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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140351
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】中継装置及び通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/26 20090101AFI20241003BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20241003BHJP
   H04B 7/15 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H04W16/26
H04W16/28
H04B7/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051451
(22)【出願日】2023-03-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5Gに向けたテラヘルツ帯を活用した端末拡張型通信システム実現のための研究開発 研究開発項目 2 テラヘルツ帯を適用した端末拡張のための信号処理技術 副題:Beyond5Gに向けたテラヘルツ帯を活用するユーザセントリックアーキテクチャ実現に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大詩
(72)【発明者】
【氏名】大関 武雄
【テーマコード(参考)】
5K067
5K072
【Fターム(参考)】
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE08
5K067EE10
5K067KK02
5K072AA29
5K072BB02
5K072BB13
5K072BB25
5K072BB27
5K072DD11
5K072DD16
5K072EE33
5K072GG05
(57)【要約】
【課題】中継装置2を介して通信端末と基地局との間で通信を開始する場合に、通信端末側から通信を開始する。
【解決手段】基地局と通信端末との通信を中継する中継装置2であって、通信端末から、中継装置2と基地局とが通信する際に使用するビームを識別するためのビームIDを示す制御データを受信する制御通信部21と、基地局と通信する基地局側通信部222と、ビームIDに対応するビームを用いて基地局側通信部222が基地局との間で通信するように基地局側通信部222を制御する制御部24と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と通信端末との通信を中継する中継装置であって、
前記通信端末から、前記中継装置と前記基地局とが通信する際に使用するビームを識別するためのビームIDを示す制御データを受信する制御通信部と、
前記基地局と通信する基地局側通信部と、
前記ビームIDに対応するビームを用いて前記基地局側通信部が前記基地局との間で通信するように前記基地局側通信部を制御する制御部と、
を有する中継装置。
【請求項2】
前記制御データは、複数のビームに対応する複数のビームIDを含み、
前記制御部は、前記複数のビームIDに対応する前記複数のビームのいずれかを送信するように前記基地局側通信部を制御する、
請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記制御データは、ビームを送信するタイミングを示すタイミング情報を含み、
前記制御部は、前記タイミング情報が示すタイミングでビームを送信するように前記基地局側通信部を制御する、
請求項1に記載の中継装置。
【請求項4】
前記制御データにおいては、複数の前記中継装置それぞれを識別するための中継装置IDと、前記中継装置と前記基地局とが通信する際に使用するビームIDと、が関連付けられており、
前記制御部は、前記制御データに前記中継装置が記憶している中継装置IDが含まれている場合に、前記ビームIDに対応するビームを用いて前記基地局側通信部が前記基地局との間で通信するように前記基地局側通信部を制御する、
請求項1に記載の中継装置。
【請求項5】
前記制御データにおいては、複数の前記中継装置それぞれを識別するための中継装置IDと、前記中継装置がビームを送信するタイミングを示すタイミング情報と、が関連付けられており、
前記制御部は、前記制御データに前記中継装置が記憶している中継装置IDが含まれている場合に、前記タイミング情報が示すタイミングで前記基地局側通信部が前記基地局との間で通信するように前記基地局側通信部を制御する、
請求項1に記載の中継装置。
【請求項6】
前記制御データは、前記中継装置から前記基地局に向けてビームを送信する周期を示す情報を含み、
前記制御部は、前記制御データが示す周期で前記制御データが示す前記ビームIDに対応するビームを形成するように前記基地局側通信部を制御する、
請求項1に記載の中継装置。
【請求項7】
前記制御通信部は、他の装置を介することなく前記通信端末と直接通信するための制御リンクを介して前記制御データを受信する、
請求項1に記載の中継装置。
【請求項8】
通信端末と、基地局と前記通信端末との通信を中継する中継装置と、を備え、
前記通信端末は、
前記中継装置と前記基地局とが通信する際に使用するビームを識別するためのビームIDを決定する決定部と、
前記決定部が決定した前記ビームIDを示す制御データを送信する送信部と、
を有し、
前記中継装置は、
前記通信端末から、前記中継装置と前記基地局とが通信する際に使用するビームを識別するためのビームIDを示す制御データを受信する制御通信部と、
前記基地局と通信する基地局側通信部と、
前記ビームIDに対応するビームを用いて前記基地局側通信部が前記基地局との間で通信するように前記基地局側通信部を制御する制御部と、
を有する通信システム。
【請求項9】
前記決定部は、それぞれ異なるビームを用いて前記中継装置が前記基地局と通信する間に前記基地局が受信する信号の品質が相対的に高いビームに対応する前記ビームIDを選択する、
請求項8に記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継装置及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
中継装置が、基地局とユーザの通信端末との通信を中継することが提案されている。例えば、特許文献1には、基地局は、中継装置を介して通信端末宛てにダウンリンクデータを送信することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-36366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、基地局は、中継装置と通信端末との間の通信に中継装置が利用するビームパターンを中継装置に指示する。一方、特許文献1に記載された技術では、通信端末は、中継装置が利用するビームパターンを中継装置に指示することはできないという問題があった。このため、中継装置を介して通信端末と基地局との間で通信を開始する場合に、通信端末側から通信を開始することができないという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、中継装置を介して通信端末と基地局との間で通信を開始する場合に、通信端末側から通信を開始することができる中継装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の中継装置は、基地局と通信端末との通信を中継する中継装置であって、前記通信端末から、前記中継装置と前記基地局とが通信する際に使用するビームを識別するためのビームIDを示す制御データを受信する制御通信部と、前記基地局と通信する基地局側通信部と、前記ビームIDに対応するビームを用いて前記基地局側通信部が前記基地局との間で通信するように前記基地局側通信部を制御する制御部と、を有する。
【0007】
前記制御データは、複数のビームに対応する複数のビームIDを含み、前記制御部は、前記複数のビームIDに対応する前記複数のビームのいずれかを送信するように前記基地局側通信部を制御してもよい。前記制御データは、ビームを送信するタイミングを示すタイミング情報を含み、前記制御部は、前記タイミング情報が示すタイミングでビームを送信するように前記基地局側通信部を制御してもよい。
【0008】
前記制御データにおいては、複数の前記中継装置それぞれを識別するための中継装置IDと、前記中継装置と前記基地局とが通信する際に使用するビームIDと、が関連付けられており、前記制御部は、前記制御データに前記中継装置が記憶している中継装置IDが含まれている場合に、前記ビームIDに対応するビームを用いて前記基地局側通信部が前記基地局との間で通信するように前記基地局側通信部を制御してもよい。
【0009】
前記制御データにおいては、複数の前記中継装置それぞれを識別するための中継装置IDと、前記中継装置がビームを送信するタイミングを示すタイミング情報と、が関連付けられており、前記制御部は、前記制御データに前記中継装置が記憶している中継装置IDが含まれている場合に、前記タイミング情報が示すタイミングで前記基地局側通信部が前記基地局との間で通信するように前記基地局側通信部を制御してもよい。
【0010】
前記制御データは、前記中継装置から前記基地局に向けてビームを送信する周期を示す情報を含み、前記制御部は、前記制御データが示す周期で前記制御データが示す前記ビームIDに対応するビームを形成するように前記基地局側通信部を制御してもよい。前記制御通信部は、他の装置を介することなく前記通信端末と直接通信するための制御リンクを介して前記制御データを受信してもよい。
【0011】
本発明の第2の態様の通信システムは、通信端末と、基地局と前記通信端末との通信を中継する中継装置と、を備え、前記通信端末は、前記中継装置と前記基地局とが通信する際に使用するビームを識別するためのビームIDを決定する決定部と、前記決定部が決定した前記ビームIDを示す制御データを送信する送信部と、を有し、前記中継装置は、前記通信端末から、前記中継装置と前記基地局とが通信する際に使用するビームを識別するためのビームIDを示す制御データを受信する制御通信部と、前記基地局と通信する基地局側通信部と、前記ビームIDに対応するビームを用いて前記基地局側通信部が前記基地局との間で通信するように前記基地局側通信部を制御する制御部と、を有する。
【0012】
前記決定部は、それぞれ異なるビームを用いて前記中継装置が前記基地局と通信する間に前記基地局が受信する信号の品質が相対的に高いビームに対応する前記ビームIDを選択してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、中継装置を介して通信端末と基地局との間で通信を開始する場合に、通信端末側から通信を開始するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】通信システムの概要を説明するための図である。
図2】通信システムの概要を説明するための図である。
図3】通信端末の構成を示す。
図4】中継装置がアクセスリンクで通信するための制御データの例を示す。
図5】中継装置の構成を示す。
図6】制御部がデータ通信部によりビームを形成するタイミングの例を示す。
図7】制御部がデータ通信部によりビームを形成するタイミングの別の例を示す。
図8】通信制御部が送信する制御データの別の例を示す。
図9】通信システムによるデータ通信の開始の処理手順を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[通信システムSの概要]
図1及び図2は、通信システムSの概要を説明するための図である。通信システムSは、通信端末1と、中継装置2と、基地局3と、を有する。通信システムSは、通信端末1が中継装置2を介して基地局3と接続することを可能にする。
【0016】
通信端末1は、例えば、スマートフォンである。通信端末1は、中継装置2を介して、基地局3と通信する。通信端末1は、電磁波の送受信の指向性を示す複数のビームパターン(図1中の通信端末1の破線の楕円)からいずれかのビームパターンを選択する。通信端末1は、選択したビームパターンのビームを形成することにより中継装置2と通信する。
【0017】
中継装置2は、RF(Radio Frequency)中継機能を有する。中継装置2は、基地局3と通信端末1との通信を中継する。中継装置2は、制御通信部21と、データ通信部22とを有する。
【0018】
制御通信部21は、通信端末1から制御データを受信する。制御データは、例えば、中継装置2と基地局3とが通信する際に使用するビームを識別するためのビームIDを含む。一例としては、制御データは、SCI(Side Control Information)フォーマットのものである。制御通信部21は、指向性通信により通信端末1と通信するが、無指向性通信により通信端末1と通信してもよい。制御通信部21は、最大数メートル程度の比較的短い距離で通信端末1と通信する。
【0019】
データ通信部22は、通信端末1及び基地局3と通信する。データ通信部22は、通信端末1及び基地局3との間で音声又は映像等のデータを送受信する。データ通信部22は、制御通信部21が受信した制御データに含まれるビームIDに対応するビームを形成することにより通信端末1又は基地局3との間で通信する。ビームIDは、ビームパターンを識別するための識別情報である。
【0020】
[通信端末1が中継装置2を介して基地局3との通信を開始する処理手順]
以下、図1(a)、図1(b)、図2(a)及び図2(b)を参照して、通信端末1が、中継装置2を介して基地局3との通信を開始する処理手順について説明する。通信端末1は、中継装置2の制御通信部21との間でD2D(Device to Device)接続を確立する。このとき、通信端末1は、図1(a)中の通信端末1の両矢印で示すように、ビーム形成可能な複数のビームパターン(図1(a)中の通信端末1の破線の楕円)を順次切り替えて測定対象信号を中継装置2へ送信する。
【0021】
制御通信部21は、図1(a)中の制御通信部21の両矢印で示すように、ビーム形成可能な複数のビームパターン(図1(a)中の制御通信部21の破線の楕円)を順次切り替えて測定対象信号を受信する。制御通信部21は、それぞれのビームパターンにより受信した信号の通信品質を測定する。制御通信部21は、測定した通信品質が最も良い通信端末1のビームパターンの測定結果を通信端末1へ通知する。通信端末1は、測定した通信品質が最も良い通信端末1のビームパターンをコントロールリンクの通信のためのビームパターンに決定する。
【0022】
制御通信部21は、測定した通信品質が最も良い制御通信部21のビームパターンをコントロールリンクの通信のためのビームパターンとして決定する。通信端末1及び中継装置2は、それぞれ決定したビームパターンによりコントロールリンクを確立する。図1(b)においては、通信端末1及び制御通信部21がコントロールリンクの通信のためのビームパターンとして決定したビームパターンそれぞれにハッチングが付されている。
【0023】
次に、通信端末1は、通信端末1と中継装置2のデータ通信部22との間で音声又は映像を送受信するためのバックホールリンクを確立する。例えば、通信端末1は、バックホールリンクのためのビームパターンとして、コントロールリンクと同じビームパターンを用いる。データ通信部22は、バックホールリンクのためのビームパターンとして、コントロールリンクと同じビームパターンを用いる。図2(a)においては、通信端末1及びデータ通信部22がバックホールリンクの通信のためのビームパターンとして決定したビームパターンそれぞれにハッチングが付されている。
【0024】
通信端末1は、データ通信部22と基地局3との間で音声又は映像を送受信するためのアクセスリンクを確立させる。図2(a)及び図2(b)の例では、通信端末1は、コントロールリンクを介して、データ通信部22が基地局3との通信においてビーム形成可能な複数のビームパターンのうち、いずれかのビームパターンのビームを形成することを指示する制御データを送信する。
【0025】
データ通信部22は、図2(a)のデータ通信部22の右側の両矢印で示すように、複数のビームパターンのうち、指示されたビームパターンのビームを形成することにより測定対象信号を基地局3へ送信する。基地局3は、図2(a)の基地局3の両矢印で示すように、ビーム形成可能な複数のビームパターンのうち、いずれかのビームパターンのビームを形成することにより、測定対象信号を受信する。基地局3は、それぞれのビームパターンにより送信されたデータの通信品質を測定する。データ通信部22は、複数のビームパターンそれぞれを用いて測定対象信号を送信し、基地局3は、データ通信部22が送信した複数のビームパターンのうち、測定した通信品質が最も良いビームパターンを、中継装置2を介して通信端末1へ通知する。
【0026】
通信端末1は、通知されたビームパターンをアクセスリンクの通信のための中継装置2のビームパターンとして決定する。基地局3は、測定した通信品質が最も良い基地局3のビームパターンをアクセスリンクの通信のための基地局3のビームパターンとして決定する。図2(b)においては、決定された中継装置2の基地局3側のビームパターンと、決定された基地局3のビームパターンとにハッチングが付されている。
【0027】
このようにして、通信システムSでは、中継装置2を介して通信端末1と基地局3との間で通信を開始する場合に、中継装置2が形成するビームのビームパターンを通信端末1が指示するので、通信端末1側から通信を開始することができる。
【0028】
[通信端末1の構成]
図3は、通信端末1の構成を示す。通信端末1は、通信部11、記憶部12及び制御部13を備える。通信部11は、中継装置2を介して基地局3と通信することによりネットワークに接続する。通信部11は、ビーム形成可能な複数のビームパターンのいずれかのビームを形成することにより中継装置2と通信する。
【0029】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを記憶する。記憶部12には、ビームIDと、ビームパターンとが関連付けて記憶されている。制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)を有しており、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、決定部131及び通信制御部132として機能する。
【0030】
決定部131は、通信部11又は中継装置2がビーム形成するビームパターンを決定する。決定部131は、それぞれ異なるビームを用いて中継装置2が基地局3と通信する間に基地局3が受信する信号の品質が相対的に高いビームに対応するビームIDを選択する。
【0031】
より詳しくは、決定部131は、コントロールリンクにより通信するビームパターンを決定する場合、通信品質を測定するための測定対象信号を中継装置2へ送信しながら、通信部11がビーム形成可能な複数のビームパターンを順次切り替える。決定部131は、送信した測定対象信号の通信品質が最も良いビームパターンを中継装置2が測定した測定結果を、通信部11を介して受信する。決定部131は、測定された通信品質が最も良いビームパターンをコントロールリンクの通信のためのビームパターンとして決定する。
【0032】
決定部131は、音声又は映像等のデータを中継装置2との間で送受信するバックホールリンクにより通信するためのビームパターンを決定する。バックホールリンクは、コントロールリンクと同じ周波数であってもよく、異なる周波数であってもよい。例えば、決定部131は、コントロールリンクと同じビームパターンをバックホールリンクの通信のためのビームパターンとして決定する。決定部131は、コントロールリンク及びバックホールリンクの通信のためのビームパターンとして決定したビームパターンに対応するビームIDをそれぞれ決定する。
【0033】
決定部131は、中継装置2と基地局3とが通信する際に使用するビームのビームパターンのビームIDを決定する。例えば、決定部131は、中継装置2が基地局3との間でアクセスリンクにより映像又は音声等のデータを送受信するためのビームパターンのビームIDを決定する。アクセスリンクは、コントロールリンク又はバックホールリンクと同じ周波数であってもよく、異なる周波数であってもよい。決定部131は、中継装置2及び基地局3が使用するビームパターンを決定するために、コントロールリンクを介して、データ通信部22がビーム形成可能な複数のビームパターンのうち、いずれかのビームパターンのビームを形成することを指示する制御データを順次送信する。
【0034】
決定部131は、中継装置2のデータ通信部22が、決定部131が指示したビームパターンのビームを形成することにより測定対象信号を基地局3へ順次送信した後、それぞれのビームパターンにより送信されたデータの通信品質を基地局3が測定した測定結果を基地局3から通信部11を介して受信する。この測定結果は、例えば、通信品質が最も良い中継装置2のビームパターンを示す。決定部131は、通信品質が最も良い中継装置2のビームパターンをアクセスリンクの通信のための中継装置2のビームパターンとして決定する。
【0035】
通信制御部132は、通信部11を介して中継装置2と通信する。通信制御部132は、決定部131が決定したビームパターンのビームIDを含む制御データを中継装置2へ送信する。例えば、通信制御部132は、サイドリンクの物理制御チャネルにより制御データを中継装置2へ送信する。制御データは、複数のビームに対応する複数のビームIDを含んでもよい。制御データは、ビームIDに加えて、ビームを送信するタイミングを示すタイミング情報を含んでもよい。タイミング情報は、例えば、ビームを収容するスロットを識別するスロットタイミングを示す。制御データは、ビームIDに加えて、中継装置2から基地局3に向けてビームを送信する周期を示す周期情報を含んでもよい。制御データは、SCI(Side Control Information)フォーマットIDを含んでもよい。SCIフォーマットIDは、SCIの様式を識別するための識別情報である。
【0036】
図4は、中継装置2がアクセスリンクで通信するための制御データの例を示す。図4の例では、制御データは、ビームID及びスロットタイミングの項目を含む。ビームIDは、ビームパターンを識別するための識別情報である。スロットタイミングは、スロットを識別するためのIDである。
【0037】
図4の左側の例では、ビームID「#X」と、スロットタイミング「2」とが関連付けられている。この例では、データ送信の各周期の先頭から2番目のスロットに対応するタイミングでビームID「#X」のビームが形成されることが示されている。図4の右側の例では、ビームID「#Y」と、スロットタイミング「3」に関連付けられている。この例では、データ送信の各周期の先頭から3番目のスロットに対応するタイミングでビームID「#Y」のビームが形成されることが示されている。
【0038】
[中継装置2の構成]
図5は、中継装置2の構成を示す。中継装置2は、制御通信部21、データ通信部22、記憶部23及び制御部24を備える。データ通信部22は、端末側通信部221及び基地局側通信部222を備える。
【0039】
制御通信部21は、中継装置2が通信端末1又は基地局3と通信する際に使用するビームパターンを指示する制御データを通信端末1から受信する。制御通信部21は、他の装置を介することなく通信端末1と直接通信するための制御リンクを介して制御データを受信する。例えば、この制御リンクは、例えば、D2D(Device To Device)のダイレクトコミュニケーション機能により確立されたコントロールリンクである。
【0040】
端末側通信部221は、通信端末1との間でバックホールリンクにより通信する。端末側通信部221は、音声又は映像等のデータを通信端末1から受信したり、通信端末1へ送信したりする。
【0041】
基地局側通信部222は、基地局3と通信する。基地局側通信部222は、基地局3との間でアクセスリンクにより通信する。基地局側通信部222は、音声又は映像等のデータを基地局3から受信したり、基地局3へ送信したりする。
【0042】
記憶部23は、ROM、RAM及びSSD等の記憶媒体を有する。記憶部23は、制御部24が実行するプログラムを記憶する。制御部24は、例えばCPUを有しており、記憶部23に記憶されたプログラムを実行することにより、各種の機能を実行する。
【0043】
制御部24は、制御通信部21を介して、制御データを通信端末1から受信する。制御部24は、端末側通信部221を介して、音声又は映像等のデータを通信端末1との間で送受信する。制御部24は、基地局側通信部222を介して、音声又は映像等のデータを基地局3との間で送受信する。
【0044】
[ビームの形成]
制御部24は、受信した制御データに含まれるビームIDに対応するビームを用いて基地局側通信部222が基地局3との間で通信するように基地局側通信部222を制御する。制御部24は、制御データが複数のビームに対応する複数のビームIDを含む場合には、複数のビームIDに対応する複数のビームのうちの1つ以上を形成するように基地局側通信部222を制御する。
【0045】
制御部24は、制御データがビームを送信するタイミングを示すタイミング情報を含む場合には、このタイミング情報が示すタイミングでビームを形成するように基地局側通信部222を制御する。制御部24は、制御データが中継装置2から基地局3に向けてビームを送信する周期を示す周期情報を含む場合には制御データが示す周期で制御データが示すビームIDに対応するビームを送信するように基地局側通信部222を制御する。制御部24は、端末側通信部221と通信端末1との通信に関する制御データを受信した場合には、基地局側通信部222を制御する方法と同様にして端末側通信部221を制御する。
【0046】
図6は、制御部24がデータ通信部22によりビームを形成するタイミングの例を示す。図6の横軸は、音声又は映像等のデータの送信時間を示す。図6の上側に示すように、制御部24は、ビームID「#X」のビームと、ビームID「#Y」のビームとを異なるタイミングで形成する。制御部24は、データの送信時間を分割したスロットごとに、ビームID「#X」のビーム又はビームID「#Y」のビームを形成する。図6において、制御部24がビームID「#X」のビームを形成する時間にハッチングが付されている。
【0047】
図6の下側に示すように、スロットオフセット(#X)は、その周期の開始タイミングからビームID「#X」のビームを収容するスロットの開始タイミングまでの時間を示す。シンボルオフセット(#X)は、ビームID「#X」のビームを収容するスロットの開始タイミングからビームID「#X」のビームの形成の開始タイミングまでの時間を示す。持続時間(#X)は、ビームID「#X」のビームの形成の開始タイミングからビームID「#X」のビームの形成の終了タイミングまでの時間を示す。
【0048】
制御部24は、制御通信部21が受信した制御データに含まれる周期情報が示す周期でビームID「#X」及びビームID「#Y」のビームを形成する。制御部24は、制御通信部21が受信した制御データに含まれるビームID「#X」に関連付けられたスロットタイミングが示すスロットに収容されるタイミングでビームID「#X」のビームを形成する。制御部24は、制御通信部21が受信した制御データに含まれるビームID「#Y」に関連付けられたスロットタイミングが示すスロットに収容されるタイミングでビームID「#Y」のビームを形成する。
【0049】
制御部24は、制御通信部21が受信した制御データがスロットオフセット、シンボルオフセット又は持続時間を含む場合には、これらのスロットオフセット、シンボルオフセット又は持続時間が示すタイミングでビームを形成してもよい。例えば、制御部24は、制御通信部21が受信した制御データがビームID「#X」とシンボルオフセット「0.1ミリ秒」とを関連付けて含む場合に、スロットの開始タイミングから0.1ミリ後にビームID「#X」のビームの形成を開始してもよい。
【0050】
図6では、制御部24がデータの送信時間に含まれる複数の周期においてビームID「#X」のビームとビームID「#X」のビームとを同じ順序で形成する場合の例について説明した。しかしながら、制御部24は、データの送信時間に含まれる複数の周期においてビームID「#X」のビームとビームID「#Y」のビームとを異なる順序で形成してもよい。図7は、制御部24がデータ通信部22によりビームを形成するタイミングの別の例を示す。図7の例では、ビームID「#X」及びビームID「#Y」のビームを収容するスロットの位置が周期ごとに異なる。このため、制御部24は、ビームID「#X」のビームとビームID「#Y」のビームとを周期ごとに異なる順序で形成する。
【0051】
<複数の中継装置2を備える変形例>
通信システムSは、複数の中継装置2を備えていてもよい。通信端末1の通信制御部132は、複数の中継装置2それぞれを識別するための中継装置IDと、中継装置2と基地局3とが通信する際に使用するビームIDと、中継装置2がビームを送信するタイミングを示すタイミング情報と、を関連付けた共通の制御データを複数の中継装置2のそれぞれへ送信してもよい。制御データは、ビームIDとタイミング情報とのいずれかを含んでいなくてもよい。
【0052】
図8は、通信制御部132が送信する制御データの別の例を示す。制御データは、中継装置IDと、ビームIDと、中継装置2がビームを送信するタイミングを示すスロットタイミングとの項目を含む。図8の上側の例では、中継装置ID「#A」の中継装置2に対し、アクセスリンクによる基地局3との通信においてビームID「#X、#Y又は#Z」のビームをスロットタイミング「3」が示すスロットにおいて形成することを指示する。図8の下側の例では、中継装置ID「#B」の中継装置2に対し、アクセスリンクによる基地局3との通信においてビームID「#X又は#Z」のビームをスロットタイミング「4」が示すスロットにおいて形成することを指示する。
【0053】
以下、決定部131が通信を中継する中継装置2を予め決定する方法について説明する。決定部131は、中継装置ID「#A」の中継装置2を介して、通信品質を測定するための測定対象信号を基地局3へ送信する。次に、決定部131は、中継装置ID「#B」の中継装置2を介して、測定対象信号を基地局3へ送信する。基地局3は、受信した測定対象信号の通信品質をそれぞれ測定する。基地局3は、通信品質が最も良い中継装置2の測定結果を決定部131へ通知する。決定部131は、通知された中継装置2を、通信を中継する中継装置2として決定する。通信制御部132は、決定部131が決定した中継装置2の中継装置IDを含む共通の制御データをそれぞれの中継装置2へ送信する。決定部131は、通信を中継する中継装置2を決定する処理を所定期間ごとに繰り返す。所定時間は、例えば、数分である。
【0054】
制御部24は、制御通信部21が受信した制御データに中継装置2が記憶している自機の中継装置IDが含まれている場合に、この中継装置IDに関連付けられたビームIDに対応するビームを用いて基地局側通信部222が基地局3との間で通信するように基地局側通信部222を制御する。制御部24は、制御通信部21が受信した制御データに中継装置2が記憶している自機の中継装置IDが含まれている場合に、この中継装置IDに関連付けられたタイミング情報が示すタイミングで基地局側通信部222が基地局3との間で通信するように基地局側通信部222を制御する。
【0055】
例えば、中継装置ID「#A」の中継装置2は、図8に示す制御データを受信した場合に、自機の中継装置ID「#A」に関連付けられたビームID「#X、#Y又は#Z」のビームを形成する。このとき、この中継装置2は、自機の中継装置ID「#A」に関連付けられたスロットタイミング「3」が示すスロットに収容されるタイミングでこのビームを形成する。
【0056】
[通信システムSによるデータ通信の開始の処理手順]
図9は、通信システムSによるデータ通信の開始の処理手順を示すシーケンス図である。この処理手順は、例えば、通信端末1の電源スイッチのオン操作が行われたときに開始する。まず、通信端末1の通信制御部132は、中継装置2の制御通信部21へ同期信号を繰り返し送信することにより制御通信部21と同期する。通信制御部132は、ビーム形成可能な複数のビームパターンを順次切り替え、それぞれのビームパターンのビームを形成することにより測定対象信号を制御通信部21へ送信する。制御通信部21は、ビーム形成可能な複数のビームパターンを順次切り替え、それぞれのビームパターンのビームを形成することにより測定対象信号を受信し、測定対象信号の通信品質を測定する。
【0057】
制御通信部21は、測定した通信品質が最もよいビームパターンの組み合わせを特定する。制御通信部21は、測定した通信品質が最も良い制御通信部21のビームパターンをコントロールリンクの通信のための制御通信部21のビームパターンとして決定する。制御通信部21は、測定した通信品質が最も良い通信制御部132のビームパターンの測定結果を通信制御部132へ通知する。決定部131は、通知された通信制御部132のビームパターンをコントロールリンクの通信のためのビームパターンとして決定する(S101)。制御通信部21及び通信制御部132は、制御通信部21と通信制御部132との間の通信のためのコントロールリンクを確立させる。
【0058】
通信制御部132及びデータ通信部22は、測定した通信品質が最もよいビームパターンの組み合わせにより、音声又は映像等のデータを送受信するためのバックホールリンクを確立する。バックホールリンクを確立するために、通信制御部132は、コントロールリンクを介して、データ通信部22が基地局3との通信においてビーム形成可能な複数のビームパターンのうち、いずれかのビームパターンを指示する制御データを順次送信する。
【0059】
データ通信部22は、ビーム形成可能な複数のビームパターンのうち、制御通信部21が受信した制御データが示すビームパターンのビームを形成することにより測定対象信号を基地局3へ順次送信する。基地局3は、ビーム形成可能な複数のビームパターンを順次切り替え、それぞれのビームパターンのビームを形成することにより測定対象信号を受信し、測定対象信号の通信品質を測定する。基地局3は、測定した通信品質が最もよいビームパターンの組み合わせを特定する。
【0060】
基地局3は、測定した通信品質が最も良い基地局3のビームパターンをアクセスリンクの通信のためのビームパターンとして決定する。基地局3は、測定した通信品質が最も良いデータ通信部22のビームパターンの測定結果をデータ通信部22へ通知する。データ通信部22は、通知されたデータ通信部22のビームパターンをアクセスリンクの通信のためのビームパターンとして決定し、アクセスリンクを確立させる。通信制御部132は、確立されたアクセスリンクにより、基地局3とのデータ通信を行う。
【0061】
[通信システムSによる効果]
以上説明したように、本実施形態に係る通信システムSでは、中継装置2を介して通信端末1と基地局3との間で通信を開始する場合に、中継装置2のデータ通信部22が形成するビームのビームパターンを通信端末1の通信制御部132が指示するので、通信端末1側からこの通信を開始することができる。
【0062】
なお、本発明により、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献することが可能となる。
【0063】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0064】
1 通信端末
2 中継装置
3 基地局
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
21 制御通信部
22 データ通信部
23 記憶部
24 制御部
131 決定部
132 通信制御部
221 端末側通信部
222 基地局側通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9