形(波形1')を複数のスイッチ素子(
図1のSW素子1、2、3、・・・n、nは4以上の自然数)のうちの一つのスイッチ素子(
図1のSW素子1)11に供給する。また、ピークリミッタ回路18は、第1の信号波形(波形1')を生成するための第3の信号波形(波形B)を、第1の波形合成部(波形合成(2))12に供給する。これにより、第1の波形合成部(波形合成(2))12からスイッチ素子(
図1のSW素子1)11に波形1'が供給され、スイッチ素子(
図1のSW素子1)11のオン・オフ制御を行う。なお、前記第1の信号波形(波形1')は、第1の波形合成部(波形合成(2))12においてPWM信号波形(波形1)と第2の信号波形(波形A1)と第3の信号波形(波形B)を合成したものである
【0029】
同様に、
図3に示すように、ハイサイド側又はローサイド側の複数のスイッチ素子(
図1のSW素子1、2、3、・・・n、nは4以上の自然数)のうちの一つのスイッチ素子(
図1のSW素子2)11に供給する第1の信号波形(波形2')を生成するための複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形(波形2)を、第1のPWM信号部(SW素子2のPWM信号部)13から第1の波形合成部(波形合成(2))12に供給する。
【0030】
第2の信号波形(波形A2)を生成するための複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形(波形2)以外の全てのPWM信号波形(波形1、3、・・・n)を、第2のPWM信号部(SW素子1のPWM信号、SW素子3のPWM信号、・・・SW素子nのPWM信号)15から第2の波形合成部(波形合成(1))14に供給する。
【0031】
第1の信号波形(波形2')を生成するための第2の信号波形(波形A2)を、第2の波形合成部(波形合成(1))14から第1の波形合成部(波形合成(2))12に供給する。なお、第2の信号波形(波形A2)は、前記第2の波形合成部(波形合成(1))14において前記全てのPWM信号波形(波形1、3、・・・n)が合成された波形である。
【0032】
制御素子16により第2の波形合成部(波形合成(1))14の出力を許可し、第1の波形合成部(波形合成(2))12が第1の信号波形(波形2')を複数のスイッチ素子(
図1のSW素子1、2、3、・・・n、nは4以上の自然数)のうちの一つのスイッチ素子(
図1のSW素子2)11に供給する。また、ピークリミッタ回路18は、第1の信号波形(波形2')を生成するための第3の信号波形(波形B)を、第1の波形合成部(波形合成(2))12に供給する。これにより、第1の波形合成部(波形合成(2))12からスイッチ素子(
図1のSW素子2)11に波形2'が供給され、スイッチ素子(
図1のSW素子2)11のオン・オフ制御を行う。なお、前記第1の信号波形(波形2')は、第1の波形合成部(波形合成(2))12においてPWM信号波形(波形2)と第2の信号波形(波形A2)と第3の信号波形(波形B)を合成したものである
【0033】
同様に、
図4に示すように、ハイサイド側又はローサイド側の複数のスイッチ素子(
図1のSW素子1、2、3、・・・n、nは4以上の自然数)のうちの一つのスイッチ素子(
図1のSW素子3)11に供給する第1の信号波形(波形3')を生成するための複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形(波形3)を、第1のPWM信号部(SW素子3のPWM信号部)13から第1の波形合成部(波形合成(2))12に供給する。
【0034】
第2の信号波形(波形A3)を生成するための複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形(波形3)以外の全てのPWM信号波形(波形1、2、・・・n)を、第2のPWM信号部(SW素子1のPWM信号、SW素子2のPWM信号、・・・SW素子nのPWM信号)15から第2の波形合成部(波形合成(1))14に供給する。
【0035】
第1の信号波形(波形3')を生成するための第2の信号波形(波形A3)を、第2の波形合成部(波形合成(1))14から第1の波形合成部(波形合成(2))12に供給する。なお、第2の信号波形(波形A3)は、前記第2の波形合成部(波形合成(1))14において前記全てのPWM信号波形(波形1、2、・・・n)が合成された波形である。
【0036】
制御素子16により第2の波形合成部(波形合成(1))14の出力を許可し、第1の波形合成部(波形合成(2))12が第1の信号波形(波形3')を複数のスイッチ素子(
図1のSW素子1、2、3、・・・n、nは4以上の自然数)のうちの一つのスイッチ素子(
図1のSW素子3)11に供給する。また、ピークリミッタ回路18は、第1の信号波形(波形3')を生成するための第3の信号波形(波形B)を、第1の波形合成部(波形合成(2))12に供給する。これにより、第1の波形合成部(波形合成(2))12からスイッチ素子(
図1のSW素子3)11に波形3'が供給され、スイッチ素子(
図1のSW素子3)11のオン・オフ制御を行う。なお、前記第1の信号波形(波形3')は、第1の波形合成部(波形合成(2))12においてPWM信号波形(波形3)と第2の信号波形(波形A3)と第3の信号波形(波形B)を合成したものである
【0037】
同様に、
図5に示すように、ハイサイド側又はローサイド側の複数のスイッチ素子(
図1のSW素子1、2、3、・・・n、nは4以上の自然数)のうちの一つのスイッチ素子(
図1のSW素子n)11に供給する第1の信号波形(波形n')を生成するための複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形(波形n)を、第1のPWM信号部(SW素子nのPWM信号部)13から第1の波形合成部(波形合成(2))12に供給する。
【0038】
第2の信号波形(波形An)を生成するための複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形(波形n)以外の全てのPWM信号波形(波形1、2、3・・・)を、第2のPWM信号部(SW素子1のPWM信号、SW素子2のPWM信号、SW素子3のPWM信号、・・・)15から第2の波形合成部(波形合成(1))14に供給する。
【0039】
第1の信号波形(波形n')を生成するための第2の信号波形(波形An)を、第2の波形合成部(波形合成(1))14から第1の波形合成部(波形合成(2))12に供給する。なお、第2の信号波形(波形An)は、前記第2の波形合成部(波形合成(1))14において前記全てのPWM信号波形(波形1、2、3・・・)が合成された波形である。
【0040】
制御素子16により第2の波形合成部(波形合成(1))14の出力を許可し、第1の波形合成部(波形合成(2))12が第1の信号波形(波形n')を複数のスイッチ素子(
図1のSW素子1、2、3、・・・n、nは4以上の自然数)のうちの一つのスイッチ素子(
図1のSW素子n)11に供給する。また、ピークリミッタ回路18は、第1の信号波形(波形n')を生成するための第3の信号波形(波形B)を、第1の波形合成部(波形合成(2))12に供給する。これにより、第1の波形合成部(波形合成(2))12からスイッチ素子(
図1のSW素子n)11に波形n'が供給され、スイッチ素子(
図1のSW素子n)11のオン・オフ制御を行う。なお、前記第1の信号波形(波形n')は、第1の波形合成部(波形合成(2))12においてPWM信号波形(波形n)と第2の信号波形(波形An)と第3の信号波形(波形B)を合成したものである
【0041】
なお、ハイサイド側の複数のスイッチ素子のオン・オフ制御は、ローサイド側の複数のスイッチ素子と同一のオン・オフ制御を行うとよい。
【0042】
上述したようにピークリミッタ回路18ピークリミッタ動作を行うことは、マルチレベルインバータからの出力電流に電流制限をかけることである。
【0043】
本実施形態によれば、電流検出回路17により検出されたフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータからの出力電流が所定範囲外である場合(インバータの出力側の負荷量が大きくなる場合や出力短絡が生じる場合等)に、出力電流が所定範囲内になるようにピークリミッタ動作を行うピークリミッタ回路18と、制御素子16によりピークリミッタ回路18がピークリミッタ動作中であると判断した場合に、複数のスイッチ素子(
図1のSW素子1、2、3、・・・n、nは4以上の自然数)のうちの一つのスイッチ素子(例えば、
図1のSW素子1)11に供給する第1の信号波形(例えば、波形1')を生成するための複数のPWM信号波形のうちの一つのPWM信号波形(例えば、波形1)を、第1の波形合成部(波形合成(2))12に供給する第1のPWM信号部(例えば、SW素子1のPWM信号部)13と、第1の信号波形(例えば、波形1')を生成するための第2の信号波形(例えば、波形A1)を、第1の波形合成部(波形合成(2))12に供給する第2の波形合成部(波形合成(1))14を有する。これにより、ピークリミッタ動作時にスイッチ素子11に耐圧以上の電圧が印加されることを防止できる。
【0044】
別言すれば、フライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータでは、
図2から
図5に示すように、ピークリミッタ信号をマイコンなどの制御素子16に入力し、ピークリミッタ動作している際、SW素子1~nごとにピークリミッタ動作させ、ハイサイド側及びローサイド側のSW素子で同じ動作をさせるとよい。
【0045】
図7は、
図2に示すマルチレベルインバータの電流制限装置のピークリミッタ動作時のゲート波形を示す図である。
図8は、上述したフライングキャパシタ方式のマルチレベルインバータの電流制限装置のピークリミッタ動作時の波形全体を示す図である。
【0046】
図8では、上述したハイサイド側同士、ローサイド側同士でピークリミッタ回路を組むことで、スイッチ素子11への印加電圧が安定し、電流制限をかけるピークリミッタ動作中にスイッチ素子に耐圧以上の電圧が印加されることを防止できることが分かる。
【符号の説明】
【0047】
11 一つのスイッチ素子
12 第1の波形合成部(波形合成(2))
13 第1のPWM信号部
14 第2の波形合成部(波形合成(1))
15 第2のPWM信号部
16 制御素子
17 電流検出回路
18 ピークリミッタ回路