(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140340
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】レンズ駆動装置およびカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20241003BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20241003BHJP
G02B 7/08 20210101ALI20241003BHJP
G02B 7/28 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G03B30/00
G02B7/08 B
G02B7/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051435
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173691
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 康久
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】大坂 智彦
(72)【発明者】
【氏名】工藤 憲和
【テーマコード(参考)】
2H044
2H151
【Fターム(参考)】
2H044BE01
2H044BE10
2H044DA01
2H044DB00
2H151FA01
2H151FA10
(57)【要約】
【課題】内部構造のレイアウトの設計自由度が高いレンズ駆動装置およびカメラモジュールを提供する。
【解決手段】レンズ駆動装置1は、レンズバレル2と、レンズバレル2を収納するためのハウジング3と、レンズバレル2を上下方向に駆動可能に支持するための支持機構4と、レンズバレル2を駆動させる駆動力を提供するための駆動機構5と、を含む。支持機構4は、ハウジング3内に固定的に設けられた第1の支持部41と、レンズバレル2上に設けられた第2の支持部42と、第1の支持部41と第2の支持部42との間で保持されたガイド部材43と、を備える。第1の支持部41および第2の支持部42のそれぞれは、磁性材料で形成されており、第1の支持部41と第2の支持部42との間に生じる磁気吸着力によって、ガイド部材43が第1の支持部41と第2の支持部42との間で保持されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系を保持するためのレンズバレルと、
前記レンズバレルを内部に収納するためのハウジングと、
前記ハウジング内において前記レンズバレルを前記光学系の光軸方向に駆動可能に支持するための支持機構と、
前記レンズバレル上に設けられたコイルおよび前記ハウジング上に設けられたマグネットを備え、前記レンズバレルを前記光軸方向に駆動させる駆動力を提供するための駆動機構と、を含み、
前記支持機構は、
前記光軸方向に延伸するよう前記ハウジング内に固定的に設けられ、少なくとも一部が前記マグネットと対向する第1の支持部と、
前記レンズバレル上に、前記第1の支持部と対向するよう設けられた第2の支持部と、
前記第1の支持部と前記第2の支持部との間で保持されたガイド部材と、を備え、
前記第1の支持部および前記第2の支持部のそれぞれは、磁性材料で形成されており、
前記第1の支持部と前記第2の支持部との間に生じる磁気吸着力によって、前記ガイド部材が前記第1の支持部と前記第2の支持部との間で保持されていることを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、磁性材料で形成されており、
前記ガイド部材と前記第1の支持部との間、および、前記ガイド部材と前記第2の支持部との間に磁気吸着力が発生している請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記コイルは、前記レンズバレルおよび前記支持機構を外側から囲むように設けられており、
前記コイルの一部は、前記支持機構の前記第1の支持部と前記マグネットとの間に位置している請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記ハウジングは、矩形平板形状を有する上板と、前記上板の縁部からそれぞれ前記光軸方向の結像側に直線状に延伸する4つの壁部と、前記上板に対向するベースと、を備え、
前記ハウジングは、少なくとも前記第1の支持部に対向する一部が磁性材料で構成されている請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記支持機構の前記第1の支持部は、前記ベースから前記光軸方向の受光側に向かって直線状に延伸する平板形状を有しており、
前記第1の支持部の側面が、前記マグネットと対向している請求項4に記載のレンズ駆動装置。
【請求項6】
前記第1の支持部および前記第2の支持部のそれぞれは、前記光軸方向に沿って延伸し、前記ガイド部材を受けるための受け溝を備えており、
前記ガイド部材は、前記第1の支持部と前記第2の支持部との間に生じる前記磁気吸着力によって、前記第1の支持部の前記受け溝と前記第2の支持部の前記受け溝との間で保持されている請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項7】
前記レンズバレルは、前記支持機構の前記第1の支持部を介して対称に配置された2つのレンズバレルを含み、
前記支持機構は、前記2つのレンズバレルを独立して前記光軸方向に駆動可能に支持するよう構成されており、
前記駆動機構は、前記2つのレンズバレルを独立して前記光軸方向に駆動させるよう構成されている請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項8】
前記レンズバレルは、前記支持機構の前記第1の支持部を介して対称に配置された2つのレンズバレルを含み、
前記支持機構は、前記2つのレンズバレルを共同して前記光軸方向に駆動可能に支持するよう構成されており、
前記駆動機構は、前記2つのレンズバレルを共同して前記光軸方向に駆動させるよう構成されている請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項9】
請求項1に記載のレンズ駆動装置と、
前記レンズ駆動装置のレンズバレルに保持された光学系と、を含むことを特徴とするカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、レンズ駆動装置およびカメラモジュールに関し、より具体的には、コイルとマグネットから構成される駆動機構を利用して、レンズを駆動するレンズ駆動装置およびカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラモジュールの光学系を光軸方向に駆動させ、オートフォーカス機能を提供するために、コイルとマグネットから構成されるVCM(Voice Coil Motor)タイプの駆動機構が用いられている。例えば、特許文献1は、
図1に示されているようなオートフォーカス機能を有するカメラモジュール500を開示している。カメラモジュール500は、1枚以上のレンズから構成される光学系510を保持するレンズバレル520と、レンズバレル520を内部に収納するハウジング530と、を備えている。
【0003】
図2は、カメラモジュール500の駆動機構540を概略的に示している。
図2に示されているように、駆動機構540は、レンズバレル520の外周面上に固定されたマグネット541と、ハウジング530の内側面上にマグネット541と間隙を介して対向するよう設けられたヨーク542と、ヨーク542上にマグネット541と間隙を介して対向するよう設けられたコイル543と、を含む。制御部550からコイル543に電流を供給することによって、コイル543内を流れる電流の向きに応じて、レンズバレル520を画像センサーが搭載された回路基板560から離間させる向きの第1の駆動力F1およびレンズバレル520を回路基板560に接近させる向きの第2の駆動力F2のいずれかが生じ、オートフォーカス機能を提供することができる。
【0004】
また、
図2に示されているように、レンズバレル520の外周面上には、2つのガイドボール570をそれぞれ収納するための2つの第1の収納溝521が形成されている。一方、ハウジング530の内側面上には、2つのガイドボール570をそれぞれ収納するための2つの第2の収納溝531が形成されている。2つのガイドボール570のそれぞれは、第1の収納溝521と第2の収納溝531との間で回転可能に保持される。2つのガイドボール570を介してレンズバレル520がハウジング530によって支持されるため、レンズバレル520が駆動する際の摩擦抵抗力が低減され、レンズバレル520の上下運動を容易にしている。
【0005】
このような2つのガイドボール570は、マグネット541と、コイル543およびヨーク542から構成される電磁石との間に生じる反発力によって、レンズバレル520とハウジング530との間で保持されている。マグネット541と、コイル543およびヨーク542から構成される電磁石との間に生じる反発力によって、レンズバレル520が、図中の左側に向けて付勢される。この結果、2つのガイドボール570がハウジング530に向かって押し付けられ、2つのガイドボール570がレンズバレル520とハウジング530との間で保持される。
【0006】
このように、レンズバレル520上に設けられたマグネット541と、コイル543およびヨーク542から構成される電磁石との間に生じる反発力を利用して2つのガイドボール570を保持する場合、マグネット541の着磁方向を考慮して、ハウジング530内にヨーク542およびコイル543を配置する必要がある。そのため、マグネット541のサイズや形状に依存して、カメラモジュール500の内部構造のレイアウト、すなわち、ヨーク542およびコイル543の構造および位置が決定される。また、近年、カメラモジュール500の高画質化の要求に応じて、画像センサーが大型化する傾向にあり、これに伴い、光学系510およびレンズバレル520も、大型化および高重量化する傾向にある。
【0007】
光学系510およびレンズバレル520が大型化および高重量化すると、レンズバレル520を駆動するのに十分な駆動力を確保するために、レンズバレル520の外周面上に設けられるマグネット541も大型化する傾向にある。さらに、2つのガイドボール570をレンズバレル520とハウジング530との間で保持するための反発力を確保するために、マグネット541を、レンズバレル520を介して、2つのガイドボール570と対向するような位置に設ける必要がある。このように、2つのガイドボール570をレンズバレル520とハウジング530との間で保持するために、大型化したマグネット541の配置箇所が必然的に決まり、さらに、マグネット541の配置箇所の決定に伴い、他のコンポーネント(ヨーク542やコイル543等)の配置箇所や形状も必然的に決まってしまう。そのため、カメラモジュール500の内部構造のレイアウトの設計自由度が非常に低くなってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みたものであり、その目的は、内部構造のレイアウトの設計自由度が高いレンズ駆動装置およびカメラモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、以下の(1)および(2)によって規定される本発明により達成される。
(1)光学系を保持するためのレンズバレルと、
前記レンズバレルを内部に収納するためのハウジングと、
前記ハウジング内において前記レンズバレルを前記光学系の光軸方向に駆動可能に支持するための支持機構と、
前記レンズバレル上に設けられたコイルおよび前記ハウジング上に設けられたマグネットを備え、前記レンズバレルを前記光軸方向に駆動させる駆動力を提供するための駆動機構と、を含み、
前記支持機構は、
前記光軸方向に延伸するよう前記ハウジング内に固定的に設けられ、少なくとも一部が前記マグネットと対向する第1の支持部と、
前記レンズバレル上に、前記第1の支持部と対向するよう設けられた第2の支持部と、
前記第1の支持部と前記第2の支持部との間で保持されたガイド部材と、を備え、
前記第1の支持部および前記第2の支持部のそれぞれは、磁性材料で形成されており、
前記第1の支持部と前記第2の支持部との間に生じる磁気吸着力によって、前記ガイド部材が前記第1の支持部と前記第2の支持部との間で保持されていることを特徴とするレンズ駆動装置。
【0011】
(2)上記(1)に記載のレンズ駆動装置と、
前記レンズ駆動装置のレンズバレルに保持された光学系と、を含むことを特徴とするカメラモジュール。
【発明の効果】
【0012】
本発明のレンズ駆動機構およびカメラモジュールにおいては、ガイド部材を保持する第1の支持部および第2の支持部のそれぞれが、磁性材料で構成されている。そのため、ハウジング上に設けられたマグネットによって第1の支持部および第2の支持部のそれぞれが磁化し、第1の支持部と第2の支持部との間に磁気吸着力が生じる。このような磁気吸着力によって、第1の支持部と第2の支持部との間でガイド部材が保持される。そのため、本発明のレンズ駆動機構およびカメラモジュールにおいては、第1の支持部と第2の支持部との間でガイド部材を保持するために、レンズバレル上にマグネットを設ける必要がない。そのため、レンズ駆動機構およびカメラモジュールの内部構造のレイアウトがマグネットによって制限されることがなく、レンズ駆動機構およびカメラモジュールの内部構造のレイアウトの設計自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】従来技術のカメラモジュールの斜視図である。
【
図2】
図1に示すカメラモジュールの駆動機構を説明するための概略図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るカメラモジュールの斜視図である。
【
図4】
図3に示すカメラモジュールの分解斜視図である。
【
図5】
図3に示すカメラモジュールの支持機構の分解斜視図である。
【
図6】
図3に示すカメラモジュールの内部構造を示すための横断面図である。
【
図7】
図3に示すカメラモジュールの内部構造を示すための縦断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係るカメラモジュールの斜視図である。
【
図9】
図8に示すカメラモジュールの分解斜視図である。
【
図10】
図8に示すカメラモジュールのレンズバレルの分解斜視図である。
【
図11】
図8に示すカメラモジュールの支持機構の分解斜視図である。
【
図12】
図8に示すカメラモジュールの内部構造を示すための横断面図である。
【
図13】
図8に示すカメラモジュールの内部構造を示すための縦断面図である。
【
図14】本発明の第3実施形態に係るカメラモジュールの分解斜視図である。
【
図15】
図14に示すカメラモジュールの内部構造を示すための横断面図である。
【
図16】
図14に示すカメラモジュールの内部構造を示すための縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のレンズ駆動装置およびカメラモジュールを、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて、説明する。なお、以下で参照する各図は、本発明の説明のために用意された模式的な図である。図面に示された各構成要素の寸法(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法を反映したものではない。また、各図において、同一または対応する要素には、同じ参照番号が付されている。以下の説明において、各図のZ方向を「上下方向」といい、Z軸の正方向を「上方」といい、Z軸の負方向を「下方」ということがある。
【0015】
<第1実施形態>
以下、
図3~
図7を参照して、本発明の第1実施形態に係るレンズ駆動装置およびカメラモジュールを詳述する。
図3は、本発明のカメラモジュールの斜視図である。
図4は、
図3に示すカメラモジュールの分解斜視図である。
図5は、
図3に示すカメラモジュールの支持機構の分解斜視図である。
図6は、
図3に示すカメラモジュールの内部構造を示すための横断面図である。
図7は、
図3に示すカメラモジュールの内部構造を示すための縦断面図である。
【0016】
図3および
図4に示す本発明の第1実施形態に係るカメラモジュール100は、スマートフォン、自動車、ドローン、医療機器等に搭載され、任意の被写体を撮影するために用いられる。カメラモジュール100は、光学系200と、光学系200を光軸方向に沿って駆動可能に保持するレンズ駆動装置1と、を備えている。カメラモジュール100は、画像センサーが設けられた回路基板上に搭載され、被写体を撮影するために用いられる。回路基板上にカメラモジュール100が搭載された状態において、レンズ駆動装置1の下方には、光学系200によって形成された光学像を撮像することにより画像を取得する画像センサー(図示せず)が設けられ、光学系200よって形成された光学像を撮影し、画像を取得する。なお、図示の形態では、光学系200は、概略的に1つのレンズから構成されているものとして描画されているが、被写体からの光を集光し、画像センサーの撮像面上に光学像を形成することができれば、これに限られず、光学系200は、1つ以上のレンズや絞り等の光学素子から構成されていてもよい。また、光学系200の光軸方向は、各図の上下方向(Z方向)と一致している。したがって、以下の説明において、「上下方向」との語は、「光学系200の光軸方向」と同じ意味で用いられる。また、「上方」との語は、「光学系200の光軸方向の受光側」と同じ意味で用いられ、さらに、「下方」との語は、「光学系200の光軸方向の結像側」と同じ意味で用いられる。
【0017】
画像センサーは、カメラモジュール100が搭載される回路基板上に搭載されており、光学系200によって形成された光学像を撮像することにより画像を取得する機能を有している。画像センサーは、レンズ駆動装置1の下方に位置しており、光学系200の光軸が画像センサーの撮像面と略直交し、光軸と画像センサーの撮像面の中心点とが略一致するように設けられている。画像センサーとしては、カラーまたは白黒のCCD画像センサーやCMOS画像センサーのようなカメラ分野において既知の任意の画像センサーを用いることができる。画像センサーによって取得された画像は、有線通信または無線通信によって、図示しない制御ユニット(例えば、任意のデバイスの制御ユニット)に送信される。
【0018】
レンズ駆動装置1によって光学系200が光軸方向に駆動されると、光学系200と画像センサーとの間の離間距離が変化し、カメラモジュール100のフォーカス調整が実行される。レンズ駆動装置1には、制御ユニットが接続されており、制御ユニットからレンズ駆動装置1に供給される電流に応じて、レンズ駆動装置1は、光学系200を駆動する。このような構成により、カメラモジュール100のオートフォーカス機能が提供される。
【0019】
図4に示されているように、レンズ駆動装置1は、光学系200を保持するためのレンズバレル2と、レンズバレル2を内部に収納するためのハウジング3と、ハウジング3内においてレンズバレル2を光学系200の光軸方向に駆動可能に支持するための支持機構4と、レンズバレル2上に設けられたコイル51およびハウジング3上に設けられた一対のマグネット52から構成され、レンズバレル2を光学系200の光軸方向に駆動させる駆動力を提供するための駆動機構5と、ハウジング3と一対のマグネット52との間に設けられたスペーサー6と、を含んでいる。
【0020】
レンズバレル2は、樹脂材料等の非磁性材料で形成された筒状部材であり、内部において光学系200を保持する機能を有している。レンズバレル2は、角筒形状の本体部21と、本体部21の略中央部に上下方向に貫通するよう形成された挿通孔22と、本体部21の+Y方向側の側面上に形成された2つの嵌合凹部23と、を備えている。
【0021】
図示の形態では、本体部21は、角筒形状を有しているが、本体部21の外周面上にコイル51を固定的に設けることができれば、本体部21の形状は、限られない。例えば、本体部21は、円筒形状や多角筒形状を有していてもよい。挿通孔22は、本体部21の略中央部に上下方向に直線状に貫通するよう形成されている。図示の形態では、挿通孔22は、本体部21を直線状に貫通する円筒形状を有しているが、光学系200を内部において保持することができれば、挿通孔22の形状は、特に限定されない。例えば、挿通孔22が多角筒形状を有しているような態様や、挿通孔22の内周面上にレンズや絞り等の光学系200の各要素を保持するための複数の溝が形成されているような態様も、本発明の範囲内である。接着剤、粘着テープ、リテーナー等の任意の固定手段によって挿通孔22内で光学系200を固定することにより、レンズバレル2によって光学系200を固定的に保持することができる。
【0022】
2つの嵌合凹部23は、支持機構4の後述する2つの第2の支持部42をそれぞれ内部において保持する機能を有している。2つの嵌合凹部23は、本体部21の+Y方向側の側面の上端から下端まで上下方向に直線状に延伸するよう形成された凹条であり、互いに離間した状態で、平行に延伸している。2つの嵌合凹部23は、それぞれ同じ構成を有しているので、以下、代表して1つの嵌合凹部23について説明する。2つの嵌合凹部23のそれぞれは、第2の支持部42の-Y方向側の外形形状に対応した形状を有している。図示の形態では、嵌合凹部23は、-Y方向側から+Y方向に向かって開口幅が線形的に増加する、くの字状形状を有している。嵌合凹部23内に第2の支持部42が収納され、固定される。また、嵌合凹部23の上端および下端は閉塞されていない。そのため、嵌合凹部23の上端は上方に向かって開放し、嵌合凹部23の下端は下方に向かって開放している。
【0023】
ハウジング3は、鉄やSUJ2(JIS G4805 高炭素クロム軸受鋼鋼材)等の磁性材料により構成された箱型形状を有する部材であって、レンズ駆動装置1の各コンポーネント(レンズバレル2、支持機構4、駆動機構5、およびスペーサー6)を内部において収納する機能を有している。さらに、ハウジング3は、磁性材料により構成されており、かつ、ハウジング3の内側面上に一対のマグネット52が、互いに対向するよう設けられているため、ハウジング3が一対のマグネット52の間の磁束密度を高めるヨークとして機能することができる。
【0024】
ハウジング3は、矩形平板状の上板31と、上板31から下方に延伸する4つの壁部32と、上板31と対向する矩形平板状のベース33と、を備えている。上板31は、ハウジング3の内部空間内に収納されたコンポーネントを上側から覆う矩形状の平板状部分である。上板31は、レンズバレル2によって保持された光学系200を外部に向けて露出させるための開口311を有している。開口311は、矩形部分と、矩形状部分の一辺(-Y方向側の辺)から外側に突出するよう形成された半円部分と、を有している。開口311は、開口311の半円部分の半径中心と、光学系200の光軸とが一致するような位置で、上板31に形成されている。また、被写体からの光が開口311を介して光学系200に入射し、被写体の光学像が光学系200によって形成される。
【0025】
4つの壁部32は、上板31の4つの縁部からそれぞれ下方に直線状に延伸する平板状部分である。上板31と4つの壁部32の上端は、一体的に形成されている。上板31の下面、4つの壁部32の内側面、およびベース33の上面によってハウジング3の内部空間が規定され、該内部空間内にレンズ駆動装置1の各コンポーネントが収納される。ベース33は、矩形状の平板状部分である。ベース33は、上板31に対応した形状を有している。さらに、4つの壁部32の下端が、接着剤等の任意の固定手段によってベース33上に固定されている。ベース33は、上板31の開口311の半円部分と対向する位置に円形の開口331を有している。光学系200によって集光された光が開口331を通過し、ベース33の下側に位置する画像センサーの撮像面上で結像する。
【0026】
支持機構4は、ハウジング3の内部空間内において、レンズバレル2を光学系200の光軸方向に駆動可能に支持する機能を有している。
図5に示されているように、支持機構4は、上下方向に延伸するようハウジング3内に固定的に設けられた第1の支持部41と、レンズバレル2の2つの嵌合凹部23内にそれぞれ固定的に設けられる2つの第2の支持部42と、第1の支持部41と第2の支持部42との間で保持される4つのガイド部材43と、を備えている。
【0027】
第1の支持部41は、ハウジング3と同様に、鉄やSUJ2等の磁性材料から形成され、磁性材料から形成された1枚の板材に対して切削加工を施すことにより、第1の支持部41を得ることができる。第1の支持部41は、平板状形状を有しており、ハウジング3のベース33上から上下方向に沿って直線状に延伸している。
【0028】
第1の支持部41は、平板状の本体部411と、本体部411のレンズバレル2と対向する面(-Y方向側の面)上に形成された第1の受け溝412および第2の受け溝413と、を備えている。本体部411は、XZ平面に延在する板状部分である。また、本体部411のX方向の側面414、415のそれぞれは、X方向に直交する平坦面であり、本体部411の上面416および下面417のそれぞれは、上下方向に直交する平坦面である。本体部411の下面417は、ベース33の上面と一体化されていてもよいし、接着剤等の任意の固定手段によってベース33の上面上に固定されていてもよい。
【0029】
第1の受け溝412は、本体部411のレンズバレル2と対向する面の上端から下端まで直線状に延伸する凹部である。第1の受け溝412は、+Y方向から-Y方向に向かって開口幅が線形的に増加する、くの字状形状を有している。第2の受け溝413は、本体部411のレンズバレル2と対向する面の上端から下端まで直線状に延伸し、+X方向側が外側に向かって開放されている凹部である。第2の受け溝413を形成する-X方向側の内側面は、内側から外側に向かって傾斜する斜面となっており、第2の受け溝413の開口幅は、+Y方向側から-Y方向側に向かって線形的に増加する。
【0030】
2つの第2の支持部42は、レンズバレル2の2つの嵌合凹部23内にそれぞれ固定的に設けられる。さらに、2つの第2の支持部42は、第1の支持部41の第1の受け溝412または第2の受け溝413との間で、4つのガイド部材43を保持する機能を有している。2つの第2の支持部42は、それぞれ同じ構成を有しているので、以下、代表して、1つの第2の支持部42について詳述する。第2の支持部42は、ハウジング3と同様に、鉄やSUJ2等の磁性材料から形成されており、磁性材料から形成された1枚の板材に対して折り曲げ加工または切削加工を施すことにより、第2の支持部42を得ることができる。
【0031】
第2の支持部42は、第1の板状部421と、第1の板状部421の端部から延伸する第2の板状部422と、第1の板状部421の内側面と第2の板状部422の内側面とによって規定される受け溝423と、を備えている。第1の板状部421および第2の板状部422のそれぞれは、上下方向に直線状に延伸するZ方向に長尺の板状部分である。第1の板状部421の長辺および第2の板状部422の長辺は、第1の板状部421と第2の板状部422とによって形成される角度が180度未満の任意の角度となるよう、一体化されている。受け溝423は、第1の板状部421の内側面と第2の板状部422の内側面とによって規定され、-Y方向側から+Y方向側に向かって開口幅が線形的に増加する、くの字状凹部である。受け溝423と第1の支持部41の第1の受け溝412または第2の受け溝413との間で、2つのガイド部材43が保持される。第2の支持部42は、レンズバレル2の嵌合凹部23内に収納され、接着剤によってレンズバレル2の嵌合凹部23内に固定されている。
【0032】
4つのガイド部材43は、レンズバレル2の上下方向への駆動の際の摩擦抵抗力を低減する機能を有している。4つのガイド部材43は、鉄やSUJ2等の磁性材料で構成されており、磁性材料のモールディングや磁材材料で形成された板材に対して切削加工を施すことにより得られる。4つのガイド部材43は、それぞれ同じ構成を有しているので、以下、代表して1つのガイド部材43について説明する。なお、図示の形態では、ガイド部材43は、球形状を有するガイドボールであるが、レンズバレル2の上下方向への駆動の際の摩擦抵抗力を低減することができれば、これに限られず、上下方向に延伸する円柱状部材をガイド部材43として用いることができる。また、用いられるガイド部材43の数は、図示の態様に限られず、必要に応じて、用いられるガイド部材43の数を適宜変更してもよい。
【0033】
ガイド部材43は、第1の支持部41の第1の受け溝412または第2の受け溝413と第2の支持部42の受け溝423との間で保持される。前述のように2つの第2の支持部42は、レンズバレル2の嵌合凹部23内に固定されているので、レンズバレル2は、2つの第2の支持部42および4つのガイド部材43を介して、第1の支持部41に上下方向に駆動可能に支持されている。第1の支持部41は、固定部材であるハウジング3のベース33上に設けられており、2つの第2の支持部42は、可動部材であるレンズバレル2に固定されている。このように、固定部材と可動部材との間をガイド部材43によって接続することにより、レンズバレル2が上下方向に駆動する際の摩擦抵抗力を低減することができる。
【0034】
図4に戻り、駆動機構5は、レンズバレル2を上下方向に駆動する駆動力(ローレンツ力)を提供する機能を有している。駆動機構5は、レンズバレル2の外周面上に設けられたコイル51と、ハウジング3の対向する一対の壁部32の内側面上にそれぞれ設けられた一対のマグネット52と、を備えている。コイル51は、レンズバレル2の外周面上に電線を巻線することにより得られる。コイル51は、レンズバレル2の外周面上に固定されており、レンズバレル2が上下方向に駆動する際にレンズバレル2と共に上下方向に駆動する。コイル51の両端部は、制御ユニットの対応する端子にそれぞれ接続されており、制御ユニットからコイル51に供給される電流の向きおよび大きさに応じて、レンズバレル2を駆動する駆動力が生じる。
【0035】
一対のマグネット52のそれぞれは、板状の永久磁石であり、一対のマグネット52の同じ極が互いに向き合うよう(例えば、一方のマグネット52のN極と他方のマグネット52のN極が向き合う、または、一方のマグネット52のS極と他方のマグネット52のS極が向き合うよう)、ハウジング3の対向する一対の壁部32の内側面上にそれぞれ設けられている。また、一対のマグネット52のそれぞれは、接着剤等の任意の固定手段および/または自身の磁力によって、ハウジング3の対向する一対の壁部32の内側面上にそれぞれ固定されている。
【0036】
スペーサー6は、樹脂材料等の非磁性材料で構成され、ハウジング3の上板31と一対のマグネット52の上端との間のスペースを埋めている。スペーサー6は、上板31の縁部に対応した形状を有する中空部材であり、接着剤等の任意の手段によって、上板31の下面上に固定されている。
【0037】
次に、
図6および
図7を参照して、カメラモジュール100の内部構造のレイアウトについて詳述する。
図6は、上下方向に2つ並んだガイド部材43のうち、上側のガイド部材43の中心を通るXY平面でのカメラモジュール100の横断面図である。
図7は、第1の支持部41の第1の受け溝412内に上下方向に2つ並んだガイド部材43の中心を通るYZ平面でのカメラモジュール100の縦断面図である。
【0038】
図6に示されているように、ハウジング3の対向する一対の壁部32(Y方向に延伸する一対の壁部32)の内側面上に、一対のマグネット52がそれぞれ設けられている。さらに、レンズバレル2、支持機構4(第1の支持部41、2つの第2の支持部42、および4つのガイド部材43)、コイル51、および光学系200は、対向する一対のマグネット52の間に位置している。さらに、レンズバレル2、支持機構4、および光学系200は、コイル51の内側に位置している。
【0039】
前述のように、ハウジング3、第1の支持部41、第2の支持部42、およびガイド部材43のそれぞれは、磁性材料で構成されているため、ヨークとして機能し、一対のマグネット52、ハウジング3、第1の支持部41、第2の支持部42、およびガイド部材43によって磁気回路が形成される。特に、第1の支持部41の側面414、415は、それぞれ、一対のマグネット52に近接して対向している。そのため、
図6中において矢印線で示されている磁力線の密度は、第1の支持部41の側面414、415と一対のマグネット52との間で高まる。このような構成により、コイル51に電力を供給した際に生じる駆動力(ローレンツ力)を高めることができる。
【0040】
さらに、第1の支持部41、第2の支持部42、およびガイド部材43のそれぞれは、磁性材料で構成され、かつ、一対のマグネット52の間に位置している。そのため、第1の支持部41、第2の支持部42、およびガイド部材43のそれぞれは、一対のマグネット52の磁力によって磁化する。なお、第1の支持部41の上面416とハウジング3の上板31との間の磁気的関係、および、第1の支持部41の下面417とハウジング3のベース33との間の磁気的関係も、第1の支持部41、第2の支持部42、およびガイド部材43のそれぞれの磁化に寄与する。
【0041】
特に、第1の支持部41および第2の支持部42のそれぞれが磁化されるため、第1の支持部41および第2の支持部42との間に磁気吸着力が生じる。このような磁気吸着力によって、レンズバレル2が第1の支持部41に対して付勢される。このような構成により、第1の支持部41と第2の支持部42との間でガイド部材43が強く保持される。
【0042】
さらに、前述のように、4つのガイド部材43のそれぞれも磁化するため、ガイド部材43と第1の支持部41との間の磁気吸着力、および、ガイド部材43と第2の支持部42との間の磁気吸着力が生じる。前述した第1の支持部41と第2の支持部42との間の磁気吸着力に加えて、ガイド部材43と第1の支持部41との間の磁気吸着力、および、ガイド部材43と第2の支持部42との間の磁気吸着力によって、第1の支持部41と第2の支持部42との間でガイド部材43が強く保持される。
【0043】
また、
図6中の上側(-X方向側)のガイド部材43に関し、第1の支持部41の第1の受け溝412とガイド部材43との間の接触は2点接触となっている。同様に、第2の支持部42の受け溝423とガイド部材43との間の接触は2点接触となっている。そのため、
図6中の上側(-X方向側)のガイド部材43を介したレンズバレル2と第1の支持部41との間の接続は強固なものとなり、
図6中の上側(-X方向側)のガイド部材43は、レンズバレル2の駆動の主軸として機能する。
【0044】
一方、レンズバレル2、第1の支持部41、第2の支持部42、およびガイド部材43の公差を吸収するために、第1の支持部41の第2の受け溝413は、+X方向に向かって開放されている。このような構成により、
図6中の下側(+X方向側)のガイド部材43は、第1の支持部41の第2の受け溝413と第2の支持部42の受け溝423との間で3点接触により保持される。そのため、
図6中の下側(+X方向側)のガイド部材43は、レンズバレル2の駆動の副軸として機能する。
【0045】
また、
図7に示されているように、第2の支持部42の上端は、上方に向かって開放されており、さらに、第2の支持部42の下端は、下方に向かって開放されている。このように、第2の支持部42の上端および下端を上下方向に向かって開放することにより、第2の支持部42とハウジング3の上板31およびベース33との間の生じる磁気吸着力を弱めることができる。そのため、第2の支持部42とハウジング3の上板31およびベース33との間の生じる磁気吸着力が、コイル51に電力を供給することによって生じる駆動力へ干渉することを抑制することができる。また、図示の形態では、第1の支持部41の上面416とハウジング3の上板31との間は離間しているが、本発明はこれに限られない。第1の支持部41の上面416とハウジング3の上板31とが接触しているような態様も、本発明の範囲内である。
【0046】
前述のように、一対のマグネット52によって第2の支持部42が磁化されるため、第2の支持部42の上端部とハウジング3の上板31との間、および、第2の支持部42の下端部とハウジング3のベース33との間に磁気吸着力が生じる。そのため、コイル51に電力を供給していない無通電状態において、レンズバレル2は、磁気吸着力によって、上板31上またはベース33上に固定されている。コイル51に対して電流が供給され、レンズバレル2に生じる駆動力が、第2の支持部42の上端部と上板31との間、または、第2の支持部42の下端部とベース33との間の磁気吸着力を超えると、レンズバレル2が駆動力の方向に駆動する。なお、同様の目的で、第2の支持部42の光軸方向の両端部とハウジング3とを対向させないように、上板31の開口311およびハウジング3のベース33の開口331を大きく形成してもよいし、これらを円形以外の形状としてもよい。また、同様の目的で、ハウジング3の上板31およびベース33の第2の支持部42と対向する部分を非磁性材料で構成してもよい。このような様態もまた、本発明の範囲内である。
【0047】
このように、本実施形態のカメラモジュール100においては、第1の支持部41と第2の支持部42との間に生じる磁気吸着力、ガイド部材43と第1の支持部41との間の磁気吸着力、およびガイド部材43と第2の支持部42との間の磁気吸着力によって、ガイド部材43を第1の支持部41と第2の支持部42との間で保持することができる。そのため、背景技術の欄において述べた従来技術のように、レンズバレル2の外周面にマグネット52を設ける必要がなくなり、カメラモジュール100およびレンズ駆動装置1の内部構造のレイアウトがマグネット52によって制限されることがない。したがって、本発明によれば、カメラモジュール100およびレンズ駆動装置1の内部構造のレイアウトの設計自由度を高めることができる。
【0048】
なお、上述の説明では、ハウジング3の全ての部分が磁性材料によって形成されているものとしたが、本発明はこれに限られない。ハウジング3の第1の支持部41の対向する一部、例えば、第1の支持部41の一対の側面414、415とそれぞれ対向し、一対のマグネット52がそれぞれ設けられた一対の壁部32のみが磁性材料で構成されているような様態も、本発明の範囲内である。このような様態によっても、第1の支持部41、第2の支持部42、および4つのガイド部材43を磁化させることができ、第1の支持部41と第2の支持部42との間でガイド部材43を強く保持することができる。
【0049】
<第2実施形態>
次に、
図8~
図13を参照して、本発明の第2実施形態に係るカメラモジュールおよびレンズ駆動機構を詳述する。
図8は、本発明の第2実施形態に係るカメラモジュールの斜視図である。
図9は、
図8に示すカメラモジュールの分解斜視図である。
図10は、
図8に示すカメラモジュールのレンズバレルの分解斜視図である。
図11は、
図8に示すカメラモジュールの支持機構の分解斜視図である。
図12は、
図8に示すカメラモジュールの内部構造を示すための横断面図である。
図13は、
図8に示すカメラモジュールの内部構造を示すための縦断面図である。
【0050】
本実施形態のレンズ駆動装置およびカメラモジュールは、ハウジング3内に2つのレンズバレル2が設けられている点、レンズバレル2の構成が変更されている点、2つのレンズバレル2をそれぞれ独立して駆動可能とするよう、支持機構4および駆動機構5の構成が変更されている点、およびスペーサー6が省略されている点を除き、第1実施形態のレンズ駆動装置およびカメラモジュールと同様の構成を有している。そのため、本実施形態のレンズ駆動装置およびカメラモジュールについて、第1実施形態のレンズ駆動装置1およびカメラモジュール100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0051】
図8および
図9に示す本実施形態のカメラモジュール100は、Y軸方向に並んで配置された2つの光学系200と、2つの光学系200が独立して駆動可能となるよう、2つの光学系200を保持するレンズ駆動装置1と、を含んでいる。
図9に示されているように、本実施形態では、2つのレンズバレル2がハウジング3の内部空間内に並んで配置されている。これに伴い、第1実施形態と比較して、ハウジング3および一対のマグネット52のそれぞれのY方向の長さが長くなっている。さらに、ハウジング3の上板31は、2つの光学系200にそれぞれ対応した2つの開口311を有している。同様に、ハウジング3のベース33は、2つの光学系200にそれぞれ対応した2つの開口331を有している。
【0052】
図9に示されているように、2つのレンズバレル2は、同様の構成を有し、支持機構4の第1の支持部41を介して対称に配置されているので、以下、代表して、-Y方向側に位置するレンズバレル2について詳述する。
図10に示されているように、本実施形態においては、レンズバレル2は、角筒形状の本体部21と、本体部21の略中央部に上下方向に貫通するよう形成された挿通孔22と、本体部21のY方向側の側面上に設けられるカバー部24と、カバー部24上に形成された溝25と、カバー部24上に形成された2つの嵌合凹部23と、を備えている。
【0053】
本実施形態の本体部21は、2つの嵌合凹部23が除去されている点を除き、第1実施形態の本体部21と同様の構成を有している。また、本実施形態の挿通孔22は、第1実施形態の挿通孔22と同様の構成を有している。カバー部24は、本体部21の支持機構4の第1の支持部41と対向する面上に設けられる平坦状部材である。カバー部24は、本体部21の構成材料と同様の非磁性材料で構成されている。カバー部24は、本体部21のY方向側の側面に対応した形状を有しており、本体部21のY方向側の側面上に接着剤等により固定される。
【0054】
溝25は、カバー部24の本体部21と対向する面上に形成されたX方向に長尺の凹部である。溝25は、カバー部24の本体部21と対向する面の上下方向の略中央部において、X方向に直線状に延伸しており、その両端部は、外部に開放されている。
図9に示されているように、本体部21の外周面上に設けられたコイル51が、溝25内を挿通する。本実施形態の2つの嵌合凹部23は、第1実施形態の2つの嵌合凹部23と同じ構成を有している。本実施形態では、2つの嵌合凹部23は、カバー部24の支持機構4の第1の支持部41と対向する面上に形成されている。
【0055】
図11は、本実施形態の支持機構4を示している。支持機構4は、ハウジング3の内部空間内において、2つのレンズバレル2を光学系200の光軸方向に独立して駆動可能に支持する機能を有している。支持機構4は、第1の支持部41と、2つのレンズバレル2の嵌合凹部23内にそれぞれ固定的に設けられる4つの第2の支持部42と、第1の支持部41と2つの第2の支持部42との間で保持された8つのガイド部材43と、を備えている。
【0056】
第1の支持部41は、2つのレンズバレル2とそれぞれ対向する両面のそれぞれに形成された第1の受け溝412および第2の受け溝413を備えている。第1の支持部41の-Y方向側の面では、-X方向側に第1の受け溝412が位置し、+X方向側に第2の受け溝413が位置している。一方、第1の支持部41の-Y方向側の面では、+X方向側に第1の受け溝412が位置し、-X方向側に第2の受け溝413が位置している。本実施形態の第1の受け溝412は、第1実施形態の第1の受け溝412と同じ構成を有している。第2の受け溝413は、上下方向に直線状に延伸する矩形状凹部である。第2の受け溝413の上端および下端は、外部に開放されている。なお、本実施形態では、第2の受け溝413は、X方向において外部に開放されておらず、閉塞されている。このような構成でも、前述した第1実施形態の第2の受け溝413と同様の効果、作用を提供することができる。8つのガイド部材43のそれぞれは、第1実施形態のガイド部材43と同様の構成を有している。
【0057】
図9に戻り、本実施形態の駆動機構5は、2つのレンズバレル2を上下方向に独立して駆動する駆動力を提供する機能を有している。駆動機構5は、2つのレンズバレル2のそれぞれ上に設けられる2つのコイル51と、ハウジング3の対向する一対の壁部32の内側面上にそれぞれ設けられた一対のマグネット52と、を備えている。2つのコイル51は、2つのレンズバレル2の外周面上に、それぞれ固定的に設けられている。また、2つのコイル51のそれぞれは、レンズバレル2のカバー部24の溝25内を挿通している。
【0058】
一対のマグネット52のそれぞれは、板状の永久磁石であり、一対のマグネット52の同じ極が互いに向き合うよう(例えば、一方のマグネット52のN極と他方のマグネット52のN極が向き合う、または、一方のマグネット52のS極と他方のマグネット52のS極が向き合うよう)、ハウジング3の対向する一対の壁部32の内側面上にそれぞれ設けられている。また、一対のマグネット52の間には、2つのレンズバレル2上にそれぞれ設けられた2つのコイル51が位置している。したがって、本実施形態では、一対のマグネット52が、2つのレンズバレル2の一方を駆動する駆動力を提供する目的と、2つのレンズバレル2の他方を駆動する駆動力を提供する目的の2つの目的で共用される。2つのコイル51の両端部は、制御ユニットの対応する端子にそれぞれ接続されている。制御ユニットは、2つのコイル51内を流れる電流の向きおよび大きさを独立して制御することにより、2つのレンズバレル2を独立して駆動させることができる。
【0059】
次に、
図12および
図13を参照して、カメラモジュール100の内部構造のレイアウトについて詳述する。
図12は、上下方向に2つ並んだガイド部材43のうち、上側のガイド部材43の中心を通るXY平面でのカメラモジュール100の横断面図である。
図13は、-X方向側に位置する4つのガイド部材43の中心を通るYZ平面でのカメラモジュール100の縦断面図である。
【0060】
図12および
図13に示されているように、2つのレンズバレル2、2つの光学系200、2つのコイル51、4つの第2の支持部42、および8つのガイド部材43は、第1の支持部41を介して点対称に配置されている。
図12中の+Y方向側のレンズバレル2は、第1の支持部41より+Y方向側に位置する2つの第2の支持部42および4つのガイド部材43によって、ハウジング3のベース33上に立設した第1の支持部41に対して、上下方向に駆動可能に保持されている。同様に、
図12中の-Y方向側のレンズバレル2は、第1の支持部41より-Y方向側に位置する2つの第2の支持部42および4つのガイド部材43によって、ハウジング3のベース33上に立設した第1の支持部41に対して、上下方向に駆動可能に保持されている。このように、本実施形態では、第1の支持部41が、2つのレンズバレル2の一方を上下方向に駆動可能に保持する目的と、2つのレンズバレル2の他方を上下方向に駆動可能に保持する目的の2つの目的で共用されている。
【0061】
このように、本実施形態のカメラモジュール100は、2つのレンズバレル2を独立して駆動することができるよう構成されている。さらに、一対のマグネット52が、2つのレンズバレル2の一方を駆動する駆動力を提供する目的と、2つのレンズバレル2の他方を駆動する駆動力を提供する目的の2つの目的で共用される。また、第1の支持部41が、2つのレンズバレル2の一方を上下方向に駆動可能に保持する目的と、2つのレンズバレル2の他方を上下方向に駆動可能に保持する目的の2つの目的で共用されている。このような構成により、レンズ駆動装置1のコンポーネントの数を減少させ、レンズ駆動装置1の構成をシンプルにすることができる。このような構成によっても、前述した第1実施形態と同様の効果、作用を提供することができる。
【0062】
<第3実施形態>
次に、
図14~
図16を参照して、本発明の第3実施形態に係るカメラモジュールおよびレンズ駆動機構を詳述する。
図14は、本発明の第3実施形態に係るカメラモジュールの分解斜視図である。
図15は、
図14に示すカメラモジュールの内部構造を示すための横断面図である。
図16は、
図14に示すカメラモジュールの内部構造を示すための縦断面図である。
【0063】
本実施形態のレンズ駆動装置およびカメラモジュールは、2つのレンズバレル2をそれぞれ共同(同期)して、同時に駆動可能とするよう、支持機構4および駆動機構5の構成が変更されている点、およびカバー部24が省略されている点を除き、第2実施形態のレンズ駆動装置およびカメラモジュールと同様の構成を有している。そのため、本実施形態のレンズ駆動装置およびカメラモジュールについて、第2実施形態のレンズ駆動装置1およびカメラモジュール100との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0064】
本実施形態のレンズ駆動装置1およびカメラモジュール100は、
図8に示した第2実施形態のレンズ駆動装置1およびカメラモジュール100の外形と同じ外形を有している。
図14に示されているように、第2実施形態のレンズ駆動装置1およびカメラモジュール100と比較して、本実施形態のレンズ駆動装置1およびカメラモジュール100では、駆動機構5のコイル51の数が1つに変更され、かつ、2つのレンズバレル2および支持機構4が1つのコイル51の内側に位置している。
【0065】
本実施形態のコイル51は、2つのレンズバレル2を跨ぐように、2つのレンズバレル2の本体部21の外周面上に固定的に設けられている。したがって、本実施形態では、1つのコイル51が2つのレンズバレル2を駆動する駆動力を提供する目的で共用されている。コイル51の両端部は、制御ユニットの対応する端子にそれぞれ接続されている。制御ユニットは、コイル51内を流れる電流の向きおよび大きさを制御することにより、2つのレンズバレル2を共同して、同時に駆動させることができる。一対のマグネット52、ハウジング3、第1の支持部41、第2の支持部42、およびガイド部材43によって構成される磁気回路内にコイル51が位置し、かつ、コイル51が2つのレンズバレル2に固定されているので、コイル51に対して電流が供給されると、2つのレンズバレル2を共同して、同時に、上下方向に駆動させる駆動力が生じる。
【0066】
また、本実施形態では、第2実施形態で用いられたカバー部24が省略されている。そのため、本実施形態の2つのレンズバレル2のそれぞれは、第1実施形態のレンズバレル2と同様の構成を有している。すなわち、第1実施形態と同様に、2つの嵌合凹部23は、2つのレンズバレル2のそれぞれの本体部21の第1の支持部41と対向する面上に形成されている。したがって、2つの第2の支持部42が、レンズバレル2のそれぞれの本体部21上に形成された2つ嵌合凹部23内にそれぞれ固定されている。さらに、第2実施形態の2つのレンズバレル2と同様に、本実施形態の2つのレンズバレルは、第1の支持部41を介して対称に配置されている。
【0067】
したがって、本実施形態においても、第2実施形態と同様に、
図15中の+Y方向側のレンズバレル2は、第1の支持部41より+Y方向側に位置する2つの第2の支持部42および4つのガイド部材43によって、ハウジング3のベース33上に立設した第1の支持部41に対して、上下方向に駆動可能に保持されている。同様に、
図15中の-Y方向側のレンズバレル2は、第1の支持部41より-Y方向側に位置する2つの第2の支持部42および4つのガイド部材43によって、ハウジング3のベース33上に立設した第1の支持部41に対して、上下方向に駆動可能に保持されている。
【0068】
このように、本実施形態においては、支持機構4は、2つのレンズバレル2を共同して、同時に、上下方向(光軸方向)に駆動可能に支持するよう構成されている。さらに、駆動機構5は、2つのレンズバレル2を共同して、同時に、上下方向(光軸方向)に駆動させるよう構成されている。このような構成は、ステレオ撮影により被写体までの測距を行うために、2つの光学系200をそれぞれ保持する2つのレンズバレル2を共同して、同時に駆動する必要がある場合に、非常に有効である。このような構成によっても、前述した第1実施形態および/または第2実施形態と同様の効果、作用を提供することができる。
【0069】
以上、本発明の各実施形態のレンズ駆動装置およびカメラモジュールを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の各実施形態の各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、本発明の各実施形態の各構成に任意の構成のものを付加することができる。
【0070】
本発明の属する分野および技術における当業者であれば、本発明の原理、考え方、および範囲から有意に逸脱することなく、記述された本発明の各実施形態のレンズ駆動装置およびカメラモジュールの構成の変更を実行可能であろうし、変更された構成を有するレンズ駆動装置およびカメラモジュールもまた、本発明の範囲内である。
【0071】
また、
図3~
図16に示されたレンズ駆動装置およびカメラモジュールの構成要素の数や種類は、説明のための例示にすぎず、本発明は必ずしもこれに限られない。本発明の原理および意図から逸脱しない範囲において、任意の構成要素が追加若しくは組み合わされ、または任意の構成要素が削除された態様も、本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0072】
1…レンズ駆動装置 2…レンズバレル 21…本体部 22…挿通孔 23…嵌合凹部 24…カバー部 25…溝 3…ハウジング 31…上板 311…開口 32…壁部 33…ベース 331…開口 4…支持機構 41…第1の支持部 411…本体部 412…第1の受け溝 413…第2の受け溝 414…側面 415…側面 416…上面 417…下面 42…第2の支持部 421…第1の板状部 422…第2の板状部 423…受け溝 43…ガイド部材 5…駆動機構 51…コイル 52…マグネット 6…スペーサー 100…カメラモジュール 200…光学系 500…カメラモジュール 510…光学系 520…レンズバレル 521…第1の収納溝 530…ハウジング 531…第2の収納溝 540…駆動機構 541…マグネット 542…ヨーク 543…コイル 550…制御部 560…回路基板 570…ガイドボール F1…第1の駆動力 F2…第2の駆動力