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  • 特開-カレントミラー回路 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140339
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】カレントミラー回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 3/26 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G05F3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051433
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(74)【代理人】
【識別番号】100135714
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 一生
(74)【代理人】
【識別番号】100167612
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 直行
(72)【発明者】
【氏名】森田 智章
【テーマコード(参考)】
5H420
【Fターム(参考)】
5H420NA16
5H420NA17
5H420NB03
5H420NB12
5H420NB25
5H420NB36
5H420NC02
5H420NC23
(57)【要約】
【課題】ミラー比の設定値に対する精度が良好なカレントミラー回路を提供する。
【解決手段】カレントミラー回路1は、参照電流I1を出力する第1トランジスタQ11と、第1トランジスタQ11の制御電極に制御電極が接続されている、参照電流I1に応じた第1ミラー電流I2が流れる第2トランジスタQ12および第2ミラー電流I3~I6が流れる第3トランジスタQ13~Q16と、第1~第3トランジスタQ11~Q16と直列接続されている第1~第3補助トランジスタQ31~Q36と、第1~第3補助トランジスタQ31~Q36の通電状態を制御する制御部8とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照電流を出力する第1トランジスタと、
前記第1トランジスタの制御電極に制御電極が接続されている、前記参照電流に応じた第1ミラー電流が流れる第2トランジスタと、
前記第1トランジスタの制御電極に制御電極が接続されている、前記参照電流に応じた第2ミラー電流が流れる第3トランジスタと、
前記第1トランジスタと直列接続されている第1補助トランジスタと、
前記第2トランジスタと直列接続されている第2補助トランジスタと、
前記第3トランジスタと直列接続されている第3補助トランジスタと、
前記第1補助トランジスタと前記第2補助トランジスタと前記第3補助トランジスタの通電状態を制御する制御部と
を備える、
カレントミラー回路。
【請求項2】
前記第1トランジスタは、第1主電極が第1端子に接続され、第2主電極が前記第1補助トランジスタの第1主電極に接続されており、
前記第2トランジスタは、第1主電極が前記第1端子に接続され、第2主電極が前記第2補助トランジスタの第1主電極に接続されており、
前記第2トランジスタは、第1主電極が前記第1端子に接続され、第2主電極が前記第2補助トランジスタの第1主電極に接続されており、
前記第3トランジスタは、第1主電極が前記第1端子に接続され、第2主電極が前記第3補助トランジスタの第1主電極に接続されており、
前記第1補助トランジスタと前記第2補助トランジスタと前記第3補助トランジスタの第2主電極が第2端子に接続されている、
請求項1に記載のカレントミラー回路。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1補助トランジスタをオン状態にすると共に、
前記第2補助トランジスタをオン状態にしている間は、前記第3補助トランジスタの通電状態を制御し、
前記第2補助トランジスタをオフ状態にしている間は、前記第3補助トランジスタをオフ状態に制御する、
請求項1に記載のカレントミラー回路。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1補助トランジスタをオン状態にすると共に、
前記第2補助トランジスタと前記第3補助トランジスタの通電状態を制御する
請求項1に記載のカレントミラー回路。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1ミラー電流と前記第2ミラー電流を生成しないときには、前記第1補助トランジスタをオフ状態に制御する請求項1に記載のカレントミラー回路。
【請求項6】
前記第2トランジスタと前記第3トランジスタの大きさは、前記参照電流の大きさに対する前記第1ミラー電流と前記第2ミラー電流の大きさの比率に応じてそれぞれ設定されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載のカレントミラー回路。
【請求項7】
前記第1補助トランジスタの大きさは、前記第1トランジスタと同じ大きさに設定されており、
前記第2補助トランジスタの大きさは、前記第2トランジスタと同じ大きさに設定されており、
前記第3補助トランジスタの大きさは、前記第3トランジスタと同じ大きさに設定されている、
請求項6に記載のカレントミラー回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カレントミラー回路に関する。
【背景技術】
【0002】
カレントミラー回路は、例えば、過電流保護回路など、様々な回路に用いられている。
【0003】
このようなカレントミラー回路の一例として、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-97000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カレントミラー回路は、使用状況によっては、参照電流とミラー電流の比率であるミラー比が設定値よりも大きくずれてしまうことがある。
【0006】
本開示の目的は、ミラー比の設定値に対する精度が良好なカレントミラー回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本開示の一態様に係るカレントミラー回路は、参照電流を出力する第1トランジスタと、第1トランジスタの制御電極に制御電極が接続されている、参照電流に応じた第1ミラー電流が流れる第2トランジスタと、第1トランジスタの制御電極に制御電極が接続されている、参照電流に応じた第2ミラー電流が流れる第3トランジスタと、第1トランジスタと直列接続されている第1補助トランジスタと、第2トランジスタと直列接続されている第2補助トランジスタと、第3トランジスタと直列接続されている第3補助トランジスタと、第1補助トランジスタと第2補助トランジスタと第3補助トランジスタの通電状態を制御する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係るカレントミラー回路によれば、ミラー比の設定値に対する精度が良好なカレントミラー回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、参考例に係るカレントミラー回路の一例を示す回路図である。
図2図2は、実施形態に係るカレントミラー回路の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。なお、以下で説明する実施形態は、包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の設置位置及び接続形態は、一例であり、本開示に限定する主旨ではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。さらに、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0011】
また、以下に示す参考例および実施形態には、同様の構成要素が含まれている場合があり、同様の構成要素には共通の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、参考例に係るカレントミラー回路10の一例を示す回路図である。図2は、実施形態に係るカレントミラー回路1の一例を示す回路図である。以下では、参考例に係るカレントミラー回路10の構成を説明した後に、実施形態に係るカレントミラー回路1の説明を行う。
【0013】
(参考例)
参考例に係るカレントミラー回路10は、複数のトランジスタにより構成されている。ここでは、複数のトランジスタはNチャネル型MOSFETを用いる場合を例として説明する。
【0014】
図1に示すように、参考例に係るカレントミラー回路10は、参照電流I1を出力するための第1トランジスタQ11と、可変定電流源4にミラー電流Isを生成するための並列に配置された第2~第6トランジスタQ12~Q16を備える。図1に示す参考例では、可変定電流源4にミラー電流Isを生成するためのトランジスタが5個の場合を例示している。
【0015】
第1トランジスタQ11は、第1主電極(例えば、ドレイン)が第1端子3に接続されており、第2主電極(例えば、ソース)が第2端子5に接続されている。第1端子3は直流電源Vdcに接続され、第2端子5はグランドに接続されている。第1トランジスタQ11は、第1主電極と制御電極(例えば、ゲート)が接続されている。第1トランジスタQ11の制御電極は、第2~第6トランジスタQ12~Q16の制御電極に接続されている。
【0016】
カレントミラー回路10は、対応する第2~第6トランジスタQ12~Q16にそれぞれ直列接続された補助トランジスタQ22~Q26と、補助トランジスタQ22~Q26の通電状態を制御する制御部8とを更に備える。
【0017】
第2トランジスタQ12の第1主電極は、可変定電流源4を介して第1端子3に接続されている。補助トランジスタQ22は、第1主電極が第2トランジスタQ12の第2主電極に接続され、第2主電極が第2端子5に接続されている。
【0018】
補助トランジスタQ23~Q26は、第1主電極が可変定電流源4を介して第1端子3に接続され、第2主電極が対応する第3~第6トランジスタQ13~Q16の第1主電極にそれぞれ接続されている。第3~第6トランジスタQ13~Q16の第2主電極は、第2トランジスタQ12と補助トランジスタQ22の接続点に接続されている。
【0019】
第2~第6トランジスタQ12~Q16は、第1トランジスタQ11に対して、それぞれ、所定の大きさのミラー比になるように設定されている。例えば、第1トランジスタQ11に対して、第2トランジスタQ12は11倍、第3トランジスタQ13は1倍、第4トランジスタQ14は2倍、第5トランジスタQ15は4倍、第6トランジスタQ16は8倍のミラー比になるように設定されている。つまり、第2トランジスタQ12はI2=11×I1、第3トランジスタQ13はI3=I1、第4トランジスタQ14はI4=2×I1、第5トランジスタQ15はI5=4×I1、第6トランジスタQ16はI6=8×I1のミラー電流をそれぞれ生成する。このような構成により、制御部8により補助トランジスタQ22~Q26の通電状態を制御することにより、第1トランジスタQ11に流れる参照電流I1に対して、可変定電流源4に流れるミラー電流Isをゼロまたは11×I1~26×I1の範囲で可変に生成することができる。
【0020】
また、補助トランジスタQ22~Q26は、例えば、対応する第2~第6トランジスタQ12~Q16と同じ大きさのミラー比に設定すればよい。
【0021】
次に、参考例に係るカレントミラー回路10の動作について説明する。
【0022】
可変定電流源4にミラー電流Isの出力を要求しないときには、制御部8は補助トランジスタQ22をオフ状態に制御する。これにより、第2~第6トランジスタQ12~Q16に流れるミラー電流I2~I6がゼロとなるので、可変定電流源4のミラー電流Isもゼロとなる。これにより、可変定電流源4にミラー電流Isの出力を要求しないときには、ミラー電流Isをゼロとして、ミラー電流Isによる消費電流を抑えることができる。
【0023】
一方、可変定電流源4にミラー電流Isの出力が要求されたときには、制御部8は補助トランジスタQ22をオン状態に制御するとともに、要求されたミラー電流Isの大きさに応じて、補助トランジスタQ23~Q26の通電状態を制御する。例えば、補助トランジスタQ23~Q26の全てをオフ状態に制御すれば、ミラー電流Isは、I2=11×I1となる。補助トランジスタQ23をオン状態とし、補助トランジスタQ24~Q26をオフ状態に制御すれば、ミラー電流IsはI2+I3=12×I1となる。補助トランジスタQ23~Q26の全てをオン状態に制御すれば、ミラー電流IsはI2+I3+I4+I5+I6=26×I1となる。
【0024】
このような構成の参考例に係るカレントミラー回路10において、発明者は、回路シミュレーションにより、参照電流I1と、補助トランジスタQ22をオン状態とし補助トランジスタQ23~Q26をオフ状態としたときのミラー電流Isの値を確認した。すると、参照電流I1=20.5μAに対して、ミラー電流Is=214.2μAとなり、これより、ミラー比はIs/I1=10.4となり、設計値のミラー比である11倍から大きくずれた、精度の悪いミラー電流Isとなってしまうことが分った。このミラー比のずれは、補助トランジスタQ22のオン抵抗とミラー電流Isにより補助トランジスタQ22の主電極間に発生する電圧によるものである。
【0025】
(実施形態)
実施形態に係るカレントミラー回路1は、複数のトランジスタにより構成されている。ここでは、複数のトランジスタはNチャネル型MOSFETを用いる場合を例として説明するが、複数のトランジスタはNチャネル型MOSFETに限定されるものではない。
【0026】
図2に示すように、実施形態に係るカレントミラー回路1は、参照電流I1を出力するための第1トランジスタQ11と、可変定電流源4にミラー電流Isを生成するための並列に配置された第2~第6トランジスタQ12~Q16を備える。図2に示す実施形態では、可変定電流源4にミラー電流Isを生成するためのトランジスタが5個の場合を例示しているが、これには限定されず、2個以上のトランジスタが備えられていればよく、更に、ミラー電流Isが可変ではなく固定の場合は、第2トランジスタQ12のみでもよい。
【0027】
第1トランジスタQ11は、第1主電極(例えば、ドレイン)と制御電極(例えば、ゲート)が接続されている。更に、第1トランジスタQ11の制御電極は、第2~第6トランジスタQ12~Q16の制御電極に接続されている。
【0028】
カレントミラー回路1は、対応する第1~第6トランジスタQ11~Q16にそれぞれ直列接続された第1~第6補助トランジスタQ31~Q36と、第1~第6補助トランジスタQ31~Q36の通電状態を制御する制御部8とを更に備える。参考例に係るカレントミラー回路10に対して、実施形態に係るカレントミラー回路1では、第1トランジスタQ11にも第1補助トランジスタQ31が直列接続されているという点が大きく相違する。
【0029】
第1トランジスタQ11は、第1主電極が第1端子3に接続されている。第2~第6トランジスタQ12~Q16の第1主電極は、可変定電流源4を介して第1端子3に接続されている。第1~第6補助トランジスタQ31~Q36は、第1主電極が第1~第6トランジスタQ11~Q16の第2主電極(例えば、ソース)にそれぞれ接続され、第2主電極が第2端子5にそれぞれ接続されている。第2端子5は、グランドに接続されている。
【0030】
なお、カレントミラー回路1の構成はこれには限定されず、以下のように構成されていてもよい。例えば、第1~第6補助トランジスタQ31~Q36は、第2主電極が第1~第6トランジスタQ11~Q16の第1主電極にそれぞれ接続されている。第1補助トランジスタQ31の第1主電極が第1端子3に接続され、第2~第6補助トランジスタQ32~Q36の第1主電極がそれぞれ可変定電流源4を介して第1端子3に接続されている。第1~第6トランジスタQ11~Q16の第2主電極が第2端子5にそれぞれ接続されている。第2端子5は、グランドに接続されている。
【0031】
第2~第6トランジスタQ12~Q16は、第1トランジスタQ11に対して、それぞれ、所定の大きさのミラー比になるように設定されている。例えば、第1トランジスタQ11に対して、第2トランジスタQ12は11倍、第3トランジスタQ13は1倍、第4トランジスタQ14は2倍、第5トランジスタQ15は4倍、第6トランジスタQ16は8倍のミラー比になるように設定されている。つまり、参照電流I1に対して第2トランジスタQ12はI2=11×I1、第3トランジスタQ13はI3=I1、第4トランジスタQ14はI4=2×I1、第5トランジスタQ15はI5=4×I1、第6トランジスタQ16はI6=8×I1のミラー電流をそれぞれ生成する。このような構成により、制御部8により、第1補助トランジスタQ31をオン状態にすると共に、第2~第6補助トランジスタQ32~Q36の通電状態を制御することにより、第1トランジスタQ11に流れる参照電流I1に対して、可変定電流源4に流れるミラー電流Isを11×I1~26×I1の範囲で可変に生成することができる。
【0032】
また、第1~第6補助トランジスタQ31~Q36は、対応する第1~第6トランジスタQ11~Q16と同じ大きさのミラー比に設定されている。
【0033】
次に、実施形態に係るカレントミラー回路1の動作について説明する。
【0034】
まず、制御部8により第1補助トランジスタQ31を常時オン状態に制御することにより、参照電流I1が常時流れている状態となる。
【0035】
そして、可変定電流源4にミラー電流Isの出力を要求しないときには、制御部8は第2~第6補助トランジスタQ32~Q36の全てをオフ状態に制御する。これにより、第2~第6トランジスタQ12~Q16により生成されるミラー電流I2~I6がゼロとなるので、可変定電流源4のミラー電流Isもゼロとなる。可変定電流源4にミラー電流Isの出力を要求しないときには、ミラー電流Isをゼロとして、ミラー電流Isによる消費電流を抑えることができる。
【0036】
一方、可変定電流源4にミラー電流Isの出力が要求されたときには、制御部8は第2補助トランジスタQ32をオン状態に制御するとともに、要求されたミラー電流Isの大きさに応じて、第3~第6補助トランジスタQ33~Q36の通電状態を制御する。例えば、第3~第6補助トランジスタQ33~Q36の全てをオフ状態に制御すれば、ミラー電流IsはI2=11×I1となる。第3補助トランジスタQ33をオン状態とし、第4~第6補助トランジスタQ34~Q36をオフ状態に制御すれば、ミラー電流IsはI2+13=12×I1となる。第3~第6補助トランジスタQ33~Q36の全てをオン状態に制御すれば、ミラー電流IsはI2+I3+I4+I5+I6=26×I1となる。このように制御部8を動作させることにより、ミラー電流Isを11×I1~26×I1の範囲で可変に設定することができる。
【0037】
また、これには、限定されず、可変定電流源4にミラー電流Isの出力が要求されたときには、要求されたミラー電流Isの大きさに応じて、第2~第6補助トランジスタQ32~Q36の通電状態を制御するようにしてもよい。例えば、第3補助トランジスタQ33をオン状態とし、第2補助トランジスタQ32と第4~第6補助トランジスタQ34~Q36をオフ状態に制御すれば、ミラー電流IsはI3=I1となる。また、第3~第4補助トランジスタQ33~Q34をオン状態とし、第2補助トランジスタQ32と第5~第6補助トランジスタQ35~Q36をオフ状態に制御すれば、ミラー電流IsはI3+I4=3×I1となる。このように制御部8を動作させることにより、ミラー電流IsをI1~26×I1の範囲で可変に設定することができる。
【0038】
さらに、ミラー電流Isをゼロにしたい場合には、第1補助トランジスタQ31をオフに制御してもよい。第1補助トランジスタQ31をオフに制御することにより、参照電流I1が出力されないため、第2~第6補助トランジスタQ32~Q36の通電状態によらずミラー電流I2~I6が生成されなくなるので、ミラー電流Isをゼロにすることができる。
【0039】
このような構成の実施形態に係るカレントミラー回路1において、発明者は、回路シミュレーションにより、第1~第2補助トランジスタQ31~Q32をオン状態とし第3~第6補助トランジスタQ33~Q36をオフ状態としたときのミラー電流Is=I2の値を確認した。すると、参照電流I1=20.3μAに対して、ミラー電流Is=225.4μAとなり、これより、ミラー比はIs/I1=11.1となり、設計値のミラー比である11倍からのずれが小さい、精度の良いミラー電流Isとすることができた。このように、ミラー電流Isを生成するための第2~第6トランジスタQ12~Q16に、それぞれ同じ大きさのミラー比の第2~第6補助トランジスタQ32~Q36を直列接続する。そして、参照電流I1を生成するための第1トランジスタQ11にも、同じ大きさのミラー比の第1補助トランジスタQ31を直列接続する。このような構成により、カレントミラー回路1では、参照電流I1に対するミラー電流Isの設定値からのずれを小さくすることができる。
【0040】
カレントミラー回路1によれば、例えば、可変定電流源4を過電流保護回路の閾値電流として用いることができる。すなわち、例えば、スイッチングレギュレータでは、出力端子の接続するハイ側トランジスタがオン状態の時にだけ過電流を検出すればよいため、ハイ側トランジスタがオフ状態の間は過電流保護回路に流れる閾値電流としての定電流を止めて消費電力を抑制することができる。
【0041】
以上、実施形態によれば、ミラー比の設定値に対する精度が良好なカレントミラー回路を提供することができる。
【0042】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0043】
(付記)
(付記1、図2
カレントミラー回路1は、参照電流I1を出力する第1トランジスタQ11と、第1トランジスタQ11の制御電極に制御電極が接続されている、参照電流I1に応じた第1ミラー電流I2が流れる第2トランジスタQ12と、第1トランジスタQ11の制御電極に制御電極が接続されている、参照電流I1に応じた第2ミラー電流I3~I6が流れる第3トランジスタQ13~Q16と、第1トランジスタQ11と直列接続されている第1補助トランジスタQ31と、第2トランジスタQ12と直列接続されている第2補助トランジスタQ32と、第3トランジスタQ13~Q16と直列接続されている第3補助トランジスタQ33~Q36と、第1補助トランジスタQ31と第2補助トランジスタQ32と第3補助トランジスタQ33~Q36の通電状態を制御する制御部8とを備える。付記1に記載のカレントミラー回路1によれば、ミラー比の設定値に対する精度が良好なカレントミラー回路を提供することができる。
【0044】
(付記2、図2
付記1に記載のカレントミラー回路1において、第1トランジスタQ11は、第1主電極が第1端子3に接続され、第2主電極が第1補助トランジスタQ31の第1主電極に接続されており、第2トランジスタQ12は、第1主電極が第1端子3に接続され、第2主電極が第2補助トランジスタQ32の第1主電極に接続されており、第2トランジスタQ12は、第1主電極が第1端子3に接続され、第2主電極が第2補助トランジスタQ32の第1主電極に接続されており、第3トランジスタQ13~Q16は、第1主電極が第1端子3に接続され、第2主電極が第3補助トランジスタQ33~Q36の第1主電極に接続されており、第1補助トランジスタQ31と第2補助トランジスタQ32と第3補助トランジスタQ33~Q36の第2主電極が第2端子5に接続されている。
【0045】
(付記3)
付記1または2に記載のカレントミラー回路1において、制御部8は、第1補助トランジスタQ31をオン状態にすると共に、第2補助トランジスタQ32をオン状態にしている間は、第3補助トランジスタQ33~Q36の通電状態を制御し、第2補助トランジスタQ32をオフ状態にしている間は、第3補助トランジスタQ33~Q36をオフ状態に制御する。付記3に記載のカレントミラー回路1によれば、ミラー電流Isを可変にすることができる。
【0046】
(付記4)
付記1または2に記載のカレントミラー回路1において、制御部8は、第1補助トランジスタQ31をオン状態にすると共に、第2補助トランジスタQ32と第3補助トランジスタQ33~Q36の通電状態を制御する。付記4に記載のカレントミラー回路1によれば、付記3に記載のカレントミラー回路1よりもミラー電流Isをより広範囲で可変にすることができる。
【0047】
(付記5)
付記1から4のいずれか1項に記載のカレントミラー回路1において、制御部8は、第1ミラー電流I2と第2ミラー電流I3~I6を生成しないときには、第1補助トランジスタQ31をオフ状態に制御する。
【0048】
(付記6)
付記1から5のいずれか1項に記載のカレントミラー回路1において、第2トランジスタQ12と第3トランジスタQ13~Q16の大きさは、参照電流I1の大きさに対する第1ミラー電流I2と第2ミラー電流I3~I6の大きさの比率に応じてそれぞれ設定されている。
【0049】
(付記7、図2
付記6に記載のカレントミラー回路1において、第1補助トランジスタQ31の大きさは、第1トランジスタQ11と同じ大きさに設定されており、第2補助トランジスタQ32の大きさは、第2トランジスタQ12と同じ大きさに設定されており、第3補助トランジスタQ33~Q36の大きさは、第3トランジスタQ13~Q16と同じ大きさに設定されている。
【符号の説明】
【0050】
1 カレントミラー回路
3 第1端子
4 可変定電流源
5 第2端子
8 制御部
I1 参照電流
I2~I6、Is ミラー電流
Q11~Q16 第1~第6トランジスタ
Q31~Q36 第1~第6補助トランジスタ
図1
図2