(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140345
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】多軸ヒンジ装置、並びにこの多軸ヒンジ装置を用いた電子機器
(51)【国際特許分類】
F16C 11/04 20060101AFI20241003BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20241003BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F16C11/04 F
G06F1/16 312F
G06F1/16 312G
G06F1/16 312J
H05K5/02 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051441
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】513014628
【氏名又は名称】株式会社ナチュラレーザ・ワン
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】河村 英治
【テーマコード(参考)】
3J105
4E360
【Fターム(参考)】
3J105AA05
3J105AB02
3J105AB16
3J105AC07
3J105BB03
3J105BC03
3J105DA41
4E360AA02
4E360AB17
4E360AB18
4E360AB42
4E360BA11
4E360BB02
4E360BB12
4E360BB27
4E360CA03
4E360EA14
4E360EA25
4E360EA28
4E360ED02
4E360ED15
4E360ED16
4E360ED23
4E360ED30
4E360GA12
4E360GB26
4E360GB46
(57)【要約】
【課題】 筐体を内折り状態、展開状態、外折り状態の3状態とした時に、フレキシブルディスプレイシートに与える負荷を軽減する。
【解決手段】 一対の筐体の両表面に跨ってフレキシブルディスプレイシートを取り付けてなる電子機器に用いられ、前記一対の筐体を開閉可能に連結する多軸ヒンジ装置であって、前記一対の筐体の間に挟まれたヒンジ機構を有し、前記ヒンジ機構は、ベース軸と、前記ベース軸の軸間距離を変更する軸間距離変更部と、前記ベース軸と接続され、前記一対の筐体の少なくとも一方を揺動可能に支持する揺動軸で構成され、前記一対の筐体のなす角度に応じて前記軸間距離変更部を作動させる事により前記一対の筐体の開閉で発生する前記フレキシブルディスプレイシートの負荷を軽減させる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の筐体の両表面に跨ってフレキシブルディスプレイシートを取り付けてなる電子機器に用いられ、前記一対の筐体を開閉可能に連結する多軸ヒンジ装置であって、前記一対の筐体の間に挟まれたヒンジ機構を有し、前記ヒンジ機構は、ベース軸と、前記ベース軸の軸間距離を変更する軸間距離変更部と、前記ベース軸と接続され、前記一対の筐体の少なくとも一方を揺動可能に支持する揺動軸で構成され、前記一対の筐体のなす角度に応じて前記軸間距離変更部を作動させる事により前記一対の筐体の開閉で発生する前記フレキシブルディスプレイシートの負荷を軽減させる事を特徴とする多軸ヒンジ装置。
【請求項2】
一対の筐体の両表面に跨ってフレキシブルディスプレイシートを取り付けてなる電子機器に用いられ、前記一対の筐体を開閉可能に連結する多軸ヒンジ装置であって、前記一対の筐体の間に挟まれたヒンジ機構を有し、前記ヒンジ機構は、ベース軸と、前記一対の筐体の少なくとも一方と接続され、前記ベース軸周りに公転及び自転を行う揺動軸と、前記公転に基づいて前記自転を連動させる連動部とで構成され、前記揺動軸の前記ベース軸周りの公転及び自転により、前記少なくとも一方の筐体を揺動させる事で前記一対の筐体の開閉により発生する前記フレキシブルディスプレイシートの負荷を軽減させる事を特徴とする多軸ヒンジ装置。
【請求項3】
前記連動部は、前記ベース軸に設けられた太陽ギアと、前記揺動軸に設けられ、前記太陽ギアと噛合する遊星ギアで構成され、前記揺動軸は前記ベース軸に対して公転及び自転を行う事を特徴とする請求項1、2記載の多軸ヒンジ装置。
【請求項4】
前記揺動軸は前記ベース軸に対して自転及び公転を行い、前記揺動軸の公転角度に応じて前記軸間距離変更部は前記ベース軸の軸間距離を変更する事を特徴とする請求項1記載の多軸ヒンジ装置。
【請求項5】
前記軸間距離変更部は、前記一対の筐体を内折り状態から展開状態に移行する範囲で前記ベース軸の軸間距離を変更する事を特徴とする請求項1記載の多軸ヒンジ装置。
【請求項6】
前記軸間距離変更部は、前記ベース軸を付勢する付勢部を有し、前記付勢部は前記ベース軸を軸間距離変更可能に軸支するハウジング孔の中に設けられた付勢カムと、前記揺動軸の公転角度を前記付勢カムに伝達する伝達アームで構成される事を特徴とする請求項4記載の多軸ヒンジ装置。
【請求項7】
前記ヒンジ機構は、移動規制部を有し、前記移動規制部は前記一対の筐体が展開状態の時に前記付勢カムを移動規制する事を特徴とする請求項6記載の多軸ヒンジ装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に各記載の多軸ヒンジ装置を用いた事を特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の筐体の両表面に跨って、例えば有機EL製のフレキシブルディスプレイシートを取り付けて成る、携帯電話機、電子手帳、PDA、ネットブック、さらにはノートパソコンなどの各種の電子機器に用いて好適な多軸ヒンジ装置、並びにこの多軸ヒンジ装置を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一対の筐体の両表面に跨って1枚の有機EL製のフレキシブルディスプレイシートを取り付けて成る携帯電話機等の電子機器が開発され、世の中に出回りつつある。このような電子機器を折りたたみ状態から展開状態に円滑に移行するヒンジ構造について下記特許文献1で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術文献のヒンジ構造は、電子機器を折りたたみ状態から展開状態に移行する過程で展開角度に応じて筐体の揺動軸の軸間距離を変化させている。しかしながら、このヒンジ構造では筐体を内折り状態、展開状態、外折り状態の3状態とした時にフレキシブルディスプレイシートに大きな負荷が発生する。
そこで本発明では、筐体を内折り状態、展開状態、外折り状態の3状態とした時に、フレキシブルディスプレイシートに与える負荷を軽減できるヒンジ構造を提供する事を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為に、請求項1に記載の発明は、一対の筐体の両表面に跨ってフレキシブルディスプレイシートを取り付けてなる電子機器に用いられ、前記一対の筐体を開閉可能に連結する多軸ヒンジ装置であって、前記一対の筐体の間に挟まれたヒンジ機構を有し、前記ヒンジ機構は、ベース軸と、前記ベース軸の軸間距離を変更する軸間距離変更部と、前記ベース軸と接続され、前記一対の筐体の少なくとも一方を揺動可能に支持する揺動軸で構成され、前記一対の筐体のなす角度に応じて前記軸間距離変更部を作動させる事により前記一対の筐体の開閉で発生する前記フレキシブルディスプレイシートの負荷を軽減させる事を特徴とする。
【0006】
次に請求項2記載の発明は、一対の筐体の両表面に跨ってフレキシブルディスプレイシートを取り付けてなる電子機器に用いられ、前記一対の筐体を開閉可能に連結する多軸ヒンジ装置であって、前記一対の筐体の間に挟まれたヒンジ機構を有し、前記ヒンジ機構は、ベース軸と、前記一対の筐体の少なくとも一方と接続され、前記ベース軸周りに公転及び自転を行う揺動軸と、前記公転に基づいて前記自転を連動させる連動部とで構成され、前記揺動軸の前記ベース軸周りの公転及び自転により、前記少なくとも一方の筐体を揺動させる事で前記一対の筐体の開閉で発生する前記フレキシブルディスプレイシートの負荷を軽減させる事を特徴とする
【0007】
次に請求項3記載の発明は、前記連動部は、前記ベース軸に設けられた太陽ギアと、前記揺動軸に設けられ、前記太陽ギアと噛合する遊星ギアで構成され、前記揺動軸は前記ベース軸に対して公転及び自転を行う事を特徴とする。
【0008】
次に請求項4記載の発明は、前記揺動軸は、前記ベース軸に対して自転及び公転を行い、前記揺動軸の公転角度に応じて前記軸間距離変更部は前記ベース軸の軸間距離を変更する事を特徴とする。
【0009】
次に請求項5記載の発明は、前記軸間距離変更部は、前記一対の筐体を内折り状態から展開状態に移行する範囲で前記ベース軸の軸間距離を変更する事を特徴とする。
【0010】
次に請求項6記載の発明は、前記軸間距離変更部は、前記ベース軸を付勢する付勢部を有し、前記付勢部は前記ベース軸を軸間距離変更可能に軸支するハウジング孔の中に設けられた付勢カムと、前記揺動軸の公転角度を前記付勢カムに伝達する伝達アームで構成される事を特徴とする
【0011】
次に請求項7記載の発明は、前記ヒンジ機構は移動規制部を有し、前記移動規制部は前記一対の筐体が展開状態の時に前記付勢カムを移動規制する事を特徴とする。
【0012】
次に請求項8記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に各記載の多軸ヒンジ装置を電子機器に用いた事を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の様に構成すると、筐体を内折り状態から展開状態を経て外折り状態に移行する時に、フレキシブルディスプレイシートに与える負荷を軽減する事が出来る。
【0014】
請求項2の様に構成すると、筐体を内折り状態から展開状態を経て外折り状態に移行する時に、フレキシブルディスプレイシートに与える負荷を軽減する事が出来る。
【0015】
請求項3の様に構成すると、少ない部品点数でフレキシブルディスプレイシートに与える負荷を軽減する事が出来る。
【0016】
請求項4の様に構成すると、筐体を内折り状態から展開状態を経て外折り状態に移行する時に、フレキシブルディスプレイシートに与える負荷を軽減する事が出来る。
【0017】
請求項5の様に構成すると、筐体を内折り状態から展開状態を経て外折り状態に移行する時に、フレキシブルディスプレイシートに与える負荷を軽減する事が出来る。
【0018】
請求項6の様に構成すると、小型化を図りつつ、筐体を内折り状態から展開状態を経て外折り状態に移行する時に、レキシブルディスプレイシートに与える負荷を軽減する事が出来る。
【0019】
請求項7の様に構成すると、展開状態の筐体を確実に保持できる。
【0020】
請求項8の様に構成すると、電子機器を内折り状態から展開状態を経て外折り状態に移行する時に、フレキシブルディスプレイシートに与える負荷を軽減する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る多軸ヒンジ装置を用いたフレキシブルディスプレイシートを有する電子機器を示し、(a)はフレキシブルディスプレイシートが内折り状態の時における筐体斜視図、(b)はフレキシブルディスプレイシートが展開状態の時における筐体斜視図、(c)はフレキシブルディスプレイシートが外折り状態の時における筐体斜視図である。
【
図2】フレキシブルディスプレイシートが展開状態の時における一対の筐体と多軸ヒンジ装置の配置を示す平面図である。
【
図3】取付プレート、ベースフレーム、カバー及びロウワーカバーの斜視図である。
【
図4】フレキシブルディスプレイシートの折り曲げ状態を説明する図であり、(a)はベース軸の軸間距離が変化しない時のフレキシブルディスプレイシートの状態変化模式図、(b)はベース軸の軸間距離が変化する時のフレキシブルディスプレイシートの状態変化模式図、(c)は外折り状態から展開状態を経て内折り状態に移行する時にフレキシブルディスプレイシートに発生する弛みの変化例を示す図である。
【
図5】ヒンジ機構の組立斜視図であり、(a)はヒンジ機構およびベースフレーム、取付プレート、サイドブラケットの斜視図、(b)はサイドブラケットの上下を逆さまにした斜視図である。
【
図7】内折り状態におけるヒンジ機構を示し、(a)は平面図、(b)は(a)の平面図におけるC-C断面図、(c)は第1、第2軸間距離変更アームの状態を示す側面図、(d)は第1、第2ベースシャフトアームの状態を示す側面図、(e)は付勢カムとベースシャフトの関係を示す拡大図である。
【
図8】展開状態におけるヒンジ機構を示し、(a)は平面図、(b)は(a)の平面図におけるD-D断面図、(c)は第1、第2軸間距離変更アームの状態を示す側面図、(d)は第1、第2ベースシャフトアームの状態を示す側面図、(e)は付勢カムとベースシャフトの関係を示す拡大図である。
【
図9】外折り状態におけるヒンジ機構を示し、(a)は平面図、(b)は(a)の平面図におけるE-E断面図、(c)は第1、第2軸間距離変更アームの状態を示す側面図、(d)は第1、第2ベースシャフトアームの状態を示す側面図、(e)は付勢カムとベースシャフトの関係を示す拡大図である。
【
図10】ヒンジ機構の回転説明図であり、(a)は展開状態、(b)は内折り状態、(c)は外折り状態である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明に係る多軸ヒンジ装置、並びにこの多軸ヒンジ装置を用いた電子機器の実施の形態を、添付した図面を参照して詳細に説明する。
【実施例0023】
図1は本発明に係る多軸ヒンジ装置を用いた電子機器の一例としての携帯電話機A(スマートフォン)を概略的に示している。
【0024】
図1(a)は一対の筐体1の互いのなす角度が略0度となる、フレキシブルディスプレイシート4が内折り(以下、内折り状態)における携帯電話機Aの斜視図である。ここで携帯電話機Aの外装は、一対の筐体1と背面カバー2に分けられ、背面カバー2は一対のロウワーカバー21、カバー22、スライドブラケット23、ベースブラケット24、で構成される。又、スイッチ3はフレキシブルディスプレイシート4の表示を起動する為に設けられている。後述するが、一対の筐体1は取付プレート5と接続されており、ベースフレーム6に設けられる多軸ヒンジ装置B(それぞれ
図1では見えない)により一対の取付プレート5はベースフレーム6に対して揺動可能に支持されている。
図1(b)は一対の筐体1の互いのなす角度を略180度に開いて、フレキシブルディスプレイシート4を展開(以下、展開状態)した時における携帯電話機Aの斜視図である。そして、一対の筐体1の互いのなす角度を360度にすると
図1(c)となる。
図1(c)ではフレキシブルディスプレイシート4は外折り(以下、外折り状態)となり、携帯電話機Aのコンパクト性を保ちながらユーザーはフレキシブルディスプレイシート4に表示される情報を受け取ることが出来る。
【0025】
図2はフレキシブルディスプレイシート4が展開状態の時における、多軸ヒンジ装置Bおよび一対の筐体1、一対の取付プレート5を図示した平面図である。ここで、多軸ヒンジ装置Bを図示する為にフレキシブルディスプレイシート4等を省いている。
多軸ヒンジ装置Bはヒンジ機構7、ロック機構8、筐体スライド機構9、カバースライド機構10、同期機構11、フレキシブルディスプレイシートガイド機構12、カバーガイド機構13で構成される。尚、ヒンジ機構7、ロック機構8、筐体スライド機構9、カバースライド機構10、同期機構11は
図3に示すベースフレーム6に取り付けられ、フレキシブルディスプレイシートガイド機構12、カバーガイド機構13は取付プレート5に設けられている。
【0026】
ヒンジ機構7と
図3に示すベースフレーム6はベースフレーム6の取付孔6cで螺合され固定されている。そしてベースシャフト支持部71から延出するヒンジアーム72aの取付孔72aaが
図3に示す一対の取付プレート5に設けられた取付ねじ孔5aと螺合している。ヒンジ機構7はベースフレーム6上に設けられている為に、一対の取付プレート5はベースフレーム6に対して軸1a周りの揺動方向1bに揺動可能に支持される事になる。ここで軸1aは後述するベース軸と揺動軸を組み合わせた合成軸である。尚、ヒンジアーム72aの揺動軸7bは一対の筐体1を内折り状態、展開状態、外折り状態の3状態を実現する為にベースシャフト支持部71内でスウィング移動する構造になっている。ヒンジ機構7の詳細については後述する。
【0027】
ロック機構8とベースフレーム6はベースフレーム6の取付孔6eで螺合されている。そしてロック同期部81の第1関節部82から延出するロックアーム84は第2関節部83、ロックジョイント85、ロックブラケット86を介して一対の取付プレート5と接続されている。具体的にはロックブラケット86は不図示の軸と
図3に示す一対の取付プレート5の位置決め穴5dで位置決めされると共に、取付孔86aと取付ねじ孔5cにより螺合される。ロック機構8は外折り状態、展開状態および内折り状態を保持する為に設けられており、各関節部には動作負荷を発生させる負荷発生部を設けている。尚、第1、第2の関節部82、83の様に複数の関節部でベースフレーム6と取付プレート5を接続する事で、ヒンジ機構7との重複嵌合が生じない構成となっている。
【0028】
筐体スライド機構9とベースフレーム6はベースフレーム6の取付孔6d、6eで螺合されている。ここで取付孔6eは前述したロック機構8と共締めとなっている。筐体スライド機構9は外折り状態から内折り状態に移行させるにつれて一対の筐体1を矢印1c方向に引っ張る事で、内折り状態になるにつれて生じるフレキシブルディスプレイシート4の弛みを取る機構である。筐体スライド機構9は一対の取付プレート5の揺動を拾う開閉検出部A91であるスライドアーム91a、スライドアーム91aで拾った取付プレート5の動き方向を変換する軸方向移動プレート92a等のスライド変換部A92、スライド変換部A92の動きを一対の筐体1に伝えるテンションブラケット部A93で構成され、テンションブラケット部A93を構成するテンションブラケット93aの取付孔93abが一対の筐体1に設けられた取付ねじ孔(不図示)と螺合している。この様な構造により、筐体スライド機構9は一対の筐体1をベースフレーム6から離間方向に移動させる。その為、フレキシブルディスプレイシート4は取付プレート5の揺動量に応じた適度なテンションを受けることが出来る。
【0029】
カバースライド機構10は
図3に示すカバー22を常に矢印1c方向に引っ張ることで外折り状態になるにつれて生じるカバー22の弛みをとる機構であり、
図3におけるカバー22の耳部22aと螺合するカバー付勢部102をコイルスプリング等のテンション弾性部101で矢印1c方向に付勢する構成になっている。
【0030】
同期機構11とベースフレーム6はベースフレーム6の取付孔6bと螺合されている。同期機構11は一対の同期シャフトピン111と一対の同期シャフトピン111を軸とし互いに噛合する一対の同期ギア112を有し、一対の取付プレート5の揺動を同期させる為に設けられている。
【0031】
フレキシブルディスプレイシートガイド機構12は長孔121に嵌め込まれたフレキシブルディスプレイシートガイドピン122がフレキシブルディスプレイシート4に裏打ちされた保護シートと接着される事によりフレキシブルディスプレイシート4を矢印1c方向およびその逆方向以外には動かないようにガイドしている。
【0032】
カバーガイド機構13は長孔131に嵌め込まれたカバーガイドピン132がカバー22のガイド孔22bと嵌め合う事でカバー22を矢印1c方向およびその逆方向以外には動かないようにガイドしている。
【0033】
図3において、カバー22は取付孔22cとベースフレーム6の取付ねじ孔6aにより螺合されてベースフレーム6に取り付けられる。又、ロウワーカバー21は取付孔21aと取付プレート5の取付ねじ孔5bにより螺合されて取付プレート5に取り付けられる。更にフック21b、21cは
図2に示したスライドブラケット23と係合されている。
【0034】
多軸ヒンジ装置Bはこれら複数の機構で構成されており、各々異なる役割を担っている。本発明ではそれら役割の中でも外折り状態から展開状態を経て内折り状態と移行する時に、フレキシブルディスプレイシート4に与える負荷を軽減させるヒンジ機構7について詳細を説明してゆく。
【0035】
図4はフレキシブルディスプレイシート4の折り曲げ状態を説明する図であり、(a)はベース軸7aの軸間距離が変化しない時のフレキシブルディスプレイシート4の状態変化模式図、(b)はベース軸7aの軸間距離が変化する時のフレキシブルディスプレイシート4の状態変化模式図、(c)は外折り状態から展開状態を経て内折り状態に移行する時にフレキシブルディスプレイシート4に発生する弛みの変化例を示す図である。
図4(a)および
図4(b)においてフレキシブルディスプレイシート4は原点41を中心にして円弧c4aを有する外折り状態のフレキシブルディスプレイシート4aから展開状態のフレキシブルディスプレイシート4bを経て円弧c4cを有する内折り状態のフレキシブルディスプレイシート4cに移行する。
【0036】
図4(a)においてはベース軸7aの軸間距離xaは固定し、フレキシブルディスプレイシート4を外折り状態から内折り状態にしている。それに対して
図4(b)ではフレキシブルディスプレイシート4を外折り状態から展開状態を経て内折り状態にする間にベース軸7aの軸間距離を紙面x方向には軸間距離xaから軸間距離xbに変更し、y方向にも軸位置をyb変更してベース軸7a´としている。内折り状態のフルディスプレイシート4cは一対のベース軸7aの間に配置される為に、軸間距離をxaからxbに広げることで円弧c4c´はc4cに比べて曲率が大きく出来る。これによりフレキシブルディスプレイシート4を屈曲させる事による負荷が軽減されて、信頼性の高いフレキシブルディスプレイシート4を実現できる。
【0037】
ベース軸7aの軸間距離を広げることはフレキシブルディスプレイシート4に発生させる弛みを軽減させる効果も得られる。
図4(c)はフレキシブルディスプレイシート4の弛み変化を表すグラフであり、横軸43はフレキシブルディスプレイシート4の回転量、縦軸44はフレキシブルディスプレイシート4に発生する弛み量である。曲線42aは
図4(a)に示した様にベース軸7aの軸間距離を固定した場合の弛み曲線、曲線42bは
図4(b)に示した様にベース軸7aの軸間距離を外折り状態から展開状態にかけて変更してベース軸7a´とした場合の弛み曲線、曲線42cは同様にベース軸7aの軸間距離を外折り状態から展開状態を経て内折り状態になる迄に変更してベース軸7a´とした場合の弛み曲線である。
図4(c)からわかる様に曲線42aの弛み変化量Laに比べて曲線42b、42cの弛み変化量Lbは小さい。フレキシブルディスプレイシート4に発生する弛みは
図3を用いて説明した筐体スライド機構9のテンション力で吸収する事が出来るが、元の弛み変化が小さい方がフレキシブルディスプレイシート4に加わるテンション力が少なくできる。この様に、ベース軸7aの軸間距離を可変にする事でフレキシブルディスプレイシート4の内折り時の屈曲負荷低減と弛みの対策のための負荷軽減を行う事が出来る。
本発明においては弛み曲線42bを得られるように、ベース軸7aの軸間距離を外折り状態から展開状態にかけて変更している。何故ならば、展開状態にて軸間距離を適切な位置に変更終了させることで、展開状態におけるフレキシブルディスプレイシート4の弛みを曲線42cより少なくする事が出来る為である。更に、詳細は後述するが、軸間距離の変更機構を用いてフレキシブルディスプレイシート4の展開状態を保持する事も出来る。
【0038】
前述した様に、フレキシブルディスプレイシート4を内折り状態から展開状態に移行する時に、軸間距離を変更する事は特許文献1にも開示されている。しかしながら、フレキシブルディスプレイシート4を、内折り状態から展開状態を経て外折り状態とする機器にも適応出来、且つコンパクトになるヒンジ機構7は本発明の特徴であり、その詳細について以下に説明してゆく。
【0039】
図5はヒンジ機構7の組立斜視図であり、(a)はヒンジ機構7およびベースフレーム6、取付プレート5、サイドブラケット14の斜視図、(b)はサイドブラケット14の上下を逆さまにした斜視図である。
図2を用いて説明した様にヒンジ機構7とベースフレーム6はベースフレーム6の取付孔6cで螺合され固定されている。又、ヒンジアーム72aの取付孔72aaが取付プレート5に設けられた取付ねじ孔5aと螺合している。これにより一対の取付プレート5はベースフレーム6と揺動可能に接続される。前述した様に一対の取付プレート5はそれぞれ一対の筐体1と接続されているので、一対の筐体1に挟まれたヒンジ機構7の開閉に応じて一対の筐体1が揺動する事になる。尚、ヒンジ機構7はベース軸7a及びベース軸7aと接続された揺動軸7bを有し、揺動軸7bは一対の筐体1の少なくとも一方を揺動可能に支持している。詳細は後述するが、取付プレート5は揺動軸7b周りに揺動しながらベース軸7a周りを回る事でフレキシブルディスプレイシート4に負担の少ないヒンジを実現している。
【0040】
サイドブラケット14と取付プレート5は取付プレート5に設けられた位置決め穴5h、取付ねじ孔5f、5gと
図5(b)に示すサイドブラケット14に設けられた位置決め軸14c、取付孔14a、14bにより位置決め、螺合される。この時、ヒンジ機構7の端部に設けられ、同期アーム部77を構成する同期アーム77aは、取付プレート5の同期アーム溝5e及び
図5(b)に示すサイドブラケット14の同期アームカバー14dに挟まれて組み込まれ、取付プレート5内を矢印5i方向には摺動可能となっている。ここで、取付プレート5内を摺動可能にする理由は、ヒンジ機構7による取付プレート5の接続との重複嵌合を避ける為である。
【0041】
図6はヒンジ機構7の分解斜視図であり、
図6を用いて同期ギア部76及び同期アーム部77の詳細を説明する。
【0042】
[同期ギア部76及び同期アーム部77の構成説明]
同期枠部75を構成する同期枠75aに設けられた同期孔75abには同期ギア部76である一対の同期ギア76aに設けられた同期ギア軸76aaが嵌合している。又、同期枠75aに設けられた同期軸75aaには同期アーム77aの不図示の軸穴が嵌合している。同期ギア76aに設けられ、同期枠75aとは反対側の同期ギア軸76aa及び同期アーム77aに設けられた同期アーム軸77abは不図示の支持プレートに設けられた軸孔に支持される。一対の同期ギア76aは互いに噛合しており、更に各々の同期ギア76aは同期アーム77aに設けられた同期アームギア77aaとも噛合している。
【0043】
[同期アーム部77の動作説明]
図5及び
図6において、一方の同期アーム77aの回転は同期アームギア77aa、一対の同期ギア76aを介して他方の同期アーム77aに設けられた同期アームギア77aaに伝わる。その為、一方の同期アーム77aを揺動操作すると他方の同期アーム77aも同角度揺動する。同期アーム77aの先端に設けられた転動軸孔77acには転動軸77bが回転可能に軸支されている。転動軸77bは取付プレート5及びサイドブラケット14内で回転する事で、同期アーム77aの取付プレート5内の摺動を円滑にしている。これらの構成により一方の取付プレート5をベースフレーム6に対して揺動操作すると他方の取付プレート5も同期して揺動する。これにより一対の取付プレート5各々が接続される一対の筐体1を開閉操作させる時の操作品位を上げることが出来る。同期アーム77a及び転動軸77bにより同期アーム部77を構成している。
【0044】
次に
図6を用いてヒンジ機構7の詳細を説明する。
[ヒンジ機構7の構成説明]
ベースシャフト71aは第1、第2ハウジング71b、71cにおける長孔71ba、71caを貫通している。そして、ベースシャフト71a両端の軸端部71abは伝達アームである第1、第2軸間距離変更アーム73a、73bにおけるベースシャフト受73ab、73bbを貫通している。次にベースシャフト71a両端の軸端部71abは第1、第2ベースシャフトアーム71d、71eにおける異形孔71da、71eaを貫通している。最後にベースシャフト71a両端の軸端部71abは揺動軸アーム72bにおけるベースシャフト受72bbを貫通し、ヒンジ枠部74であるヒンジ枠74aに設けられたベース軸ガイド74aaおよび同期枠75aに設けられた不図示のベース軸ガイドに組み込まれる。ベース軸ガイド74aaは円弧状の溝であり、ベースシャフト71aを円弧方向に摺動可能にガイドしている。ベースシャフト受73ab、73bb及び72bbはベースシャフト71aに対して回転可能に支持されているが、異形孔71da、71eaとベースシャフト71aとの回転は規制している。これは、ベースシャフト71aの回転を規制する事で後述するヒンジアーム72aの回転を安定させるためである。
【0045】
アーム軸7c軸上のベースシャフトアーム軸71fはヒンジ枠74aのベースシャフトアーム軸受74abを貫通し、第1、第2ベースシャフトアーム71d、71eの第1、第2ベースシャフトアーム軸受71db、71ebを貫通し、第1ハウジング71bのベースシャフトアームねじ孔71bbと螺合する。又、アーム軸7c軸上のベースシャフトアーム軸71gは同期枠75aのベースシャフトアーム軸受75acを貫通し、第1、第2ベースシャフトアーム71d、71eの第1、第2ベースシャフトアーム軸受71db、71ebを貫通し、第2ハウジング71cのベースシャフトアームねじ孔71cbと螺合する。
ヒンジアーム72aにおける揺動シャフト72acは第1、第2軸間距離変更アーム73a、73bにおける揺動シャフト受73aa、73baを貫通し、揺動軸アーム72bにおける揺動シャフト受72baとワッシャ72caを介して揺動シャフトねじ72cで結合される。揺動シャフト受73aa,73ba、72baは揺動シャフト72acに対して回転可能に支持される。ここで、ベースシャフト71a、第1、第2ハウジング71b、71c、第1、第2ベースシャフトアーム71d、71e、ベースシャフトアーム軸71fによりベースシャフト支持部71を構成している。又、ヒンジアーム72a、揺動軸アーム72b、揺動シャフトねじ72cでヒンジアーム部72を構成している。
【0046】
ベースシャフト71aに設けられた太陽ギア71aaとヒンジアーム72aに設けられた遊星ギア72abは噛合して遊星機構を構成している。又、ベースシャフト71aは前述した様に第1、第2ベースシャフトアーム71d、71eで回転規制されている為に、ヒンジアーム72aは揺動軸7b周りを自転しながらベースシャフト71a周りを公転することになる。この様に本発明では取付プレートの揺動動作の時に自転と公転を利用しており、そのメリットは後述する。
【0047】
[ヒンジ機構7の動作説明]
第1、第2ベースシャフトアーム71d、71eはベースシャフトアーム軸71f、71gまわりを矢印78bおよびその反対方向に揺動可能であり、これによりベースシャフト71aの軸間距離は変更可能になっている。又、第1、第2軸間距離変更アーム73a、73bは揺動軸7bの公転に伴ってベース軸7aを中心にして回転する。ここで、長孔71baと後述する付勢カムハウジング孔71bc、71beでハウジング孔が構成されており、第1、第2軸間距離変更アーム73a、73bの先端に設けられ、ハウジング孔の中で移動する付勢カム73ac、73bcがベースシャフト71aを付勢する。その為、揺動軸7bのベース軸7a周りの公転角度に応じて一対のベースシャフト71aの軸間距離を制御可能になっている。
【0048】
図7は内折り状態におけるヒンジ機構7を示し、(a)は平面図、(b)は(a)の平面図におけるC-C断面図、(c)は第1、第2軸間距離変更アーム73a、73bの状態を示す側面図、(d)は第1、第2ベースシャフトアーム71d、71eの状態を示す側面図、(e)は付勢カム73ac、73bcとベースシャフト71aの関係を示す拡大図である。
内折り状態におけるヒンジ機構7においては
図7(c)に示す様に、第1、第2軸間距離変更アーム73a、73bにおける付勢カム73ac、73bcはベース軸7aの下部に配置される。これにより、
図7(e)に示す様に一方のベースシャフト71aは長孔71baと付勢カム73bcの付勢カム凹部73bfに挟まれて第1ハウジング71bの上端に位置する。他方のベースシャフト71aは長孔71baと付勢カム73acの付勢カム凹部73afに挟まれて第1ハウジング71bの上端に位置する。これが内折り状態におけるベース軸7aの軸間距離であり、
図4における軸7a´に相当する。その為、第1、第2ベースシャフトアーム71d、71eは
図7(d)の状態となる。
【0049】
図8は展開状態におけるヒンジ機構7を示し、(a)は平面図、(b)は(a)の平面図におけるD-D断面図、(c)は第1、第2軸間距離変更アーム73a、73bの状態を示す側面図、(d)は第1、第2ベースシャフトアーム71d、71eの状態を示す側面図、(e)は付勢カム73ac、73bcとベースシャフト71aの関係を示す拡大図である。
展開状態におけるヒンジ機構7においては
図8(c)に示す様に第1、第2軸間距離変更アーム73a、73bにおける付勢カム73ac、73bcはベース軸7aの横に配置される。これにより、
図8(e)に示す様に一方のベースシャフト71aは長孔71baと付勢カム73bcの付勢カム凹部73bfに挟まれて第1ハウジング71bの上端に位置する。他方のベースシャフト71aは長孔71baと付勢カム73acの付勢カム凹部73afに挟まれて第1ハウジング71bの上端に位置する。これが展開状態におけるベース軸7aの軸間距離であり、
図4における軸7a´に相当する。その為、第1、第2ベースシャフトアーム71d、71eは
図8(d)の状態となり、
図7(d)との変化はない。即ち内折り状態から展開状態の間においては一対のベースシャフト71aにおける軸間距離の変更はない。
【0050】
ここで付勢カム73bcの付勢カム上面壁73bdは付勢カムハウジング孔71beのハウジング壁71bfと当接して位置規制が行われる。その為、これ以上第2軸間距離変更アーム73bは動くことが出来ない。又、付勢カム73acの付勢カム側面壁73adは
図7(e)の状態から
図8(e)の状態の間に付勢カムハウジング孔71bcのハウジング壁71bdを摺動し、ベースシャフト71aは長孔71baと付勢カム73acの付勢カム凹部73afに挟まれて第1ハウジング71bの上端に位置する。この様な付勢カム73ac、73bcおよび付勢カムハウジング孔71bc、71beの形状により、ヒンジ機構7は展開状態を保持する事が出来る。付勢カム73ac、73bc、付勢カムハウジング孔71bc、71beによりヒンジ機構7を展開状態に保持する移動規制部を構成している。
図6の分解斜視図に示した様にベースシャフト71aの一端は付勢カム73ac、他端は付勢カム73bcに付勢されている。その為一対のベースシャフト71aのいずれも展開状態を保持できる構成になっている。
【0051】
図9は外折り状態におけるヒンジ機構7を示し、(a)は平面図、(b)は(a)の平面図におけるE-E断面図、(c)は第1、第2軸間距離変更アーム73a、73bの状態を示す側面図、(d)は第1、第2ベースシャフトアーム71d、71eの状態を示す側面図、(e)は付勢カム73ac、73bcとベースシャフト71aの関係を示す拡大図である。
前述した様に展開状態において付勢カム上面壁73bdとハウジング壁71bfの関係によりヒンジ装置7は展開状態を保持する。しかしながらより強い力をヒンジアーム72aに加えると、付勢カム73bcの付勢カム角部73be等が弾性変形して保持から抜ける。これにより、付勢カム角部73beはハウジング壁71bfに沿って移動し、第2軸間距離変更アーム73bは回転をはじめて
図9(c)の状態となる。その為、外折り状態におけるヒンジ機構7においては、付勢カム73ac、73bcはベース軸7aの上部に配置される。そして、
図9(e)に示す様に一方のベースシャフト71aは長孔71baと付勢カム73bcの付勢カム凹部73bfに挟まれて第1ハウジング71bの下端に位置する。他方のベースシャフト71aは長孔71baと付勢カム73acの付勢カム凹部73afに挟まれて第1ハウジング71bの下端に位置する。これが外折り状態におけるベース軸7aの軸間距離であり、
図4における軸7aに相当する。この様に伝達アームである第1、第2軸間距離変更アーム73a、73bの作用で一対のベースシャフト71aの軸間距離は変更される。ここで第1、第2軸間距離変更アーム73a、73b及び付勢カム73ac、73bc、第1、第2ハウジング71b、71cにより軸間距離変更部73を構成している。
【0052】
この様に、揺動軸7bのベース軸7a周りの公転に対応して第1、第2軸間距離変更アーム73a、73bはベース軸7a周りを揺動する。そして、付勢カム73ac、73bcはヒンジ機構7が内折り状態から展開状態の間は一対のベースシャフト71aにおける軸間距離を変更せず、展開状態から外折り状態の間は公転に対応して一対のベースシャフト71aにおける軸間距離を変更する形状になっている。更に付勢カムハウジング孔71bc、71beとの形状と組み合わせて展開状態を保持する機能も持たせることが出来ている。
【0053】
次に、ヒンジ機構7におけるベース軸7aと揺動軸7bとの関係について説明する。
[遊星機構の動作説明]
前述した様にベースシャフト71aに設けられた太陽ギア71aaとヒンジアーム72aに設けられた遊星ギア72abにより遊星機構を構成している。
図10はヒンジ機構7の回転説明図であり、(a)は展開状態、(b)は内折り状態、(c)は外折り状態である。
図10(a)においてベース軸7aを中心とする太陽ギア71aaはヒンジアーム72aの揺動軸7bを中心とする遊星ギア72abと噛合している。ここで前述した様にベースシャフト71aは第1、第2ベースシャフトアーム71d、71eにより回転規制されている為に、太陽ギア71aaはベース軸7a周りに回転することは出来ない。又、ベースシャフト71aとヒンジアーム72aは不図示の揺動軸アーム72bにより連結されている。その為、ヒンジアーム72aを内折り状態、或は外折り状態になる様に操作すると揺動軸7bはベース軸7a周りを矢印78a方向に公転し、太陽ギア71aaと遊星ギア72abが互いに噛合していることから、ヒンジアーム72aは揺動軸7b周りを矢印78c方向に自転する。ここで揺動軸アーム72bと太陽ギア71aa、遊星ギア72abにより連動部79を構成している。
【0054】
図10(b)の内折り状態において、展開状態から内折り状態迄における揺動軸7bの公転角度θ1は例えば53度など90度以下であるが、ヒンジアーム72aは展開状態から垂直方向である90度に回転している。これは公転角度をθ1とした時にヒンジアーム72aが垂直になる様に太陽ギア71aaと遊星ギア72abのピッチ円半径を調整している為である。例えばピッチ円半径を調整して減速比を0.7に設定すると公転角度53度の時の自転角度は37度、合計で90度となる。
図10(b)からわかる様に揺動軸7bはベース軸7aよりも外側に位置した状態でヒンジアーム72aを垂直状態に出来る為に一対のヒンジアーム72a間の距離Fを大きくすることが出来る。その為に、フレキシブルディスプレイシート4の屈曲部曲率を大きく出来、フレキシブルディスプレイシート4に加わる屈曲負荷を小さくすることが出来る。
【0055】
図10(c)の外折り状態では軸間距離変更によってアーム軸7cを中心してベース軸7aが揺動する。この揺動角度θ3は例えば24度に設定してある。ここで、揺動角度θ3は
図10(b)において、アーム軸7cとベース軸7aを結ぶ線分7dと
図10(c)において、アーム軸7cとベース軸7aを結ぶ線分7eのなす角度である。この様にベース軸7aが揺動している状態で、ヒンジアーム72aをベース軸7a周りにθ2(例えば39度)回転させる。この時の揺動軸7bの自転角度は減速比0.7から27度となるので、ヒンジアーム72aの向きは24度と39度と27度の合計で90度となる。この様に揺動角度θ3を適切に設定する事で外折り状態においてもヒンジアーム72aを垂直にする事が出来る。
図10(c)からわかる様に揺動軸7bはベース軸7aよりも外側に位置した状態でヒンジアーム72aを垂直状態に出来る為に一対のヒンジアーム72a間の距離Gを大きくすることが出来る。その為に、フレキシブルディスプレイシート4の屈曲部曲率を大きく出来、フレキシブルディスプレイシート4に加わる屈曲負荷を小さくすることが出来る。
【0056】
図10では連動部79として太陽ギア71aaと遊星ギア72abを噛合させていた。しかしながらギアの噛合に限られず、摩擦ローラや磁石、カム、リンク機構などで連動部79を構成しても良い。
【0057】
この様にヒンジ機構7の軸間距離を変更する事、及び、ベース軸7aに対して揺動軸7bを公転させながら揺動軸7bを自転させる構造にした事でフレキシブルディスプレイシート4の屈曲部曲率が大きくなり、フレキシブルディスプレイシート4に加わる屈曲負荷を小さくすることが出来る。更に、軸間距離の変更を適切に行う事で、フレキシブルディスプレイシート4を外折り、内折り状態にした時に発生する弛みを抑えて、フレキシブルディスプレイシート4に加わる負荷を小さくすることが出来る。そして、ヒンジ機構7として遊星機構を用い、且つ、遊星機構における公転角度に応じてベース軸7aの軸間距離を変更する第1、第2軸間距離変更アーム73a、73bを設けた構造により内折り状態から展開状態を経て外折り状態になるヒンジ機構7をコンパクトに実現できた。
【0058】
以上説明した様に本発明の多軸ヒンジ機構7においては、一対の筐体1の両表面に跨ってフレキシブルディスプレイシート4を取り付けてなる電子機器に用いられ、前記一対の筐体1を開閉可能に連結する多軸ヒンジ装置Bであって、前記一対の筐体1の間に挟まれたヒンジ機構7を有し、前記ヒンジ機構7は、ベース軸7aと、前記ベース軸7aの軸間距離を変更する軸間距離変更部73と、前記ベース軸7aと接続され、前記一対の筐体1の少なくとも一方を揺動可能に支持する揺動軸7bで構成され、前記一対の筐体1のなす角度に応じて前記軸間距離変更部73を作動させる事により、前記一対の筐体1の開閉で発生する前記フレキシブルディスプレイシート4の負荷を軽減させる事が出来た。
【0059】
また、一対の筐体1の両表面に跨ってフレキシブルディスプレイシート4を取り付けてなる電子機器に用いられ、前記一対の筐体1を開閉可能に連結する多軸ヒンジ装置Bであって、前記一対の筐体1の間に挟まれたヒンジ機構7を有し、前記ヒンジ機構7は、ベース軸7aと、前記一対の筐体1の少なくとも一方と接続され、前記ベース軸7a周りに公転及び自転を行う揺動軸7bと、前記公転に基づいて前記自転を連動させる連動部79とで構成され、前記揺動軸7bの前記ベース軸7a周りの公転及び自転により、前記少なくとも一方の筐体1を揺動させる事により前記一対の筐体1の開閉で発生する前記フレキシブルディスプレイシート4に加わる負荷を軽減させる事が出来た。
本発明は、一対の筐体に跨らせてフレキシブルディスプレイシートが掛け渡される構成の折り畳み式の電子機器、例えば携帯電話機、電子手帳、PDA、ネットブック、映像ディスプレイ装置、携帯用ゲーム機、ノートパソコンなどに用いて好適な多軸ヒンジ装置B、並びにこの多軸ヒンジ装置Bを用いた折り畳み式の電子機器として好適に用いられるものである。本発明に係る多軸ヒンジ装置Bは、携帯電話機だけに用いられるものではなく、上記したように、表面に1枚のフレキシブルディスプレイシートを取り付けた一対の筐体を互いに開閉可能に連結する構成の折り畳み式の電子機器において広く用いることができる。